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控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

Microsoft Word 資料1 プロダクト・バイ・プロセスクレームに関する審査基準の改訂についてv16

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審決取消判決の拘束力

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

REPORT あいぎ特許事務所 名古屋市中村区名駅 第一はせ川ビル 6 階 TEL(052) FAX(052) 作成 : 平成 27 年 4 月 10 日作成者 : 弁理士北裕介弁理士松嶋俊紀 事件名 入金端末事件 事件種別 審決取消

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

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主文第 1 項と同旨第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は, 平成 24 年 6 月 14 日, 発明の名称を 遊技機 とする特許出願をし ( 特願 号 請求項数 3 ), 平成 26 年 5 月 12 日付けで拒絶理由通知 ( 甲 8 以下 本件

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

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1 アルゼンチン産業財産権庁 (INPI) への特許審査ハイウェイ試行プログラム (PPH) 申請に 係る要件及び手続 Ⅰ. 背景 上記組織の代表者は

認められないから, 本願部分の画像は, 意匠法上の意匠を構成するとは認めら れない したがって, 本願意匠は, 意匠法 3 条 1 項柱書に規定する 工業上利用する ことができる意匠 に該当しないから, 意匠登録を受けることができない (2) 自由に肢体を動かせない者が行う, モニター等に表示される

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

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平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

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4390CD461EB D090030AC8

2.2.2 外国語特許出願の場合 2.4(2) を参照 2.3 第 184 条の 5 第 1 項に規定された書面 (1) 日本語特許出願 外国語特許出願を問わず 国際特許出願の出願人は 国内書面提出期間 ( 注 ) 内に 出願人 発明者 国際出願番号等の事項を記載した書面 ( 以下この部において 国

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

間延長をしますので 拒絶査定謄本送達日から 4 月 が審判請求期間となります ( 審判便覧 の 2.(2) ア ) 職権による延長ですので 期間延長請求書等の提出は不要です 2. 補正について 明細書等の補正 ( 特許 ) Q2-1: 特許の拒絶査定不服審判請求時における明細書等の補正は

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

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を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

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平成  年(オ)第  号

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第31号-

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第24号-

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

にした審決を取り消す 第 2 前提事実 1 特許庁における手続の経緯被告は, 発明の名称を レーザ加工方法, 被レーザ加工物の生産方法, およびレーザ加工装置, 並びに, レーザ加工または被レーザ加工物の生産方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納したコンピュータが読取可能な記録媒体 とする特

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

 

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

出願人のための特許協力条約(PCT) -国際出願と優先権主張-

ら退去を迫られやむを得ず転居したのであるから本件転居費用について保護費が支給されるべきであると主張して 本件処分の取消しを求めている 2 処分庁の主張 (1) 生活保護問答集について ( 平成 21 年 3 月 31 日厚生労働省社会援護局保護課長事務連絡 以下 問答集 という ) の問 13の2の

(イ係)

では理解できず 顕微鏡を使用しても目でみることが原理的に不可能な原子 分子又はそれらの配列 集合状態に関する概念 情報を使用しなければ理解することができないので 化学式やその化学物質固有の化学的特性を使用して 何とか当業者が理解できたつもりになれるように文章表現するしかありません しかし 発明者が世

弁理士試験短答 逐条読込 演習講座 ( 読込編 ) 平成 29 年 6 月第 1 回 目次 平成 29 年度短答本試験問題 関連条文 論文対策 出題傾向分析 特実法 編集後記 受講生のみなさん こんにちは 弁理士の桐生です 6 月となりましたね 平成 29 年度の短答試験は先月終了しました 気持ちも

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ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

同法 46 条 1 項 1 号により, 無効とすることはできない, というものである 第 3 当事者の主張 1 審決の取消事由に関する原告の主張 (1) 取消事由 1( 商標法 3 条 1 項柱書該当性判断の誤り ) 審決は, 本件商標に関し, 願書に記載された指定商品又は指定役務に使用していること

第 1 原告の求めた判決 特許庁が無効 号事件について平成 23 年 12 月 28 日に した審決を取り消す 第 2 事案の概要本件は, 被告の請求に基づき原告の本件特許を無効とした審決の取消訴訟であり, 当裁判所が取り上げる争点は, 実施可能要件及びサポート要件の充足性の

諮問庁 : 国立大学法人長岡技術科学大学諮問日 : 平成 30 年 10 月 29 日 ( 平成 30 年 ( 独情 ) 諮問第 62 号 ) 答申日 : 平成 31 年 1 月 28 日 ( 平成 30 年度 ( 独情 ) 答申第 61 号 ) 事件名 : 特定期間に開催された特定学部教授会の音声

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上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

平成  年(あ)第  号

11総法不審第120号

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1 特許庁における手続の経緯原告は, 名称を 5 角柱体状の首筋周りストレッチ枕 とする発明につき, 平成 20 年 10 月 31 日に特許出願 ( 本願 特願 号, 特開 号, 請求項の数 1) をし, 平成 25 年 6 月 19 日付けで拒絶

目次 1. 訂正発明 ( クレーム 13) と控訴人製法 ( スライド 3) 2. ボールスプライン最高裁判決 (1998 年 スライド 4) 3. 大合議判決の三つの争点 ( スライド 5) 4. 均等の 5 要件の立証責任 ( スライド 6) 5. 特許発明の本質的部分 ( 第 1 要件 )(

平成  年(行ツ)第  号

日本国特許庁の国内出願の審査結果を利用した特許審査ハイウェイ ベトナム国家知的財産庁 (IP Viet Nam) と日本国特許庁 (JPO) との間の特許審査ハイウェイ試行プログラムに関するベトナム国家知的財産庁への申請手続 ( 仮訳 ) 日本国特許庁の国内出願の審査結果を利用した特許審査ハイウェイ

