World Trade Organization Ⅰ 概要 1 住所等 Tel. / Fax +41 22 739 5111 +41 22 731 4206 URL 所在地 幹部 http://www.wto.org/ Centre William Rappard, Rue de Lausanne 154, CH-1211, Geneva 21, Switzerland Roberto Azevêdo( ブラジル )( 事務局長 /Director General) 2 設立の目的 1930 年代の不況以降 世界経済のブロック化が進み 各国が保護主義的貿易政策を設けたことが第 2 次世界大戦の一因となったという反省から 1947 年に 関税及び貿易に関する一般協定 ( 通称 :GATT) が作成され GATT 体制が 1948 年に発足した ( 日本は 1955 年に加入 ) 貿易における無差別原則( 最恵国待遇 内国民待遇 ) 等の基本的ルールを規定した GATT は 多角的貿易体制の基礎を築き 貿易の自由化の促進を通じて日本経済を含む世界経済の成長に貢献してきた GATT は国際機関ではなく 暫定的な組織として運営されてきたが 1986 年に開始されたウルグアイ ラウンド交渉において 貿易ルールの大幅な拡充が行われるとともに これらを運営するため より強固な基盤をもつ国際機関を設立する必要性が強く認識されるようになり 1994 年のウルグアイ ラウンド交渉の妥結の際に設立が合意され 1995 年 1 月 1 日に発足した 3 WTO 協定世界貿易機関の設立について定めた国際条約は 正式名称を 世界貿易機関を設立するマラケシュ協定 といい 通常 WTO 設立協定 又は WTO 協定 と呼ばれている WTO 協定は本体及び附属書に含まれる各種協定からなる 附属書は 1 から 4 まであり そのうち附属書 1~3 は WTO 協定と一括受諾の対象とされており WTO 加盟国となるためには附属書 1~3 のすべても受諾しなければならない 附属書 4 は一括受諾の対象ではなく 受諾国間でのみ効力を有する 4 意思決定方式 WTO における意志決定はコンセンサス方式 ( すべての加盟国の合意によって意志決定 一つの加盟国でも反対すれば残りのすべての国が賛成しても WTO として決定は下せない ) をとっている 1
5 加盟国 WTO は 日本 米国 EU 加盟国 カナダ オーストラリア 韓国 ASEAN6 か国 インド メキシコ等 76 か国の加盟国をもって発足した 2015 年 10 月現在の加盟国は下記の 161 の国及び地域である アイスランド アイルランド アラブ首長国連邦 アルゼンチン アルバニア アルメニア アンゴラ アンティグア バーブーダ イエメン (2014 年 6 月 26 日加盟 ) イスラエル イタリア インド インドネシア ウガンダ ウクライナ ウルグアイ 英国 エクアドル エジプト エストニア エルサルバドル EU オーストラリア オーストリア オマーン オランダ ガーナ ガイアナ カタール カナダ カボベルデ ガボン カメルーン 韓国 ガンビア カンボジア ギニア ギニアビサウ キプロス キューバ ギリシャ キルギス グアテマラ クウェート ジョージア ( グルジア ) グレナダ クロアチア ケニア コートジボワール コスタリカ コロンビア コンゴ共和国 コンゴ民主共和国 サウジアラビア サモア ザンビア シエラレオネ ジブチ ジャマイカ シンガポール ジンバブエ スイス スウェーデン スペイン スリナム スリランカ スロバキア スロベニア スワジランド セーシェル (2015 年 4 月 26 日加盟 ) セネガル セントクリストファー ネビス セントビンセント及びグレナディーン諸島 セントルシア ソロモン諸島 タイ 台湾 タジキスタン タンザニア チェコ チャド 中央アフリカ 中国 チュニジア チリ デンマーク ドイツ トーゴ ドミニカ共和国 ドミニカ国 トリニダード トバゴ トルコ トンガ ナイジェリア ナミビア ニカラグア ニジェール 日本 ニュージーランド ネパール ノルウェー バーレーン ハイチ パキスタン パナマ パプアニューギニア バヌアツ パラグアイ バルバドス ハンガリー バングラデシュ フィジー フィリピン フィンランド ブラジル フランス ブルガリア ブルキナファソ ブルネイ ブルンジ 米国 ベトナム ベナン ベネズエラ ベリーズ ペルー ベルギー ポーランド ボツワナ ボリビア ポルトガル 香港 ホンジュラス マカオ マケドニア ( 旧ユーゴスラビア共和国 ) マダガスカル マラウイ マリ マルタ マレーシア 南アフリカ ミャンマー メキシコ モーリシャス モーリタニア モザンビーク モルディブ モルドバ モロッコ モンゴル モンテネグロ ヨルダン ラオス ラトビア リトアニア リヒテンシュタイン ルーマニア ルクセンブルク ルワンダ レソト ロシアなお 2015 年 10 月現在 以下の 23 か国が加盟申請中である アゼルバイジャン アフガニスタン アルジェリア アンドラ イラク イラン ウズベキスタン エチオピア カザフスタン コモロ サントメ プリンシペ シリア スーダン 赤道ギニア セルビア バチカン バハマ ブータン ベラルーシ ボスニア ヘルツェゴビナ リビア リベリア レバノン 2
Ⅱ 組織の概要 (1) 閣僚会議 (Ministerial Conference) 従来の GATT で年 1 回開催されていた総会に代わり WTO ではすべての加盟国の代表で構成され WTO の最高意思決定機関である閣僚会議 (Ministerial Conference) が少なくとも 2 年に 1 回開催されることとなっている (2) 一般理事会 (General Council) 一般理事会 (General Council) は WTO の全加盟国の代表によって構成される組織で 閣僚会議の会合から次の会合の間において任務を遂行する実務組織であり 閣僚会議の開会中はその機能を代行することとなっている (3) モノ サービス 知的財産権全般に関する理事会 (Council for Trade in Goods/Trade in Services/Trade-Related aspects of Intellectual Property rights:trips) 及び下部組織としての委員会一般理事会の下部組織として 附属書 1 に掲げるモノ サービス 知的財産権全般の各協定を管理する理事会が設置されている (4) 委員会 (Committees) 特別会合(Special Sessions) 等モノ サービス 知的財産権全般に関する理事会の下に様々な委員会 (Committees) が設置されている このほか 従来の GATT においても設置されていた貿易開発委員会 (Committees on Trade and Development) や行財政委員会 (Committees on Budget, Finance and Administration) 等が設置されている 更に 貿易交渉委員会 (Trade Negotiations Committee) の下にサービス理事会特別会合 (Special Sessions of Services Council) や TRIPS 理事会特別会合 (Special Sessions of TRIPS Council) 等が運営されている Ⅲ 活動内容サービス交渉の動き WTO 協定は 貿易に関連する様々な国際ルールを定めており WTO は同協定の実施 運用を行うと同時に新たな貿易課題への取組みを行い 多角的貿易体制の中核を担っている 1960 年代以降 コンピュータなどに象徴される技術進歩を背景として 金融 運輸 電気通信などのサービス貿易分野において国際間の取引が著しく増大し 世界貿易に対するサービス貿易の比重が増大した しかし GATT においては物品の貿易を想定したルールしかなかったため 広範な分野 (155 分野 ) を対象として ウルグアイ ラウンド交渉において サービスの貿易に関する一般協定 ( 通称 :GATS) が策定された GATS はすべてのサービス ( 政府の権限の行使として提供されるサービスを除く ) の貿易に影響を及ぼす政府の措置を対象としており これらのサービス貿易 3
