平成26年度 第138回 日商簿記検定 1級 会計学 解説

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包括利益の表示に関する会計基準第 1 回 : 包括利益の定義 目的 ( 更新 ) 新日本有限責任監査法人公認会計士七海健太郎 1. はじめに企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 ( 以下 会計基準 ) が平成 22 年 6 月 30 日に

参考 企業会計基準第 25 号 ( 平成 22 年 6 月 ) からの改正点 平成 24 年 6 月 29 日 企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 の設例 企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 ( 平成 22 年 6 月 30 日 ) の設例を次のように改正

085 貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準 新株予約権 少数株主持分を株主資本に計上しない理由重要度 新株予約権を株主資本に計上しない理由 非支配株主持分を株主資本に計上しない理由 Keyword 株主とは異なる新株予約権者 返済義務 新株予約権は 返済義務のある負債ではない したがって

平成28年度 第144回 日商簿記検定 1級 会計学 解説

日本基準基礎講座 資本会計

連結貸借対照表 ( 単位 : 百万円 ) 当連結会計年度 ( 平成 29 年 3 月 31 日 ) 資産の部 流動資産 現金及び預金 7,156 受取手形及び売掛金 11,478 商品及び製品 49,208 仕掛品 590 原材料及び貯蔵品 1,329 繰延税金資産 4,270 その他 8,476

平成30年公認会計士試験

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計算書類等

(2) サマリー情報 1 ページ 1. 平成 29 年 3 月期の連結業績 ( 平成 28 年 4 月 1 日 ~ 平成 29 年 3 月 31 日 ) (2) 連結財政状態 訂正前 総資産 純資産 自己資本比率 1 株当たり純資産 百万円 百万円 % 円銭 29 年 3 月期 2,699 1,23

第 16 回ビジネス会計検定試験より抜粋 ( 平成 27 年 3 月 8 日施行 ) 次の< 資料 1>から< 資料 5>により 問 1 から 問 11 の設問に答えなさい 分析にあたって 連結貸借対照表数値 従業員数 発行済株式数および株価は期末の数値を用いることとし 純資産を自己資本とみなす は

平成 29 年度連結計算書類 計算書類 ( 平成 29 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日まで ) 連結計算書類 連結財政状態計算書 53 連結損益計算書 54 連結包括利益計算書 ( ご参考 ) 55 連結持分変動計算書 56 計算書類 貸借対照表 57 損益計算書 58 株主

連結会計入門 ( 第 6 版 ) 練習問題解答 解説 練習問題 1 解答 解説 (129 頁 ) ( 解説 ) S 社株式の取得に係るP 社の個別上の処理は次のとおりである 第 1 回取得 ( 平成 1 年 3 月 31 日 ) ( 借 )S 社株式 48,000 ( 貸 ) 現預金 48,000

第10期

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【H 改正】株主資本等変動計算書.docx

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1FG短信表紙.XLS

科目 期別 損益計算書 平成 29 年 3 月期自平成 28 年 4 月 1 日至平成 29 年 3 月 31 日 平成 30 年 3 月期自平成 29 年 4 月 1 日至平成 30 年 3 月 31 日 ( 単位 : 百万円 ) 営業収益 35,918 39,599 収入保証料 35,765 3

「中小企業の会計に関する指針《新旧対照表

野村アセットマネジメント株式会社 平成30年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

リリース

野村アセットマネジメント株式会社 2019年3月期 個別財務諸表の概要 (PDF)

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財剎諸表 (1).xlsx

NO 連結精算表科目 & 連結開示 前連結会計 当連結会計 増減差額 科目 借 年度 年度 借方 方 連結借対照表 千円 千円 千円 千円 開 38 社債 20,000,000 5,000,000 開 39 長期借入金 16,500,000 16,071,500 開 40 リース債務 632,000

営業報告書

2019年年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)

企業結合ステップ2に関連するJICPA実務指針等の改正について⑦・連結税効果実務指針(その2)

