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今日の授業の概要 計算機通信基礎 (4) 2014 年度 九州工業大学大学院情報工学研究院塚本和也 2. インターネットの実験 2 2. インターネットの実験 インターネットにおいては ネットワーク管理のために ネットワークの状態 サーバの状態 ホストの状態 などを調べるソフトウェアツールが種々開発されている インターネットの仕組みを実感するために これらのソフトウェアツールを利用する これらにより ネームサーバの働きやルータによる中継によってパケットが運ばれる経路を調べることができる 3 2. インターネットの実験 ツールを用いたインターネットの実験における注意点 ツールは 本来 調査する対象のものが異常な状態になっていないかや 異常な場合にどのように異常かを調べるなどのネットワーク管理に用いられるもので 実験用ではない これらのツールを用いると それらは実際にネットワークにパケットを送出し 相手のホストやインターネットのサーバやルータに対して 何らかの処理負荷をかける さらに 送出するパケットおよびそれへの応答パケットが ネットワークの通信回線の一部を実際に使用する ツールの使用は これらのことを十分理解して行うべき 4 ドメインネームシステム (DNS) 階層的な名前 ( ドメイン名 ) 空間を備える 階層的な名前空間の部分集合はゾーンと呼ばれ 各ゾーンにネームサーバが割り当てられている ネームサーバも階層的に配置され協調する 様々なドメインに所属するホストの情報を分散管理することが可能になる # 以降では 説明の便宜上 複数ドメインからなるゾーンのことをドメインと呼ぶ ホスト名と IP アドレスの対応 nslookup DNS の機能を調べることができるソフトウェアツール ネームサーバは リゾルバからホスト名を送られると そのホストの IP アドレスを返す 正引き その逆に ホストの IP アドレスに対してホスト名を返す 逆引き UNIX Linux および Windows 2000 以降の DNS リゾルバ ( クライアント ) Windows で利用可能 cse.kyutech.ac.jp の IP アドレスは? ネームサーバ ( サーバ ) 5 131.206.xx.xx 6 1

nslookup の使用例 (1) ドメイン名が internet-u.ac.jp であるインターネット大学 ( 架空 ) において その大学のホストである mirai の IP アドレスを調べる % および > は計算機からのプロンプト 利用者の入力部分は太字 % nslookup Default > mirai.internet-u.ac.jp Name: mirai.internet-u.ac.jp 63 >quit 問い合わせたいホスト名 ネームサーバのホスト名ネームサーバのIPアドレスホスト名ホストのIPアドレス 7 nslookup の使用例 (1) ( 続き ) 同一ドメイン内のホスト情報の問い合わせ 1. nslookup と入力すると そのドメインのネームサーバ情報が出力されている ホスト名 ns.internet-u.ac.jp IP アドレス 192.168.10.1 2. 利用者が mirai.internet-u.ac.jp と入力 これは対応する IP アドレスを尋ねている 3. その回答として その回答を行ったネームサーバの情報と 回答である mirai.unternet-u.ac.jp の IP アドレスを答えている 4. nslookup は quit と入力すると終了する 8 nslookup の使用例 (2) インターネット大学において ドメイン名がngi-u.ac.jpのNGI(Next Generation Internet) 大学のホストであるinfonetのIPアドレスを尋ねる 少し前に ネームサーバns.internet-u.ac.jpに同じホストの問合せがあった場合は キャッシュ (cache) として蓄積されており そこから回答する場合がある 応答が速くなる % nslookup Default > infonet.ngi-u.ac.jp 問い合わせたいホスト名 ネームサーバのホスト名ネームサーバのIPアドレス Non-authoritative answer: Name: infonet.ngi-u.ac.jp Address: 10.10.10.10 ホスト名ホストの IP アドレス 9 nslookup の使用例 (2) ( 続き ) 別のドメイン内のホスト情報の問い合わせ 1. ネームサーバ ns.internet-u.ac.jp は質問された情報を管理していない 2. そのため トップレベルのネームサーバに問い合わせ トップレベルは関連する次の下位のレベルのネームサーバに問い合わせ 最終的に ngi-u.ac.jp ドメインのネームサーバからホスト情報を得る 3. したがってネームサーバ ns.internet-u.ac.jp は この情報を回答する際には 自分が管理する情報ではないことを表す Non-authoritative answer ( 権威のある回答ではない ) と注釈を添えている 10 nslookup