MD8395A UE シミュレータの開発

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MD8395A UE シミュレータの開発 Development of MD8395A UE Simulator 松本 尚 Hisashi Matsumoto, 渡邉則行 Noriyuki Watanabe, 亀山祥弘 Yoshihiro Kameyama, 樋詰昌樹 Masaki Hizume [ 要旨 ] 急速に拡大している W-CDMA 方式の携帯電話サービスに対応した UE シミュレータ MD8395A を開発した ソフトハンドオーバや送信ダイバシティ, 近くサービスが開始される HSDPA に対応している また, レイヤ 3 試験のため GUI によるシーケンス / メッセージ編集, メッセージの解析によるパラメータ自動設定を可能とした さらに, 複数の端末をシミュレートできる Multi UE 機能の拡張を可能とした 多くの基地局ベンダとの接続実績を持ち, 基地局の試験,RAN の試験に使用されている [Summary] We have developed the MD8395A UE Simulator for W-CDMA mobile services, which are growing rapidly worldwide. It simulates soft handover and transmit diversity as well as the HSDPA service to be started soon. The user can edit Layer-3 sequences and messages easily using a GUI and parameters can be auto-set based on received messages. Moreover, the multiple UE function supports simulation of multiple UEs. Many base station vendors are using this simulator for base station verification and RAN testing. 1 まえがきこれまでアンリツは, システムシミュレータとして MD8480A/B シグナリングテスタをリリースしてきたが, 端末 (UE:User Equipment) のシミュレートに関しては, 信号発生器のみのラインナップであった しかし,HSDPA(High Speed Downlink Packet Access) サービスの開発に伴い, 基地局の評価において, 信号発生器で UE をシミュレートするだけでは不十分である場合が多くなってきた そこで, 端末のシミュレータである MD8395A を開発した MD8395A は,MD8480 シリーズの技術を最大限利用し, ソフトハンドオーバー, 送信ダイバーシティ, コンプレストモードに対応する 図 1 MD8395A 外観 MD8395A External view とともに,HSDPA にも対応した また, これまでの C 言語でのシナリオ作成だけでなく,GUI (Graphical User Interface) でのパラメータ設定や, レイヤ 3 評価のためにメッセージやシーケンスを簡単に編集, 実行できるシナリオ作成ツールを開発し, さらに UE のシミュレータとして強く望まれる Multi UE 機能も合わせて開発した これらの機能により, 基地局や RAN(Radio Access Network) の試験に使用されている 2 開発方針本開発には以下の方針をもって取り組んだ (b) また, モジュール間でのハードウェアの共用化を行い開発効率の向上を図る Full UE 機能 UE 1 台分のシミュレートは,RLC(Radio Link Control) レイヤまで対応し,U-Plane(User 情報転送プレーン ) に関しては AMR(Adaptive Multi-Rate),ISDN,Packet などのデータ通信試験を可能とする ソフトハンドオーバーや送信ダイバーシティ機能を 1 モジュール内で行うことにより, ダイバーシティ効果を利用できるようにする この 1UE のシミュレート機能を (d) の Multi UE 機能と区別し,Full UE 機能と (a) 共通化 呼ぶ MD8480B ソフトウェア資産, ハードウェア資産の最大限 の利用と,MD8480C との共通化を図り, 開発コストを最小 にする (c) MSD(Mobile Station Designer) 開発 C 言語のシナリオとは別に GUI で Full UE 機能の操作を 可能とするツールを提供する これにより以下が可能になる アンリツテクニカル No. 83 Sep. 2006 29 MD8395A UE シミュレータの開発