第26回 知的財産権審判部☆インド特許法の基礎☆

平成25年5月  日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

指定 ( 又は選択 ) 官庁 PCT 出願人の手引 - 国内段階 - 国内編 - ベトナム国家知的所有権庁 (NOIP) 国内段階に入るための要件の概要 3 頁概要 国内段階に入るための期間 PCT 第 22 条 (3) に基づく期間 : 優先日から 31 箇月 PCT 第 39 条 (1)(b)

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第1回 基本的な手続きの流れと期限について ☆インド特許法の基礎☆

算税賦課決定 (5) 平成 20 年 1 月 1 日から同年 3 月 31 日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額 6736 万 8671 円を下回る部分及び還付地方消費税額 1684 万 2167 円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 (6) 平成 20 年 4 月

最高裁○○第000100号

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

PCT 出願人の手引 - 国内段階 - 国内編 -AL AL 1 頁 工業所有権総局 (GDIP) ( アルバニア ) ( 指定官庁又は選択官庁 ) 目 次 国内段階 - 概要 国内段階の手続 附属書手数料 附属書 AL.Ⅰ 委任状 附属書 AL.Ⅱ 略語のリスト国内官庁 : 工業所有権総局 (GD

異議の決定 異議 東京都荒川区東日暮里 3 丁目 27 番 6 号商標権者株式会社エドウイン 東京都渋谷区広尾 商標異議申立人 EVISU JAPAN 株式会社 東京都港区西新橋 1 丁目 18 番 9 号西新橋ノアビル4 階朝比 増田特許事務所代理人弁理士朝比

例 2: 組成 Aを有するピアノ線用 Fe 系合金 ピアノ線用 という記載がピアノ線に用いるのに特に適した 高張力を付与するための微細層状組織を有するという意味に解釈される場合がある このような場合は 審査官は 請求項に係る発明を このような組織を有する Fe 系合金 と認定する したがって 組成

税務訴訟資料第 267 号 -70( 順号 13019) 大阪高等裁判所平成 年 ( ) 第 号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求控訴事件国側当事者 国 ( 富田林税務署長 ) 平成 29 年 5 月 11 日棄却 上告受理申立て ( 第一審 大阪地方裁判所 平成 年 ( ) 第 号 平成

Microsoft Word - 01.表紙、要約、目次

令和元年 5 月 30 日判決言渡 平成 30 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 23 日 判 決 原告ジー エス エフ ケー シー ピー株式会社 被告ケーシーピーヘビーインダスト リーズカンパニーリミテッド 訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫

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平成 28 年 10 月 11 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結の日平成 28 年 7 月 7 日 判 決 原 告 オーガスタナショナルインコーポレイテッド 同訴訟代理人弁護士 中 村 稔 同 松 尾 和 子 同 田 中 伸 一 郎 同訴訟代

特許庁が無効 号事件について平成 29 年 2 月 28 日にした審決を取り消す 第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 被告は, 平成 27 年 5 月 26 日, 発明の名称を 気体溶解装置及び気体溶解方法 とする特許出願をし, 平成 28 年 1 月 8

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平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

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平成 30 年 3 月 29 日判決言渡 平成 29 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 13 日 判 決 原告株式会社コーエーテクモゲームス 訴訟代理人弁護士 佐 藤 安 紘 高 橋 元 弘 吉 羽 真一郎 末 吉 亙 弁理士 鶴 谷 裕 二

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基本的な考え方の解説 (1) 立体的形状が 商品等の機能又は美感に資する目的のために採用されたものと認められる場合は 特段の事情のない限り 商品等の形状そのものの範囲を出ないものと判断する 解説 商品等の形状は 多くの場合 機能をより効果的に発揮させたり 美感をより優れたものとしたりするなどの目的で

である旨の証券取引等監視委員会の指導を受け, 過年度の会計処理の訂正をした 本件は, 本件事業年度の法人税について, 控訴人が, 上記のとおり, その前提とした会計処理を訂正したことにより, 同年度の法人税の確定申告 ( 以下 本件確定申告 という ) に係る確定申告書の提出により納付すべき税額が過

争点は,1 引用例 2 記載事項の発明該当性の判断の遺脱の有無,2 同発明該当性の判断の誤り及び3 本願発明の進歩性判断の誤りの有無である 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 24 年 5 月 2 日, 名称を 放射能除染装置及び放射能除染方法 とする発明につき, 特許出願 ( 特願 201

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Ⅰ. はじめに 近年 企業のグローバル化や事業形態の多様化にともない 企業では事業戦略上 知的財産を群として取得し活用することが重要になってきています このような状況において 各企業の事業戦略を支援していくためには 1 事業に関連した広範な出願群を対象とした審査 2 事業展開に合わせたタイミングでの

平成22年 月 日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

む ), 倉庫その他の建物をいう ( 同条 3 号 ) 固定資産課税台帳 とは, 土地課税台帳, 土地補充課税台帳, 家屋課税台帳, 家屋補充課税台帳及び償却資産課税台帳を総称するものである ( 同条 9 号 ) 家屋課税台帳 とは, 登記簿に登記されている家屋 ( 建物の区分所有等に関する法律 (

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

平成 24 年 12 月 28 日付け拒絶理由通知平成 25 年 1 月 21 日付け手続補正書 意見書の提出平成 25 年 10 月 30 日付け拒絶理由通知平成 25 年 11 月 19 日付け手続補正書 意見書の提出平成 26 年 4 月 16 日付け拒絶理由通知平成 26 年 5 月 9 日

