本紙の全部又は一部の複写 複製 転載 翻訳並びに磁気又は光記録媒体への 等を禁じます これらの許諾については 電気協同研究会までご照会ください 資料 5 電気協同研究第 72 巻第 3 号 配電自動化技術の高度化 平成 28 年 10 発刊 一般社団法人電気協同研究会 (ETRA) 配電 動化技術の 度化専 委員会
はじめに 1 研究背景と目的 ( 設 趣旨書より抜粋 ) 配電自動化システムは昭和 50 年代後半から供給信頼度の向上や業務効率化を主 的に導入され, 配電系統の電 品質の維持や事故時の停電範囲の縮小, 復旧時間の短縮化による供給信頼度の維持に大きく寄与している 一方で, 今後, 太陽光発電などの分散型電源の 量連系によって配電系統の潮流や電圧が急峻且つ きく変化し, 系統運 管理が困難になってくるおそれがある また, 昨今, 電 の安定供給に対する社会的要求レベルも高まっており, 配電系統にセンサ開閉器やスマートメータなどを順次導入することで系統状態をより詳細に把握できつつあるものの, これらの取得情報を効率的且つ効果的に系統運 へ活 する技術は確 されていない現状にある そこで, 配電自動化システムの系統監視 制御機能および事故対応機能の 度化について検討を った 研究期間 研究体制 平成 26 年 2 平成 28 年 3 月 ( 約 2 年間 ) 学識経験者, 電 会社, 配電 動化システムメーカ, 電 中央研究所他, 総勢 60 名の体制で実施 研究概要 1. 配電自動化システムの現状 課題の調査 2. 電 品質に関する機能の 度化検討 3. 供給信頼度に関する機能の 度化検討
1. 配電自動化システムの現状と課題
配電自動化システムとは 配電自動化システムの概要 配電系統における電 品質や供給信頼度の維持 向上を目的として 通信網を介して各機器により配電系統の監視や制御 ( 系統切替等 ) を うシステム 発電所 基幹系変電所 77kV 配電自動化システムの監視 制御対象範囲 (33 6.6kV) 配電用変電所 開閉器 2 LRT: 負荷時タップ切換変圧器 : 高圧自動電圧制御器 原 揚水 特高需要家 特高分散型電源 LRT 変電所子局 開閉器子局 動化伝送路 配電自動化システム 配電自動化システムに搭載される機能 系統監視 制御機能 変電所や配電線路の監視 制御 監視 制御の実績記録機能 事故検出 復旧機能 事故時自動融通 事故区間特定 ( 時限順送方式 ) 事故時停止 運用支援機能 系統計画 運用支援 他システムとの情報連携 電 会社事業所 制御 監視 配電用変電所 : 高圧線 : 開閉器 ( 投入 ) : 開閉器 ( 開放 ) [ 監視 ] 開閉器の 切情報 ( 状態変化 ) 変電所 開閉器の電圧 電流等情報 事故発生 [ 制御 ] 事業所からの指令で遠隔にて開閉器を 切制御 隣接配電線へ 配電用変電所
配電自動化システムの機能 3 現 の配電 動化システムの機能について各社へアンケートを い, 以下のとおり整理 変電所 配電系統監視 機器状態, 電圧電流, 過負荷などの監視, 系統状態の把握 監視 制御機能 変電所機器 配電機器制御 変電所内 CB の制御や再閉路の設定, 動開閉器の 切制御, 局の設定 配電系統や機器の監視, 計測, 制御を う機能 記録機能 変電所や配電系統の状態変化記録, 負荷記録, 電圧電流記録 事故時自動逆送 配電線事故検出, 事故復旧 順 動作成, 健全停電区間への 動逆送実 配電自動化システム 事故検出 復旧機能 配電線路事故発 を検出し, 健全停電区間へ 動的に逆送を う機能 事故区間特定事故時再送電停止 瞬時試送電, 微地絡 間欠地絡発生区間特定支援, 断線検出 災害時などの再閉路 動ロック, 配電線事故時の自動逆送停止 系統運用支援 作業切替 順および過負荷解消 順作成 実, 系統計画 援, 事故対応訓練 運用支援機能 他システム連携 他事業所配電自動化システム連携, 上位系システム連携, 配電業務系システム連携 高圧系統運用業務の支援, 他システム連携, 親局システムの運転機能 システム運転関連 親局システム運転 異常監視, バックアップ, 時刻監視, 代 運転