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CC2: 連結貸借対照表の科目と自己資本の構成に関する開示項目の対応関係 株式会社三井住友フィナンシャルグループ ( 連結 ) 項目 資産の部 イロハ 公表連結貸借対照表 (2019 年 3 月末 ) 現金預け金 57,411,276 コールローン及び買入手形 2,465,744 買現先勘定 6,4

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公開草案 (2) その他利益剰余金 積立金繰越利益剰余金利益剰余金合計 5 自己株式 5 自己株式 6 自己株式申込証拠金 6 自己株式申込証拠金株主資本合計株主資本合計 Ⅱ 評価 換算差額等 Ⅱその他の包括利益累計額 1 その他有価証券評価差額金 1 その他有価証券評価差額金 2 繰延ヘッジ損益

営業活動によるキャッシュ フロー の区分には 税引前当期純利益 減価償却費などの非資金損益項目 有価証券売却損益などの投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目 営業活動に係る資産 負債の増減 利息および配当金の受取額等が表示されます この中で 小計欄 ( 1) の上と下で性質が異なる取引が表示され

(3) 連結キャッシュ フローの状況 営業活動によるキャッシュ フロー 投資活動によるキャッシュ フロー 財務活動によるキャッシュ フロー 現金及び現金同等物期末残高 百万円 百万円 百万円 百万円 27 年 3 月期 495 2,552 5,252 5, 年 3 月期 2,529 71


前連結会計年度 ( 平成 29 年 12 月 31 日 ) 当第 2 四半期連結会計期間 ( 平成 30 年 6 月 30 日 ) 負債の部流動負債支払手形及び買掛金 8,279 8,716 電子記録債務 9,221 8,128 短期借入金 未払金 24,446 19,443 リース

第4期電子公告(東京)

第 3 期決算公告 (2018 年 6 月 29 日開示 ) 東京都江東区木場一丁目 5 番 65 号 りそなアセットマネジメント株式会社 代表取締役西岡明彦 貸借対照表 (2018 年 3 月 31 日現在 ) 科目金額科目金額 ( 単位 : 円 ) 資産の部 流動資産 負債の部 流動負債 預金

(訂正・数値データ修正)「平成29年5月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」の一部訂正について

1. 国際財務報告基準に準拠した財務諸表 ( 抜粋 翻訳 ) 国際財務報告基準に準拠した財務諸表の作成方法について当行の国際財務報告基準に準拠した財務諸表 ( 以下 IFRS 財務諸表 という ) は 平成 27 年 3 月末時点で国際会計基準審議会 (IAS B) が公表している基準及び解釈指針に

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第1章 財務諸表

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貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針(案)

営業活動によるキャッシュ フロー 投資活動によるキャッシュ フロー 財務活動によるキャッシュ フロー 現金及び現金同等物期末残高 百万円 百万円 百万円 百万円 28 年 3 月期 12,634 11,407 4,547 34, 年 3 月期 14, ,391 38,41

添付資料の目次 1. 連結財務諸表 2 (1) 連結貸借対照表 2 (2) 連結損益計算書及び連結包括利益計算書 4 (3) 連結財務諸表に関する注記事項 6 ( セグメント情報等 ) 6 2. 個別財務諸表 7 (1) 個別貸借対照表 7 (2) 個別損益計算書

第21期(2019年3月期) 決算公告

2. 基準差調整表 当行は 日本基準に準拠した財務諸表に加えて IFRS 財務諸表を参考情報として開示しております 日本基準と IFRS では重要な会計方針が異なることから 以下のとおり当行の資産 負債及び資本に対する調整表並びに当期利益の調整表を記載しております (1) 資産 負債及び資本に対する

ずほ証券連結財務諸業績と財務の状況 みずほ証券連結財務諸表み表繰延税金資産 15,653 14,554 当社は 平成 28 年度及び平成 29 年度の連結貸借対照表 連結損益計算書及び連結株主資本等変動計算書について会社法第 444 条第 4 項の規 定に基づき 新日本有限責任監査法人の監査証明を受

企業会計基準第 25 号包括利益の表示に関する会計基準 平成 22 年 6 月 30 日改正平成 24 年 6 月 29 日最終改正平成 25 年 9 月 13 日企業会計基準委員会 目次 項 目的 1 会計基準 3 範囲 3 用語の定義 4 包括利益の計算の表示 6 その他の包括利益の内訳の開示

