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論文 解説 14 無塗装 高質感の内外装意匠部品用バイオエンジニアリングプラスチックの開発 Development of Bio-based Engineering Plastic Featuring High-quality Finish without Paint and Suitable for Interior and Exterior Vehicle Parts 一原洋平 *1 Yohei Ichihara 要約 優れた環境性能 に貢献できる技術の一つとして植物由来材料である バイオプラスチック がある しかしながら, 従来の石油系プラスチックに比べて材料コストが高く, 自動車部品への採用が拡大していない 今回開発したバイオエンジニアリングプラスチックは, 透明性 耐傷つき性 耐光性 に優れた特徴を持っている 本開発材料の特徴を活かした内外装意匠部品の無塗装化技術開発を行い, 材料の持つ優れた環境性能だけではなく, 従来の塗装では実現できない高質感と, 塗装工程廃止による環境貢献およびコスト改善を実現することができた 本技術は, 新型ロードスターの内装意匠部品で既に採用しており, 新型 CX-9では内装意匠部品だけではなく, 外装意匠部品にも採用した 今後, 環境性 商品性 経済性 を両立できる本技術の適用を拡大させていく Summary Bio-plastic is one of the technologies contributing to outstanding environmental performance. However, as the material cost is higher than that of petroleum plastics, it was difficult to use the bioplastic for vehicle parts. The newly developed bioengineering plastic is high in transparency, scratch and fading resistance. Taking advantage of the material s properties, non-coating technology was developed for interior/exterior design parts, which achieves not only outstanding environmental performance but also high quality finish which is not possible by conventional coating as well as cost improvements due to the elimination of coating processes (molded-in-color). This technology was already adopted to the interior design parts of the all-new Mazda MX-5 as well as the interior and exterior design parts of the all-new CX-9. Application of this technology of high Environmental, Marketability, and Economy performance will be expanded from now. 1. はじめに 1.1 バイオエンジニアリングプラスチックとはバイオエンジニアリングプラスチックとは, 植物由来原料を用いて製造したエンジニアリングプラスチックのことである 今回開発したバイオエンジニアリングプラスチックは, 植物由来のイソソルバイトが主原料で, その他の原料と重合してカーボネート結合させることで作っているため, バイオポリカーボネート ( 以下, バイオPC) と記載する (Fig. 1) 本開発材料は特殊な分子構造を持つため, 従来の石油由来のエンジニアリングプラスチックであるポ リカーボネート ( 以下,PC) に比べて, 耐傷つき性や耐光性が優れている特徴を持っている また, 透明性が高いため, 着色剤を添加することで, さまざまな色に着色することが可能である Fig. 1 Production Process * 1 装備開発部 Interior & Exterior Components Development Dept. -78-

1.2 本技術開発の位置づけマツダの技術開発の長期ビジョンとして サステイナブル Zoom-Zoom 宣言 があり, 本技術開発の原点は 優れた環境性能 に貢献するための技術開発である (Fig. 2) 優れた環境性能 に貢献できる技術の一つとして, 植物由来材料である バイオプラスチック があり, バイオPCはその中の一つとして開発を進めてきた しかし, バイオプラスチックは従来の石油系プラスチックと製造方法が異なるため材料コストが高く, 自動車部品への採用が拡大していない そこで, バイオプラスチックならではの特徴を見出し, その特徴を活かすことで, 部品レベルでコスト同等を目指し, 自動車部品への採用拡大を目指した 本開発材料の特徴として, 透明性 耐傷つき性 耐光性 が良い特徴を持っている そこで, ピアノブラック塗装の代替えとして, 本開発材料を着色し, 塗装では実現できない高質感の実現を目指した り小なり発生するが, 本技術は成形圧力により鏡面のような平滑感を実現することができる つまり, 本技術は 深み感 平滑感 において, 従来の塗装を超える質感を実現できる技術であり, 際立つデザインに貢献することができる Fig.3 Conventional Technology Fig. 4 Developed Technology (3) 経済性本開発材料を着色し, 塗装では実現できない高質感を実現することで, 従来必要だった塗装工程を廃止し, 部品レベルでコスト改善に貢献することができる 2. 