テーマ 5 労働時間 71

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(3) 始業 終業時刻が労働者に委ねられることの明確化裁量労働制において 使用者が具体的な指示をしない時間配分の決定に始業及び終業の時刻の決定が含まれることを明確化する (4) 専門業務型裁量労働制の対象労働者への事前通知の法定化専門業務型裁量労働制の導入に当たり 事前に 対象労働者に対して 1 専

2 就業規則について 労働条件は個別に労働者に説明しているため 就業規則は作成していない 常時雇用している労働者が 10 人未満の場合は除く 就業規則について 使用者が一方的に作成しており 労働者からの意見は聴いていない 就業規則を作っているものの 担当者が管理しており 労働者が自由に見られるように

学生アルバイトの労働条件に関する自主点検表 労働基準関係法令に違反する事項 労働条件の明示 1 アルバイトを雇い入れる際 賃金や労働時間などの労働条件を記載した書面を交付していますか 解説 労働条件を明確にすることは全てのトラブル防止の基本です そこで 労基法では 労働者との間で労働契約を締結するに

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025 of 訪問介護員のための魅力ある就労環境づくり

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改正労働基準法

労働基準関係法令に違反するおそれがある事項 労働時間 15 タイムカード等の客観的な記録から確認するなどにより 実際に働いた時間を適正に把握していますか 16 準備や片付けの時間 ( 学習塾等の場合 授業以外に行う質問対応 報告書の作成等に要した時間 ) を労働時間としていますか 賃金 17 賃金を

労働条件 の明示 1 労働条件通知書を 渡してスッキリ もらってハッキリ 働くときの条件 なかでも働く期間や仕事の内容 賃金額など主 要なものはきちんと説明を受けて 書面(労働条件通知書)で渡す もらうのがルール 2 労働契約は口約束でも成立します でも それではいずれ 言 った 言わない 聞いてな

36協定で定める時間外労働及び休日労働 について留意すべき事項に関する指針 (労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針)

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士業PDF

中央教育審議会(第119回)配付資料

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申出が遅れた場合は 会社は育児 介護休業法に基づき 休業開始日の指定ができる 第 2 条 ( 介護休業 ) 1 要介護状態にある対象家族を介護する従業員 ( 日雇従業員を除く ) 及び法定要件を全て満たした有期契約従業員は 申出により 介護を必要とする家族 1 人につき のべ 93 日間までの範囲で

36協定で定める時間外労働及び休日労働 について留意すべき事項に関する指針 (労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針)

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基発第 号

必要とする家族 1 人につき のべ 93 日間までの範囲内で 3 回を上限として介護休業をすることができる ただし 有期契約従業員にあっては 申出時点において 次のいずれにも該当する者に限り 介護休業をすることができる 一入社 1 年以上であること二介護休業開始予定日から 93 日を経過する日から

1 適用範囲 対象事業場 対象となる事業場は 労働基準法のうち労働時間に係る規定 ( 労働基準法第 4 章 ) が適用される 全ての事業場です 対象労働者 対象となる労働者は 労働基準法第 41 条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者 ( 事業場外労働を行う者にあっては みなし労働時間制

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規定例 ( 育児 介護休業制度 ) 株式会社 と 労働組合は 育児 介護休業制度に関し 次 のとおり協定する ( 対象者 ) 育児休業の対象者は 生後満 歳に達しない子を養育するすべての従業員とする 2 介護休業の対象者は 介護を必要とする家族を持つすべての従業員とする 介護の対象となる家族の範囲は

( イ ) 従業員の配偶者であって育児休業の対象となる子の親であり 1 歳 6か月以降育児に当たる予定であった者が死亡 負傷 疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合 6 育児休業をすることを希望する従業員は 原則として 育児休業を開始しようとする日の1か月前 (4 及び5に基づく1 歳

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貨物自動車運送事業のモデル三六協定およびその届 様式第 9 号 ( 第 17 条関係 ) 時間外労働休日労働に関する協定届 事業の種類 事業の名称 事業の所在地 ( 電話番号 ) 貨物自動車運送事業 新宿運輸株式会社 新宿区西新宿 ( ) 延長することができる時間

