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2F24 溶接 接合技術で世界のリーダーを目指す産学官連携開発センターの成功 要因 - 米国 NFS, I/UCRC から自立した EWI の事例研究 - 難波正憲 ( 立命館アジア太平洋大学 ) 藤本武士 ( 立命館アジア太平洋大学 ) 1. はじめに EWI(Edison Welding Instuitute Technology) は NSF(National Science Fundation) の I/UCRC (Industry/University Cooperative Research Center) としてオハイオ州コロンバス市に 1984 年に設立され その後財政的に自立した全米最大の溶接 接合技術の開発機関である 自動車 航空宇宙 機械など 1000 社以上が会員で 140 名のスタッフを擁し 年間収入は 35 億円で 産官学連携開発センターにおける成功事例のひとつである 本稿では その成功要因を 訪問調査に基き 1 ナショナル イノベーション システムと 2 研究所運営の視点から分析し 日本の同様機関への参考要素を抽出する 2. 概況 (1) EWI の生い立ち EWI は 1984 年に I/UCRC( 産学共同研究センター : Industry/University Cooperative Research Centers: 以下 I/UCRC) として設立されたセンターである オハイオ州大学の構内にあり オハイオ大学の溶接工学部は EWI の建物の中にある 設立当初の資金供給者はオハイオ州立大学 バテル メモリアル研究所 TWI(World Center for Materials Joining Technology 以下 TWI) である イギリスの TWI は EWI よりも 40 年程前に設立され アメリカ企業 80 社をメンバーとしていた アメリカとイギリスの距離的な問題のため協力作業が困難であった そこで TWI は EWI と提携して アメリカにいる 80 社すべてのメンバー企業を EWI に移管した オハイオ州も EWI に対し 250 万ドルを供給した EWI は オハイオ州立 Edison センターを基本的に EWI へ譲渡するという形で成立した 1995 年から OEC(Ohio Edison Center) キャンパスに EWI 自身の施設を設立した 1980 年代前半に オハイオ州は産業振業の基礎調査を実施していた オハイオ ミシガンやペンシルベニアなどのような州は石の土壌と呼ばれ この地域では鉄鋼業や自動車工業などの重化学工業の産業が発展していたが その時期には まだ産業の成長に影響を与えるほどのハイテク産業は存在していなかった オハイオ州は Edison Center と呼ばれる新しいプロジェクトに着手した そのプロジェクトは 政府資金を利用し ハイテク技術による産業振興と経済成長を狙いとした EWI は トーマス エディソン プログラム の Edison Technology Centers と呼ばれる 7 つのテクノロジーセンターのひとつである トーマス エジソン プログラムは技術の開発を狙いにした州政府のプログラムであり 州政府や産業界等により運営されている共同プログラムである その技術支援組織のひとつに EWI がある EWI はオハイオ州大学の構内にあり オハイオ大学の溶接工学部は EWI の建物の中にある (2) EWI の性格 EWI における産業サポートの研究は 50% 産業関連は 50% となっており 学生等の教育はほとんど行っていない EWI の役割は日本の公設試験場に似ている 日本には全部で 300 あり 個別テーマ対応型である 個別の教育にもとづく関連事項を産業界へつなげるものである これに対し EWI はできるだけ技術の汎用化 一般化を狙っている (3) 運営組織 EWI は 理事会によって管理される組織体制である 理事はメンバー企業によって選任される 開発テーマは 産業顧問委員会 (Industry Advisory Board 以下 IAB) によって監査されている 会長 CEO やその下には財務管理部 人事部 政府プログラムオフィス 産業販売とマーケティング 工学管理 研究 技術がある EWI の活動は IAB に随時報告を行なう 政府プログラムオフィス (Government