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Transcription:

役 割 語 史 の 可 能 性 を 探 る(2) 軍 記 物 語 に お け る 受 身 と 使 役 の 併 用 を め ぐ っ て 西 田 隆 政 ( 甲 南 女 子 大 学 ) 1 は じ め に 日 本 語 研 究 に お い て 金 水 ( 2003) で 役 割 語 という 研 究 分 野 が 提 起 さ れ て 以 来 10 年 あ ま り が 経 過 し た そ の 結 果 近 代 と 現 代 の 役 割 語 については かなりの 研 究 の 蓄 積 がなされてきた そして そ の 成 果 の 集 成 が 金 水 ( 2014)に 辞 典 の 形 で 示 さ れ て い る 一 方 役 割 語 の 歴 史 的 な 研 究 については ほとんどなされておら ず 関 連 す る 研 究 と し て 関 一 雄 ( 2009) の 役 柄 語 が あ げ ら れ る 程 度 で あ る 稿 者 は 西 田 ( 2015a 2015b 2016 刊 行 予 定 )で 中 古 語 を 中 心 に 役 割 語 史 研 究 の 可 能 性 について 検 討 してきた 本 稿 では それらに 続 いて 中 世 語 で の 役 割 語 研 究 の 一 端 として 軍 記 物 語 における 受 身 と 使 役 の 交 代 するような 表 現 につい て 検 討 し て い く こ と に す る 2 軍 記 物 語 に お け る 受 身 と 使 役 以 前 よ り 平 家 物 語 を は じ め と す る 軍 記 物 語 で は 現 代 語 の 感 覚 で は 受 身 が 使 用 さ れ る よ う な と こ ろ を 使 役 を 使 用 し て 表 現 し て い る 例 が 注 目 さ れ て き た 1 ( 1) 判 官 は 五 百 餘 騎 太 田 太 郎 は 六 十 餘 騎 に て あ り け れ ば な か に と り こ め あ ま す な も ら す な と て 散 々 に 攻 給 へ ば 太 田 太 郎 我 身 手 お ひ 家 子 郎 等 お ほ く う た せ 馬 の 腹 い さ せ て 引 き 退 く ( 平 家 物 語 巻 第 12 下 p.391 2 ) 当 初 これらは 武 士 の 勇 猛 さを 示 すものという 解 釈 がなされてい たが 研 究 の 進 展 とともに その 考 え 方 には 無 理 があると 指 摘 され 1 研 究 史 については 柳 田 (1994) に お い て 整 理 さ れ て い る 2 以 下 平 家 物 語 の 引 用 は 日 本 古 典 文 学 大 系 平 家 物 語 上 下 ( 岩 波 書 店 )による 下 線 は 稿 者 が 付 した 15

る よ う に な っ た そ し て 柳 田 ( 1994) が 出 て 以 来 そ れ ら は 広 義 の 使 役 の 用 法 であり 古 代 から 現 代 にまで 類 似 の 例 があるこ と を 踏 ま え て そ う い う こ と を さ せ て し ま っ た と い う 放 任 や 随 順 と 理 解 するのが 妥 当 で あ る と い う の が 日 本 語 史 に お け る 有 力 な 考 え 方 と な っ て い る ( 2) 武 士 詞 と 言 わ れ て き た 馬 の 腹 射 さ せ て は 右 の 例 と は 少 し 違 って 3 対 応 す る 無 意 志 的 表 現 が 単 純 な 無 意 志 動 詞 で は な く 受 身 表 現 で あ る 馬 の 腹 ( が ) 射 ら れ て 馬 の 腹 ( を ) 射 さ せ て 4 し か し こ の 場 合 も 無 意 志 的 に 表 現 す る こ と が で き る と こ ろ を 意 志 的 に 表 現 す る こ と に よ っ て 第 三 者 か ら 見 て も 当 事 者 か ら 見 て も 不 可 避 で あ っ た と 思 わ れ る 事 態 で あ り な が ら な お ん と か そ の 事 態 を 防 ぐ こ と が で き な か っ た も の か と い う く や し い 気 持 ち を 表 現 し て い る も の と 見 ら れ る こ の 種 の 表 現 の 例 は 既 に 引 い た よ う に 土 佐 日 記 に 見 え る 白 散 を あ る 者 ( 中 略 ) 風 に 吹 き な ら さ せ て 海 に い れ ( 元 日 ) ( 白 散 が 風 に 吹 き な ら さ れ て ) こ の 種 の 表 現 の 直 後 に は 意 志 動 詞 の 無 意 志 的 用 法 の 例 ( 海 に い れ て ) が 用 い ら れ て お り こ の 点 か ら も 右 の よ う に 解 す る の が よ い こ と が わ か る た だ し こ の 例 は 不 注 意 事 態 表 現 の 例 である こ の よ う な 表 現 も 子 ど も を 死 な せ た の よ う な 例 と 同 じ く 現 代 語 に 生 き 続 け て い る バ ッ ク 陣 の 不 注 意 で 敵 に 正 面 か ら の シ ュ ー ト を 打 た せ て し ま っ た ( p.357) ( 2)で 柳 田 ( 1994)の 指 摘 す る よ う に こ の 射 さ せ て の よ う な 3 死 なせた と 死 んだ との 対 応 を 指 す 4 射 られて とあったのを 修 正 16

