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建設の施工企画 11. 7 57 特集 建設施工の安全 移動式クレーンの施工時安全対策 腰 越 勝 輝 近年 移動式クレーンは大型化 高性能化 軽量化 コンパクト化 運搬トラックの削減化をコンセプ トに目覚ましい発展を遂げている それと同時に高性能 高機能であるがゆえの複雑化が伴い ヒューマ ンエラーに繋がることも多かった 本文では 建設現場等でよく使用され 比較的事故が多い機種であるラフテレーンクレーン 積載形ト ラッククレーン及びクレーン機能を備えたドラグ ショベル 油圧ショベル を例にとって 安全管理を する技術者にとって必要と思われる知識や 安全作業を目指した提案を紹介する キーワード クレーン 移動式クレーン ラフテレーン トラッククレーン ドラグ ショベル 反力 安全管理 多く 一律の事故防止対策では対応しにくいのが現状 1 はじめに である 今後 クレーンの安全管理ができる技術者の 生産現場において移動式クレーンは便利で無くては 人材不足が危惧されるが 建設現場等でよく使用され ならない機械であるが 誤った使い方をすると大きな る 3 機種を主な対象に移動式クレーンを管理する技術 事故に繋がることがある この事故原因として 構造 者にとって必要と思われる知識や 安全作業を目指し 上の特徴の把握不足とヒューマンエラーの複合形が起 た提案を紹介する 因要素の一つになっていることも想定される 近年 移動式クレーンは大型化 高性能化 軽量 2 移動式クレーンの分類と運転者の資格 化 コンパクト化 運搬トラックの削減化をコンセプ トに目覚ましい発展を遂げている それと同時に高性 1 移動式クレーンの分類 能 高機能であるがゆえの複雑化が伴い ヒューマン 移動式クレーンは 労働安全衛生法施行令で 原動 エラーに繋がることも多かった また 安全を最低限 機を内蔵し かつ 不特定の場所に移動させることが 確保するための安全装置を解除しながら作業した結果 できるクレーン と定義されている 移動式クレーン の事故等が未だに多発している は 通称で トラッククレーン オールテレーンクレー 移動式クレーンは 作業条件が毎日変化することも 写真 3 写真 1 ラフテレーンクレーン 写真 2 積載形トラッククレーン レーン機能を備えた ク ドラグ ショベル

建設の施工企画 58 11. 7 ン 積載形トラッククレーン ホイールクレーン ラ フテレーンクレーン クローラクレーン ミニクロー ラクレーンなどに分類される なお その他の移動式クレーンとして クレーン機 能を備えたドラグ ショベル 油圧ショベル があ るが 災害統計上はクローラクレーンに分類されてい る また つり上げ荷重が 1 t 以上 5 t 未満の移動式 図 1 ラフテレーンクレーンの安全管理ポイント クレーンを小型移動式クレーンと称している ①アウトリガーの張出し幅 2 移動式クレーン運転者の資格 アウトリガーの張出し幅は 最大張出しが基本であ 移動式クレーンを運転するには 移動式クレーン運転 る 中間張出しでも作業可能であるが 定格総荷重が 士免許取得 技能講習または特別教育を修了していな 減少すること及びアウトリガー張出幅自動検出装置付 ければならない すなわち つり上げ荷重 5 t 以上は移 きの場合も 張出し幅の入力を間違えないよう注意す 動式クレーン運転士免許取得者 1 t 以上 5 t 未満は小 型移動式クレーン運転技能講習修了者 1 t 未満は特別 ②アウトリガー反力と地耐力 教育修了者でなければ運転してはならない 表 1 に アウトリガーの反力は 50 t ラフテレーンクレーンで 32 t 314 KN 前後 25 t ラフテレーンクレーンでも 移動式クレーンと運転者の資格の一覧を示す 22 t 216 KN 前後となる 反力は ブーム長 作業半 径 負荷荷重等によって変化するが 各クレーンメーカ 3 