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09資料4-3<統合版> (300216差し替え)雇用型テレワークガイドライン(案)

4-1 育児関連 育児休業の対象者 ( 第 5 条 第 6 条第 1 項 ) 育児休業は 男女労働者とも事業主に申し出ることにより取得することができます 対象となる労働者から育児休業の申し出があったときには 事業主は これを拒むことはできません ただし 日々雇用される労働者 は対象から除外されます

第 11 条育児休業を終了して復帰する教職員の年次有給休暇については 理事長が別に定める ( 育児短時間勤務 ) 第 12 条小学校就学の始期に達するまでの子と同居し 当該子を養育する教職員が申し出た場合には 当該子がその始期に達するまで 当該教職員の所定勤務時間を 6 時間とすること ( 以下 育

2. 使用者は 労働者を解雇しようとする場合においては 少なくとも30 日前にその予告をしなければならない 30 日前に予告をしない使用者は 30 日分以上の平均賃金を支払わなければならない 但し 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基づ

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( 休憩時間 ) 第 3 条 任命権者は 1 日の勤務時間が 6 時間を超える場合においては 少な くとも45 分 8 時間を超える場合においては 少なくとも1 時間の休憩時間を それぞれ所定の勤務時間の途中に置かなければならない 2 前項の休憩時間は 職務の特殊性又は当該公署の特殊の必要がある場合

目 次 第 1 条 目的及び内容 1 第 2 条 育児休業 2 第 3 条 パパ ママ育休プラス 2 第 4 条 1 歳 6 か月までの育児休業 2 第 5 条 育児休業の申出の手続等 3 第 6 条 パパ休暇の特例 3 第 7 条 介護休業 3 第 8 条 介護休業の申出の手続等 4 第 9 条

育児 介護休業規程 第 1 章 目的 第 1 条 ( 目的 ) 本規程は社員の育児 介護休業 育児 介護のための時間外労働および深夜業の制限並びに育児 介護短 時間勤務等に関する取り扱いについて定めるものである 第 2 章 育児休業制度 第 2 条 ( 育児休業の対象者 ) 1. 育児のために休業す

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★HP版調整事件解説集h28[023]

の場合は 届出書にも労働者の代表者が署名又は記名押印し その協定書の写しを事業場に 3 年間保存しておく必要があります (3) 届出部数届出書は 2 部提出してください 受付印を押し 1 部を事業場の控分としてお返しします (4) 届出はいつまでに行うのか 36 協定は届出をもって有効になりますので

第 1 章育児休業 第 1 条 ( 対象者 ) 生後 1 年未満 ( 第 5 条による育児休業の場合は 1 歳 6 ヶ月 ) の子と同居し養育する従業員であって 休業後も引き続き勤務する意思のある者は 育児のための休業をすることができる ただし 日々雇用者 期間雇用者 ( 申出時点において雇用期間が

ただし 日雇従業員 期間契約従業員 ( 法に定める一定の範囲の期間契約従業員を除く ) 労使協定で除外された次のいずれかに該当する従業員についてはこの限りではない (2) 週の所定労働日数が2 日以下の従業員 (3) 申出の日から93 日以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員 2 要介護状態に

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指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

均衡待遇・正社員化推進奨励金 支給申請の手引き

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制度名 No. 1 ( 働 1) フレックスタイム制度 対象者: 営業職の正社員 労働時間の清算期間: 毎月 1 日から末日までの1か月 1 日の所定労働時間は 8 時間 清算期間内の総労働時間: 1 日あたり8 時間として 清算期間中の労働日数を乗じて得られた時間数 ただし 清算期間内を平均し1

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育児のための両立支援制度 制度の概要 ( イメージ ) 出生 1 歳 1 歳 6か月 3 歳就学 パパ ママ育休プラス 1 歳 6 か月延長 ( 子の年齢 ) ⑴ 育児休業 Ⅰ Ⅱ 努力義務 ⑵ 短時間勤務制度 ⑶ 所定外労働の免除 努力義務 努力義務 ⑷ 子の看護休暇 ⑸ 法定時間外労働の制限 ⑹

