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o セメントに対する水の比率を低減するか 鉄筋に対す るコンクリートのかぶりを厚くすること 耐震性 極めて稀に発生する地震に対し 継続利用のための改修の容易化を図るため 損傷のレベルの低減を図ること 大規模地震力に対する変形を一定以下に抑制する措置を講じる [ 層間変形角による場合 ] o 大規模地

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平成 29 年度税制改正 ( 租税特別措置 ) 要望事項 ( 新設 拡充 延長 ) 制度名既存住宅のリフォームに係る特例措置の拡充 税目所得税 ( 国土交通省 ) 既存住宅流通 リフォーム市場の活性化に向けて 耐震性 省エネ性 耐久性に優れた良質な住宅ストックの形成を促進するため 既存住宅の耐震 省

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平成 28 年 12 月 国土交通省住宅局

60 年超土地長期優良住宅の認定制度 長期優良住宅の認定制度 長期優良住宅の普及の促進に関する法律 (H21.6 施行 ) に基づく長期優良住宅に係る認定制度の創設 長期優良住宅の建築 維持保全に関する計画を所管行政庁が認定 認定住宅は 税制 融資の優遇措置や補助制度の適用が可能 認定基準 <1>

設 拡充又は延長を必要とする理由 関係条文 租税特別措置法第 70 条の 2 第 70 条の 3 同法施行令第 40 条の 4 の 2 第 40 条の 5 同法施行規則第 23 条の 5 の 2 第 23 条の 6 平年度の減収見込額 百万円 ( 制度自体の減収額 ) ( - 百万円 ) 東日本大震

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要望理由 (1) 政策目的 既存住宅の流通の円滑化を通じ 既存住宅流通 リフォーム市場の拡大 活性化を図る また 消費者のニーズに応じた住宅を選択できる環境を整備するとともに 既存住宅の耐震化を促進し 住宅ストックの品質 性能を高め 国民の住生活の向上を目指す (2) 施策の必要性 国民がライフステ

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約 6 倍になると予測されており これら高経年マンションが増えていく中 経年による建物 設備の劣化等に対応するための大規模修繕や改修等の資金不足の問題が深刻化している 今後 良質なマンションを維持していくためにも 特にマンション共用部のリフォームについての支援が急務である (4) 賃貸住宅のリフォー

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表 1: フラット35 S( 金利 Bプラン ) の基準省エネルギー性 1 断熱等性能等級 4の住宅 2 一次エネルギー消費量等級 4 以上の住宅 すまい給付金の申請については 従前の省エネルギー対策等級 4により H までに申請した証明書で申請可能です 耐久性 可変性 3 劣化対策等

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平成 31 年度住宅関連税制改正の概要 ( 一社 ) 住宅生産団体連合会 平成 31 年 3 月 (1) 住宅ローン減税の拡充 ( 所得税 個人住民税 ) 消費税率 10% が適用される住宅取得等をして 2019 年 10 月 1 日から 2020 年 12 月 31 日までの間にその者の居住の用に

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( 資料 3) 比較検討した住宅 (%) 注文住宅取得世帯分譲戸建住宅取得世帯分譲マンション取得世帯 中古戸建住宅取得世帯 中古マンション取得世帯 ( 資料 4) 住宅の選択理由 (%) 注文住宅取得世帯分譲戸建住宅取得世帯分譲マンション取得世帯 中古戸建住宅取得世帯 中古マンション取得世帯 ( 資

⑴ 政策目的 市街地再開発事業の推進により 土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図るとともに コンパクトシティの推進及び密集市街地の解消を図る 新設 拡充又は延長を必要とする理由 ⑵ 施策の必要性 以下の施策の推進のため 本措置の延長により 民間事業者による早期かつ着実な保留床の取得を促

