リューションサービスを極めるWi-Fi 関連事業の展開における ー ー をる 最近の取り組み NTTブロードバンドプラットフォーム (NTTBP) が提供している Wi-Fi 関連の事業ドメインを図 ₁に示 Wi-Fi クラウドサービス認証技術 NTT グループの Wi-Fi プラットフォームを支える NTTBP の取り組み スマートフォン普及が急速に進み, 多様なアプリケーションの利用に伴いモバイルネットワーク上のデータも爆発的に増加しています.NTTブロードバンドプラットフォーム (NTTBP) では, 移動体トラフィックの効率的なオフロードの実現や新たな付加価値の提供を実現するために, 無線 LAN(Wi-Fi: Wireless Fidelity) を活用した事業を展開しています. ここでは,Wi-Fi によるアクセスを軸に NTTBP が提供しているサービス, および関連する技術について紹介します. ほうじょうひろし 北條博史 NTTブロードバンドプラットフォーム します.NTTBPでは, 駅や空港をはじめ生活の導線上のさまざまな場所に AP(Access Point) を設置し, 通信キャリア向けの設備卸事業, コンテンツ配信やインターネット認証を組み合わせたWi-Fiクラウド事業を中心とする ソWi-Fi 関連サービスを提供しています. これらの事業の展開に向けた最近の取り組みについて説明します. Wi-Fiは 3 GやLTEといった携帯電話事業で使用されているライセンスバンドと異なり, 電波を送出するための無線局免許が不要である2.4 GHz 帯や 5 GHz 帯のアンライセンスバンドを使用する通信であり,PC やスマートフォンだけでなく, ゲーム機やTV 等, さまざまな機器で利用されています. また,2.4 GHz 帯はBluetoothでの通信や電子レンジ, 産業機械等においても使用されており, アンライセンスバンドであるがために, 干渉による通信品質の劣化を回避することが重要な課題となります. ここで, 具体例として東京のある駅の近辺で2.4 GHz 帯の電波強度分布を測定した結果を図 ₂に示します.2.4 GHz 帯において, すべての周波数域にわたり一定の強度以上の電波の存在が多く確認できることから, 実際にこの場所には多くのAPやモバイルルータ等の無線機器が存在していることが想 NTT 技術ジャーナル 2014.3 77
定できます. このような環境下では, 多くの機器が帯域を奪い合うことになり, 無線区間でのパケット損失等個々のエンドエンドの通信に支障をきたします. また, APでは通信に必要なSSID(Service Set Identifier) を定期的 (100 ms 間隔 ) に送出するビーコンを通じて端末に通知しますが, 多くのAPが存在することにより, 個々のAPが送出するビーコンにより帯域が圧迫されるという問題も生じてしまいます. そこで,NTTBPでは干渉の回避策として, 比較的干渉が少ない 5 GHz 帯の周波数の使用を推進するとともに複数の事業者で共用しサービスを提供可能な共用型 APを展開しています ( 図 ₃ ). 共用型 APでは 1 つの物理的な無線回線や物理インタフェースに対して VLANを用いて複数の論理構成に分割することで, 1 つのAPで複数の異なるSSIDを提供しています. これによ り, 無線パケットの不必要な衝突を回避し, 効率的なチャネル設計を実現することで無線区間の通信品質を向上させつつ, 複数の事業者によるサービスを提供することが可能となります. また, 1 つのAPを複数事業者で共有で きるため, 事業者としてもAP 構築の初期コストや運用コストの負担を低減できるというメリットがあります. 共用型 APは, 前述のような品質や 78 2014.3
