2018 年 8 月 5 日仙台市民活動サポートセンター 石炭火力発電の現実 : 採炭地インドネシア 仙台港の現場の声とともに インドネシアの石炭開発の現場から ~ 環境破壊と地域住民への影響 ~ 東洋大学社会学部 助教 寺内大左 * 本発表資料で使用する写真の中で 出所のない写真はすべて発表者が撮影
出所 ) https://maps.google.com/maps?hl=ja に筆者加筆 日本 東カリマンタン *2013 年以前の行政区分 < 研究紹介 > 調査地 : インドネシア 東カリマンタン調査内容 : 焼畑民の生活 < 東洋大学の講義 演習の紹介 > モノ ( 商品 ) でつながる日本とインドネシア ( パーム油 木材 石炭 ゴム ラタン ) 日本人がモノをどのように消費しているのか 生産地インドネシアで何が起こっているのか ( 環境問題 貧困問題 人権侵害 ) 身近なモノから世界とのつながりを理解し 私たちの生活を見つめなおす * 採炭地 インドネシアの現場報告と日本とのつながりについて発表 2
今日 お話しすること 1. 石炭でつながる日本とインドネシア 2. 採炭地 東カリマンタンって どういうところ? 3. 石炭採掘の現場で何が起きている? 自然環境への影響は? 地域住民への影響は? 4. 東南アジアで始まる反石炭運動
日本の石炭消費量 ポイント : 中国 アメリカ インドの石炭消費が多い 日本の消費量は世界 6 位 大量消費国は大量生産国 日本の石炭消費量の 99% は輸入 表 1.2013 年国別の石炭消費量 ( 千 t) 順位 国名 消費量 1 中国 4,026,194 2 アメリカ 839,949 3 インド 803,809 4 ドイツ 245,235 5 ロシア 210,447 6 日本 195,607 7 南アフリカ 181,879 8 ポーランド 144,717 9 韓国 127,922 10 オーストラリア 121,185 ー その他 1,097,671 ー 世界合計 7,994,615 出所 ) 石炭エネルギーセンター (2016: 18) に基づいき筆者作成 表 2.2013 年国別の石炭生産量 ( 千 t) 順位 国名 生産量 1 中国 3,700,071 2 アメリカ 891,648 3 インド 602,857 4 インドネシア 487,736 5 オーストラリア 458,940 6 ロシア 325,987 7 南アフリカ 256,282 8 ドイツ 190,956 9 ポーランド 142,315 10 カザフスタン 119,574 ー その他 730,612 ー 世界合計 7,906,978 出所 ) 石炭エネルギーセンター (2016: 12) に基づいき筆者作成
日本の石炭輸入量 ポイント : 日本は 1980 年 ~2010 年まで世界で最も多く 石炭を輸入していた (1980 年 ~2005 年までは 2 位の韓国の 2 倍以上 ) 日本は今でも中国 インドに次ぐ第 3 位の石炭輸入大国 350,000 300,000 250,000 200,000 150,000 100,000 50,000 0 上位 8 カ国の石炭輸入量推移 ( 褐炭含む )( 千 t) 1980 年 1990 年 1995 年 2000 年 2005 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 中国 インド 日本 韓国 台湾 ドイツ オランダ イギリス 出所 ) 石炭エネルギーセンター (2016: 25) に基づき作成
日本の石炭輸入先 輸入量 2005 年 ~2014 年度にかけて オーストラリア :60% 強 インドネシア :20% 弱 その他 :20% 表 3. 日本の石炭輸入先 輸入量の推移 ( 千 t) 輸入先 2005 年度 2010 年度 2014 年度 オーストラリア 102,959 57.9% 116,316 62.3% 118,921 63.4% インドネシア 29,945 16.8% 35,449 19.0% 35,183 18.7% ロシア 10,492 5.9% 11,426 6.1% 15,024 8.0% カナダ 7,609 4.3% 10,541 5.6% 9,134 4.9% アメリカ 1,358 0.8% 3,799 2.0% 6,211 3.3% 中国 22,151 12.5% 6,503 3.5% 1,842 1.0% 南アフリカ 76 0.0% 298 0.2% 141 0.1% その他 3,203 1.8% 2,306 1.2% 1,237 0.7% 合計 177,793 100% 186,638 100% 187,692 100% 出所 ) 石炭エネルギーセンター (2016: 215) に基づき一部筆者加筆
インドネシアの石炭輸出先 2008 年まで日本に最も多く石炭を輸出していた 2015 年にはインド 中国 韓国に次いで第 4 位 インドネシアにとって日本は石炭の輸出先として重要 出所 )https://www.bps.go.id/statictable/2014/09/08/1034/ekspor-batu-bara-menurut-negara-tujuan-utama-2002-2015.html に基づき筆者作成
今日 お話しすること 1. 石炭でつながる日本とインドネシア 石炭輸入大国 日本 日本とインドネシアは重要な石炭貿易パートナー 2. 採炭地 東カリマンタンって どういうところ? 3. 石炭採掘の現場で何が起きている? 自然環境への影響は? 地域住民への影響は? 4. 東南アジアで始まる反石炭運動
