Microsoft Word - 【H29-5F】報文 修正版4

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6/10~6/16 今週前週今週前週 インフルエンザ 2 10 ヘルパンギーナ RS ウイルス感染症 1 0 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 8 10 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目 )

インフルエンサ 及び小児感染症の疾病別推移グラフ 平成 年 京都市 _ 本年 全国 _ 本年 京都市 _ 過去 5 年平均値 全国 _ 過去 5 年平均値 6 インフルエンザ 8 手足口病 RS ウイルス感染症

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今週前週今週前週 2/18~2/24 インフルエンザ ヘルパンギーナ 4 4 RS ウイルス感染症 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 7 4 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目

1 月号は以下の情報を掲載しています 1. 茨城県感染症発生動向調査事業に基づく試験検査 検出状況 1) 全数把握疾患 2) 病原体定点依頼検査その他の検査 3) 集団 ( 施設や学校等 ) 事例 月別検出件数 1) 三類 四類 五類 ( 全数把握 ) 2) 五類 ( 定点 ) その他の検査 3)

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鹿児島県感染症発生動向調査事業 ( 内容に関するお問い合わせ : 健康増進課感染症保健係 ) 感染症のホームページアドレス 第 20 週の手足口病の定点当た

Microsoft Word - WIDR201839

熊本県感染症情報 ( 第 14 週 ) 県内 165 観測医の患者数 (4 月 4 日 ~4 月 10 日 ) 今週前週今週前週 インフルエンザ 百日咳 0 0 RS ウイルス感染症 10 8 ヘルパンギーナ 6 5 咽頭結膜熱 A 群溶血性連鎖球菌咽頭炎 感染性胃腸炎

Microsoft Word - 【要旨】_かぜ症候群の原因ウイルス

熊本県感染症情報 ( 第 31 週 ) 県内 170 観測医の患者数 (7 月 28 日 ~8 月 3 日 ) 今週前週今週前週 インフルエンザ 0 1 百日咳 0 0 RS ウイルス感染症 7 0 ヘルパンギーナ 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎

インフルエンサ 及び小児感染症の疾病別推移グラフ 平成 年 京都市 _ 本年 全国 _ 本年 京都市 _ 過去 5 年平均値 全国 _ 過去 5 年平均値 6 インフルエンザ 8 手足口病 RS ウイルス感染症.6 伝染性紅斑 りんご病

鹿児島県感染症発生動向調査事業 感染症のホームページアドレス 咽頭結膜熱の報告数は, 前週と同数の 59 人 ( 定点当たり 報告数 1.09) でした 保

疾患名 平均発生規模 ( 単位 ; 人 / 定点 ) 全国 県内 前期 今期 増減 前期 今期 増減 県内の今後の発生予測 (5 月 ~6 月 ) 発生予測記号 感染性胃腸炎 水痘

定点報告疾患 ( 定点当たり報告数の上位 3 疾患の発生状況 ) (1) インフルエンザ 第 51 週のインフルエンザの報告数は 1025 人で, 前週より 633 人多く, 定点当たりの報告数は であった 年齢別では,10~14 歳 (240 人 ),7 歳 (94 人 ),8 歳 (

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Microsoft Word - WIDR201826

インフルエンサ 及び小児感染症の疾病別推移グラフ 平成 9 年 京都市 _ 本年 全国 _ 本年 京都市 _ 過去 5 年平均値 全国 _ 過去 5 年平均値 5 インフルエンザ 手足口病 RS ウイルス感染症.6 伝染性紅斑 りんご病

Ⅰ 滋賀県感染症発生動向調査事業の概要

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感染症発生動向調査 2019 年第 29 週 京都市感染症週報京都市感染症情報センター ( 京都市衛生環境研究所 ) (7 月 15 日 ~7 月 21 日 ) 今週のコメント

インフルエンサ 及び小児感染症の疾病別推移グラフ 平成 年 京都市 _ 本年 全国 _ 本年 京都市 _ 過去 5 年平均値 全国 _ 過去 5 年平均値 6 インフルエンザ 8 手足口病 RS ウイルス感染症.5 伝染性紅斑 りんご病

別記様式 7-2 感染症発生動向調査 ( インフルエンザ定点 ) 調査期間平成年月日 月日医療機関名 : 性別 歳 歳以上 合計 ( 注 ) *

<< インフルエンザ >> 区別 別報告定点当り. 平成 3 年 2 月 5 日 ~ 3 月 日 [ 平成 3 年 ~ ] 鶴見神奈川 西 中 南 港南保土ケ谷 旭 磯子金沢港北 緑 青葉都筑戸塚 栄 泉 瀬谷 定点数

<< インフルエンザ >> 区別 別報告定点当り 2. 平成 3 年 月 29 日 ~ 3 月 4 日 [ 平成 3 年 ~ ] 鶴見神奈川 西 中 南 港南保土ケ谷 旭 磯子金沢港北 緑 青葉都筑戸塚 栄 泉 瀬谷 定点数

別記様式 7-2 感染症発生動向調査 ( インフルエンザ定点 ) 調査期間平成年月日 月日医療機関名 : 性別 0-5 ヶ月 6-11 ヶ月 1 歳 歳以上 合計 (

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クチ ワ ン で安心 予防接種は集団生活前に子育て応援券を有効活用 感染症発生動向速報 ( 平成 31 年第 10 週分 3 月 4 日 ~3 月 10 日 ) インフォメーション 予防接種をご確認くださいこの春から保育所 幼稚園に通い始めるお子さんも多いと思います 一般に乳幼児は感染症に対する抵抗

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第14巻第27号[宮崎県第27週(7/2~7/8)全国第26週(6/25~7/1)]               平成24年7月12日

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Weekly Report on Aomori Prefecture Infectious Disease 青森県感染症発生情報 (2019 年第 3 週 ) 発行青森県感染症情報センター (2019 年 1 月 24 日 ) ( 青森県環境保健センター : 担当微生物部 ) TEL

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10/3~10/9 今週前週今週前週 インフルエンザ 7 1 百日咳 1 0 RS ウイルス感染症 ヘルパンギーナ 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 急性出

