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1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%

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ニセダイコンアブラムシ (Lipaphis erysimi) に関する病害虫リスクアナリシス報告書 平成 25 年 4 月 8 日横浜植物防疫所調査研究部

第 1 開始 ( ステージ1) 1 開始病害虫のリスクに応じて効果的かつ効率的な植物検疫を実施していくためには 検疫対象の有害動植物 ( 以下 検疫有害動植物 という ) を特定することが重要である また 国際植物防疫条約 ( 以下 IPPC という ) の規定においても 検疫有害動植物の明示及び病害虫リスクアナリシス ( 以下 リスクアナリシス という ) の結果に基づく病害虫リスク管理措置の実施を求めている このため 平成 23 年 3 月 7 日に植物防疫法施行規則 ( 昭和 25 年農林省令第 73 号 ) の改正等を行い 検疫有害動植物の定め方をネガティブリスト方式からポジティブリスト方式へ移行するとともに 病害虫のリスクに応じた適切な病害虫リスク管理措置を実施するため 輸出国において検疫措置の実施を求める枠組みを新設する等の見直しを実施した 引き続き 検疫有害動植物の特定及び適切な病害虫リスク管理措置の適用に係る検討のための技術的正当性の判断に資するため 我が国に侵入し まん延した場合に有用な植物に損害を与えるおそれが未だ明らかでない有害動植物について 順次 病害虫を開始点とするリスクアナリシスを実施している 今般 リストアップした対象の有害動植物について IPPCが作成した植物検疫措置に関する国際基準に基づく手順に沿ってリスクアナリシスを実施した 2 対象となる有害動植物リスクアナリシスの対象となる有害動植物名をニセダイコンアブラムシ (Lipaphis erysimi) と特定した 関連する学名等の情報は 生物学的情報 ( 別紙 ) に取りまとめた 3 対象となる経路リスクアナリシスの対象となる経路は 検討対象とする有害動植物の発生地域から輸入される寄主 宿主植物とする 関連する寄主 宿主植物等の情報は 生物学的情報 ( 別紙 ) に記載する 4 対象となる地域 リスクアナリシスを実施する地域を日本全域とした 5 開始の結論ニセダイコンアブラムシ (Lipaphis erysimi) を開始点とし 本種の発生地域から輸入される植物を経路とした日本全域を対象とする病害虫リスクアナリシスを開始する なお リスクアナリシスに必要な情報は 生物学的情報 ( 別紙 ) に記載する

第 2 病害虫リスク評価 ( ステージ2) 1 有害動植物の類別ステージ1で特定された有害動植物について 国内における発生及び公的防除の有無 定着及びまん延の可能性並びに経済的影響を及ぼす可能性について調査し 検疫有害動植物の定義内の基準を満たしているかどうかを検討する なお 検疫有害動植物の基準を満たしていない場合は それが判明した時点で評価を中止し病害虫のリスクは 無視できる とする (1) 有害動植物のアイデンティティア名称学名 :Lipaphis erysimi 和名 : ニセダイコンアブラムシイ分類目 :Hemiptera( カメムシ目 ) 科 :Aphididae( アブラムシ科 ) ウ系統等植物検疫上考慮すべき系統等が存在するとの情報は得られなかった エ他の有害動植物を媒介する能力日本未発生のウイルスである Nasturtium mosaic virus Stock(Matthiola)mosaic virus Pea mosaic virus Poison hemlock ringspot virus Chinese small cabbage mosaic virus 等を媒介することが報告されている (2) 有害動植物の日本での発生の有無及び公的防除の有無等ア日本での発生状況本州及び九州に発生している イ公的防除の実施状況本種に対して公的防除は実施していない (3) 評価にあたっての不確実性 本種は 上記のとおりウイルスを媒介することが知られており また 媒介され るウイルスのリスクアナリシスが完了していないことから 不確実性を伴う (4) 有害動植物の類別の結論本種は国内に発生しており 国内に存在する個体群と海外に存在する個体群の間には分類学上明確に区別されるとの情報はなく 日本と海外における本種の寄主 宿主植物に対する経済的な影響に差があるとの報告もない また 本種は公的防除の対象ではなく 今後対象とする計画もない 以上から 本種は検疫有害動物の要件を満たしていないと判断した なお 本種は 上記のとおり日本未発生のウイルスを媒介することが報告されているが 媒介されるウイルスのリスクアナリシスは完了していない このため 本種が栽培の用に供する植物に付着していた場合 本種を媒介したウイルスの侵入及びまん延の可能性並びに我が国の農業生産に対する経済的影響は不明であ

る 2 リスク評価の結論本種は検疫有害動物の要件を満たしていないことから リスクアナリシスを中止する しかし 栽培の用に供する植物に本種が付着していた場合 本種が媒介するウイルスに対するリスクアナリシスが未了であるため 媒介するウイルスの侵入及びまん延の可能性並びに我が国の農業生産に対する経済的影響が不明である よって 別途 媒介するウイルスに対するリスクアナリシスを実施して リスク管理措置の適用の要否を判断できるまで 栽培の用に供する植物に本種が付着している場合 暫定的に検疫対象とし管理措置を適用する必要がある 一方 本種が栽培用に供する植物以外の植物 ( 野菜 果実 切花等の消費の用に供する植物 ) に付着している場合は 本種を媒介して国内の栽培地で栽培される作物等へウイルスが伝搬される可能性はきわめて低いとされていることから 本種のリスクは 無視できる 管理措置の適用は不要と考える 3 リスクアナリシスの結論 本種について 栽培の用に供する植物に付着するものを除きリスク管理措置を必要と しないものに位置づけることが妥当であると判断した