移動式クレーンの安全管理ポイント のホームページで算出可能である 1 ラフテレーンクレーンの安全管理ポイント アウトリガーの反力に対する鉄板養生の目安は 日 過去の転倒事故例を見ると 過負荷作業での転倒が 本建設機械化協会発行の 移動式クレーン 杭打機等の 最も多く 過負荷防止装置の自動停止機能を解除した 支持地盤養生マニュアル に記載されているので参照さ ことが原因と思われる また アウトリガーの張出し れたい なお 反力 30 t で N 値 6 8 程度の粘性土の 幅が不均等の場合で 張出し幅が小さいほうへ旋回し 場合は 1.2 m 1.2 m の 22 mm 鉄板敷となっている クレーン等安全規則第 70 条の 3 使用の禁止 に た結果の転倒事故が多い その他 アウトリガーフロート部の沈下 陥没によ 軟弱地盤 埋設物その他地下に存在する工作物が損壊 るものや 長尺ジブ 以降 主ジブをブームと称する するおそれのある場所等で 鉄板養生無しでの移動式 の状態で突風を受け ブームとつり荷が大きく揺れた クレーンの作業を禁止している その他 不十分な埋 結果による事故例もある め戻し地盤 強度の不明な構台 法肩部 U字溝等地 死亡災害の中では つり荷の落下によるものが多く つり上げ荷重 20 t 以上 30 t 未満のクレーンで多く発 下空洞部には注意が必要である ③設置面水平度 クレーンの安定度は 水平堅土上で静かに運転した場 生している ラフテレーンクレーンは年を追って大型化し 機動性 があって使い勝手の良い移動式クレーンであるが 間違っ た使い方をすると 転倒等の事故に繋がる恐れがある ここで 安全管理上のポイントを示す 図 1 表 1 合が前提となっており 傾斜地や構台乗り入れ部等でや むを得ない場合は 傾斜調整架台等の上に設置する 参考 クローラタワークレーンの場合は タワーブー ム垂直 ジブ上限無負荷時の後方安定度他から 設置 移動式クレーンと運転者の資格

建設の施工企画 11. 7 59 地盤の傾斜角が厳しく定められているので注意が必要 2 積載形トラッククレーンの安全管理ポイント 積載形トラッククレーンの過去の事故原因をみる である と 機体 構造部分の折損 倒壊 転倒したものが最 ④負荷状態の外部表示灯 作業中の負荷状態を外部へ表示させる 3 色表示灯 も多く 次いで つり荷の落下によるものが多くなっ で クレーンの負荷状態が 90 未満の場合は緑ラン ている 平成 21 年のデータを見ても 両者で 7 割を プが点灯 90 以上 100 未満の場合は黄ランプが点 超えている 灯 100 以上の場合は赤ランプが点灯する 黄ランプ点灯は要注意である 積載形トラッククレーンはブームの方向 空車時 積載時によって性能特性が大きく異なるので特別な注 意が必要である 通常 定格総荷重表は空車時 後方 側方領域で アウトリガー最大張出と最小張出の性能 を示している 写真 4 外部表示灯 図 2 積載形トラッククレーンの安全管理ポイント ⑤過負荷防止装置解除キー 一般に運転室には過負荷防止装置を解除できるキー ①性能特性と作業領域 が付属されているが このキーを解除したことによる 旋回中心と転倒支点間距離が旋回方向により異なる 事故例が多い 解除している場合に 外部表示灯の赤 ため 後方 側方 前方の作業領域で安定度に極端な ランプが点灯するものもある 差が出る 最近は 当該解除キーを外して現場に入場するケー 後方領域は最も安定が良く 安定度にほぼ関係無く 強度限界内で巻上げウインチの能力一杯の荷物をつり スも多い 解除キーを無くしたクレーンや 解除しても過負荷 時には停止するクレーンが開発されている 上げることができる 側方領域の中で 最も安定度の悪いブーム方向は アウトリガーと後輪とを結ぶ線に直角の方向であり 図 3 に示す方向である 空車時定格総荷重表は こ の部分の安定度を基に設定されている 写真 5 過負荷防止装置解除キー 図 3 作業領域 ⑥突風 移動式クレーンは 作動時風速が 