報道機関各位 平成 28 年 8 月 23 日 東京工業大学東京大学 電気分極の回転による圧電特性の向上を確認 圧電メカニズムを実験で解明 非鉛材料の開発に道 概要 東京工業大学科学技術創成研究院フロンティア材料研究所の北條元助教 東正樹教授 清水啓佑大学院生 東京大学大学院工学系研究科の幾原雄一教

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報道機関各位 平成 30 年 6 月 11 日 東京工業大学神奈川県立産業技術総合研究所東北大学 温めると縮む材料の合成に成功 - 室温条件で最も体積が収縮する材料 - 〇市販品の負熱膨張材料の体積収縮を大きく上回る 8.5% の収縮〇ペロブスカイト構造を持つバナジン酸鉛 PbVO3 を負熱膨張物質

Microsoft Word - TokyoTechPR _Azuma.doc

PbTiO3 に比べて約 2% 大きな体積を持つこと また Cr 4+ を含む化合物に期待される金属伝導性を示さず 絶縁体であることなどが長年の謎であった さらに最近 2 万気圧への加圧で 10% もの巨大な体積収縮が起こることが発見され そのメカニズムの解明が望まれていた 研究成果今回の研究では

報道関係者各位 平成 24 年 4 月 13 日 筑波大学 ナノ材料で Cs( セシウム ) イオンを結晶中に捕獲 研究成果のポイント : 放射性セシウム除染の切り札になりうる成果セシウムイオンを効率的にナノ空間 ナノの檻にぴったり収容して捕獲 除去 国立大学法人筑波大学 学長山田信博 ( 以下 筑

受付番号:

ポイント 太陽電池用の高性能な酸化チタン極薄膜の詳細な構造が解明できていなかったため 高性能化への指針が不十分であった 非常に微小な領域が観察できる顕微鏡と化学的な結合の状態を調査可能な解析手法を組み合わせることにより 太陽電池応用に有望な酸化チタンの詳細構造を明らかにした 詳細な構造の解明により

振動発電の高効率化に新展開 : 強誘電体材料のナノサイズ化による新たな特性制御手法を発見 名古屋大学大学院工学研究科 ( 研究科長 : 新美智秀 ) 兼科学技術振興機構さきがけ研究者の山田智明 ( やまだともあき ) 准教授らの研究グループは 物質 材料研究機構技術開発 共用部門の坂田修身 ( さか

平成 30 年 8 月 6 日 報道機関各位 東京工業大学 東北大学 日本工業大学 高出力な全固体電池で超高速充放電を実現全固体電池の実用化に向けて大きな一歩 要点 5V 程度の高電圧を発生する全固体電池で極めて低い界面抵抗を実現 14 ma/cm 2 の高い電流密度での超高速充放電が可能に 界面形

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ナノテク新素材の至高の目標 ~ グラフェンの従兄弟 プランベン の発見に成功!~ この度 名古屋大学大学院工学研究科の柚原淳司准教授 賀邦傑 (M2) 松波 紀明非常勤研究員らは エクス - マルセイユ大学 ( 仏 ) のギー ルレイ名誉教授らとの 日仏国際共同研究で ナノマテリアルの新素材として注

報道機関各位 平成 27 年 8 月 18 日 東京工業大学広報センター長大谷清 鰭から四肢への進化はどうして起ったか サメの胸鰭を題材に謎を解き明かす 要点 四肢への進化過程で 位置価を持つ領域のバランスが後側寄りにシフト 前側と後側のバランスをシフトさせる原因となったゲノム配列を同定 サメ鰭の前

と呼ばれる普通の電子とは全く異なる仮説的な粒子が出現することが予言されており その特異な統計性を利用した新機能デバイスへの応用も期待されています 今回研究グループは パラジウム (Pd) とビスマス (Bi) で構成される新規超伝導体 PdBi2 がトポロジカルな性質をもつ物質であることを明らかにし

配信先 : 東北大学 宮城県政記者会 東北電力記者クラブ科学技術振興機構 文部科学記者会 科学記者会配付日時 : 平成 30 年 5 月 25 日午後 2 時 ( 日本時間 ) 解禁日時 : 平成 30 年 5 月 29 日午前 0 時 ( 日本時間 ) 報道機関各位 平成 30 年 5 月 25