の使用例 (3) インターネット大学のウェブサーバのホスト www.internet-u.ac.jp について尋ね 複数の IP アドレスが返される場合 参照頻度が高いウェブサーバは 同じ名称を付けた複数の計算機に対応させる場合がある これによりスムーズな応答が可能 % nslookup Default > www.internet-u.ac.jp Name: www.internet-u.ac.jp Address: 192.168.10.64, 192.168.10.65, 192.168.10.66 ホストのIPアドレス 11 一つのホストが複数の IP アドレスを持つ場合もある あるホストが複数のネットワークインターフェースを備え 複数のネットワークに接続していると 複数の IP アドレスを持つことになる ルータの役割をする計算機など nslookup の使用例 (4) IPアドレスを入力してそれを持つホスト名を尋ねる場合 % nslookup Default > 192.168.10.163 Name: mirai.internet-u.ac.jp 63 問い合わせたいホストのIPアドレスネームサーバのホスト名ネームサーバのIPアドレス ホスト名ホストの IP アドレス 12 2

(b) 電子メールサーバの情報 DNS では ネームサーバが 質問されたドメインのメールサーバ ( メールエクスチェンジャーと呼ばれる ) のホスト名と IP アドレスを答える MX(Mail exchange) レコード DNS において あるドメインとそのドメインのメールサーバのホスト情報が記述されたもの nslookup に q=mx オプションをつけることにより, 問い合わせが可能 13 メール送信者ホストA 大学ネームサーバ 2 ホスト B のメールサーバは? 1 電子メール送信 SMTP メールサーバ (131.206.xx.xx) 3MX レコードを送信 4 電子メール送信 SMTP メールサーバ (133.5.xx.xx) 大学 5 電子メール受信要求 6 電子メール送信 POP IMAP メール受信者ホスト B 14 MX レコードの問い合わせ例 ドメイン名が internet-u.ac.jp であるインターネット大学において ドメイン名 ngi-u.ac.jp の MX レコード情報を問い合わせた場合 % nslookup -q=mx ngi-u.ac.jp Non-authoritative answer: 優先度 メールサーバ Ngi-u.ac.jp preference = 20, mail exchanger = mx2.ngi-u.ac.jp Ngi-u.ac.jp preference = 10, mail exchanger = mx1.ngi-u.ac.jp Authoritative answers can be found from: Ngi-u.ac.jp nameserver = ns.ugi-u.ac.jp Mx2.ngi-u.ac.jp internet address = 10.10.10.32 Mx1.ngi-u.ac.jp internet address = 10.10.10.31 15 MX レコードの問い合わせ例 ( 続き ) 1. internet-u.ac.jp ドメインにおいて質問しているため そのネームサーバ ns.internet-u.ac.jp が答えている 2. 質問は ngi-u.ac.jp ドメインの mail exchanger( メールサーバ ) のホスト情報 3. 回答 ngi-u.ac.jp のメールサーバは mx2.ngi-u.ac.jp と mx1.ngiu.ac.jp であり それらの IP アドレスが返されている preference は プレファレンス値 ( メールサーバの優先度 ) を表しており 小さな値を持つサーバほど優先度が高い 一番高い優先度を持つサーバが最初に選択され メールが配送される もし そのサーバが停止しているなどのため メールの配送を失敗すると 次に優先度の高いサーバにメールを配送する 今回の例だと まず mx1.ngi-u.ac.jp 次に mx2.ngi-u.ac.jp 16 DNS におけるドメイン 木構造 各ドメインは各自で管理され 全体としては分散管理されている ドメイン名は 企業や大学などの実際の組織に対応している uk go kyutech.ac.jp ドメイン ルート jp ac kyutech cse www edu co com 17 whois ある組織に関する情報 ネームサーバ 使用している IP アドレスに関する情報は サーバにおいてデータベース化されている それを参照するソフトウェアツール コマンド whois は UNIX で使用可能 Windows で使用したい場合は次の URL で Web サーバを通じて実行することが可能 http://www.nic.ad.jp/ja/whois/ja-gateway.html nic.ad.jp 社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター (Japan Network Information Center: JPNIC) のドメイン名 18 3