Microsoft Word - 案1 week14-21

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第14巻第27号[宮崎県第27週(7/2~7/8)全国第26週(6/25~7/1)]               平成24年7月12日

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熊本県感染症情報 ( 第 50 週 ) 報告期間 インフルエンザ 水 痘 突発性発しん ヘルパンギーナ マイコプラズマ肺炎 クラミジア肺炎 ( ロタウイルス ) 第 43 週第 44 週第 45 週第 46 週第 47 週第 48 週第 49 週第 50 週第 47 週第 48 週第 49 週 7

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Ⅰ 滋賀県感染症発生動向調査事業の概要

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表 3 衛研番号 複数のウイルスが検出された検体 検出ウイルス採取月日診断名年齢性別住所咽頭糞便 Polio 1 Polio 2 H 腸重積 11 ヶ月女福島市 Adeno 2 Noro virus GⅡ H 急性腸

神戸市感染症発生動向調査週報 1 年 月 11 日作成 全数把握対象感染症発生状況 ( 三類感染症細菌性赤痢 ) 女 5 代 - 1 年 月 5 日 1 年 月 日 sonnei(d 群 ) 分離 同定による病原体の検出 ( 便 ) なし 接触感染 第 13 週報告患者の家族 全数把握対象感染症発生

顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

第14巻第27号[宮崎県第27週(7/2~7/8)全国第26週(6/25~7/1)]               平成24年7月12日

A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 第 50 週の報告数は 前週より 39 人減少して 132 人となり 定点当たりの報告数は 3.00 でした 地区別にみると 壱岐地区 上五島地区以外から報告があがっており 県南地区 (8.20) 佐世保地区 (4.67) 県央地区 (4.67) の定点当たり報告数は

Ⅰ 第 30 週の発生動向 (2017/7/24~2017/7/30) 1. 手足口病については むつ保健所管内で警報が発令されました 東地方 + 青森市保健所管内 弘前保健所管内 上十三保健所管内で警報が継続しています 三戸地方 + 八戸市保健所管内では 定点当たり報告数の増加が続いており 警報レ

Microsoft Word - 感染症週報

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横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 月別届出状況 該当なし 三類感染症月別届出状況 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月計 細菌性赤痢

Microsoft PowerPoint - 51w 梅毒

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インフルエンサ 及び小児感染症の疾病別推移グラフ 平成 年 京都市 _ 本年 全国 _ 本年 京都市 _ 過去 5 年平均値 全国 _ 過去 5 年平均値 6 インフルエンザ 8 手足口病 RS ウイルス感染症.5 伝染性紅斑 りんご病

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Microsoft Word - H24年報表紙・目次・合紙

Ⅰ 第 47 週の発生動向 (2017/11/20~2017/11/26) 1. 手足口病については 上十三保健所管内で警報が継続しています 県全体の定点当たり報告数が過去 5 年間の同時期と比較してかなり多くなっていますので注意が必要です 2. インフルエンザについては 東地方 + 青森市保健所管

全数把握対象疾患報告数 2018 年第 49 分類 対象疾患 茨城県 ( 診断日 ) 全国 ( 診断日 ) 年累計 49 年累計 1 類 エボラ出血熱 クリミア コンゴ出血熱 痘そう 南米出血熱 ペスト マールブルグ病 ラッサ熱 2 類 急性灰白髄炎 結核

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48小児感染_一般演題リスト160909

東京都インフルエンザ情報 第20巻 第20号

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第14巻第27号[宮崎県第27週(7/2~7/8)全国第26週(6/25~7/1)]               平成24年7月12日

平成 25 年 8 月号目次 トピックス 横浜市における 2012/2013 シーズンのインフルエンザウイルス流行株の解析 1 平成 24 年度薬事検査について 5 感染症発生動向調査 感染症発生動向調査委員会報告平成 25 年 7 月 6 情報提供 衛生研究所 WEB ページ情報 ( 平成 25

第51回日本小児感染症学会総会・学術集会 採択結果演題一覧

報告は 523 人 (14. 5) で前週比 9 と減少した 例年同時期の定点あたり平均値 * (16. ) の約 9 割である 日南 (37. 3) 小林(26. 3) 保健所からの報告が多く 年齢別では 1 歳から 4 歳が全体 の約 4 割を占めた 発生状況 ( 宮崎県 ) 定

全数把握対象疾患報告数 2016 年第 38 分類 対象疾患 茨城県 ( 診断日 ) 全国 ( 診断日 ) 年累計 38 年累計 1 類 エボラ出血熱 クリミア コンゴ出血熱 痘そう 南米出血熱 ペスト マールブルグ病 ラッサ熱 2 類 急性灰白髄炎 結核

Ⅲ 全把握対象疾患 結核 ( 二類全把握対象疾患 ): 青森市 5 人 上十三 人 むつ 人 (8 年計 :6 人 ) 腸管出血性大腸菌感染症 ( 三類全把握対象疾患 ): 弘前 人 (8 年計 :35 人 ) 急性脳炎 ( 五類全把握対象疾患 ): 弘前 人 (8 年計 :3 人 ) 百日咳 (

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高知県感染症発生動向調査(週報)

東京都感染症週報

全数把握対象疾患報告数 2018 年第 52 分類 対象疾患 茨城県 ( 診断日 ) 全国 ( 診断日 ) 年累計 52 年累計 1 類 エボラ出血熱 クリミア コンゴ出血熱 痘そう 南米出血熱 ペスト マールブルグ病 ラッサ熱 2 類 急性灰白髄炎 結核

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全数把握対象疾患報告数 2018 年第 50 分類 対象疾患 茨城県 ( 診断日 ) 全国 ( 診断日 ) 年累計 50 年累計 1 類 エボラ出血熱 クリミア コンゴ出血熱 痘そう 南米出血熱 ペスト マールブルグ病 ラッサ熱 2 類 急性灰白髄炎 結核

Ⅲ 全把握対象疾患 結核 ( 二類全把握対象疾患 ): 青森市 人 弘前 2 人 八戸市 人 上十三 3 人 (28 年計 :87 人 ) デング熱 ( 四類全把握対象疾患 ): 弘前 人 (28 年計 : 人 ) カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症 ( 五類全把握対象疾患 ): 八戸市 人 (2