Microsoft Word - プレス原稿_0528【最終版】

PRESS RELEASE (2015/10/23) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

機械学習により熱電変換性能を最大にするナノ構造の設計を実現

平成 30 年 5 月 25 日 報道機関各位 東京工業大学中央大学 可視光で働く新しい光触媒を創出 - 常識を覆す複合アニオンの新材料を発見 - 要点 酸素とフッ素を構成元素に含む可視光応答型の新しい光触媒を開発 アニオン複合化で得られる結晶構造を活用し太陽光の主成分を効率よく吸収 太陽光をエネル

研究成果東京工業大学理学院の那須譲治助教と東京大学大学院工学系研究科の求幸年教授は 英国ケンブリッジ大学の Johannes Knolle 研究員 Dmitry Kovrizhin 研究員 ドイツマックスプランク研究所の Roderich Moessner 教授と共同で 絶対零度で量子スピン液体を示

鉱物と類似の構造を持つ白雲母の鉱物表面に挟まれた塩化ナトリウム (NaCl) 水溶液が 厚さ 1 ナノメートル ( 水分子約 3 個分の厚み ) 以下まで圧縮されても著しい潤滑性を示すことを実験的に明らかにしてきました しかし そのメカニズムについては解明されておらず 世界的にも存在が珍しいクリープ

背景と経緯 現代の電子機器は電流により動作しています しかし電子の電気的性質 ( 電荷 ) の流れである電流を利用した場合 ジュール熱 ( 注 3) による巨大なエネルギー損失を避けることが原理的に不可能です このため近年は素子の発熱 高電力化が深刻な問題となり この状況を打開する新しい電子技術の開

液相レーザーアブレーションによるナノ粒子生成過程の基礎研究及び新規材料創成への応用 北海道大学大学院工学工学院量子理工学専攻プラズマ応用工学研究室修士 2年竹内将人

体状態を保持したまま 電気伝導の獲得という電荷が担う性質の劇的な変化が起こる すなわ ち電荷とスピンが分離して振る舞うことを示しています そして このような状況で実現して いる金属が通常とは異なる特異な金属であることが 電気伝導度の温度依存性から明らかにされました もともと電子が持っていた電荷やスピ

高集積化が可能な低電流スピントロニクス素子の開発に成功 ~ 固体電解質を用いたイオン移動で実現低電流 大容量メモリの実現へ前進 ~ 配布日時 : 平成 28 年 1 月 12 日 14 時国立研究開発法人物質 材料研究機構東京理科大学概要 1. 国立研究開発法人物質 材料研究機構国際ナノアーキテクト

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マスコミへの訃報送信における注意事項

報道関係者 各位

研究の背景と経緯 植物は 葉緑素で吸収した太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い それを光合成に 用いている この反応の副産物として酸素が発生する しかし 光合成が地球上に誕生した 初期の段階では 水よりも電子を奪いやすい硫化水素 H2S がその電子源だったと考えられ ている 図1 現在も硫化水素

マスコミへの訃報送信における注意事項

【最終版・HP用】プレスリリース(徳永准教授)

本研究成果は 平成 28 年 8 月 19 日 ( 米国東部時間 ) に米国化学会誌 Journal of the American Chemical Society のオンライン速報版で公開されました 研究の背景と経緯 超伝導現象はゼロ抵抗や完全反磁性 ( 注 2) を示す科学の観点から重要な物理

コバルトとパラジウムから成る薄膜界面にて磁化を膜垂直方向に揃える界面電子軌道の形が明らかに -スピン軌道工学に道 1. 発表者 : 岡林潤 ( 東京大学大学院理学系研究科附属スペクトル化学研究センター准教授 ) 三浦良雄 ( 物質材料研究機構磁性 スピントロニクス材料研究拠点独立研究者 ) 宗片比呂

図 1. 微小管 ( 赤線 ) は細胞分裂 伸長の方向を規定する本瀬准教授らは NIMA 関連キナーゼ 6 (NEK6) というタンパク質の機能を手がかりとして 微小管が整列するメカニズムを調べました NEK6 を欠損したシロイヌナズナ変異体では微小管が整列しないため 細胞と器官が異常な方向に伸長し

