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は Blue Print for Air Transportation にて民間航空長期計画を作成 アクションプラン DGCA 5-Year Strategic Plan を作成した上 航空安全に係る総合的な対策の強化を図っており 本事業はこれに寄与するもので

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ログラムの審査に産業界からも参画を得ることで 大学がエンジニア予備軍である学部学生に対し社会のニーズに即した教育を実践できるよう 促進する役割を果たしている かかる状況の下 エンジニアの量的拡大が質を伴う形で実現されるよう インドネシア政府は我が国に対し LAM-PS としての インドネシアエンジニ

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(CANACINTRA) 等と連携を図りつつ設置する案を有しており 国家中小企業コンサルタント養成 認定制度を具現化するためにいかにして事業を進めていくかが課題となっている (2) 相手国政府国家政策上の位置づけカルデロン大統領は 近代的かつ競争力のある経済の強化及び雇用の創出 を 治安 貧困撲滅

事業事前評価表

事業事前評価表

護ディプロマ課程を 3 年制看護ディプロマ課程に変更したのに加え ディプロマ課程看護師の現任研修により学士が取得できる 2 年制ポスト ベーシック課程とは別に大学教育として看護学士課程制度 (4 年制 ) を導入することを定めた 学術的に高度な 4 年制看護学士課程の卒業生は輩出されたばかりであるが

事業事前評価表

事業事前評価表 ( 地球規模課題対応国際科学技術協力 SATREPS) 国際協力機構農村開発部農業 農村開発第一グループ第二チーム 1. 案件名国名 : インドネシア共和国案件名 : 和名 ( 科学技術 ) 食料安全保障を目指した気候変動対応策としての農業保険における損害評価手法の構築と社会実装英名

(Microsoft Word - \216\226\221O\225]\211\277\225\\ doc)

事業事前評価表 1. 案件名 ( 国名 ) 国際協力機構南アジア部南アジア第四課 国名 : バングラデシュ人民共和国案件名 : 貧困削減戦略支援無償 ( 教育 ) (Poverty reduction efforts) 2. 事業の背景と必要性 (1) 当該国における初等教育セクターの現状と課題バン

援 GHGインベントリ策定にかかる技術移転等 気候変動対策を推し進めるための包括的な支援を実施した 同プロジェクトの成果として 国家気候変動緩和行動計画 (RAN-GRK) に基づき州気候変動緩和行動計画 (RAD-GRK) の策定が進められるとともに 国家気候変動適応行動計画 (RAN-API)

欠であり 運輸交通分野を中心に膨大なインフラ投資が必要になると見込まれる これらのインフラ整備にあたっては 案件ごとにマスタープランから工事まで段階を踏んで検討 建設が進められるが 対象地の地形などを確認 把握するため 検討段階に応じた精度の地図が必要となる 現在 同国では基本的な測地基準点網が整備

政府説明資料


政府説明資料

令 (2006 年 5 号 ) では 2025 年までの国家エネルギー政策の数値目標を設定し エネルギー供給量に対する新 再生可能エネルギーの目標値を 17%( うち地熱エネルギーは 5 %) に定めた また 2010 年の Vision 25/25 において 新 再生可能エネルギーの目標値を 25

事業事前評価表

Microsoft Word - 事前評価表最終版0623final.doc

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事業事前評価表 国際協力機構産業開発 公共政策部資源 エネルギーグループ第二チーム 1. 案件名国名 : ザンビア共和国案件名 : 和名ザンビアにおける鉛汚染のメカニズムの解明と健康 経済リスク評価手法および予防 修復技術の開発英名 The Project for Visualization of

事業事前評価表

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

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(2) 当該国における地震防災分野の開発政策と本事業の位置づけネパール政府は 2009 年に災害リスク国家管理戦略を制定し 対象災害の一つとして地震を上げている 地震防災分野は 2009 年に設置された National Platform for Disaster Risk Reduction にお

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事業事前評価表

ジャカルタ大都市圏空港整備計画調査の必要性については JICA が 2008 年 1 月に実施した 次世代航空保安システム整備に係るフィージビリティー調査 でも提言がなされており 既存空港の拡張及び効率的運用を含めたジャカルタ首都圏周辺の適切な空港整備に係る長期的な計画を策定する必要性は高い インド