配電自動化システムの構成 事業所に設置してある配電自動化親局および現場に設置してある自動開閉器 子局等から構成 1 親局から通信線を介して配電系統の 動開閉器, 局の遠隔監視 制御を う 2 上位系 ( 配電用変電所 ) の FCB の遠隔監視 制御を う 3 配電業務系システム等と連携し, 停電情報の公開等といった事業所の業務を支援する 4 各電 会社では システム処理の性能向上が進められている 配電用変電所 TC 保護 Ry LRT FCB 業務用端末 制御所 他システムとの連携 配電業務系システム 中央装置 操作卓 配電系統 拠点事業所 マスタ DB 配電自動化システム TC 開閉器 開閉器子局 動化伝送路 小規模事業所 TC 操作卓 複数の電 会社では センサ開閉器の順次導入が進められている 中央装置 開閉器 開閉器子局 各電 会社では メタルや配電搬送方式を適用 複数の電 会社では 各機能の 度化に向け 開閉器箇所での計測情報や制御性能向上のため 動化伝送路の 速化も進められようとしている
開閉器および子局の変遷 ( 導入ステップ ) 5 フェーズ Ⅰ フェーズ Ⅱ フェーズ Ⅲ 自動開閉器 自動開閉器 センサ開閉器 イメージ リレー 配電自動化システム 子局 配電自動化システム 子局 通信線 通信線 時限順送 通信機能 3 相電圧 3 線電流計測零相電圧 電流検出
配電 動化システムによる停電復旧概要 6 事故発 時の配電線路の状態 説明 平常時 配電線は 動開閉器により複数区間(1 6) 入 1 2 3 4 5 6 に分割されている フェーズ Ⅰ フェーズ Ⅱ 事故発生時 入 切 1 2 3 4 5 6 再閉路時 切 入 1 2 3 4 5 6 変電所リレー再動作時 入 切 1 2 3 4 5 6 ロック 再々閉路時 保守員が現地で送電 切 入 1 2 3 4 5 6 ロック 健全停電区間 健全停電区間への送電 ( 自動化システムによる送電 ) 入 1 2 3 4 5 6 ロック 遠隔制御 切 入 通信線 変電所リレー動作に伴い FCB が開放する 各自動開閉器が開放する 変電所 FCB が再投入する 各自動開閉器が順次投入し 事故点に送電する 事故点への送電後 再び変電所リレーが動作し FCB が開放する これにより 3 が事故区間と特定できる 事故区間 (3) の電源側自動開閉器はロック状態 ( 切 ) となる 事故区間 (3) の電源側区間は 自動的に送電される 健全停電区間は 現地で保守員が送電する 事故区間より負荷側の健全停電区間を 事業所から遠隔で送電する
配電自動化システムを取り巻く課題 7 電 品質 供給信頼度 分散型電源の連系量累積 ( 万 kw) 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 (1000kW 未満 ) 地熱 バイオマス 太陽光 住宅 太陽光 住宅 339 409 472 576 638 690 769 896 余剰電 買取制度 1261 1053 固定価格買取制度 約 2,991 1980 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 1 需要家あたりの停電時間 ( 分 ) 120 100 80 60 40 20 0 配電自動化システムの導入開始 東日本大震災の影響 台風等の影響 S41 S45 S50 S55 S60 H1 H5 H10 H15 H20 H25 分散型電源の連系は年々急激に増加傾向 停電時間は 近年で微増傾向 分散型電源 量連系時の電 品質に対応した系統監視 制御機能の 度化について検証 設備の性能向上による事故対応機能の 度化の可能性について検証
2. 電 品質に関する現状と システム機能の 度化検討
電 品質に関する現状 8 目的 分散型電源の中で連系量が最も多い太陽光発電 (PV) に焦点を当て PV 量連系に対する電 品質維持 向上を目的として現 の電圧監視 制御の 度化や新たな電圧監視 制御機能を検討するもの PV 連系なしの場合 PV 連系ありの場合 変電所から系統末端に向かって 向の潮流であり 電圧は降下 発電によって潮流は双 向に変化し 電圧は上昇 激しく変動 配電用変電所 潮流 ( 順 向 ) 潮流 ( 向が変化 ) PV が 量連系されると 電圧上昇や変動が生じ 適切な電圧監視 制御が困難となるおそれあり 系統電圧 ( 低圧換算 ) 消費消費 107V 適正電圧範囲 ( ) 95V 変電所からの距離 電気事業法第 26 条 電気事業法施 規則第 44 条 発電 消費 発電 消費 日射により電圧上昇 変動 変電所からの距離 電圧上昇や急峻且つ大きな電圧変動に対応すべく 電圧監視 制御機能の 度化が必要