1 審査会の結論 平成 28 年度市民税 県民税の賦課決定処分 に係る審査請求は棄却する べきであるとの審査庁の判断は妥当である 2 事案概要南区長 ( 以下 処分庁 という ) は 地方税法 ( 昭和 25 年法律第 226 号 以下 法 という ) 第 24 条及び第 294 条並びに横浜市市税

1/120 別表第 1(6 8 及び10 関係 ) 放射性物質の種類が明らかで かつ 一種類である場合の放射線業務従事者の呼吸する空気中の放射性物質の濃度限度等 添付 第一欄第二欄第三欄第四欄第五欄第六欄 放射性物質の種類 吸入摂取した 経口摂取した 放射線業 周辺監視 周辺監視 場合の実効線 場合

優先権意見及び回答

2 当事者の主張 (1) 申立人の主張の要旨 申立人は 請求を基礎づける理由として 以下のとおり主張した 1 処分の根拠等申立人は次のとおりお願い書ないし提案書を提出し 又は口頭での告発を行った ア.2018 年 3 月 23 日に被申立人資格審査担当副会長及び資格審査委員長あてに 会長の経歴詐称等

13 条,14 条 1 項に違反するものとはいえない このように解すべきことは, 当裁判所の判例 ( 最高裁昭和 28 年 ( オ ) 第 389 号同 30 年 7 月 20 日大法廷判決 民集 9 巻 9 号 1122 頁, 最高裁昭和 37 年 ( オ ) 第 1472 号同 39 年 5 月

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平成 12 年 ( 行ケ ) 第 354 号審決取消請求事件 ( 平成 13 年 10 月 17 日口頭弁論終結 ) 判決原告アウシモントソチエタペルアツィオーニ訴訟代理人弁理士倉内基弘同風間弘志被告特許庁長官及川耕造指定代理人山田泰之同花田吉秋同森田ひとみ同宮川久成主文原告の請求を棄却する 訴訟費用は原告の負担とする この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30 日と定める 事実及び理由第 1 当事者の求めた裁判 1 原告特許庁が平成 11 年審判第 7337 号事件について平成 12 年 5 月 1 日にした審決を取り消す 訴訟費用は被告の負担とする 2 被告主文第 1 2 項と同旨第 2 当事者間に争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯原告は 1985 年 ( 昭和 60 年 )11 月 20 日にイタリア国においてした特許出願に基づく優先権を主張して昭和 61 年 11 月 14 日にした特許出願 ( 特願昭 61-270001 号 以下 原出願 という ) の一部を分割して 平成 9 年 2 月 13 日 名称を 新規な官能化ペルフルオロポリエーテルとその製造方法 とする発明につき新たな特許出願 ( 特願平 9-42855 号 ) をしたが 平成 11 年 2 月 2 日に拒絶査定を受けたので 同年 5 月 6 日 これに対する不服の審判の請求をした 特許庁は 同請求を平成 11 年審判第 7337 号事件として審理した上 平成 12 年 5 月 1 日に 本件審判の請求は 成り立たない との審決をし その謄本は同月 24 日原告に送達された 2 本願発明の要旨平成 10 年 11 月 20 日付け手続補正書によって補正された明細書 ( 以下 本件明細書 という ) に記載された発明 ( 以下 本願発明 という ) の要旨は以下のとおりである なお 本件明細書の特許請求の範囲の請求項 2 以下は実施態様項である 請求項 1 下記類 化 1 [ ここで n m p q および r は整数にして n は 2~200 範囲 m p q および r は 1~100 範囲で夫々変動し そして m+p+q+r の和は 4~ 400 範囲であり Rf は CF3 又は C2F5 であり A は F 又は ORf であり B および D は炭素原子 1~3 個のペルフルオロアルキルであり E は F 又は OR f

