JSTSS 第 11 回大会 (2012 年 6 月 9 日 -10 日 ) シンポジウム D-1 (6 月 9 日 9:30~11:00) @D 会場 / センター棟 5 階 506 外傷性 = 解離性スペクトラム 心身症性 身体表現性の皮膚症状に焦点を当てて 虐待的生育歴が アレキシサイミア傾向に与える 影響 後藤和史 ( 愛知みずほ大学人間科学部 ) 田辺肇 ( 静岡大学人文社会科学研究科 ) 小澤幸世 ( 東京大学大学院総合文化研究科 )
アレキシサイミア とは 臨床報告 (Nemiah & Sifneos, 1970) 1. 心身症患者の多くが,(, ( 精神分析的文脈で言うところのヒステリー性の ) 神経症患者と比べて, 自分の感情感情や空想や空想を話すことが上手でなかった 2. ( 精神分析的な ) 心理療法がやりにくくく, 効果が望めない 3. この状態を アレキシサイミア (alexithymia) と命名 (Sifneos, 1972; Sifneos, 1973) その後, 心身症患者を特徴づける 性質 として, 定着している 質問紙尺度が開発され, 心身症以外でもみられることが明らかに この文脈から言うと, 古典的なヒステリー概念に起源をもつ解離とアレキシサイミアとはまったく別概念
アレキシサイミア質問紙 GALEX ( 後藤ら,199, 1999) 後藤が作成したアレキシサイミア傾向傾向を測定する質問紙 心理尺度としての信頼性 妥当性の確認を経ている 日本語としての わかりやすさ を重視しているため, 回答しやすいのが長所 その他にも, TAS TAS-20 BVAQ TAS (Taylor et al, 1985) 20 (Bagby et al, 1994) BVAQ (Vorst & Bermond, 2001) などがある
これまでの研究結果 1 ~ アレキシサイミア傾向の因子構造 アレキシサイミア傾向は,2, つの側面を持つ 1. 感情認識言語化困難 ( 後藤ら, 1998; 後藤 小玉, 2000; 後藤, 2012) 自分の気持ちがわからない / 言えない 2. 空想 内省困難 想わない / 考えない 空想 内省困難 -.436 感情認識言語化困難.410.838.958.342 空想の欠如 表層的思考 感情認識困難 感情表現困難
これまでの研究結果 2 ~ 諸概念との関連 ( まとめ ) 感情認識言語化困難 ストレッサーをより脅威的に認知 ( 後藤, 2006 など ) 解離性傾向 ( 後藤, 2004 など ) 離人体験 ( 後藤ら, 2010 など ) など ストレス知覚にまつわるプロセスと, 種々の精神症状と関連 空想 内省困難 感情価に関わらず, 自己の感情理解を制止 ( 後藤, 2002) 夢見体験を言語化言語化 物語化するのが苦手 ( 後藤 小玉, 2000) 自己概念記述課題で的外れな反応 ( 後藤, 2005) など 内的体験の言語化制止など心理臨床的介入に対する反応性の悪さを示唆
虐待的生育歴が アレキシサイミア傾向に与える 影響
アレキシサイミア傾向と虐待 虐待など逆境的な生育歴がアレキシサイミアを形成する, という議論がある McDougal (1982) など アレキシサイミアと虐待に関する実証研究 Barenbaum (1996), Joukemaa et al. (2008), Evren et al. (2009), 後藤 (2004) 虐待的生育歴を持つ者が, アレキシサイミア傾向 ( とくに感情認識困難 ) が高い, という一貫した結果が得られている
本研究の目的 アレキシサイミア 2 次元モデル ( アレキシサイ ミア空間 ) の観点から, 虐待の与える影響を 検討する
方法 (1/2) 質問紙調査は他目的の研究も含められており, それぞれの研究目的および調査対象者の負担に配慮し 2 回に分けて行われた 1. 調査対象者 大学生 専門学校生の 262 名 ( 第 1 回調査 ),259 名 ( 第 2 回調査 ) 同意が得られ, 第 1 回調査と第 2 回調査とでマッチングできた 205 名 ( 女性 193 名, 男性 12 名 ; 平均年齢 20.7±3.8 歳 ) を分析対象とした 2. 質問紙構成 アレキシサイミア傾向 : Gotow Alexithymia Questionnaire 精神表現性解離 : Dissociative Experiences Scale 日本語版 身体表現性解離 : Somatoform Dissociation Questionnaire - 20 日本語版 離人傾向 : Cambridge Depersonalisation Scale 被虐待体験 : Child Abuse and Trauma Scale 日本語版