技術課題 Fig. 2 Main Purpose 1.3 本技術開発の特徴本技術は, ピアノブラック塗装の代替え技術として, 環境性 商品性 経済性 を高いレベルで実現できる技術である (1) 環境性植物由来原料を使用していることからCO2 排出量の削減や石油資源使用量の削減, 更に塗装工程廃止によるVOC の削減により, 優れた環境性能に貢献することができる (2) 商品性従来の塗装の膜厚は数十 μmであり, その厚さで深み感を演出してきたが (Fig. 3), 本技術は数 mmの製品厚で深み感を演出することが可能であり, 従来の塗装を上回る深み感を実現できる (Fig. 4) 更に, 従来の塗装では, 塗装ならではの表面のゆがみ, いわゆる ゆず肌 が大な ピアノブラック塗装レス化の技術課題は, 塗装することなく, 自動車内外装意匠部品に要求される 表面意匠性 表面意匠耐久性 基材機械物性 を成立させることである それぞれの代表的な要求性能として, 表面意匠性は 漆黒感 と 平滑感, 表面意匠耐久性は 耐傷つき性 と 耐光性, 基材機械物性は 耐熱性 と 耐衝撃性 がある 従来は, これらの要求性能を塗装と基材の樹脂で満足させてきた しかしながら, 今回は塗装レス化技術開発であり, 塗装を使うことなく, 基材の樹脂だけでこれらの要求性能を満足させなければならない よって, 今回の目標は,Fig. 5の要求性能図に示した塗装品と同等以上を目指すこととした まず単純に塗装をなくした場合で, 基材樹脂としてよく使用されるABS 樹脂では, 基材機械物性の要求性能は満足させることができるが, 表面意匠性と表面意匠耐久性の要求性能は満足させることができない (Fig. 5) -79-

従来の石油由来材料で透明性が高く, 発色性の良い材料として, アクリル ( 以下,PMMA ) やPC がある PMMAは表面意匠性と表面意匠耐久性の要求性能を満足させることができるが, 基材機械物性の要求性能を満足させることができない 一方,PCは表面意匠性と基材機械物性の要求性能を満足させることができるが, 表面意匠耐久性の要求性能を満足させることができない (Fig. 6) 以上のように, 既存の材料では, 表面意匠性 表面意匠耐久性 基材機械物性 の要求性能を成立させることができなかった Fig. 5 Demand Performance Fig. 6 Conventional Material 3. 解決手段樹脂部品性能に大きな影響を与える因子として, 材料 工法 構造 があり, これらの3つの因子を用いることで, 樹脂部品性能をコントロールすることができる 今回は 材料 と 工法 に着目し, 材料からのアプローチとして バイオPCの材料組成の最適化, 工法からのア プローチとして バイオPCの成形方法の最適化 を行うことで, 表面意匠性 表面意匠耐久性 基材機械物性 の要求性能の成立を図った 3.1 表面意匠性表面意匠性として, 深みのある漆黒感 と 鏡面のような平滑感 を挙げているが, これらを実現させるためには, 大きく3つのポイントがあり, 表面の微細形状 と 樹脂の透明性 と 着色剤の分散性 が大きな影響を与えている 表面の微細形状については, 表面が粗いと鏡面のような平滑感を実現できないことはもちろんのこと, 表面で光が拡散することで, 白ぼけてしまい, 深みのある漆黒感を実現することができない 樹脂の透明性については, 樹脂の透明性が低いと光が内部まで届かないため, 表面近傍で白ぼけてしまい, 深みのある漆黒感を実現することができない 着色剤の分散性については, 着色剤の分散性が悪いと着色剤が凝集してその部分で光を遮断してしまうため, 深みのある漆黒感を実現することができない そこで, 表面の微細形状と樹脂材料で光をコントロールすることで, 塗装を上回る表面意匠性の実現を試みた (1) 工法からのアプローチ工法からのアプローチとして, 金型仕様 と 成形条件 に着目し, 金型内の樹脂流動をコントロールすることで, 樹脂表面の外観不良をなくし, 鏡面のような平滑感の実現を試みた 樹脂成形で発生しうる表面外観不良として, シルバー, ウエルド, ヒケなどがある シルバーは, 金型内で流動中の樹脂がガスを巻き込み, 表面で破泡することで銀状のスジが発生する現象である ウエルドは, 金型内で流動中の樹脂同時がぶつかり固化することで, 表面にスジが発生する現象である ヒケは, 製品厚さが異なる部分などで樹脂の固化速度が異なり, 部分的に収縮率が異なることで, 表面が凹状になる現象である 金型仕様として, 金型内の樹脂流動解析を行うことで, 樹脂の流れ方や圧力分布や温度分布などの検証を行い, 金型のゲート, ランナー, リブ形状などの最適化を行った 具体的には, シルバーの改善として, 金型流動中の樹脂のせん断発熱を抑え, 樹脂の熱分解ガスの発生を抑制させるために, ゲート径やランナー径の最適化を行った ウエルドの改善としては, 金型流動中の樹脂の会合角度をコントロールするために, 製品板厚やゲート位置の最適化を行った ヒケの改善としては, 金型内の樹脂の固化速度をコントロールするために, リブ形状などの最適設計を行った 成形条件として, 本開発材料の特徴および表面外観不良のメカニズムをしっかり把握し, 可塑化条件や射出条件などを最適化して, 樹脂の熱劣化や金型流動中の樹脂のせん断力を抑制することで, 表面外観不良の発生しない成形条件を作り込んだ 以上のように, 金型仕様と成形条件を最適化し, 樹脂の -80-