(R f= 炭素原子 1~3 個のペルフルオロアルキル ) である ] のペルフルオロポリエーテルを分断するに当り 前記第 (Ⅰ) 類 第 (Ⅱ) 類又は第 (Ⅲ) 類のペルフルオロポリエーテルを V Mn Ni Cu Zr M o および Zn の遷移金属 Sn 並びに Sb の群から選ばれる元素の弗化物 オキシ弗化物 酸化物又はこれらの混合物或はこれらの先駆物質よりなる触媒の存在下 1 50~380 範囲の温度に加熱することを含む方法 3 審決の理由審決は 別添審決謄本写し記載のとおり 本件明細書には 当業者が本願発明を容易に実施できる程度に記載されているものとは認められないから 本件特許出願は特許法 36 条 3 項 ( 注 平成 2 年法律第 30 号による改正前の特許法 36 条 3 項 の趣旨と解される 以下 特許法旧 36 条 3 項 という ) の要件を満たさないとした 第 3 原告主張の審決取消事由 1 審決の理由中 本件明細書の記載をそのまま摘記した部分の認定並びに本件明細書の記載は 本願発明においては 触媒の種類 特性 量が反応条件及び生成物化合物に影響を与える重要な要素であることを示している このことは 当業者が所定の ( 目的とする ) 平均分子量を有する化合物を得るためには 触媒の種類 使用量及び反応条件についての情報が不可避的に必要であることを意味するものと認められる との認定 ( 審決謄本 4 頁 1 行目 ~6 行目 ) は認める 審決は 本件明細書の記載は特許法旧 36 条 3 項所定の記載要件を満たしていないとの誤った判断をしたものであるから 違法として取り消されるべきである 2 取消事由 ( 明細書の記載要件の充足性に関する判断の誤り ) (1) 審決は 本願明細書には 触媒の種類について 特許請求の範囲の記載と同様な V Mn Ni Cu Zr Mo Zn の各遷移金属 Sn 及び S b 群から選ばれる元素の弗化物 オキシ弗化物 酸化物又はこれらの混合物あるいはこれらの先駆物質 という広範かつ包括的な記載があるだけで (Ni については 金属弗化物により代表される 旨の記載がある ) 目的にかなった特定の触媒を着想し あるいは 製造ないし入手する手がかりとなる説明はなく その使用量も 原料ペルフルオロポリエーテルに対し 0.1~10 重量 %( 第 (Ⅲ) 類のポリエーテルの場合は多い ) 反応温度は 150~380 反応時間は 1 分 ~ 数時間好ましくは 3 分 ~5 時間程度 という ともに広範な変動範囲が示されるに止まり 当業者が実施に必要な条件設定の手がかりとすべき具体的な説明が一切なされていない ( 審決謄本 4 頁 8 行目 ~19 行目 ) とした上 本願明細書には 当業者が発明を容易に実施できる程度に記載されているものとは認められないから 本願は 特許法第 36 条第 3 項 ( 注 特許法旧 36 条 3 項 ) の規定を満たしていない ( 同 5 頁 30 行目 ~32 行目 ) と判断するが 誤りである (2) 本願発明は 特許請求の範囲の請求項 1 の記載から明らかなように 高分子量のペルフルオロポリエーテルを分断して低分子量の化合物を得るものであって 所定の分子量を有する化合物を得ることを目的とするものではないから 所定の分子量のペルフルオロポリエーテルを得るための分断の程度は重要なことではなく 当業者が所望に応じて反応条件を決めることになる そして 本件明細書 ( 甲第 2 第 15 号証 ) の発明の詳細な説明には この目的を達成するための限定条件は a) 温度を 触媒の種類および量を関数として 150~380 範囲に保つこと そして b) 使用触媒の種類および濃度である ( 段落 0008 ) ことが記載され さらに 触媒の使用量については 用いられる触媒の量は出発物質ペルフルオロポリエーテルの重量に関し 0.1~10 重量 % 範囲で変動する ( 段落 0005 ) と 反応時間については 反応時間は例えば 1 分 ~ 数時間好ましくは 3 分 ~5 時間程度の広い範囲にわたって変動しうる ( 段落 0006 ) との記載があるから 反応をこのような条件下で実施すれば 常に高分子量のペルフルオロポリエーテルの分断が行われ 低分子量の化合物が得られる そして 本願発明において用いることができる触媒は何ら特殊のものではなく 市販されているか又は当業者が容易に製造することができる任意の触媒を使用すれば足りるのであるから 当業者は 本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて容易に本願発明の実施をすることができるというべきである なお 審決は 一般に触媒の関与する反応において 触媒の種類 ( 構成元素 組成等 ) が 反応の成否と密接に関係するものであることは 当業者のよく知るところであり 本願明細書においても 触媒の種類 特性 量が反応条件

及び生成物化合物に影響を与える重要な要素である旨の記載がなされている ( 審決謄本 4 頁 26 行目 ~30 行目 ) ことを本件明細書の記載不備の論拠の一つとするが これらの条件は所定の分子量の化合物を得ようとする際に関係してくるものであって 分断の程度を規定しない本願発明の実施の容易性を左右するものではない (3) さらに 1 本件明細書の 実施例 1 の記載 ( 甲第 15 号証 ) 2 平成 1 0 年 11 月 20 日付け意見書添付の実験報告書の記載 ( 甲第 16 号証 ) 3 原出願に係る明細書 ( 甲第 3 号証 ) の記載によっても 下記のとおり 本願発明の実施の容易性は基礎付けられるというべきである ア本件明細書の段落 0017 ( 甲第 15 号証 ) には γ-alf3 を触媒として使用する 実施例 1 が記載されている ここで使用されている触媒の種類が本願発明の構成と異なるため これが本来の意味の実施例でないことは確かであるが それ以外の点では本願発明に包含される条件下で行われて かつ 本願発明の効果を奏することが示されているから 本願発明の実施における有力な手掛かりとなる イ原告は 本願発明の特許出願に係る審査過程で 平成 10 年 7 月 2 日付けの拒絶理由通知に対し 同年 11 月 20 日 手続補正書とともに意見書 ( 甲第 1 6 号証 ) を特許庁に提出したが この意見書添付の実験報告書に記載されている試験 1 2 は 本願発明の構成要件を満足する触媒である V2O5+MnO2+NiF 2 及び SbF5 を用い その他の本願発明の構成要件及び本件明細書の発明の詳細な説明に従った反応条件で実施したものであり その結果 ペルフルオロポリエーテルが分断されるという本願発明の効果が奏されることが示されている これは 当業者が本件明細書の記載を忠実にたどることにより 容易に本願発明の実施をすることができることを裏付けるものである なお 上記試験 1 2 を原出願明細書の実施例として追加するとの内容の平成 7 年 2 月 1 日付け手続補正に対しては 同年 3 月 22 日に補正却下決定がされ その不服審判請求事件においても同年 12 月 2 1 日に請求不成立審決がされたものであるが 明細書の記載に基づいて容易に実施可能であることを補足的に確認するものとして評価されるべきである ウ原出願に係る明細書 ( 甲第 3 号証 ) には Ti Cr Fe Co 及び Al の元素の化合物から成る触媒を用いた実施例が示され これらのすべてにおいてペルフルオロポリエーテルを分断するという効果が確認されているのであるから これら以外の元素で本願発明に規定する元素についても その化合物を触媒として用い 本件明細書の記載に基づいて実施するならば 同様の効果を予測することは可能というべきである (4) 被告は 本願発明における触媒の種類は膨大な数に上り その逐一について反応条件等の組合せを試行し 精査することが必要となり 多大な試行錯誤を要する旨主張するが 本願発明の要旨に規定する V Mn Ni Cu Zr M o および Zn の遷移金属 Sn 並びに Sb の群から選ばれる元素の弗化物 オキシ弗化物 酸化物又はこれらの混合物或はこれらの先駆物質よりなる触媒 は 当業者によく知られているものにすぎず また 本件明細書の ニッケルの場合 効果的触媒は 酸化度の最も高い金属弗化物により代表されることが確かめられた また 良好な結果は 酸化度が最高値より低い Ni のハロゲン化物を用いても達成される 但し その場合 反応容器には基体弗素流れを導入し 該流れによって最も高い酸化状態にある対応弗化物を現場形成させるものとする また 弗化物およびオキシ弗化物は 弗素の存在で対応するハロゲン化物から現場製造することができる ( 段落 0009 ) との記載に基づいて 当業者が本願発明の方法において使用する触媒を調製又は入手することは容易である 第 4 被告の反論 1 審決の認定判断は正当であり 原告主張の取消事由は理由がない 2 取消事由 ( 明細書の記載要件の充足性に関する判断の誤り ) について (1) 明細書には その技術文献としての性格上 当業者が容易に発明の実施をすることができる程度にその発明の目的 構成とともに その特有の効果を具体的に記載すべきところ ( 特許法旧 36 条 3 項 ) 触媒に係る発明においては 一般に 触媒効果を理論的あるいは経験則に基づいて確実に予測することは困難であるため 当該発明の触媒の効果に関する説明が具体的かつ明確に記載されていなければならない すなわち 明細書に具体的なデータ又はそれと同視し得る程度の記載をしてその触媒効果を裏付ける必要があり それがない本件明細書の発明の詳細な説明の記載は 同項に違反するといわなければならない