2008年6月XX日

事業事前評価表

無償資金協力 案件概要書 2017 年 8 月 29 日 1. 基本情報 (1) 国名 : カンボジア王国 (2) プロジェクトサイト / 対象地域名 : シハヌークビル特別市 プノンペン (3) 案件名 : 港湾近代化のための電子情報処理システム整備計画 (The Project for Port

事業事前評価表

事業事前評価表

研究は重要項目とされている 本事業は CERMEL と長崎大学の共同研究を通じて 1 対象地域におけるウイルス感染症の流行状況の解明 2 新規に同定されたウイルスの性状解析 3 公衆衛生対策上優先度の高いウイルスに対する診断法の開発を行い ガボン側研究機関のウイルス感染症研究開発の能力向上に貢献する

事業事前評価表

事業事前評価表_新様式

架鉄道三路線 ( うち 二路線は軽量 ) の総延長は 50km にとどまっている 首都圏南方については マニラ市ツツバンからカブヤオ市ママティッドまでの区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみである 首都圏北方は 居住エリアが拡大しているものの 十分な公共交通手段が確保されていないた

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区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみであり 十分な公共交通手段が確保されていないため 同エリアと周辺に住む住民はバスや自動車等により通勤しているが 道路の混雑により 通勤に大きな支障が出ている 加えて 南北鉄道事業南線 ( 通勤線 ) ( 以下 本事業 という ) の対象区間には

DDL12Prnt001

社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

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Microsoft Word - 事前評価

5 この施策に係る事務事業 ( 重要度 貢献度順 ) 番号 事務事業名 魅力個店づくり整備促進事業 歳出決算額 ( 千円 ) 施策への関連性 目的に対する指標 年度目標値 年度実績値 推移 区内の既存個店や出店希望 22 者が行う 魅力的な店舗づ 809 くりを支援することで 魅 力個店の集積を図る

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政府説明資料

評価調査結果要約表 1. 案件概要 国名 : メキシコ合衆国案件名 : メキシコ国電子分野における研究 教育手法の開発分野 : 中小企業振興援助形態 : 技術プロジェクト所轄部署 : 中南米部中米 カリブチーム協力金額 ( 評価時点 ):20,375 千円協力期間 (R/D):2003 年 11 月

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

の理解と参加を促進し, 開発協力を支える社会的基盤をより一層広げ, 強化するために, NGO/ 市民社会 (CSO) との連携が推進されるべきことが謳われたところである 以上の経緯と背景の下に NGO と ODA の連携に関する中期計画 ~ 協働のための 5 年間の方向性 ~ が策定されることとなっ

(Microsoft Word - \201\2403-1\223y\222n\227\230\227p\201i\215\317\201j.doc)

(Microsoft Word - \216\226\213\306\216\226\221O\225]\211\277\225\\Fin.doc)

国 アメリカ ロシアに次いで世界第 4 位の電力消費国となっている (2014 年 ) 国内の電力供給に関しては 1,114,408GWh の需要に対して供給量は 1,090,851GWh と 2.1% の不足 供給能力もピーク時 153,366MW の需要に対して 148,463MW と 3.2%

112 条においても 自由特区の拡大が謳われている 現在ゲシュム島と本国を結ぶ橋を建設中 (3 年後に完成予定 ) で 島内の港を拡張する計画もあり イランにのみならず 独立国家共同体 ( 以下 CIS) 諸国等への物流経路としても ゲシュム島の経済的重要性は今後益々高まると考えられる ゲシュム島の

0528事業事前評価表(円借款+附帯技プロ)final.doc

と衝突して沈没し 147 人が死亡 2014 年 8 月にはパドマ川で約 250 人を乗せたフェリーが荒天のため転覆し 110 人が死亡等の大事故が発生している また 同国は 雨季には大型サイクロンが度々ベンガル湾から来襲し 沿岸部で遭難事故が多発するなど 地理的に自然災害の影響を受けやすい地域であ

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地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム (SATREPS) JST 中間評価 1 の実施要領 平成 29 年 6 月改定 JST 国際部 SATREPS グループ 1. 地球規模課題国際科学技術協力 (SATREPS) プロジェクトの中間評価について SATREPS は JST による研究支援お

