Japan Academy of Personal Finance パーソナルファイナンス研究 No.2 総量規制の導入経緯と問題点 伊藤 幸郎 東京情報大学大学院 堂下 浩 東京情報大学 要旨 貸金業法は 2006 年 12 月に国会へ上程され 2010 年 6 月に完全施行へと至った 新たに導入

Similar documents
目次 ドイツにおける貸金業等の状況 2 フランスにおける貸金業等の状況 4 米国における貸金業等の状況 6 英国における貸金業等の状況 8 韓国における貸金業等の状況 9 ( 注 1) 本レポートは 金融庁信用制度参事官室において 外国当局 調査会社 研究者等からのヒアリング結果等に基づいて作成した

NEWS 2020 速報 の一部を改正する法律案 REPORT 総会の様子 2025 GDP 3 02 vol

2

金融商品取引法の改正 ~ インサイダー取引規制に係る見直しについて 1. はじめに 2013 年 4 月 16 日に 金融商品取引法等の一部を改正する法律案 が第 183 回国会に提出され 同年 6 月 12 日に成立 同月 19 日に公布されました ( 平成 25 年法律第 45 号 以下 改正法

Ⅰ. 経緯 国際金融コミュニティにおける IAIS の役割は ここ数年大幅に増加している その結果 IAIS は 現行の戦略計画および財務業績見通しを策定した際には想定していなかった システム上重要なグローバルな保険会社 (G-SIIs) の選定支援やグローバルな保険資本基準の策定等の付加的な責任を


untitled

T-News_No29.pdf


untitled

1001.indd

0007

“LŁñ‡È‡©‡ª‡í409“ƒ

STEEL_No.24_h1-4

みさき_1

Vol


2008CHORD11....



もりおか医報人7.indd

2

H21_report


表1-2_pdf用101.indd

untitled


1 2

indd

株主通信

Vol


広報きたしおばら


untitled

01-15_28-30_04.indd

きょうさいだよりv14-1.indd

1p

vol.60.pdf

Vol

テクノ東京21-2005年2月号

1p



南国暮らしの会 会報2011年春季号

ALPS-91

72市内.ai

プリント用.indd

はつらつ190_表紙01.ai


untitled



no49

TIC NEWS No86/No86(CID)


‡·‡Ä‡¡†`‡é18“ƒ*

++_宅建しが210_p1,16

藝文やまなしvol21_ indd

みさきレポート10A4

VOL a s d f g h

2 No,


礎_vol19修正案

vol.57.pdf

vol.392


10-08-H01.ai


untitled

ふれあい32号.indd

合体

vol6



Vol. 31, No. 1,

_001.図書館31-1


V11_10_01_P2-3_final.eps

2

I. 2 II III IV

事罰対象事罰対象超過分は無効利息制限法上限金利 超過分は無効10 万円 100 万円 改正のポイント 2 金利体系の適正化 今までの出資法の上限金利 (29.2( 29.2%) を引き下げ 利息制限法の水準 ( 借入金額に応じて 15%~ %~20%)) を上限金利とする 上限金利の引下げ 刑( 改

<918D8D878CA48B86358D862E696E6462>

その次の日に内閣人事局が発足して その省庁別に割り振られている常任委員会の所管としては内閣委員 会ということになりますので 平成 26 年 6 月 3 日のこの参議院総務委員会で所管替えを行いましたので 今 国家公務員法制は内閣委員会に移って 地方公務員分はこちらで扱っているということになっています

第1章: 現行収益事業制度

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

<4D F736F F D DC58F4994C5817A95BD90AC E8E99837C89FC90B A78BC78A6D94468DCF816A202D B2E646F6378>


第 2 問問題のねらい青年期と自己の形成の課題について, アイデンティティや防衛機制に関する概念や理論等を活用して, 進路決定や日常生活の葛藤について考察する力を問うとともに, 日本及び世界の宗教や文化をとらえる上で大切な知識や考え方についての理解を問う ( 夏休みの課題として複数のテーマについて調