リューションサービスを極めるコストの観点だけでなく, 1 つの AP にて, 事業者ごとに異なるサービスを提供できるというメリットもあります. 特に最近は, キャリアが提供するトラフィックのオフロードを目的とするWi-Fiサービスに加え, コンテンツ配信やインターネット認証等のクラウドサービスを融合したWi-Fiクラウド事業にも力を入れています.Wi-Fiクラウド事業では, コンビニエンスストア, 自治体, 地下鉄, スタジアムといった多様なエリアオーナーに対して特定スポットでの付加価値向上を提供しています ( 図 4). 認証やIPアドレスの払出しを通信キャリアに委ねるAPの設備卸事業とは異なり,Wi-Fiクラウド事業ではNTTBPが提供する閉域 IP 網内に認証やコンテンツ配信のサーバを配備し, 一定時間のフリーインターネットアクセスに加え, エリアごとに 異なるスポット的なサービスを提供できる仕組みを確立しており, 多様なエリアオーナーによるWi-Fiサービスを実現しています. ここでWi-Fiクラウド事業の実例を ソ 紹介します. 西武ドームでは, 無料 Wi-Fiサービスに加え, 野球観戦に来たお客さまを対象にクラウドにて選手名鑑やリアルタイム対戦データなど多様なコンテンツが楽しめるサービス NTT 技術ジャーナル 2014.3 79
Lions Wi-Fi ( 図 ₅) を提供してい ます. このようなエリアオーナーが利用者に対して, 今だけ ここだけ あなただけ の情報を配信するプラットフォームとしてWi-Fiクラウドを活用する事例が増えてきています. また, 西武ドームのような野球場は狭い範囲に多くの利用者が密集するというエリアであるため, エリア設備にも工夫を施しています. 図 ₆に示すように, 1 つひとつのAPがつくるエリアを小セル化し, その設置密度を上げることで数万人規模のユーザ利用を想定した通信容量とカバレッジを確保しています. 次に共用 APやWi-Fiクラウドの利点を活かし, 認証を共通化したJapan Connected-Free Wi-Fi( 表 ) について紹介します. このサービスは主に外国人観光客向けに無料 Wi-Fiの利便性向上を目的に, スマートフォン向けのアプリケーションとして2013 年の11 月から提供を開始しました. このアプリケーションを利用すると, 初回起動時にメールアドレス等を登録するだけでさまざまなエリアで提供されている異なる無料 Wi-Fiサービスを統一的に利用できます. これはクラウドサービスで提供している認証基盤を活用し, かつアプリケーションのほうで認証処理を自動化することで, 異なるエリアにおいてそれぞれサービス登録することなくサービスを受けられるようにしています. つながりやすさ の向上に向けて NTTBPでは,Wi-Fiの高速化への対応のほかにも, 利用者に対してつながりやすい無線環境の提供に向けて, 最新技術の活用についても検討を進めています. その 1 つがSIM 認証 *1 やPasspoint *2 エリア設 要図 までの リ ーション AP のセル ユーザ登録 登録制限 利用制限 エリア検索 表 回の リ ーション 図 6 度なエリア設 の活用による,Wi-Fi 接続の自動化です. これまでWi-Fiを利用するためには, 提供元のWebページを通じてログイン処理等, 利用者が決められたID やパスワード等を入力することで接続を確立していました.SIM 認証を適用することでWi-Fi 利用時にその都度 ID 等を入力することなく認証を行うこともできますし,Passpointを活用することで利用者の意向や提供元のポリシーに基づいた最適なネットワークの自動検出や選択が可能となります. これらを併用することで利用者は無線レイヤの通信を意識することなくWi-Fiに自動接続することが可能になります. また,NTTBPではエンドエンドの通信をシームレスに行うための技術の活用についても検討を進めています. ドーム 場における AP 設 上 カバー 向性アン ナを設 部カバー 向性パッ アン ナを 用 度エリアを考 した AP Japan Connected-Free Wi-Fi サービスの特徴 カバー 向性パッ アン ナを設 Japan Connected-Free Wi-Fi 参考 : 従来のブラウザ利用 ( 個々のエリア ) アプリ初回起動時のユーザ登録 ( 1 度だけ ) のみで全サービス利用可能 登録期限は無制限 (₉0 日間接続がない場合, 再度登録が必要 ) 各サービスごとの利用時間および回数制限が適用 全エリアの住所や地図をアプリから一元的に確認 各サービスごとにユーザ登録が必要 各サービスごとに設定された登録期限後に, 再度ユーザ登録が必要 各事業者 ( エリアオーナー ) のホームページ等で個別に確認 Wi-Fi 自動接続による課題として, Wi-Fiエリアへの侵入 離脱時の自動接続による低品質エリア ( 図 ₇) への対処や利用者端末でのWi-Fiと 3 G/ LTE 切替に伴うセッション断への対応等が挙げられます. Wi-Fiエリア侵入 離脱時の課題に関しては,APのカバー範囲の境界近辺に顕著であり, 想定しているスループットを得られないという状況になります. 