新旧対照表(計算書類及び連結計算書類)

3. その他 (1) 期中における重要な子会社の異動 ( 連結範囲の変更を伴う特定子会社の異動 ) 無 (2) 会計方針の変更 会計上の見積りの変更 修正再表示 1 会計基準等の改正に伴う会計方針の変更 無 2 1 以外の会計方針の変更 無 3 会計上の見積りの変更 無 4 修正再表示 無 (3)

2019年3月期 中間期決算短信〔日本基準〕(連結):東京スター銀行

決算書(全社) xls

(訂正・数値データ訂正)「平成30年4月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」の一部訂正について

第4期 決算報告書

スライド 1

営 業 報 告 書


連結の補足 連結の 3 年目のタイムテーブル B/S 項目 5つ 68,000 20%=13,600 のれん 8,960 土地 10,000 繰延税金負債( 固定 ) 0 利益剰余金期首残高 1+2, ,120 P/L 項目 3 つ 少数株主損益 4 1,000 のれん償却額 5 1,1

リコーグループサステナビリティレポート p

添付資料の目次 1. 連結財務諸表 2 (1) 連結貸借対照表 2 (2) 連結損益計算書及び連結包括利益計算書 4 (3) 連結財務諸表に関する注記事項 6 ( セグメント情報等 ) 6 2. 個別財務諸表 7 (1) 個別貸借対照表 7 (2) 個別損益計算書

第 151 回日商簿記 2 級解答解説 第 1 問 実教出版株式会社 解答 仕 訳 借方科目金額貸方科目金額 現 金 8,500,000 車両減価償却累計額 760,000 1 商 品 6,100,000 本 店 17,640,000 車 両 3,800,000 2 その他有価証券 2,000,00

計算書類等

第6期決算公告

連結貸借対照表の科目が 自己資本の構成に関する開示項目 のいずれに相当するかについての説明 ( 付表 ) 1. 株主資本 資本金 33,076 1a 資本剰余金 24,536 1b 利益剰余金 204,730 1c 自己株式 3,450 1d 株主資本合計 258,893 普通株式等 Tier1 資

第 14 期 ( 平成 30 年 3 月期 ) 決算公告 平成 30 年 6 月 21 日 東京都港区白金一丁目 17 番 3 号 NBF プラチナタワー サクサ株式会社 代表取締役社長 磯野文久

IFRS基礎講座 IFRS第1号 初度適用

営 業 報 告 書


株式会社神奈川銀行

注記事項 (1) 期中における重要な子会社の異動 ( 連結範囲の変更を伴う特定子会社の異動 ) 無 (2) 会計方針の変更 会計上の見積りの変更 修正再表示 1 会計基準等の改正に伴う会計方針の変更 無 2 1 以外の会計方針の変更 無 3 会計上の見積りの変更 無 4 修正再表示 無 (3) 発行

貸借対照表 (2019 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目 金額 科目 金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 3,784,729 流動負債 244,841 現金及び預金 3,621,845 リース債務 94,106 前払費用 156,652 未払金 18,745


平成 29 年 6 月 26 日株式会社八十二銀行 連結貸借対照表の科目が 自己資本の構成に関する開示項目 のいずれに相当するかについての説明 ( 29 年 3 月期自己資本比率 ) 科 ( 単位 : 百万円 ) 公表連結貸借対照表金額 ( 資 産 の 部 ) 現 金 預 け 金 885,456 コ

IFRS基礎講座 IAS第21号 外貨換算

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山口フィナンシャルグループ:IR資料室>平成30年3月期(平成29年度)>平成30年3月期決算短信



第28期貸借対照表

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連結貸借対照表のが 自己資本自己資本の構成構成に関するする開示項開示項 のいずれにのいずれに相当相当するかについてのするかについての説明 ( 付表 ) (2018 年 9 月期自己資本比率 ) ( 注記事項 ) の については 経過措置勘案前の数値を記載しているため 自己資本に算入されているに加え