電 品質に関する課題とシステム機能の 度化検討 現 の電圧監視 制御 (LDC 方式 ) の課題 変電所から負荷側への電 供給すること ( 一方向 ) を前提に電圧制御を っている 重 軽負荷時の 2 断面のみの系統情報を基に LRT の整定値を算出 設定し 律運 している 電流 LRT 通過電流に応じ電圧制御 電圧 107V 変電所送出電圧 95V 逆潮流 ( 電圧上昇 ) に対応できていない 配電線 A 配電線 B 配電線 A 配電線 B 通過電流に応じ電圧制御 太陽光発電 適切な電圧制御ができない 変電所からの距離 (1) 律電圧制御 法 1( 現 機器の整定 度化 ) 逆潮流に対応 LRT センサ SW 系統状態の情報収集 中央装置 ( オフラインで整定値算出 ) TVR: サイリスタ式電圧制御機器 SVC: 無効電 補償装置 逆潮流に対応 LRT 制御 TVR 制御系統状態の情報収集 中央装置 ( オンラインで 系統監視 タップ制御 ) センサ SW (2) 律電圧制御 法 2 ( 新型機器 TVR/SVC 設置 ) 急峻な電圧変動にも対応 (3) 集中電圧監視 制御手法 ( 制御対象 :LRT ) 全体最適を考慮し 逆潮流 急峻な電圧変動に対応 SVC 9 センサ SW の計測情報を用いて逆潮流 多断 を加味した整定値を算出し LRT に設定 LRT 系統状態の情報収集 TVR SVC 中央装置 ( オフラインで整定値算出 ) をTVRに吊り替え もしくは SVCを追加設置 センサ SW の計測情報をリアルタイムに取得 ( 系統監視 ) し LRT を集中遠隔制御
評価結果 評価条件 過去電協研 ( 第 37 巻 3 号 ) で作成された地域別の計 15 の配電線モデルから 地域別に 4 つの配電線モデル ( 住宅 1 工場 1 農山村 2) を選定し これらを 2 つずつ組合せることで計 4 つのバンク系統モデルパターンを作成 より過酷条件で各手法を検証すべく 上記の各パターンの片方の配電線に PV を連系し 連系量を変化させ検証 ( 農山村配電線 :2MW 1 箇所 住宅配電線 : 住宅 PV 計 1.2/2.4/3.6/4.8MW) 各手法に対し 電中研で開発した解析システムを用いて 各地点における適正電圧範囲 (6720 6350V) からの逸脱量 1 分 30 分平均値で評価 ( 集中電圧監視 制御手法は センサ開閉器の情報取得周期も変化させ評価 ) 系統モデル 評価結果例 LRT 上段 : 農山村 1 配電線 (2MW 1 箇所の PV あり ) 最遠端亘 19.9km 下段 : 農山村 2 配電線 (PV なし ) 最遠端亘 19.0km 亘 配電線にて電圧管理が困難な系統 ( 計 4 台設置 系統末端に山頂負荷ありを想定 ) 上段に計 1,700kW 下段に計 2,600kW の高低圧負荷あり PV は快晴 / 晴天 / 雨天日の 3 日間ケースを検証 メガソーラ 2MW 逸脱量の割合 電圧監視 制御機能を段階的に 度化することで 制御効果は まり 各手法の有効性を確認 より高い制御効果を実現すべく 集中電圧監視 制御を適 する場合は 動化伝送路の 速化が必要 100% 95% 15% 10% 5% 0% 100.0% (16106) 現 手法 9.5% (1525) 整定新型機器 度化 (TVR SVC) 自律電圧制御 現 法の逸脱量を 100% とした場合の各手法の 1 分平均の逸脱量の割合グラフ ( ) は 3 間の逸脱量合計値 [V min] 新型機器 集中電圧監視 制御は すべて TVR もしくは SVC 設置の平均値 1.1% (177) 現 伝送路で実現可能 42.6% (6860) 取得周期 300 秒 6.7% (1072) 0.0% (0) 取得周期 30 秒 取得周期 1 秒 集中電圧監視 制御 速伝送路要 10
3. 供給信頼度に関する現状と システム機能の 度化検討