を 1 越境取引 2 国外消費 3 商業拠点 4 人の移動の四つのモードに分類している 加盟国は 155 のサービス分野 四つのモードそれぞれにつき 自由化の約束をした内容に応じて市場アクセスと内国民待遇について守るべき義務を負っており 自由化を行う分野のみを記載する方式 (=ポジティブリスト方式) で自由化約束表を作ることとなっている 2001 年 11 月から開始されたドーハ ラウンド交渉では 8 分野 ( 農業 鉱工業品 サービス ルール 貿易円滑化 開発 環境及び知的財産権 ) について交渉を行っており サービス貿易分野において最も重要な分野の一つとされている電気通信分野についても 電気通信市場の一層の自由化に向けた交渉が展開されている Ⅳ 最近の活動状況ドーハ ラウンド交渉においては 2008 年 7 月には合意に近づいたが 主として米国と新興国 ( 中国 インド ブラジル ) との対立により実現しなかった 2011 年後半には 後発開発途上国に対する優遇措置を中心とする部分合意を目指したが これも実現しなかった 2011 年 12 月にスイスにて第 8 回 WTO 閣僚会議が開催された ドーハ ラウンド交渉については 当面一括妥結の見込みは少ないことを認めつつも 目標として一括妥結を断念しないこと及び部分合意や先行合意等を探求することが合意された また 16 年に及んだ WTO 政府調達協定 (Government Procurement Agreement:GPA 各国の公的機関による物品やサービスの調達を自由化することを相互に約束する協定 ) の改定交渉が妥結に至った その後 2013 年 12 月にインドネシアにて開催された第 9 回 WTO 閣僚会議において 貿易円滑化 農業 開発分野において自由化を目指すバリ合意がなされた GATS が発効してから約 20 年が経過する中で GATS 以上の自由化を実現するための協定が必要との認識が有志国において醸成され 2012 年 7 月に新サービス貿易協定 (Trade in Services Agreement:TiSA) の交渉開始が発表された 2013 年 6 月には他の WTO 加盟国 地域も同取組みに加わることが奨励された 2015 年 6 月には非公式閣僚会合が開催された 有志国として以下の 25 か国 地域が交渉に参加している アイスランド EU イスラエル ウルグアイ オーストラリア カナダ 韓国 コスタリカ コロンビア スイス 台湾 チリ トルコ 日本 ニュージーランド ノルウェー パキスタン パナマ パラグアイ 米国 ペルー 香港 メキシコ モーリシャス リヒテンシュタイン 2015 年 12 月に ケニア ナイロビで開催された第 10 回 WTO 閣僚会議において WTO 情報技術協定 (Information Technology Agreement:ITA) 拡大交渉に 4
参加する 53 か国が 201 品目のデジタル製品について 90% 以上の関税を廃止する内容で合意した これにより優れた IT 技術が社会全体に普及し 生活の質の改善や経済活動の高度化に貢献するとともに IT 産業のグローバルバリューチェーンが深まり イノベーションの促進や新ビジネスの創造につながることが期待されている ITA 拡大交渉参加 53 か国は 日本 米国 EU( 及び EU 加盟 28 か国 ) 台湾 韓国 コスタリカ マレーシア オーストラリア カナダ タイ ノルウェー 中国 スイス リヒテンシュタイン シンガポール 香港 フィリピン ニュージーランド イスラエル モーリシャス モンテネグロ グアテマラ アイスランド アルバニア コロンビアである Ⅴ 主要国の対応状況 2015 年 12 月現在 事務局長及び貿易交渉委員会の議長はロベルト アゼベド氏 ( ブラジル ) 一般理事会議長はフェルナンド デ マテオ氏( メキシコ ) サービス貿易理事会議長はマルティン エイヨルフソン氏 ( アイスランド ) が務めている 我が国は WTO 加盟国の中で最も電気通信分野の自由化が進展している国の一つであることから 諸外国における外資規制等の措置について 撤廃 緩和の要求を行っている [https://www.wto.org/english/thewto_e/dg_e/dg_e.htm https://www.wto.org/english/thewto_e/secre_e/current_chairs_e.htm 等 ] 5