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税幅を 1% ずつ小刻みに引き上げるべきであるといった意見も浮上しており 予定通り引上げが実施されるかは 不透明な状況です Q 消費税増税で住宅取得時の税負担は どのくらい増加しますか A そもそも住宅購入にかかる消費税は 土地にはかからず新築物件なら建物部分のみです 仮に図表 1の モデル のよう

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第 7 章 間にその者の居住の用に供したときに 一定の要件の下で そのバリアフリー改修工事等にあてるために借り入れた住宅借入金等の年末残高 (1,000 万円を限度 ) の一定割合を5 年間所得税の額から控除できます なお 52ページの増改築に係る住宅ローン控除制度との選択適用になります 1 控除期

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資料 2009 年 制度拡充チラシ資料 2010 年 制度拡充チラシ いて フラット35 Sの当初 10 年間の金利引下げ幅を年 0.3% から年 1.0% に拡大する制度拡充が実施されました (2010 年 15 日以後の資金受取分から実施し 2010 年 12 月 30 日までの時限措置 ) (

NO 年 1 月 23 日発行 編集 発行公益財団法人住宅リフォーム 紛争処理支援センター 東京都千代田区九段北 九段センタービル3F TEL FAX 消費者が安全で安心して暮らせる豊かな住生活の実現に

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の範囲は 築 20 年以内の非耐火建築物及び築 25 年以内の耐火建築物 ((2) については築 25 年以内の既存住宅 ) のほか 建築基準法施行令 ( 昭和二十五年政令第三百三十八号 ) 第三章及び第五章の四の規定又は地震に対する安全上耐震関係規定に準ずるものとして定める基準に適合する一定の既存

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4. 平成 27 年度税制改正の概要 (1) 住宅の取得に関わる税制 登録免許税 不動産取得税 改正項目ヘ ーシ 改正内容 所有権保存登記 所有権移転登記 所有権の信託 抵当権設定の登記の軽減措置 税率の軽減措置 宅地評価土地の課税標準の軽減措置 軽減税率の適用期限を平成 27 年 3

表紙

( 太陽光 風力については 1/2~5/6 の間で設定 中小水力 地熱 バイオマスについては 1/3~2/3 の間で設定 )) 7 適用又は延長期間 2 年間 ( 平成 31 年度末まで ) 8 必要性等 1 政策目的及びその根拠 租税特別措置等により実現しようとする政策目的 長期エネルギー需給見通

1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

二さらに現代社会においては 音楽堂等は 人々の共感と参加を得ることにより 新しい広場 として 地域コミュニティの創造と再生を通じて 地域の発展を支える機能も期待されている また 音楽堂等は 国際化が進む中では 国際文化交流の円滑化を図り 国際社会の発展に寄与する 世界への窓 にもなることが望まれる

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設 機能の見直しハード面の効率化財源確保1-3. 再配置パターン ( 手法 ) の考え方 再配置計画の検討に向けて 公共施設の再配置を う場合の基本的なパターン ( 手法 ) について整理し それらの効果についても確認していきます 施設の再配置にあたっては 厳しい財政状況の中 人口が減少傾向にあるこ

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[ 図表 35: 見直しのイメージ ] 質の高い施設 安心安全で コストの最適化 施設を安心安全に利用するため 点検 診断を実施し その結果に基づき 必要な対策を適切な時期に着実かつ効率的 効果的に実施します また これらの取組を通じて得られた施設の状態や対策履歴等の情報を記録し 次の点検 診断等に

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図表 2 住宅ローン減税の拡充 消費税率が 5% の場合 消費税率が 8% または 10% の 場合 適用期間 ~2014 年 3 月 2014 年 4 月 ~2017 年末 最大控除額 (10 年間合計 ) 200 万円 (20 万円 10 年間 ) 400 万円 (40 万円 10 年間 ) 控

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( 高齢層では単身世帯が増加 ) 高齢化が進む中で高齢者の単身世帯が急増している 65 歳以上の単身世帯は 2000 年の 407 万世帯から 2016 年には 821 万世帯へと倍増している そして単身無職世帯では消費支出が可処分所得を月 4 万円程度上回り 貯蓄の取り崩しにより 生計を立てている