Program Office 以下 GPO) の役割は 政府の多様な研究資金の獲得にある 現在 EWI の財源のうち 50% が政府研究基金に支えられている Administration Finance Organizational Structure Resources Human Board of Trustees President & CEO Government Program Office Industrial sales and Marketing Industry Advisory Board Engineering Operations ( 出所 :EWI 資料より作成 ) Technology Research 例えば プロジェクトが長期間にわたる場合 政府との契約内容を把握 チェックする必要がある GPO の役割は 政府のオフィスとビジネスを発展させていくことである 政府とビジネスを展開していくことと 産業界のそれとは全く異なる 政府のプロジェクトは公表されており 誰でも情報にアクセスできる 産業側は公表しないため 産業のニーズを認識することは困難である それゆえに産業と政府を別立てで運営している EWI では 会員制を実施しており 財務上は独立している 現時点では補助金等は受け取っていない 現在 EWI は高度金属材料接合技術分野で世界的リーダーの位置にあり 当該分野で北アメリカ最大の組織である EWI のミッションは 新たな発見やデータ等などの基礎知識を発展 応用させ 技術へとつなぎ 産業が利益を得られるようにすることである EWI は 多くの製造業が使用可能な技術に育て上げる EWI は メンバーをベースとする NPO 組織であり メンバーのみのために事業が運営されている 契約と技術にはライフサイクルがある EWI プロジェクトは 約 3~6 ヶ月間と非常に短い 多くの I/UCRC のライフサイクルは約 3~5 年である ERC のライフサイクルは約 5~10 年 STC は 10 年以上となっている EWI は産業界と政府の両方のプロジェクトを受託しており 基礎研究 技術開発 専門研究の 3 つのカテゴリーに区分している 専門研究は 特定分野のプロジェクト 特定商品の問題を扱う 当センターでの基礎研究は 通常 5~10 年である 技術開発のライフサイクルは約 1~3 年で 専門研究は即時性の高いものである (4) 代表者 Karl Graff が 1987 年から 2000 年の間に EWI の CEO を勤めた 2002 年からは 技術発明からコンサルティングサービスへ重点をシフトさせる重要な変更を行った そこで EWI は他の NPO 組織と比較を行った EWI のターゲットは 2-4% の利益を維持することに焦点が当てられている 南西部の Battelle も NPO 組織であり 2004 年度の収入はかなり低下した模様であるが EWI は 2001~2005 年の間ほぼ 2% を超える収入を確保している (5) 主な技術 - 市場ニーズと研究技術の分析 1 -EWI が立ち上がるまでの背景 EWI は オハイオ州によりサポートを受けている I/UCRC か 1 EWI の Lin 博士 (Dr. Wangen Lin) へのインタビューにおける調査結果より作成 -832-

ら独立し 1984 年に設立された組織である オハイオ州は 1980 年代に調査を実施し オハイオ ペンシルベニアやミシガンのような州は 重工業産業などが主で 鉱業や自動車産業から発展してきた州である 当時は 産業成長を活性化させる高度技術などはほとんどなく オハイオ州が政府財源を活用し 新しい産業と経済成長効果をもたらす必要があると考え プロジェクトを立ち上げた そこで行われたいくつかのプロジェクトの中で エジソン センターとともに取り組んだものが 今の EWI の基になっている オハイオ州政府は当初 年間 250 万ドルの投資でスタートした EWI の収入は 1990 年の 7 百万ドル / 年から 2005 年 27 百万ドル / 年へと着実に成長している 1990 年代初めに 州政府が EWI に独自運営化を促し 5 年前から年間予算を 20% 削減し 約 3 年間 160 万ドルにまで減少している 2 年前に 州政府は予算割当てをせず 州政府からの支援はなくなった そのため 2 年前から自ら増収対策を得ることを迫られる状況になった EWI