News Release No.214(14-5) 2014 年 ( 平成 26 年 )6 月 13 日 東商記者クラブ 日銀クラブで 資料投函させていただいております 平成 26 年 5 月度貸金情報統計概況 貸金業法の指定信用情報機関シー アイ シー (CIC) は 毎月 貸金情報統計を公表して

Microsoft Word - 博士論文概要.docx

大阪信用保証協会の現況(2017年)

て 1991 年に年 % と段階的に引き下げられた その後 1999 年に商工ローン問題が発生し 同年 12 月に出資法は改正 翌年 6 月に上限金利は年 29.2% に引き下げられた 利息制限法の上限金利と出資法の上限金利の間での契約は民事上無効であるが 1983 年に制定された貸金業

事務ガイドライン ( 第三分冊 )13 指定信用情報機関関係新旧対照表 Ⅰ-2 業務の適切性 現行改正後 ( 案 ) Ⅰ-2 業務の適切性 Ⅰ-2-4 信用情報提供等業務の委託業務の効率化の観点から 内閣総理大臣 ( 金融庁長官 ) の承認を受けて信用情報提供等業務の一部を委託することが可能とされて

銀行等の議決権保有規制の例外措置拡充

参考

<4D F736F F F696E74202D CA A E968BC68ED28CFC82AF834A C E707074>

n_201202

London England

nenbe3004_3103

Transcription:

総量規制の導入経緯と問題点 伊藤 幸郎 東京情報大学大学院 堂下 浩 東京情報大学 要旨 貸金業法は 2006 年 12 月に国会へ上程され 2010 年 6 月に完全施行へと至った 新たに導入された制度の一つとして 借り手へ源泉徴収票等の提出を義務付け 個人年収の 1/3 を超える貸し付けを禁止する規制 いわゆる総量規制がある 法律が改正された 2006 年以降 総量規制は日本の貸金市場における借り手と貸し手の双方に広く影響を与えてきた そこで本論文では 1) 貸金業法の過程について主に政府が公表した公開資料から精査し 総量規制がノンバンクの貸付市場にのみ導入された背景を分析した 2) 次に筆者らは 2005 年 3 月から 2006 年 12 月に渡る自民党と金融庁における立法の策定過程の議論に注目した 特に自民党で貸金業法の策定にあたり国会側の立法責任者として深く関与してきた増原義剛氏と 金融担当大臣として 2006 年 12 月に貸金業法を国会に上程した山本有二氏による発言に着目し 公開資料では示されていない貸金業法制定の背景を知ることに努めた 3) さらに筆者らは当時 貸金業法の立法に関わった人物 具体的には 2006 年当時の業界代表者 記者 そして業界ロビイストらを特定し 貸金業法制定の経緯 特に総量規制導入の経緯についてインタビュー調査を実施した 上記の調査を通じて 得られた結論は (A) 政府は貸金業者に対して感情的になった世論を恐れて貸金業法の立法を急いだ (B) 貸金業法に盛り込まれた総量規制の影響調査も欠落していていた という 2 点に集約される 1 はじめに 2006 12 1. 29.2% 15 20%.. 1/3 3 1/3 1983 11 13

1983 13 a 1973 b 1975 3K 2 3 1983 11 1 50 10% 50 4 1990 2001 2003 1983 2005 3 2006 9 2006 14

総量規制の導入経緯と問題点 2 総量規制の問題点と仮説の提起 2.1 総量規制の問題点 5 3 1 4 4 4 4 5 2010 4 16 6 7 4 4 4 4 8 3 3 1 25% 5% 2010 9 4 4 4 4 2010 3 1 1 1 2008 2008 10 3 1 IR 3 1 3 1 15

2013 11 2014 2 2.1 5 3 2.2 仮説の提起 1 1983 2006 2006 12 2010 13 3 総量規制が生まれた経緯 (2005 年以降の議論 ) に関する分析 3.1 公開資料に基づく審議経緯の時系列調査 3.1.1 法改正の柱となった金融庁懇談会と自民党小委員会 2005 3 14 2006 8 19 3 2 2003 2006 5 15 16 1990 3 2005 16