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国営農地再編整備事業 ニセコ地区 事業の概要あぶたぐん本事業は 北海道南西部に位置する虻田郡ニセコ町の畑地帯において 区画整理を行い 生産性の高い基盤の形成を通じて農業の振興と耕作放棄地の解消 発生防止を図るものである 事業の目的 必要性本地区の農地は 基盤整備が遅れているため 小区画や急傾斜であり

Microsoft Word - 【外務省】インフラ長寿命化(行動計画)

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新興国市場開拓事業平成 27 年度概算要求額 15.0 億円 (15.0 億円 ) うち優先課題推進枠 15.0 億円 通商政策局国際経済課 商務情報政策局生活文化創造産業課 /1750 事業の内容 事業の概要 目的 急速に拡大する世界市場を獲得するためには 対象となる国 地

新JICAにおける事前評価(技協・無償)について

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24 ごみ減量分野様式 2 ごみゼロをめざすまち 分野目標 1 ごみゼロ都市 なかの を実現するために 区民 事業者 区が連携して3Rの取組みを進め ごみの排出量が減少するまちをめざす 2 循環型社会を実現するために 資源の再使用 再生利用などの資源の有効利用が広がっているまちをめざす 成果指標 区

事業事前評価表_新様式

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平成 29 年 4 月 12 日サイバーセキュリティタスクフォース IoT セキュリティ対策に関する提言 あらゆるものがインターネット等のネットワークに接続される IoT/AI 時代が到来し それらに対するサイバーセキュリティの確保は 安心安全な国民生活や 社会経済活動確保の観点から極めて重要な課題

事業事前評価表 ( 地球規模課題対応国際科学技術協力 (SATREPS)) 農村開発部農業 農村開発部第二グループ 1. 案件名国名 : スーダン共和国案件名 : 和名ストライガ防除による食料安全保障と貧困克服英名 The project for development of counter mea

Microsoft Word - MMR事業事前評価表.doc

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を余儀なくされている発表されている このような状況下 当国 NGO カサ アリアンサは 1988 年の設立以来 メキシコ市において路上生活を営む子供の保護 心身のケア 家族との再会支援 社会的自立に向けた教育支援に取り組んできた JICA は 2000 年 12 月から 3 年間 カサ アリアンサを

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事業事前評価表 ( 地球規模課題対応国際科学技術協力 (SATREPS)) 国際協力機構地球環境部防災第一チーム 1. 案件名国名 : フィリピン共和国案件名 : 和名 フィリピンにおける極端気象の監視 情報提供システムの開発 英名 The Project for Development of Ex

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資料2 紙類の判断の基準等の設定に係る検討経緯について

プロジェクト ( 年 ) 独 (KfW): 西ナイル地区に特化した配電網の拡充 小水力の開発 ( 年 ) 3. 事業概要 (1) 事業の目的ウガンダにおける産業活性化が期待できる地方において 長距離配電線 (33kV 配電線 ) の資機材の調達 据付を行うことによ

事業事前評価表 ( 開発計画調査型技術協力 ) 作成日 :2016 年 7 月 11 日担当部署 : 産業開発 公共政策部民間セクターグループ第二チーム 1. 案件名国名 : エチオピア連邦民主共和国案件名 : ( 和名 ) 産業振興プロジェクト ( 英名 )Industrial Promotion

支援 及び 不均衡の是正と安全な社会造りへの支援 の中で重点分野として掲げており また JICA も国別分析ペーパーの協力プログラムにおいて 首都圏の都市基盤整備プログラム や 地方開発 拠点都市圏整備プログラム の中で開発課題として位置づけている 上水道セクターにおいては 日本は下記 3.(9)

( 参考様式 1) ( 新 ) 事業計画書 1 事業名 : 2 補助事業者名 : 3 事業実施主体名 : Ⅰ 事業計画 1 事業計画期間 : 年 月 ~ 年 月 記載要領 事業計画期間とは 補助事業の開始から事業計画で掲げる目標を達成するまでに要する期間とし その期限は事業実施年 度の翌年度から 3

資料 5 総務省提出資料 平成 30 年 12 月 21 日 総務省情報流通行政局

(1) 参加資格のない社等 : 特になし (2) 必要予防接種 : なし 6. 業務の背景サルト市は 19 世紀後半から 20 世紀初めに通商で栄えた街で サルト周辺で砕石された黄色石灰岩を用い当時のヨーロッパの建築様式とイスラム建築様式を融合させて建てられた特有の建造物が街の中心部に残り 今も伝統