ドメインの情報取得の例 whois サーバである whois.nic.ad.jp に対して ドメイン名 internet-u.ac.jp に関する情報を問い合わせている % whois -h whois.nic.ad.jp internet-u.ac.jp Domain Information: [ ドメイン情報 ] a. [ ドメイン名 ] INTERNET-U.AC.JP f. [ 組織名 ] インターネット大学 g. [Organization] Internet University h. [ 郵便番号 ] 101-8002 i. [ 住所 ] 東京都 ******* k. [ 組織種別 ] 大学 l. [Organization Type] University p. [ ネームサーバ ] ns.internet-u.ac.jp s. [ 使用 IPネットワーク ] 192.168.10.0 19 ドメインの情報取得の例 ( 続き ) 与えられたドメイン名に対応する組織に関する情報が返されている そのドメインが使用している IP アドレスが表示されている 198.168.10.0 となっているのは 192.168.10 がそのドメインのネットワークアドレスであることを示している IP アドレス ( 第 4 章で詳しく説明 ) は 32 ビットのうち 上位のいくつかのビットがネットワークアドレス部であり 続く残りの下位ビットがホストアドレス部を示している IP アドレスは 申請に応じて各組織に割り当てられる際に ネットワークアドレスの部分だけが割り当てられ 残りのホストアドレスの部分はその組織内で管理される 20 ネットワークの情報取得の例 whois サーバである whois.nic.ad.jp に対して ネットワークアドレス 192.168.10.0 を使用しているドメインの情報を問い合わせている Web サーバを介した whois の実行例 % whois -h whois.nic.ad.jp 192.168.10.0 Network Information: [ ネットワーク情報 ] a. [IPネットワークアドレス] 192.168.10.0 b. [ ネットワーク名 ] INTERNET-NET f. [ 組織名 ] インターネット大学 g. [Organization] Internet University h. [ 郵便番号 ] 101-8002 i. [ 住所 ] 東京都 ******* p. [ ネームサーバ ] ns.internet-u.ac.jp 21 http://www.nic.ad.jp/ja/whois/ja-gateway.html 22 目次 Web サーバを介した whois の実行例 ( 続き ) 2. インターネットの実験 23 24 4

インターネットにおいては データは IP データグラムを単位としてホストからホストへ運ばれるが 宛先ホストまでの到達性を調べるツール および宛先ホストに至る経路を調べるツールが存在する ping ホストからホストへの IP データグラムの到達性を調べるツール tranceroute ホストからホストへの経路を調べるツール (a) 到達可能性の実験 (ping) ping は UNIX Windows で利用可能 ping は ホストあるいはルータに ある特殊なパケットを送り それを受け取ったホストもしくはルータは それに対して応答パケットを返す 特殊なパケット ICMP(Internet Control Message Protocol) のエコー要求パケット (ICMP Echo Request) それに対する応答パケット ICMP のエコー応答パケット (ICMP Echo Reply) エコー要求パケット 25 エコー応答パケット 26 ICMP(Internet Control Message Protocol) IP によるデータの配送には信頼性がなく ネットワーク内の異常な状態に対応する機能は備えていない ( このことについては第 3 章で詳しく ) ICMP は IP のそのような特性を補う機能を提供 インターネット内の異常な状態やエラー状態をホストに通知したり 遠隔ホストやルータの状態に関する問い合わせを可能にするプロトコル ping は ICMP の機能を用いて ネットワークやホストの状態を調べ 遅延等の結果を表示する 27 2.3 データの到達性および経路 に関する実験 ping コマンドの使用例 ホスト www.ngi-u.ac.jp への到達性およびその状態を調べる場合 % ping www.ngi-u.ac.jp PING www.ngi-u.ac.jp (10.10.10.32): 56 data bytes 64 bytes from 10.10.10.32: icmp_seq=0 time=11 ms 64 bytes from 10.10.10.32: icmp_seq=1 time=13 ms 64 bytes from 10.10.10.32: icmp_seq=2 time=10 ms ( 途中略 ) 64 bytes from 10.10.10.32: icmp_seq=6 time=20 ms 64 bytes from 10.10.10.32: icmp_seq=7 time=21 ms 64 bytes from 10.10.10.32: icmp_seq=9 time=18 ms ^C --- www.ngi-u.ac.jp PING Statistics --- 10 packets transmitted, 9 packets received, 10% packet loss round-trip (ms) min/avg/max =10/14/21 28 ping コマンドの使用例 ( 続き ) 1. 