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azbil Technical Review 011 年 1 月発行号 熱源最適化コントローラのためのシミュレーション技術開発 Development of Simulation Technology for a Heat Source Optimization Controller 株式会社山武 ビルシステムカンパニー 松尾裕子 Yuko Matsuo キーワード熱源最適化コントローラ,, 熱源, 冷凍機, ポンプ, 制御, 省コスト, 省 CO 熱源最適化コントローラ PARACONDUCTOR TM の特徴的な機能として, 熱源システムの最適制御, 省エネルギー制御による効果の可視化があげられる 各機能を支えるシミュレーション技術について報告する Features of the PARACONDUCTOR heat source optimization controller include optimum control of a heat source system and visualization of the effects of energy-saving control. This paper describes the simulation technologies that are applied to such functions. 1. 熱源最適化コントローラの紹介熱源システムのエネルギー使用量は建物全体の ~ 3 割を占めており, 熱源設備の省エネルギーには大きな期待が寄せられている 山武はこれに応えるため, これまで送水ポンプの省エネルギー制御などを提案してきた 今回これらの省エネルギー制御に加え, 新たに熱源最適化コントローラ PARACONDUCTOR を開発した 図 1 は PARACONDUCTOR システムの構成図である PARACONDUCTOR は個別機器コントローラの上位に追加され, 各コントローラと連携しながら制御や可視化を行う PARACONDUCTOR の特徴的な機能として, 熱源システムの最適制御 省エネルギー制御による効果の可視化 があげられる 次章以降で, 各機能を支えるシミュレーション技術について報告する は中間期 冬期でも冷水負荷があることから, 低負荷時の を向上させ, 年間を通して省エネルギーを実施することが重要であるとの認識が広まりつつある 図 の インバータ機 は, 中間期 冬期の が向上した代表例である インバータ機を導入することにより, 中間期 冬期に大幅な省エネルギー効果を期待できる 監視装置 PARACONDUCTOR 熱源システムの最適制御省エネルギー制御による効果の可視化ほか 個別機器コントローラ. 熱源システムの最適制御 個別機器コントローラ.1 背景熱源設備の使用エネルギーは大部分が冷凍機によるものである 近年冷凍機本体の 1 が向上し, 大きな省エネルギー効果を上げている また建物によって 図 1. PARACONDUCTOR システムの構成図

熱源最適化コントローラのためのシミュレーション技術開発 0 1 1 1 1 0 インバータ式冷凍機の例 図. 部分負荷 が向上した機器の代表例. 最小 CO 台数制御 従来型の冷凍機の例 0 1 1 0 5 9 3 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 図 3 はインバータ機が 台ある熱源システムを想定した, 運転台数別の CO 排出量を示したグラフである 1 台分の高負荷付近では, あえて 台運転させたほうが CO 排出量が少ないことが分かる 山武は従来より, 熱源コントローラ (PARAMATRIX TM ) を用いて台数制御を行っている これまでの台数制御は図 の 従来型 を想定し, 冷凍機運転台数を減らすほど省エネであると考えてきた しかしこの制御をインバータ機に適用した場合, 冷凍機が高負荷で運転してしまい, 低負荷時の高 特性を活かすことができない そこで最小 CO 台数制御は負荷 外気条件などから運転台数ごとの CO 排出量をシミュレーションし, 熱源システムとしての CO 排出量が小さくなるように運転台数を決定する 結果として 1 台分の負荷でも 台運転になるので冷凍機が低負荷で運転することが多くなり, 高 特性を活かすことができる 図 3. 