は企業メンバーを構成員とする非営利組織であり メンバー企業のために運営されている EWI のサービスを受けるためには 年間 7000 ドルから 100,000 ドルのコストがかかる EWI の会員は産業タイプと従業員数を基準として二つのグループに分類されている GE のような巨大企業は登録料を 100,000 ドル支払っており 最低 7,000 ドルの企業もある GE や GM のような巨大企業は 外部委託研究組織や内部研究組織の両方をもっているが それらの企業が EWI に期待していることはいくつかある 一つは EWI には設備が整っており 契約に基づく研究であり 産業界の顧問役員による企業の利益を重視する研究プロジェクトを実施していることである また 産業全体に関わる研究も行っていることもあり 他の組織と比べ 市場志向性が高く 安いということもある 重要な視点である投資の見返り (ROI) をみてみると 基礎研究の ROI については大方マイナスである これは なぜ産業界がこの分野に投資したくないかを物語っている 技術開発においては 1~5%( 比較的低い ) で 専門研究においては約 15~20% となっている ここから 政府がいくつかのプロジェクトを支援する必要がある EWI の商業化プロジェクトは 専門研究に焦点を当てている 産業は 基礎研究プロジェクトを嫌がる傾向にあるからだ (6) 規模 ( 人員 売上高等 ) 現在 EWI には 80~90 人の技術者 (2006 年夏現在 ほとんどの技術者は博士号やマスターの称号のような高等学歴保持者である ) と技術者ではないスタッフを含む 150 人程度のスタッフがいる EWI のユニークな点は EWI の約 2/3 の技術者が産業界の経験者であることだ 大学卒業者を選ぶほうが簡単でコストは安いが 新卒者は 研究目的には対応不能であるか 事業展開が困難である 北アメリカだけで 250 社の企業が EWI の顧客となっている 2000 年までは それよりも多かったが 特定メンバーだけに絞るよう戦略的決定を行なった この決断前には EWI のメンバーになるだけで 積極的に活用しない企業がいたため EWI は入念にメンバーを選択する必要があった EWI はメンバー企業が EWI を 内部の研究開発の場として利用してもらうことを考えていた 1990 年から 2005 年までの歴史的データをみると EWI が安定成長していることがわかる 2001 年と比較すると現在までに 2 倍程度の成長が見られる 利益も増加しており 2005 年度も 30 万ドルの利益を見積もっている EWI は この収益力を背景として 2004 年にヒューストンのある会社を買収した ただ EWI は成熟市場にいるのではなく まだ成長できる多くの可能性を持っている市場にいることがわかる 3. 主要な事業内容 EWI の主要サービスとして 次のような仕様に関し完璧な調査書を提供することができる能力を有している それは 材料の選択 デザインのレビュー 構造のデザイン 結合デザイン (join design) プロセスの選択 開発手順 処理最大限化 (procedure optimization) 手順の組織化 (procedure organization) プロセスのモデル化 資源の有効性のバリエーション 構造の公平性 監査 システム統合 モデル化 プロジェクト管理 (the project management) である 事業内容の一つとして人材育成も行っており 研究プロジェクトに参加させる形で教育トレーニングを行う 総合的な研究は コストがかさみ利益にならない側面があり 短期プログラムはない これについてはオハイオ大学が引き受けている 教育トレーニングについて基礎研究が望まれる場合も大学が役割を担う しかし 特定分野の知識や個別化された知識に関しては EWI がワークショップを開催する 2005 年 5 月に 2 日 間のワークショップを開き 40 のプレゼンテーションを行った 産業界は 技術の現状を知りたがり どうその技術を自社の事業に生かせるかに大きな関心を持つ EWI は 40 のプレゼンテーションに絞り提案することで 産業界がどの技術に関心を示しているかを判別することができる EWI の収入は 政府と企業で半々となっており 政府は委託研究を拡大する傾向にある EWI の収入データによると 政府との強い結びつきはあるものの 1995 年に EWI は急成長したため 州との契約も果たし 国防総省も約 10 年物のプロジェクトに投資をした 4. 