方法 (2/2) 3. 調査手続き 第 2 回調査 GALEX SDQ- SDQ-20 CDS CATS 第 1 回調査 DES SDQ- SDQ-20 CDS CATS 講義時間を用いた教室による集団実施で, 講義担当者が調査冊子の配布, 封筒に入れた状態で回収を行った 調査は 3 週程度の間を空けて 2 回行い, 第 1 回調査では DES,SDQ SDQ-20,CDS および CATS を, 第 2 回調査では GALEX,SDQ SDQ- 20,CDS および CATS を実施した 4. 倫理的な配慮 調査の目的, プライバシーへの配慮および調査参加の任意性を口頭および文面にて説明し, 回答日と説明内容の理解, 調査への参加の同意についての表明を求めた そして, 回答日の記入および説明の理解と同意の表明が得られたものを分析データとした
結果 指標の処理 1. 分析データについては,EM 法による欠損値補完を行った 2. 各指標については, オリジナルに基づいて合計点ないしは平均点 を算出した そして, 各尺度の分布の歪みを補正するために Tukey の手法を利用して正規スコアを算出した 3. CATS( 第 2 回 ) * の 4 つの下位尺度 ( 正規スコア ) をターゲットに Two-step クラスタ分析を行い, 適合度指標 (BIC) の遷移 解釈可能性 再現可能性 ** の観点から 3 クラスタが適切と判断され, クラスタを抽出した * : 事後の分析で用いる Galex と調査時期が一致 ** : 第 1 回調査のデータに対しても同様の分析を実施して, クラスター数を検討
正規化得点 2.00 1.50 1.00 0.50 0.00 性的虐待群 (n=15) 虐待的養育群 (n=81) 非虐待群 (n=109) 重心プロファイル 虐待クラスタの -0.50-1.00 性的罰ネグレクト情緒的 CATS 下位尺度 ( 正規化 )
アレキシサイミア傾向と虐待との関連 アレキシサイミア傾向と虐待との関連を検討するために, 虐待クラスタを独立変数, アレキシサイミアの 2 下位尺度を従属変数とした多変量分散分析を行った結果,2 下位尺度共に虐待クラスタの主効果が有意であった WSD 法による多重比較の結果, 感情認識言語化困難 : 非虐待群 < 虐待的養育群 性的虐待群 空想内省困難 : 非虐待群 虐待的養育群 < 性的虐待群 が見出された アレキシサイミア 2 下位尺度を次元軸として, 各クラスタの平均値および標準偏差を空間プロットしたものを次図に示した
アレキシサイミア空間から見た 虐待クラスタの布置 1 虐待クラスタの布置 1 感情認識言語化困難 ( 空想内省困難 ( 正規化 ) 1.00.00-1.00.00 1.00-1.00 正規化 ) 性的虐待群 (n=15) 虐待的養育群 (n=81) 非虐待群 (n=109)
アレキシサイミア空間から見た 虐待クラスタの布置 2 虐待クラスタの布置 2 感情認識言語化困難 ( 空想内省困難 ( 正規化 ) 1.00.00-1.00.00 1.00-1.00 正規化 ) 性的虐待群 (n=15) 虐待的養育群 (n=81) 非虐待群 (n=109)
考察 1 アレキシサイミア空間からみた虐待 厳密に言えば, 虐待によってアレキシサイミ ア的になる とは言えない 感情認識言語化困難の強さは, アレキシサイミアの理論的定義に沿う 先行研究の再現的結果 が, 空想内省機能の亢進 (= 空想内省困難の弱さ ) はアレキシサイミアの理論的定義と逆 もともと, アレキシサイミアは, 古典的なヒステリー性の身体症状と心身症性の身体症状とを弁別しようとして出てきた概念
空想内省困難 ( 正規化 ) 1.00 アレキシサイミア.00-1.00.00 1.00-1.00 ヒステリー神経症 感情認識言語化困難 ( 正規化 ) 虐待クラスタの布置 3 アレキシサイミア空間から見た 性的虐待群 (n=15) 虐待的養育群 (n=81) 非虐待群 (n=109)
考察 2 虐待によって起きるのは 1 過度なストレス知覚 ( 虐待的養育群の結果 ) 生き残り のため, 警戒レベルを高める Negative Affectivity( ( 情緒不安定性 ) を発達 Negative Affect は, 個体保存 ( 生き残り ) のための行動 ( 闘争 逃走反応 ) を促す生態信号 その結果,Sensory, overload しやすくなる 結果, 自分の気持ちがわからない / いえない という主観的体験
考察 2 虐待によって起きるのは 2 体験変容過程の亢進 ( 性的虐待群の結果 ) 逃れられない苦痛を緩和するために, 主観的体験を変容させる変容させる必要性 その結果, 空想内省機能を発達させる あるいは,(, ( 素因レベルで ) もともと空想内省機能が発達しており, 虐待的養育情況下で,pseudo, pseudo- 性的虐待記憶を生成しやすい傾向を反映しているのか (Geraerts et al., 2005 など ) どちらか, は保留 は 自己報告に基づいた研究では見極められない
