測定方法の異なる 2 種類のメンブレンフィルター法の比較 医療法人瑛会東京ネクスト内科 透析クリニック 宮尾眞輝 徳埜亜紀子 石橋昌弘 森ひかる 吉田智史 陳れみ 陣内彦博 目的 近年 透析液清浄化はさまざまな臨床効果に寄与することが報告され 水質管理の重要性は一層増している 日本臨床工学技士会から

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86 楢村ほか : 透析液中の細菌に対する各種メンブレンフィルター法の測定精度の検討 緒 言 近年, 米国 ANSI/AAMI における透析液水質のガイドラインが ISO 基準案に色濃く反映され, 本邦においても細菌基準を含めた新たな管理基準の作成と臨床での細菌検査の実施が奨励されている 1,2).

1 Q A 82% 89% 88% 82% 88% 82%

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測定方法の異なる 2 種類のメンブレンフィルター法の比較 医療法人瑛会東京ネクスト内科 透析クリニック 宮尾眞輝 徳埜亜紀子 石橋昌弘 森ひかる 吉田智史 陳れみ 陣内彦博 目的 近年 透析液清浄化はさまざまな臨床効果に寄与することが報告され 水質管理の重要性は一層増している 日本臨床工学技士会から発行された 透析液清浄化ガイドライン ver.2.01 では 平板表面塗抹法 またはメンブレンフィルター法による細菌数測定が推奨されていることから 当院では日本ポール社製 37 mm Quality Monitor ( 以後 QM) を使用している 今回 同じメンブレン孔径 直径であるアドバンテック東洋社製 37 mmモニター ( 以後 モニター ) の使用機会を得たので 検出される細菌数に差が出るか検討した 仕様 両デバイスの仕様を表 1 に示す 相違点として メンブレンの材質 (QM; ポリエーテルスルホン モニター ; セルロース混合エステル ) や液体培地量 (QM;2.0mL モニター;0.5mL) が挙げられる また モニターには周縁疎水性加工が施されていることでエアブロックの防止につながり 注射用水による洗浄効果を高めることに寄与している 方法 両デバイスとも標準的な ~QM~ 1 日機装社製多人数用透析液供給装置 DAB-30NX から検体を採取 (50mL) 2 入口側キャップ ( 青 ) を外し 検体を注入 濾過 3 残液を吸引 4 注射用水 (20mL) を注入 濾過 5 残液を吸引 6 液体培地 (2.0mL) を注入 7 残液を吸引 8 入口側キャップ ( 青 ) 出口側キャップ( 赤 ) の順に接続し 倒置培養 ~モニター ~ 1~5までは QM と同様 6 入口側キャップ ( 青 ) を接続 7 出口側より液体培地 (0.5mL) を注入 8 出口側キャップ ( 赤 ) を接続し 倒置培養上記はそれぞれの標準的な検査手順であり 本検討では 4 回ずつ実施した

測定結果 測定結果ですが こちらは 7 日間培養後のメンブレン写真で 上段が QM 下段がモニターとなっております 実際のデータを見てみますと QM;0.2±0.07 モニター;0.21±0.03 と 平均値は同程度の値でしたが QM に比してモニターの方が SD CV ともに若干ではありますが 小さい値を示しておりました 測定結果 また スライドに示しました3ですが 本来の液体培地量である 0.5mL ではなく QM と同様の 2mL に変更した際の結果になります こちらを実施した目的としまして 本当に 0.5mL で吸収パッド全体に液体培地が行きわたっているのか それによる発育阻害を招いてはいないかどうかを確認するために あえて必要以上の培地量を注入してみることにいたしました モニターは液体培地量が QM に比して 1/4 と少なく 発育阻害の影響も残念ながら今回は検体数を揃えることができませんでしたので 参考程度にご覧になっていただければと思いますが とりわけ大きな違いは見られませんでした 測定結果 結果をまとめてみますと 検出された細菌数にはそれほど大きな差は見られませんでした 測定結果 しかし バラつきをみてみますと 両デバイス間においては標準偏差や変動係数に多少の差がみられており 本来の条件下で使用したモニターの方がバラつきは小さい結果となりました 考察 バラつきに関してですが 今回の検討は同日に同一検者で実施しておりますが コンタミの可能性は否定できません また 両メンブレンとも迷路のような複雑な構造によって細菌等を捕捉するデプス構造であり メンブレン表面だけでなく内部でも捕捉するため 実際には規定孔径以下の大きさの細菌でも捕捉することが可能であると言われております