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特集 5 長寿命化 維持管理 リニューアル 住宅の長寿命化への取組 国土交通省住宅局住宅生産課 今後の住宅政策においては これまでの つくっては壊す フロー消費型社会から いいものをつくっ て きちんと手入れして 長く大切に使う という ストック重視型への転換を図っていく必要がある 国土交通省では 住宅の長寿命化に向けた取組を推進する施策として 住宅の建設 維持管理 資金調 達 流通等の各段階において 総合的な施策を講じているその取組について紹介する キーワード 住宅の長寿命化 長期優良住宅 長期優良住宅先導的モデル事業 住宅履歴情報 既存住宅 リフォーム 1 背景 平成 15 年住宅 土地統計調査によると 総世帯数 約 4,700 万世帯に対し住宅の総ストック数が約 5,400 万戸に達しており 住宅の量的充足という点では一定 程度達成されたといえるその一方で 本格的な人口 減少社会を迎え 世帯数も 2015 年をピークに減少に 転ずるものと推計される中 地球温暖化等の環境問題 の深刻化等の新たな課題への対応が求められているこ と等を踏まえつつ 我が国の住生活の現状を見ると 成熟社会にふさわしい豊かな住生活が実感できている とは言い難い状況にある 図 1 住生活基本法 住生活基本計画 このような状況を踏まえ これまでの 住宅の量の 確保 を中心に据えた政策から 居住環境を含めた 住 生活全般の質の向上 を図る政策への本格的な転換を 図るべく 平成 18 年 6 月に 住生活基本法 が制定され また 同年 9 月には 住生活基本法に掲げられた基本 理念等を具体化し かつ これを推進していくため 以後 10 年間における目標や基本的な施策等を定めた 住生活基本計画 全国計画 が閣議決定された 図 1 2 今後の住宅政策においては この住生活基本法及び 住生活基本計画に基づき これまでの つくっては壊 す フロー消費型の社会から いいものをつくって きちんと手入れして 長く大切に使う というストッ ク重視の社会への転換を図り 成熟社会にふさわしい 豊かな住生活を実現するため 長期にわたって使用可 能な質の高い住宅ストックの形成を図っていく必要が ある 図 2 住生活基本計画 全国計画 平成 18 年 9 月閣議決定

6 建設の施工企画 09. 12 を削減することで住宅に対する国民負担の軽減に寄与 2 住宅の長寿命化の意義 し 経済的なゆとりや豊かさを実感できる社会の実現 今後 急速に世界の人口が増加し 途上国の経済が につながっていくものと考えられる 図 3 4 成長する中で 資源の枯渇とともに地球環境問題が深 刻な課題になると指摘されている一方 我が国の滅 3 住宅の長寿命化に向けた取組とは 失住宅の平均築後年数は約 30 年と短く 住宅の解体 等により 大量の産業廃棄物を発生させており 住宅 長期にわたって使用可能な質の高い住宅ストックの 関連の産業廃棄物は建設産業関連の 2 割以上を占めて 形成を実現するためには これまでの建設時偏重の考 いるこのような中で 住宅を長期にわたり使用し え方から 維持管理や流通の段階を念頭において 各 建替を減らすことは 環境負荷の低減に大きく貢献す 段階における総合的な対策が必要となる 建設段階については 物理的耐用性として 構造躯 るものである また 長期的な視野で見ると 良質な住宅ストック 体の耐久性の確保や配管の点検 維持管理のしやすさ の形成を通じ 住宅の構造躯体の建替にかかるコスト など また社会的耐用性として 将来の間取り変更や 設備の更新のしやすさなどを組み込んでおく必要があ る 維持管理段階については 子の世代 孫の世代 さ らにその先まで住宅が多世代にわたって利用されてい くこととなるため 適切な維持管理計画を策定し こ れに従って 点検し 必要に応じて補修 更新等が行 われるなど 適切かつ計画的な維持管理が実施される ことが必要であり さらに必要な住宅履歴情報を適切 に記録し 保存し 後世代の人たちが活用できるよう にしておくことが求められる住宅履歴情報とは住宅 の新築 改修 修繕 点検時等において 設計図書や 図 3 住宅の長寿命化への取組の推進 図 4 施工内容やそれに関連する情報のことであり このよ 住宅の寿命を延ばす必要性と効果