10 パケット送信した場合の宛先ホストまでの到達性と往復遅延時間 (round trip time, RTT) が表示されている 2. icmp_seq は ping が ICMP というプロトコルを用いてパケットを送信していることを示し それらのパケットの番号が示されている 3. icmp_seq=7 までは 順に届いているが 次に icmp_seq=9 に飛んでいる これは 送信された 10 パケットのうち icmp_seq=8 のパケットが消失したことを示している 4. 戻ってきた 9 パケットの往復遅延時間の最小 平均 および最大値が表示されている 29 パケットが消失する原因 1. パケットを受け取ったホストが過負荷のため処理し切れず パケットが破棄される 2. ネットワークが混雑し パケットがネットワーク内で破棄される ネットワークの混雑のことを 輻輳 (congestion) と呼ぶ ネットワーク内のルータに到着するパケットが 一時的にそのルータの処理能力以上に到着したために 処理しきれずにそのルータの中のメモリー ( バッファ ) が一杯になり さらにその際に新たに到着したパケットがバッファに入りきれずに破棄されてしまうことになる パケットが破棄されたことを検出し それを再送する制御を行う パケットの送信量を制御するフロー制御を行う 30 5

ネットワークが混雑 1 バッファがいっぱいになる Si ルータ 輻輳 (congestion) (b) 経路の確認 tranceroute あるホストから宛先ホストへ到達するには いくつかの中継ルータを経由しているが それら途中の中継機器の名前や IP アドレス および各中継機器までの往復遅延時間を知ることができる Windows では tracert コマンド どこを通っているか? クライアント サーバ 2 パケットが破棄される 31 32 traceroute コマンドの使用例 ホスト www.ngi-u.ac.jpまでにどのようなルータを経由したかを表示する 中継ルータについてはIPアドレスで表示されている オプション -a を指定すると機器のホスト名がFQDN(Fully Qualified Domain Name) 形式で表示される % traceroute n www.ngi-u.ac.jp traceroute to www.ngi-u.ac.jp (10.10.10.32), 30 hops max, 20 byte packets 1 192.168.10.16 1 ms 1 ms 1 ms 2 123.123.123.2 11 ms 3 ms 3 ms 3 123.123.123.3 8 ms 6 ms 7 ms ( 途中略 ) 6 10.10.10.2 15 ms 12 ms 20 ms 7 10.10.10.32 15 ms 13 ms 20 ms 33 traceroute コマンドの使用例 ( 続き ) インターネット大学のあるホストから NGI 大学のウェブサーバまで 6 台のルータを経由し 7 回目で目的のウェブサーバに到着 ホップ (hop) とは機器を経由することを意味し NGI 大学のウェブサーバまで 7 ホップであることを意味する 各ホップに対して 3 つの往復時間が示されている 各ホップごとに 3 回調べているからである 30 hops max とは最大 30 ホップまで調べることを示す 34 traceroute の方法 IP データグラムには 宛先 IP アドレスを書き込むためのヘッダがあり そこには他にも様々な情報が書き込まれる IP データグラムのヘッダには その生存時間 (Time To Live, TTL) を表すフィールドがある これは IP データグラムが長い間ネットワーク内を転送され続けることを防ぐために設けられている 送信の際には IP データグラムの生存時間フィールドにある値を書き込み 中継ルータにおいては 1 ずつ減少させ 0 になるとその IP データグラムは破棄される IP データグラムの破棄と同時に ICMP は TTL 超過が生じたことを異常な状態と認識し ICMP エラーメッセージを生成し その IP データグラムの送信ホストに知らせる 35 tranceroute の方法 ( 続き ) 1. TTL を 1 としてパケットを送る 2. 1 ホップ目のルータからエラーメッセージが返ってくる 3. これを 3 回行い 3 パケットの ICMP エラーメッセージが返送され 往復遅延時間が計測される 4. 次に 同様のことを TTL とを 2 として行い さらには宛先ホストに到着するまで TTL を増加させる 経路制御 送信ホストから宛先ホストまでパケットが届けられるためには いくつものルータを経由する ルータは到着パケットの宛先を理解し それをもとに適切な経路を選択し 次のルータに転送する 36 6

