科研費計画調書書き方講座 ( 挑戦的研究 ) 令和元年 8 月 22 日 ( 木 ) 工学院 間中孝彰内 2673, manaka@ome.pe.titech.ac.jp
挑戦的研究について 2
挑戦的研究とは? 挑戦的研究 ( 開拓 萌芽 ) は 斬新な発想に基づき これまでの学術の体系や方向を大きく変革 転換させることを志向し 飛躍的に発展する潜在性を有する一人又は複数の研究者で組織する研究計画 (( 萌芽 ) については 探索的性質の強い あるいは芽生え期の研究計画も含む ) を対象 ( 参考 ) 科学技術 学術審議会学術分科会研究費部会挑戦的研究に対する支援強化に関する作業部会による H28.8 の報告 学術に変革をもたらす大胆な挑戦を促すため 現行の 挑戦的萌芽研究 (~500 万円 ) を発展させ より長期的かつ大規模な支援を可能化 新種目 挑戦的研究 (~2000 万円 ) を創設 平成 29 年度助成から 3
挑戦的研究とは? 研究期間と応募総額挑戦的研究 ( 開拓 ) 3~6 年間 500 万円以上 2,000 万円以下挑戦的研究 ( 萌芽 ) 2~3 年間 500 万円以下 審査区分と審査方式審査区分 : 中区分及び特設審査領域審査方式 : 総合審査 ( 書面審査及び合議審査 ) 交付内定が少し遅く 7 月上旬 中区分で審査をするのは 挑戦的研究と基盤 A 挑戦的研究における重複制限新たに 開拓 に申請する場合 意外と重複制限が厳しい基盤 S 基盤 A 以外は要注意! 新たに 萌芽 に申請する場合は 基盤 C や若手研究 若手研究 B は要注意 詳しくは重複制限表をご参照ください 4
中区分とは? 大区分 :11 区分 ( 基盤 S) 中区分 :65 区分 ( 基盤 A 挑戦的研究 ) 小区分 :305 区分 ( 基盤 B 基盤 C 若手 ) 一人あたりの審査員が担当する分野が広くなる 自分の専門から考えると 大区分 C ー中区分 19( 電気電子工学およびその関連分野 ) ー小区分 21050( 電気電子材料工学関連 ) 大区分 D ー中区分 29( 応用物理物性およびその関連分野 ) ー小区分 29010( 応用物性関連 ) 大区分 E ー中区分 35( 高分子 有機材料およびその関連分野 ) ー小区分 35030( 電気電子材料工学関連 ) 主分野 副分野 5
中区分とは? 例えば自分が所属する工学院では 電気電子系 情報通信系 システム制御系 の教員が審査する可能性 6
採択率について 挑戦的研究では予算の範囲で応募額を最大限尊重した配分を行っている 充足率は ( 開拓 ) で 99.5% ( 萌芽 ) で 96.8%(H30 実績 ) 7
審査について 8
審査の観点 ( 審査における評定基準等 から抜粋 ) 挑戦的研究 ( 開拓 萌芽 ) は 斬新な発想に基づき これまでの学術の体系や方向を大きく変革 転換させることを志向し 飛躍的に発展する潜在性を有する研究計画 (( 萌芽 ) については 探索的性質の強い あるいは芽生え期の研究計画を含む ) を支援することを目的としており 基盤研究 や 若手研究 などの研究種目とは明確に異なる性格を持ったものです 挑戦的研究 では 新しい原理や学理の発見 追求 学術の概念や体系の見直し 研究のブレークスルーをもたらすような 大きな発想の転換や斬新な方法論等の導入 といったこれまでの学術の体系や方向を大きく変革 転換させる潜在性を有している研究課題を対象としていますので 当該研究の 挑戦的研究 としての意義を重視した審査を行ってください また そうした 挑戦的研究 の実行可能性を確認する観点から これまでの研究歴と当該研究活動の内容等を見るなどして応募者の研究遂行能力を確認してください ただし 研究実績に関する記述がある場合は その多寡のみで判断することは避けてください 学振の web ページ 審査 評価について を 是非ご一読ください 9
