資料 4 標準旅行業約款の見直しに関する検討会 ( 第 2 回 ) 資料 ( 平成 23 年 9 月 20 日 ) COPYRIGHT JAPAN ASSOCIATION OF TRAVEL AGENTS 2011
目次 1. 第 1 回検討会における宿題事項 2. 旅行業者に生ずる取消料等の実態 3. クルーズの取消料等の実態 4. 特別な目的を組み入れた旅行の取消料等の実態 参考 1 海外主要国のパッケージツアーの取消料について参考 2 海外募集型企画旅行の取消料の推移について P.1 P.2 P.6 P.7 P.10 P.11
1. 第 1 回検討会における宿題事項 (1) 旅行業者に生ずる取消料等の実態 1PEX 運賃 申し込み時期 取消時期 2 販売管理費 3 クルーズの取消料等の実態 4 特別な目的を組み入れた旅行の取消料等の実態 (2) 海外主要国のパッケージツアーの取消料について (3) 海外募集型企画旅行の取消料の推移について * サービス提供機関の課す取消料 違約料 払戻手数料等を 取消料等 とする 1
2. 旅行業者に生ずる取消料等の実態 (1) 海外募集型企画旅行の運賃 申込時期 取消しの現状 1 海外募集型企画旅行は PEX 運賃を利用する割合が増えてきている 25% 2 海外募集型企画旅行の申込みは 旅行開始日の 31 日前まで に 84.4% ( 91 日以上前まで で 18.8%) 3 海外募集型企画旅行の取消率は 48.6% ( そのうち 87.5%= 約 43% が 31 日まで に取消す ) 1 海外募集型企画旅行における PEX 運賃と IT 運賃の割合 JATA 会員旅行業者のうち IT 運賃の利用から PEX 運賃を利用せざるを得ないという割合は約 70% 参照 : 資料 A JATA 会員旅行業者のうち IT 運賃と PEX 運賃のシェア 参照 : 資料 A ( 推定値 ) IT 運賃利用 PEX 運賃利用 募集型企画旅行 約 75% 約 25% 日本発国際線週間提供座席数は 2006 年 ( 夏 ) から 13% 減少 2006 年 ( 夏 )4,270 便 /728,623 席 2011 年 ( 夏 )4,219 便 /633,021 席 (1 便あたり約 171 席 ) (1 便あたり約 150 席 ) 航空機の小型化 ( 直接販売の強化 PEX 席の増加 ) 2 及び 3 海外募集型企画旅行の申込時期 取消しの現状 参照 : 資料 B 及び C 2
(2) 航空会社が課す取消料等の実態 1 PEX 運賃は予約後 3~7 日以内に発券し 発券後は約 1 万円 ~3 万円程度の取消料等が必要 2 IT 運賃は 旅行開始 14~3 日前までに発券し 取消料等はおおよそ PEX 運賃の半額程度 3 PEX 運賃であっても 申込みを受けると座席の確保のため予約 発券を行う必要がある 4 旅行を取消した人 のために 少なくとも 149 億円の取消料等を 旅行をした人 が負担している 1 PEX 運賃は 発券後の取消し は 取消し時期にかかわらず必ず取消料等が必要 ( 旅行業者のリスク が発生) 5 月 2 日 5 月 10 日 8 月 2 日 9 月 1 日 参照: 資料 D 航空会社に支払う取消料等 約款規定の取消料 座席手配 発券 座席取消し この期間は取消料を収受できない = 旅行業者のリスク 2 IT 運賃は 発券期限が遅いので 旅行業者のリスク はまず生じない 参照 : 資料 D 3 旅行業者のリスク を避けるため PEX 運賃座席手配を遅らせると座席の確保自体ができない ( 債務不履行の ) リスクを負う ( 発券しないと座席の確保ができない ) 4 旅行業者は 旅行を取消した人 のために 少なくとも大手 5 社で76 億円 旅行業者全体で149 億円の取消料等を負担 * 旅行取消者数のデータがないため 旅行申込者数と取消状況から推計旅行申込者数 : 約 626 万人 (322 万人 (100%-48.6%))- 旅行者数 : 約 322 万人 = 旅行取消者数 : 約 304 万人 総申込者数の 48.6% 31 日前 (41 日前 ) 時点 約 76 万人 旅行の総申込者 ( 約 626 万人 ) 旅行を取消した人 ( 約 304 万人 ) 旅行者 ( 約 322 万人 ) PEX 運賃 IT 運賃 PEX 運賃 IT 運賃 (PEX 運賃 :IT 運賃 =25%:75%) PEX 運賃 ( 約 304 万人 25%= 約 76 万人 ) 最低 1 万円 = 76 億円 * 大手 5 社で少なくとも 76 億円の取消料等を支払っている ( 推定 ) * 旅行業者全体では少なくとも 149 億円の取消料等を支払っている ( 推定 ) 3