うな情報が蓄積 継承されていくことにより 適切な 7 表 1 長期優良住宅建築等計画の認定実績 平成 21 年 10 月末時点 リフォームや点検 安心な既存住宅の取引 災害や事 一戸建ての住宅 共同住宅等 24,401 280 合計 故の際の迅速かつ適切な補修が可能となる等の効果が 認定実績 戸数 期待される 一戸建ての住宅 とは 一戸建ての住宅で人の居住の用 に供しない部分を有しないもの 一戸建ての専用住宅 を いう 共同住宅等 とは 共同住宅 長屋 併用住宅その他の 一戸建ての住宅以外の住宅をいう また 形成された良質な住宅ストックが 有効に活 用されるよう 既存住宅の流通が円滑に行われること が必要であり 既存住宅流通の市場環境が整備される 24,681 ことが求められる 4 住宅の長寿命化に向けた取組を推進する 施策 これらのことを踏まえて 国土交通省では住宅の長 寿命化を図るため 住宅の建設 維持管理 資金調達 流通等の各段階において 総合的な施策を講じている 1 長期優良住宅の普及の促進に関する法律 長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講 じられた優良な住宅である 長期優良住宅 について その建築及び維持保全に関する計画を認定する制度の 創設を柱とする 長期優良住宅の普及の促進に関する 法律 が平成 21 年 6 月 4 日に施行された 図 5 図 6 認定長期優良住宅に対する税制 融資の特例措置 本認定制度に係る認定基準は 以下のとおり 表 2 ①住宅の構造及び設備が長期使用構造等であること 図 5 長期優良住宅の普及の促進に関する法律 長期使用構造等とするための措置については 数世 代にわたって使用可能であること 劣化対策 や大規 この法律では 長期優良住宅の普及の促進のため 模な地震後も使用可能であること 耐震性 に加えて 構造躯体の耐久性や内装 設備の維持管理の容易性等 一定程度の間取りの変更が可能であること 可変性 の性能を有し 維持保全計画が策定された住宅を所管 点検 補修 更新などの維持管理が容易であること 維 行政庁が認定する住まい手は 計画に従って建築し 持管理 更新の容易性 を求められるほか 長期に使 維持保全を行い その情報を記録 保存する 用する住宅であれば 政策的な観点から必要とされる 平成 21 年 10 月末までに 24,681 戸の認定 表 1 性能として 将来のバリアフリー改修に対応できるよ が行われ 当該認定を受けた住宅は 住宅ローン減税 う必要なスペースが確保されていること 高齢者等対 の拡充や投資型減税の適用のほか 登録免許税 不動 策 や必要な断熱性等の省エネルギー性能が確保され 産取得税及び固定資産税に係る税負担の軽減を受ける ていること 省エネルギー対策 が求められる ことができる 図 6 ②住宅の規模が国土交通省令で定める規模以上である