運転台数別の CO 排出量をあらわしたグラフ 0 5 9 3 御による冷却水温度の変化も考慮して最適な運転台数を決定でき, 結果として省エネルギー制御の精度を向上させることができる.3. シミュレーションの流れシミュレーションの流れは図 の通り 外気温度 外気湿度 負荷熱量 負荷流量の計測値にもとづき, 計測条件における CO 排出量をシミュレーションする 冷凍機 冷却水ポンプのエネルギー使用量は冷却水温度に依存するため, 先に冷却水温度を演算し, 冷却水温度演算値を用いて冷凍機 冷却水ポンプの CO 排出量を演算する 別途.3.3,.3. に冷却水温度 冷凍機のシミュレーション方法を記載する 1 台運転 kgco/h 冷却水温度 冷凍機 51kgCO/h 冷却水ポンプ 11kgCO/h 1 次ポンプ kgco/h 外気温度 外気湿度 台運転 5kgCO/h 冷却水温度 冷凍機 kgco/hx 台 冷却水ポンプ 3kgCO/hx 台 負荷熱量 1 次ポンプ 1kgCO/hx 台 負荷流量 3 台運転 57kgCO/h 冷却水温度 冷凍機 15kgCO/hx3 台 冷却水ポンプ 3kgCO/hx3 台 1 次ポンプ 1kgCO/hx3 台 図. シミュレーションの流れ.3.3 冷却水温度のシミュレーション 冷凍機の は冷却水温度で大きく変わるため, CO 排出量のシミュレーションのためには冷却水温度 のシミュレーションが必要である 最小 CO 台数制御のシミュレーションは, 放熱量と 外気 冷却水のエンタルピ差が比例という冷却塔の特 性に則っている 例えば放熱量が一定のときは外気 冷却水のエンタルピ差が一定なので, 図 5 のように外 気エンタルピが下がれば冷却水温度も下がる.3 シミュレーション技術.3.1 利点最小 CO 台数制御のシミュレーション技術は, 制御のエンジニアリングと制御精度に優れている 冷凍機の 特性はメーカーや機種によって異なるので, 現場毎のエンジニアリングが必要である 最小 CO 台数制御のシミュレーションは, 設備機器の仕様書等に記載されている値を設定値としているので, 誰にでもエンジニアリングできるという利点がある また最小 CO 台数制御では, 冷凍機の運転台数毎の冷却水温度をシミュレーションしているので, 台数制 エンタルピ [kj/kg] 温度 [ ] 図 5. 冷却水温度のシミュレーション ( 外気エンタルピ変更 ) 3

azbil Technical Review 011 年 1 月発行号.3.1 で記載したように, 冷凍機の運転台数ごとの冷却水温度もシミュレーションしている 冷凍機が 1 台運転から 台運転になれば冷凍機 1 台あたりの熱量が半分になるので, 冷却塔への放熱量も半分になり, 外気 冷却水のエンタルピー差も半分でよい 結果として図 のように, 冷却水温度が下がる エンタルピ [kj/kg] 温度 [ ] 図. 冷却水温度のシミュレーション ( 放熱量変更 ).3. 冷凍機のシミュレーション冷凍機によるエネルギー使用量をシミュレーションするにあたり, 冷凍機負荷 ( 実測値 ) 冷却水温度( 前述のシミュレーション値 ) における を読み込み, 読み込んだ を用いてエネルギー使用量を算出する 冷却水温度としてシミュレーション値を用いるため, 台運転の方が高 と判断する頻度が多い この理由は運転台数毎に冷却水温度のシミュレーション値が異なり, に影響するためである 例えば図 7 のように, 冷却水温度一定条件でシミュレーションする場合は 1 台運転が高 だが, 図 のように冷却水温度シミュレーション値を使用した場合, 台運転の方が冷却水温度が低く高 と判断することができる 1 台運転時 台運転時冷凍機負荷 0%, 冷却水温度 5 冷凍機負荷 50%, 冷却水温度 5 7. 7.0 1 台運転時 台運転時 冷凍機負荷 0%, 冷却水温度 5 冷凍機負荷 50%, 冷却水温度 5 7. 7.0 0 1 0 1 1 1 1 0 1 0 1 5 1 5 9 9 3 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 図. 冷却水温度シミュレーション条件の冷凍機. 