開発の経緯 (1) 商品コンセプト創出通常研究プロジェクトの点からすると 問題を明らかにしていくステップは 2 つの異なる研究タイプがある ひとつは 一般的な研究で 例えば レーザー技術を開発すると その技術は様々なタイプのアプリケーションに利用することができるため 最初のステップで 顧客が EWI に技術を知らせる必要が出てくる 市場で一般的なものになるには その後 5 年ほどかかる もし 特定の情報を提供してもらえたならば 特定の問題に対する答えを要求してくるため 企業側は情報が漏洩しないよう要求してくる 半年ごとにプロジェクトを見直していき テスト基盤がよければ 企業が決定し申し込みを行なう それから契約を結ぶために EWI から提案し 決定していく (2) コンセプトの具体化プロセスフォーチュン誌が EWI の技術を取り上げた ハーバードや Wall-street 誌でも EWI が評価されている 日本では 技術経済 (technology economy) についての雑誌があるが その雑誌では IMS が次の 10 年間におけるハイテク技術のひとつ トップ 10 として高く評価されている これが EWI の評価方法である メンバーは会費を支払っている ( レギュラー会員は 3 万 5 千ドル 料金会員 <fee member> は 1 万ドルである ) 会員企業も分け隔てなく 技術を使う権利を持っており IMS テスト投資を行い 所有する権利も持っている 優先させたい IMS プロジェクトを選ぶことができるのである 一方 スポンサーは EWI に機械や備品などを提供するだけであり 会員のような決定権も所有する権利も持っていない スポンサーは 単にネットワーク的な利得を得ることを目的とするだけである 例えば GE やトヨタと関わりをもちたい場合 プロジェクトに参加する 小企業は GM と会うことなどできないため この EWI を利用するよい機会となる 小企業は価値を得ているが 資産を所有する権利は持っていない (3) 産官学の協力体制 EWI は オハイオ州立大学の多くの研究プロジェクトに投資をした オハイオ州立大学以外にも 6 つの大学からのプロジェクトに対して投資を行なった EWI は建物を所有し そのローンを支払っている EWI は大学とチームを組み 多数の政府のプロジェクトにも取り組む これが 政府から依頼される大規模プロジェクトに取り組むために大学と共同で築いた基本的な関係である 例えば オハイオ州には第三回フロンティアアクションプランというものがあった このプランは 大学に投資するための資金を用意するもので 産業振興のため ( 営利組織のためではない ) に 特定技術の開発を目的とする投資で 州政府の第一の要求は技術の商品化のためによい方法 ( 道筋 ) を見つけることである このプロジェクトに応募する際 EWI として大学と提携する必要条件があった EWI だけでは 特定のプロジェクトに対応する 十分なスキルがない可能性があったからだ ときには 産業側からコンサルティングの依頼がある そのような場合 企業側は 1 週間から 1 ヶ月程度の迅速な返答を期待している EWI としては 短期的にそれを実行できる学生を探すことは難しい 企業側の学習効果の結果 EWI には 2 年程度のプロジェクトの発注が多くなった 一般的に EWI はアプリケーション志向のプロジェクトを目指しており 具体的な用途が見える技術の基礎的研究に重点を置いている EWI が目指しているのはそのようなモデルである 大学は 主に探索的な基礎研究に重点を置いている これまで 産業界では基礎研究から商業化開発まですべての段階の研究を実施してきたが 近年では利益を確実にあげるテーマに焦点を絞るようになってきた つまり 研究よりは技術がより重要になった I/UCRC の主要な目的は 産業に対し技術に関する方向を示し アドバイスをすることにある EWI はこれを巧みに実現していると言えよう オハイオ州が EWI に好意的であるのも EWI がオハイオ州の技術に対する取り組みの中で象徴的な存在となっているからであり 広告効果の機能も果たしてきたからである -833-