年金の日 をご存じですか 国民一人ひとり ねんきんネット 等を活用しながら高齢期の生活設計に思いを巡らす日として 厚生労働省が 2014 年度から 11 月 30 日 ( いいみらい ) の日としたそうです 掲載内容に関してご不明点等があれば お気軽に当事務所までお問い合わせください

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就 業 規 則

(発表用)260819 求人内容及び労働条件の適正化発表資料(案)

て 労働者派遣契約書に休業手当等の支払いに要する費用を確保するための費用負担等に関する事項を記載していないもの (1 派遣元事業所 ) ウ派遣料金額の明示派遣労働者に対して 書面の交付 ファクシミリを利用してする送信又は電子メールの送信の方法により労働者派遣に関する料金の額を明示していないもの (5

Microsoft PowerPoint 【別紙】外国人技能実習生の実習実施機関に対する監督指導、送検の状況(平成29年)

4-1 育児関連 休業期間を有給にするか 無給にするかは 就業規則等の定めに従います また 雇用保険に加入している労働者には 国から給付金が支給されます (P106 参照 ) 産前産後休業期間中及び育児休業期間中は 労働者 使用者とも申請により社会保険料が免除になります 育児休業の対象者 ( 第 5

2 賞与 3 手当 4 福利厚生 5 その他 第 4 派遣労働者 1 基本給 2 賞与 3 手当 4 福利厚生 5 その他 第 5 協定対象派遣労働者 1 賃金 2 福利厚生 3 その他 第 1 目的 この指針は 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 ( 平成 5 年法律 -

平成 27 年改正の概要 ( サマリー ) 一般労働者派遣事業 ( 許可制 ) 特定労働者派遣事業 ( 届出制 ) 26 業務 期間制限なし 26 業務以外 原則 1 年 意見聴取により最長 3 年まで 規定なし 規定なし 1. 許可制への統一 2. 派遣契約の期間制限について すべての労働者派遣事

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プロフェッショナル制度 ) 創設の4つである なかでも 高度プロフェッショナル制度は過重労働を招くとして批判も大きく 今後 国会で改正労働基準法案が審議される際には 創設の是非や制度設計をめぐって大きな議論が生じることが予想される 2. 高度プロフェッショナル制度の特徴 (1) 幅広い適用除外の範囲

社内様式 2 育児 介護 休業取扱通知書 平成年月日 会社名 あなたから平成年月日に 育児 介護 休業の 申出 期間変更の申出 申出の撤回 がありました 育児 介護休業等に関する規則 ( 第 3 条 第 4 条 第 5 条 第 7 条 第 8 条及び第 9 条 ) に基づき その取扱いを下のとおり通

平成25年版 大阪における労働時間等の現状 ー仕事と生活の調和の実現に向けてー

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< 是正勧告書の例 > 是正勧告書はあくまで勧告であり事業主の主体的な是正措置を期待するものですから 強制力は持っていません 法違反に対する行政指導上の措置であり 法的効果は生じません 改善しないことによる罰則はありません しかし 是正勧告書という行政指導文書の中に書かれていることは 罰則のある法令

まえがき 労働時間は 賃金と並んで労働条件の基幹をなすもので 労働時間制度の多様化とともに 裁量労働制 フレックスタイム制 シフト勤務など様々な働き方が広がってきました 一方で 正社員を中心とした長時間労働は 労働力人口が減少に転じ 生産性の向上や多様な人材の活用が求められる中で 依然として大きな課

期日に支払っていますか 労働契約に基づく賃金が適切に支払われていますか 賃金の控除については 法令で定められているもの ( 税金 社会保険料など ) 労使協定で定めたもの ( 宿舎家賃や食費など ) に限定していますか 5 強制貯金の禁止 ( 労働基準法第 18 条 ) 技能実習生に対して 労働契約

様式 第9号

 

社内様式 2 育児 介護 休業取扱通知書 あなたが平成年月日にされた 育児 介護 休業の申出について 育児 介護休業等に関する規則 第 3 条 第 7 条 に基づき その取扱いを下のとおり通知します ( ただし 期間の変更の申出があった場合には下の事項の若干の変更があり得ます ) 1 休業の期間等

