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報道機関各位 2018 年 5 月 18 日 東北大学大学院医学系研究科 難治性疾患肺動脈性肺高血圧症の新規分子機序を解明 新規バイオマーカーと治療薬開発の可能性 研究のポイント 注 指定難病である肺動脈性肺高血圧症 (PAH) 1 の発症機序については 未だ完全には解明されておらず 早期発見のため

研究内容 心不全は 心臓の筋肉が障害されることにより心臓のポンプ機能が低下し 肺や全身の臓器に必要な血液量を送り出すことができない病態です 心不全患者の一部において 左心房の血圧の上昇が肺に血液を送り出す動脈 ( 肺動脈系 ) に影響し 肺動脈の収縮や肥厚 ( リモデリング ) が引き起こされ 肺高

報道機関各位 2017 年 8 月 22 日 東北大学大学院医学系研究科 世界初 腎 - 脳 - 心臓 連関 : 腎臓から心臓を治療する - 冠攣縮性狭心症に対する腎動脈交感神経除神経治療の可能性 - 研究のポイント 虚血性心疾患注 1 に対する冠動脈ステント治療後に 治療部近くで冠攣縮が生じること

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

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2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

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汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

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研究成果報告書(基金分)

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

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統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

背景 私たちの体はたくさんの細胞からできていますが そのそれぞれに遺伝情報が受け継がれるためには 細胞が分裂するときに染色体を正確に分配しなければいけません 染色体の分配は紡錘体という装置によって行われ この際にまず染色体が紡錘体の中央に集まって整列し その後 2 つの極の方向に引っ張られて分配され

研究成果報告書

ン投与を組み合わせた膵島移植手術法を新たに樹立しました 移植後の膵島に十分な栄養血管が構築されるまでの間 移植膵島をしっかりと休めることで 生着率が改善することが明らかとなりました ( 図 1) この新規の膵島移植手術法は 極めてシンプルかつ現実的な治療法であり 臨床現場での今後の普及が期待されます

06. 【送付】プレスリリース原稿 LCZ696

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

疫学研究の病院HPによる情報公開 様式の作成について

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平成20年5月20日

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法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

平成24年7月x日

日本心血管インターベンション治療学会 専門医認定医制度審議会活動実績一覧表 本学会関連学会一覧表 2018 年 7 月 6 日現在 Ⅰ-1: 研究業績として認める本学会関連学会 ( 国内 ) 一般社団法人日本内科学会 一般社団法人日本循環器学会 一般社団法人日本心臓病学会 一般社団法人日本下肢救済

同意説明文書(見本)

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

エントリーが発生 真腔と偽腔に解離 図 2 急性大動脈解離 ( 動脈の壁が急にはがれる ) Stanford Classification Type A Type B 図 3 スタンフォード分類 (A 型,B 型 ) (Kouchoukos et al:n Engl J Med 1997) 液が血管

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

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Microsoft Word - プレス原稿_0528【最終版】

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公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研

報道関係者各位 平成 24 年 4 月 13 日 筑波大学 ナノ材料で Cs( セシウム ) イオンを結晶中に捕獲 研究成果のポイント : 放射性セシウム除染の切り札になりうる成果セシウムイオンを効率的にナノ空間 ナノの檻にぴったり収容して捕獲 除去 国立大学法人筑波大学 学長山田信博 ( 以下 筑

平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

スライド 1

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

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汎発性膿庖性乾癬の解明

難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

貧血 

研究の背景社会生活を送る上では 衝動的な行動や不必要な行動を抑制できることがとても重要です ところが注意欠陥多動性障害やパーキンソン病などの精神 神経疾患をもつ患者さんの多くでは この行動抑制の能力が低下しています これまでの先行研究により 行動抑制では 脳の中の前頭前野や大脳基底核と呼ばれる領域が

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

ストレスが高尿酸血症の発症に関与するメカニズムを解明 ポイント これまで マウス拘束ストレスモデルの解析で ストレスは内臓脂肪に慢性炎症を引き起こし インスリン抵抗性 血栓症の原因となることを示してきました マウス拘束ストレスモデルの解析を行ったところ ストレスは xanthine oxidored

terumo qxd :08 PM ページ 1 脳動脈瘤って何 脳動脈瘤とは 脳の血管にできる 血管のこぶ です こぶができただけでは 多くの場合 症状はありま けて手術で頭を開き 特殊なクリップで脳動脈瘤を せんが 破裂すると死亡率の高いクモ膜下出血や脳 はさみ