特にエリアの端点に存在する利用者を認識し,Wi-Fiへの接続を制限するといった無線ネットワーク側でこ *1 SIM 認証 : 接続端末の認証方式の 1 つであり, 端末内の SIM カードの情報を用いて認証を行います. *2 Passpoint:Wi-FI Alliance が推進する認定プログラムの 1 つであり, ネットワークの自動検出 選択機能やプロバイダ間のローミングなどをサポートしています. 80 2014.3
リューションサービスを極めるの問題を回避する技術に関して, 回 端末がエリアをると のWAN 回 LTE 接続 Wi-Fi 接続 エリア 時の 端末 MP-TCP (Wi-Fi) TCP IP MP-TCP 回 Wi-Fi スループット 図 G LTE ( G LTE) サービス 図 8 Wi-Fi サービス NTT 研究所とも連携し検討を進めています. さらに複数のアクセス回線の切替に関する課題に対しては,MPTCP (Multipath TCP) *3 や,ANDSF(Access Network Discovery and Selection Function) *4,SaMOG(S2a Mobility Based on GTP & WLAN access to EPC) *5 等さまざまな方式の検討を進めています. その一例として図 8にIP *3 MPTCP:RFC6824 で規定されている TCP の拡張であり, ピア間の TCP コネクションを複数パスにて実現することでスループットの向上やネットワーク障害への耐性を向上させます. *4 ANDSF: 携帯電話のアクセスネットワークや,Wi-Fi 等のアクセスネットワークの接続ポリシーを携帯端末に提供する機能です. *5 SaMOG:3GPP で標準化に向けて議論されている Wi-Fi と 3G もしくは,Wi-Fi ネットワーク間をシームレスにハンドオーバするための技術です. AP 自動接続による TCP IP サーバ MP-TCP レイヤでのシームレスな通信を実現するMPTCP の概要を示します.MPTCP はサーバと連携し, 利用者端末側で複数のIPアドレスを併用した通信を実現する技術であり, 無線レイヤの切替時に適用することで,IPアドレスの変更に伴うエンドエンド通信の切断回避や複数のアクセス網を併用した品質向上への活用が期待できます. 今後の展開 LTE スループット Wi-Fi スループットユーザの スループット LTE 接続 エリア 時の シームレスな の実現に向けた技術の 用 AP LTEスループット ( 一定と 定 ) G LTEとWi-Fiを 用して ( 時の 時間なし ) Wi-Fi 関連サービスを提供し始めてから約 12 年が経過しましたが, 技術の進歩は早く, 通信速度も802.11b 規格の11Mbit/sから始まった無線接続サービスも, 最近では802.11ac 規格に対応した最大 1.3 Gbit/sの高速なサービスも提供され始めつつあります. さらにWi-Fi 接続時の処理を自動化する SIM 認証やPasspointといった技術の導入により, よりつながりやすい Wi-Fiサービスへと進化を遂げつつあります. これからはつながりやすいネットワークを提供するだけでなく, 個々のユーザに対していかに付加価値を提供していくかが大きな課題だと考えています. また, 6 年後には東京でビッグイベントが行われることから, 今後は外国人観光客の増加が予想され, 観光地や競技場といったさまざまな場所においてさらに便利な無線サービスを提供することも重要な課題です. 今後も場所や利用者の特徴に応じたきめ細かいサービスの迅速な提供を目指していきたいと考えています. ソ北條博史 Wi-Fi を快適に利用してもらうためには, 利用者が接続するネットワークを意識することなく,QoE の高いネットワーク体験を享受できることが重要です. 無線アクセス方式をはじめ, エンドエンドで品質の高いサービスを迅速に提供していきたいと思います. 問い合わせ先 NTT ブロードバンドプラットフォームサービス開発部 TEL 03-6810-2628 E-mail info_srvdev ntt-bp.com NTT 技術ジャーナル 2014.3 81