感染症情報22週(週報)

東京都感染症週報

全数把握対象疾患報告数 206 年第 48 分類 対象疾患 茨城県 ( 診断日 ) 全国 ( 診断日 ) 年累計 48 年累計 類 エボラ出血熱 クリミア コンゴ出血熱 痘そう 南米出血熱 ペスト マールブルグ病 ラッサ熱 2 類 急性灰白髄炎 結核

Transcription:

平成 29 年京都市感染症発生動向調査事業における病原体検査成績 微生物部門 Detection of pathogenic agents in the Kyoto City Epidemiological Surveillance of Infectious Diseases in 217 Division of Microbiology Abstract Virological and bacteriological tests were performed using various specimens from patients in the Kyoto City Epidemiological Surveillance of Infectious Diseases in 217. Of 7 patients, 196 were positive for viral and/or bacterial agents. An annual detection rate of these agents was 8.2% of the surveyed patients. 19 strains of viruses and 6 strains of bacteria were detected in total. Seasonal Influenza viruses were detected from the patients with influenza mostly in February and December. Enteroviruses were detected during the period between early summer and autumn mostly in the patients with infectious gastroenteritis or Hand-foot-and-mouth disease. Various types of viruses were detected especially in the 1- year age group. Key Words Epidemiological Surveillance of Infectious Diseases 感染症発生動向調査,Influenzavirus インフルエンザウイルス,Enterovirus エンテロウイルス 1 はじめに本市では, 昭和 57 年度から京都市感染症発生動向調査事業を行っている 当所においては, 流行性疾病の病原体検索を行い, 検査情報の作成と還元を行うとともに, 各種疾病と検出病原体との関連について解析を行っている 本報告では, 平成 29 年 1 月から 12 月までに実施した病原体検査成績を述べる 2 材料と方法 ⑴ 検査対象感染症平成 29 年 1 月から12 月までに病原体検査を行った疾病は, 感染性胃腸炎, インフルエンザ, ヘルパンギーナ, 咽頭結膜熱, 手足口病, 感染性髄膜炎,A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎, 百日咳, 流行性耳下腺炎,RS ウイルス感染症及び不明熱の計 11 疾病であった 検査材料は, 市内 5 箇所の病原体定点 ( 小児科定点 箇所, インフルエンザ定点 5 箇所, 眼科定点 1 箇所, 基幹定点 1 箇所 ) の医療機関の協力により採取されたもので, 患者 7 名から, ふん便 21 検体, 鼻咽頭ぬぐい液 182 検体, 髄液 検体, 咽頭うがい液 2 検体, 血液 1 検体及び唾液 5 検体の計 7 検体について検査 を行った ⑵ 検査方法アウイルス検査検査材料を常法により前処理した後, 培養細胞 (FL ヒト羊膜由来細胞,RD-18S ヒト胎児横紋筋腫由来細胞,Vero アフリカミドリザル腎由来細胞 ) 及び ddy 系乳のみマウスを用いてウイルス分離を行った インフルエンザウイルスの分離には, 培養細胞 (MDCK イヌ腎由来細胞 ) を使用した 分離したウイルスの同定には, 中和反応, ダイレクトシークエンス法, 蛍光抗体法 (FA) 及びリアルタイム RT-PCR 法を用いた ロタウイルス, アデノウイルスの抗原検出には免疫クロマト法 (IC) を用い, ノロウイルスについてはリアルタイム RT-PCR 法により遺伝子検出を行った イ細菌検査検査材料を, 直接若しくは増菌培養後に分離培地に塗抹して分離を行った ふん便には, ドリガルスキー改良培地,SS 寒天培地,TCBS 寒天培地, エッグヨーク食塩寒天培地等を用いた 鼻咽頭ぬぐい液には,Q 培地及び羊血液寒 79