2019 年 3 月期 第 2 四半期決算短信 日本基準 ( 連結 ) 2018 年 10 月 30 日 上場会社名 日本冶金工業株式会社 上場取引所 東 コード番号 5480 URL 代 表 者 ( 役職名 ) 代表取締役社長 ( 氏名 ) 木村 始 問合


2018年12月期.xls


第 32 期 計算書類 自 至 2018 年 4 月 1 日 2019 年 3 月 31 日 株式会社 NHK グローバルメディアサービス

平成 30 年 4 月 24 日 各 位 会社名楽天株式会社 代表者名代表取締役会長兼社長三木谷浩史 ( コード :4755 東証第一部 ) 連結子会社 ( 楽天証券株式会社 ) の決算について 当社連結子会社の楽天証券株式会社 ( 代表取締役社長 : 楠雄治 本社 : 東京都世田谷区 以下 楽天証

Microsoft Word 【公表】HP_T-BS・PL-H30年度

第1章 簿記の一巡

中部電力グループ アニュアルレポート 2019

Microsoft Word 決算短信修正( ) - 反映.doc

Transcription:

平成 26 年度第 138 回日商簿記検定試験 1 級 - 会計学 - 解 説 第 1 問 1 ヘッジ会計とは ヘッジ取引のうち一定の要件を満たすものについて ヘッジ対象に係る損益とヘッジ手段に係る損益を同一の会計期間に認識し ヘッジの効果を会計に反映させる特殊な会計処理のことをいう ( 金融商品に関する会計基準 29 参照 ) ヘッジ会計の会計処理には 繰延ヘッジと時価ヘッジの 2 種類の会計処理がある 繰延ヘッジとは 時価評価されているヘッジ手段に係る損益または評価差額を ヘッジ手段に係る損益が認識されるまで純資産の部において繰り延べる方法であり 原則的な評価方法である 一方 時価ヘッジとは ヘッジ対象である資産又は負債に係る変動相場等を損益に反映させることにより その損益とヘッジ手段に係る損益とを同一の会計期間に認識する方法である ( 金融商品に関する会計基準 32 参照 ) 現在時価ヘッジが適用できるのはヘッジ対象がその他有価証券である場合のみである したがって ヘッジ対象に係る損益をその変動時に計上する方法は時価ヘッジであり ヘッジ手段の損益計上をヘッジ対象の損益計上時にあわせるのが繰延ヘッジである 2 正規の簿記の原則とは 企業会計は すべての取引につき 正規の簿記の原則に従って 正確な会計帳簿を作成しなければならないことを要請する原則である ( 企業会計原則 第一 二参照) ここで正規の簿記の原則は 第一に会計帳簿を一定の要件 ( 網羅性 検証可能性 秩序性 ) に従って正確に作成すること 第二に会計帳簿と財務諸表との間において 有機的な関連性を保持すべきことを要求している原則である また 本来であれば簿外資産 簿外負債は認められないが 重要性の原則により簡便な会計処理を適用した結果生じた簿外資産 簿外負債である限り 正規の簿記の原則にしたがった会計処理であるとして認められている ( 企業会計原則 第三 一 ただし書き参照) 3 消費税の会計処理には 税抜方式と税込方式の二つの会計処理が存在する 税抜方式とは 仮受消費税および仮払消費税勘定を用いて処理する会計処理であり 税込方式とは 対価部分と消費税部分を分けない会計処理方法である 4 割賦販売については 原則として商品を引き渡した時点で現金ないしは現金同等物を受領しているため この時点で売上収益を計上するのが原則である しかし 割賦販売については 代金の回収が通常の売掛金に比べて不確実であり かつ 多額のコストを有することになる したがって 収益の計上を慎重に行うために 販売基準に変えて割賦基準 ( 回収基準または回収期限到来日基準 ) により売上収益を計上する方法も認められている ( 企業会計原則注解 注 6⑷ 参照 ) 割賦基準とは 代金回収時点で収益を認識するのが回収基準であり 代金回収の有無にかかわらず回収期限の到来の日をもって収益を認識するのが回収期限到来日基準 ( 支払期日到来日基準 ) である 1/6