各企業が研究開発を自己完結型の大型なものから アウトソーシングと開発資金別のプロジェクトへと切り替えてきている中で EWI は成功した組織として証明されたと言えよう それは 大学との連携にも広がりを見せ EWI が初めてオハイオ州立大学との提携に着手した際 オハイオ州からの 250 万ドルの財源のうち 500,000 ドルを 提供する契約を結んだことがその後の連携拡大の契機となった EWI はオハイオ州立大学内に数多くの研究プロジェクトを推進中であり オハイオ州立大学以外にも 6 つの大学とファンド契約を結んでいる 基礎研究は大学に依存しながら産業界の具体的ニーズの実現に応じるモデルを構築している (4) 開発資金の獲得方法国からの研究資金提供については 90 年代前半から ほぼ年間 250 万ドル獲得していた その一方で 毎年 国からの資金は使い道が正しいのか判断しなければならない 90 年代前半 アメリカは EWI を通常の研究施設として認識していたようであり 2000 年から 国は年間の資金提供の 20% を削減する方向を決め ここ三年間は 160 万ドルとなった 最終的に 2004 年に国からの資金援助がなくなった EWI は当初 自ら収益をあげる必要はなかったが 2004 年は 収益源を開拓しなければならなくなった これに関連して メンバーへの会費政策は重要であり EWI は高めに会費を設定している ( 最低 7 千ドル ) EWI がメンバー会費を高めにしている理由は 会費が安ければ EWI は財源が乏しいため 投資してくれた企業に十分なサービスができないのではないかとの企業側の疑念を招く可能性があるためである 企業へのサービスだけでもかなりのコストがかかる それと同等のものを会社にも要求する EWI は 参加企業が単に 7 千ドルを払って 何もしないという状況にはなってほしくない EWI は利益の拡大を考えている 同時に その利益をメンバー企業のために再投資したい EWI が自己評価をする際 獲得した会費総額により判断する テスト投資に失敗すれば苦情を受けるマイナス効果があるが それ以上に EWI の弱体化の警告と考えなければならない 三菱重工は かつて EWI に風力タービンを一件 50 万ドルで打診してきたことがあった また インテルからも 50 万ドルプロジェクトの打診があった 企業側は EWI が高い会費でも実力があると認識していると言える しかし EWI はブルー エリアと呼ばれているすべての技術に存在する 作用は ボールである ( 全体に及ぶ ) テスト投資プロジェクトは だれが EWI に求め 誰が障害物を乗り超え 誰がボールを押すのかという連携を考え 最終的に産業側がボールを押す 企業側がテスト投資の仕組みを作り出した ボールを押すと ボールは動く 企業が動くと 価値も動く 学生が卒業するとツールが発達し 知識を得ることができる EWI はこのような作用チャートの考え方を使い どのように会費を払うことの見返りとして 25 のメンバーシップをバックに得ることができるかを考えている これは 1 対 25 の比率といえる もし 企業側が 13 万 5 千ドルを支払うと 支払った金額とは無関係に約 100 万ドルのプロジェクト結果を手に入れることができる契約になる ここでは 契約内容は無視されているが 会費と NSF の補助金が背景にあり 補助金を得るために 特に必要な許可はないため 補助金がよく考慮されなければならない (5) 現況 :( 全米および世界の企業に対する接合に関するコンサルティング 共同開発 ) EWI が調査した際 EWI のプロジェクトからの経済的影響で何があるかを顧客に尋ねたという 企業はそれを数字で示した そして EWI はその数字を収集し 投資によって分散してきた そして 似たような数字が集中している約 25% というポイントを見つけた 約 25~30 倍率の技術投資である 投資の基準は 基本的にユニークでなければならない 価値あるものでなければならないなど 共通する何かがあり EWI は付加価値を運営する 大学と産業の共同研究において EWI はユニークなモデルとなる 当初は 産業側は大学を信用していないことに気づき その信用していない理由が大学は商業化モデルを行わないからであるということを突き止めた EWI のこのモデルは ( 研究室ではなく ) 企業内にある全てのものに対応するもので EWI は研究室を持たないため EWI が大学にアイデアを提案する時は 基本的に 共同研究 で 産業と大学が協力すべき案件であり それらは研究所で行われるものではない 研究所は目に見え捉えられやすいものだが 共同研究 は目にはみえないソフトな結合なのである ほとんどの産業は 技術が成熟したときにも困らない その必要性がないメリットに気づいていない 理由は 確実ではないものを企業は使用したく動機に基づいて作られたモデルだ からである 大学の仕事は リスク減少を維持することよりも とりあえず発展させることが重要である つまり 大学は間違いをなるべく早くなくす必要がある EWI の考えでは 企業のために 間違い ( ミステイク ) を早くなくすことで 企業は時間を節約し それらのオプションにも 集中することができるようになる そこに この EWI の存在意義がある 5. 