平成 27 年 11 月 30 日 平成 26 年度市町等公営企業決算 地方公営企業会計基準の見直しの影響 ( 概要 ) 地方公営企業会計基準の見直しのため 平成 23 年度に地方公営企業法施行令等が改正され 平成 26 年度予算決算から適用となった 本年度は適用後 初めての決算となり 全国同様 福井県の市町等公営企業決算においても この見直しが大きく決算に影響を与えている 1. 見直しの趣旨 〇昭和 41 年以来の大きな改正により 国際基準を踏まえて見直されている民間の企業会計基準制度と地方公営企業会計制度との違いの整合性を図り 相互の比較分析を容易にする 〇法適用企業 35 事業に適用 県内法適用事業 36 事業のうち 想定企業会計 1 事業 を除く 特別会計廃止後 企業債償還のみの事業 2. 見直しの主な内容 〇固定資産は全て減価償却の対象 補助金等は 負債 に計上 従来は減価償却を行わないことができた補助金等を充当した部分も減価償却を義務化 〇従来は 資本 に計上されていた企業債等を 負債 に計上〇任意とされていた引当金の計上を義務化 従来は任意とされていた引当金退職給付引当金 修繕引当金 特別修繕引当金 賞与引当金 貸倒引当金 3. 見直しの主な効果 〇資産状況や損益構造がより明確化 償却資産はすべて毎年度減価償却するなど 現在の資産価値を適切に表示 本来認識するのが適当な収益 費用を発生時点ですべて計上 - 1 -
4. 平成 26 年度決算のポイント 1. 貸借対照表〇減価償却の見直し等により 総資産が約 750 億円減少 〇資本 (= 借入資本金 ) として計上していた企業債等の負債計上などにより 資本 : 負債の比率が 9:1 2:8 に変化 〇補助金等の計上方法の変更により 資本剰余金の一部を利益剰余金へ振り替えたことにより資本剰余金が減少する一方 利益剰余金は増加し 公営企業全体の累積欠損金が減少 ( 約 40 億円 ) する等 公営企業全体の健全性は維持 法適用企業 (35 事業 ) のうち 33 事業 (94.3%) が資産超過で 資本減少等により 1 事業 (3.0%) が資本不足となっている 2. 損益計算書 会計基準の見直しの影響により約 5 億円の損失を計上したが 特別利益の増により総収支 ( 純損益 ) は平成 25 年度の赤字 ( 約 2 億円 ) から平成 26 年度は黒字 (+ 約 4 億円 ) となる 〇全国では退職給付引当金の一括計上 ( 平成 26 年度のみの措置 ) などの特殊要因により 平成 25 年度の黒字から平成 26 年度は赤字に転じている 会計基準の適用の前後で経営の実態が変わるものではない 貸借対照表 平成 25 年度末の BS 平成 26 年度末の BS 約 750 億円 平成 26 年度地方公営企業決算状況調査による 詳細は別紙のとおり - 2 -
別紙 地方公営企業会計基準の見直しによる 財務諸表への主な影響 ( 対象 : 法適用企業 35 事業 ) 1. 貸借対照表 平成 25 年末のBS 平成 26 年度末のBS 4,895 億 7,293 百万 負債 4,145 億 2,853 百万 資産 資本 借入資本金 資本剰余金 資産 負債 企業債等退職給付引当金 長期前受金資本 利益剰余金 〇会計基準の見直しを受け 1. これまで減価償却を行っていなかった固定資産 ( 補助金等充当部分 ) について すでに償却した部分を減額することにより 固定資産が減少 ( 749 億 5,276 万円 ) 2. 資本剰余金についても これまで減価償却を行っていなかった固定資産 ( 補助金等充当部分 ) に充当された補助金等は すでに償却した部分を減額 ( 資本剰余金の減 ) するとともに 未償却分を資本 (= 資本剰余金 ) から負債 (= 長期前受金 ) に計上 (1,345 億 3,632 万円 ) 3. 企業債等を資本 (= 借入資本金 ) から負債 ( 固定負債又は流動負債 ) に計上 (1,870 億 9,931 万円 ) 4. 退職給付引当金等の計上により 負債に計上する引当金が増加 (+ 21 億 4,166 万円 ) 〇上記見直しにより 1 総資産が 750 億 4,440 万円減少 資本 : 負債の比率が 9:1 2:8 に変化 ただし 返済義務のない負債である長期前受金が含まれている 長期前受金を資本に含めた場合の資本 : 負債の比率は 6:4 2 補助金等の計上方法変更に伴い 資本剰余金の一部を利益剰余金へ振り替えたことにより資本剰余金が減少する一方 利益剰余金は増加 公営企業全体の累積欠損金が減少 ( 39 億 8,906 万円 ) する等 健全性は維持 これまで減価償却を行っていた固定資産に充当された補助金等を 資本剰余金から利益剰余金へ振り替えて計上したため 利益剰余金が増加 (+201 億 3,504 万円 ) 個別に見た場合 法適用企業 35 事業のうち 33 事業 (94.3%) が資産超過 資本の減少等により 1 事業 (3.0%) が資本不足となっている - 3 -