(2) 原告は 本願発明は本件明細書の記載に基づいて容易に実施することができる旨主張するが 本件明細書には 当業者が所定の平均分子量を有する化合物を得るためには 触媒の種類や使用量など反応条件についての情報が不可避的に必要であることを記載しながら これらの情報の詳細が不明であるといわなければならない すなわち 本願発明に係る遷移金属並びに Sn 及び Sb が化合物において採り得る価数は V( バナジウム ) は 2~5 価 Mn( マンガン ) は 1~7 価 Ni ( ニッケル ) は 0~4 価 Cu( 銅 ) は 1~3 価 Z( ジルコニウム ) は 2~4 価 Mo( モリブデン ) は 2~6 価 Zn( 亜鉛 ) は 2 価 Sn( 錫 ) は 2 又は 4 価 Sb( アンチモン ) は 3 又は 5 価であり ( 共立出版株式会社発行の 化学大辞典 ( 縮刷版 )1 4~9 縮刷版第 1 刷発行は昭和 38 年 7 月 1 日 ~ 昭和 39 年 3 月 15 日 乙第 1~ 第 7 号証 ) これら価数を採り得るそれぞれについて 弗化物 オキシ弗化物 酸化物 更に混合物や先駆物質を考慮すると 本願発明における触媒の候補となる化合物は その種類だけでも膨大な数となることは明らかである そうすると 本願発明における触媒は このような膨大な数の化合物の種類から選択した逐一について 本願発明の方法に使用できるものであることを確認する必要があることになる さらに 一般に触媒活性を支配する因子は非常に多い 活性を支配する因子は 結晶構造 表面積 細孔構造および格子欠陥などが関連し これらは触媒の製造と密接な関係があり 同一原料を用いても製造操作の相違により触媒性能が大きく影響されるので その製法にはとくに注意を払う必要がある ( 昭和 50 年 6 月 10 日丸善株式会社発行の 化学便覧応用編 ( 改訂 2 版 ) 720 頁左欄 38 行目 ~44 行目 乙第 8 号証 ) とされているように 同じ化合物であってもその製造方法により触媒としての性質に差異が生じるので 上記確認の際には 各々の触媒を合成し 次いで 反応温度や触媒の使用量等の広い範囲にわたる反応条件の組合せを実際に試行し 反応が進むか否かを精査することが不可欠となる ところが 本件明細書には 本願発明において用いられる触媒の量について 出発物質ペルフルオロポリエーテルの重量に対し 0.1~10 重量 % 反応時間について 1 分 ~ 数時間 温度について 150~380 との記載はあるものの このような記載のみでは 所定の平均分子量を有する化合物を得るのに多大の試行錯誤を要し その実施は極めて困難というべきである (3) 原告は 1 本件明細書の 実施例 1 の記載 2 平成 10 年 11 月 20 日付け意見書添付の実験報告書の記載 3 原出願に係る明細書の記載から 本願発明の実施の容易性が基礎付けられる旨主張するが いずれも失当である すなわち 上記 1 の 実施例 1 は本願発明の実施例ではないし 原告の主張するように 実施例 1 の触媒を本願発明の規定する触媒に代えてその他の条件を変更せずに反応を進めても 触媒の種類によってその活性が異なる以上 必ずしも 実施例 1 のように反応が進行するといえないことは明らかである また 上記 2 については 特許法旧 36 条 3 項に規定する記載要件の判断は あくまでも出願当初の明細書の記載と出願時の技術常識に基づいてされるものであるから 意見書や実験報告書による釈明は 特許請求の範囲の一部についてのみ効果を確認する具体例の記載がある場合に その余の部分の効果を確認するなどの意味を有することはあっても 本件のように出願当初の明細書に具体例の記載が全くない場合には その記載の不備を補うことにはならない さらに 分割出願は 特許法 44 条 1 項の定めるとおり 原出願とは全く別の新たな出願であって 同条 2 項の規定も 新規性や進歩性を検討する上で原出願時に出願日の遡及を認めることをいうにすぎず 分割に係る出願の明細書の記載内容の不備に関して原出願に係る明細書の記載を参酌すべきことまで規定するものではないから 上記 3 の主張も根拠を欠く 第 5 当裁判所の判断 1 取消事由 ( 明細書の記載要件の充足性に関する判断の誤り ) について (1) 本件明細書の発明の詳細な説明において 本願発明の目的 構成及び効果がどのように記載されているかをまず検討する ア本件明細書 ( 甲第 2 第 15 号証 ) の発明の詳細な説明には 下記の記載があることが認められる 記 0002 従来の技術 一般に 上記ペルフルオロポリエーテルの製造に用いられる方法は 大部分が高すぎる分子量を有するペルフルオロポリエーテルに帰着することが知られている かかる高分子量ペルフルオロポリエーテルは実