開発資金の負担 : 大学 企業基本的に もし企業側が投資を好めば 企業が新しいものにトライし続ける流れができる もし 好みにそぐわなければ 企業側は投資をやめる 支払いを受けるということは認識していることであり 企業が払わなければそれは何かがおかしかったことを意味する 現在 EWI 派人事管理に問題を抱えている 企業側は予算問題であると言っているが EWI はその理由が本当かどうかはわからない 6. 分析 (1) 技術開発のタイプ -EWI の仕組み - EWI は何をしているかといえば研究している企業と契約を結ぶことである 例えば GE や GM などの企業は外部研究を必要とするが GE や GM は以下の 2 つの理由で EWI のメンバーとなっている 1 EWI が精通している ( 彼らよりもよい研究ができる ) 分野があること 2 企業側で研究するよりも低コストということである 内部の研究プロジェクトについては いくつかの備品が必要であり どのくらいそれを使うかを考える必要がある しかし EWI は研究備品を常時保管することができる EWI のコアビジネスは 契約研究 ( 契約して研究をする ) である 産業の顧問委員会より指導を受け すべてのメンバー企業へ利益となるように研究プロジェクトを進める 技術の応用 発展というミッション ステートメントがあり EWI は成功するために努力し 支援する役割を持つ EWI は利益の 10% を 研究のためだけの資金とし 結果として EWI 自身や産業側へ利益をもたらすよう努力している 他のタイプのプロジェクトは 産業全体に応用できる技術を EWI が開発するというものである EWI は研究開発にも力を入れ 研究結果は優先的にスポンサーに提供する スポンサーは政府であったり 通商産業や 民間であったりする また EWI は無料で質問に答えられるサービスを用意している 例えば もし何か質問があれば いつでも無料で電話アクセスができ その質問に対して迅速に返答するサービスを提供する それらはすべてメンバーへのサービスとして含まれている また メンバー企業のために 情報 ( ニュースや記事 論文など ) を提供している 実際に 多くのメンバー企業がそれらの情報や知識 技術の提供者であるわけだが 企業側は EWI がマーケットについて 多くの知識や情報を持っていることを認識しており EWI へ参加している (2) 大学 企業の協力 相互作用 EWI は オハイオ州立大学の多くの研究に投資し オハイオ州大学以外にも 6 つの大学からのプロジェクトに対しても投資をしている 民間のエンジニアプログラムを一部貸し出し EWI に使用料を支払ってもらっている この関係は EWI の技術の 3 ステップと類似する 1 番目は CPR(Cooperative Research Projects) である 全てのメンバー企業のための技術開発 ( 財源は会費 ) が 誰でも技術を使用できるため あまり内密的なものはない 2005-2006 CRP(Cooperative Research Projects) とは 資源開発の共同技術発展を 現在の EWI 登録メンバー企業のニーズと連結させ メンバー企業へ提供された状況報告 コンサルティング および研究開発 (R&D) サービスを支援するために スタッフ技能を高めることを目的としている EWI の CRP は メンバーの各企業へ情報や専門的技術を提供する 各プロジェクトで提供された情報には タイトル 目的 開始日から終了日 および EWI へのコンタクト情報が含まれている メンバー企業は http://www.ewi.org/members/ にログインして当サービスを利用することができる 2 番目は Group Sponsored Projects