SSH 全国研究発表会ポスターセッション出品研究 マドンナ リリー (Lilium candidum) 種名は 純白の という意味で 南欧から地中海沿岸 イスラエル トルコ ギリシア コーカサス シリアなどに分布 来歴 マドンナリリーは園芸植物全体の中でも最も古くから栽培されてきたものの一つで 最古のものはクレタ島遺跡にでてくる壁画や壺に画かれていて BC1500~1600 年のものである 欧州全体にはローマ時代の軍隊によって運ばれたらしく りん片をすりつぶして膏薬の原料にしたという このユリがマリアと結びついたのは2 世紀のことで キリストの復活後 その墓にはユリとバラがおかれ空になっていたという伝説から始まり 後ではこのユリの純白な花がマリアの純潔を表すものとなった それからずっと後になってレオナルド ダ ビンチを初めとするルネサンスの多くの画家たちはマリアの 受胎告知 の中にこのユリを画いた 当時のヨーロッパで白ユリと呼ばれるユリは このマドンナリリーだった また 19 世紀に日本からテッポウユリが輸入されるまで キリスト教の聖花として教会の祭壇などを飾っていた 性状 品種 花軸は直立して 80~150 cmにもなり 頂部に 5~6 輪から 15~16 輪の白花をつける 花径は 10 cm前後 葉は根出葉が秋のうちにでてロゼット葉を形成する つぎに茎の基部に密につく倒皮針形のねじれた葉が現れ 茎の上部には短くねじれた葉がまばらにつく 5 月頃花軸が伸び 6 月初旬から中旬にかけて花を咲かせ 花が終わると真夏の間は球根 ( 鱗茎 ) で休眠に入る 秋になると発芽し 多くの葉を展開し その状態で冬を越す 元来石灰の多く含まれる乾燥地に適しているので 日本では病気になりやすくつくりにくい おしべ めしべはあるが 自家不稔性なため 通常分球による無性生殖で増殖する 現在のイスラエルにはガリラヤの一部とカルメル山にのみ見られる貴重植物になっている
マドンナリリーはバチカン市国の国花であり カナダのケベック州の州旗にもデザイ ンされている また 宇都宮女子高等学校の校章は川上澄生先生によってデザインされた ものだが マドンナリリーをモチーフにしている 本校校章 参考資料 : 塚本洋太郎著 原色園芸植物図鑑 Ⅳ 保育社 http://www.plantstamps.net/stamps/liliaceae_2.htm 2004 年 5 月 7 日球根を植える マドンナリリーの観察のまとめ http://ja.wikipedia. など 5 月 25 日小 2 大 3 を掘り返す小 2 を浅く埋め直すどの球根も腐らずに根が 生えて芽が出てきたが 土の表面からは芽が出ていない 8 月 28 日小 2 の芽が出る ( 長さ 3 cm ) 浅く埋め直したのがよかったようだ 9 月 2 日全部の芽がでる 10 月 22 日葉が 15cm くらいに成長する 29 日ビニールハウスをかける 葉の高さ 茎の高さ 大 1 大 3 小 2 大 1 大 3 小 2 5 月 7 日球根を植えた 6 月 25 日 0 0 0 8 月 28 日 0 0 3 9 月 2 日 1.5 12 2.8 10 月 22 日 23 21 13 12 月 1 日 24 22 21 12 月 24 日 32 28 31 1 月 14 日 31 28 27 0 0 0 3 月 16 日 31 28 27 56 56 31 3 月 23 日 31 28 27 68 65 36 3 月 31 日 31 28 27 72 70 37 4 月 15 日 31 28 27 100 120 67 4 月 26 日 31 28 27 117 123 87 カナダの切手 ケベック州旗 大 1, 大 2, 大 3, 小 1, 小 2, 小 3 2004 年に球根で埋めたマト ンナリリー A,B,C,D,E 2005 年に球根で埋めたマト ンナリリー 2005 年 2 月 28 日花軸が形成され始まる 4 月 26 日大 3と小 2につぼみができる 5 月 17 日大 3と小 2の花が咲く 9 月 16 日地植えマドンナリリー 1の芽がでる 10 月 4 日大 3 芽がでる 10 月 6 日大 2 芽がでる