用上制約がある 事実 電子装置分野における使用では 平均分子量の非常に低いペルフルオロポリエーテルが必要とされ また高真空ポンプ用作動流体としては分子量が中程度のペルフルオロポリエーテルが必要とされることはよく知られている 0003 発明が解決しようとする課題 本発明の目的は 前記ペルフルオロポリエーテルの平均分子量を ペルフルオロポリエーテル鎖の分断により所望値になるまで減ずる方法を提供することである 更に特定するに 本発明は 下記類 化 2 [ ここで n m p q および r は整数にして n は 2~200 範囲 m p q および r は 1~100 範囲で夫々変動し そして m+p+q+r の和は 4~400 範囲であり Rf は CF3 又は C2F5 であり A は F 又は ORf であり B および D は炭素原子 1~3 個のペルフルオロアルキルであり E は F 又は O R f(r f= 炭素原子 1~3 個のペルフルオロアルキル ) である ] のペルフルオロポリエーテルを分断処理することに関する 0004 課題を解決するための手段 この分断プロセスは 上記第 (Ⅰ) 類 第 (Ⅱ) 類又は第 (Ⅲ) 類のペルフルオロポリエーテルを V Mn Ni Cu Zr Mo および Zn の遷移金属 Sn 並びに Sb の群から選ばれる元素の弗化物 オキシ弗化物 酸化物又はこれらの混合物或はこれらの先駆物質よりなる触媒の存在下 150~380 範囲の温度に加熱することを含む 0005 発明の実施の形態 用いられる触媒の量は出発物質ペルフルオロポリエーテルの重量に関し 0.1~10 重量 % 範囲で変動する 本発明の方法は 第 (Ⅲ) 類のペルフルオロポリエーテルに対しても用いることができる この場合 触媒の使用量は多くなり 処理時間も長くしまた温度も高くなる 0006 同様に 分断に付されるフルオロポリエーテルとして 既述の如くオキセタンの開環工程で直接取得される第 (Ⅱ) 類の化合物を用いることができる このような場合 単量体単位は -CH2CF2CF2 O- である このポリエーテルについてはヨーロッパ特許公告第 148,482 号に記されている 反応時間は例えば 1 分 ~ 数時間好ましくは 3 分 ~5 時間程度の広い範囲にわたって変動しうる それゆえ 作動条件および使用触媒の特性値を選ぶことにより 高分子量ペルフルオロポリエーテルから出発して主に所定の平均分子量を有する化合物を得ることができる 0007 本方法が供する利益は 通常のペルフルオロポリエーテル製造方法によって得られる製品の分子量分布を 特に最も有用な部分で富化させることにより修正しうるという事実にある それゆえ 製造プロセスには 最終製品の粘度および蒸気圧特性を左右する所定の分子量を有する化合物の取得に重要な高い融通性が付与される イ本件明細書の発明の詳細な説明の上記記載によれば 従来の技術 欄において 本願発明は 電子装置分野においては平均分子量の非常に低いペルフルオロポリエーテルが必要とされ また 高真空ポンプ用作動流体としては中程度のものが必要とされている一方 従来のペルフルオロポリエーテル製造技術によった場合 一般に その大部分が高すぎる分子量を有するものとなるために実用上の制約があったとの課題が示されていること 発明が解決しようとする課題 欄において このような課題を受けて 本発明の目的は 前記ペルフルオロポリエーテルの平均分子量を ペルフルオロポリエーテル鎖の分断により所望値になるまで減ずる方法を提供することである と明記されていること 課題を解決するための手段 欄において この目的を達成する手段として 特許請求の範囲の必須要件項