記者発表資料

対象と方法 本研究は 大阪医科大学倫理委員会で承認を受け 対象患者から同意を得た 対象は ASA 分類 1 もしくは 2 の下肢人工関節置換術が予定された患者で 術前に DVT の存在しない THA64 例 TKA80 例とした DVT の評価は 下肢静脈エコーを用いて 術前 術 3 日後 術 7

を確認しました 本装置を用いて 血栓形成には血液中のどのような成分 ( 白血球 赤血球 血小板など ) が関与しているかを調べ 血液の凝固を引き起こす トリガー が何であるかをレオロジー ( 流れと変形に関わるサイエンス ) 的および生化学的に明らかにすることとしました 2. 研究手法と成果 1)

Microsoft Word - 運動が自閉症様行動とシナプス変性を改善する

1. 背景 NAFLD は非飲酒者 ( エタノール換算で男性一日 30g 女性で 20g 以下 ) で肝炎ウイルス感染など他の要因がなく 肝臓に脂肪が蓄積する病気の総称であり 国内に約 1,000~1,500 万人の患者が存在すると推定されています NAFLD には良性の経過をたどる単純性脂肪肝と

< 背景 > HMGB1 は 真核生物に存在する分子量 30 kda の非ヒストン DNA 結合タンパク質であり クロマチン構造変換因子として機能し 転写制御および DNA の修復に関与します 一方 HMGB1 は 組織の損傷や壊死によって細胞外へ分泌された場合 炎症性サイトカイン遺伝子の発現を増強

受精に関わる精子融合因子 IZUMO1 と卵子受容体 JUNO の認識機構を解明 1. 発表者 : 大戸梅治 ( 東京大学大学院薬学系研究科准教授 ) 石田英子 ( 東京大学大学院薬学系研究科特任研究員 ) 清水敏之 ( 東京大学大学院薬学系研究科教授 ) 井上直和 ( 福島県立医科大学医学部附属生

CCU で扱っている疾患としては 心筋梗塞を含む冠動脈疾患 重症心不全 致死性不整脈 大動脈疾患 肺血栓塞栓症 劇症型心筋炎など あらゆる循環器救急疾患に 24 時間対応できる体制を整えており 内訳としては ( 図 2) に示すように心筋梗塞を含む冠動脈疾患 急性大動脈解離を含む血管疾患 心不全など

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

11 月 16 日午前 9 時 ( 米国東部時間 ) にオンライン版で発表されます なお 本研究開発領域は 平成 27 年 4 月の日本医療研究開発機構の発足に伴い 国立研究開発法人科学 技術振興機構 (JST) より移管されたものです 研究の背景 近年 わが国においても NASH が急増しています

甲状腺機能が亢進して体内に甲状腺ホルモンが増えた状態になります TSH レセプター抗体は胎盤を通過して胎児の甲状腺にも影響します 母体の TSH レセプター抗体の量が多いと胎児に甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性が高まります その場合 胎児の心拍数が上昇しひどい時には胎児が心不全となったり 胎児の成

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する新規薬剤 ( ピレスパ ) の導入が一定の効果を上げていますが 治療成績については十分とは言えず 特発性肺線維症に対する有効な新規治療薬の開発が急務となっています 特発性肺線維症は肺胞周辺組織の炎症に始まり 病状が進行するに従って 間質が肥厚し 肺胞が潰れ 肺組織が硬く線維化することにより肺活量


統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

11.【最終版】プレスリリース修正  循環器内科泉家

2 肝細胞癌 (Hepatocellular carcinoma 以後 HCC) は癌による死亡原因の第 3 位であり 有効な抗癌剤がないため治癒が困難な癌の一つである これまで HCC の発症原因はほとんど が C 型肝炎ウイルス感染による慢性肝炎 肝硬変であり それについで B 型肝炎ウイルス

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1 ムを知ることは, 治療介入時の注意点を知る上で重要である. つまり, 臓器の組織還流を維持するために腎での水と Na 保持作用は重要な代償機構である. 利尿薬投与によって体液量を減少させれば, 浮腫は減少するが, 同時に組織還流も減少するため, その程度によっては臓器障害をきたしうることをよく理

平成 28 年 12 月 12 日 癌の転移の一種である胃癌腹膜播種 ( ふくまくはしゅ ) に特異的な新しい標的分子 synaptotagmin 8 の発見 ~ 革新的な分子標的治療薬とそのコンパニオン診断薬開発へ ~ 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 消化器外科学の小寺泰