(d) GUI によるパラメータ設定 メッセージ, シーケンスの編集, 実行 メッセージ解析による自動パラメータ設定 Multi UE 機能機能をレイヤ 1 に絞ることにより,1 モジュールで 96UE に対応するオプションモジュールとして開発する Full UE 機能と同時に動作することにより, 負荷状態での基地局の動作検証を可能にする 図 3 に示すように,Digital I/Q 信号は RN( ルートナイキスト ) フィルタを通過し,DLL(Delay Locked Loop) を用いて Digital I/Q 信号の位相調整を行う 位相調整を行ったデータは各チャネル (CPICH, DPCH, HS-CH, etc.) の Despreader で逆拡散され, チャネル信号として取り出される 取り出された信号に対して Normalize,STTD(Space Time Transmit Diversity) などの各チャネル処理が行われる (Digital Signal Processor) はハードウェアからの各チャネ 3 設計の要点 ル信号に対して Decode 処理など上位レイヤの処理を行う 3.1 ハードウェア構成図 2 に MD8395A のハードウェア構成を示す Down Link 信号は RF 受信回路,A/D 変換回路を通過し Digital I/Q 信号となり, Full UE のレイヤ 1 処理を行う Code/Decode 部, 複数の UE をシミュレーションする Multi UE 部, セルサーチを行う Cell Search 部 RN Filter MUX DLL Digital I/Q に入力される 一方,Code/Decode 部や Multi UE 部で生成した Up Link 信号は, 合成され D/A 変換回路,RF 送信回路を経て送信される Code/Decode 部は,HSDPA 機能, ソフトハンドオーバー, 送信ダイバーシティ, コンプレストモードに対応しており, さまざまなケースでのシミュレートが可能である Despreader (CPICH,DPCH) STTD Decode MUX Cell Timing Despreader (HS-SCCH,HS-PDSCH#1-15) AMR ISDN BER 測定 Rake combine HS-SCCH#1-4 STTD Decode HS-PDSCH#1-15 STTD Decode L2 DPCH#1-3 Data Out DPCH HS-Data Out HS-CH Multi UE Code / Decode Cell Search Digital I/Q D/A 変換 RF 送信 A/D 変換 RF 受信 図 3 MD8395A 受信デコード部 MD8395A Decoder Up Link Down Link 図 2 MD8395A ハードウェア構成 MD8395A Hardware blocks 3.2 Code/Decode 部受信部ここでは,Full UE の多くの機能を実現している Code/Decode 部受信部を説明する MD8395A では,Cell Change を実現するため,CPICH (Common Pilot Channel) および DPCH(Dedicated Physical Channel) に関しては, 同時に 3セル分の処理が可能な構成にした 3.3 HSDPA 処理 HSDPA 受信処理を行うにあたり, 該当セルのタイミングを用いて, HS-SCCH(High Speed Shared Control Channel) および HS- PDSCH(High Speed Physical Downlink Shared Channel) の成分を逆拡散し取り出す そのさい,HS-SCCH は最大 4Code, HS-PDSCH は最大 15Code を受信する事が可能である HS-PDSCH の変調方式では 16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation) 信号を使用するので, ハードウェアは, 16QAM 信号用のコンスタレーション処理を行い, 軟判定データ アンリツテクニカル No. 83 Sep. 2006 30 MD8395A UE シミュレータの開発

( 強弱情報を含んだデータ ) を作成し, に渡している RRC 内部の処理概略を図 4 に示す 処理部では,HS- SCCH データのデコード処理を行い,HS-PDSCH デコードに必要なパラメータ (Xtbs, etc.) を取得し, そのパラメータを使用して HS-PDSCH のデコード処理を行う AMR RLC ISDN TE IP PPP 上位レイヤへ MAC PHY Xtbs, etc. HS-PDSCH Decoding APIs for Control SAP APIs for Message Transfer SAP HS-SCCH Decoding 図 5 MD8395A 機能範囲 Supported layer of MD8395A HS-Data Out HS-SCCH HS-PDSCH 図 4 での HSDPA デコード処理 HSDPA Decoding 3.4 ソフトハンドオーバー, ダイバーシティ機能の動作 MD8395A