ている しかしながら 本件処分は条例の理念と条文の解釈運用を誤った違法なものであり 取り消されなければならない ⑶ 条例第 7 条第 1 項本文は 個人情報の外部提供の原則禁止を規定している また 同条同項ただし書の趣旨は 単に外部提供の原則禁止規定を解除したにとどまる すなわち 当該法令等が存在す

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1 審査会の結論平成 30 年 1 月 12 日付けで審査請求人が行政文書公開請求した 深沢地域整備事業に関し J R 東日本の要望 条件 要請 意向等の文書 ( 復命書含む ) 及び前記の記載がある文書 に対して実施機関鎌倉市長が平成 30 年 3 月 12 日付けで行った行政文書一部公開決定処分

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1 審査会の結論 平成 28 年度市民税 県民税の賦課決定処分 に係る審査請求は棄却する べきであるとの審査庁の判断は妥当である 2 事案概要南区長 ( 以下 処分庁 という ) は 地方税法 ( 昭和 25 年法律第 226 号 以下 法 という ) 第 24 条及び第 294 条並びに横浜市市税

11総法不審第120号

大情審答申第 号

( 別紙 ) 答申 : 行文第 24 号 諮問 : 行文第 24-1 号 答申第 1 審査会の結論実施機関が行った本件不開示決定処分については適正であったと認める 第 2 諮問事案の概要 1 行政文書の開示請求異議申立人は 平成 24 年 5 月 7 日 奈良市長 ( 以下 実施機関 という ) に

の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

ウ 特定個人 a に訂正してほしいとは, 私は書いてない これも日本年金機構の単純ミスなのか? それとも他に理由があるのか? 事実に基づいて, 説明を求める 私の公共職業安定所における氏名は, カタカナの 特定個人 b のスペースなしで管理されている 私の資格画面も氏名欄はカタカナである 国民年金保

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

8 会議内容 別紙 会議録要旨 のとおり 9 会議資料資料 1: ドライブレコーダーの設置に係る意見照会書及び説明資料資料 2: 平成 28 年度情報公開制度及び個人情報保護制度の実施状況資料 3: 平成 28 年度個人情報取扱事務各種届出一覧資料 4: 防犯等カメラ設置状況 ( 資料 4-1) 防

高島市職員措置請求に係る監査の結果について 第 1 請求の受付 1 請求書の提出平成 29 年 9 月 28 日 2 請求人 3 請求の要旨 ( 高島市職員措置請求書 の原文のまま記載) 1 請求の要旨高島市長による平成 29 年度の固定資産税の賦課において 別紙の固定資産について 家屋の未評価によ

(2) 電子計算機処理の制限に係る規定ア電子計算機処理に係る個人情報の提供の制限の改正 ( 条例第 10 条第 2 項関係 ) 電子計算機処理に係る個人情報を国等に提供しようとする際の千葉市情報公開 個人情報保護審議会 ( 以下 審議会 といいます ) への諮問を不要とし 審議会には事後に報告するも

横浜市情報公開・個人情報保護審査会答申

取得に対しては 分割前の当該共有物に係る持分割合を超える部分の取得を除いて 不動産取得税を課することができないとするだけであって 分割の方法に制約を設けているものではないから 共有する土地が隣接している場合と隣接していない場合を区別し 隣接していない土地を一体として分割する場合に非課税が適用されない

別紙 答申 1 審査会の結論 委託事業者の企画提案書 及び 選考会議の資料 について行われた部分公開の決定は 妥当である 2 異議申立ての趣旨 (1) 異議申立人 ( 以下 申立人 という ) は 神戸市情報公開条例 ( 以下 条例 という ) に基づき 以下の公開請求 ( 以下 本件請求 という

横浜市情報公開・個人情報保護審査会答申

PowerPoint プレゼンテーション

第一審査会の結論 豊中市教育委員会が行った 内部公益通報に係る調査の実施について ( 報告 ) を不 開示とした決定は妥当ではなく 別紙に記載した部分を除き開示すべきである 第二審査請求の経過 1 開示請求審査請求人は 平成 25 年 7 月 17 日 豊中市情報公開条例 ( 以下 条例 という )