2. 損益計算書 平成 25 年度の PL 平成 26 年度の PL 〇会計基準の見直しを受け 1. これまで減価償却を行っていなかった 補助金等により取得した固定資産について減価償却を行うことにより 費用 ( 減価償却費 ) が増加 (+45 億 2,661 万円 ) 2. 補助金等の減価償却等見合い分について 収益 ( 長期前受金戻入 ) に計上 (+61 億 2,883 万円 ) 3. 退職給付引当金の一括計上等により費用 ( 特別損失 ) が増加 (+21 億 2,216 万円 ) 〇上記見直しにより約 5 億円の損失を計上 1. 会計基準の見直しの影響により 5 億 1,994 万円の損失を計上したが 特別利益の増 (+9 億 5,580 万円 ) など見直しの影響以外の理由により 総収益 (569 億 5,993 万円 ) が総費用 (565 億 3,116 万円 ) を上回り 黒字 (4 億 2,877 万円 ) に転じた 2. 全国では退職給付引当金の一括計上 ( 平成 26 年度のみの措置 ) などの特殊要因により 平成 25 年度の黒字 (+4,159 億円 ) から平成 26 年度は赤字 ( 6,223 億円 ) に転じた - 4 -
平成 26 年度決算における財務諸表の推移 ( 対象 : 法適用企業 35 事業 ) 1. 貸借対照表 資産負債資本 平成 25 年度末 4,895 億 7,293 万円 固定負債 195 億 3,710 万円 引当金 23 億 1,825 万円流動負債 64 億 4,878 万円固定資産 4,537 億 478 万円 減価償却累計額資本金 1,795 億 926 万円 2,215 億 1,184 万円 借入資本金 1,780 億 1,525 万円 企業債等を計上していた 平成 26 年度末 4,145 億 2,853 万円 750 億 4,440 万円 借入資本金を負債計上 (1,738 億 9,435 万円 ) 固定負債 1,793 億 5,745 万円 補助金を充当して (+ 1,598 億 2,034 万円 ) いた未償却分の減 引当金額による減 37 億 2,823 万円 借入資本金を負債計上固定資産 (132 億 496 万円 ) 3,787 億 5,203 万円流動負債 ( 749 億 5,276 万円 ) 214 億 6,557 万円 減価償却累計額 (+150 億 168 万円 ) 2,639 億 3,784 万円 引当金 7 億 3,168 万円 長期前受金を計上繰延収益 1,345 億 3,633 万円 ( 皆増 ) 借入資本金を負債へ計上 資本金 資本剰余金 2,461 億 7,007 万円 流動資産 502 億 1,617 万円 ( 1,712 億 9,567 万円 ) 流動資産 350 億 2,538 万円 補助金等を計上していた 355 億 5,600 万円 (+ 5 億 3,062 万円 ) 資本剰余金 129 億 1,284 万円 ( 2,332 億 5,723 万円 ) 繰延勘定 8 億 4,278 万円 利益剰余金 利益剰余金 繰延資産 160 億 4,017 万円 40 億 9,486 万円 2 億 2,051 万円 (+ 201 億 3,504 万円 ) ( 6 億 2,227 万円 ) 増減の数値は 会計基準の見直しによる影響以外も含む - 5 -
2. 損益計算書 費用 収益 平成 25 年度 平成 26 年度 総費用 総収益 総費用 総収益 507 億 3,242 万円 505 億 3,139 万円 565 億 3,116 万円 569 億 5,993 億円 営業費用 営業収益 営業費用 営業収益 446 億 8,699 万円 432 億 9,883 万円 487 億 9,101 万円 429 億 7,236 万円 減価償却費 料金収入 (+ 41 億 402 万円 ) ( 3 億 2,467 万円 ) 108 億 4,482 万円 402 億 4,921 万円 減価償却費 料金収入 153 億 7,144 万円 401 億 8,325 万円 (+ 45 億 2,661 万円 ) 減価償却費の 営業外費用 58 億 7,979 万円特別損失 1 億 6,565 万円 営業外収益 72 億 2,228 万円特別利益 1,028 万円 大幅増営業外費用 54 億 5,235 万円 ( 4 億 2,744 万円 ) 営業外収益 130 億 2,149 万円 (+ 57 億 9,921 万円 ) 長期前受金戻入 61 億 2,883 万円 ( 皆増 ) 特別損失 22 億 8,781 万円 (+ 21 億 2,216 万円 ) 減価償却等見合い分を計上特別利益 9 億 6,608 万円 (+ 9 億 5,580 万円 ) 退職給付引当金の 一括計上等 増減の数値は 会計基準の見直しによる影響以外も含む 平成 26 年度地方公営企業決算状況調査による - 6 -