相互依存と交易からの利益 取引 ( 交易 ) はすべての人をより豊かにする. 実際私たちは複雑で多様な経済的相互依存関係をもつ社会に生きている. この相互依存性は特定の誰かによって意図されたものではない. 互いに取引することの利益について少し正確に考える 絶対優位と比較優位を理解する
互いにひとつしか作れないとき 牛飼いは牛肉だけを生産し消費. 農夫はジャガイモだけを生産し消費. このとき, 両者が消費の多様性を望んでいるならば,2 者間で牛肉とジャガイモの取引が成立し, 二人の生活状態は改善する.
TRUE AND NON-TRIVIAL? Nobel laureate Paul Samuelson was once challenged by the mathematician Stanislaw Ulam to name me one proposition in all of the social sciences which is both true and non-trivial. Samuelson s answer? Comparative advantage. That it is logically true need not be argued before a mathematician; that it is not trivial is attested by the thousands of important and intelligent men who have never been able to grasp the doctrine for themselves or to believe it after it was explained to them. (WTO のホームページから引用 )
得意なことに専念 牛飼いも農夫も牛肉, ジャガイモのどちらも作れるとする. 牛飼いは牛肉の生産が得意でジャガイモの生産は不得意 農夫はジャガイモの生産が得意で牛肉の生産は不得意 得意なものに専念したらよいが, 得意という意味は?
例 牛飼いと農夫の生産性を以下の表と仮定 牛飼いは牛肉が得意, 農夫はジャガイモが得意 ( 所定の量を作るのに必要な時間でみて ) 1 オンスを作るのに必要な時間 ( 分 ) 牛肉 ジャガイモ 牛飼い 20 30 農夫 60 20
絶対優位 あるヒトが, あるもの ( 例では牛肉やジャガイモ ) の生産の費用をそれを生産するための投入物 ( 今の例では時間であらわした労働 ) ではかったとき, 他の人に比べ生産の費用が低い ( 投入物の量が少ない ) ならば, その人はそのものの生産において絶対優位をもつという. この例では, 牛飼いは牛肉生産に絶対優位をもち, 農夫はジャガイモ生産に絶対優位をもっている.
特化と交換 ふたりのヒトがいて,2 つのモノの生産においてそれぞれがどちらか一方の生産で絶対優位とすれば絶対優位な方に資源 ( 時間を ) むけて, 交換をおこなえば社会的に経済状態は改善される. 1 時間でできる量 牛肉 ジャガイモ 牛飼い 農夫 3 オンス 2 オンス 1 オンス 3 オンス
単純な計算例 (8 時間働く ) 牛飼いは牛肉を 15 オンス生産 ( 牛肉生産に 5 時間 ) 消費, ジャガイモを 6 オンス生産 ( ジャガイモ生産に 3 時間 ) し消費しているとする. 農夫は牛肉を 6 オンス生産 ( 牛肉生産に 6 時間 ) し消費, ジャガイモを 6 オンス生産 ( ジャガイモ生産に 2 時間 ) し消費しているとする. 牛飼いがジャガイモの 1 時間を牛肉にふりかえ, 農夫は牛肉の 1 時間をジャガイモにふりかえる.
単純な計算例 ( 続き ) 牛肉は牛飼いによる 3 オンス増加と農夫による 1 オンス減少. 差し引きはプラス 2 オンス. ジャガイモは牛飼いによる 2 オンスの減少と農夫による 3 オンスの増加. 差し引きはプラス 1 オンス 社会的には牛肉もジャガイモも生産量は増加 分配の問題はある たとえば, 牛肉とジャガイモを 1:1 で交換するとして, 牛飼いと農夫の間で牛肉 3 オンスジャガイモ 3 オンスを交換. 最初よりはよい結果を得る.
生産可能性フロンティア それぞれ 1 日 8 時間働くとする. すべての時間をジャガイモの生産にあててもよいし, 牛肉の生産にあててもよい. 時間当たりの生産量は一定とする. 時間投入の配分によって両者が生産できる牛肉とジャガイモの最大限の生産量の組み合わせが決定する. これが生産可能性フロンティアになる.