平成 30 年 8 月 17 日 報道機関各位 東京工業大学広報 社会連携本部長 佐藤勲 オイル生産性が飛躍的に向上したスーパー藻類を作出 - バイオ燃料生産における最大の壁を打破 - 要点 藻類のオイル生産性向上を阻害していた課題を解決 オイル生産と細胞増殖を両立しながらオイル生産性を飛躍的に向上

Title BiFeO_3 系酸化物誘電体の作製と機能特性 Author(s) 尾崎, 友厚 Editor(s) Citation Issue Date 2013 URL Rights

平成 30 年 1 月 5 日 報道機関各位 東北大学大学院工学研究科 低温で利用可能な弾性熱量効果を確認 フロンガスを用いない地球環境にやさしい低温用固体冷却素子 としての応用が期待 発表のポイント 従来材料では 210K が最低温度であった超弾性注 1 に付随する冷却効果 ( 弾性熱量効果注 2

報道機関各位 平成 27 年 3 月 20 日 ( 同時提供資料 ) 栃木県政記者クラブ 国立大学法人宇都宮大学 埼玉県政記者クラブ 学校法人 埼玉医科大学 文部科学記者会, 科学記者会 学校法人 早稲田大学 任意の偏光を持つテラヘルツ光の解析法を開発 ( 報道解禁日 :3 月 24 日午後 7 時

報道発表資料 2008 年 1 月 31 日 独立行政法人理化学研究所 酸化物半導体の謎 伝導電子が伝導しない? 機構を解明 - 金属の原子軌道と酸素の原子軌道の結合が そのメカニズムだった - ポイント チタン酸ストロンチウムに存在する 伝導しない伝導電子 の謎が明らかに 高精度の軟 X 線共鳴光

平成 28 年 6 月 3 日 報道機関各位 東京工業大学広報センター長 岡田 清 カラー画像と近赤外線画像を同時に撮影可能なイメージングシステムを開発 - 次世代画像センシングに向けオリンパスと共同開発 - 要点 可視光と近赤外光を同時に撮像可能な撮像素子の開発 撮像データをリアルタイムで処理する

Microsoft Word - 01.doc

マスコミへの訃報送信における注意事項

Microsoft PowerPoint - 第10回電磁気学I 

非磁性原子を置換することで磁性・誘電特性の制御に成功

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Graphite/Graphene Index ( 以下 GG Index と呼びます ) は 今後の研究に伴い 以下の項目 が明らかになっていくことを目標としています 1) 原料黒鉛の性状の特定や同定 2) 黒鉛 グラフェン中間体 およびグラフェンの特定や同定 3) 製品黒鉛 製品グラフェン中間体

がら この巨大な熱電効果の起源は分かっておらず 熱電性能のさらなる向上に向けた設計指針 は得られていませんでした 今回 本研究グループは FeSb2 の超高純度単結晶を育成し その 結晶サイズを大きくすることで 実際に熱電効果が巨大化すること またその起源が結晶格子の振動 ( フォノン 注 2) と

開発の社会的背景 リチウムイオン電池用正極材料として広く用いられているマンガン酸リチウム (LiMn 2 O 4 ) やコバルト酸リチウム (LiCoO 2 ) などは 電気自動車や定置型蓄電システムなどの大型用途には充放電容量などの性能が不十分であり また 低コスト化や充放電繰り返し特性の高性能化

PRESS RELEASE 平成 29 年 3 月 3 日 酸化グラフェンの形成メカニズムを解明 - 反応中の状態をリアルタイムで観察することに成功 - 岡山大学異分野融合先端研究コアの仁科勇太准教授らの研究グループは 黒鉛 1 から酸 化グラフェン 2 を合成する過程を追跡し 黒鉛が酸化されて剥が

超高速 超指向性 完全無散逸の 3 拍子がそろった 理想スピン流の創発と制御 ~ 弱い トポロジカル絶縁体の世界初の実証に成功 ~ 1. 発表のポイント : 理論予想以後実証できずにいた 弱い トポロジカル絶縁体 ( 注 1) 状態の直接観察に世界で初めて成功した 従来の 強い トポロジカル絶縁体で