16 m/sec で設計 されているが 長尺ブームの場合等 突風時には ブー ムとつり荷が風を受けることにより転倒の恐れもあ 前方領域は安定度が著しく悪く 空車時定格総荷重 の 25 以下で作業す 実際の作業では 荷台の積載により安定度が変動し る 強風 10 分間の平均風速が 10 m/sec 以上の風 同一旋回方向でも積載物の重量 位置により安定性能に のため危険が予想されるときは作業を中止する必要が 差が出る また 積載物の積み降ろしにより自重が変動し ある クレーン等安全規則第 74 条の 3 安定性能も変動する 多くの積載物を降ろす場合は 作

建設の施工企画 60 11. 7 業半径が順次小さくなるように 荷台後方の積荷から降 ているので 事故防止のために積極的な導入の推進指 ろす 後方領域から側方領域へ旋回し 更に上記の安定 導が望まれる 最弱方向を通過させる時は 細心の注意が必要となる ④ブームの格納 ②アウトリガー反力と地耐力 作業後にブームを未格納のまま走行し 電線等に接 積載形トラッククレーンのアウトリガー反力は 性 触 切断する事故が未だに多発している 作業後のブー 能特性が大きく変動するため通常明らかにされていな ムやアウトリガーの格納状態を自動検知して 未格納 いが 思ったより大きいというのが実感である 積載 なままでの危険な走行を防止する安全装置も開発され 形トラッククレーンのアウトリガーフロートは比較的 ている 小さく 敷板使用が絶対条件となる また アウトリ その他として 遠隔操作スイッチ 有線 無線 の ガー反力が少なくとも 6 t を超える場合は 地盤によ 押し間違い事故が多い 荷物等を介錯しながらの操作 り 敷板の下に更に鉄板敷き等が望ましい 前述の 移 は非常に危険であり 手元をよく確認しながら操作す 動式クレーン 杭打機等の支持地盤養生マニュアル では 反力 10 t で N 値 6 8 程度の粘性土の場合は 0.6 m 0.6 m の厚さ 70 mm 敷板となっている 運転 3 クレーン機能を備えたドラグ ショベル 油 圧ショベル の安全管理ポイント 手では地盤の評価が出来ないケースが多い 軟質土の 上での作業は 事業者側で鉄板敷き等の必要性を指導 クレーン機能を備えたドラグ ショベルの過去の事 されることが望まれる また 日頃より概略のアウト 故例を見ると 操作ミス等による はさまれ事故が最 リガー最大反力を明らかにすると共に 小型移動式ク も多く 次いで 機体の転倒によるものが多くなって レーンの技能講習時に地盤の強さ 支持力 の項目を いる 今後更に充実させることが望まれる クレーン機能を備えたドラグ ショベルには 日 また 技能講習終了後概ね 5 年を経過した運転手に 本クレーン協会規格に適合した過負荷制限装置をはじ 対しても 移動式クレーン運転士に対する安全衛生教 め 各種の安全装置等が備えられている これらの安 育を受講されることを指導されたい 全装置は 切替えスイッチによりその機能を有効にす ③荷重計 るものであり クレーン作業に際しては必ず安全装置 つり上げ荷重 3 t 未満の移動式クレーンでは 法令 上は検定に合格した過負荷防止装置を必要とせず 過 を有効な状態にして使用することが必要である ①移動式クレーン仕様機の確認 負荷防止装置以外の過負荷を防止するための装置を取 移動式クレーン仕様機は過負荷制限装置他の安全装 り付ければ良い これは つり荷の質量のみを検出す 置等を備えているので 図 4 に示す特徴を確認す る装置を含むものであり 荷重計等が該当する ることが必要である なお クレーン機能を備えたド 現在 積載形トラッククレーンで多く使用されてい ラグ ショベルでクレーン作業を行う者は 車両系建 る荷重計は 巻上装置用油圧モーターの作動油圧力を 設機械運転技能講習の他に 小型移動式クレーン運転 荷重に変換したもので 巻上装置の巻上げ時のみ つ 技能講習を修了していなければならない り荷の質量を示す したがって 停止時や巻下げ時 他の操作時には つり荷の質量を示さないので注意す なお 過負荷を防止するための装置として 日本 クレーン協会規格に適合した安全装置が開発販売され 図 4 クレーン機能を備えたドラグ ショベルの各部の名称と安全装置 ②高速旋回の禁止 クレーン仕様への切替えによりエンジン回転数は下 がるが ゆっくりとしたレバー操作を行い衝撃や反動 写真 6 荷重計 のないようにする 特にドラグ ショベルの旋回速度