は, ソフトハンドオーバー, ハードハンドオーバーに対応している ソフトハンドオーバーを行うさいには, 対象となるセルの Down Link DPCH を合成 (Rake Combine) する必要がある MD8395A は前述したように 3 セル分の CPICH,DPCH 処理をハードウェアで行っており, それぞれのセルタイミングで DPCH を取り出すことが可能である これにより, 複数セルの Rake Combine 処理を実現した また, 基地局からのアンテナ 1 とアンテナ 2 の信号を Code/Decode 部でハードウェア処理することにより, 送信ダイバーシティ機能を実現した 容易にチャネル追加, 変更を行えるように,DPCH,HS-SCCH, HS-PDSCH などの STTD Decode 処理はチャネルごとに処理する構成とした ソフトハンドオーバーの Rake Combine 処理, ダイバーシティ機能の STTD 処理をハードウェアで行うことにより の処理を軽減した 3.5 Mobile Station Designer 3.5.1 開発の位置づけ MD8395A は,3GPP プロトコルスタック上のレイヤ 2 以下の機能 ( 物理 (PHY)/MAC(Media Access Control)/RLC レイヤ ), および U-Plane 信号の送受信をユーザに提供する この機能は図 5 の点線の範囲に示される ここで Control SAP(Service Access Point) は各レイヤへの制御 設定を行うための SAP であり,Message Transfer SAP は上位レイヤとのメッセージを交換するための SAP である MD8395A はこれらの SAP に対応づけた C 言語形式の関数ライブラリを提供している このライブラリをシナリオライブラリと呼ぶ ユーザは C 言語を使って MD8395A に対し UE としての振る舞いを記述し, コンパイル後に MD8395A 上で実行する このようにして作成された記述をシナリオと呼ぶ C 言語によるシナリオ記述の自由度は高いため, ユーザは評価系に合わせたあらゆる振る舞いをする UE を模擬するシナリオを自由に記述することができる その反面, 目的のシナリオを作成 保守するためのコストが発生する このコストに着目し, ユーザの利便性を考えた場合, 以下の 2 項目が課題として挙げられた (a) L3 シグナリングを必要としない L1/L2 張り切り試験を行う場合,C 言語を使わずに手軽に信号疎通状態を設定したい (b) ネットワーク評価のため実網と接続する場合,L1/L2 のパラメータはシナリオ作成時には特定できず,RRC(Radio Resource Control) メッセージから抽出する必要がある そこで,L1/L2 パラメータを動的に設定するシナリオを簡単に記述したい この課題を解決することを目的としてシナリオ作成ツール Mobile Station Designer( 以下,MSD と呼ぶ ) を開発した 3.5.2 MSD のコンセプト MSD のコンセプトを図 6 に示す シナリオライブラリ上に Engine.dll と呼ばれるモジュールを配置する 構成上 Engine.dll は C 言語によるシナリオと同じレベルに アンリツテクニカル No. 83 Sep. 2006 31 MD8395A UE シミュレータの開発

専用エディタ MSD の範囲 3.5.3 機能概要以下に,MSD の特徴となる機能の概要を述べる (a) GUI によるパラメータ設定 *.c 専用エディタによりすべての設定 設定範囲を目視しながらシナリオを記述できるようにした また, 設定パラメータ構造 を ASN.1 構文定義を使用することで, 今後の機能追加 変 コンパイル *.dll *.seq 更に容易に対応できるようにした さらに,C 言語によるシナリオ記述の場合に必要となる関数 Engine.dll Scenario Library Control Software Firmware Hardware (b) の呼び出し順序や規則, データ構造の整合性への配慮を MSD 内部に隠蔽することにより, ユーザの利便性が大幅に向上した メッセージ, シーケンスの編集, 実行編集画面に RRC/NAS(Non Access Stratum) メッセージによるシーケンス図を採用することで, シグナリングシーケン 図 6 MSD コンセプト Concept of MSD (c) スを主体としたシナリオを直感的に作成できるようにした メッセージ解析による自動パラメータ設定 あり, 専用エディタで作成された独自形式のファイルを逐次実行する一種のインタプリタとして機能する GUI による専用エディタは C 言語コンパイラが不要なため, シナリオ作成コストの低減に大きく寄与する MSD の構成を図 7 に示す UEは, ネットワークから受ける指示に柔軟に対応しなければならない 例えば, 共通チャネルのパラメータは接続するセルの報知情報を読むまでわからず, また, 起動すべきベアラの種類は, 受信する RADIO BEARER SETUP