と呼ばれ この技術開発は特定のグループメンバーにとって利益となる 特定のスポンサーグループに焦点を絞っている 3 番目は Single Sponsored Projects である 通常もし少人数のグループメンバーがある技術に興味を持った場合 それは単なる特定の顧客である もし可能性のあるアプリケーションを閲覧できるならば I/UCRC は CRP と GSP にフォーカスする しかし 存続していきたいならば SSP へ変更する必要がある SSP の内密度はとても高くなっている 次に EWI はリスク減少のために 予測ツールの多様化を発展させる 例えば 常勤のソフトウェア エンジニアを雇う必要があり エンジニアに 15 万ドルを払わなければならないな -834-

らば 非常にコストがかかる たったひとつのツールを開発するのに 一人の常勤エンジニアを雇えば 25 万ドルのコストがかかる EWI はその 3 分の 1 の費用で 2 3 倍早くすることができる EWI は早くて安い そのツール ドライバーは IMS である そして 重要なことはベンチマーキング ベストな実施 ネットワーク メンバーである 依頼する企業は 表面的な問題を知っているだけであるが 企業側はそれと同じ問題が Intel や GM ハーレー ダビットソンなど他社でも起きていることを知らない 企業は自分の視野にあるものしか知らない 企業側が EWI に来れば ベンチマーキングをすることができる 企業が直接 他の企業にアクセスすることはできないが EWI に依頼をすればそれが可能となる (3) 成功の要因 EWI の強みとしての設備 備品について 研究に必要なものがほとんどそろっていることだ これによって EWI は競合他社から優位に立てる 特定の備品については 大学で使用する ( 伝動装置や顕微鏡など ) EWI は 通常 設備等によって制限されることはない もし プロジェクトを依頼された際 特定の設備がなければ 設備提供をしてくれるプロバイダーと提携し 提供してもらった設備を EWI が利用する あるいは 短期間で貸し出しを受けたり 貸し出したりする 設備プロバイダーは EWI を好都合な設備展示場所として認識している 設備プロバイダーが新商品を開発したならば その商品を EWI に使ってもらいたいと希望する そのため EWI は多くの設備を無料もしくは低価格で入手することができる もし 一年間設備を EWI で保有し ビジネス展開できなかった場合 その設備は EWI にとって不必要なものとして返却する このようにして EWI は設備費用を低く維持している 6. EWI 総体の成功の要因 (1) 対象とする顧客 ( 顧客への理解 ) EWI の成功の理由のひとつは 非常に良いビジネスモデルである Close-loop モデルを持っていることであろう EWI は高度な (high end) 技術をターゲットにし 競争する相手がいないところを狙っている 高度な解決策 ( ソリューション ) を提供するために EWI は高度な技術者を雇っている ( 技術者の給料はとても良い ) そして EWI は高度技術者を配属するための環境を作る 技術者が研究できるように機会の提供もする ( コンサルタントサービスを用意するだけでなく 高度な技術も用意する ) EWI は 研究における利益の 10% を受け取る それで 技術者や研究者は 研究や発表 会議へ出席し 論文を書くことができる このようにできるのは もっとも彼らが好むやり方であり EWI もそれだけの資金を持っているからである EWI は技術を認定し 産業と協力して協働する 1 対象とする顧客 ( 顧客への理解 ) EWI の顧客対象は 大学と比べ 非常に絞り込んでいる ( 大学は EWI と競合しない ) コンサルタントとして 顧客の理解無くして よいサービスを提供することはできない 大学はこれが弱みである 2 オペレーションの能率 ( コスト競争力 ) EWI はオペレーションの能率にフォーカスした経営をしている EWI はガレージと似ており 毎日 8 時間労働の技能者 ( テクニシアン ) がいる 経営者としての挑戦は テクニシアンを利用することである もし実際 かれらが 7 時間で完成できるならば 1 時間無駄に賃金を支払うことになる EWI は技術者全員に対して 一週間に 40 時間労働で 会社のために利益を生み出せるように 賃金を増やした 彼らがいつも利益を作り出すとは限らない 