別紙 ニセダイコンアブラムシ Lipaphis erysimi に関する生物学的情報 1 学名及び分類 (1) 学名 Lipaphis erysimi (2) 英名 和名等英名 :false cabbage aphid safflower aphid turnip aphid 和名 : ニセダイコンアブラムシ (3) 分類種類 : 昆虫目 :Hemiptera( カメムシ目 ) 科 :Aphididae( アブラムシ科 ) (4) 系統等植物検疫上考慮すべき系統等が存在するとの情報は得られなかった 2 寄主植物 ストック ダイコン ハクサイ キャベツ カブ カリフラワー ワサビ等アブラ ナ科野菜 ( 梅谷, 2003 日本応用動物昆虫学会,2006) 3 寄生部位 幼虫及び成虫が葉及び茎を加害する (CABI, 2013a) 4 地理的分布日本 : 本州 九州 ( 九州大学,1989) 世界 : 次の国 地域 (CABI, 2013a 九州大学,1989) [ アジア ] 日本 インド インドネシア シンガポール スリランカ タイ 台湾 中華人民共和国 ネパール バングラデシュ フィリピン ブータン マレーシア ミャンマー ラオス [ 中東 ] イエメン イスラエル イラク イラン トルコ パキスタン [ 欧州 ] アイルランド イタリア 英国 オーストリア オランダ キプロス クロアチア スウェーデン スロベニア セルビア デンマーク ドイツ ノルウェー フィンランド フランス ブルガリア ベルギー ポーランド ボスニア ヘルツェゴビナ ポルトガル マケドニア旧ユーゴスラビア共和国 モンテネグロ ロシア [ アフリカ ] ウガンダ エジプト エチオピア エリトリア カメルーン ケニア ザンビア シエラレオネ ジンバブエ スーダン タンザニア ナイジェリア マダガスカル 南アフリカ共和国 モーリシャス モロッコ リビア [ 北米 ] アメリカ合衆国 カナダ バミューダ

[ 中南米 ] アルゼンチン ガイアナ スリナム ニカラグア ブラジル ベネズエラ ペルー メキシコ キューバ トリニダード トバゴ [ 大洋州 ] オーストラリア ニュージーランド パプアニューギニア グアム ソロモン フィジー 5 移動分散方法 幼虫及び無翅成虫が歩行 有翅成虫が飛翔及び歩行する (CABI, 2013a) 6 形態及び生態無翅胎成虫は楕円形で 大きさ 1.4 ~ 2.4mm 黄 ~ 暗緑色で白色のロウ状物質に覆われる 有翅胎成虫は長楕円形で大きさは 1.4 ~ 2.2mm 頭部 胸部は黒色で 腹部は緑 ~ 暗緑色 暖地では無翅胎生雌虫で越冬することが多いが 寒地では卵で越冬する 産卵雌虫と雄虫は 11 月頃出現して交尾し 産卵する 雄虫は無翅である 卵は 3 月始めに孵化 下旬頃に幹母が出現する さらに無翅胎生雌虫で越冬したものも繁殖して かなり高密度になるが 秋季ほど高くない やがて有翅胎生雌虫が出現して夏作の野菜や野草に分散移住する 夏季は個体数も少なくわずかに寄生が見られる 夏の終わりごろに有翅胎生雌虫が出現して繁殖し 9 月下旬頃から著しく高密度になる (CABI, 2013a 梅谷, 2003) 7 被害 (1) 被害様式葉裏に群生して吸汁加害する 生育が著しく阻害され 時には枯死することもある ( 梅谷, 2003) (2) 媒介する有害動植物本種が媒介する有害動植物として以下の記録がある (CABI, 2013a) ア日本未発生非永続伝搬 :Nasturtium mosaic virus Stock(Matthiola) mosaic virus 伝搬様式不明 :Pea mosaic virus Poison hemlock ringspot virus Chinese small cabbage mosaic virus イ日本既発生 Bean common mosaic virus Bean yellow mosaic virus Beet mosaic virus Beet yellows virus Cauliflower mosaic virus Celery mosaic virus Cucumber mosaic virus Onion yellow dwarf virus Pea mosaic virus Poison hemlock ringspot virus Potato virus Y Radish mosaic virus Sweet potato feathery mottle virus Tobacco vein-banding mosaic virus Turnip mosaic virus Zucchini yellow mosaic virus 8 防除 日本では野菜類 花き類 観葉植物等の適用農薬として 本種を含むアブラムシ類に 対する薬剤の登録がある (FAMIC, 2013)

引用文献 CAB International (2013a) Crop protection compendium. CAB International ( http://www.cabicompendium.org/cpc/home.asp ) Chan C. K. and A. R. Forbes (1991) Aphid-transmitted viruses and their vectors of the world. Research Branch, Agriculture Canada 216pp 梅谷献二 岡田利承編 (2003) 日本農業害虫大事典. 全国農村教育教会. 1203pp. 九州大学農学部昆虫学教室 日本野生生物研究センター (1989) 日本産昆虫総目録. 九州大学農学部 昆虫学教室 日本野生生物研究センター編, 平嶋義宏監修九州大学農学部昆虫学教室 (http://konchudb.agr.agr.kyushu-u.ac.jp/mokuroku/index-j.html) 日本応用動物昆虫学会 (2006) 農林有害動物 昆虫名鑑増補改訂版. 日本応用動物昆虫学会編集 発行 387pp. 農林水産消費安全技術センター ( F A M I C ) ( 2 0 1 3 ) 農薬登録情報. (http://www.acis.famic.go.jp/ddownload/index.htm)