により 都市の魅力や付加価値の向上を図り もって持続可能なグローバル都 市形成に寄与することを目的とする活動を 総合的 戦略的に展開すること とする (2) シティマネジメントの目標とする姿中野駅周辺や西武新宿線沿線のまちづくりという将来に向けた大規模プロジェクトの推進 並びに産業振興 都市観光 地


(4) 対象区域 基本方針の対象区域は市街化調整区域全体とし 都市計画マスタープランにおいて田園都市ゾーン及び公園 緑地ゾーンとして位置付けられている区域を基本とします 対象区域図 市街化調整区域 2 資料 : 八潮市都市計画マスタープラン 土地利用方針図

子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

市町村における住民自治や住民参加、協働に関する取組状況調査

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責任ある農業投資 - 原則の策定に向けた背景と概要 年 7 月 外務省

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事業事前評価表


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事業事前評価表 1. 案件名国名 : ラオス人民民主共和国案件名 : ルアンパバーン世界遺産の持続可能な管理保全能力向上プロジェクト Project for Capacity Enhancement for Sustainable World Heritage Management and Preservation in Luang Prabang 2. 事業の背景と必要性 (1) 当該国におけるルアンパバーン地域の開発実績 ( 現状 ) と課題ラオス人民民主共和国 ( 以下 ラオス という ) においては 首都ビエンチャンを初めとする首都圏の経済が発展し貧困度が低下する一方で ルアンパバーン県を初めとする地方部においては依然貧困度が高い状況と 地域間の経済格差是正が求められている 地方部に立地するラオス北部の主要都市であるルアンパバーン郡は 世界遺産にも指定されている遺産地区の景観等を求めて 近年は観光客急増 (2015 年は過去最高の 60.8 万人を記録した ) を通じて経済が発展しつつある 同郡の観光による経済的裨益を 開発が進んでいないルアンパバーン県全域にその経済効果を波及させることが期待されており ルアンパバーン県政府は一層の観光客増 (2020 年に 91.2 万人を目標としている ) による経済振興を目指している 一方で 遺産地区への観光客の大幅な増加や ゲストハウス等への建物の用途変換による地域住民の減少 自動車交通 廃棄物 汚水排出の増大による環境悪化により 遺産地区内の伝統的景観や伝統文化といった遺産地区の魅力喪失が懸念される状況となっている また 将来予定されている中国とラオスを結ぶ高速鉄道の開通により ルアンパバーン遺産地区への開発圧力は一層高まることが予想される しかしながら 遺産地区において資金確保を含む維持管理体制が脆弱な中 この状況を放置しておくと遺産地区の有する魅力が減じることが危惧される状況となっており ひいてはルアンパバーン県の経済発展の牽引車として期待されている 同地区の観光産業にも悪影響を与える恐れがある また 現在は観光客増による経済裨益は遺産地区に集中しており ルアンパバーン県他地域への裨益は限定的な状況である しかし ルアンパバーン県経済の中核を担う観光産業をさらに発展させるためには 遺産地区外の県全域を対象とした地域振興 具体的には遺産地区外の新規観光地の開拓や 遺産地区外で作成されている工芸品や農作物の訪問観光客への販売促進と言ったことが必要となっている 1