メッセージを解析するまでわからない このような動的振る舞い ScenarioEditor MessageEditor を実現するため, シナリオ実行時にネットワークから受信し たメッセージを解析, パラメータを抽出しチャネルを起動す るロジックを MSD 内に隠蔽した また,UE に個別に与えら シナリオファイル (*.seq) れる ID や Offset 情報などの属性情報を保持する記憶領域 OpeWin ACoder を MSD 内部に組み込んだ これらにより, 接続したセルに 応じて共通チャネルを張るシナリオや, 通信中にネットワー クからトリガのかかる動的なレート変更に対応するシナリオを Engine ASN.1 定義体図 7 MSDの構成 Structure of MSD MSD は, 先に述べた Engine.dll, 専用エディタ (ScenarioEditor と呼ぶ ) のほかに, シナリオ実行中のユーザインタフェースを司る OpeWin,ASN.1 構文解析を受け持つ ACoder,RRC メッセージを編集する MessageEdtior から成る ASN.1 解析については, 複数バージョンの RRC 規格を切り替えた試験や, 今後の RRC 規格変更に柔軟に対応するために ASN.1 定義体を実行時にダイナミックに取り込む構成とした 記述できるようになった (d) モビリティシーケンスの作成セルサーチ時に検出した隣接セルの状況をMEASURE- MENT REPORT メッセージに載せるといった動的メッセージ生成機能を搭載し, ハンドオーバー試験用のシナリオを容易に作成できるようにした 3.5.4 今後の課題シナリオの記述を簡素化し利便性を高めることはシナリオ記述の自由度を下げることにつながるため, どこまでを MSD 内に隠蔽するべきかのバランスに苦慮した 例えば RRC メッセージから設定パラメータを抽出 自動設定することは MSD に実装するのが適切だが, アンリツテクニカル No. 83 Sep. 2006 32 MD8395A UE シミュレータの開発

RRC 規格上のすべての振る舞いを実装してしまうと実際の UE と同じ振る舞いしかできなくなる これでは測定器としての柔軟性が損なわれてしまい, とりわけ異常系の試験 解析に利用できなくなってしまう ユーザの評価したい目的を見極め, 適切な機能範囲を実装し, シナリオから隠蔽するというノウハウの蓄積が今後も継続される課題である 3.6 Multi UE 機能 Multi UE 機能は, 基地局に対して負荷をかけることを目的として開発したもので,96 台分の UE をシュミレートする Multi UE 機能を使用することにより, 基地局に対して負荷をかけた状態で,Full UE 機能を用いて基地局を評価することができる これにより, 負荷の無い状態では発見できない基地局の不具合を発見することが可能となり, また複数の UE が接続されている状態で基地局のスケジューリング等の動作検証が可能となる 3.6.1 機能概要 Multi UE の機能概要を図 8 に示す (b) (c) では有用である また FBI 送信の自動モードでは,UE ごとに Closed Loop Mode 1 に対応した FBI ビットの送出を可能としている 一方,Program モードでは UE ごとに最大 32Frame 分の TPC,FBI テーブルを設定でき, 設定した Frame 周期で TPC,FBI をパターン送信することが可能である HS-SCCH 受信機能 4チャネルのHS-SCCH が受信可能であり,HS-PDSCHで受信する UE ごとの情報を分析することにより, 各 UE が受信する MAC-hs PDU(Protocol Data Unit) データ量を推定することができる HS-DPCCH 送信機能 UE ごとに Ack/Nack テーブル,CQI(Channel Quality Indicator) テーブルを設定でき, これらのテーブルをもとに Ack/Nack,CQI を送信することができる また,CQI に関しては, 受信した CPICH の SIR( あるいはパワー ) をもとに, あらかじめ登録した CQI テーブルから送出する CQI 値を決 UE シミュレータ HS-SCCH 4 基地局 (Node-B) 定する自動モードも実装した 自動モードで CPICH のパワーを使用すると, 前述した TPC と同様に, 送信する CQI TPC DL DPCCH UL DPCCH 値の制御が容易になり試験には有用である 3.6.2 課題解決 Multi UE 機能は,1 モジュールで 96UE 分の処理を実装して Ack/Nack/CQI HS-DPCCH いる 開発当初, 限られたハードウェア, ソフトウェアリソースを使用 し, どのようにして 96UE 分の処理を実装させるかが課題であった この課題に対して, 以下のように解決を図った 最大 96UE (a) 簡略化 図 8 Multi UE 機能概要 Functional overview of Multi UE DPDCH,HS-PDSCH