考察 写真はメンブレン構造を電子顕微鏡で確認したものであり 左はポリエーテルスルホン 右はセルロース混合エステルで それぞれ QM とモニターの素材に該当いたします どちらの孔径も 0.45μm ではありますが 内部の目の粗さは若干異なるようにも見えます 以前 楢村らが行った検討においては 細菌検出率には差がないことは報告されておりましたが その際は同一メーカーにおける検討であり メーカーの異なる本検討においては 多少の違いが出たのではないかと思われました 考察 また 両デバイスともにメンブレン自体は 37 mmとなっておりますが モニターには周縁疎水性加工が施されていることで 有効濾過面積 つまり培養可能な面積は QM;9.1 cm2に対して モニターは約 4.2 cm2と半分以下であることが分かりました この有効濾過面積という視点から検査結果を再度確認してみますと 考察 単位面積当たりの平均コロニー数は QM;1.10 に対してモニターは 2.47 と モニターの方が多く検出されながらもバラつきは小さい傾向にあったことより 再現性に優れた測定が可能であることが示唆されました この点に関してですが メンブレンの面積の違いによりコロニー形成が阻害される等の報告が以前よりされており 今回が同様であるとは言えませんが 何らかの影響を与えているのではないかと思われました 操作性に対する評価 考察 実際の性能だけでなく 使用感に対する評価ですが QM は残液がなくなることでエアブロックが起こるため 十分吸引除去できていると感じることができます しかし モニターは周縁疎水性加工により 入口側から空気も吸引されてしまうため 何度かシリンジを接続し直さなければならず 残液をしっかり吸引できているのか感じにくいように思われました それにより発育阻害を引き起こす危険性も出てくるため 注射用水による十分な後洗浄の必要性が示唆されました また モニターは最低限の培地量しか注入しないため 残液の吸引がないものの 入

口側キャップを閉じた状態では出口側から入れづらいため 吸収パッド全体に浸透しているのか正直わかりませんでした それにより発育阻害につながるのではないかと懸念しておりましたが 先ほど述べました3の検討により 参考値ではありますが 影響はないものと思われました その理由としまして 透析液等の検体濾過後では吸収パッドが wet な状態になっているため 液体培地が浸透しやすくなっており また 0.5mL という少ない量ながらもコロニー形成においては十分すぎるほどの栄養分が入っているので問題はないであろうとの回答をメーカーよりいただきました 結語 最後に結語としまして 今回 日本ポール社製 37 mm Quality Monitor と Advantec 東洋社製 37 mmモニターを比較しまして 両者においては細菌検出数に大きな差は見られませんでしたが 若干モニターの方にバラつきの少ない傾向が確認されました また 仕様が異なることから手技や操作性においても相違点が見られたため 各デバイスの特徴を理解したうえでの選定や使用が望ましいと思われました

表 1. 仕 様 孔径 QM 0.45 μm メンブレン色黒色 ( 罫線あり ) メンブレン材質 吸収パッド材質 親水性 PES ( メトリセルブラック ) セルロース モニター 親水性セルロース混合エステル 使用培地 ( 量 ) M-TGE(2.0 ml) M-TGE(0.5 ml) 備考 周縁疎水性 0.16 CFU/mL 0.16 CFU/mL 0.18 CFU/mL 0.30 CFU/mL 0.16 CFU/mL 0.16 CFU/mL 0.18 CFU/mL 0.30 CFU/mL 図 1. 測定結果

表 2. 測定結果 1 QM 2 モニター 3 モニター 液体培地量 2.0 ml 0.5 ml 2.0 ml 濾過量 50 ml 50 ml 50 ml 平均細菌数 [CFU/mL] 0.20 0.21 0.23 SD 0.07 0.03 0.05 C.V. 0.34 0.12 0.20 有効濾過面積 [ cm2 ] 9.1 4.2 4.2 濾過面積当たりの平均細菌数 [CFU/mL] 1.10 2.47 2.73 SD 0.37 0.30 0.56 C.V. 0.34 0.12 0.20 液体培地量 [ml] mean [CFU/mL] 測定結果 1 QM 2 モニター 3 モニター 2.0 0.5 2.0 0.20 0.21 0.23 SD 0.07 0.03 0.05 C.V. 0.34 0.12 0.20 有効濾過面積 [ cm2 ] mean [CFU/ cm2 ] 9.1 4.2 4.2 1.10 2.47 2.73 SD 0.37 0.30 0.56 C.V. 0.34 0.12 0.20

考 察 1QM と 2 モニターの細菌数 ( 平均値 ) に大きな差はみられなかったが バラつきは 2 の方が小さかった メンブレンの材質が異なっていることからその構造による違いが影響した可能性?! デプス構造表面捕捉内部捕捉 考 察 1QM と 2 モニターの細菌数 ( 平均値 ) に大きな差はみられなかったが バラつきは 2 の方が小さかった 楢村らにより細菌検出率には差がなかったことが報告されている ポリエーテルスルホン (QM) セルロース混合エステル ( モニター )

考 察 1QM と 2 モニターの細菌数 ( 平均値 ) に大きな差はみられなかったが バラつきは 2 の方が小さかった モニターには周縁疎水性加工が施されており有効濾過面積の違いが影響した可能性?! 9.1 cm2 37 mm 4.2 cm2 周縁疎水性部分 ( 培養不可 ) 有効濾過部分 ( 培養可能面積 ) QM モニター