第 2 問 1. 包括利益の目的包括利益を表示する目的は 期中に認識された取引及び経済事象 ( 資本取引を除く ) により生じた純資産の変動を報告することである 包括利益の表示よって提供される情報は 1 投資家等の財務諸表利用者が企業全体の事業活動について検討するのに役立つことが期待されるとともに 2 貸借対照表との連携すなわちクリーン サープラス関係を明示することを通じて 財務諸表の理解可能性と比較可能性を高め また 3 国際的な会計基準とのコンバージェンスにも資するものと考えられる ( 包括利益の表示に関する会計基準 21 参照 ) ここで クリーン サープラス関係とは ある期間における資本の増減 ( 資本取引による増減を除く ) が当該期間の利益と等しくなる関係をいう クリーン サープラス関係 B / S I / S 一致期末純資産 - 期首純資産収益 - 費用 純資産の変動額 一致 純利益 証券金融経済の発展により資産 負債の時価評価を行うと その他有価証券評価差額金等が生じるため純利益と純資産の変動額が一致しないことになる 期末純資産 - 期首純資産 純資産の変動額 不一致 一致 収益 - 費用 ± その他の包括利益包括利益 2. 包括利益の意義包括利益とは ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち 当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分をいう 当該企業の純資産に対する持分所有者には 当該企業の株主のほか当該企業の発行する新株予約権の所有者が含まれて 連結財務諸表においては 当該企業の子会社の少数株主も含まれる ( 包括利益の表示に関する会計基準 4 参照 ) 3. その他の包括利益の意義その他の包括利益とは 包括利益のうち当期純利益および少数株主損益に含まれない部分をいう ⑴ 個別財務諸表におけるその他の包括利益その他の包括利益 = 包括利益 - 当期純利益 ⑵ 連結財務諸表におけるその他の包括利益その他の包括利益 = 包括利益 - 少数株主損益調整前当期純利益 2/6

4. 組替調整 ( リサイクリング ) 当期純利益を構成する項目のうち 当期又は過去の期間にその他の包括利益に含まれていた部分は 組替調整額として その他の包括利益の内訳項目ごとに注記する ( 包括利益の表示に関する会計基準 9 参照 ) 組替調整額を開示することにより その他の包括利益の内訳項目の分析が容易になる また この組替調整額を加味することにより 包括利益の観点から利益の二重計上 または当期純利益と包括利益の間における利益の二重計上を防ぐことができる ⑴ その他有価証券に係る組替調整額その他有価証券評価差額金に係る組替調整額は 当期に計上された売却損益および減損損失等 当期純利益に含められた金額による ⑵ 為替換算調整勘定に係る組替調整額為替換算調整勘定に係る組替調整額は 子会社に対する持分の減少 ( 全部売却および清算を含む ) に伴って取り崩されて当期純利益に含められた金額による ( 包括利益の表示に関する会計基準 31 参照 ) < 具体例 > 1 前期に 1,000 円の元手により A 社株式 ( 取得価額 1,000 円 ) をその他有価証券として保有する目的で取得した 2 前期末の時価は 1,500 円であった 3 A 社株式を 1,700 円で売却し現金で受け取った 前期末貸借対照表当期末貸借対照表投資有価証券 1,500 資本金 1,000 現金 1,700 資本金 1,000 その他有価証繰越利益剰余金 700 券評価差額金 500 期末純資産 - 期首純資産不一致 (1,700-1,500) 純資産の変動額 (200) 一致 収益 - 費用 ( 投資有価証券売却益 700) ± その他の 500 包括利益包括利益 (200) 当期発生額 ( 200 ) 組替調整額 ( 700 ) ( 500 ) 前期にその他の包括利益として 500 円が計上されているため この金額をそのままその他の包括 利益として計上したままにすると当期の売却益に含まれている金額が二重計上 (500 円 ( その他の 包括利益 )+700 円 ( 投資有価証券の売却益 )) になるため 組替調整 ( 500 円 ) を行うことによ り 包括利益の観点から二重計上が回避できることになる 3/6