(3) 販売管理費について 1 海外募集型企画旅行の契約成立後の取消しによる事務負担 ( 各種手配業務や取消しに係る事務 ) は 旅行開始日の 31 日前の取消 ( 総申込者数の約 43%) 分は回収できていない 2 とりあえず申し込む者による一部受付窓口の混雑の問題もある サービスの対価 ( 直接原価 ) 航空運賃 宿泊代金 バス代等 いわば預かり金 ( サービス提供機関に支払うもの ) ( 旅行業者が手配するサービス ) 旅行代金 その他原価等 ( 旅行運営経費 ) 販売手数料収入 ( 粗利 ) 添乗員経費 日程表 旅行サービス用品等 旅行特別補償保険料等 ( 旅行業者が自ら提供するサービス 経費等 ) 受託旅行業者への販売手数料 人件費 : 取引条件説明 書面の交付 広告宣伝費 : パンフレット作成コスト調査費 : 現地調査利益 ( 営業利益 ) 販売管理費 とした 参照 : 資料 E 4
海外募集型企画旅行の取消料の 旅行する者 への負担転嫁のイメージ 現行 改正案 っ ry 旅行代金旅行代金 サービスの対価 ( 直接原価 ) っ ry 旅行代金旅行代金 サービスの対価 ( 直接原価 ) その他原価等 ( 旅行運営経費 ) その他原価等 ( 旅行運営経費 ) サービス提供機関への取消料等 収受する取消料 販売手数料 サービス提供機関への取消料等 収入 ( 粗利 ) サービス提供機関への取消料等 収受する取消料 販売手数料 収入 ( 粗利 ) 回収できない取消料を旅行会社が負担している場合と 旅行代金に転嫁している場合がある 適正に取消料を回収することにより 旅行をした人 の負担の軽減が必要 5
3. クルーズの取消料等の実態 1 フライ & クルーズ旅行 の申込みは他の海外募集型企画旅行と比べて早期に申込み 2 フライ & クルーズ旅行 における クルーズ日程が 50% 以上が 84.2% 80% 以上が 47.9% 3 旅行業者の フライ & クルーズ旅行 の取消料の負担が増大 4 旅行者からの取消料 < クルーズ船会社への取消料等 1 フライ & クルーズ旅行 は 申込みが早い傾向 91 日前まで に 61.8% が申込む ( 推定 ) 2 フライ& クルーズ旅行 は 全日程のうちクルーズ日程の占める割合が50% 以上であるツアーが84.2% と高い 参照: 資料 F 3 現行の個別認可約款 ( クルーズ日程が全日程の 50% 以上の場合はクルーズの取消料率の 2 分の 1 以内 ) のため クルーズ日程の占める割合の拡大により 旅行業者の フライ & クルーズ旅行 の取消料の負担が増大 4 旅行者からの取消料では船会社の取消料を賄えないリスク ( 旅行業者のリスク ) が顕在化 参照 : 資料 G 6 11,170 円 67,020 円 例 B 社 メキシカンリビエラクルーズ7 日間 申込 取消の時期 申込人数 増減 船会社の取消料等 損害額 59 日前 ~45 日前 26 44 日前 ~15 日前 20 20 旅行開始日 20 6
4. 特別な目的を組み入れた旅行の取消料等の実態 1 特別な目的を組み入れた海外募集型企画旅行は その目的の取消料等 > 旅行者からの取消料 となる 2 旅行業者がリスクを取りづらいため 魅力的な商品造成につながらない 特別な目的に係る入場券は 基本的には 取消料 の概念は無く 購入したら 払戻不可 また 特色が強い あるいはピーク時のホテルは取消料等が厳しい 例 : ミラノ スカラ座とイタリアン リビエラの旅 8 日間 参照 : 資料 H 旅行代金 47.5 万円 チケット額面価格 : 187 ユーロ ( 約 2 万円 ) チケット実質相場 :1,380 ユーロ ( 約 15 万円 ) ホテル通常価格 : 270 