責任ある研究活動の 推進と研究評価

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る として 平成 20 年 12 月に公表された 規制改革推進のための第 3 次答申 において 医療機器開発の円滑化の観点から 薬事法の適用範囲の明確化を図るためのガイドラインを作成すべきであると提言したところである 今般 薬事法の適用に関する判断の透明性 予見可能性の向上を図るため 臨床研究におい

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3 参照基準次に掲げる基準は この基準に引用される限りにおいて この基準の一部となる - プライバシーマーク付与適格性審査実施規程 - プライバシーマーク制度における欠格事項及び判断基準 (JIPDEC) 4 一般要求事項 4.1 組織 審査業務の独立性審査機関は 役員の構成又は審査業務

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Transcription:

責任ある研究活動の 推進と研究評価 大阪大学全学教育推進機構中村征樹

研究不正への対応 : 現状 文部科学省新ガイドライン 研究活動の不正行為への対応等に関するガイドライン (2014/8/26 文部科学大臣決定 ) これまで不正行為の防止に係る対応が専ら個々の研究者の自己規律と責任のみに委ねられている側面が強かったことが考えられる 今後は 研究者自身の規律や科学コミュニティの自律を基本としながらも 研究機関が責任を持って不正行為の防止に関わることにより 不正行為が起こりにくい環境がつくられるよう対応の強化を図る必要がある 特に 研究機関において 組織としての責任体制の確立による管理責任の明確化や不正行為を事前に防止する取組を推進すべきである 大学等の研究機関の責任 組織としての責任体制の確立 不正行為を抑止する環境整備 研究倫理教育の実施による研究者倫理の向上 一定期間の研究データの保存 開示 不正事案発生後の告発受付 調査等の対応 これで十分なのか?

研究不正とは? ( 文科省新ガイドライン ) 捏造 (Fabrication) < 特定不正行為 > 存在しないデータ 研究結果等を作成すること 改ざん (Falsification) 研究資料 機器 過程を変更する操作を行い データ 研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること 盗用 (Plagiarism) 他の研究者のアイディア 分析 解析方法 データ 研究結果 論文又は用語を 当該研究者の了解もしくは適切な表示なく流用すること そのほかにも 二重投稿 不適切なオーサーシップ など 3

不正行為 の定義をめぐる議論 米国科学アカデミー 米国実験生物学会連合 捏造改ざん盗用 FFP その他 受容されている研究慣行からの深刻な逸脱行為 NIH NSF 新規な あるいは非正統的な研究手法を使っただけで研究不正と申し立てられる可能性 正式な定義にあいまいな用語を使うことは 過度な誇大解釈を招きうる (NAS, Responsible Science, 1992) 2000 年 連邦規律 : 不正行為を FFP に限定 4

好ましくない研究行為 (Questionable Research Practices) 研究活動における伝統的価値観を侵害する行為であり 研究プロセスに有害な影響を与える行為 重要な研究データを 一定期間 保管しないこと 研究記録の不適切な管理 論文著者の記載における問題 研究試料 研究データの提供拒絶 研究成果の意義を過大視させるような不適切な統計等の利用 不十分な研究指導 学生の搾取 予備段階の研究成果の不誠実な発表 ( とくにメディアに対して ) NAS, Responsible Science, 1992 5

研究不正への対応から責任ある研究活動 (RCR) の促進へ 責任ある研究活動 好ましくない研究行為 狭義の研究不正 RCR: Responsible Conduct of Research RCR を促進する環境報酬システム教育プロセス 不正の告発 対応

研究行為と研究環境 1 手続き的不公正の認識と不正行為 公正に待遇されていない という認識が misbehavior を増加 ID = intrinsic drive ( 内発的動因 ) 手続き的公正 (procedural justice) bias suppression, correctability, information accuracy, representation, ethicality, Martinson, Anderson and Crain(2006), Journal of Empirical Research on Human Research Ethics, 1.