豊かな熱帯林 9
森に生きる焼畑民 10 焼畑
11
森に生きる焼畑民 樹木園 ゴム園 ラタン園 焼畑 12
ゴム園の景観13
14
ラタン(籐)園の景観15
16
ラタン園 ゴム園 焼畑 森に生きる焼畑民 樹木園 古い森 古い樹木園 材木 狩猟 17
18
ラタン園 ゴム園 焼畑 森に生きる焼畑民 樹木園 古い森 古い樹木園 材木 狩猟 19
2. 採炭地東カリマンタンって どういうところ? インドネシア全土の石炭生産量 :4.2 億 t(2012 年 ) 東カリマンタンの石炭生産量 :2.2 億 t(2012 年 ) 東カリマンタンは最も多く石炭が生産されている場所 調査地 : 東カリマンタン *2013 年以前の行政区分 20
今日 お話しすること 1. 石炭でつながる日本とインドネシア 石炭輸入大国 日本 日本とインドネシアは重要な石炭貿易パートナー 2. 採炭地 東カリマンタンって どういうところ? 豊かな森と焼畑民が生活する所 インドネシアで石炭生産量が最も多い所 3. 石炭採掘の現場で何が起きている? 自然環境への影響は? 地域住民への影響は? 4. 東南アジアで始まる反石炭運動
22
23 出所 ) 寺内 (2016) より
3. 石炭採掘の現場で何が起きている? 豊かな熱帯雨林の減少 地球温暖化の促進 ( 世界の環境問題 ) 森を住みかとする希少な動植物の減少 https://usercontent2.hubstatic.com/1872265_f520.jpg より http://www.exblog.jp/blog_logo.asp?imgsrc=201403%2f15%2f51%2fa028085 1_18314935.jpg&slt=1 より
http://seancrane.com/2010/05/alpha-male-orangutan-borneo/ より http://www.orangutan.org/wpcontent/uploads/2010/06/behavior-3.jpg より
https://rr.img.naver.jp/mig?src=http%3a%2f%2fimgcc.naver.jp %2Fkaze%2Fmission%2FUSER%2F20140918%2F22%2F2315592 %2F3%2F374x374x065097a7deebdba300334f7f.jpg&twidth=1200 &theight=1200&qlt=80&res_format=jpg&op=r より https://www.corvet.jp/photo/thumbnail/tya020217s_b2.jpg より 26
3. 石炭採掘の現場で何が起きている? 焼畑民の生活への影響 石炭開発計画地域 ゴム園焼畑 道路 古い森 私たちの森だ と開発に反対しても 政府 企業は認めてくれない ( すべて森の景観で利用 所有してきたことを証明する根拠が少ない ) ただで土地を取られるくらいなら ここは私の焼畑場所 / 焼畑跡地に造ったゴム園だ と先住民の権利を主張し 補償金を要求 多目的林 ゴム園 村 休閑林 ラタン園 ラタン園 多目的林 ゴム園 多目的林 焼畑 ゴム園 ラタン園 多目的林 ラタン園 焼畑 休閑林 休閑林 川 補償金支払い : 約 10 万円 /ha * 人々の年間平均収入 : 約 20 万円 補償金を目的とした古い森での焼畑が増える 奥地の利用しにくい古い森だから石炭開発を受け入れる 村周辺の土地では開発は拒否する 立ち退き嫌 今の焼畑の生活は変えたくない 心配事 : 将来の焼畑地の減少 河川の汚染 出所 ) 寺内 (2016) より引用
今日 お話しすること 1. 石炭でつながる日本とインドネシア 石炭輸入大国 日本 日本とインドネシアは重要な石炭貿易パートナー 2. 採炭地 東カリマンタンって どういうところ? 豊かな森と焼畑民が生活する所 インドネシアで石炭生産量が最も多い所 3. 石炭採掘の現場で何が起きている? 森が破壊され 地球温暖化が促進 森にすむ希少な動植物が消える 焼畑民の石炭開発反対は困難 一部開発を受け入れ 補償金の獲得を選択 4. 東南アジアで始まる反石炭運動
2014 年 2 月 18 21 日東南アジア初 < ゼロ石炭集会 > 各国の反石炭 NGO が集結 インドネシア マレーシア フィリピン ミャンマー インド 中国 アメリカ 各国の石炭火力発電所や石炭開発の現状を発表 石炭輸入大国日本は非難の的 共同エクスカーション
今日 お話しすること 1. 石炭でつながる日本とインドネシア 石炭輸入大国 日本 日本とインドネシアは重要な石炭貿易パートナー 2. 採炭地 東カリマンタンって どういうところ? 豊かな森と焼畑民が生活する所 インドネシアで石炭生産量が最も多い所 3. 石炭採掘の現場で何が起きている? 森が破壊され 地球温暖化が促進 森にすむ希少な動植物が消える 焼畑民の石炭開発反対は困難 一部開発を受け入れ 補償金の獲得を選択 4. 東南アジアで始まる反石炭運動 各国の NGO が集結 石炭採掘 石炭火力発電所に反対 被害者を応援
ご清聴ありがとうございました
引用文献 石炭エネルギーセンター,2016, コールノート石炭エネルギーセンター. 2015 年版 寺内大左,2016, 石炭開発に対する焼畑民の認識と対応 - インドネシア 東カリマンタン州のベシ村を事例として 林業経済研究 62(1): 41-51.