グアテマラ 主要データ 国名 英名 グアテマラ共和国 Republic of Guatemala 面積 (km 2 ) 108,889 海岸線延長 (km) 400 人口 ( 百万人 ) 13.8 人口密度 ( 人 /km 2 ) 126.7 GDP( 百万 US$) 41,471 一人当り GDP(US$) 2,888 主要鉱産物 : 鉱石 金 銀 主要鉱産物 : 地金 特になし 鉱業管轄官庁 エネルギー鉱山省 (Ministerio de Energía y Minas) 鉱山総局 (Direccion General de Minería) 鉱業関連政府機関 特になし 鉱業法 (Decreto No.48-97 Ley de Minería) 鉱業法 予備的調査権 6 か月 (6 か月の延長が可能 ) 500~3,000km 2 探鉱権 3 年 (2 回 2 年の延長が可能 ) 100km 2 以下 採掘権 25 年 (25 年の延長が可能 20km 2 以下 ロイヤルティ 鉱業法第 61 条 ~ 第 64 条 1% 外資法 外国投資法 (Decreto No.9-98 Ley de Inversion Extrajera) 外資 100% の参入が可能 環境保護改善法 (Decreto No.68-86 Ley de Protección y 環境規制法 ( 環境影響調査制度 環境 排出基準の有無等 ) Mejoramiento del Medio Ambiente) 環境影響評価を CONAMA( 国家環境委員会 ) に提出し その承認を受 ける必要がある 鉱業公社 非鉄金属に関する鉱業公社はない 鉱業活動中の民間企業 加 Goldcorp 加 Argonaut Gold 等 近年の鉱業関連問題 ( 資源ナシ ョナリズム 労働争議 環境問題 先住民組織 環境 NGO による鉱山開発反対運動が頻発 等 ) 反対運動はあるものの Marlin 金銀鉱山が生産量を拡大 2010 年のトピックス 鉱業法改正法案が国会で審議される中 野党から規制強化法案 が次々と国会に提出 1. 鉱業一般概況グアテマラの鉱業は 1920 年代以降 クーデターの頻発等 不安定な政治情勢のなか低迷していた しかしながら グアテマラは南米から北米に連なる鉱業ポテンシャルの高い地域に位置しており 1996 年に反政府ゲリラ活動が終結した後 急速に発展しつつある 1996 年には鉱業法が制定され 2010 年現在 2つの鉱山が操業し ( その他 1つの鉱山は操業休止中 ) 3 つの開発プロジェクトが進められている他 カナダ企業を主体に多くの探鉱プロジェクトも進められている 中でも Goldcorp 社による Marlin 金 銀鉱山は 環境 NGO 等による反対運動が存在する中 順調に生産を伸ばしてきており そ 1
れに伴いグアテマラの金 銀の生産は急速に伸びてきている Marlin 鉱山は 周辺住民から飲料水汚染の訴えがあり 2010 年 5 月に米州人権委員会 (IACHR) から操業停止の要請を受け 2007 年にグアテマラ政府は銅鉱山の環境影響を評価するための行政手続きを開始した ( 注 )2011 年 7 月 エネルギー鉱山省は 調査の結果 Marlin 金 銀鉱山のコンセッションを中止又は取消す動機は存在しないと発表した アンチモンの生産量は グアテマラ資本の Minas de Guatemala 社保有の Ixtahuacán アンチモン鉱山が生産を停止しているため 2010 年の生産量はゼロとなっている 同鉱山は 中国からの低価格品の影響で採算性が悪くなり これまでも生産を継続的に休止していた 金属価格の高騰により 2007 年に生産を再開したが 2008 年以降は生産を停止している ( 注 )2011 年 2 月時点で 同社の社長は 高齢で後継者もいないため 再開する意向は無いとのことであった グアテマラでは 環境 NGO 団体に扇動された先住民による反対運動が頻発しているが 先住民との良好な関係構築に努めながら 以下のような開発プロジェクトが進められている 1Fenix フェロニッケルプロジェクト本プロジェクトは グアテマラ東部の Izabal 湖周辺に位置し 2010 年末現在 加 Hudbey Minerales 社が 99.2% グアテマラ政府が 1.8%(Hudbey 社の追加出資により同社の権益比率が上昇 ) の権益を有する Hudbey 社は 2008 年 8 月に Skye Resources 社からプロジェクトを買収した後 2009 年にかけて 金属価格の低迷から開発を延期していたが その後開発を再開し 2010 年はインフラ整備に着手している また 2009 年には鉱山開発反対派による土地の不法占拠も発生したが 2010 年に概ね解決している 2014 年 H1 からの生産開始を予定している 2Torlon Hill 多金属プロジェクト本プロジェクトは Huehuetenango 州に位置し 米 Firestones Ventures Inc. が 2004 年から探鉱を行い 現在 同社が 100% の権益を持っている 2011 年に操業開始の予定である ( 注 )2011 年 2 月に Gullermo Alvarez エネルギー鉱山省鉱山総局次長は 同プロジェクトでは既に鉛の生産を開始していると発言 3Cerro Blanco 金 銀プロジェクト本プロジェクトは グアテマラ南東部のエルサルバドル国境近辺に位置し Goldcorp 社が保有する 同社は 当初 2010 年半ばの操業開始を目指していたが 予定が遅れ 鉱山局の見込みでは 2012 年操業開始予定となっている 2