牛肉 24 生産可能性フロンティアと機会費用 : 牛飼い 3/2 1 1 2/3 16 ジャガイモを 1 単位えようとすると, 牛肉を 3/2 単位あきらめなければならない. これはジャガイモの牛肉ではかった機会費用である. 牛肉を 1 単位追加しようとするとジャガイモを 2/3 単位あきらめなければならない. これは牛肉のジャガイモではかった機会費用である. 互いに逆数になっている. ジャガイモ
牛肉 生産可能性フロンティアと機会費用 : 農夫 8 1 3 牛肉を 1 単位えようとすると, ジャガイモを 3 単位あきらめなければならない. これは牛肉のジャガイモではかった機会費用である. ジャガイモを 1 単位追加しようとすると牛肉を 1/3 単位あきらめなければならない. これはジャガイモの牛肉ではかった機会費用である. 互いに逆数になっている. 24 ジャガイモ
1 対 1 で交換できるなら : 牛飼い場合 牛肉 24 3 (6,15) の状態から, 牛肉を 3 単位増加させると, ジャガイモは 2 単位減少し (4,18) になる ( 赤の線 ). 牛肉 1 オンスとジャガイモ 1 オンスを交換できれば (9,15) とできる ( 青の線 ). 完全に牛肉に特化すれば状態をさらに改善できる可能性がひろがる ( 緑の線 ). 2 16 ジャガイモ
牛肉 農夫の場合 (6,6) の状態から, ジャガイモを 3 単位増加させると, 牛肉は 1 単位減少し (5,9) になる ( 赤の線 ). ジャガイモ 1 オンスと牛肉 1 オンスとを交換できれば (9,6) とできる ( 青の線 ). 完全にジャガイモに特化すれば状態をさらに改善できる可能性がひろがる ( 緑の線 ). 8 1 3 24 ジャガイモ
牛飼いが両方に優れていたら もし牛飼いが牛肉, ジャガイモの両方の生産において農夫を絶対優位であるとき取引の利益は生じるのか? 1 オンスを作るのに必要な時間 ( 分 ) 牛肉 ジャガイモ 牛飼い 20 10 農夫 60 15
牛飼いが両方で絶対優位 牛飼いが時間投入でコストをはかると, 牛肉とジャガイモの両方で優位 ( 両方で絶対優位 ). 前の例のように 1 時間を交換してもよいことはないようにみえる. 1 時間でできる量 牛肉 ジャガイモ 牛飼い 農夫 3 オンス 6 オンス 1 オンス 4 オンス
比較優位 トレードオフによって一方のモノ (A) を追加生産するとき, もう一方のモノ (B) の生産をあきらめなければならないとする. 放棄した B の生産量を A の生産の機会費用という. ふたりのヒト (P と Q) が A,B を生産していて,A の B で測った機会費用が,P の方が小さいとき P は A の生産において比較優位をもつという.
牛飼いと農夫の機会費用 機会費用 牛肉 1 オンス ジャガイモ 1 オンス 牛飼い 農夫 ジャガイモ 2 オンス牛肉 1/2 オンス ジャガイモ 4 オンス牛肉 1/4 オンス 牛飼いが牛肉生産で比較優位, 農夫がジャガイモ生産で比較優位 ジャガイモではかった牛肉生産の費用と牛肉ではかったジャガイモ生産の費用が逆数になることに注意.
単純な計算例 (8 時間働く ) 牛飼いは牛肉を 15 オンス生産 ( 牛肉生産に 5 時間 ) 消費, ジャガイモを 18 オンス生産 ( ジャガイモ生産に 3 時間 ) し消費しているとする. 農夫は牛肉を 6 オンス生産 ( 牛肉生産に 6 時間 ) し消費, ジャガイモを 8 オンス生産 ( ジャガイモ生産に 2 時間 ) し消費しているとする. 牛飼いがジャガイモの 6 オンスの時間を牛肉生産にふりかえ, 農夫は牛肉 2 オンスの時間をジャガイモ生産にふりかえる.
計算例 ( 続き ) 牛飼いは時間の振り替えでジャガイモを 6 オンス減らし, 牛肉を 3 オンス増やす 農夫は, 時間の振り替えで牛肉を 2 オンス減らし, ジャガイモを 8 オンス増やす. 社会的には, 以前の状態より, 牛肉は 1 オンス増えて, ジャガイモは 2 オンス増えている. あとは分配の問題. 牛飼い 農夫 機会費用牛肉 1オンスジャガイモ1オンスジャガイモ2オンス牛肉 1/2オンスジャガイモ4オンス牛肉 1/4オンス
生産可能フロンティアで見る 24 牛肉 3 6 たとえば, 牛肉 3 オンスとに対してジャガイモ 8 オンスの比率で交換する取引ができれば, 両者とも最初の状態より改善がなされる. 8 2 8 32 48 ジャガイモ
小問 1 時間あたり ココナッツ 魚 クルーソー 10 個 1 匹 フライデー 30 個 2 匹 フライデーがいずれにおいても絶対優位
機会費用 クルーソー フライデー ココナッツ 1 個 魚 1/10 匹 魚 1/15 匹 魚 1 匹 ココナッツ 10 個 ココナッツ 15 個 ココナッツはフライデーが比較優位魚はクルーソーが比較優位
どちらも 4 時間ずつ配分 ココナッツ 魚 クルーソー 40 個 4 匹 フライデー 120 個 8 匹
時間配分を変える ココナッツ 魚 クルーソー フライデー 20 個 (2 時間 ) 150 個 (5 時間 ) 6 匹 (6 時間 ) 6 匹 (3 時間 )
交換は? クルーソーの魚 2 匹とフライデーのココナッツ 28 個を交換 ココナッツ 魚 クルーソー 48 個 4 匹 フライデー 122 個 8 匹
ココナッツ 240 生産可能フロンティア (1 日 8 時間 ) 80 魚 8 16
まとめ 分業において重要なことは機会費用でみた比較優位の考え方である. 比較優位はどのヒトにも必ず存在する 比較優位にもとづいて分業がなされ, 取引がおこなわれるならば, 経済状態は改善できる. 応用問題を考えること
連絡 来週は第 4 章. 必ず 1 度は読んでおくこと. 復習問題にもとづいて 3 章をまとめておくこと.
スライド 教科書を整理すれば十分勉強になりますが, スライドは http://nakamath.eco.saga-u.ac.jp/econ あります. 以前の分は準備中