育児 介護休業規程 第 1 章 目的 第 1 条 ( 目的 ) 本規程は 従業員の育児 介護休業 子の看護休暇 介護休暇 育児のための所定外労働の免除 育児 介護のための時間外労働および深夜業の制限並びに育児 介護短時間勤務等に関する取扱いについて定めるものである 第 2 章 育児休業制度 第 2

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第六条 契約期間 雇用期間は原則として1 年以内とし 嘱託雇用契約書に定める 二. 前項の規定にかかわらず 本人が雇用契約を更新し継続して勤務することを望む場合に於いては 定年後の継続雇用に関する労使協定の定めるところにより 次の基準のいずれにも該当した従業員については満 65 歳に達するまでを限度

題名

(案)

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企業ブランディング計画

もくじ はじめに部署 / 店舗の登録 p.4 スタッフの登録 p.6 管理者の登録 p.8 就業規則を設定しよう所定時間 残業 深夜設定 p.11 打刻時間の繰り上げ 切り捨ての設定 p.15 公休日 法定休日の設定 p.17 休憩時間の計算方法に関して p.19 シフトの設定をしようシフトパターン

短時間 有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針 について ( 同一労働同一賃金ガイドライン ) 厚生労働省雇用環境 均等局有期 短時間労働課職業安定局需給調整事業課

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深夜勤務の制限 5 妊産婦の時間外 休日 妊娠中の女性が 母体または胎児の健康保持のため 深夜勤務や時間外勤務等の制限を所属長に請求できます 病院助手専攻医臨床研修医 6 妊娠中の休息 妊娠中の女性は 勤務時間規程に規定する 職務に専念する義務の免除 を利用して 母体または胎児の健康保持のため 勤務

役務契約における労働社会保険諸法令遵守状況確認実施方針

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テーマ 5 労働時間 71

店長に言われて始業時刻前に店舗の周辺を清掃している若者 何を考えているのでしょう? ところで この時間分の時給はもらえる? ねえねえ このお掃除の時間って 店長は 街を奇麗にするボランティアだって言ってたけど 時給出ないの? ちょっとおかしくない? 72

店長に言われて始業時刻前に店舗の周辺を清掃している若者 何を考えているのでしょう? ところで この時間分の時給はもらえる? たしかに 出たときも帰るときも 15 分ずつ タイムカードを押す前と押した後に店の周りを掃除するか 片付けるように言われる よしよしこれで 一点の曇りもなしだ 店長に報告しておこう ねえねえ このお掃除の時間って 店長は 街を奇麗にするボランティアだって言ってたけど 時給出ないの? ちょっとおかしくない? 指導者の方へ 労働時間や残業代は身近な話題ですが 法令の規定も複雑で 正確に理解するのは難しい点があります 具体例や経験談を差し挟みながら解説していくことも考えられます 73

労働時間って どこからどこまで? 労働時間 = 明示 黙示を問わず 使用者の指揮命令下にある時間 次の1~10は労働時間に含むものとなることが通常です 1 実際に作業している 会議に参加している などの時間 2 作業前の準備や作業後の片付け 掃除などしている時間 3 いつでも取り掛かれるように資材等の到着を待っている時間 ( 手待ち時間 ) 4 昼食休憩時間中に来客 電話当番をしている時間 5 事業所内で更衣することが義務付けられている作業着などに着替えている時間 6 参加を実質的に強制されている教育 研修を受けている時間 7 安全衛生教育を受けている時間 8 特殊健康診断を受診するのに要する時間 9 運転交代要員として乗務したものの助手席で休息 仮眠している時間 10 電話等に応対しなければならない泊まり勤務中の仮眠時間など 使用者の明示の指示があったか否かを問わない タイムカードの打刻時間が 常にそのまま 労働時間とは限らない 74

労働時間の大原則 週 40 時間まで 1 日は 8 時間まで 1 働く時間のきまり ( 法定労働時間 ) 働く時間のきまり ( 法定労働時間 ) 1 日につき8 時間以内 1 週間につき40 時間以内 2 休憩時間のきまり 1 日の労働時間が 6 時間を超える場合 1 日の労働時間が 8 時間を超える場合 45 分以上 60 分以上 3 休日のきまり ( 法定休日 ) 1 週間に 1 日以上 4 週間に 4 日以上 これを超えたり 下回ると労働基準法違反です ( 懲役 6 か月以下または罰金 30 万円 ) 75