例えば 提案書を書く際などは 利益がでないのである また 会議やミーティングに参加し 顧客に会うことも重要である 最低限 時間を最大限使い 利益を生み出すことが必要である (2) 技術的イノベーション ( 商品開発 < イノベーション >) 技術的リーダーシップでは EWI はまだまだ発展途上である なぜなら それについては多くの資源を利用する必要があるとともに 高度な技術性能が求められるためである 不運にも それを達成するだけの政府から十分な援助が受けられていない 設立当初から財政上で運営していくために いろいろと難しい面を経験してきた 今では 財務状態が良くなり 機会に恵まれている 毎年 技術性能向上のために 利益の 10% を使っている 各企業にそれぞれの方法論を提供しているモデルの原型は 企業の中にあった EWI は機器を提供しておらず 異なる方法論を提供している EWI のソフトウェアによって 企業側自身のものをデザインする ダイムラー クライスラーは全転送ライン トヨタはコンプレッサー 今はロボットなどである それらの製品ライフサイクルをさまざまな企業へ応用し 活用し ている 現在 このモデルを使用している大学は ほとんどない そのため EWI は大規模研究所を持っておらず 産業の研究所にフォーカスをする 8. ケースからの示唆 - ケースから一般化 概念化できる事柄は何か - EWI は ハイテクを主に扱い発展プロセスが絡んでいる 1995 年には 州から 年間 30 億ドル弱の補助を受けてスタートした 2002 年には 研究開発のタイプ 産業タイプで分類し 雇用者の数で 評価されている 27,000 人にまで発展し 教育プロジェクトは無料である 基本研究は大学 商業化は EWI が行なっており 定期的会合で 産業界のニーズや情報を共有している つまり それにより大学と EWI が設備や知識資源を共有しており そこには 250 社が存在する点がこの機会や強みの総合力を生み出している そこでは ライフサイクルが異なる技術を統合することで成果を上げる 研究主導のフロンティアとして強みを存在できるのは コンサルティングタイプのやり方であり リクエストに応えていく方法である 国や産業のプロジェクトが存在することで 存在感を出している 焦点に当てているのは ハイテク - エンドの部分であり その部分がもっとも人材を育てられるからだという 基本的に EWI では 顧客をフォーカスすること 経営の効率化 技術のライセンスに気をつけながら とくに経営の効率化がボトルネックとなるため 細心の注意を払う EWI 自身も 技術のロードマップを立て ニーズに合わせて 毎年 その書き直しをする スポンサー企業に対しては パテントフリーで使用できる環境を作る それが 企業と産業の早期統合戦略であり サービス戦略であり コンサルティングのサービスであり それらをスピンオフし メンテナンス サービスまで広げて展開していく EWI 自身も企業を買収し 機会があれば経営手法を積極的にとっている 技術より 市場のタイミングが重要であり 時間が重要である その優先順位がもっとも重要で すべてを完璧にチェックする手法ではなく 早く正確にできる方法を作っている その方がコストも削減できている フィーリング マネジメントといい ユニークネス マネジメントを追及する なぜ この段階のみを担当するように EWI は選んだか それは 5S-Kaizen と学習 教育ができる分野であり 意思決定が最適になるところであり ツールがシンクロナイズする最適領域だからである 情報と人と時間の適合性で付加価値を作っており 図式化できる企業のニーズに焦点をあてている 技術のベンチマークをメンバー同士でおこなう その確率は低く 25 発中 1 発が当たったときの経済インパクトをフルに活用している 技術が成立すると 企業は反対しない点を戦略として組み込んでいる Curious なものへ焦点をあて 3-6 ヶ月の技術と 3-5 年の技術に分割し 失敗しない方法を作る それを差別化の戦略として位置づけている 9. 謝辞 ( 含む聴取の時期 対象者 ) 本章は 脚注以外は Wangen Lin, Ph.D., Directoe Research & Technology, Edison Weiding Institute, Inc. からの聴取 (2005 年 9 月 6 日 ) に基づく ここに謝意を表します -835-