のデータチャネルを送受信する場 合, 実装されている 処理能力では処理が間に合わな (a) DPCCH 送受信機能 DPCCH(Dedicated Physical Control Channel) については,TPC(Transmit Power Control) と FBI(Feedback Information) の送信機能をもっている この送信機能にはそれぞれ自動モードと Program モードがあり,UEごとに設定可能である TPC 送信の自動モードでは, それぞれの UE は DL DPCCH を受信し,TPC ビットを決定する この決定においては, 通常の Target SIR(Signal-to-Interference Ratio) による判定に加え,Target Power でも判定できるように工夫した これは DL DPCCH のパワーを基準に TPC ビットを決めるもので,TPC ビットの制御が容易になるため試験 いため, データチャネルの送受信をやめ, より重要な制御チャネルに専念することとした ただし,HSDPA に関しては, 擬似的にデータチャネルを受信しているような動作 (HS- SCCH デコードによる受信確認と HS-DPCCH での Ack/Nack の送信 ) を実装することにより, 基地局に対して負荷をかけることとした しかし,HS-PDSCH を受信しないとなると,HSDPA に関する複数 UE に対する基地局のスケジューリング機能の挙動をみることができない そこで,HS-SCCH を 96UE 分デコードすることにより得られる情報から,HS-PDSCH で送信される UE ごとのデータ量を推定した この方法により, 簡易 アンリツテクニカル No. 83 Sep. 2006 33 MD8395A UE シミュレータの開発

的に 96UE 分のデータ量の測定を実現した (b) 処理の分散 で行う処理は, 図 9 に示すように複数の に適切に分散させることで,96UE 分の処理を実現した いるかどうかを確認するための指標として, 個別チャネルのパワー値 (S-Power),Measured SIR のモニタに加え, より簡単, 明確に判断する方法として,DPCCH 同期状態のモニタも実装した この DPCCH 同期状態モニタでは,1 秒ご MU839511A Multi UE モジュール PHY とに各 UE の以下の同期状態をモニタすることとした 同期外れ状態 同期確立状態 同期不安定状態同期外れ状態, 同期確立状態は1 秒ごとに瞬間の状態を表 HS#1 HS#2 HS#3 HS#4 Slot 示するため, 安定して同期しているのかどうかわからない場合がある そこで,1 秒間の同期状態の安定性をみるために, 同期不安定状態を追加した これは 1 フレームごとの同期 FPGA 状態を 100 個 (1 秒間 ) 集計し, その中に同期外れ, 同期確 立状態が混在している場合に同期不安定状態とした 各状 RF 態は, 図 10 のように色分けし, 容易に認識できるようにした 図 9 Multi UE モジュールの 構成 表 1 モニタ項目 structure in Multi UE module Monitor in Multi UE module PHY 処理他のモジュールとのプリミティブ送受信, モジュール内の各 とのプリミティブ送受信,Trace ログ管理を行う HS#1,2,3,4 処理 4つの で 96UE 分の HSDPA 処理を行う 1つの ごとに 24UE 分の処理を受け持ち,HS- SCCH を 4 チャネル分受信 ( 割り当てられた 24UE を識別 ) し, 割り当てられた 24UE 分の HS-DPCCH 送信処理 (Ack/Nack/DTX 送信,CQI 送信 ) を行う Slot 処理 1 つの で 96UE 分の DL/UL DPCCH 処理を行う P-CPICH 受信処理 (SIR 計算など ) や 96UE 分の DL DPCCH を受信 ( 同期検出,SIR 計算など ) し,96UE 分の UL DPCCH の送信 (FBI,TPC 送信 ) を行う このようにして 96UE 分の処理を実装し, 基地局に対して負荷状態を実現した 3.6.3 測定機能 Multi UE の測定機能を以下に示す 測定機能では,96UE 分の挙動を一目で確認できるようにグラフ表示機能を充実させた モニタ項目 CPICH RSCP UTRA carrier RSSI [DL Total Power] CPICH Ec/No P-CPICH SIR S-Power I-Power Measured SIR + Target SIR DPCCH 同期状態 意味希望波電力逆拡散前の帯域内全電力 CPICH RSCP と UTRA carrier RSSIの比 RSCP と ISCP( 干渉波電力 ) の比 UE ごとの希望波受信電力 UE ごとの干渉波受信電力 UE ごとの受信 SIR, UE ごとの DPCCH 同期状態 (a) Power モニタ測定 表 1 に示す項目についてモニタし,96UE 分のモニタ値を 一覧表示した 各 UE の個別チャネルを正常に受信できて 図 10 Power モニタ測定 ( 表 ) 画面 Monitor screen in table form アンリツテクニカル No. 83 Sep. 2006 34 MD8395A UE シミュレータの開発