異議申立てしていますが, 協会 ( 原文ママ ) として黙認しています 本件に関しても, 諮問庁は国のトップなのだから, もっともっと労働問題に積極的に取り組み, 労基法厳守で, 場合により, 行政処分すべきである 警察なら, スピード違反すれば即行政処分されますが, 労基法では, 基本強い行政処分

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が成立するが 本件処分日は平成 29 年 3 月 3 日であるから 平成 24 年 3 月 3 日以降 審査請求人に支給した保護費について返還を求めることは可能であ る 第 3 審理員意見書の要旨 1 結論本件審査請求には理由がないので 棄却されるべきである 2 理由 (1) 本件処分に係る生活保護

ウ商業地等である 町の土地の平成 28 年度分の固定資産税の課税標準額は 法附則第 18 条第 5 項及び第 25 条第 5 項の規定により 課税標準となるべき価格に0.7を乗じた額となる なお 岐阜市税条例 ( 昭和 25 年岐阜市条例第 14 号 以下 条例 という ) においては これと異なる

個人情報保護規定

1 審査会の結論 平成 29 年度市民税 県民税税額変更処分 に係る審査請求は棄却するべ きであるとの審査庁の判断は妥当である 2 事案概要緑区長 ( 以下 処分庁 という ) は 平成 29 年 6 月 1 日 審査請求人に対して 平成 29 年度市民税 県民税賦課決定処分 ( 以下 先行処分 と

総務省が所管する地方税法ではなく 財務省が所管する国有財産法の適用を受けるとのことであり 実施機関の本件決定は失当である (2) 本件は 国税庁からの教示による公文書公開請求であり これを実施機関が非公開決定するとは言語道断である (3) 尖閣諸島の国有化は 日本と中国の外交問題に発展していることも

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ら退去を迫られやむを得ず転居したのであるから本件転居費用について保護費が支給されるべきであると主張して 本件処分の取消しを求めている 2 処分庁の主張 (1) 生活保護問答集について ( 平成 21 年 3 月 31 日厚生労働省社会援護局保護課長事務連絡 以下 問答集 という ) の問 13の2の

横情審答申第 1534 号 平成 3 0 年 11 月 15 日 横浜市長林文子様 横浜市情報公開 個人情報保護審査会 会長 藤原靜雄 横浜市個人情報の保護に関する条例第 53 条第 1 項の規定に基づく諮問 について ( 答申 ) 平成 29 年 5 月 1 日総職健第 86 号による次の諮問につ

⑴ ⑵ ⑶ ⑷ 1



⑴ ⑵ ⑶

⑴ ⑵ ⑶

⑴ ⑵ ⑶

⑴ ⑵ ⑶

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処分済み

処分済み

11総法不審第120号

録された保有個人情報 ( 本件対象保有個人情報 ) の開示を求めるものである 処分庁は, 平成 28 年 12 月 6 日付け特定記号 431により, 本件対象保有個人情報のうち,1 死亡した者の納める税金又は還付される税金 欄,2 相続人等の代表者の指定 欄並びに3 開示請求者以外の 相続人等に関

11総法不審第120号

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

0 月 22 日現在, 通帳紛失の総合口座記号番号 特定番号 A-B~C 担保定額貯金 4 件 ( 特定金額 A): 平成 15 年 1 月 ~ 平成 16 年 3 月 : 特定郵便局 A 預入が証明されている 調査結果の回答書 の原本の写しの請求と, 特定年月日 Aの 改姓届 ( 開示請求者本人

答申

諮問庁 : 国立大学法人長岡技術科学大学諮問日 : 平成 30 年 10 月 29 日 ( 平成 30 年 ( 独情 ) 諮問第 62 号 ) 答申日 : 平成 31 年 1 月 28 日 ( 平成 30 年度 ( 独情 ) 答申第 61 号 ) 事件名 : 特定期間に開催された特定学部教授会の音声

非常に長い期間, 苦痛に耐え続けた親族にとって, 納得のできる対応を日本政府にしてもらえるよう関係者には協力賜りたい ( その他は, 上記 (2) と同旨であるため省略する ) (4) 意見書 3 特定個人 Aの身元を明らかにすること及び親子関係の証明に当たっては財務省 総務省において, 生年月日の