表 1-1. 開発段階の主要鉱業プロジェクト プロジェクト名権益所有企業 ( 権益 :%) 鉱種備考 Fenix 加 Hudbay Minerals (98.2) グアテマラ政府 (1.8) Torlon Hill 米 Firestone Venture (100) Zn Pb Cerro Blanco 加 Goldcorp (100) Au Ag Ni サプロライト : 精測 概測資源量 6,145 万 t(ni 1.49%) 予測資源量 4,301 万 t(ni 1.26%) リモナイト : 精測 概測資源量 4,653 万 t(ni 1.11% Co 0.11%) 予測資源量 1,470 万 t(ni 1.01% Co 0.08%) 酸化鉱 : 精測 概測資源量 190 万 t(zn 7.32% Pb 2.41% Ag 14.25g/t) 硫化鉱 : 精測 概測資源量 7.6 万 t(zn 3.23% Pb 2.60% Ag 12.50g/t) 概測資源量 252 万 t(au 15.64g/t Ag 72.0g/t) 予測資源量 135 万 t(au 15.31g/t Ag 59.6g/t) 2. 鉱業政策の主な動き グアテマラ議会においては 2008 年 8 月以降 鉱業法改正案が審議されている 政府が策定した法案の骨子は 環境保護 監督等の強化 先住民の鉱業ライセンス付与プロセスへの参加 鉱区税及びロイヤルティの見直し等となっているが それに対しては 先住民団体 カトリック団体 環境天然資源省等政府部内からも不満が表明された ロイヤルティを大幅に上げるべきとの意見も多く 2010 年 6 月に議会の国家透明性特別委員会が修正し 本会議に提出した法案においては 現行の鉱業法において1% とされているロイヤルティの料率を金属価格に応じて 金が 6~8% 銀が 3~11% プラチナが 5~15% へと大幅に上げる内容となっている 2010 年 9 月には 野党の革新民主自由党から新規鉱業権付与を制限する法律が 10 月には下院議員グループから露天掘による鉱業活動を全面的に禁止する法律が提出された ( 注 )2011 年 2 月に Gullermo Alvarez エネルギー鉱山省鉱山総局次長は JOGMEC メキシコ事務所のインタビューにおいて 2011 年秋には総選挙が予定されており 2011 年中に鉱業法が改正されることは無いと考えている と発言 3. 主要鉱産物の生産 輸入 消費 輸出動向 (1) 主要金属鉱石生産量 表 3-1. 金属鉱石生産量 ( マテリアル量 ) 鉱種 2008 年 2009 年 2010 年 2010 年増減比 (%) 金 (t) 7.5 8.6 9.2 7.0 銀 (t) 99.9 129.3 194.7 50.6 アンチモン - - - - 鉄 ( 千 t) 250 224 - - ( 出典 :World Metal Statistics Yearbook 2011 Steel Statistical Yearbook 2010) ( 注 ) アンチモンは Ixtahuacán アンチモン鉱山が生産を停止しているため 2007 年に 365tを記録 して以来 生産量がゼロとなっている 3
(2) 主要金属地金生産量データなし (3) 主要金属消費量表 3-2. 金属地金生産量鉱種 2008 年 2009 年 2010 年対前年増減比 (%) 亜鉛 ( 千 t) 8.6 8.4 10.2 21.4 ( 出典 :World Metal Statistics Yearbook 2011) ( 注 ) その他の金属については データなし (4) 主要金属輸出量表 3-3. 精鉱 地金等輸出量 ( マテリアル量 ) 鉱種 2008 年 2009 年 2010 年対前年増減比 (%) 主な輸出相手国金 (t) 1 9 5-44.4 米国 ( 出典 :Global Trade Atlas) (5) 主要金属輸入量 表 3-4. 精鉱 地金等輸入量 ( マテリアル量 ) 鉱種 2008 年 2009 年 2010 年 対前年増減比 (%) 主な輸入相手国 アルミニウム (t) 0 11 0-100 米国 鉛地金 (t) 0 2 7 350 米国 亜鉛地金 (t) 15 26 27 3.9 米国 ドイツ ( 出典 :Global Trade Atlas) 4. 