そのためには 遺産地区で必要な資金確保を含む維持管理体制構築や ルア ンパバーン県全域に裨益する地域振興の実践による 県全体の経済執行促進に よる地域間格差是正が課題となっている (2) 当該国におけるルアンパバーン地域の開発政策と本事業の位置づけラオス政府による 第 8 次国家社会経済開発 5 か年計画 (2016 年 ~2020 年 ) では 1995 年にユネスコ世界遺産登録されたルアンパバーン県の歴史的遺跡 景観といった観光資源の活用による地域振興 雇用創出等が謳われている 本事業は 上記開発政策に沿って実施するものである (3) ルアンパバーン地域に対する我が国及び JICA の援助方針と実績対ラオス人民民主共和国 JICA 国別分析ペーパーでは 産業振興や観光振興のポテンシャルを有する首都及び中核都市 ( ルアンパバーンを含む 4 県 ) における都市交通 上下水道 廃棄物処理等の都市インフラの改善に資する 都市環境整備 や 観光業を初め外貨獲得機会の拡大に寄与する 民間セクターの強化 を重点分野としている また 我が国の対ラオス人民民主共和国国別援助方針 (2012 年 ) においても 経済 社会インフラ整備 が重点分野として位置付けられ 環境と調和した快適な社会構築に資する支援 を掲げており 本事業はこれら分析 方針に合致する また 2016 年 9 月に開催された日 ラオス首脳会談時に打ち出された ラオスの持続的な発展に向けた日本 ラオス開発協力共同計画 において 世界遺産都市であるルアンパバーンを含む地方都市における持続的な開発 に共同で取り組むことが言及されている (4) 他の援助機関の対応アジア開発銀行 (ADB) フランス開発庁(AFD) ドイツ国際協力公社(GIZ) 等がルアンパバーン県の世界遺産地区及びその周辺において 遺産保全 観光開発 インフラ整備事業 ( アクセス道路敷設 排水設備の設置 ) を実施している 3. 事業概要 (1) 事業目的 ( 協力プログラムにおける位置づけを含む ) 本事業は ルアンパバーン県において 遺産地区の維持管理体制強化および周辺地域での地域振興に関する実証事業の実施により 関係機関職員のルアンパバーン遺産地区の維持管理及びルアンパバーン県全域を対象とした地 2

域振興実施に関する能力が向上し もってルアンパバーン県の地域開発促進及び格差是正に寄与するものである (2) プロジェクト対象地域名ルアンパバーン県全域 ( 面積 :16,875km 2 人口:43 万人 (2015 年 )) (3) 本事業の受益者 ( ターゲットグループ ) 直接受益者 : ルアンパバーン遺産地区及び実証事業実施地区の住民間接受益者 : ルアンパバーン県民 同県を訪問する観光客 (4) 事業スケジュール ( 協力期間 ): 2018 年 2 月 ~2021 年 2 月 (5) 総事業費 ( 日本側 ):3.0 億円 (6) 相手国側実施機関 : ルアンパバーン県政府情報文化観光局 同世界遺産事務所 (7) 投入 ( インプット ) 1) 日本側 1 長期専門家 ( 総括 / プロジェクト管理 1 業務調整/ プロジェクト管理 2) 2 短期専門家 ( 遺産地区保全管理 遺産地区保全基金 住民啓発 観光資源開発 手工芸 地産地消 広報 観光マーケティング等 ) 3 本邦研修 4 資機材供与 ( 事務機器等 ) 5 実証事業実施経費 2) ラオス側 1カウンターパートの配置 2 日本人専門家への便宜供与 ( プロジェクト事務所の提供含む ) 3 実証事業実施に必要な便宜供与 (8) 環境社会配慮 貧困削減 社会開発 1) 環境に対する影響 / 用地取得 住民移転 1 カテゴリ分類 :C 2 カテゴリ分類の根拠 : 本事業は 国際協力機構環境社会配慮ガイドライン (2010 年 4 月公布 ) 上 環境への望ましくない影響は最小限であると判断されるため カテゴリ C に該当する 3

2) ジェンダー平等推進 平和構築 貧困削減 : 特になし 3) その他 : 特になし (9) 関連する援助活動 1) 我が国の援助活動 2015 年まで実施されていた JICA-ASEAN 連携ラオスパイロットプロジェクト において ルアンパバーン郡を対象に廃棄物管理に関する実証事業 環境啓発活動が実施されていた 本案件で対象とするルアンパバーン遺産地区でも廃棄物問題が深刻化していることより 啓発活動の資料等 同プロジェクト成果の活用を検討する 2) 他ドナー等の援助活動 AFD の支援により 2001 年に遺産地区保全 開発計画 (Plan de Sauvegarde et de Mise en Valeur (PSMV)) が作成され ラオス政府により 2017 年中の終了を目途に同計画の改訂作業が行われている 本プロジェクトにおいては 本計画の内容を踏まえて事業を進めていく必要がある また AFD は 世界遺産保全基金への供出等を通じて 1999 年以降 継続的に資金協力を行ってきているが 2017 年で終了することとなっており その後の継続は不透明な状況である そのため 本プロジェクトでは ラオス内の法制度の枠組みの中で持続的な保全財源を確保するメカニズムを提案 設立支援していく また ADB がルアンパバーン県を含むラオス内 4 県で 主に観光地までの道路や河川港と言った交通インフラ整備を目的に GMS Tourism Infrastructure for Inclusive Growth Project を 2014 年 ~2019 年にかけて実施中である 一部資金にはついては 観光地での中小企業振興にも利用されている 更に GIZ が EU 資金にて 2016 年から 2019 年にかけて ルアンパバーンも対象に含む持続可能な観光開発に関する支援が実施されている 同支援では 観光業界の能力開発 持続可能な新しい観光商品 ( 主に観光客の土産品となる手工芸品の品質向上 ) の開発等が実施されている 本事業とも関係深い分野の協力であり 重複がない 適切な連携が図られるように案件形成する 4. 協力の枠組み (1) 協力概要 1) 上位目標と指標ルアンパバーン遺産地区の維持管理及びルアンパバーン県全域を対象とした地域振興の実践が継続的に行われている 4