(b) HS-PDSCH の MAC-hs PDU 受信ビット測定 HS-SCCH を解析することにより, 各 UE が受信する MAC- hs PDU の受信ビット数や受信レートを 1 秒ごとに推定することで, 基地局のスケジューリングの挙動を観測できる 図 11 は,UE ごと ( 縦軸 ) のデータ量 (256 階色 ) が時間的 ( 横軸 ) にどう変動したかを表示した例である 6 むすび HSDPA に対応する UE シミュレータを開発した UE としてのシグナリングの記述を容易にする MSD を使用することにより, 簡単にシーケンスを構成でき, 呼接続試験などが容易に実現できる また, Multi UE 機能を装備することにより 1 台のシミュレータで基地局のスケジューリング機能を試験することができるようになった これまで多くの基地局ベンダと接続を実施し, 多くのご意見を頂いている 今後は, これらのご意見を反映していくのと同時に, 次の技術方式である HSUPA(High Speed Uplink Packet Access) や, さらに Super3G へ対応していきたい 図 11 UE ごとの受信データ量測定グラフ ( 時系列 ) Received bits graph on time domain 謝辞 Full UE 機能は株式会社 NTT ドコモ殿の協力により開発しました また,MSD は株式会社 TSP 殿との,Multi UE は NEC エンジニアリング株式会社殿との, それぞれ共同開発品です 関係する皆様には, 多大なる協力をいただきました ここに, 深謝いたします 参考文献 4 接続実績 基地局ベンダの協力のもと接続実験を行ってきた また, 実際に 1) 松下, 上條, 牧野, 小林, 代古, 山田, 加藤 : W-CDMA シグナリングテスタ MD8480B の開発, アンリツテクニカ ル 81 号,2003 年 3 月 多くの基地局ベンダに採用されている この中で多くの接続実績を積み, ノウハウを獲得してきた (1) 単体基地局評価単体の基地局評価として日本国内で多くの接続実績がある ハンドオーバーや送信ダイバーシティ,HSDPA など実際の基地局の評価に使用されている また,Multi UE でも, 実基地局との接続を行っており, 本機能の有効性を確認している (2) RAN 接続試験 MSD を使用し, 海外ベンダの相互接続性テスト (Inter Operability Test) の試験系にて実際のネットワークとの接続試験を実施した この試験系, テストケースは端末ベンダが受ける試験と同等であり, そこで得たノウハウを MSD の実装へフィードバックしている 5 機能緒元表 2 に MD8395A の主な機能を示す 執筆者 松本尚計測事業統轄本部 IP ネットワーク計測事業部第 1 開発部 渡邉則行計測事業統轄本部 IP ネットワーク計測事業部第 1 開発部 亀山祥弘計測事業統轄本部 IP ネットワーク計測事業部第 1 開発部 樋詰昌樹計測事業統轄本部 IP ネットワーク計測事業部第 1 開発部 アンリツテクニカル No. 83 Sep. 2006 35 MD8395A UE シミュレータの開発

表 2 MD8395A の主な機能 Main features of MD8395A Full UE 機能,MSD RF L1 HSDPA TE MSD Multi UE 機能 一般 機能 項目 送信周波数 受信周波数 300~3000MHz 機能 / 性能 350~550MH,700~1100MHz,1400~2200MHz 対応物理チャネル P-SCH,S-SCH, P-CPICH,P-CCPCH, S-CCPCH,PRACH, PICH,AICH, DPCH,HS-PDSCH,HS-SCCH,HS-DPCCH Tx diversity SHO HS-PDSCH HS-SCCH HS-DPCCH MAC-hs Speed 種類 BER 測定 モード メッセージ編集 自動設定 対応 UE 数 96 対応チャネル TPC/FBI 送信機能 ACK/NACK CQI STTD,Closed loop mode(mode1,mode2) 最大 3 ブランチ QPSK,16QAM, 最大 15 コード 最大 4 チャネル 自動モード,Program モード 最大 8 Priority Queue 最大 14.4Mb/s AMR,ISDN,Packet,PN9,PN15, 固定パタン PN9,PN15 自動モード, マニュアルモード RRC,NAS 受信メッセージからパラメータを入手し設定 DPCCH,HS-DPCCH,HS-SCCH 自動モード,Program モード 自動モード,Program モード 自動モード,Program モード アンリツテクニカル No. 83 Sep. 2006 36 MD8395A UE シミュレータの開発