供給信頼度に関する現状とシステム機能の 度化検討 11 目的 事故 断線対応の 度化検討として 劣化設備の増加等による事故 断線発 状況を調査し 事故停電時間の短縮を目的とした現 の事故 断線検出の 度化技術および事故点標定等の事故対応技術を検討するもの 検証試験 事故 断線検出の 度化技術および事故点標定等の事故対応技術の 度化について検討を うため 電 中央研究所赤城試験センターの模擬配電線を使用し 事故点標定および事故原因推定機能等の検証試験を実施 各機能イメージ 事故点標定機能とは 配電線事故発生時に センサ開閉器で計測された零相電圧 電流値 時間等から発 位置を推定する機能 事故原因推定機能とは 配電線事故発生時に センサ開閉器で計測された零相電圧 電流波形等の時間推移様相から 発生原因を推定する機能 各波形の比較分析により発生位置 蓄積された波形との照合により原因推定 < 標定 原因推定イメージ > 各波形の 上り時間差等 波形分析 f 比較 照合 時間差 蓄積データ ケーブル不良 鳥獣接触 樹木接触 f f f 配電自動化システム 連携 他システム 事業所 中央装置 計測 保護 Ry 動化伝送路 ( 速化 ) LRT 配電用変電所 計測 センサ開閉器 計測 事故波形 計測 ON OFF 地絡電流 発生位置や原因を把握し 現場出動 到着可能 事故発生 地絡電流 復旧 事故波形 計測 断線発生 計測
事故点標定の 度化 12 事故点標定検証結果 手法結果概要実運用への適用課題 地絡サージ到達時間差解析方式 コンデンサ放電電流 ち上り 式 概ね100m 以内で標定可能 精度 : 数十 m 程度 適用範囲: 地絡抵抗 1000[Ω] 以下 概ね400m 以内で標定可能 精度 : 数 400m 程度 適用範囲: 地絡抵抗 100[Ω] 以下 高い計測周波数, 高速データ転送が必要 地絡兆候等の高抵抗事象への適 には更なる検討が必要 測定用コンデンサが必要 (2 箇所以上 ) 高抵抗事故や事故様相の変化などへ対応するためには更なる検討が必要 地絡電流共振周波数解析 式 概ね900m 以内で標定可能 精度 :200~900m 程度 適用範囲: 地絡抵抗 30[Ω] 以下 高速な周波数解析が必要 比較的低い抵抗値の事故への適用に限られる インピーダンス解析方式 地絡電流が きい系統で標定可能なケース有り 一般的な測定誤差を考慮すると ±3km 程度の標定誤差のおそれあり 精度な測定機器が必要 対地静電容量が さい系統への適 には更なる検討が必要 実運 への適 に向け 各 法の標定精度 適 範囲などが確認された
事故原因推定の 度化 13 事故原因推定検証結果 手法結果概要実運用への適用課題 ウェーブレット解析方式 樹木接触やケーブル地絡など各種事故様相毎に一定の傾向を確認 分類の細分化 : 従来の分類 (9 分類 ) に加え, 時間変化考慮による分類の細分化 (27 分類 ) が可能 精度向上のために, サンプルデータの追加蓄積等が必要 波形情報以外のデータの活用による 度化 波形微分方式 時間変化考慮した推定が困難 分類の細分化 : 現状以上の細分化が困難 波形情報以外のデータの活用による 度化 調波含有率 式 ウェーブレット解析と等価 分類の細分化 : 現状以上の細分化が困難 ウェーブレット解析と等価のため, 理論のみ検討 事故毎の成分の重複範囲が広く, 改良が必要 波形情報以外のデータの活用による 度化 時間的要素を追加した ウェーブレット解析 による事故分類にて一定の傾向が確認された
まとめ 14 1. 配電自動化システムの現状調査 [ 現状 ] 各電 会社では 今後 システム処理の性能向上 センサ SW の導入 自動化伝送路の高速化が進められる [ 課題 ] 分散型電源 量連系時の電 品質 に対応した系統監視 制御機能の 度化 事故停電時間の短縮に向けた事故対応機能の 度化 2. 電 品質に関するシステム機能の 度化検討 分散型電源 量連系時の電 品質の維持 向上に対応すべく 電圧監視 制御機能の 度化について検証し 各手法の有効性を確認 自動化システムを活用した集中電圧 監視制御を適 する場合は 動化伝送路の 速化が必要 3. 供給信頼度に関するシステム機能の 度化検討 事故停電時間の短縮を目的として 現 の事故 断線検出の 度化技術および事故点標定等の事故対応技術について検証し 各 法について精度や適 範囲等の有効性を評価 実運 に向けた課題を抽出し 適 可能性について整理