天培地 ( 溶血性レンサ球菌 ),CFDN 寒天培地 ( 百日咳菌 ) 等を用いた 髄液は, 遠心分離して得られた沈渣を羊血液寒天培地及びチョコレート寒天培地に塗抹して分離を行った 分離した細菌の同定は, 鏡検, 生化学的性状検査, 血清凝集反応,PCR 法等により行った 成績及び考察 ⑴ 月別病原体検出状況 ( 表 1) 各月の受付患者数は,12 月が最も多く 6 名で, 月が最も少なく 25 名であった 年間の受付患者 7 名のうち 196 名から 26 株の病原微生物を検出し, 受付患者当たりの検出率は 8.2% であった ウイルス検査では, 被検患者 88 名中 168 名から 19 株のウイルスを検出した 被検患者当たりのウイルス検出率は.% であった 検出ウイルスの季節推移をみると, コクサッキー A 群ウイルスやエコーウイルスなどのエンテロウイルスは, 夏場を中心に検出する傾向が本年も認められた アデノウイルスは,1 年を通して検出した ロタウイルスは 1~6 月に多く, ノロウイルスは, 月, 月, 9 月,1 月を除き 1 年を通して検出した インフルエンザウイルスは,11 月 ~12 月に AH1pdm9 型,2 月 ~ 月にA 型 ( 亜型不明 ), 月,12 月に B 型を検出した また,1 月,2 月,8 月,11 月に AH 型を検出した 細菌検査では, 被検患者 27 名中 名から 6 株の病原細菌を検出し, 患者当たりの検出率は 2.8% であった A 群溶血性レンサ球菌は 2 月 ~7 月,12 月に検出し, 下痢原性大腸菌は 月,1 月を除き 1 年を通して検出した ⑵ 感染症別病原体検出状況 ( 表 2) 受付患者数の多かった上位 6 疾病は, 感染性胃腸炎の 22 名, ヘルパンギーナの 8 名, インフルエンザの 7 名, 感染性髄膜炎の 7 名, 咽頭結膜熱の 1 名, RS ウイルス感染症の 28 名であった 感染性胃腸炎は, 受付患者数の 9.6%, インフルエンザ, ヘルパンギーナ, 咽頭結膜熱, 手足口病,A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎などの呼吸器疾患は,.5% を占めていた 主な感染症別の病原体検出率は, 手足口病が 72.%, RS ウイルス感染症が 6.%, インフルエンザが 59.5%, A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎が 56.%, 感染性胃腸炎が 9.%, 咽頭結膜熱が 8.7% であった 主な感染症についてウイルスの検出状況をみると, 感染性胃腸炎では, エンテロウイルス 9 種 19 株, アデノウイルス 種 11 株, ロタウイルス 18 株, ノロウイルス 1 種 6 株, インフルエンザウイルス 2 種 2 株の計 17 種 86 株を, ヘルパンギーナでは, エンテロウイルス5 種 9 株, アデノウイルス1 種 1 株, ノロウイルス1 種 1 株, 単純ヘルペスウイルス1 種 5 株を, インフルエンザでは, インフルエンザウイルス 種 22 株, ライノウイルス1 種 1 株を, 咽頭結膜熱では, アデノウイルス 種 12 株, ノロウイルス 1 種 1 株をそれぞれ検出した また, 細菌の検出状況をみると, 感染性胃腸炎では, 下痢原性大腸菌 29 株, 黄色ブドウ球菌 6 株, サルモネラ属菌 1 株の計 6 株を検出した A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎では,A 群溶血性レンサ球菌 9 株を検出した ⑶ 年齢階層別病原体検出状況 ( 表 ) 受付患者の年齢階層別分布をみると,1~ 歳が 178 名 (.7%) で最も多く, 次いで 5~9 歳の 85 名 (2.9%), 歳の 8 名 (2.%),1~1 歳の 55 名 (1.5%) で,15 歳以上は 6 名 (1.5%) であった 年齢階層別の受付患者当たりの検出率は, 歳が 2.2%( ウイルス 15 種 株, 細菌 2 種 6 株 ),1~ 歳が 5.%( ウイルス 19 種 9 株, 細菌 種 2 株 ),5~9 歳が52.9%( ウイルス1 種 株, 細菌 種 1 株 ),1 ~1 歳が.5%( ウイルス 7 種 15 株, 細菌 2 種 5 株 ), 15 歳以上が.%( ウイルス 1 種 1 株, 細菌 1 種 1 株 ) であった エンテロウイルスは,1~ 歳が最も多く 8 種 26 株を検出し, 次いで 歳で 9 種 1 株を検出した ロタウイルスは 1~ 歳で 1 株,5~9 歳で 8 株を検出し, アデノウイルスは 歳で 2 種 株,1~ 歳で 種 17 株,5~9 歳で 1 種 株,1~1 歳では検出しなかった インフルエンザウイルスでは,AH 型を最も多く検出し,5~9 歳で 6 株, 次いで 1~1 歳で 株,1~ 歳で 2 株, 歳で 1 株及び 15 歳以上で 株であった 次に,B 型を 歳で 2 株,1~ 歳及び 5~9 歳で各 1 株, また,AH1pdm9 型を 1~ 歳及び 5~9 歳で各 2 株を検出した A 型 ( 亜型不明 ) も,5~9 歳及び 1~1 歳で各 1 株検出した ⑷ 主な疾病と病原体検出状況ア感染性胃腸炎 ( 図 1-1, 図 1-2) 全国におけるウイルスの検出状況は,2~6 月にロ 8

検出件数(件 タウイルスが多数検出され, ノロウイルスは 1~6 月及び 11~12 月に検出数が多くなっていた 本市では, 臨床診断名が感染性胃腸炎の受付患者 22 名中 99 名から, ウイルス 86 株及び細菌 6 株を検出した ウイルスでは, ロタウイルスは全検出数 18 株を 1 ~6 月に検出し, ノロウイルスは GII を 6 株, エン テロウイルスは 19 株, アデノウイルスは 11 株をほぼ 1 年を通して検出した 細菌では, 下痢原性大腸菌 29 株, 黄色ブドウ球菌 6 株, サルモネラ属菌 1 株の計 6 株を検出した 1 8 6 エコーウイルス 型 エコーウイルス 6 型 エコーウイルス 7 型 エコーウイルス 9 型 エコーウイルス 18 型 コクサッキー Aウイルス 2 型 コクサッキー Aウイルス 6 型 コクサッキー Bウイルス 2 型 コクサッキー Bウイルス 型 アテ ノウイルス 2 型 アテ ノウイルス 型 アテ ノウイルス 5 型 アテ ノウイルス 1 型 ロタウイルス ノロウイルス GII インフルエンサ ウイルスAH1pdm9 インフルエンサ ウイルスAH 定点当たりの報告数 ( 全国暫定値 ) 定点当たりの報告数 ( 京都市暫定値 ) 出件数(件) 8 2 16 12 定点当たりの報告数(人)検 2 1 5 1 15 2 25 5 5 5 52 1 月 2 月 月 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 1 月 11 月 12 月 図 1-1 感染性胃腸炎患者における病原ウイルスの検出状況 ( 平成 29 年 ) 5 定) 下痢原性大腸菌 黄色ブドウ球菌 サルモネラ定点当たりの報告数 : 感染性胃腸炎 ( 全国 ) 12 1 5 1 15 2 25 5 5 5 52 定点当たりの報告数 : 感染性胃腸炎 ( 京都市 ) 9 2 6 1 1 月 2 月 月 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 1 月 11 月 12 月 図 1-2 感染性胃腸炎患者における病原細菌の検出状況 ( 平成 29 年 ) 15 点当たりの報告数(人)イヘルパンギーナ ( 図 2) ヘルパンギーナの流行は, 全国では 5 月から増加し始め,7 月 ( 第 週 ) にピークを示して以降なだらかに減少したが, 本市では, 月から増加し始め, 複数のピークを示しながら 12 月に減少した 臨床診断名がヘルパンギーナの受付患者数は 8 名で, そのうち 15 名から 16 株のウイルスと 1 株の細菌を検出した 病原体の内訳は, コクサッキー A 群ウイルス 5 型が 1 株,6 型が 株,1 型が 2 株, コクサッキー B 群ウイルス 型が 1 株, 単純ヘルペスウイルス 1 型が 5 株とエコーウイルス 9 型, アデ 81