平成 27 年 12 月 11 日 報道機関各位 東北大学原子分子材料科学高等研究機構 (AIMR) 東北大学大学院理学研究科東北大学学際科学フロンティア研究所 電子 正孔対が作る原子層半導体の作製に成功 - グラフェンを超える電子デバイス応用へ道 - 概要 東北大学原子分子材料科学高等研究機構 (

SP8WS

Microsoft Word - 【広報課確認】 _プレス原稿(最終版)_東大医科研 河岡先生_miClear

特別研究員高木里奈 ( たかぎりな ) ユニットリーダー関真一郎 ( せきしんいちろう ) ( 科学技術振興機構さきがけ研究者 ) 計算物質科学研究チームチームリーダー有田亮太郎 ( ありたりょうたろう ) ( 東京大学大学院工学系研究科教授 ) 強相関物性研究グループグループディレクター十倉好紀

学報_台紙20まで

記者発表資料

論文の内容の要旨

電解メッキ初期過程における電極近傍イオン種のリアルタイム観測に成功

2 磁性薄膜を用いたデバイスを動作させるには ( 磁気記録装置 (HDD) を例に ) コイルに電流を流すことで発生する磁界を用いて 薄膜の磁化方向を制御している

Nov 11

研究の背景これまで, アルペンスキー競技の競技者にかかる空気抵抗 ( 抗力 ) に関する研究では, 実際のレーサーを対象に実験風洞 (Wind tunnel) を用いて, 滑走フォームと空気抵抗の関係や, スーツを含むスキー用具のデザインが検討されてきました. しかし, 風洞を用いた実験では, レー

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背景 私たちの体はたくさんの細胞からできていますが そのそれぞれに遺伝情報が受け継がれるためには 細胞が分裂するときに染色体を正確に分配しなければいけません 染色体の分配は紡錘体という装置によって行われ この際にまず染色体が紡錘体の中央に集まって整列し その後 2 つの極の方向に引っ張られて分配され

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Akita University 氏名 ( 本籍 ) 若林 誉 ( 三重県 ) 専攻分野の名称 博士 ( 工学 ) 学位記番号 工博甲第 209 号 学位授与の日付 平成 26 年 3 月 22 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 研究科 専攻 工学資源学研究科 ( 機能物質工学

報道関係者各位 平成 26 年 5 月 29 日 国立大学法人筑波大学 サッカーワールドカップブラジル大会公式球 ブラズーカ の秘密を科学的に解明 ~ ボールのパネル構成が空力特性や飛翔軌道を左右する ~ 研究成果のポイント 1. 現代サッカーボールのパネルの枚数 形状 向きと空力特性や飛翔軌道との

NEWS RELEASE 平成 30 年 11 月 1 日 鉄鋼材料において水素による異常な変態抑制効果を発見 - 鉄の構造を水素で制御する - 九州工業大学大学院生命体工学研究科の平田研二 ( ひらたけんじ ) 大学院生 ( 現 : 産業技術総合研究所 ) 飯久保智 ( いいくぼさとし ) 准教授

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氏 名 田 尻 恭 之 学 位 の 種 類 博 学 位 記 番 号 工博甲第240号 学位与の日付 平成18年3月23日 学位与の要件 学位規則第4条第1項該当 学 位 論 文 題 目 La1-x Sr x MnO 3 ナノスケール結晶における新奇な磁気サイズ 士 工学 効果の研究 論 文 審 査

注 : 平成 年度募集研究種目 国際的に評価の高い研究の推進 研究費の規模 / 研究の発展 H には 新たに基盤研究 (B) 若手研究 (A) の 種目に基金化を導入 若手研究 9 歳以下 ~ 年 (A) 500~,000 万円 (B) ~500 万円 研究活動スタート支援 年以内年間 50 万円以

Microsoft PowerPoint - H30パワエレ-3回.pptx

解法 1 原子の性質を周期表で理解する 原子の結合について理解するには まずは原子の種類 (= 元素 ) による性質の違いを知る必要がある 原子の性質は 次の 3 つによって理解することができる イオン化エネルギー = 原子から電子 1 個を取り除くのに必要なエネルギー ( イメージ ) 電子 原子