である請求項 1 に記載の構成 すなわち本願発明の要旨に規定するとおりの構成を採用したことが記載されていることが認められる これによれば 発明の詳細に記載された本願発明の目的は ペルフルオロポリエーテルの平均分子量を所望値になるまで減ずる方法を提供すること であること その構成は本願発明の要旨に規定するとおりの構成であること その効果は 上記目的を達成することができること すなわち 所望の平均分子量を有する化合物を得ることができるというものであることが認められる なお 発明の実施の形態 欄において 本願発明の方法によれば 所定の平均分子量 の化合物を得られることが繰り返し記載されていることもこれに沿うものということができる ウ原告は 上記目的は特許請求の範囲に記載されていないことを理由に 本願発明は高分子量のペルフルオロポリエーテルを分断して低分子量の化合物を得るものであって 所定の分子量のペルフルオロポリエーテルを得ることを目的とするものではない旨主張するが 本件特許出願について適用される特許法 36 条 4 項 ( 平成 2 年法律第 41 号による改正前のもの ) は 特許請求の範囲には 発明の構成に欠くことができない事項のみを記載すべき旨を規定するのであるから 特許請求の範囲に上記の目的が記載されていないことは 何ら上記認定を妨げるものではない (2) 次に 本願発明が触媒に関する発明であることにかんがみ 本件明細書の記載要件の充足性を判断する前提として 触媒効果の予測可能性について検討する アまず 本件明細書 ( 甲第 2 号証 ) の 0008 この目的を達成するための限定条件は a) 温度を 触媒の種類および量を関数として 150~380 範囲に保つこと そして b) 使用触媒の種類および濃度である との記載並びに同段落 0005 及び 0006 の記載 ( 上記 (1) ア ) に照らせば 本件明細書自体において 本願発明の目的を達成するために必要となる限定条件として 触媒の種類 出発物質ペルフルオロポリエーテルに対する触媒の重量割合及び反応温度を挙げていることが認められる また 反応時間及び出発物質ペルフルオロポリエーテルの具体的内容についても 反応後の化合物の平均分子量に影響を与えることは 技術常識から明らかである なお 反応時間に関しては 上記段落 000 6 に 第 (Ⅱ) 類のペルフルオロポリエーテルに関する説明としてであるが 上記の認定を基礎付ける記載が認められるところである イ以上に加えて 昭和 50 年 6 月 10 日丸善株式会社発行の 化学便覧応用編 ( 改訂 2 版 ) ( 乙第 8 号証 ) には 反応系に微量存在することにより その系の化学平衡にはなんら影響を与えずに 反応速度を著しく変化させ それ自体はまったく変化せずに反応過程で原料と錯合体を形成し これが容易に生成物に変化し再びもとどおりに再生される物質を一般に触媒とよんでいる 触媒が存在することにより新しい反応経路が生まれ 反応はこの経路に沿って触媒が存在しないときよりも はるかに速く容易に進行する (719 頁左欄 3 行目 ~17 行目 ) 一般に触媒活性を支配する因子は非常に多い 活性を支配する因子は物質的要因と構造的要因とに大別されるが 後者にはとくに結晶構造 表面積 細孔構造および格子欠陥などが関連し これらは触媒の製造と密接な関係があり 同一原料を用いても製造操作の相違により触媒性能が大きく影響されるので その製法にはとくに注意を払う必要がある (720 頁左欄 38 行目 ~44 行目 ) との記載があり これによれば 同じ種類の触媒であっても 触媒の製造方法も反応速度を速くさせるという触媒性能に大きな影響を与えることが認められ 上記文献の性格及び発行時期を考えると このことは 本件特許出願の優先権主張日前に技術常識であったものと認められる ウそうすると 本願発明の目的を達成するための限定条件としては 出発物質ペルフルオロポリエーテルの具体的内容 触媒の種類 量 ( 出発物質に対する重量割合 ) 及び製造法 反応温度並びに反応時間を挙げることができ これらの条件をすべて特定のものとする手段によって 初めて本願発明の効果を追試することが可能となるというべきである なお 原告も 審決の 本願発明においては 触媒の種類 特性 量が反応条件及び生成化合物に影響を与える重要な要素であることを示している このことは 当業者が所定の ( 目的とする ) 平均分子量を有する化合物を得るためには 触媒の種類 使用量及び反応条件についての情報が不可避的に必要であることを意味するものと認められる ( 審決謄本 4 頁 1 行目 ~6 行目 ) との認定自体は争っていない

エ上記のとおり 触媒効果が 出発物質の具体的内容 触媒の種類 量 ( 出発物質に対する重量割合 ) 及び製造法 反応温度並びに反応時間に左右される一方 本願発明の構成が 出発物質の内容 触媒の種類及び反応温度について規定するにすぎないことは その要旨から明らかである そうすると 適切な実施例の記載又は必要な条件設定の手掛かりとなる具体的な手段の記載がない限り 本件特許出願の優先権主張日当時の技術常識を踏まえたとしても 本願発明の構成自体からその効果を予測することは困難といわざるを得ない (3) 以上の認定判断に基づいて 本件明細書の記載要件の充足性について判断する アまず 本件明細書 ( 甲第 2 第 15 号証 ) の発明の詳細な説明の記載に徴しても 出発物質ペルフルオロポリエーテルの具体的内容 触媒の種類 量 ( 出発物質に対する重量割合 ) 及び製造法 反応温度並びに反応時間のすべての条件を具体的に特定してこれを実施した記載は皆無であり 当然ではあるが その実施の結果 どの程度の平均分子量のものが得られたのかといった記載もない すなわち 発明の詳細な説明には 本願発明の目的を達成するために必要な限定条件が特定された実施例が一例も示されていない イさらに 本願発明は その要旨に規定するとおり 出発物質のペルフルオロポリエーテルだけでも 第 (Ⅰ) 類 ~ 第 (Ⅲ) 類の三つの類が選択的事項とされている上 それぞれの類内には分子量に注目しても数多くの種類のものが選択的事項として規定されていること 触媒の種類も九つの元素の中から適宜選ばれる元素の弗化物 オキシ弗化物及び酸化物 さらにはその混合物や先駆物質まで包含するものが選択的事項として規定されており 出発物質ペルフルオロポリエーテルの具体的内容と触媒の種類の組合せという最も基本的な条件だけでも膨大な数に上り 当業者がこれらの組合せの中から適切なものを選択し 追試するには重大な困難が伴うというべきである なお 本件明細書の段落 0009 には ニッケルの場合 効果的触媒は 酸化度の最も高い金属弗化物により代表されることが確かめられた また 良好な結果は 酸化度が最高値より低い Ni のハロゲン化物を用いても達成される 但し その場合 反応容器には基体弗素流れを導入し 該流れによって最も高い酸化状態にある対応弗化物を現場形成させるものとする また 弗化物およびオキシ弗化物は 弗素の存在で対応するハロゲン化物から現場製造することができる との記載があり これによれば ニッケルに係る効果的触媒に関しては 酸化度の最も高い金属弗化物 により代表されることが示されているとはいえるものの 上記のような膨大な組合せの中から適当なものを選択する手掛かりとなり得るようなものとは到底いえない また 原告は 本願発明において用いることができる触媒は何ら特殊のものではなく 市販されているか又は当業者が容易に製造することができる任意の触媒を使用すれば足りる旨主張するが 必要な触媒が特殊かどうかということと 上記のとおり膨大な組合せによる追試の困難性があることとは別次元の問題であって 原告の上記主張は失当である ウ加えて 出発物質に対する触媒の重量割合 触媒の製造法 反応速度及び反応時間についても本願発明の目的を達成するための限定条件となることは前示のとおりであるところ 加熱温度について 本願発明の要旨が 150~380 との数値範囲を示しているものの それ以外の条件に関しては 発明の詳細な説明中に 出発物質に対する触媒の重量割合について 0.1~10 重量 % 反応時間について 例えば 1 分 ~ 数時間好ましくは 3 分 ~5 時間程度 ( ただし 第 (Ⅱ) 類のペルフルオロポリエーテルが前提の記載 ) との極めて広範にわたる数値が示されているにすぎない 触媒の製造法に至っては これに代わる入手手段も含めて何らの記載もない エ以上のとおり 本件明細書の発明の詳細な説明には 本願発明の目的を達成するために必要な限定条件が特定された実施例が一例も示されていないばかりか 出発物質の具体的内容と触媒の種類の組合せだけでも膨大な数に上り そのそれぞれについて適用すべき触媒の重量割合や反応時間といった上記諸条件についても極めて広範な数値が示されているにすぎないのであるから ペルフルオロポリエーテルの平均分子量を所望値になるまで減ずるという本願発明の目的を達成し その効果を追試するためには 当業者においても 多大な試行錯誤を要するといわざるを得ない これに上記 (2) で説示したところを併せ考慮すると 本件明細書の発明の詳細な説明には 当業者が容易に本願発明の実施をすることができる程度にその目的を達成するための手段が記載されているとは認められないというべきである

