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1-1-2 新河岸水再生センター受変電設備再構築工事の 設計における留意点について 建設部設備設計課電気設計担当 第一平井利幸 1 はじめに東京の下水道は重要な都市インフラの一つであり 都市構造 環境の変化に柔軟に対応するなど 多くの役割を担っている 今後も より安心で快適な都民生活や都市活動を支えるためには 水再生センター ポンプ所の安定性や下水道機能の向上を一層進める必要がある 高度経済成長期以降の人口増加や産業集中に伴い 東京の社会資本整備の必要性が高まり とりわけ生活環境の改善を図るため下水道整備に強い要望が寄せられていた これを受け 当局は下水道の普及に力を入れてきたが 現在急速に整備したこれら施設の老朽化が進行している 中でも設備は 施設などの土木構造物に比べて耐用年数が短く老朽化が深刻さを増しており 設備機器の約 5 割が耐用年数を超過していることに加え 既設設備の中には技術的に陳腐化しているものもあることから 年々増加傾向にある老朽化した設備を計画的かつ効果的に再構築していく必要がある そして 稼働中の施設を再構築するには 設備停止期間や設置スペース等 多くの制約を受ける このため 設計に当たっては 将来構想 機器の選定 施工手順等について 十分検討を行うことが重要となる 本稿では 新河岸水再生センター受変電設備再構築工事を事例として 設計段階で検討した事項や 想定施工手順を報告する 2 設計条件 2.1 施設概要昭和 49 年に運用を開始した新河岸水再生センター ( 処理能力 705,000m 3 /d 以下 本センター という ) は 練馬 杉並 板橋各区の大部分及び中野 北 豊島 新宿各区の一部地域からの下水を処理し 新河岸川へ放流する また 板橋区の一部地域の雨水を吸揚し 新河岸川に放流する 下水を処理する過程で発生する汚泥は 浮間水再生センターから送られてくる汚泥とあわせ 本センター内の汚泥で処理する 2.2 本工事の必要性新河岸水再生センター受変電設備は 昭和 53 年の稼働後 37 年が経過し 設備再構築基本計画で定めた経済的耐用年数の 40 年を迎えようとしている また 本センター当初計画には無かった雨水貯留池や汚泥等 下水道ニーズの変化に基づく施設が徐々に増えたことに伴い設備容量が増加し 本センターが必要とする 43

受電量は増加している このため 今後の電力需要予測を踏まえ変圧器容量の見直しを行 う必要がある 本工事で 老朽化した設備の更新により安全性の向上と変圧器容量の見直しを図る 3 検討事項 3.1 受電方式本センターは 常時運転されている機器が広範囲に点在し機器点数が膨大である 停電などの事故に備えるため 既設と同様に 2 回線受電方式とする 2 回線受電方式として常用 予備線で受電し 各受電回路ごとに遮断器 断路器を設置した方式である 2CB(Circuit Breaker) 方式を採用する また 予備線に供給される電気である予備電力には 常時供給変電所から常時供給電圧と同電圧で供給を受ける予備線と常時供給変電所以外の変電所から供給を受ける予備電源がある 本センターは 速やかな復電を可能とするため無停電切替が可能な予備線とする 3.2 受電電圧本センターの需要電力は 表 -1 の受電電圧と東京電力の標準契約種別に示す契約電力 50,000kW 未満に該当する 現受電電圧は 標準受電電圧 66kV と異なる 154kV であるため再構築を行う上で 表 -2 に示す受電電圧の検討を行った 契約種別 契約電力 50kW 以上 500kW 未満 A 表 -1 受電電圧と東京電力の標準契約種別 高圧電力 B 2000kW 未満 10,000kW 未満 50,000kW 未満 特別高圧電力 受電電圧 6.6kV 6.6kV 22kV 66kV ( 標準電 圧 ) 50,000kW 以上 154kV( 現受電電 圧 ) 44

検討案メリットデメリット 案 1 受電電圧を 66kV に変更 適正な電圧とな り 受電設備にかか るコストが抑えら れる (154kV 対比 ) 地中配線となるの で雷対策が不要と なりコストが抑え られる 電力会社側の都合 で 地中線路を新設 する際 下水道幹線 と干渉し布設が困 難 表 -2 受電電圧の検討 案 2 受電電圧を 22kV に変更 過小な電圧とな り 受電設備にかか るコストが抑えら れる (154kV 対比 ) 地中配線となるの で雷対策が不要と なりコストが抑え られる 受電電圧 22kV に ついては電力会社 の供給エリア外 電力会社側の都合 で 地中線路を新設 する際 下水道幹線 と干渉し布設が困 難 案 3 現状通り 154kV 同じ建屋で更新 すれば電力会社の 工事が少なく 負 担金も安く済む 現東電鉄塔の建 替えが困難であ り 新鉄塔を建て るのも困難 同じ建屋で更新 すると施工性が悪 くなる 受電設備の価格 が高くなる 総合評価 表 -2 中の総合評価にあるように 本センターの受電電圧は現状通り 154kV とし 既設 建屋を利用して再構築を進める 3.3 機器選定オープンストラクチャ ( 図 -1) は 機器ごとに点検しやすいという利点はあるが 設置面積が大きいため広大な用地が必要となる また充電部を露出させた形状のため 感電の危険性がある 技術革新により受変電設備がオープンストラクチャから GIS(Gas Insulated Switchgear ガス絶縁開閉装置)( 図 -2) に移行していることから 受変電設備を GIS で再構築することで 省スペース化と安全性の向上が期待できる 本工事は 感電の危険性を排除し 限られたスペースの中で再構築をすることを目的に 現在の受変電設備の主流である GIS を選定した 45