指標 保全されている建物の数地域振興に関する実証事業で開発された商品の売上高 ( 金額 ) 日本及びラオス国内において広報媒体で取り上げられた回数 2) プロジェクト目標と指標ルアンパバーン遺産地区の維持管理及びルアンパバーン県全域を対象とした地域振興実施に関する関係機関職員の能力が向上する 指標 遺産地区内で構築された保全維持管理組織のより 保全維持管理に関する活動が 回実施される ラオス内の法制度の枠組みの中で持続的な世界遺産地区の保全資金確保メカニズムが提案され関係者で合意される ルアンパバーン県内での地域振興の実証事業が 件実施される 広報活動が実施され 日本及びラオス国内において広報媒体で 回取り上げられる 3) 成果 成果 1: 世界遺産地区の保全維持管理に関する組織体制が構築される 成果 2: 世界遺産地区の持続可能な維持管理に関する資金枠組みがラオス政府に提案される 成果 3: ルアンパバーン県内での地域振興に関する実証事業が実施され 関係者の事業実施能力が向上する 成果 4: ルアンパバーンの観光地としての広報活動が促進される 5. 前提条件 外部条件 (1) 前提条件 ルアンパバーン県政府が必要なカウンターパートを配置する プロジェクト対象地域の住民/ 事業者のプロジェクト活動への支持が取り付けられる (2) 外部条件 ( リスクコントロール ) ア ) 成果発現のための外部条件 ルアンパバーン県政府が十分な当事者意識をもってプロジェクトを実施する ルアンパバーン県政府を初めとする関係行政機関から本プロジェクト活動に必要な許可を適時に得られる カウンターパートに大幅な変更が生じないイ ) プロジェクト目標達成のための外部条件 5

ラオス政府及びルアンパバーン県政府の関係政策が大きく変わらない ウ ) 上位目標達成のための外部条件 プロジェクトで実施 提案された活動が継続している ラオス政府及びルアンパバーン県政府の関係政策が大きく変わらない 6. 評価結果本事業は ラオスの開発政策 開発ニーズ 日本の援助政策と十分に合致しており また計画の適切性が認められることから 実施の意義は高い 7. 過去の類似案件の教訓と本事業への活用 (1) 類似案件の評価結果観光都市の地域開発と言う点で類似するヨルダン サルト市における持続可能な観光開発プロジェクト の終了時評価では 萩市の事例を効果的に活用し 本邦研修においても萩市を訪れ エコミュージアムコンセプトを活用した実践の事例を見ることで 関係者の中で 実際の活動の具体的なイメージを深めることができた このように 新たなコンセプトや仕組みを導入する際には 具体的事例を活用し 本邦研修 第三国研修等で事例を実際に紹介することが極めて有効であることが確認された とある (2) 本事業への教訓本事業では 歴史的街並みを活用した地域振興が行われている岐阜県高山市との連携を予定しているが 本邦研修や同市職員の現地派遣を適時行うことにより C/P に住民参加型の街並み保全の仕組みや 歴史的街並み周辺地区の地域振興に関する理解を促すこととする 8. 今後の評価計画 (1) 今後の評価に用いる主な指標 4.(1) のとおり (2) 今後の評価計画事業開始 6 か月後事業終了 3 年後 ベースライン調査事後評価 (3) 実施中モニタリング計画 6

事業期間中 6 か月毎 : プロジェクトモニタリングシートによるモニタリング 事業期間中 6 か月毎 : 合同調整委員会 (JCC:Joint Coordination Committee) における相手国実施機関との定期合同レビュー 7