Microsoft Word - 【確定】東大薬佐々木プレスリリース原稿

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1. 背景強相関電子系は 多くの電子が高密度に詰め込まれて強く相互作用している電子集団です 強相関電子系で現れる電荷整列状態では 電荷が大量に存在しているため本来は金属となるはずの物質であっても クーロン相互作用によって電荷同士が反発し合い 格子状に電荷が整列して動かなくなってしまう絶縁体状態を示し

がんを見つけて破壊するナノ粒子を開発 ~ 試薬を混合するだけでナノ粒子の中空化とハイブリッド化を同時に達成 ~ 名古屋大学未来材料 システム研究所 ( 所長 : 興戸正純 ) の林幸壱朗 ( はやしこういちろう ) 助教 丸橋卓磨 ( まるはしたくま ) 大学院生 余語利信 ( よごとしのぶ ) 教

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報道発表資料 2008 年 11 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 メタン酸化反応で生成する分子の散乱状態を可視化 複数の反応経路を観測 - メタンと酸素原子の反応は 挿入 引き抜き のどっち? に結論 - ポイント 成層圏における酸素原子とメタンの化学反応を実験室で再現 メタン酸化反応で生成

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世界初! 次世代電池内部のリチウムイオンの動きを充放電中に可視化 ~ 次世代電池の実用化に向けて大きく前進 ~ 名古屋大学 パナソニック株式会社 ( 以下 パナソニック ) および一般財団法人ファインセラミックスセンター ( 以下 ファインセラミックスセンター ) は共同で 走査型透過電子顕微鏡 (

平成 28 年 10 月 25 日 報道機関各位 東北大学大学院工学研究科 熱ふく射スペクトル制御に基づく高効率な太陽熱光起電力発電システムを開発 世界トップレベルの発電効率を達成 概要 東北大学大学院工学研究科の湯上浩雄 ( 機械機能創成専攻教授 ) 清水信 ( 同専攻助教 ) および小桧山朝華

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

2 成果の内容本研究では 相関電子系において 非平衡性を利用した新たな超伝導増強の可能性を提示することを目指しました 本研究グループは 銅酸化物群に対する最も単純な理論模型での電子ダイナミクスについて 電子間相互作用の効果を精度よく取り込める数値計算手法を開発し それを用いた数値シミュレーションを実

物性物理学 I( 平山 ) 補足資料 No.6 ( 量子ポイントコンタクト ) 右図のように 2つ物質が非常に小さな接点を介して接触している状況を考えましょう 物質中の電子の平均自由行程に比べて 接点のサイズが非常に小さな場合 この接点を量子ポイントコンタクトと呼ぶことがあります この系で左右の2つ

報道機関各位 令和元年 7 月 9 日 東北大学 流動中の磁気スキルミオン格子の変形挙動観測に成功 発表のポイント カイラル磁性体 MnSi で形成される磁気スキルミオンが 電流下の流動状態においても格子構造を保つことを確認した 流動状態においては磁気スキルミオン格子が塑性変形することを観測した 塑

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

本扉~プロ

平成22年11月15日

平成 3 0 年 9 月 6 日 科学技術振興機構 (JST) 大阪大学 2 段階の熱処理で高品質のビスマス系薄膜 ~ 光応答性能を向上 次世代太陽電池開発に期待 ~ ポイント 光電変換素子の材料探索は それぞれの材料に最適な成膜プロセスの開発と同時に進める必要があり 1 つの材料でも数年を要してい

厚生労働省委託事業 「 平成25年度 適切な石綿含有建材の分析の実施支援事業 」アスベスト分析マニュアル1.00版

磁気でイオンを輸送する新原理のトランジスタを開発

Transformation-Induced Plasticity a TitleMartensitic Transformation of Ultra Austenite in Fe-Ni-C Alloy( Abstrac Author(s) Chen, Shuai Citation Kyoto

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

う特性に起因する固有の量子論的効果が多数現れるため 基礎学理の観点からも大きく注目されています しかし 特にゼロ質量電子系における電子相関効果については未だ十分な検証がなされておらず 実験的な解明が待たれていました 東北大学金属材料研究所の平田倫啓助教 東京大学大学院工学系研究科の石川恭平大学院生