審査の観点 ( 審査における評定基準等 から抜粋 ) 挑戦的研究 の審査においては 審査区分として中区分を適用するほか 審査区分表とは別に とりわけ学術的要請の高いと思われる領域を 特設審査領域 として必要に応じて時限設定します また 審査委員全員が全ての研究課題について書面審査を行った上で 同一の審査委員が合議審査の場で応募研究課題について幅広い視点から議論により審査する 総合審査 を実施します 研究課題に対する深い理解と徹底した議論によって 真に挑戦的と言える価値のある研究課題を見出すことができるよう 適切な評価を行ってください なお 応募件数が多数の場合は 全審査委員で書面審査を実施するのに適切な課題数に絞り込むために 事前の選考 ( プレスクリーニング ) を行います 事前の選考及び書面審査では 各研究課題について挑戦的研究としての妥当性等の個別の評定要素を考慮した上で 4 段階による相対的な総合評点を付すこととします 合議審査では書面審査における総合評点の素点等を適切に勘案して議論を行い 研究課題の採否及び研究費の配分額を決定します この際 応募者が 挑戦的研究 に十分取り組めるよう 応募額を最大限尊重した配分を行うこととします 10
審査の流れ 11
総合審査とは 12
審査の観点 ( 審査における評定基準等 から抜粋 ) 評定要素 (1) 挑戦的研究としての妥当性 これまでの学術の体系や方向を大きく変革 転換させる潜在性を有する研究課題であるか また ( 萌芽 ) において探索的性質の強い あるいは芽生え期の研究計画の場合には 挑戦的研究 としての可能性を有するか 本研究課題の遂行によって 将来的により広い学術 科学技術 産業 文化など 幅広い意味で社会に与えるインパクト 貢献の可能性が期待できるか 着想に至る背景と経緯が明確で それによって得られた研究構想は合理的か また ( 開拓 : 挑戦性の高い )( 萌芽 : 挑戦的な課題 ) 課題の設定であるか 13
審査の観点 ( 審査における評定基準等 から抜粋 ) 評定要素 (2) 研究目的及び研究計画の妥当性 研究目的は明確であり その研究目的を達成するため 研究計画は適切であるか (3) 研究遂行能力の適切性 ( 開拓 ) の場合 これまでの研究活動やその結果から見て 研究計画に対する高い遂行能力を有していると判断できるか 研究計画の遂行の前提となる研究施設 設備 研究資料等 研究環境の準備状況は適切か ( 萌芽 ) の場合 これまでの研究活動やその結果から見て 研究計画に対する遂行能力を有していると判断できるか 14
審査の観点 ( 審査における評定基準等 から抜粋 ) 総合評点 事前の選考 各研究課題について 上記 (1)~(3) の評定要素に着目しつつ 挑戦的研究としての適切性も考慮し 総合的な判断の上 別途示される評点分布に従って 書面審査に進める研究課題として優先度の高い順に評点 4 から 4 段階評価を行い 総合評点を付す 評点区分評点分布 4 10% 3 10% 2 10% 1 70% 利害関係のため判定不可ー 15
審査の観点 ( 審査における評定基準等 から抜粋 ) 書面審査 各研究課題の採択について 上記 (1)~(3) の評定要素に着目しつつ 挑戦的研究としての適切性も考慮し 総合的な判断の上 下表右欄に基づき別途示される評点分布に従って 4 段階評価を行い 総合評点を付す 研究費の応募 受入等の状況 欄 人権の保護及び法令等の遵守への対応 欄は 書面審査において付す総合評点には考慮しない 評点区分評点基準評点分布 S A B C 最優先で採択すべき 積極的に採択すべき 採択してもよい S~B に入らないもの 採択可能件数に応じて調整 ( 絶対審査? 相対審査?) - 利害関係があるので判定できない - 全ての研究課題について 当該研究課題の挑戦的研究としての長所と短所を中心とした審査意見を必ず記入 ( これまでの学術体系を云々 ) 16
審査の観点 ( 審査の手引きより ) 合議審査 優れた研究課題を選定するため 個々の研究課題について 学術的価値 特に挑戦的研究としての意義について議論を行う お互いの意見に対する率直な議論を納得いくまで行った上で 小委員会として採否を決定 ( 特に 各審査委員の評価が大きく異なる研究課題の審査にあたっては 十分に議論 ) 審査会では 書面審査における総合評点及び審査意見が 審査委員名等とともに審査資料として提示される 17