流動 圧力 温度 時間条件をコントロールすることで, 表面外観不良を抑え, 鏡面のような平滑感が実現できた (2) 材料からのアプローチ材料からのアプローチとして, 樹脂の透明性 と 着色剤の分散性 に着目し, 樹脂材料の光学特性をコントロールすることで, 深みのある漆黒感の実現を試みた 樹脂の透明性については, 耐熱性や耐衝撃性などの材料物性を向上させるために投入した添加材により透明性が低下することがある これは, 添加材により樹脂全体の光学特性が乱れるためである そこで, 主原料として使用している植物由来のイソソルバイトの分子構造を活かし, 添加材の配合を最適にした材料設計を行うことで, 透明性と材料物性を両立させたバイオPCを開発した 特に透明性については, 本開発材料の光線透過率は92% で, 従来のPCの光線透過率の89% に比べて透明性が高い これは, 従来のPCは分子構造にベンゼン環があるため光を遮断するが, 本開発材料はベンゼン環がないため透明性が高くなっている (Fig. 7) 更に着色材の分散性についても, 従来のPCに比べて, 本開発材料は着色材の分散性が良い (Fig. 8) 以上のように, 本開発材料の透明性と着色剤の分散性が良い特徴を活かし, 調色して光をコントロールすることで, 深みのある漆黒感を得ることができた 認できた 写真で漆黒感を伝えるのは難しいが, 平滑感については写真でも確認できる Fig. 10は, 部品の表面に蛍光灯を映して, その蛍光灯の反射像の鮮明さで平滑感の優劣を評価した結果である 塗装品には塗装ならではのゆず肌が発生し蛍光灯の反射像が歪んでいるが, バイオPC 開発品は成形圧力により鏡面がしっかり転写され, 蛍光灯の反射像がしっかり映っており平滑感の高さが確認できた Fig. 9 Appearance Evaluation Fig. 7 Molecular Structure (1) Fig. 8 Dispersion Performance (3) 表面意匠評価結果表面意匠性の評価として, 光学測定装置を用いて, 漆黒感と平滑感を評価した 評価サンプルは, バイオPC 開発品 ( 塗装レス品 ) と, 比較のために従来の塗装品を用いた 評価結果をFig. 9に示す バイオPC 開発品は, 従来の塗装品に比べて, 漆黒感 平滑感ともに優れていることが確 Fig. 10 Surface of Parts 3.2 表面意匠耐久性 (1) 耐傷つき性耐傷つき性の向上には, 微小面の塑性変形のしにくさ と 表面の滑りやすさ に着目した 微小面の塑性変形のしにくさについては, イソソルバイトの剛直性の高い分子構造 (Fig. 7) を活かした材料設計を行うことで, 従来の PCより変形しにくくした 更に, 表面の滑りやすさにつ -81-

いても, 本開発材料は従来のPCに比べて滑りやすい 以上のように, 本開発材料の特徴を活かし, 表面状態をコントロールすることで, 耐傷つき性を向上させた (2) 耐光性耐光性の向上には, 樹脂の耐光性 と 着色剤の耐光性 に着目した 樹脂の耐光性については, 本開発材料は分子構造にベンゼン環がないため従来のPCより紫外線を透過しやすく, 耐光性が良い 更に, 着色剤の耐光性については, 耐光性安定剤を添加するとともに, 耐光性の高い着色剤を使用することで改良した (3) 表面意匠耐久性評価結果表面意匠耐久性の評価として, 耐傷つき試験と耐光性試験を実施した 評価サンプルには, バイオPC 開発品 ( 塗装レス品 ) と, 比較のために従来の塗装品と, 従来 PCの塗装レス品を用いた 評価結果をFig. 11に示す 従来 PC の塗装レス品では要求性能を満足することはできないが, バイオPC 開発品は, 従来の塗装品と同等の耐傷つき性と耐光性を実現できていることが確認できた 目標である従来塗装品を上回る質感を実現することができた Fig. 12 Evaluation Result 5. おわりに 本開発材料は, 三菱化学 ( 株 ) と共同で開発したものである 本技術は, 新型ロードスターのカップホルダーベゼルと用品のナンバープレートフォルダで既に採用している 新型 CX-9では, 内装意匠部品として, シフトパネル, カップホルダーベゼル, メーターフードベゼル, ドアスイッチパネル, リヤエアコンルーバーベゼル, 外装意匠部品として, セールガーニッシュ, ドアピラーガーニッシュ,C ピラーガーニッシュに採用した 今後, 環境性 商品性 経済性 を高いレベルで成立できる本技術の適用を拡大させていく 更に, 際立つデザインに貢献できる新たな意匠の開発にも取り組んでいく Fig. 11 Durability Performance 3.3 基材機械物性基材機械物性として, 耐熱性 と 耐衝撃性 を挙げているが, これらの物性は一般的に背反することが知られている そこで, 耐熱性 と 耐衝撃性 を両立させるために, 適用する部品の機能に併せた物性のバランス取りを行った 具体的には, 本開発材料の組成をコントロールすることで, 耐熱性 と 耐衝撃性 を両立させた 参考文献 (1) 三菱化学 : 新規バイオエンプラ DURABIO, http://www.m-kagaku.co.jp/grproduct/company /mcc/sustainable/product/1194236_4306.html?categ ory=plastics(2015) 著者 4. 結果 材料からのアプローチとして バイオPCの材料組成の最適化, 工法からのアプローチとして バイオPCの成形方法の最適化 を行うことで, 表面意匠性 表面意匠耐久性 基材機械物性 の要求性能を成立させることができた (Fig. 12) 特に 表面意匠性 については, 一原洋平 -82-