残業には 36 協定 ( サブロク協定 ) が必要です 使用者は 労働者の過半数で組織する労働組合もしくは労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし これを行政官庁に届け出た場合においては その協定で定めるところによって労働時間を延長し 又は休日に労働させることができる ( 労働基準法第 36 条 ( 抜粋 )) 一般に 36 協定 サブロク協定 と称されます 36 協定で定める範囲を超えて残業や休日労働をさせた場合は 労働基準法違反です ( 懲役 6か月以下又は罰金 30 万円以下 ) 36 協定だけあれば残業や休日出勤する義務が発生するわけではなく 別途 労働契約や就業規則に 時間外 休日に労働させることがある 旨の定めが必要です 76

週 44 時間制の業種 柔軟な労働時間制度 特例措置対象事業場 変形労働時間制 事業場外みなし労働時間制 裁量労働制 事業場の規模が1~9 人の以下の事業では 法定労働時間は週 44 時間です 商業 映画 演劇業( 映画の製作を除く ) 保健衛生業 接客娯楽業 一定の要件を満たす場合に 一定期間内の労働時間を平均週 40 時間以内とすることにより 特定の週 日において法定労働時間を超えて働くことができる制度です 1 1か月単位の変形労働時間制 ( 特例措置対象事業場は平均週 44 時間以内 ) 2 1 年単位の変形労働時間制 (1 日や1 週の労働時間の上限があります ) 3 フレックスタイム制 ( 各日の出退勤時刻を労働者自身が決められる制度です ) 4 1 週間単位の非定型労働時間制 ( 事業場の規模が29 人以下の小売業 旅館 料理店及び飲食店に限り 各日の労働時間をあらかじめ就業規則等で定めなくても 労使協定により 1 週 40 時間の範囲で1 日 10 時間まで労働させることができます ) 事業場外で働くため使用者による労働時間の算定が困難な場合に 原則として所定労働時間働いたとみなす制度法令で定める特定の業務に従事するなど一定の要件を満たす場合に 法令で定める手続を行うことにより あらかじめ定める労働時間働いたとみなす制度 ( 専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制があります ) 77

所定労働時間 と 法定労働時間 労働時間を典型的な例で図解してみると 07:00 09:00 12:00 13:00 17:00 18:00 19:00 22:00 23:00 出社 1 2 3 早出 *² 労働時間 労働時間 労働時間 所定労働時間所定労働時間 *¹ 時残業 法定労働時間 休憩時間 法定労働時間 休憩 間 深夜 退社 4 拘束時間 始業時刻 終業時刻 所定労働時間 : 就業規則等で定められている働くべき時間 法定労働時間 : 週 40 時間以内 1 日 8 時間以内 仕事の繁閑に応じて活用できる変形労働時間制がある 法定内残業 : 所定労働時間を超えているが 法定労働時間を超えてはいない時間外労働時間 *¹ ( 法定労働時間内の時間外労働時間 ) 早早出残業 : 始業時間前に行う残業であり 賃金支払の実務上の呼称 出 *² 法律上は時間外労働時間となり 当該時間分の割増賃金が支払われる 拘束時間 : 休憩時間 手待ち時間 残業時間等を含む 始業から終業までの時間 78

36 協定 ( サブロク協定 ) を結んでも 無制限に残業させられるわけではない 2019 年 4 月から 時間外労働の上限規制が施行される 中小企業は2020 年 4 月から適用 36 協定を締結しても 時間外労働は月 45 時間 年間 360 時間までしか認められない ( 臨時的で特別の事情がある場合についても下の左表の時間数が限度 ) 下記事情がない 臨時的 で 特別の事情 がある 時間外労働 時間外労働 + 休日労働 月 45(42) 時間 年間 360(320) 時間 1 年 720 時間以内 2 月 45 時間超は年 6 か月まで 11 ヶ月 100 時間未満 22~6 か月平均で月 80 時間以内 中小企業の場合 期間 延長できる限度時間 (~2020.03.31) 1 週間 15(14) 時間 2 週間 27(25) 時間 4 週間 43(40) 時間 1 か月 45(42) 時間 2 か月 81(74) 時間 3 か月 120(110) 時間 ( ) 内の数値は 3 か月を超え 1 年以内の変形労働時間制の場合 1 年間 360(320) 時間 79