実績..1 冷却水温度のシミュレーション冷却水温度の実測値 シミュレーション値比較を図 9 に示す 実測値 シュミレーション値が精度良く一致しているほか, 放熱量増加時に冷却水温度が実測値 シミュレーション値ともに上昇しているため, 前述のシミュレーション手法が適切と判断できる.. 最小 CO 台数制御を評価することを目的に, 建物運用中の現場において最小 CO 台数制御 従来制御を切替運転し, 負荷率 を測定した 対象現場では等容量のインバータ機 台が設置されており,1 次ポンプ 冷却水ポンプともに変流量制御を導入済である インバータ機の高 特性は冷却水温度が低いときに限られるため, 検証は 月 ~11 月に行った 従来制御運転中の負荷率 測定値を図 に, 最小 CO 台数制御運転中の負荷率 測定値を図 11 に示す 従来制御運転中は高負荷率領域でも運転されていた 一方最小 CO 台数制御運転中は高負荷率領域での運転が無くなり, が高い範囲だけで運転することができた 冷却水温度 ( 実測値 ) 冷却水温度 ( シミュレーション値 ) 外気温度放熱量 0 1 1 0 1 1 1 0 1 0 1 1 5 5 9 9 3 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 図 7. 冷却水温度一定条件の冷凍機 温度 [ ] 放熱量 [ % ] 図 9. 冷却水温度の実測値 シミュレーション値

熱源最適化コントローラのためのシミュレーション技術開発 [ ] 負荷率 [% ] 図. 従来制御運転中の 測定値 3. 課題と解決方法省エネ対策による効果を把握するにあたり一番客観性が高い方法は, 検証対象期間の電力使用量と過去の使用量とを直接比較することである しかしこの手法には 3 つの課題がある [ 課題 1] 過去の電力計量値が必要比較のため, 制御導入前の電力計量値が必要である 制御導入前に電力メータが未設置の場合や新築の場合には, 電力量を比較できない PARACONDUCTOR では課題 1 を解決するため, 制御導入前のシミュレーション を実現し, 過去の電力計量値を把握出来ない場合でも省エネルギー効果検証を可能とした [ ] 負荷率 [% ] 図 11. 最小 CO 台数制御運転中の 測定値 3. 省エネルギー効果の可視化 3.1 背景山武がこれまで提案してきた省エネルギー対策として, 送水ポンプ ( 次ポンプ,1 次ポンプ, 冷却水ポンプ ) の変流量制御があげられる 省エネ対策実施後に効果検証を行うにあたり, ポンプの電力使用量を用いる場合が多い PARACONDUCTOR でも効果検証のため, ポンプの電力使用量をグラフ表示し, 制御導入前 制御導入後の電力量を比較している 省エネ導入前電力量省エネ導入後電力量図 1. 省エネルギー効果のイメージ [ 課題 ] 負荷の増減に左右されやすい空調負荷によるエネルギー使用量は負荷の増減に左右されるため, 過去との比較では省エネルギー効果を把握し難い場合が多い 一般的にポンプ変流量制御による省エネルギー制御による効果は ~ 50% 程度である 一方猛暑 / 冷夏の影響でエネルギー使用量は最大 15% 増減するため 省エネルギー制御による効果を把握できない場合が多い PARACONDUCNTOR の 制御導入前のシミュレーション は, 制御導入後の負荷にもとづき導入前電力をシミュレーションするため, 負荷の増減に左右されない省エネルギー効果を把握できる [ 課題 3] 省エネ制御導入後の電力計量値が必要比較のため, 電力メータ設置が必要である PARACONDUCTOR は メータ代替のシミュレーション を可能としたため, 電力メータを設置しなくても省エネ効果検証ができる 3.3 シミュレーション技術の紹介 3.3.1 制御導入前のシミュレーション山武は特に 次ポンプに対する省エネ制御を充実させており, 顧客のニーズに応じた省エネルギー制御手法を販売している 次ポンプの省エネ制御手法の一覧を下に示す 後に記載の制御ほど高機能で省エネルギー効果が大きい傾向にある 送水圧力一定制御 推定末端圧制御 末端差圧制御 末端差圧カスケード制御 流量計測機能付バルブによる末端差圧カスケード制御 流量計測機能付バルブによる最小差圧制御 VWV 制御 流量計測機能付バルブによる VWV 制御省エネ対策として, 商用ポンプへ省エネ制御を導入 5