参考 ) Top 10 misbehavior 過去 3 年間に行った研究不正 不適切な行為 ( 米国, 自己申告, n=3,247) 中堅若手 1. 改ざん あるいは研究データに 手を加えた 0.2 0.5 2. ヒト被験者保護に関する重大な不備 0.3 0.4 3. 自らの研究に基づく製品の製造企業との関係を適切に開示しなかった 0.4 0.3 4. 学生 被験者 依頼人とのあいだに問題あると解釈されうる関係をもった 1.3 1.4 5. 他の研究者のアイディアを 本人の許可をえることなく あるいは名前を言及せずに使用した 1.7 1.0 6. 研究において秘匿すべき情報を許可なく利用した 2.4 0.8 7. みずからの先行研究と矛盾するデータを開示しなかった 6.5 5.3 8. ヒト被験者保護に関する軽微な不備 ( インフォームドコンセント 秘密保持など ) 9.0 6.0 9. 他人の不備のあるデータや懸念あるデータ解釈を見過ごした 12.2 12.8 10. 研究資金源からのプレッシャーによって 研究のデザイン 方法 結果を変更した 20.6 9.5 Martinson, Anderson and Crain(2006), Journal of Empirical Research on Human Research Ethics, 1.

研究行為と研究環境 2 分配的不公正の認識と不正行為 公正な報酬を受けていない という認識が misbehavior を増加 公正な報酬システム (reward system) 分配的不公正 (distributive injustice) E( 外部から求められる労力 [ の認識 ])/R( 外部からの報酬 [ の認識 ]) Martinson, Anderson and Crain(2006), Journal of Empirical Research on Human Research Ethics, 1.

Research Waste 問いは臨床医や患者に関係があるか? プライオリティの低い問いが扱われている 重要なアウトカムが評価されていない 研究アジェンダの設定に臨床医 患者が関与していない 研究のデザインや手法は適切か? 半分以上の研究が 既存のエビデンスの体系的なレビューを踏まえることなく設計されている 半分以上の研究が バイアスを減少させるための適切なステップを踏んでいない すべての研究結果が論文発表されているか? 半分以上の研究が部分的にしか論文発表されていない のぞましくない結果の研究が不十分にしか報告されておらずバイアスをもたらしている It has been estimated that 85% of research is wasted, usually because it asks the wrong questions, is badly designed, not published or poorly reported. http://researchwaste.net/ 報告は偏っておらず利用可能なものか? 治験の30% 以上が不十分にしか記述されていない 計画された研究の5 0% 以上がアウトカムについて報告されていない ほとんどの最新の研究が他のエビデンスの体系的な評価を踏まえて解釈されたものになっていない Research Waste Iain Chalmers, Paul Glasziou, Avoidable waste in the production and reporting of research evidence Lancet, Volume 374(2009), 9683: 86 89. 10

責任ある研究活動を促進する評価をめぐる論点 ScienceTalks / 第 4 回研究公正国際会議 (WCRI2015) での議論から 新しいことを次々に生み出していくこと (something-new-ism) が偏重され すでに生み出された知識をチェックしていくことが軽視されている 質の高い研究を担保する評価システムの構築 再現実験 追試の評価 研究プロトコルの公表を評価 negative results の発表を評価 データの共有を評価 インパクトファクターに代わる評価システム 研究者間の評判を組み込んだ評価システム ( あのラボの成果はあやしい 信頼できる )

問い : 責任ある研究活動の視点を踏まえると人文社会科学系における研究評価はどのように考えられるのか?

参考 過去 3 年間に行った研究不正 不適切な行為 ( 米国, 自己申告, n=3,247) 中堅若手 改ざん あるいは研究データに 手を加えた 0.2 0.5 ヒト被験者保護に関する重大な不備 0.3 0.4 自らの研究に基づく製品の製造企業との関係を適切に開示しなかった 0.4 0.3 学生 被験者 依頼人とのあいだに問題あると解釈されうる関係をもった 1.3 1.4 他の研究者のアイディアを 本人の許可をえることなく あるいは名前を言及せずに使用した 1.7 1.0 研究において秘匿すべき情報を許可なく利用した 2.4 0.8 みずからの先行研究と矛盾するデータを開示しなかった 6.5 5.3 ヒト被験者保護に関する軽微な不備 ( インフォームドコンセント 秘密保持など ) 9.0 6.0 他人の不備のあるデータや懸念あるデータ解釈を見過ごした 12.2 12.8 研究資金配分機関からの圧力によって 研究のデザイン 方法 結果を変更した 20.6 9.5 同一のデータや研究成果を複数の論文で発表した 5.9 3.4 不適切なかたちで論文著者を記載した 12.3 7.4 論文や研究計画書で実験方法の詳細を記載しなかった 12.4 8.9 不適切 不十分な実験デザイン 14.6 12.2 不正確だという直感だけで 観察結果やデータを分析から除外した 14.3 16.5 研究プロジェクトに関する記録の不適切な管理 27.7 27.3 Source : Martinson et al.(2005), Nature, 737-738