特別条項付き 36 協定であっても 罰則つきの上限規制が適用される (1) 従来から 厚生労働大臣告示*¹ による上限時間 は定められていた しかし いわゆる 特別条項付き36 協定 を届け出れば 上限時間を超えて無制限で残業させることができた ( 罰則 の適用がなかった ) *¹ 超えると行政指導の対象 (2) 2019 年 4 月 ( 中小企業は2020 年 4 月 ) からは 特別条項付き36 協定 による場合であっても超えられない罰則付きの上限が定められた *² *² 上限を超えて時間外 休日労働を行わせると 労基法違反として送検される場合がある 1~6 は 36 協定の特別条項による時間外労働部分 しかし 1~6 に上限がなく 事実上 無制限だった 1~6は36 協定の特別条項による時間外労働部分 労基法による上限として 年 720 時間複数月平均 80 時間 ( 含む休日労働 ) 月 100 時間未満 ( 前同 ) が絶対的な上限となる 1 2 3 4 5 6 月 45 月 45 36 協定による時間外労働月 45 時間 年 360 時間 法定労働時間週 40 時間 1 日 8 時間 大企業 (2019.04.01~) 中小企業 (2020.04.01~) 1 2 3 4 5 6 36 協定による時間外労働月 45 時間 年 360 時間 法定労働時間週 40 時間 1 日 8 時間 4 5 6 7 8 9 10 月月月月月月月 4~3 月で例示 11 12 月月 1 月 2 3 月月 4 5 6 7 月月月月月月 4~3 月で例示 8 9 10 11 12 月月月 1 月 2 3 月月 80

( 参考 ) 労働時間規制における大企業 中小企業の区分 業種 資本金額または出資総額 常時使用する労働者数 ( 企業単位 ) 小売業サービス業卸売業 5,000 万円以下 1 億円以下 または 50 人以下 100 人以下 その他 3 億円以下 300 人以下 81

休憩時間のルール 途中で 一斉に 自由に利用 が原則 1 6 時間を超えたら 45 分以上 8 時間を超えたら 60 分以上 所定労働時間が 8 時間以内で 残業で 8 時間を超えた場合も 60 分以上の休憩時間が必要となる 2 労働時間の途中にとれる 遅刻 や 早退 と振り替えられない 3 一斉にとれる ( 例外あり ) 次の業種には適用されない 1 運輸交通業 2 商業 3 金融 広告業 4 映画 演劇業 5 通信業 6 保健衛生業 7 接客娯楽業 8 官公署 前記 1~8 以外の業種では 労使協定の締結により一斉休憩としないこともできる 4 自由に利用できる ただし 施設管理上必要な制限を設けることは可能とされている ( 会社敷地内で自由に過ごせるなら外出を許可制にすることも可能とされている ) 82

休日のルール 法定休日 と 所定休日 がある 法定休日 = 週に 1 日 または 4 週間に 4 日の休日を与えなければならない 起算日 1 週目 2 週目 3 週目 4 週目 5 週目 6 週目 7 週目 8 週目休日 2 日休日 2 日休日 0 日休日 0 日休日 0 日休日 1 日休日 2 日休日 1 日 4 週に休日 2 日しかない 4 週に休日 1 日しかない 4 週に休日 4 日ある 4 週に休日 4 日ある 起算日 4 週に休日 3 日しかない ( 起算日を明らかにして その期間ごとに 4 週 4 日の休日が確保されていれば違法ではない ) 法定休日 に働かせる場合は休日労働となり 割増賃金は 35% 以上となる 所定休日 = 就業規則等で定める会社の休日 法定休日 ではない 所定休日 に働かせる場合は時間外労働となり 割増賃金は 25% 以上 となる 83