azbil Technical Review 011 年 1 月発行号 するほか, 省エネ対策実施済の変流量ポンプをさらに高機能の制御へ変更する場合がある PARACONDUCTOR では省エネ制御導入前の条件を商用ポンプ 送水圧力一定制御より選択できるようにした < 制御導入前が商用ポンプの場合 > 商用ポンプ電力量のシミュレーションでは, ポンプ 1 台あたりの電力量を一定とみなし, 運転台数分の電力量を算出する < 制御導入前が送水圧力一定制御の場合 > 制御導入前の条件として, 送水圧力一定制御を想定する 送水圧力一定制御を想定したシミュレーションの考え方は, 下記のとおりである ポンプの試験成績書より Q-H 特性をを参照し, 送水圧力一定制御を想定したインバータ周波数を算出する このとき送水圧力一定制御の運転点は, 負荷流量の計測値と送水圧力一定制御を想定した圧力設定値より決定する 図 13 に概要を示す 次に同じ試験成績書の Q-E 特性を参照し, 上記インバータ周波数における電力を算出する 図 1 に概要を示す Q H 特性 3.3. メータ代替のシミュレーション省エネルギー対策による効果を把握するためには, 電力使用量の把握が不可欠である PARACONDUCTOR の 省エネルギー効果の可視化 はポンプに電力メータを設置する代わりに, 制御用の監視 出力値にもとづき電力量をシミュレーションすることができる シミュレーションの概要を記載する < 冷却水ポンプ> 配管抵抗が一定の条件においては, ポンプ電力はインバータ出力の 3 乗に比例する 冷却水系統の配管抵抗は変化しないため, 理論的には電力はインバータ周波数の 3 乗に比例する ただしデータを分析した結果, 実際は電力とインバータ周波数の 3 乗は一致しないことが明らかになった 一致しない原因として, 冷却塔分の静水頭による影響があり配管抵抗一定とみなせないこと, また低負荷時ほどインバータ損失の割合が大きくなることがあげられる しかしインバータ周波数と電力は強い相関をもつことは明らかなので, 試運転作業において電力もしくは電流値を計測し, 実際の電力特性にあわせて電力パラメータを設定することで, 電力メータの代替として使用することができる 設定 運転点 負荷流量 送水圧力一定時を想定したインバータ周波数 流量 電力 [kw] 図 13. 送水圧力一定制御のインバータ周波数 電力 Q E 特性 インバータ出力 [%] 図 15. 冷却水ポンプ インバータ周波数の 3 乗を点線で表示した 上記インバータ周波数における電力負荷流量流量図 1. 送水圧力一定制御の電力 < 次ポンプ> 次ポンプは送水系統に制御弁が設置されているため, 冷却水ポンプのように配管抵抗を一定とみなすことができない そこで試験成績書にもとづき負荷流量 インバーター周波数を用いたシミュレーションを行う 試験成績書の Q-E 特性を参照し, 負荷流量とインバータ周波数のときの電力使用量を算出する

熱源最適化コントローラのためのシミュレーション技術開発 電力 Q E 特性 インバータ周波数における電力 負荷流量 流量 図 1. 次ポンプ電力の算出. おわりに 空調 熱源設備は建物ごとに設計されており, 多種多様な構成になっている 山武は各設備に対する省エネ制御を実現しており, ほとんどの建物に省エネルギー制御を提案できる 今後は複数設備の制御に取り組み, 省エネ制御をさらに拡充したい たとえばある設備と他設備とで省エネのトレードオフがある場合, 他設備もあわせた省エネ制御を実現すれば, 省エネ効果を大きくできる また設備設計動向への対応も必要である 例えば, 近年複数冷凍機で冷却塔を共有する建物が増えている 共有冷却塔の設備においては, 冷凍機の運転台数に対して冷却塔の運転台数が多い特徴があるため, 冷却塔の容量制御による省エネ効果が見込まれる 複数設備や共有冷却塔の省エネ制御においては制御対象設備が増えるため, 開発 ( スタディー ), 営業 ( 省エネ効果試算 ) においてシミュレーション技術を活用し, 精度の高い省エネ制御を提供できるようにしたい 1 (Caefficient of Performance) 冷凍機の効率を示す ( 生成熱量 投入熱量 ) で計算する < 商標 > PARACONDUCTOR は, 株式会社山武の商標です PARAMATRIX は, 株式会社山武の商標です < 著者所属 > 松尾 裕子 ビルシステムカンパニー開発本部開発 1 部コントローラソフトウェア 1 グループ 7