10 月 20 日大 2も大 3も葉がしっかりと生えている 11 月 1 日大 3が伸びた寒いがとても元気 11 月 25 日 A~E を新たに球根の状態で植える 2006 年 3 月 24 日 B と C が枯れる 4 月 12 日大 3と大 2につぼみができる 4 月 19 日全体的に葉が腐りかかっている A と E にむかごが3つできている 5 月 2 日 A の球根が腐り花軸が抜けるむかごから根が出ている 5 月 10 日大 3 花が咲く 5 月 11 日大 2 花が咲く 5 月 27 日 A に花が咲く E の球根が腐り花軸が抜ける 6 月 4 日 E に小さい花が咲く 6 月 6 日最初の組織培養植木鉢で育てていたマドンナリリーが全滅 2007 年組織培養したものを培地から植木鉢の土に植えかえる 2008 年植木鉢から屋外の土に植えかえる地植えしていたマドンナリリー 1が誤って抜かれる むかごができる地植えしていたマドンナリリー 2につぼみができるが虫害で咲かなかった 2009 年 5 月 17 日組織培養して育てた株に花が咲いた 5 月 23 日二回目の組織培養 わかったこと 根腐れし易いので球根は浅植えすると共に水はけをよくする 夏季に地上部が枯れ 球根で休眠する 夏季以外はロゼットを形成し 耐寒性が高くそのまま冬越しをする 花の咲き方一枚ずつ開く しばらくまっすぐのまま 半日くらいで徐々にカールしていく一週間くらいでしおれて小さくしぼんでしまう 根元の葉は小さくて丸く 上にいくにつれて細長くなる 花軸形成時に枯れそうになる ( 根を失う ) とむかごを形成する
マドンナリリー (Lilium candidum) の組織培養 栃木県立宇都宮女子高等学校生物部岸もと子岸ゆう子内村沙矢香目的マドンナ リリーは 根腐れや害虫の被害等により 日本での栽培は難しい 本校では 130 周年記念 ( 平成 17 年 ) に合わせて園芸業者から寄贈された球根を生物部で栽培した しかし 日本の気候条件に適さなかったためか 2 株を残して栽培に失敗してしまった そこで 安定的に株を保存し増やすため 今回組織培養を試みた 方法開花前約一週間のつぼみを採取 ピューラックス5% 液で5 分間消毒した後 花被片 柱頭 子房 花糸 花床などに切り分け 寒天培地に植えた 培地 MS 培地 +NAA0.03mg/L+BA0.1mg/L マドンナ リリーは地中海原産で 夏季に休眠することを考慮し 定温器内 18 で培養を続け 葉が分化してからは定温器を日当たりのよい場所に置いて特に照明はしなかった 培養器内がいっぱいになったら 株分けして同様の培地に植え次ぎ 株を増やした 平成 19 年 8 月末に植木鉢ごと滅菌した土に植えかえて順化させた 平成 20 年 9 月に地植えした 平成 21 年 6 月に 特に成長の良かった4 株が花軸を伸ばし 開花した その株から開花前約一週間のつぼみを採取し 今回新たに温度条件を室温と18 にして培養を行った 結果最初に組織培養を行ったのは平成 18 年 6 月である 花被片や花床など消毒が不十分で雑菌の混入を許してしまったものもあったが 無菌操作が成功したものではすべてカルスが形成された 5 月 23 日 7 月 15 日 (53 日目 ) 培養開始 カルス形成が確認できた 温度条件柱頭子房花糸花床 内花被 ( 花弁 ) 外花被 ( がく片 ) 無菌操作に 成功した割合 4/4 4/4 17/19 4/7 7/11 1/7 100% 100% 89% 57% 55% 14% カルス形成が みられたもの 18 2/2 2/2 4/8 2/2 3/3 1/1 室温 2/2 2/2 7/9 2/2 4/4 ー (7 月末時点 )
休眠するものとしないものがみられたため室温での培養も試みたが カルス形成の差はほとんど見られなかった 外花被や内花被は外側に位置するため 雑菌の混入割合が高かった 白い部分よりも緑色の部分のほうが また 切り口部分のほうがカルス形成しやすかった 考察ユリの花器培養はよく知られた技術であり マドンナ リリーも珠芽や木子など栄養生殖でよく増えることを考慮すれば むしろ組織培養しやすい植物といえるかもしれない また 一旦培養が成功すれば その後の継代培養は容易であり 当初の目的であった安定的に株を保存し増やすには良い方法と考えられる 個体数がある程度確保でき しかもすべてクローンであるので 研究材料としても利用しやすい 今後は栽培方法を工夫するとともに 葯培養や 花軸形成や休眠の条件 光周性についても研究を予定している 参考資料図解バイテクマニュアル古川二郎編著誠文堂新光社