建設の施工企画 11. 7 61 は速いので, 低速で旋回操作を行い, つり荷の振れをできるだけ小さくすることが必要である 3 水平で平坦な場所に設置クレーン機能を備えたドラグ ショベルは水平で平坦な場所に設置する やむをえず凸凹のある所でクレーン作業を行う時は, 平坦に養生後, 敷鉄板などを使用し地面の間にすき間が無いようにする また, 傾斜地や軟弱地盤上でのクレーン作業は行わないようにする その他, クレーン機能を有しないにも関わらず, ブームに 移動式クレーン仕様 との表示をし, クレーン機能を備えたドラグ ショベルを偽装した機械が使用されているので注意が必要である 7いずれかのアウトリガーが反力を失うと同時に, 安全側の操作以外は出来なくなる構造にする 8 機体に風速計を常備し, 安全装置に連動させる 平均風速 10 m/sec 及び瞬間風速 16 m/sec を超える風が吹いた時は, 警報を発し安全装置モニターに表示する 9 事業者は設置場所の地耐力等をクレーン拠出会社に提示すると共に, クレーン拠出会社はアウトリガー最大反力 ( 接地圧 ) を事業者に提示し, 荷重分散方法等の協議をし, これを記録に残す 10 積載形トラッククレーンは過負荷制限装置の取付けはもとより, 常時つり荷の質量が表示される荷重計 ( デジタル式荷重計等 ) を積極的に導入する 4. 安全作業のための提案 5. おわりに 移動式クレーンに係る事故の多発に鑑みて, 事故防止のために構造上の特徴及び運転 管理上の注意事項の見える化と, 基本に忠実な運転 管理が望まれるところである 安全作業のための提案を下に示すので, このなかでいくつかの項目が採用され, 安全作業に結びつくことを期待したい 1 安全装置の解除を, 移動式クレーン運転士に強要しない風土を構築する ( 事業者 ) 2 無理を強要されても妥協しない, 移動式クレーン運転士再教育を行う ( クレーン拠出会社 ) 併せて, 移動式クレーン運転士安全衛生教育 ( 免許取得後,5 年経過者 ) を受講する 3クレーン運転士を支援する安全シムテムを構築する 安全装置の解除時は, 赤ランプが点灯し 違法作業です, 直ちに作業を中止して下さい と音声警報する ( 部分的にはすでに採用されている ) 4 安全装置を解除して作業しても, 致命的な事故に繋がらないための, バックアップシステムを構築する ( 一部分ではすでに開発されている ) 5 定格総荷重の 90% を超えた場合は, 運転速度が自動的に微速になる構造にする 6アウトリガー最大反力 ( 接地圧 ) を常時確認できるよう, 機体の見やすい場所に表示する 移動式クレーンに係る事故 災害を防止するために, 安全作業全般について述べてきたが, 機械特性の見える化, 違法行為の見える化, 危険性の見える化が必要であると考える 基本的には運転者の自主管理に頼るところが多く, 機械特性の把握, つり荷情報の把握, 地盤情報の把握, そして基本に忠実な運転が出来れば事故 災害が格段に減少すると考える 同時に, 事業者側の管理者もクレーン等の専門知識を吸収し, 指導されることが望まれる 資料提供 タダノ, 古河ユニック 参考文献 日本クレーン協会 : 協会規格, 安全のすすめ, 移動式クレーン運転の安全 日本建設機械化協会 : 移動式クレーン, 杭打機等の支持地盤養生マニュアル [ 筆者紹介 ] 腰越勝輝 ( こしごえかつき ) 日本クレーン協会 クレーン誌 編集委員専門委員会委員腰越技術士事務所代表