5. 包括利益の内訳 連結ベースの有価証券明細 ( 単位 : 千円 ) X2 年度 : 当期変動額 保有会社 銘柄 評価差額 税効果調整前繰延税金税効果調整後 P 社 A 社株式 200 80 120 A 社株式以外 200 80 120 S 1 社 B 社株式 1,000 400 600 合 計 1,400 560 840 少数株主持分 20% 200 80 120 合計 ( 親会社分 ) 1,200 480 720 ⑴ 少数株主に係る包括利益 3,000 千円 -1,000 千円 60%(B 社株式 ) 20%=2,880 千円 ⑵ 親会社株主に係る包括利益 7,000 千円 -1,000 千円 60%(B 社株式 ) 80%-120 千円 (A 社株式 ) -120 千円 (A 社株式以外 )+100 千円 ( 為替換算調整勘定 )=6,380 千円 からのお知らせ 自分の未来を考えるセミナー 未来塾 を開催します 何のために働くのか? 本当の学力を身に付けること とは? 考える力を身に付けること とは? これからの進路について 一緒に考えましょう 開催日時 :11/29(13:00~16:30) 体験入学会のご案内 では 体験入学会 を開催しています 当日は授業体験の他 様々な相談にもお答えいたします 自分の未来を真剣に考えてみませんか? ご家族の方も ぜひ お気軽にご参加下さい 開催日時 :11/22(10:00~15:00 昼食付 ) 詳しくはwebまた下記の連絡先まで web. http://www.cpa-net.ac.jp/ mail. cpa@cpa-net.ac.jp tel. 0120-55-1937( 月 ~ 土 :9:00~19:00) 4/6

6. その他の包括利益の金額の内訳図 取得時 X1 年 3/31 X2 年 3/31 <P 社保有 > A 社株式 1,000 千円 A 社株式以外 2,000 千円 <S 1 社保有 > B 社株式 600 千円 <S 2 社 > 為替換算調整勘定 <S 3 社 > その他有価証券評価差額金売却 1,200 千円 1,080 千円 200 千円当期発生額 120 千円組替調整額 80 千円その他有価証券評価差額金その他有価証券評価差額金 2,500 千円 500 千円 200 千円当期発生額 200 その他有価証券評価差額金売却 1,600 千円 1,400 千円 1,000 千円当期発生額 200 千円組替調整額 800 千円 500 千円 2,300 千円 為替換算調整勘定 300 千円 700 千円当期発生額 400 千円 ⑴ その他有価証券 1 当期発生額 A 社株式 :1,080 千円 ( 売却価額 )-1,200 千円 ( 前期末 )= 120 千円 A 社株式以外 :2,300 千円 ( 当期末時価 )-2,500 千円 ( 前期末時価 )= 200 千円 S 1 社保有 B 社株式 :1,400 千円 ( 売却価額 )-1,600 千円 ( 前期末時価 )= 200 千円 2 組替調整額 A 社株式 :1,000 千円 ( 取得価額 )-1,080 千円 ( 売却価額 )= 80 千円 S 1 社保有 B 社株式 :600 千円 ( 取得価額 )-1,400 千円 ( 売却価額 )= 800 千円 3 税効果調整額 {520 千円 ( 当期発生額 )+880 千円 ( 組替調整額 )} 40%=560 千円 5/6

⑵ 為替換算調整勘定 1 当期発生額 S 3 社 :700 千円 ( 当期末 )-300 千円 ( 前期末 )=400 千円 2 組替調整額 S 2 社 :500 千円 3 税効果調整額 500 千円 40%=200 千円 為替換算調整勘定は 純資産の部に計上されるため 子会社への投資に係る一時差異を構成する ただし 税効果会計の適用上 為替換算調整勘定に係る税効果は 主に投資会社が株式を売却することによって実現するものである このため 子会社株式の売却の意思が明確な場合に限り税効果会計を適用することになる なお 税効果会計を適用する場合 純資産の部のその他の包括利益累計額に計上される為替換算調整勘定は 繰延税金資産又は繰延税金負債を控除した額となる 第 3 問 固定資産の減損に関する会計基準 2 ⑴ 6/6