総量規制の導入経緯と問題点 15~20 3.1.2 政府による議論の経緯 ( 金融庁 貸金業制度等に関する懇談会 ) 2005 3 17 2005 3 30 1 2005 4 27 2 150 200 2005 5 27 3 2 2005 6 15 4 18 50~100 50 2005 6 29 5 3 2005 7 29 6 2005 9 7 7 2005 12 8 8 8 9 2006 13 17

2006 1 27 9 2006 2 15 10 2006 2 28 11 10 19 11 20 2006 4 21 1 11 21 2006 3 10 12 2006 3 31 14 2006 4 7 15 2006 8 24 19 15 18 19 9 50 3.1.3 立法府による議論の経緯 ( 自民党金融調査会 貸金業制度等に関する小委員会 ) 2006 5 11 2006 5 30 18

総量規制の導入経緯と問題点 2006 7 6 2006 5 11 7 6 1~2 2006 7 22 1200 5 230 200 2300 1399 22 23 2006 9 14 JCFA 2006 9 15 2006 9 15 1/3 19

2012 200 300 400 3 5 600 600 85% 15% 100 1/3 3 1 3 1 2006 9 19 9 19 9 11 3 1 3 1 2006 10 25 10 25 3 2 3.1.4 国会での議論の経緯 ( 衆議院 参議院における議論 ) 2006 10 25 10 31 2006 11 14 2006 11 15 3 3 2006 11 17 24 25 7 1200 72% 900 1/3 10% 800 20

総量規制の導入経緯と問題点 表 1 総量規制導入に係る議論の経緯 2006 11 22 11 28 6 11 29 11 30 12 1 26 3 100 12 5 12 12 12 13 12 20 2 6 1 21

3.2 立法に拘わった関係者による見解について の調査 3.2.1 当時の立法担当者の見解 (1) 増原義剛元衆議院議員 ( 当時 貸金業制度 等に関する小委員会 小委員長 ) の見解 2006 5 27 2014 10 3 28 29 4 2 6 2009 7 2009 12 2012 1/3 500 2010 6 2006 (2) 山本有二衆議院議員 ( 当時金融担当大臣 ) の見解 2006 11 14 30 5 2 3.3 立法に携わった関係者へのインタビュー調査 A B C 3 22

総量規制の導入経緯と問題点 (1) 貸金業界を代表して法改正議論にて発言した A 氏 A A 2006 4 6 2006 9 (2) 業界紙記者として立法過程を取材した B 氏 B (3) 大手貸金業者で自民党や金融庁と連絡調整に携わった C 氏 C MOF C C 3.4 上記調査からの示唆 1/3 4 まとめ ( 仮説の検証 ) 2006 5 11 7 6 23

表 2 総量規制に対する代表的な反対派と賛成派の意見 3 2 2 2 2.2 2014 5 注 1 http://www.fsa.go.jp/singi/singi_ kasikin/singi_kasikin.html 24

総量規制の導入経緯と問題点 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 TAPALS 2007 p142 http://www. fsa.go.jp/policy/kashikin/siryou/20100204/01.pdf http://www.fsa.go.jp/ common/law/ 1 1 2010 6 500 2 22 4 16 15 (2010) 2010 6 500 CREDIT AGE Vol.2 19 2008 7 p38 CREDIT AGE 2013 9 (2) 2006 10 10 CREDIT AGE 2010 8 2 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 http://www.fsa.go.jp/singi/ singi_kasikin/singi_kasikin.html http://www.fsa.go.jp/singi/ singi_kasikin/20060421.html (2012) 1 2014 10 3 16 00 19 30 11 4 4 CREDIT AGE 2008.4 参考文献 2008 25

No. ZR14-13 2014 1-19 CREDIT AGE 2008.4 2008 TAPALS 2007 2007 - - 1982 8 20 2006 12 1 2006 12 10 2012 2010 6 500 2010 2015 11 8 26