第1 審査会の結論

保険業務に係る情報提供料は 請求人の事業に基づいた収入であるとは いえない 第 4 審理員意見書の結論 本件各審査請求は理由がないから 行政不服審査法 4 5 条 2 項によ り 棄却すべきである 第 5 調査審議の経過 審査会は 本件諮問について 以下のように審議した 年月日 審議経過 平成 30

諮問庁 : 株式会社日本政策金融公庫諮問日 : 平成 28 年 2 月 8 日 ( 平成 28 年 ( 独個 ) 諮問第 3 号 ) 答申日 : 平成 28 年 4 月 27 日 ( 平成 28 年度 ( 独個 ) 答申第 1 号 ) 事件名 : 本人に関する融資審査の検討資料の不訂正決定に関する件

第 8 条を削り, 第 9 条を第 8 条とし, 第 10 条から第 12 条までを 1 条ずつ繰り上げる 別記第 1 号様式を次のように改める

処分済み

無い (3) 特定市が振興協会会長 Aと市教育委員会とで一体に推進した当該文化事業は事業の実施前と実施後のまちの変化における事業の効果について国への報告義務があり, 公正に適法に事業を行う責務の存在は当該文化事業の目標の1は中心市街地の賑わいの促進にあって中心市街地活性化ソフト事業であって公開されて

⑵ ⑶ ⑷ ⑸ ⑴ ⑵

市町村合併の推進状況について

19 条の4 第 2 項の規定により, 特別職の公務員であるから, 本件不開示情報は, 公務員としての職務遂行情報であり, 精神保健指定医が, 客観的な生体検査もなく, ただその主観に基づいて, 対象者を強制入院させることができるという性質の資格であること, 本件開示請求に係る精神保健指定医らが対象

個人情報の保護に関する規程(案)

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Microsoft Word - 素案の概要


返還の必要性を十分説明しており 手続は適法である 第 3 審理員意見書の要旨 1 結論本件審査請求には理由がないので 棄却されるべきである 2 理由 (1) 本件の争点は 本件保険が法第 4 条第 1 項に規定する 利用し得る資産 に該当するかどうかであるが その判断に当たっては 処分庁が判断の要素

Microsoft PowerPoint - 03 要綱概要版



11総法不審第120号

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11総法不審第120号

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

基づく事業協同組合並びにこれらに準ずる団体 ⑶ 地方自治法 ( 昭和 22 年法律第 67 号 ) 第 244 条の2 第 3 項に規定する指定管理者 ( 以下 指定管理者 という ) ⑷ 地方自治法第 260 条の2 第 1 項に規定する地縁による団体及び町会 自治会その他これらに準ずる団体 ⑸

香川県後期高齢者医療広域連合職員の勤務時間、休暇等に関する

がある 7 平成 28 年 3 月 28 日 処分庁は 同日付で審査請求人に対し 借入金収入 円の未申告により生じた保護費過払い分について 法第 78 条第 1 項の規定により費用徴収を行う決定を行い 同年 7 月 7 日 費用徴収決定通知書を審査請求人に手交した 8 審査請求人は 平成 28 年

特定個人情報の取扱いの対応について


-2 -


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特定個人情報の取扱いの対応について

本人に対して自身の個人情報が取得されていることを認識させるために 防犯カメラを設置し 撮影した顔画像やそこから得られた顔認証データを防犯目的で利用する際に講じることが望ましい措置の内容を明確化するため 更新しました ( 個人情報 ) Q 防犯目的のために 万引き 窃盗等の犯罪行為や迷惑行

- 2 - ⑷ 保育所又は学童クラブにおいて 保育又は学童クラブの目的を達成するために 児童又はその保護者に対してされる行政指導 ⑸ 市の職員 ( 地方公務員法 ( 昭和 25 年法律第 261 号 ) 第 2 条に規定する地方公務員に該当する職員をいう 以下同じ ) 又は市の職員であった者に対して