< 研究の背景と経緯 > 金属イオンと有機配位子から構築される高結晶性の多孔性金属錯体は 細孔の形状 サイズ 表面特性を精密に制御することができるため 次世代の多孔性材料として注目を集め その合成と貯蔵 分離 触媒機能などの研究が世界中で精力的に行われています すでに 既存の多孔性材料の性能を超える


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昆虫と自然 2010年12月号 (立ち読み)

Transcription:

報道機関各位 平成 28 年 8 月 23 日 東京工業大学東京大学 電気分極の回転による圧電特性の向上を確認 圧電メカニズムを実験で解明 非鉛材料の開発に道 概要 東京工業大学科学技術創成研究院フロンティア材料研究所の北條元助教 東正樹教授 清水啓佑大学院生 東京大学大学院工学系研究科の幾原雄一教授の研究グループは 圧電体 ( 用語 1) の結晶中で 電気分極 ( 用語 2) の方向が回転することにより圧電特性が向上することを 実験的に確認することに成功した 分極の回転は 実用材料であるジルコン酸チタン酸鉛 (PZT) の巨大圧電特性の起源といわれながら これまで実際に圧電特性向上に寄与することが実験的に確認されたことがなかった 本研究グループは PZT を模して新しく開発したコバルト酸鉄酸ビスマス圧電体を 圧電特性の評価が可能な薄膜形態で安定化させ その結晶構造と圧電特性を詳しく調べた その結果 分極回転の起こりうる結晶構造で圧電特性が向上することを見いだした また 圧電特性は 結晶歪みの大きな構造 すなわち分極が回転する余地のある構造ほど向上した 今回の結果は環境に有害な鉛を使わない新圧電材料の開発につながると期待される この成果は独国科学誌 Advanced Materials のオンライン版で 8 月 24 日に公開される 研究の背景力を加えると電荷が発生し 電圧をかけると変形する圧電体は 電気と運動 ( 変形 ) を変換する物質であり センサーやアクチュエーター ( 駆動装置 用語 3) として 超音波診断機やインクジェットプリンター カメラなどさまざまな電子機器に使われている 現在の主流は PZT と呼ばれる チタン酸鉛とジルコン酸鉛が混ざりあった固溶体材料だが 毒性元素である鉛を重量で 68% も含むため 国際社会からは非鉛の代替物質の開発が望まれている PZT の優れた圧電特性は 菱面体晶ペロブスカイト ( 用語 4) のジルコン酸鉛と正方晶ペロブスカイト ( 用語 5) のチタン酸鉛との相境界に 単斜晶相 ( 用語 6) と呼ばれる対称性の低い結晶相が存在し そこでは電気分極の方向が結晶構造内で変化 ( 回転 ) できることによると考えられている ( 図 1) すなわち分極の回転によって大きな歪みが生じる しかし こうした分極回転が実際に圧電特性向上に寄与することが 実験によって確認されたことはなかった