ping と traceroute の利用シーン 1. ネットワーク管理者がネットワークの何らかの異常を認識 2. あるホストまで到達できないことを ping で確認 3. どこの中継ルータまで到達できているかを traceroute で調査 ping と traceroute の結果について ICMP パケットを用いており 相手ホストもしくはルータに処理負荷をかけてしまうため この種のパケットを受けつけなかったりする場合がある 受け付けた場合でも 最も低い優先度を与える場合もある 従って この種のコマンドで得られるネットワーク遅延時間の正確さは保証されない 37 アプリケーションプログラムの ftp と telnet を用いた実験 プログラム ftp( 小文字表記 ) はプロトコル FTP( 大文字表記 ) を用いる プログラム telnet( 小文字表記 ) はプロトコル TELNET( 大文字表記 ) を用いる アプリケーションプロトコルは その下の層のトランスポートプロトコルに支えられている トランスポートプロトコルには TCP と UDP の 2 種類があるが HTTP も SMTP も FTP も TELNET も トランスポートプロトコルとして TCP を用いる 38 (a) ファイル転送 (ftp) インターネット初期から 1995 年ごろまではファイル転送がインターネットの主な目的であった FTP (File Transfer Protocol) を利用し 任意の長さのファイルの転送を可能にする サーバ側で ユーザの認証を行い 認証が成功すればユーザに許可を与え そうでなければアクセスを禁止する 情報を開放するために 認証を行わない匿名 FTP サーバ (anonymous FTP server) もある ftp 利用開始 ftp ホスト名を入力すると そのサーバに接続され サーバからユーザ名とパスワードが問われる FTP クライアント FTP サーバ 39 40 ftp コマンドの使用例 ftp を用いて ホスト here.internet-u.ac.jp からホスト there.internet-u.ac.jp にアクセス here% ftp there.internet-u.ac.jp Connected to there.internet-u.ac.jp 220 there.internet-u.ac.jp FTP server ready. Name (there.internet-u.ac.jp): tsukamoto 331 Password: ******** 230 User tsukamoto logged in. ftp> ls ( ファイルの一覧を表示 ) ftp> get test.doc ( ファイル test.doc を here に転送 ) ftp> quit here% 接続したいサーバを指定 接続したファイルを転送する 終了 41 ftp コマンドの使用例 ( 続き ) 1. ホスト there.internet-u.ac.jp 上で稼働している FTP サーバが準備状態 (FTP server ready) になったことが示されている 2. ホスト there.internet-u.ac.jp のファイルへのアクセス権利が認められているか否かを調べるために ホスト there.internet-u.ac.jp で登録しているユーザ名とパスワードの入力を求めている 3. それが認められ プロンプト ftp> が表示されている 4. ftp で利用可能な多数のコマンドのうち ファイルの一覧を見る ls と ファイルを転送してくるための get を用いている 42 7

(b) 遠隔端末アクセス (telnet) 仮想端末機能を提供し 離れた場所にありながら 目の前にあるホストを 遠隔地にあるホスト端末のように利用できる 通信内容を暗号化する等より安全な通信が行える SSH(Secure SHell) もある ローカルホスト %ls file1 file2 % インターネット %ls file1 file2 % 遠隔ホスト 43 telnet コマンドの使用例 telnet を用いて ホスト here.internet-u.ac.jp からホスト there.internet-u.ac.jp にアクセス here% telnet there.internet-u.ac.jp Trying 192.168.38.15... Connected to there.internet-u.ac.jp. Escape character is '^]'. login: tsukamoto Password: ******** ( 途中略 ) there% exit Logout Connection closed by foreign host. 