ノウイルス 2 型, ノロウイルス GII, 下痢原性大腸菌が各 1 株であった ヘルパンギーナの原因とされるコクサッキーウイルスの検出比率を見ると, コクサッキー A 群ウイルス 6 型 (26.7%),1 型 (1.%),5 型 (6.7%), コクサッキー B 群ウイルス 型 (6.7%) で あった 全国の病原体検出状況を見ると, 平成 29 年 (217 年 ) は, コクサッキー A 群ウイルス 6 型 (.%),1 型 (2.1%),2 型 (7.5%),5 型 (2.%) の順であった 5 5 数(数(エコーウイルス 9 型 コクサッキー Aウイルス 5 型 コクサッキー Aウイルス 6 型 コクサッキー Aウイルス 1 型 コクサッキー Bウイルス 型 アテ ノウイルス 2 型 単純ヘルヘ スウイルス1 型 ノロウイルス GII 定点当たりの報告数 : ヘルパンギーナ ( 全国暫定値 ) 定点当たりの報告数 : ヘルパンギーナ ( 京都市暫定値 ) 定出 点件当た人)検 1 1 件)2 2 りの 報 告 1 5 1 15 2 25 5 5 5 52 1 月 2 月 月 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 1 月 11 月 12 月 図 2 ヘルパンギーナ患者における病原ウイルスの検出状況 ( 平成 29 年 ) ウインフルエンザ ( 図 -1, 図 -2) 本市感染症発生動向調査患者情報によると, 216/17(H28/29) シーズンでは, インフルエンザは平成 28 年 11 月の第 8 週に定点当たり報告数が 1. を超え, 流行期に入った 平成 29 年の第 週にピークを形成後緩やかに減少しながら,5 月の第 19 週に 1. を下回り終息した 全国でも 1~2 週の差はあるものの同様の流行の動きであった 本市でのインフルエンザウイルスの検出状況をみると, 平成 28 年 11 月の第 6 週から平成 29 年 2 月の第 8 週まで AH 型を 1 株及び 8 月の第 5 週に 1 株検出し, 月の第 16 週に B 型を 1 株検出した 全国的にも 216/17 シーズンは,AH 型の検出が多く約 8 割を占めておりAH 型が流行したことが分かる また, 本市感染症発生動向調査患者情報によると 217/18(H29/) シーズンでは, インフルエンザは, 平成 29 年 11 月の第 8 週に定点当たり報告数が 1. を超え, インフルエンザの流行期に入り, 平成 年の第 5 週にピークを形成後緩やかに減少しながら, 月の第 1 週に 1. を下回り終息した 全国でも 1 ~2 週の差はあるものの同様の流行の動きであった 本市でのインフルエンザウイルスの検出状況をみると, 平成 29 年 11 月の第 8 週から平成 年 5 月 の第 21 週まで AH1pdm9 型を 12 株検出し, 平成 29 年 11 月第 8 週から平成 年 月の第 1 週にAH 型を 12 株, 平成 29 年 12 月第 52 週から平成 年第 8 週にB 型を16 株検出した 全国的にも 217/18 シーズンは, シーズンはじめから A 型と B 型が同時流行した インフルエンザワクチンが任意接種となってから, ワクチンの接種率が低下している現状と抗体調査の結果からみても, 各流行型に対する市民の抗体保有率は低いものと考えられる 日本ではインフルエンザの非流行期と考えられていた夏季や, 海外渡航後に発症した者からの検出報告も増えており, 患者発生と流行ウイルスの型別とを迅速かつ的確に把握する感染症発生動向調査は, インフルエンザの流行予防対策のためにも, 今後ますます重要になると考えられる また, 抗ウイルス薬オセルタミビル及びペラミビルに耐性を持つインフルエンザウイルス A(H1N1)pdm9 型は全国で 1.6%(217/18 シーズン ) が確認されており, 当所でも耐性ウイルスの確認を実施するとともに, 今後の動向に注意していく必要がある 82

25 2 15 216/17(H28/29) シーズン A 型 ( 亜型不明 ) B 型 AH1pdm9 型 AH 型 A 型 ( 亜型不明 ) B 型定点当たりの報告数 : インフルエンサ ( 全国暫定値 ) 定点当たりの報告数 : インフルエンサ ( 京都市暫定値 ) AH1pdm9 数(件)出件 2, 11.1% 1, 5.6% 189,18.% 型 89,.% 1 AH 型 AH 型 15, 8.% 768, 77.7% 5 京都市 全国 15 B 型 75 6 5 定点当たりの報告数(人)検 6 5 5 521 5 1 15 2 25 5 9 月 1 月 11 月 12 月 1 月 2 月 月 月 5 月 6 月 7 月 8 月 図 -1 インフルエンザウイルスの検出状況 ( 平成 28 年 9 月 ~ 平成 29 年 8 月 ) 25 75 217/18(H29/) シーズン AH1pdm9 型 AH 型 A 型 ( 亜型不明 ) 2 B 型 6 定定点当たりの報告数 : インフルエンサ ( 全国暫定値 ) 点 B 型 AH1pdm9 型定点当たりの報告数 : インフルエンサ ( 京都市暫定値 ) 当 16,.% 12,.% 15 5 た出 AH1pdm9 型 B 型り件 29, 597, の数(22.7% 5.% 報告件)1 数(AH 型 AH 型人)検京都市 12,.% 全国 251, 2.% 5 15 6 5 5 1 5 1 15 2 25 5 9 月 1 月 11 月 12 月 1 月 2 月 月 月 5 月 6 月 7 月 8 月 図 -2 インフルエンザウイルスの検出状況 ( 平成 29 年 9 月 ~ 平成 年 8 月 ) エ咽頭結膜熱 ( 図 ) 本市における臨床診断名が咽頭結膜熱の受付患者数は 1 名で, そのうち 12 名からアデノウイルス 2 型を2 株, 型を8 株,5 型及び6 型を各 1 株, ノロウイルス GII を1 株の計 1 株検出した 本疾病の原因とされるアデノウイルス 1~7 型及び 11 型については, 被検患者全体で 2 型を 8 株, 型を 1 株,5 型を 株, 6 型を 1 株検出した 平成 29 年の全国の咽頭結膜熱におけるウイルスの検出状況では, アデノウイルス 型が最も多く 27.%, 次いで 2 型が 26.1%,1 型が 1.8%,5 型が 5.6%,5 型が 2.9% であった 8