11総法不審第120号

Microsoft PowerPoint - kobetsuB4-slide-静山.ppt [互換モード]

Microsoft Word - 答申第141号.doc

横情審答申第 1352 号 平成 28 年 10 月 14 日 横浜市長林文子様 横浜市情報公開 個人情報保護審査会 会長 藤原靜雄 横浜市の保有する情報の公開に関する条例第 19 条第 1 項の規定に基づく 諮問について ( 答申 ) 平成 28 年 4 月 21 日建都計第 136 号による次の

第 4 章中第 34 条の次に次の 1 条を加える ( 行政指導の中止等の求め ) 第 34 条の 2 法令又は条例等に違反する行為の是正を求める行政指導 ( その根拠 となる規定が法律又は条例 ( 地方自治法第 252 条の17の2 第 1 項又は地方教育行政の組織及び運営に関する法律第 55 条

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11総法不審第120号

2 前項の規定による通知を行った場合において 市長は 当該特定空家等の所有者等が除却 修繕 立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置を講じたことにより特定空家等の状態が改善され 特定空家等でないと認めるときは 遅滞なくその旨を 特定空家等状態改善通知書 ( 様式第 7 号 ) に

1. 元職員による働きかけの規制 ( 第 38 条の 2 関係 )1 1 離職後に営利企業等 1に再就職した元職員(= 再就職者 ) は 離職前 5 年間に在職していた地方公共団体の執行機関の組織等 2の職員に対して 当該営利企業等又はその子法人と在職していた地方公共団体との間の契約等事務 3につい

1 本件審査請求について (1) 本件審査請求に係る開示請求は, 法に基づき, 処分庁に対し, 本件対象文書の開示を求めたもの ( 以下 本件開示請求 という ) である (2) 本件開示請求を受けて, 処分庁は, 本件対象文書を作成しておらず不存在として, 不開示決定 ( 原処分 ) を行った (

11総法不審第120号

個人情報の取扱いに関する規則 平成 12 年 9 月 29 日 奈良県規則第 2 2 号 改正 平成 13 年 3 月 30 日 規則第 68 号 改正 平成 17 年 3 月 29 日 規則第 30 号 改正 平成 18 年 3 月 31 日 規則第 38 号 改正 平成 27 年 9 月 25

                       高情審答申第    号

Taro-議案第13号 行政手続条例の

特定個人情報保護評価書 ( 基礎項目評価書 ) 評価書番号評価書名 11 町田市障害福祉事務基礎項目評価書 個人のプライバシー等の権利利益の保護の宣言 町田市は障害福祉事務における特定個人情報ファイルの取扱いにあたり 特定個人情報ファイルの取扱いが個人のプライバシー等の権利利益に影響を及ぼしかねない

情報公開に係る事務処理規則 ( 平 18 規則第 16 号平成 18 年 8 月 1 日 ) 改正平 19 規則第 52 号平成 19 年 9 月 21 日平 26 規則第 2 号平成 26 年 5 月 13 日平 26 規則第 22 号平成 27 年 3 月 31 日 第 1 章総則 ( 目的 )

11総法不審第120号

火対象物の公表の要否を決定するものとする ( 公表の予告 ) 第 5 条署長は 前条第 4 項の規定により公表が必要であると決定した場合は 公表予告書 ( 第 2 号様式 ) により関係者に対し公表の予告をするものとする 2 前項に規定する公表の予告は 査察規程第 20 条第 1 項に規定する立入検

情報公開答申第733号本文(諮問第923号)

Transcription:

さ情審査答申第 20 号 平成 16 年 7 月 23 日 さいたま市長相川宗一様 さいたま市情報公開 個人情報保護審査会 会長 小池保夫 答申書 平成 14 年 10 月 18 日付けで貴職から受けた 県へ提出された異議申立人の個人情報 住民基本台帳ネットワークシステムに係る 本人確認情報 ( 以下 本件対象個人情報 という ) の不訂正等決定 ( 以下 本件処分 という ) に対する異議申立てに係る諮問について 次のとおり答申します 第 1 審査会の結論 本件対象個人情報につき さいたま市個人情報保護条例第 26 条第 2 項の 規定により 訂正等をしないこととした決定は 妥当である 第 2 異議申立人の主張の要旨 1 異議申立ての趣旨本件異議申立ての趣旨は さいたま市個人情報保護条例 ( 平成 13 年さいたま市条例第 18 号 以下 条例 という ) 第 2 5 条第 1 項に基づく本件対象個人情報の訂正等の請求に対し 平成 14 年 9 月 6 日付けさ市市収第 340 号により さいたま市長 ( 以下 実施機関 という ) が行った本件処分について これを取り消し 本件対象個人情報の外部提供の中止を求めるというものである 2 異議申立ての理由異議申立人が主張する異議申立ての主たる理由は 異議申立書及び口頭意見陳述によると おおむね以下のとおりである ⑴ 本件対象個人情報について 外部提供の中止を求めたが 実施機関は外部提供の中止請求に対し不訂正等決定処分とした ⑵ 実施機関は 本件処分の理由について 本件対象個人情報の外部提供は住民基本台帳法 ( 昭和 42 年法律第 81 号 以下 住基法 という ) 第 30 条の5に定められており 条例第 7 条第 1 項第 2 号 法令等の定めがあるとき に該当し 適法な外部提供と認められるため と付記し 1

ている しかしながら 本件処分は条例の理念と条文の解釈運用を誤った違法なものであり 取り消されなければならない ⑶ 条例第 7 条第 1 項本文は 個人情報の外部提供の原則禁止を規定している また 同条同項ただし書の趣旨は 単に外部提供の原則禁止規定を解除したにとどまる すなわち 当該法令等が存在すると認められるときは 改めて 外部提供の是非を判断する仕組みとなっている したがって 法令等に定めがあることを理由として 実施機関に外部提供の義務が生じることを意味しているものではない ⑷ 住基法第 30 条の5は 実施機関に県への通知義務を課したとまで読み取れるものではない ⑸ 条例は 市民の自己情報コントロール権を保障したものであり したがって 住基法は条例の理念に背反するものであり よって条例の権利保障の優位性が認められなければならない 新地方自治法体制のもとでは 条例に対する法律の上位性が無条件で認められるものではない 自治体は 法令解釈権を持つ ⑹ 住民基本台帳ネットワークシステム ( 以下 住基ネット という ) は 住民票コードの付与による国民総背番号制の導入を基礎とした新たな国民監視システムであり 実施機関は市民自治の観点から 直ちに電算結合を切断すべきである 第 3 実施機関の説明の要旨実施機関は 不訂正等理由説明書及び口頭意見陳述において 次のように説明している 1 条例第 7 条は 個人情報の利用及び提供の制限を規定しているが 同条第 1 項ただし書により 例外規定を設けている 同条同項第 2 号では 法令等において実施機関が外部提供することができるとされている場合には 条例よりも法令等が優先されることから提供の制限の例外としている 2 本件対象個人情報を県に提供することは 住基法第 30 条の5で 市町村長は 住民票の記載 削除又は氏名 生年月日 性別 住所 住民票コードの全部若しくは一部についての記載の修正を行った場合には 本人確認情報を都道府県知事に通知するものとする と規定されており 条例第 7 条第 1 項第 2 号 法令等の定めがあるとき に該当し 適法な外部提供と認められる 第 4 審査会の判断の理由 1 実施機関の行った異議申立人に係る本件対象個人情報の外部提供は 住 2