3.4 配置計画 3.4.1 想定施工手順特高受変電設備の再構築に当たって 新特高受変電設備の GIS 及び主変圧器 の設置スペースを確保するため 別途工事 (STEP1) で既設の特高 線受変電設備を撤去する これにより1 回線運用になる時期が発生するため 関連工事と調整を取りながら全体工程に配慮し この時期ができるだけ短くなるように切替えを行っていく 同時に既設稼働エリア ( 充電エリア ) と新特高受変電設備 配電盤等の設置が干渉しないよう注意する これを実現するため以下に示す想定切替手順で施工を進めていく ここで概略単線結線図を図 -3 に 特高変電所平面図を図 -4 に示す 図 -1 オープンストラクチャ 図 -2 GIS 46

STEP1 新特高受変電設備 (GIS 及び主変圧器 ) の設置スペースを確保するため 母線連絡を切り離し 片回線分の撤去工事を先行して発注する 架空引込 線架空引込 線別途工事撤去 主変圧器 ( 既設 ) 20,000kVA 154/21kV 主変圧器 3 号 ( 既設 ) 20,000kVA 154/21kV 当初 3 バンクの計画 154kV 母線 本館 本館 22kV 母線 3kV 母線 STEP2 特高 線受変電設備を撤去後 空きスペースに新特高受変電設備を設置し 線に配線を切り替える 架空引込 線架空引込 線 154kVGIS 設置 特高変圧器設置 GIS 主変圧器 ( 既設 ) 20,000kVA 154/21kV 主変圧器 ( 再構築後 ) 24,000kVA 154/22kV 154kV 母線 本館 本館 22kV 母線 3kV 母線 図 -3 74 47

STEP3 既設 線を撤去し 新 22kV 盤及び新 3kV 盤 ( 別途工事施行 ) の再構築を 行う 既設 線撤去 架空引込 線 架空引込 線 変圧器 設置 22kV 盤及び 3kV 盤再構築 GIS 主変圧器 ( 再構築後 ) 24,000kVA 154/22kV 本館 本館 154kV 母線 22kV 母線 3kV 母線 STEP4 線を繋ぎ込み 工事完了 工事完了後の概略単線結線図を下記に示す 架空引込 線架空引込 線 GIS 主変圧器 ( 再構築後 ) 24,000kVA 154/22kV 主変圧器 ( 再構築後 ) 24,000kVA 154/22kV 154kV 母線 本館 本館 22kV 母線 3kV 母線 概略単線結線図 75 48

想定切替手順 施工前 ( オープンストラクチャ ) STEP3 既設 線撤去 新 22kV 盤 の再構築 線 21kV 線 3kV フィ 線 21kV 線 3kV フィ ーダ ーダ 新 22kV STEP1 母線連絡切り離し 新 22kV 盤設置 新 3kV 盤の再構築 線 21kV 線 3kV フィ 線 新 3kV 線 3kV フィ ーダ 盤 ーダ 新 22kV 盤 電路撤去 新 3kV 盤設置 既設 線の撤去 STEP4 本工事完了 (GIS) 線 21kV 線 3kV フィ 線 新 3kV 線消火 ーダ 盤 ボンベ室 線撤去 新 22kV 盤 STEP2 新特高受変電設備の設置 配線切替 線 21kV 線 3kV フィ ーダ 154kVGIS 設置 特高変圧器設置 仕切り壁設置 図 -4 特高変電所平面図 76 49

3.4.2 工事中の安全確保 ( 感電事故防止対策 ) 既設受変電設備を稼働させながら再構築を行う上で 特に注意が必要な点は 以下の 2 点になる 1 点目は受電電圧 154kV という高電圧に伴う危険性である 154kV の高電圧だと電線に直接触れなくても空気の絶縁破壊による感電の危険性があるため 十分な離隔距離をとる必要がある 2 点目はオープンストラクチャによる危険である 充電部を露出させた形状 ( オープンストラクチャ ) のため 充電部に触れ感電する危険性が高い 上記の危険を解消するため安全確保を図る 154kV 程の高電圧な裸母線に装着するような絶縁用防具は無いため 離隔距離 8m 以上 ( 東電内規 ) を確保して作業をする必要がある 充電部を触れるような危険性を伴う作業を行う場合 電力会社では 設備及び人身保護から全停電を基本としている 以上のことから基本的には 活線の 154kV である 線と近接しなければならない作業等は 全停電とし安全を確保する しかし 本センターを運用しながら工事のため全停電は一時的にしかできない このため絶縁用の仮壁を設置し 感電事故の予防に努める 4 まとめ本センターの標準受電電圧は 66kV であるが 表 -2 による検討の結果から既設建屋を利用して受電電圧 154kV で再構築を進めることとした また 新たな特高変電所を別の場所に建設できるのであれば 最初から十分な安全性と施工性を確保できるが 既設建屋内での再構築は 既設稼働エリア ( 充電エリア ) と新特高受変電設備 配電盤の設置が干渉しないよう切替えを行っていく必要がある こうした様々な制約条件を踏まえて設計を行わなければならなかったが 安全に施工可能な設計を最大限考慮できたと考えている 受電電圧 154kV の特高受変電設備の再構築は 平成 20 21 年度に砂町水再生センターで行われているが 同一室内での作業は今回工事が当局初であり 今後同じ建屋内での再構築を行う際に参考としていただければ幸いである 50