6 アテ ノウイルス2 型 アテ ノウイルス 型 アテ ノウイルス5 型 アテ ノウイルス6 型 ノロウイルスGII 定点当たりの報告数 : 咽頭結膜熱 ( 全国暫定値 ) 定点当たりの報告数 : 咽頭結膜熱 ( 京都市暫定値 ) 生件数(件)2 1 2 定点当たりの報告数(人)発 1 5 1 15 2 25 5 5 5 52 1 月 2 月 月 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 1 月 11 月 12 月図 咽頭結膜熱患者発生状況と病原体検出状況 ( 平成 29 年 ) オ手足口病 ( 図 5) 平成 29 年は, 全国の定点当たりの報告数が 7 月の第 27 週に警報開始基準値の 5. を超え, 第 週にピーク (9.82) となり, 第 1 週に警報終息基準値の 2. を下回った 本市では, 定点当たりの報告数が第 27 週に 5. を超え, 第 28 週にピーク (6.67) となり, 第 5 週に 2. を下回った 手足口病を引き起こすウイルスとしては, コクサッキー A 群ウイルス 6 型,1 型,16 型, エンテロウイルス 71 型が代表に挙げられるが, 本市では, 臨床診断名が手足口病の受付患者数は 25 名で, そのうち 18 名から, コクサッキー A 群ウイルス6 型が11 株, 16 型が 株,1 型が2 株検出した また, 全国では, コクサッキー A 群ウイルス 6 型が 1,1 株 (57.7%),1 型が 59 株 (.%),16 型が 11 株 (6.%), エンテロウイルス 71 型が 199 株 (11.%), その他 71 株 (21.1%) の計 1,755 株で, 平成 28 年が 75 株, 平成 27 年が 1,5 株, 平成 26 年が 28 株, 平成 25 年度が 1,2 株, 平成 2 年が 76 株の検出となっており, 隔年での流行が見られる 5 エコーウイルス 6 型 コクサッキー Aウイルス 6 型 コクサッキー Aウイルス 1 型 コクサッキー Aウイルス 16 型 アテ ノウイルス 型 アテ ノウイルス 5 型 単純ヘルヘ スウイルス1 型 定点当たりの報告数 : 手足口病 ( 全国暫定値 ) 定点当たりの報告数 : 手足口病 ( 京都市暫定値 ) 出件数(件)2 6 15 12 9 定点当たりの報告数(人)検 1 1 5 1 15 2 25 5 5 5 52 1 月 2 月 月 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 1 月 11 月 12 月図 5 手足口病患者における病原ウイルス検出状況 ( 平成 29 年 ) 8

カ A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 ( 図 6-1, 図 6-2) 本市における臨床診断名が A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎の受付患者数は 16 名で, そのうち 9 名から A 群溶血性レンサ球菌を 9 株検出した T 血清型別検 出比率でみると, 劇症型溶血性レンサ球菌感染症事例における検出が多い T-1 型の検出率は, 全国で 29.5%, 本市で 22.2% であった T-, 8.7% T-6, 2.5% T-11,.8% T-25,.6% T-28, 1.2% その他, 1.7% 全国 T-1 29.5% T- 11.2% T-12 17.8% T-B26 15.% T 型別不能 6.6% 京都市 T-1 22.2% T- 11.1% T- 11.1% T-12 22.2% T-B26.% % 2% % 6% 8% 1% 図 6-1 A 群溶血性レンサ球菌の T 血清型別検出比率 ( 平成 29 年 ) 8 T1 型 T2 型 T 型 T 型 T12 型 6 定 TB26 型点定点当たりの報告数 :A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 ( 全国暫定値 ) 当定点当たりの報告数 :A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 ( 京都市暫定値 ) た生り件 2 の数(報告件)数(人)発 1 2 1 5 1 15 2 25 5 5 5 52 1 月 2 月 月 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 1 月 11 月 12 月図 6-2 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎の報告数と T 血清型別の病原体検出状況 ( 平成 29 年 ) ⑸ 検体別 検出方法別病原ウイルス検出状況 ( 表 ) エコーウイルスは, 全 21 株のうち,2 株が RD-18S 細胞で分離され,7 型の 1 株のみ Vero 細胞から分離された また, 型の 1 株については FL 細胞でも分離された コクサッキーウイルス A 群では,2 型の 2 株,6 型の 株及び 1 型の 2 株が RD-18S 細胞及び乳のみマウスで分離され,5 型の1 株,6 型の16 株,1 型の1 株及び 16 型の 株が乳のみマウスで分離された コクサッキーウイルス B 群では,2 型の 株が FL 細胞で分離され, 型の 2 株が FL 細胞及び Vero 細胞で分離された エンテロウイルス 71 型の 1 株は,RD-18S 細胞及び Vero 細胞で分離された アデノウイルスは,FL 細胞,RD-18S 細胞及び Vero 細胞でそれぞれ分離され, 一部は遺伝子検査によりウイルスの遺伝子が検出された インフルエンザウイルスは,22 株のうち 11 株が MDCK 細胞で分離され,11 株が遺伝子検査によってウイルス遺伝子を検出した 85

