台風の科学 The Inside Story 横浜国立大学教育人間科学部筆保弘徳
最強で巨大な渦
1. 台風の正体は? 台風の科学のラインナップ 日本と世界の定義地球上最強かつ長寿の渦台風は長距離ランナー 2. 台風の構造は? 絶妙なバランス感覚 長寿の秘訣 3. 誕生の謎は? 台風発生の条件渦のルーツ
1 台風の正体は?
衛星雲画像で見る台風と温帯低気圧 温帯低気圧前線上の雲 台風 : 軸対称構造
天気図で見る台風と温帯低気圧 温帯低気圧 台風
台風の定義 最大風速気象庁分類国際分類 17.2m/s 未満熱帯低気圧 Tropical depression 17.2m/s~24.5m/s 台風 Tropical storm 24.5m/s~32.6m/s 32.7m/s 以上 地域ごとの呼び名 Severe tropical storm Typhoon (Hurricane/Tropical cyclone)
台風の一生 (MOVIE)
台風の寿命 台風の平均寿命約 5 日 2010 年 14 号 台風 14 号の寿命 5 日 31 現象の寿命 10 日 30 30 日 12 時温低化 29 長寿の渦巻き 27 28 26 25 23 22 21 24 24 日 18 時発生
台風の一生 台風の平均寿命約 5 日 2010 年 14 号 台風 14 号の寿命 5 日 m/s 60 50 40 30 20 10 現象の寿命 10 日 成熟期最大風速発生期 発達期 0 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 日 衰弱期 衰弱期成熟期発達期発生期
台風の一生 発生期 2010 年 14 号 バンド状 m/s 60 50 40 30 20 10 成熟期最大風速発生期 発達期 0 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 日 衰弱期 丸っぽく衰弱期なる成熟期発達期発生期
渦を巻き出す 台風の一生 発達期 2010 年 14 号 中心が活発な雲域 衰弱期 m/s 60 50 40 30 20 10 成熟期最大風速発生期 発達期 0 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 日 衰弱期 成熟期 発達期 発生期
台風の一生 成熟期 2010 年 14 号 眼 壁雲 衰弱期 m/s 60 50 40 30 20 10 成熟期最大風速発生期 発達期 0 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 日 衰弱期 成熟期 発達期 発生期
台風の一生 衰弱期 2010年14号 消滅 衰弱期 まとまった雲 域が崩れる 成熟期 60 最大風速 50 m/s 40 成熟期 人間と同じ生涯 30 20 10 0 発達期 発生期 発生期 発達期 衰弱期 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 日
台風の動き?
台風が動く理由 台風は3000~5000kmも移動するなぜ動くのか? 風任せの帆船偏西風 台風の月別の主な経路 長距離ランナー 基本的には 台風周辺の大規模な流れによって動く 太平洋高気圧 季節風 偏東風 気象庁 HP より
台風が動く理由 台風は3000~5000kmも移動するなぜ動くのか? 長距離ランナー 基本的には 台風周辺の大規模な流れによって動く 風任せの帆船 台風の移動と中層の風 川に浮かべられた葉っぱの流れと同じ 上野 山口 (2011)
台風の個性?
台風の個性 サイズや大きさでみても 個性的 弱くて 大きい T0222 IR 2002/10/12 02UTC 985hPa R830km T0422 IR 2004/10/8 03UTC 920hPa R410km 強くて 小さい 強くて 大きい T0514 IR 2005/9/3 03UTC 925hPa R830km
気象庁の定義 台風の強さ 大きさ 強さ 最大風速 (10 分間平均値 ) ( 表現しない ) 33m/s 未満 強い 33m/s 以上 44m/s 未満 非常に強い 44m/s 以上 54m/s 未満 猛烈な 54m/s 以上 大きさ 風速 15m/s 以上の平均半径 ( 表現しない ) 500km 未満 大型 ( 大きい ) 500km 以上 800km 未満 超大型 ( 非常に大きい ) 800km 以上
強度とサイズの関係 太陽活動と台風の特徴で関係があるのか? 台風の特徴 : 台風強度と台風サイズ 台風中心 外 半径 影響半径 = サイズ 気圧 中心気圧 = 強度
強度とサイズの関係 台風強度とサイズの関係 1020 1000 北西太平洋の台風 866(1977 2010) 弱くて大きい 台風強度 中心気圧 (hpa) 980 960 940 920 900 強くて小さい 強くて大きい 相関 = 0.56 880 0 200 400 600 800 強風域 (15m/s) 半径 (km) 台風サイズ
2 台風の構造は?