鉱山 製錬所状況 表 4-1. 鉱山一覧 鉱山名 権益所有企業生産量 (t) 鉱種 ( 権益 :%) 2009 年 2010 年 Marlin 加 Goldcorp.(100) 金 8.550 9.210 銀 129.28 182.33 El Sastre 加 Argonaut Gold Corp.(50) Rocas EL Tambol S.A.(50) 備考 金 非公表 非公表 2010 年 2 月 Argonaut Gold Corp. は Castle Gold Corp から権益を買収 Clavito Ⅳ Minas de Guatemala S.A.(100) アンチモン - - 2008 年 8 月以降 生産を休止 Cerro Colorado Rodlho Cerna Linares 酸化鉄 非公表 非公表 ( 出典 : 各社 Annual Report 各社 HP 鉱山総局) ( 注 )El Sastre 金鉱山の金の生産量は 2007 年に 0.43t 2008 年に 0.33t( いずれも Castle Gold 社 HP) であったが 買収した Argonaut 社の HP の El Sastre 鉱山の項目は 工事中 となっており 2009 年以降の生産量は公表されていない 4
図 1. 主要鉱山 探鉱プロジェクト位置図 5. 探鉱状況カナダ企業を主体に多くの探鉱プロジェクトが進められている 主な探鉱プロジェクトは以下のとおり 1 Mayaniquelni ニッケルプロジェクト本プロジェクトは 2009 年 5 月に加 ANFIELD Nickel 社が BHP Billiton から買収し Sechol プロジェクトから名称変更した 2014 年操業開始予定 同プロジェクトでは 2008 年 6 月に環境影響評価の承認を得ないで探査を行ったとして罰金の支払いを命じられたが 法的に争っている ( 注 )2011 年 2 月の JOGMEC メキシコ事務所のインタビューに対し 鉱業法には探査段階での環境影響評価の承認は必要とされておらず 環境天然資源省の規則は法律の根拠が無いものであり無効であると主張していた 2 Escobal 銀プロジェクト 2010 年に加 Tahoe Resources Inc. が Goldcorp から買収した 同社は 2011 年内に全ての開発の許可を取得し 2012 年 5 月の開発工事開始 2013 年後半の操業開始 及び 2014 年初旬の商業生産開始を予定している 5
3 El Tambor 金プロジェクト加 Radius 社が行う探鉱プロジェクト ( 注 )2011 年 2 月のエネルギー鉱山省鉱山総局の説明では 2012 年操業開始予定で 金の年間生産予定量は 0.6t 4 El Pato 金プロジェクト加 Goldex resources 社が行う探鉱プロジェクト 本鉱区内の鉱化作用は 1980 年代後半から 90 年代前半にかけての国連の探査によって発見された ( 注 )2011 年 2 月のエネルギー鉱山省鉱山総局の説明では 2015 年操業開始予定で 金の年間生産予定量は 1.6t 表 5. 主要探鉱プロジェクト プロジェクト名権益所有企業 ( 権益 :%) 鉱種備考 Mayaniquel 加 ANFIELD Nickel(100) Ni サプロライト : 概測資源量 1,210 万 t(ni 1.57%) 予測資源量 4,960 万 t(ni 1.37%) リモナイト : 概測資源量 700 万 t(ni 1.14%) 予測資源量 1,310 万 t(ni 1.11%) 2014 年操業開始予定 Escobal 加 Tahoe Resources(100) Ag,Au 概測資源量 15.3t(Ag 500g/t, Au 0.51g/t) 予測資源量 8.3t(Ag 271g/t, Au 0.40g/t) 2014 年初旬の操業開始予定 El Tembor 加 Radius Gold(100) Au 2012 年操業開始予定 El Pato 加 Goldex Resources(100) Au 2015 年操業開始予定 6. 我が国との関係 (1) 日本への輸出日本への精鉱 地金輸出はない (2) 日本企業による投資状況等特になし 7. その他トピックスグアテマラの現行憲法 (1985 年制定 1993 年改正 ) では 第 66~ 第 70 条で先住民の諸権利を認めているが 先住民の権利に関する個別法は制定されておらず 先住民保護区の設定もなされていない 現在グアテマラでは 先住民団体や人権団体が中心となって 先住民族の権利に関する一般法 :Ley General de derechos indígenas 制定のための運動が展開されている これら団体は 同法で保証されるべき先住民の権利として 先住民代表の選出 バイリンガル教育 独自の司法システム 資源開発への先住民の参加等を求めている (2011.7.22 メキシコ事務所高木博康 ) 6