休日の振り替え と 代休 1 休日振替 ( あらかじめ ) は 休日労働とはならない 法定休日に労働させる場合に あらかじめ別の日を休日とする ( 振り替える ) ことにより 4 週間に4 日以上の法定休日が確保されるならば 休日労働の割増賃金は原則不要 ただし 時間外労働の割増賃金が必要となる場合があります 2 代休 ( 事後に休日を付与 ) する場合は 休日労働となる 法定休日に労働させたあとで 代わりの休日を付与した場合でも 休日労働の割増賃金が必要 3 週休 2 日制の場合の 法定休日 は何曜日? 就業規則などであらかじめ法定休日を明確にしている場合はその日 定められていない場合は事案ごとの解釈となる 4 国民の祝日に出勤しても休日労働にならないの? 国民の祝日に関する法律は 国民の祝日に休むことを義務づけてはいないので 国民の休日に労働させても 労働基準法違反とはならない ただし 国民の祝日の趣旨からは 労働者を休ませる一方で 賃金の減収を生じさせないことが望ましい 84

年次有給休暇 ( 有給 有休 ) の日数は 勤続年数に応じて増加する パートタイマーの場合は 勤続年数と出勤日数に応じて日数が定まる 所定労働時間 日数と年次有給休暇日数 働くべき時間 / 週 30 時間以上 30 時間未満 働くべき日数 週 6 日 5 日 4 日 3 日 2 日 1 日 年 169~ 216 日 121~ 168 日 73~ 120 日 48~ 72 日 6 か月 10 日 1 年 6 か月 続けて働いた年月数 2 年 6 か月 3 年 6 か月 4 年 6 か月 5 年 6 か月 6 年 6 か月 11 日 12 日 14 日 16 日 18 日 20 日 7 日 8 日 9 日 10 日 12 日 13 日 15 日 5 日 6 日 6 日 8 日 9 日 10 日 11 日 3 日 4 日 4 日 5 日 6 日 6 日 7 日 1 日 2 日 2 日 2 日 3 日 3 日 3 日 網掛は パート アルバイトなど労働時間が 30 時間未満で 勤務日数が少ない者への比例付与部分 なお 1 日 8 時間 週 4 日勤務 1 日 2 時間 週 5 日勤務 などは 比例付与ではなく通常の日数となります 85

年次有給休暇の時季指定義務年 5 日の年次有給休暇を取得させることを企業に義務づけ (2019.4.1~) 年次有給休暇が年 10 日以上付与される労働者 ( 管理監督者を含む ) に対して そのうちの年 5 日について使用者が時季を指定して取得させることを義務づけ 労働者の申出による取得 ( 原則 ) 労働者が使用者に取得時季を申出 使用者の時季指定による取得 ( 新設 ) 使用者が労働者に取得時季の意見を聴取 労働者 月 日に休みます 使用者 労働者 労働者の意見を尊重し使用者が取得時季を指定 月 日に休んでください 使用者 そもそも 1 の希望申出がしにくいという状況がありました 我が国の年休取得率 :49.4% ( 平成 29 年就労条件総合調査 ) ( 例 )4/1 入社の場合 10 日付与 ( 基準日 ) 4/1 入社 10/1 4/1 10/1~ 翌 9/30 までの 1 年間に 5 日取得時季を指定しなければならない 9/30 86

年次有給休暇の時季指定義務のポイント ポイント 対象者は 年次有給休暇が年 10 日以上付与される労働者 ( 管理監督者を含む ) 労働者ごとに 年次有給休暇を付与した日 ( 基準日 ) から 1 年以内に 5 日について 使用者が取得時季を指定して与える 労働者が自ら申し出て取得した日数や 計画的付与で取得した日数については 5 日から控除する必要がある ( 例 ) 労働者が自ら5 日取得した場合 使用者の時季指定は不要 労働者が自ら3 日取得 + 計画的付与 2 日の場合 労働者が自ら3 日取得した場合 使用者は2 日を時季指定 計画的付与で2 日取得した場合 3 日 時季指定に当たっては 労働者の意見を聴取し その意見を尊重するよう努めなければならない 労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し 3 年間保存 87