接続したいサーバを指定 44 telnet コマンドの使用例 ( 続き ) 1. telnet で遠隔ホストにアクセスすると Login: というプロンプトが返ってくる 2. そこでユーザ名とパスワードを入力すると 遠隔ホストがプロンプト there を返す 3. これ以降は 目の前のホストは here.internet-u.ac.jp であるが there.internet-u.ac.jp というホストを その前にいるような感覚で利用できる この状態で何らかのコマンドを入力すると それを解釈して応答するのはホスト there.internet-u.ac.jp となる 45 2.4 節までは インターネット技術 (TCP/IP プロトコルスイートに関連する技術 ) の実験 私たちの計算機は LAN を介してインターネットに接続されることが多い ただし LAN においても データリンク層より上の層は TCP/IP プロトコルスイートが用いられている ここでは 1. LAN の技術と TCP/IP を融合するプロトコルである ARP の実験 2. LAN 固有の技術であるデータリンク層における CSMA/CD 方式に関する実験 46 (a) MAC アドレスと IP アドレスの対応 (ARP) LAN においては 一つの伝送媒体を共用するため 効率の良い利用のためのアクセス制御が重要 イーサネットでは 伝送媒体へのアクセス制御に CSMA/CD 方式が採用されている このようなアクセス制御方式は 一般にメディアアクセス制御方式 (Media Access Control, MAC) と呼ばれる したがって データリンク層で用いられるアドレスは MAC アドレスと呼ばれる ( これは IEEE802.3 の用語で イーサネットではイーサネットアドレスと呼ばれる ) MAC アドレスは変更不可 (NIC に書き込まれている ) IP アドレスは経路制御を可能にするアドレスであるが 変更可能 47 ARP(Address Resoulution Protocol) 3 つの識別子 : ホスト名 IP アドレス MAC アドレス ホスト名と IP アドレスの対応付け DNS において データベースを管理するネームサーバが行う IP アドレスと MAC アドレスの対応 ARP が行う ARP は ルータを経由しない範囲において ハブやスイッチングハブなどで接続されたネットワーク内において 全てのホストに問い合わせる この問合せは ブロードキャスト ( 一斉同報 ) 通信による IP アドレスにより問合せがあれば MAC アドレスを返す 一度問い合わせて応答が得られたものは ARP テーブルにキャッシュしておく arp コマンドは ARP テーブルを参照して表示する機能を持つ 48 8

arp コマンドの使用例 (1) ホスト there の MAC アドレスを問い合わせる場合 48 ビットからなる MAC アドレスが 16 進数で表示 %arp there there(192.168.10.48) at 00:12:34:56:78:9A MAC アドレスを知りたいホストを指定 arp コマンドの使用例 (2) オプション -n を指定すると ARP テーブルの内容を全て表示 IP アドレス MAC( ここではイーサネット ) MAC アドレス, ネットワークインターフェースの名称が表示されている オプション -a でホスト名の表示も可能 %arp -n Address HWtype HWaddr Iface 10.0.1.1 ether 00:23:45:67:89:AB eth0 10.0.1.226 ether 00:34:56:78:9A:BC eth0 10.0.1.35 ether 00:45:67:89:AB:CD eth0 49 (b) パケットの衝突 CSMA/CD 方式 イーサネットにおいて 衝突をあまり起こさずに 起こったときに影響を少なくする機構 イーサネットにおいては バス型の接続形態を採用し 各ホストは伝送したいときにパケットを伝送する 複数のホストが同時に伝送すると 干渉し合い電気信号に誤りが生じる 衝突 (collision) 衝突について調査するツールに netstat がある 50 netstat コマンドの使用例 あるホストのイーサネットインターフェースに注目し そこでの衝突の情報を含め OS 内部のネットワーク関連情報を表示する 通信インターフェースの状態 経路制御に用いる表 ( 経路表 ) なども調べることができる %netstat ni Name Mtu Network Address Ipkts Ierrs Opkts Oerrs Coll de0 1500 <Link> 00.12.34.56.78.9A 8982149 0 8871340 2 16 de0 1500 10.0.1/24 10.0.1.1 8982149 0 8871340 2 16 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1インターフェース名 2 最大伝送単位 (Maximum Transfer Unit, MTU) 3ネットワークのアドレス 4ホストのアドレス 5 入力パケット数 6エラー入力パケット数 7 出力パケット数 8エラー出力パケット数 9 衝突パケット数 51 2 章のまとめ 2. インターネットの実験 nslookup whois ping traceroute ftp telnet arp netstat 52 9