研究計画調書について 18
概要編 事前の選考では概要版のみ 書面審査及び合議審査では概要版を 除いた 本体を用いて審査する! 研究遂行能力を重視 19
概要編 学外秘/学内教職員限り 事前の選考では概要版のみ 書面審査及び合議審査では概要 版を除いた本体を用いて審査する 本文中で 概要編の図や記述を参照しても 審査員は見ることができない 実は概要編が一番大事 事前の選考では 3名の審査員が評価 書面審査 合議審査に進むためには 上位30 に入る必要がある 20
学外秘/学内教職員限り 概要編 一例 H29の申請書 少し項目が違う 現在の申請書 萌芽 は 1 研究目的および研究方法 応募者の研究遂行能力 2 挑戦的研究としての意義 本研究種目に応募する理由 を書かせている 1 の内容が60 程度 2 の内容が40 程度が良いのでは 1 では研究目的を多めに 研究背景等も 書く 研究に至った経緯があるはず 図を有効に使う 仮に 一目見て研究の概 要が分かるような図が書ければベスト 現在の学問体系をどのように変革できるか をできるだけ書く 幅広い分野の審査員が読みます 21
学外秘/学内教職員限り 概要編 一例 H29の申請書 少し項目が違う 挑戦的研究としての意義 が難しい どういう研究が挑戦的研究か ①新しい現象などを探索する研究 ②他の分野との融合研究 ①では その研究が完了したときに 何を明 らかにできるのか どのように展開できるの か を明確に書く ②では これまで申請者が行ってきた研究と 何が違い 異分野融合によって何が生まれ るのかを具体的に これまでの学術体系や方向を大きく転換でき るような研究を重視 単なるアプリケーション への研究を嫌う審査員もいる 審査コメント 応募者の研究遂行能力は 現在1 に移って いる 簡単に どのような支援を受けてきた か どのような論文誌に発表してきたかを書 けばよいのでは 22
学外秘/学内教職員限り 概要編 一例 H29の申請書 少し項目が違う 基本的な申請書の書き方は全ての種目共 通ですが 図を適宜使う ただ 図ばかりで文 が少ないのも敬遠される 強調するときは ボールドか下線が 良い 使いすぎはNG 箇条書きも有効な場合がある 印刷は白黒 webにはカラー版 研究のフローチャート 概要編のように記入箇所が少ない ときに有効 23
本体 (1. 研究目的および研究方法等 ) 開拓 研究遂行能力は別途書く欄がある 萌芽 計画の実現可能性についても書くと具体性が出る 24
本体 (2. 挑戦的研究としての意義 ) 開拓 萌芽 逆に言えば 開拓において 完全に芽生え期の研究は 25
本体 開拓 基本的には 申請内容に関連する これまでの研究活動をまとめる 業績リスト ( だけ ) を書くわけではない 文章 図を使って 研究をまとめながら 適宜自己の論文を参照する その際に どのような研究費でその研究を進めたのかを書く 26
まとめ Ⅰ これまでの学術の体系や方向を大きく変革 転換させる研究をターゲットとしています 審査は総合審査 中区分で審査されます 概要編と本文は 別々に使用されます 概要編によるスクリーニングに通過する必要がありますので 概要編は特に力を入れてください ( 分野外の先生にも ある程度はわかるように ) 特に挑戦的研究は 申請書に記載すべき内容が難しく 申請書の書き方に明確な正解はないと思います 27
まとめ Ⅱ 挑戦的研究は 重複制限があまりないため 申請しやすい種目と言えます ( 今年は 継続の基盤研究があるし という先生は 是非申請をご検討下さい ) それゆえ競争率が高く 10% 程度です よく練られた申請書は 審査員に響きます 早めにアイデア出しをすることをお勧めします また 昔埋もれたアイデアを再発掘してみてはいかがでしょう 以前 挑戦的研究に採択された先生であれば そこで得られた結果をもとに 開拓 に申請できるかもしれません ( ただ 重複制限は厳しいです ) 採択されなかった場合 もう一度申請書をよく練り直す もしくは中区分を変えるのも手かもしれません 28
ご清聴ありがとうございました