(4) 原告は 1 本件明細書の 実施例 1 の記載 2 平成 10 年 11 月 20 日付け意見書添付の実験報告書の記載 3 原出願の願書に最初に添付された明細書の記載は本願発明の実施の容易性を基礎付ける旨主張するので 順次検討する アまず 上記 実施例 1 については 本件明細書 ( 甲第 15 号証 ) の発明の詳細な説明に 0017 本発明の特に有利な具体例において 解離プロセスは 十分に低い分子量を有する生成物を反応混合物から連続的に分離する如き作業条件で実施される この効果は 化学的解離処理を分別処理例えば 解離物の蒸留 フラッシュ分離若しくは分子蒸留を組合せることにより達成される そして かかる分別処理は解離直後又は解離と同時に行なわれる 以下の実施例により本願発明を例証する 実施例 1 油浴で加熱せる 20mm1 容量のハステロイオートクレーブに 米国特許第 4,523,039 号の例 1 に従って製造した構造 CF 3(OCF2CF2)5OC2F5 のペルフルオロポリエーテル 10g とイタリア国特許出願 21,052A/84 の例 1 に従って製造した γ-alf30.1g を導入し 240 の温度に 10 分間加熱した 次いで 得られた生成物を減圧下蒸発させ ドライアイス / アセトンで -80 に冷却せるトラップ内に集めた 生成物は 9g 量で 酸および中性分子の 20:80 比混合物よりなった この混合物を分析した結果 それが A(OCF2CF2)nOB( ここで A と B は同じか又は別異で -C F3 CF2CF3 又は -CF2COF であり n は 0~3 範囲である ) の分子類よりなるとわかった と記載されているものである しかし 上記 実施例 1 で使用されている触媒は γ-alf3 であって これが本願発明の規定する触媒でないことは明らかであり このことは原告も自認するところである そして 触媒の種類が異なる以上 その中で採用されている触媒の量 反応温度 反応時間等の条件は本願発明の実施に何らの示唆も与えない したがって 上記 実施例 1 の記載は 本願発明の実施の容易性を何ら基礎付けるものとはいえない イ次に 平成 10 年 11 月 20 日付け意見書添付の実験報告書 ( 甲第 16 号証 ) に原告主張のような記載があるとしても 本件明細書の発明の詳細な説明中に本願発明の目的を達成するための手段が記載されているとは認められない本件においては その記載不備を補うことにはならないというべきであるから これが本願発明の実施の容易性を基礎付けるものとはいえない ウまた 原出願に係る明細書の記載 ( 甲第 3 号証 ) についても これを本件明細書の記載と同視することはできず 本件発明の実施の容易性を基礎付けるものとはいえない (5) 上記の認定判断によれば 当業者において容易に本願発明の実施をすることができる程度に本件明細書の発明の詳細な説明が記載されているとは認められないから 本件明細書には この点において特許法旧 36 条 3 項に反する記載不備の違法があるものといわざるを得ず これと同旨の審決の判断に誤りはない 2 以上のとおり 原告主張の審決取消事由は理由がなく 他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない よって 原告の請求は理由がないから棄却することとし 訴訟費用の負担並びに上告及び上告受理申立てのための付加期間の指定につき行政事件訴訟法 7 条 民事訴訟法 61 条 96 条 2 項を適用して 主文のとおり判決する 東京高等裁判所第 13 民事部 裁判長裁判官篠原勝美 裁判官長沢幸男 裁判官宮坂昌利