ユーロ ( 約 3 万円 ) ホテル実質価格 : 363 ユーロ ( 約 4 万円 ) ホテル取消条件 :90 日前から宿泊代金の 100% *1 ユーロ =110 円で換算 例 : ウィーンフィルハーモニーニューイヤーコンサート 7 日間 (2008 年 12 月 29 日発 ) 旅行代金 165 万円 チケット額面価格 : 780 ユーロ ( 約 12 万円 ) チケット実質相場 :2,300 ユーロ ( 約 37 万円 ) ホテル通常価格 : 807 ユーロ ( 約 13 万円 ) ホテル実質価格 :2,395 ユーロ ( 約 38 万円 ) ホテル取消条件 :90 日前から宿泊代金の 75% 30 日前から 90% 21 日前から 100% *1 ユーロ =160 円で換算 ( 当時の為替レート ) 本ツアーは 旅行業者の取消料の負担が大きく 取りやめられた海外募集型企画旅行 特別な目的を組み入れた旅行 = 魅力あるツアーの場合には 例外 規定も必要 しかし 例外 の適用範囲については更に検討が必要 7
まとめ ( 実態 1) 海外募集型企画旅行の航空券は旅行開始 30 日以上前から取消料のかかる PEX 運賃が主流となりつつある ( 航空会社の航空券販売方式の変化による外部環境の変化 ) 海外募集型企画旅行の申込みは 31 日前までが全体の 84.4% であり 48.6% が取消し 約 43% が旅行開始 31 日より前に旅行を取消し 現行の標準約款では 旅行を取消した人 に PEX 運賃の取消料等を請求することができず 旅行会社が実質的に負担している ( ) 結果的に 海外募集型企画旅行で 旅行した者 に少なくとも約 149 億円の取消料を転嫁 旅行を取消した人 に要した事務コストの負担もある ( 受託販売の場合は 受託旅行業者の実質 ただ働き となっている ) ( 見直し 1) 海外旅行に係る取消料を改正 90 日前以降 41 日前まで : 設定なし 10% 以内 40 日前以降 31 日前まで : ピーク時は 10% 以内 10% 以内 ( ピーク時は 15% 以内 ) 30 日前以降 22 日前まで :20% 以内 15% 以内 21 日前以降 15 日前まで :20% 以内 現行どおり 参照 : 資料 I 14 日前以降 3 日前まで :20% 以内 35% 以内 前々日以降当日まで :50% 以内 40% 以内 旅行開始後の解除無連絡不参加:100% 以内 現行どおり 8
( 実態 2) クルーズ代金の取消料等は様々であるが 現行の個別認可約款の 認可の条件 では 旅行者の取消料 < クルーズ船会社への取消料等 となる場合がある ( 見直し 2) 標準旅行業約款に新たに フライ & クルーズ旅行に係る取消料 を設定 旅行日程中に 3 泊以上のクルーズ日程を含む募集型 受注型企画旅行契約 : クルーズ会社その他の運送 宿泊機関等の定める取消料 違約料の合計額以内の額 ( 実態 3) 特別な目的の入場券等では 払戻不可のものがあり 海外募集型企画旅行の取消しがあった場合の 旅行業者のリスク が大きい ( 見直し3) 標準旅行業約款の備考欄に新たに追記 契約書面に運送機関 宿泊機関 食事提供施設 催し物の主催者その他の運送 宿泊機関等が定める取消料 違約料その他の費用の金額を明示したときは 第 1 項から第 4 項までによらず 当該明示した金額の合計額以内の額を取消料とする 9
参考 1 海外主要国のパッケージツアーの取消料について 諸外国のパッケージツアーの取消料は 国により異なるが 90 日前後から発生するものが多い 日本の現行約款は諸外国と比べると 現行約款は取消料を賦課する時期が遅い 参照 : 資料 J 10
参考 2 海外募集型企画旅行の取消料の推移について 昭和 46 年 旅行あつ旋業法 の改正( 旅行業法 へ名称変更) 旅行業約款に 認可性 の導入 旅行業約款( 例 ): 特別航空運賃を利用する主催旅行は 60 日前から申込金の額の範囲内 昭和 57 年 旅行業法 の改正 標準旅行業約款の導入 30 日前から20% 以内 これ以来 取消料に関する公式な検討はなされていないもよう 平成 13 年 4 月 消費者契約法 施行 参照 : 資料 K 11