ロタウイルスは IC 法により抗原を検出し, ノロウイルスは遺伝子検査によりウイルス遺伝子を検出した ライノウイルス及びムンプスウイルスも, 遺伝子検査によりウイルス遺伝子を検出した 単純ヘルペスウイルスは,FL 細胞,RD-18S 細胞,Vero 細胞,MDCK 細胞, 乳のみマウスで分離された 培養細胞法によるウイルスの検査体制はほぼ確立されているが, 被検患者から採取した検体中に活性のあるウイルスが存在していることが必須条件となり, 採取後の温度や期間等の保管条件によっては失活し検出できなくなる また, 分離困難なウイルスも存在するといった欠点がある 感染症発生動向調査においても, 迅速な実験室診断が要請される傾向は年々ますます強まっており, 検出率と迅速性の向上を目指して, 培養細胞法と並行して可能な限り新たな検査技術の導入を図っていかなければならないと考える イルス 29 種類 19 株を検出した 細菌では, 被検患者 27 名中 名 (2.8%) から,A 群溶血性レンサ球菌, 黄色ブドウ球菌, サルモネラ属菌, 下痢原性大腸菌の細菌 6 株を検出した (2) 感染症別病原体の検出率は, 疾病の種類により異なり, 手足口病が最も高率で 72.%, 次いで RS ウイルス感染症の 6.%, インフルエンザの 59.5%, 感染性胃腸炎の 9.%, ヘルパンンギーナの 9.5%, 咽頭結膜熱の 8.7%, 流行性耳下腺炎の 7.5%, 感染性髄膜炎の 27.% であった () ウイルスでは, 初夏から秋季にかけてコクサッキー及びエコー等のエンテロウイルスを手足口病やヘルパンギーナ患者から検出した ノロウイルスは,1~2 月,5 月 ~8 月及び 11 月 ~12 月と, ほぼ 1 年を通して検出し, ロタウイルスは,1~6 月の冬季から春季にかけて多く検出した () 年齢階層別病原体検出状況では,1~ 歳の検出率が最も高く 5.% で, 次いで 5~9 歳の 52.9%, 歳の 2.2%,1 ~1 歳の.5%,15 歳以上の.% であった 受付患者数 まとめ (1) 京都市感染症発生動向調査事業における病原体検査 ( 定 では,1~ 歳が 178 名 (.7%) と最も多く, 多種多様の病 原体を検出した 点医療機関分 ) では, 受付患者 7 名のうち 196 名 (8.2%) から病原体を検出した ウイルスでは, 被検患者 88 名中 168 名 (.%) から, エコー, コクサッキー A 群 B 群, アデノ, ロタ, 単純ヘルペス, ノロ, インフルエンザ等のウ 86

表 1 月別病原体検出状況 ( 小児科, インフルエンザ, 眼科, 基幹定点 ) 平成 29 年 1 月 ~12 月検体採取月 1 月 2 月 月 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 1 月 11 月 12 月計病ふん便 15 1 1 15 29 2 2 18 1 15 1 2 21 鼻咽頭ぬぐい液 15 16 11 15 11 17 15 17 11 18 1 2 182 髄液 1 6 1 2 8 6 2 咽頭うがい液 1 1 2 血液 1 1 唾液 1 1 1 1 1 5 病原体検出患者数 15 17 12 12 25 18 19 22 11 1 16 19 196 7 被検患者数 1 26 2 8 2 27 5 88 検出患者数 1 1 11 1 21 16 15 2 7 1 1 17 168 患者当たりの検出率 (%) 6.9 6.7 8. 5. 59.5 8.6 8.7 62.9 9. 29. 59. 1. 8.2 (%) 患者当たりの検出率 (%) 1.9 5.8 7.8. 52.5 7.1 9.5 58.8 29.2. 51.9 7.8. エウエコー 型 1 1. エコー 6 型 1 1 1 12 1 16 6.8 エコー 7 型 1 1. エコー 9 型 1 1 2.8 エコー 18 型 1 1. コクサッキー A2 型 2 2.8 コクサッキー A5 型 1 1. コクサッキー A6 型 2 8 8 1 19 8.1 コクサッキー A1 型 1 1 2 1.7 コクサッキー A16 型 1 2 1. コクサッキー B2 型 1 1 1 1. コクサッキー B 型 2 2.8 エンテロ 71 型 1 1. アデノ 1 2 型 1 1 1 6 2.5 アデノ 型 1 1 1 1 1 1 1 1 11.7 アデノ 5 型 1 1 1 1 1.7 アデノ 6 型 1 1. アデノ 1 型 1 1 1 1. ロタウイルス 2 1 6 5 1 18 7.6 ノロウイルス GII 型 11 6 2 2 7 8 16.1 RS ウイルス 2 1 1 2 1 21 8.9 単純ヘルペスウイルス 1 型 1 1 1 2 5 2.1 ムンプスウイルス 1 2.8 エAH1pdm9 型 1 1.7 AH 型 7 1 1 12 5.1 A 型 ( 亜型不明 ) 1 1 2.8 B 型 1 1.7 ザイ同定困難ウイルス 1 1 2.8 小計 1 15 11 1 21 21 17 28 8 1 15 2 19 8.5 細被検患者数 17 12 1 16 26 25 2 1 17 1 11 17 27 検出患者数 1 5 6 5 患者当たりの検出率 (%) 17.6. 7.1 18.8 15. 2. 25. 5.7 2.5. 6. 2.5 2.8 A 群溶血性レンサ球菌 2 1 1 1 2 1 1 9.8 黄色ブドウ球菌 1 1 1 1 2 6 2.5 サルモネラ属菌 1 1. 下痢原性大腸菌 2 1 2 2 12.7 小 計 1 5 7 6 5 6 19.5 合 計 17 19 12 1 26 29 2 12 1 19 21 26 1. 総受付患者数 2 28 25 2 7 9 5 28 27 6 7 検査材料原体検出比率ンテロイライノウイルス B 1 1. アデノルスンンフル菌 87