ロミプレート 患者用冊子 特発性血小板減少性紫斑病の治療を受ける患者さんへ

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

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( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

解禁時間 ( ラジオ テレビ WEB): 平成 30 年 4 月 7 日 ( 土 ) 午後 1 時 ( 日本時間 ) ( 新聞 ): 平成 30 年 4 月 7 日 ( 土 ) 付夕刊 [PRESS RELEASE] 平成 30 年 4 月 3 日 夏の夜は心筋梗塞の増加に注意 日本 イタリアなど世

統合失調症といった精神疾患では シナプス形成やシナプス機能の調節の異常が発症の原因の一つであると考えられています これまでの研究で シナプスの形を作り出す細胞骨格系のタンパク質 細胞同士をつないでシナプス形成に関与する細胞接着分子群 あるいはグルタミン酸やドーパミン 2 系分子といったシナプス伝達を

検査項目情報 von Willebrand 因子 ( フォン ウィルレブランド因子 ) Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital 一次サンプル採取マニュアル 血液学的検査 >> 2B. 凝固 線溶関連検査

報道発表資料 2007 年 10 月 22 日 独立行政法人理化学研究所 ヒト白血病の再発は ゆっくり分裂する白血病幹細胞が原因 - 抗がん剤に抵抗性を示す白血病の新しい治療戦略にむけた第一歩 - ポイント 患者の急性骨髄性白血病を再現する 白血病ヒト化マウス を開発 白血病幹細胞の抗がん剤抵抗性が

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

Title [ 症例報告 ] 一時留置型下大静脈フィルターにより肺動脈塞栓症を防止し得た 2 例 Author(s) 仲栄真, 盛保 ; 佐久田, 斉 ; 比嘉, 昇 ; 井手上, 隆史 ; 伊波金津, 浩二 ; 國吉, 幸男 ; 古謝, 景春 Citation 琉球医学会誌 = Ryukyu Me

心疾患患による死亡亡数等 平成 28 年において 全国国で約 20 万人が心疾疾患を原因として死亡しており 死死亡数全体の 15.2% を占占め 死亡順順位の第 2 位であります このうち本県の死亡死亡数は 1,324 人となっています 本県県の死亡率 ( 人口 10 万対 ) は 概概ね全国より高

血漿エクソソーム由来microRNAを用いたグリオブラストーマ診断バイオマーカーの探索 [全文の要約]

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情報提供の例

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

Transcription:

報道機関各位 2016 年 5 月 9 日 東北大学大学院医学系研究科 慢性血栓塞栓性肺高血圧症における病因タンパク質を世界で初めて発見 研究概要 東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川宏明 ( しもかわひろあき ) 教授の研究グループは 国の指定難病で 診断が困難かつ致死的疾患である 慢性血栓塞栓性肺高血圧症 の病因タンパク質としてトロンビン活性化型線溶阻害因子 (Thrombin-activatable fibrinolysis inhibitor) を同定しました 本研究は 同症の病因タンパク質を世界で初めて明らかにした重要な報告で このタンパク質を標的とした 新たな診断法や治療薬の開発へつながることが期待されます 本研究成果は 2016 年 4 月 21 日に 米国心臓協会 (American Heart Association, AHA) の学会誌である Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology 誌 ( 電子版 ) に掲載されました 本研究は 文部科学省科学研究費補助金 厚生労働省科学研究費補助金及び東北大学グローバル COE 研究助成金の支援を受けて行われました 研究のポイント 慢性血栓塞栓性肺高血圧症は診断が困難かつ致死的疾患で 発症の原因がよくわかっていない 本研究は 慢性血栓塞栓性肺高血圧症の病因タンパク質としてトロンビン活性化型線溶阻害因子 (Thrombin-activatable Fibrinolysis Inhibitor) を同定した 慢性血栓塞栓性肺高血圧症の新たな診断法や治療薬の開発へつながることが期待される