8 建設の施工企画 表 2 09. 12 長期優良住宅の認定基準の概要 性能項目等 性能項目等 劣化対策 数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること 耐震性 極めて稀に発生する地震に対し 継続利用のための改修の容易化を図るため 損傷のレベルの低 減を図ること 維持管理 更新の容易性 構造躯体に比べて耐用年数が短い内装 設備について 維持管理 清掃 点検 補修 更新を 容易に行うために必要な措置が講じられていること 可変性 居住者のライフスタイルの変化等に応じて間取りの変更が可能な措置が講じられていること バリアフリー性 将来のバリアフリー改修に対応できるよう共用廊下等に必要なスペースが確保されていること 省エネルギー性 断熱性能等の省エネルギー性能が確保されていること 住戸面積 良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること 居住環境 良好な景観の形成とその他の地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものであること 維持保全の方法 建築時から将来を見据えて 定期的な点検等に関する計画が策定されていること こと こと 国土交通省令で定める規模 については 少なくと 2 もひとつの階の床面積が 40 m 以上であり かつ床面 ⑥資金計画が当該住宅の建築を確実に遂行するために 適切なものであること 2 積の合計が原則 75 m 以上 戸建て住宅の場合共同 住宅等においては 55 m2 以上 であることとされている 2 長期優良住宅先導的モデル事業 ③建築しようとする住宅が良好な景観の形成その他の いいものをつくってきちんと手入れして長く大切 地域における居住環境の維持及び向上に配慮された に使う というストック社会のあり方について 具体 ものであること の内容をモデルの形で広く国民に提示し 技術の進展 ④維持保全の方法が建築後の住宅を長期にわたって良 好な状態で使用できる基準に適合するものであること に資するとともに普及啓発を図ることを目的に 先導 的な材料 技術 システムが導入されるものであって 維持保全の方法の基準については 住宅が多世代 住宅の長寿命化に向けた普及啓発に寄与するモデル事 にわたって利用されていくことを踏まえ 適切な維 業の提案を募り 優れた提案に対して 事業の実施に 持管理計画を策定し これに従って 点検し 必要 要する費用の一部を補助している平成 21 年度から に応じて補修 更新等が行われるなどが必要である は 従来の超長期住宅先導的モデル事業から名称を変 ⑤建築後の住宅の維持保全の期間が 30 年以上である 図 7 更して 引き続き募集を行っている 図 7 長期優良住宅先導的モデル事業の概要

9 3 住宅履歴情報の蓄積 活用 5 既存住宅の流通の円滑化 リフォームの促進 既存住宅の円滑な流通や計画的な維持管理等を行っ 適切に建設 維持管理された住宅の資産価値が適正 ていくためには 新築時の設計図書や施工内容 その に評価されるとともに 消費者が安心して適切なリ 後のリフォームや点検 交換といった履歴情報が適切 フォームを行うこと等を通じて 既存住宅の質の向上 に保存されていることが重要であることから こうし や既存住宅の流通の促進が図られるよう 既存住宅の た履歴情報が確実に蓄積され いつでも活用できる仕 流通の促進及びリフォーム市場の整備のための方策の 組みの整備とその普及を推進している 図 8 あり方について 社会資本整備審議会において審議い ただいている 6 中小住宅生産者による長期優良住宅への取組 の促進 住宅供給の主要な担い手である中小住宅生産者によ る長期優良住宅への取組の促進を図るため 中小住宅 生産者が行う長期優良住宅の供給への取組に対して助 成を行っている 5 おわりに 図 8 住宅履歴情報の蓄積 活用 これらの施策を通じて 国民が自らの努力によって 取得し適切に管理してきた住宅が 市場においてその 4 住宅金融の拡充 質に見合った適切な評価を受けられ 長期にわたって 民間金融機関が 認定長期優良住宅について最長 資産価値が維持向上されるとともに 良質な社会的資 50 年の住宅ローンを供給できるよう 住宅金融支援 産として蓄積されることにより 国民一人ひとりが成 機構が支援している フラット 50 熟社会にふさわしい豊かさを実感し 安心して住まい また 住宅金融支援機構の優良住宅取得支援制度 フ ラット 35S において 認定長期優良住宅等に係る金 利優遇 0.3 金利引き下げ の期間を当初 10 年間か ら 20 年間に延長する措置が講じられている 図 6 続けられる環境の実現を図ってまいりたい