基法第 30 条の5 第 1 項によるものである この住基法の規定は 地方自治体の首長である市町村長に 同条項の通知をすべき義務を課したものと解されるが 他方住民基本台帳の作成 管理に係る事項は市町村長の事務であり また市町村は地方自治体としての権能の範囲で他の事務についてと同様に独自の判断をもって行う余地も認められるべきことは 国の場合に比して 市町村はその住民と直接的に かつ密接な係合いのある行政主体であることから これを肯定すべきである 2 条例第 7 条第 1 項は 個人情報の外部提供を禁止して 例外的に同項ただし書に該当するときにこの禁止を解除している 禁止規定の解除は直ちに 禁止事項につき実施機関に外部提供の義務を課すものではなく ある程度の判断の余地を与えるものであって その意味で本件外部提供についても改めてその是非を判断すべきであるという異議申立人の主張は一般論として是認できる そして直ちに 外部提供すべきか目的外利用が許されるかということは 個々の情報とそれに係る法令の内容により事案ごとに判断すべきことである 3 そうして 一方に住基法第 35 条の5 第 1 項の市町村長の県知事に対する通知義務の定めがあり 他方 条例第 7 条第 1 項ただし書は 本件対象個人情報の外部提供を行うに際して 改めて外部提供の当否 是非について検討したことはないとの説明であるから 上記住基法の規定に従うことは当然のこととして外部提供し 異議申立人の訂正等の請求に対しても これを拒否する旨の処分をしたと推認することができる 4 住基法による 住民基本台帳の記載事項の統一的な整理及び管理と 全住民の一人ひとりに住民票コードを付与することとこれに関連する措置などの諸規定は 全国を網羅した住基ネットの構築を目的としたもので そのために住基法が改正された これは言うまでもなく 国民の利益に資する立法とそれに基づく施策として国の立法機関が選択した政策である 実施機関のした本件対象個人情報の外部提供は この国の政策的選択に従ったものと解することができるもので 今この選択を一地方公共団体の判断により違法または不当とする理由を見出すことができない ただし 個人情報とその適正な取扱いという見地から また個人情報が保護されるべきであるということが一般には必ずしも十分に理解されているとは言えない現在の社会状況下では 住基ネットそのものと共に 市民に対する何らかの事前の説明や意見聴取などの手続を経て このシステムについての理解と問題点の認識を得たうえで行うことが望ましかった と考えるものである 5 次に 住基ネットは 住民票コードの付与による国民総背番号制の導入 3

を基礎とした新たな国民監視システム であるとの異議申立人の主張について述べる 現行住基法第 30 条の5は市町村長に対し 同法第 7 条第 1 項に記載の各事項の内の氏名 住所 生年月日 性別及び住民票コードの 5 個の情報のみの通知を求めており それに尽きるのであって 現段階において これを 国民総背番号制 とか 国民監視システム とかいうのは当たらないと考える したがって 実施機関の取った措置を違法ということはできない 6 また 今日の情報通信手段の進歩の速さは目覚ましいものがあり 時に 一瞬の内に膨大な量の個人情報が失われ または漏えいされる例が見られ また住基ネットに個人情報保護につき不備ないし危険があることが指摘されていることも事実である このことは個人情報の保護に関する法律 ( 平成 15 年法律第 57 号 ) が成立した今日においても変わらないと考えられる さいたま市においても住基ネットにおける個人情報の安全確保についてはその管理面においても事故を防止するという技術面においても 更に十分な対応策を継続的に取ることを期待するものである 7 以上により 本件異議申立てについて 当審査会は 上記第 1の結論のとおり答申するものである 第 5 調査審議の経過 当審査会は 本件諮問事案について 次のとおり 調査審議を行った 1 平成 14 年 10 月 18 日 諮問の受理 2 同年 11 月 14 日 実施機関から理由説明書を受理 3 平成 15 年 4 月 23 日 審議 4 同年 5 月 22 日 審議 5 同年 6 月 19 日 実施機関からの意見聴取及び審議 6 同年 7 月 17 日 異議申立人からの意見聴取及び審議 7 同年 9 月 18 日 審議 8 同年 10 月 16 日 審議 9 同年 11 月 13 日 審議 10 同年 12 月 18 日 審議 11 平成 16 年 1 月 22 日 審議 12 同年 2 月 19 日 審議 13 同年 3 月 11 日 審議 14 同年 5 月 20 日 審議 15 同年 6 月 17 日 審議 16 同年 7 月 15 日 審議 4

さいたま市情報公開 個人情報保護審査会委員 職 名 氏 名 備 考 委 員 荒木直人 弁護士 会 長 小池保夫 大学教授 委 員 小室 大 行政経験者 会長職務代理者 鈴木久義 弁護士 委 員 満木祐子 弁護士 ( 五十音順 ) 5