研究内容 注 1 国の指定難病である 慢性血栓塞栓性肺高血圧症 は 肺動脈に器質化血栓が生じることで血液が流れにくくなり 肺動脈へかかる圧が上昇する 肺高血圧症 と呼ばれる状態になる疾患です 息切れなどの非特異的な症状しかなく 致死的でありながらしばしば見逃されている疾患です 肺動脈内の血栓は 血栓を溶解 分解する線溶系注 2 の作用により除去されることが一般的ですが 慢性血栓塞栓性肺高血圧症では肺動脈内に血栓が形成されても溶解されずに残存し 器質化します しかし これまで患者の血液凝固系注 2 の異常は報告されておらず 慢性血栓塞栓性肺高血圧症の器質化血栓形成の原因は不明でした 本研究で着目した トロンビン活性化型線溶阻害因子 (Thrombin-activatable Fibrinolysis Inhibitor 以下 TAFI) は血漿中及び血小板中に存在し 血栓を溶解 分解する線溶系を抑制するタンパク質です 下川教授の研究グループは本研究において 慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者では線溶系が低下していることを示しました さらに 血漿中及び血小板中の TAFI が著しく増加しており 慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者の線溶系の低下の原因であることを世界で初めて明らかにしました TAFI の増加は慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者の治療後も継続しており TAFI の抗原量を増加させる一塩基多型 (SNPs) が確認されたことから TAFI が慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者の病因タンパク質である可能性が示されました また TAFI の活性阻害薬を用いると 慢性血栓塞栓性肺高血圧症で認められた線溶系の低下が改善しました 慢性血栓塞栓性肺高血圧症は息切れなどの非特異的な症状しかなく診断が困難で 治療法としては血栓を取り除く外科手術やカテーテルで血管を広げる治療が一般的ですが 本研究により新たな診断法や治療薬の開発へつながることが期待されます 本研究は 文部科学省科学研究費補助金 厚生労働省科学研究費補助金および東北大学グローバル COE 研究助成金の支援によってサポートされました 用語説明 注 1. 器質化 : 体外から入った異物 また体内に生じた血栓や壊死した組織などの異物は 修復の過程において肉芽組織でおおわれ 融解 吸収される 最終的には固い膠原線維や結合組織に置き換わる 注 2. 凝固系 線溶系 : 凝固系 ( 血液凝固因子 ) とは出血を止めるために生体が血液を凝固させる一連の分子の作用系であり そうして固まった血栓を溶かして分解するのが線溶系 ( 線維素溶解系 ) である 注 3. トロンビン活性化型線溶阻害因子 (Thrombin-activatable Fibrinolysis Inhibitor TAFI): 血液の凝固に関わるタンパク質であるフィブリンのリジン残基を切除することで血栓を線溶系に対し安定化させるタンパク質

図 1. 肺循環内の凝固系 線溶系の概念図通常は肺循環内に血栓が生じても線溶系により血栓は完全に溶解され 肺循環動態に影響を与えない ( 青矢印 ) しかし 慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者では SNPs による TAFI の血漿中抗原量の増加と血小板から放出される TAFI が増加しており ( 白矢印 ) そのために線溶能が低下し 血栓が肺血管内に残存し肺血管床を閉塞してしまう それに伴い肺血管床が減少し 慢性血栓塞栓性肺高血圧症を発症する ( 赤矢印 )

図 2. 慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者における血栓残存率と TAFI 量 A: 対象とした患者の線溶能を評価している 慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者では線溶系による血栓溶解後も残存する血栓が多く 線溶能が低下していることが明らかになった B: 慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者では血漿中の TAFI 抗原量が著明に増加していることが示された C: 慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者では血小板から放出される TAFI も著明に増加していることが示された

論文題目 ( 英語 ) Title: Thrombin-activatable Fibrinolysis Inhibitor in Chronic Thromboembolic Pulmonary Hypertension. Authors: Nobuhiro Yaoita, Kimio Satoh, Taijyu Satoh, Koichiro Sugimura, Shunsuke Tatebe, Saori Yamamoto, Tatsuo Aoki, Masanobu Miura, Satoshi Miyata, Takeshi Kawamura, Hisanori Horiuchi, Yoshihiro Fukumoto, Hiroaki Shimokawa. ( 日本語 ) 慢性血栓塞栓性肺高血圧症における Thrombin-activatable Fibrinolysis Inhibitor の関与 著者名 : 矢尾板信裕 佐藤公雄 佐藤大樹 杉村宏一郎 建部俊介 山本沙織 青木竜男 三浦正暢 宮田敏 河村剛至 堀内久徳 福本義弘 下川宏明 掲載誌名 : Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology. 36: 2016 (in press) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科循環器内科教授下川宏明 ( しもかわひろあき ) 電話番号 :022-717-7152 Eメール :shimo@cardio.med.tohoku.ac.jp 報道担当 東北大学大学院医学系研究科 医学部広報室講師稲田仁 ( いなだひとし ) 電話番号 :022-717-7891 FAX 番号 :022-717-8187 Eメール :pr-office@med.tohoku.ac.jp