受付患者数 22 7 8 1 25 7 16 2 8 28 1 25 7検査材料イルスンフザイルRS 疾病名感表 2 感染症別病原体検出状況 ( 小児科, インフルエンザ, 眼科, 基幹定点 ) 平成 29 年 1 月 ~12 月 ザ炎インサ球菌咽頭A群溶血性レヘルパンギー感染性髄膜炎流行性耳下腺計(重複有)計(重複無)咽頭結膜熱ンフルエン染性胃腸手足口病ウイルス感百日咳その他染症ナふん便 195 2 7 1 1 1 2 221 21 鼻咽頭ぬぐい液 11 7 26 1 1 2 2 29 195 182 髄液 6 2 2 1 1 9 咽頭うがい液 1 1 2 2 血液 1 1 1 唾液 5 5 5 病原体検出患者数 99 22 15 12 18 1 9 18 26 196 炎炎7 病原体検出比率(%)患者当たりの検出率 (%) 9. 59.5 9.5 8.7 72. 27. 56.. 7.5 6.. 8.5 8.2 ウムンプスウイルス 2 2 2.8 エン患者当たりの検出率 (%).1 59.5 9.5 8.7 72. 27... 7.5 6...8. エンテロライノウイルス B 1 1 1. アデノ被検患者数 22 7 8 1 25 2 1 8 28 1 6 88 検出患者数 81 22 15 12 18 9 18 178 168 エコー 型 1 1 1. エコー 6 型 5 1 1 19 16 6.8 エコー 7 型 1 1 1. エコー 9 型 1 1 2 2.8 エコー 18 型 1 1 2 1. コクサッキー A2 型 2 2 2.8 コクサッキー A5 型 1 1 1. コクサッキー A6 型 11 2 21 19 8.1 コクサッキー A1 型 2 2 1.7 コクサッキー A16 型 1. コクサッキー B2 型 1. コクサッキー B 型 1 1 2 2.8 エンテロ 71 型 1 1 1. アデノ 2 型 1 2 1 8 6 2.5 アデノ 型 2 8 1 2 1 11.7 アデノ 5 型 2 1 1 1.7 アデノ 6 型 1 1 1. アデノ 1 型 1. ロタウイルス 18 18 18 7.6 ノロウイルス GII 型 6 1 1 8 8 16.1 RS ウイルス 21 21 21 8.9 単純ヘルペスウイルス 1 型 5 1 6 5 2.1 AH1pdm9 型 1 5 1.7 AH 型 1 12 1 12 5.1 A 型 ( 亜型不明 ) 2 2 2.8 B 型 1.7 同定困難ウイルス 1 1 2 2.8 細被検患者数 179 1 1 1 16 2 216 27 検出患者数 1 1 9 患者当たりの検出率 (%) 18.. 25... 7.7 56..... 2. 2.8 A 群溶血性レンサ球菌 9 9 9.8 小計 86 2 16 1 2 17 1 1 5 21 2 19 8.5 菌黄色ブドウ球菌 6 6 6 2.5 サルモネラ属菌 1 1 1. 下痢原性大腸菌 29 1 1 1 12.7 小計 6 1 1 9 7 6 19.5 合計 122 2 17 1 2 18 1 1 5 25 26 1. 88

受付患者数 8 178 85 55 6 7検査材料原体検出比率イルスデノンフザイル菌 表 年齢階層別病原体検出状況 ( 小児科, インフルエンザ, 眼科, 基幹定点 ) 平成 29 年 1 月 ~12 月 病ふん便 7 95 5 2 21 年齢 歳 1~ 歳 5~9 歳 1~1 歳 15 歳以上 計 鼻咽頭ぬぐい液 85 1 182 髄液 17 1 9 咽頭うがい液 1 1 2 7 血液 1 1 唾液 1 2 2 5 病原体検出患者数 5 95 5 19 2 196 被検患者数 78 17 79 5 5 88 検出患者数 2 82 8 15 1 168 ンテロライノウイルス B 1 1. アエコー 型 1 1. エコー 6 型 2 11 16 6.8 エコー 7 型 1 1. エコー 9 型 2 2.8 エコー 18 型 1 1. コクサッキー A2 型 2 2.8 コクサッキー A5 型 1 1. コクサッキー A6 型 1 1 1 19 8.1 コクサッキー A1 型 1 1.7 コクサッキー A16 型 2 1 1. コクサッキー B2 型 1 1 1 1. コクサッキー B 型 1 1 2.8 エンテロ 71 型 1 1. アデノ 2 型 6 2.5 アデノ 型 7 11.7 アデノ 5 型 1.7 アデノ 6 型 1 1. アデノ 1 型 1. 患者当たりの検出率 (%) 2.2 5. 52.9.5. 8.2 患者当たりの検出率 (%) 1. 7. 8.1 28. 2.. エウロタウイルス 1 8 18 7.6 ノロウイルス GII 型 8 2 6 8 16.1 RS ウイルス 11 1 21 8.9 単純ヘルペスウイルス 1 型 2 5 2.1 ムンプスウイルス 1 1 2.8 エンAH1pdm9 型 2 2 1.7 AH 型 1 2 6 12 5.1 A 型 ( 亜型不明 ) 1 1 2.8 B 型 2 1 1 1.7 同定困難ウイルス 2 2.8 計 9 15 1 19 8.5 細被検患者数 88 5 7 27 検出患者数 6 21 1 5 1 患者当たりの検出率 (%) 17.6 2.9 22.2 1.5. 2.8 A 群溶血性レンサ球菌 2 2 1 9.8 小 黄色ブドウ球菌 1 1 6 2.5 サルモネラ属菌 1 1. 下痢原性大腸菌 2 2 5 12.7 小 計 6 2 1 5 1 6 19.5 合 計 6 11 5 2 2 26 1. 89

検出ウイルス ふん便 検体の種類 検出 鼻咽頭 件数 表 検出方法別病原ウイルス検出状況 培養細胞 乳のみマウス 平成 29 年 1 月 ~12 月 EIA 法 IC 法 遺伝子検査 エコー 型 1 1 1 1 エコー 6 型 8 6 2 16 16 エコー 7 型 1 1 1 エコー 9 型 2 2 2 エコー 18 型 1 1 1 コクサッキー A2 型 1 1 2 2 2 コクサッキー A5 型 1 1 1 コクサッキー A6 型 6 1 19 19 コクサッキー A1 型 2 コクサッキー A16 型 コクサッキー B2 型 コクサッキー B 型 1 1 2 2 2 エンテロ 71 型 1 1 1 1 ノアデノ 5 型 2 2 1 アデノ 2 型 6 6 2 1 アデノ 型 1 1 11 7 2 アデノ 6 型 1 1 1 アデノ 1 型 1 2 ロタウイルス 18 18 18 ノロウイルス GII 型 8 8 8 RS ウイルス 21 21 1 1 17 単純ヘルペスウイルス 1 型 5 5 5 5 5 1 ザA 型 ( 亜型不明 ) 2 2 2 AH1pdm9 型 2 2 AH 型 12 12 6 6 B 型 1 同定困難ウイルス 2 2 1 1 1 合計 91 96 19 5 12 12 2 18 75 ぬぐい液髄液その他 FL RD-18S Vero MDCK エンテライノウイルス B 1 1 1 アデムンプスウイルス 1 1 2 2 インフルエン 9