空想内省困難 ( 正規化 ) 1.00 過度なストレスストレス知覚 /Sensory Overload.00-1.00.00 1.00-1.00 体験変容過程 感情認識言語化困難 ( 正規化 ) 虐待クラスタの布置 3 アレキシサイミア空間から見た 性的虐待群 (n=15) 虐待的養育群 (n=81) 非虐待群 (n=109)
補足補足 アレキシサイミア傾向と解離 (JPA, 2010) 第 2 回調査 GALEX SDQ- SDQ-20 CDS CATS 第 1 回調査 DES SDQ- SDQ-20 CDS CATS
理論面と実証研究による結果との間に齟齬がある アレキシサイミアと解離 アレキシサイミアと解離との理論上の理論上の関連 感情などの内的体験の意識化ないしはモニタリングの障害という観点で概念上の共通点が見られる しかしながら, もともとアレキシサイミアはヒステリー神経症と心身症とを弁別するために導出された概念であり, 理論上は弁別されなければならない 実証研究における関連 アレキシサイミア傾向と解離性傾向との間にとの間に正の関連が示唆されている (Zlotnick, et al., 1996 など ) アレキシサイミア傾向のうち感情認識言語化困難と解離性傾向との間には中程度の正の関連が認められている ( 後藤, 2004; 後藤ら, 2010) )
方法方法 は先の報告と同じ 今回の報告以外の分析の詳細は, 日本心理学会大会発表 ( 後藤ら, 2010) をご参照ください ご入用の方は後ほどご連絡ください
アレキシサイミア傾向と解離 表 1 アレキシサイミア傾向傾向と解離系諸概念解離系諸概念とのとの関連 ( 後藤ら, 2010) アレキシサイミア傾向 精神表現性解離 調査 1 身体表現性解離 調査 1 調査 2 調査 1 離人傾向 調査 2 感情認識言語化困難 +.538 ** +.351 ** +.408 ** +.533 ** +.615 ** 空想内省困難 -.273 ** -.133 ++ -.111 ++ -.233 ** -.272 ** ** : p<.01, * : p<.05 (n=205)
空想内省困難との相関 ( 正規化 ).70.50.30.10 -.70 -.50 -.30 -.10 -.10.10.30.50.70 -.30 -.50 -.70 感情認識言語化困難との相関 ( 正規化 ) 解離系諸概念の相関関係 アレキシサイミア空間から見た 精神表現性解離 (DES) 身体表現性解離 (SDQ-20) 離人体験 (CDS)
アレキシサイミアからみた解離 厳密に言えば, アレキシサイミアと解離は関連がある とは言えない 感情認識言語化困難の強さは, アレキシサイミアの理論的定義に沿うが, 空想内省機能の亢進 (= 空想内省困難の弱さ ) はアレキシサイミアの理論的定義と逆 もともと, アレキシサイミアは, 古典的なヒステリー性の身体症状と心身症性の身体症状とを弁別しようとして出てきた概念 解離の精神症状は 空想内省困難 の軸で弁別可能 解離ヒステリー という枠組に沿う結果 解離は, 性的虐待群の結果と同様の方向性 解離が外傷性症候群のうちのひとつであることを示唆
空想内省困難との相関 ( 正規化 ).70 過度なストレスストレス知覚 /Sensory Overload.50.30.10 -.70 -.50 -.30 -.10.10.30.50.70 -.10 -.30 -.50 -.70 アレキシサイミア 体験変容過程 ヒステリー神経症 感情認識言語化困難との相関 ( 正規化 ) 解離系諸概念の相関関係 アレキシサイミア空間から見た 精神表現性解離 (DES) 身体表現性解離 (SDQ-20) 離人体験 (CDS)
総合的考察 : アレキシサイミア空間から見た 虐待 解離理解の提案 ツイン ブースト システム 1. まずは, 長期的ストレスの結果として, プライマリ ブー スト システム : ストレス過敏性 / ネガティブ感情性の高まり がおきる 2. ストレス負荷が一定以上になる (or( 質の異なったストレス負荷がかかる ) と, セカンダリ ブースト システム : 体験変容過程 が発動する 2 つがあわさった結果結果がが, 精神表現性解離や離人体験
総合的考察 : アレキシサイミア空間から見た 虐待 解離理解の提案 ツイン ブースト システム 1. まずは, 長期的ストレスの結果として, プライマリ ブー スト システム : ストレス過敏性 / ネガティブ感情性の高まり がおきる 長期的さらなる 2. ストレストレス負荷が一定以上になる (or( 質の異なったストレス負荷がかかる ) と, セカンダリ ブースト システム : 体験変容過程 が発動する ストレス過敏性 体験変容過程 解離性体験 2 つがあわさった結果の亢進結果ががの発動, 精神表現性解離や離人離人体験体験 プライマリ ブースト システム セカンダリ ブースト システム
以上で発表は終了です ご清聴ありがとうございました