静止気象衛星観測 観測結果からみた台風の構造 熱帯降雨観測衛星 (TRMM) レーダー観測 飛行機観測 観測結果は完全にそろっていない 宇宙航空研究開発機構 HPより 数値シミュレーション結果
熱帯低気圧 (TC) の構造 最大風速 (ms -1 ) symonsez.wordpress.com 発生過程 風速 気圧 発達過程 ( 急発達過程 ) 定常状態 時間 25 急発達過程 (RI) 散逸過程 http://www.taxfoundation.org/blog/show/247 16.html Sitkowski and Barnes (2010) 中心気圧 (hpa)
数値シミュレーション (MOVIE)
3 台風の発達メカニズム
発達理論 (Ooyama 1963; Charney and Eliassen 1964) 水蒸気の凝結 空気塊を加熱 温かい= 軽い空気塊 上昇 28
台風の発達メカニズム 渦と雲の絆 渦の強化 下層風速の発達最下層の内向きの風暖気核の形成気圧低下 積乱雲の活発化 周囲の渦や積乱雲を壊そうとする力に打ち勝つ 台風は長寿
4 誕生の謎は?
台風の発生分布 北インド洋 (6%) 北西太平洋 (31%) 北東太平洋 (19%) 北大西洋 (14%) 南インド洋 (18%) 南太平洋 (12%) 地球上で発生する年間台風 北西太平洋で発生する年間台風 およそ 80 個 27 個 北西太平洋は極上のゆりかご
台風の発生分布 北インド洋 (6%) 北西太平洋 (31%) 北東太平洋 (19%) 南インド洋 (18%) 台風発生環境場の条件 南太平洋 (12%) 海面水温が 26~27 度以上 北大西洋 (14%) コリオリ力があること 対流圏中層が湿っていること 鉛直シアが小さい 大気の状態が不安定であること 対流圏下層では低気圧性回転があること
台風発生の環境場の条件 熱力学的条件 海面水温が26~27 度以上 対流圏中層が湿っていること 力学的条件 コリオリ力があること 鉛直シアが小さい 大気の状態が不安定であること 対流圏下層では低気圧性回転があること
台風発生のトリガー 北インド洋 (6%) MJO ITCZ ER MRG モンスーン 北西太平洋 (31%) モンスーン 偏東風波動 ITCZ MRG ER MJO 北東太平洋 (19%) 偏東風波動 ITCZ MRG ER MJO 南インド洋 (18%) MJO ITCZ ER MRG モンスーン 南太平洋 (12%) MJO モンスーン SPCZ MRG ER 北大西洋 (14%) TT 偏東風波動 AEJ SAL MRG ER
台風発生の謎 台風発生条件 海面水温が26~27 度以上 コリオリ力があること 対流圏下層では低気圧性回転があること 鉛直シアが小さい 大気の状態が不安定であること 対流圏中層が湿っていること 台風発生
台風発生 非発生 (MOVIE)
19 01Z 21 07Z 24 19Z TC13 TC14 TD15 TC14 TC13 TD15 19 19Z TD15 22 19Z 25 19Z 20 07Z TC14 23 19Z 26 07Z m/s 60 40 20 最大風速 TC14 TD15 0 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 27 07Z
台風発生の謎 台風発生条件 海面水温が26~27 度以上 コリオリ力があること 対流圏下層では低気圧性回転があること 鉛直シアが小さい 大気の状態が不安定であること 対流圏中層が湿っていること 発生メカニズム 台風発生 TC14 TD15 台風にまで発生しない
台風の発生分布 北インド洋 (6%) 北西太平洋 (31%) 北東太平洋 (19%) 北大西洋 (14%) 南インド洋 (18%) 南太平洋 (12%) 地球上で発生する年間台風の卵 地球上で発生する年間台風 北西太平洋で発生する年間台風 およそ数千個 80 個およそ 27 個 エリート
過去の台風発生の研究 台風発生パターン VS 台風が発生しないパターン 気象衛星画像を用いた過去 (1992 年 ) の研究 初期段階にできる渦が鍵を握る!
最近の研究で分かってきた発生メカニズムの仮説
最近の研究で分かってきた発生メカニズムの仮説
最近の研究で分かってきた発生メカニズムの仮説
最近の研究で分かってきた発生メカニズムの仮説 台風発生を導く渦は なぜできるのか? 積乱雲の群れ! 今後の研究で証明!
最強で巨大な渦 強い熱帯低気圧 長寿の渦巻き 人間と同じ生涯 長距離ランナー 帆船川に浮かべられた葉っぱの流れと同じ 動く発電所 個性的 渦と雲の絆が長寿の秘訣 エリート 空飛ぶ給水車 積乱雲の群れで発生 上層よりも下層の方が強い渦