研究成果東教授ら研究グループは 結晶構造の類似性から 菱面体晶ペロブスカイトの鉄酸ビスマスと正方晶ペロブスカイトのコバルト酸ビスマスとが混ざり合った固溶体 BiFe 1-x Co x O 3 に着目した その詳細な結晶構造の解析を行うことにより PZT で見つかっているのと同様の M A 型 ( 用語 7) の単斜晶相が同固溶体に存在すること またその結晶構造において電気分極の回転が実際に起こりうることを示してきた 今回 北條助教 東教授ら研究グループは BiFe 1-x Co x O 3 を圧電特性の評価が可能な薄膜形態で安定化させることに成功した 薄膜 X 線回折 ( 用語 8) と走査透過電子顕微鏡 ( 用語 9) を用いた詳細な結晶構造解析を実施し コバルト量の増加に伴いその結晶構造が PZT とは分極の方向が異なる M C 型 ( 用語 10) の単斜晶相から M A 型の単斜晶相へ さらに正方晶相へと変化することを見いだした 詳細な圧電特性評価の結果 M A 型の単斜晶相において圧電特性が向上することが明らかとなった ( 図 2) また 結晶歪みの大きな構造 すなわち分極が回転する余地のある構造ほど圧電特性が向上した このことは 電気分極の方向が回転することによって圧電特性が向上することを意味している 今後の展開今回の成果は PZT の優れた圧電特性の起源であるとされていた 単斜晶相における電気分極の回転が実際に圧電特性向上に寄与することを実験的に証明したものである これにより ペロブスカイト圧電体の圧電特性向上のためガイドラインが示され 新しい非鉛圧電体の開発に拍車がかかるものと期待されている 付記本研究の一部は 神奈川科学技術アカデミー 戦略的研究シーズ育成事業 革新的巨大負熱膨張物質の創成 ( 代表 東正樹東京工業大学教授 ) 文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究 ナノ構造情報のフロンティア開拓 材料科学の新展開 ( 代表 田中功京都大学教授 ) 日本学術振興会 科学研究費補助金 若手研究 B 電界誘起の構造相転移を用いた巨大な圧電応答の実現 ( 代表 北條元東京工業大学助教 ) 基盤研究 A ビスマス 鉛ペロブスカイトの s-d 軌道間電荷分布変化解明と巨大負熱膨張への展開 ( 代表 東正樹東京工業大学教授 ) 挑戦的萌芽研究 分極回転機構による巨大圧電材料の実現 ( 代表 東正樹東京工業大学教授 ) 旭硝子財団研究助成 ナノ構造の解析と制御による Bi 系ペロブスカイト圧電体の開発 ( 代表 北條元東京工業大学助教 ) の援助を受けて行った 用語説明 ( 用語 1) 圧電体 : 応力をかけると表面に電荷が現れ 電界を印加すると 変形する物質 電気分極を持っているためにこうした性質が表れる ( 用語 2) 電気分極 : 物質中で陽イオンと負イオンの重心がずれていることか

ら生じる 電荷の偏り ( 用語 3) アクチュエーター : 伸縮 屈伸 旋回といった 単純な運動をする駆動装置 ( 用語 4) 菱面体晶ペロブスカイト : ペロブスカイトは一般式 ABO 3 で表される元素組成を持つ 金属酸化物の代表的な結晶構造 結晶構造中の原子の繰り返し周期である単位格子が 立方体ではなく 頂点方向に伸びたものを菱面体晶と呼ぶ ( 用語 5) 正方晶ペロブスカイト : 単位格子が 立方体ではなく 一方向に伸びた直方体であるペロブスカイト ( 用語 6) 単斜晶相 : 単位格子の持つ 3 つの角の内 1 つが 90 からずれた結晶相 ( 用語 7) M A 型 : 電気分極を持った単斜晶相の分類 単斜晶歪み すなわち電気分極の傾斜方向が ペロブスカイトセル底面の対角方向である構造 ( 用語 8) 薄膜 X 線回折 : 薄膜の構造を調べる方法 X 線を薄膜試料に照射し 回折強度を調べることで結晶構造 ( 原子の並び方や原子間の距離 ) を決定する ( 用語 9) 走査透過電子顕微鏡 : 電子顕微鏡の一種 0.1 ナノメートル (1 億分の 1 センチメートル ) 程度まで細く絞った電子線を試料上で走査し 試料により透過散乱された電子線の強度で試料中の原子を直接観察する ( 用語 10) M C 型 : 単斜晶歪み すなわち電気分極の傾斜方向が ペロブスカイトセル底面の一辺方向である構造 発表論文掲載誌 :Advanced Materials タイトル :Enhanced piezoelectric response due to polarization rotation in cobalt-substituted BiFeO 3 epitaxial thin films 著者 :Keisuke Shimizu, Hajime Hojo, Yuichi Ikuhara, and Masaki Azuma DOI:10.1002/adma.201602450

問い合わせ先 < 本研究全般に関すること > 東京工業大学科学技術創成研究院フロンティア材料研究所教授東正樹 Email: mazuma@msl.titech.ac.jp TEL: 080-4402-5315 045-924-5315 FAX: 045-924-5318 < 東京大学問い合わせ先 > 東京大学大学院工学系研究科教授幾原雄一 Email: ikuhara@sigma.ac.jp TEL:03-5841-7688 FAX:03-5841-7694 取材申し込み先 東京工業大学広報センター Email: media@jim.titech.ac.jp TEL: 03-5734-2975 FAX: 03-5734-3661 東京大学大学院工学系研究科広報室 Email: kouhou@pr.t.u-tokyo.ac.jp TEL: 03-5841-1790 FAX: 03-5841-0529