表 現 は 武 士 の 強 がりに 類 することばではなく しいて 言 えば 悔 しい 気 持 ちを 表 すものであったと 考 えられる そして このような 例 は 古 代 から 現 代 にいたるまで 連 綿 と 使 用 されており 日 本 語 史 上 における 特 定 の 語 法 の 流 れとしてとらえることができると 指 摘 する ただ そ のような 理 解 が 妥 当 であったとして も 武 士 らしいこと ばづかいという 認 識 がなぜ 持 たれやすかったのか という 疑 問 が 残 る そ れ は 射 さ せ て 射 ら れ て と 討 た せ て 討 た れ て の ような 対 応 する 例 が 特 定 の 場 面 とりわけ 軍 記 物 語 でのもっとも 重 要 な 場 面 戦 場 において 多 用 されていることが その 一 因 と 考 え られる 3 一 の 谷 合 戦 場 面 で の 例 山 内 (1977) 5 は 戦 場 において 受 身 と 使 役 が 交 代 す る か の よ う に 使 用 さ れ る 例 に 注 目 し て い る そ の 代 表 例 と し て 平 家 物 語 巻 第 9 一 の 谷 の 合 戦 を 描 写 す る 二 度 之 懸 を あ げ る ( 3) 河 原 次 郎 泪 を は ら \ / と な が い て 口 惜 い 事 も の た ま ふ 物 か な た ゝ 兄 弟 二 人 あ る も の が 兄 を う た せ て お と ゝ 一 人 の こ り と ど ま ( ッ ) た ら ば い く 程 の 榮 花 を か た も つ べ き 所 々 で う た れ んよりも ひ と と こ ろ で こ そ い か に も な ら め ( p.206) ( 4) 其 時 下 人 共 河 原 殿 お と ゝ い 只 今 城 の う ち へ ま ( ッ ) さ き か けてう た れ 給 ひ ぬ る ぞ や と よ ば ゝ り け れ ば 梶 原 是 を き ゝ 私 の 黨 の 殿 腹 の 不 覚 で こ そ 河 原 兄 弟 を ば う た せ た れ 今 は と き よ く 成 り ぬ よ せ よ や ( p.207) ( 5) い か に 源 太 は 郎 等 共 と と ひ け れ ば ふ か 入 り し て う た れ させ 給 て 候 ご ざ ( ン) め れ と 申 梶 原 平 三 こ れ を き ゝ 世 に あ ら む と 思 ふ も 子 共 が た め 源 太 う た せ て 命 い き て も 何 に か せ ん か へ せ や と て と( ッ)て か へ す ( p.208) 二 度 之 懸 に は ( 3)( 4)( 5) に 挙 げ た よ う に 3 例 受 身 の う た れ と 使 役 の う た せ が 連 続 し て 使 用 さ れ て い る ( 3) 5 引 用 は 山 内 (1989)による 17

では 河 原 次 郎 の 会 話 文 ( 4) で は 下 人 と 梶 原 平 三 の 会 話 文 ( 5) で は 郎 等 と 梶 原 平 三 の 会 話 文 う た せ と う た れ が 対 応 す る か の よ う に 使 用 さ れ て い る こ れ ら に つ い て 山 内 ( 1977) で は ( 5) の 源 太 の う た れ て と うた せ て に つ い て ( 6) の よ う に 述 べ る さ ら に ( 7) の 引 用 部 分 でこ の よ う な 用 法 の 特 徴 を ま と め て い る ( 6) 前 者 は 源 太 の 戦 死 を 事 実 と し て 受 け 止 め す な お に 表 現 し て い る 後 者 は 源 太 の 戦 死 を 防 げ な か っ た 父 親 の 痛 恨 を 伝 え て い る ここに 開 き 直 った 心 の 屈 折 の あ る こ と は 否 定 で き な い け れ ど も そ れ は や は り 副 次 的 な 感 じ で あ ろ う ( p.157) ( 7) 要 す る に 問 題 の 用 法 は あ る 主 体 が そ の 身 体 の 一 部 ( こ れ に 準 ず る 馬 な ど ) や 責 任 の あ る 或 い は そ れ を 共 有 す る 身 近 な 人 に つ い て 被 害 を 受 け 或 い は 受 け よ う と す る こ と を 客 観 的 で は な く 自 分 と の 関 連 で 強 く 意 識 す る と き に 用 い ら れ る と 言 え よ う か 構 文 は 限 ら れ 意 味 に は 幅 が ある ( p.160) 山 内 ( 1977)が 指 摘 す る よ う に 受 身 と 使 役 に は 話 し 手 の 事 態 の 捉 え 方 という 点 で 何 ら か の 使 い 分 け が あ っ た と 考 え る べ き で あ ろ う 次 章 で は そ れ を 現 代 語 の 例 と 対 比 し て 検 討 す る 4 現 代 語 に お け る 受 身 と 使 役 の 交 代 可 能 な 例 現 代 語 に お い て 受 身 と 使 役 が 交 代 す る か の よ う に 使 用 さ れる 例 は とりわけ サッカーやバスケットボールのような 両 チ ー ム で ボ ー ル を 奪 い 合 っ て 試 合 を す る 球 技 に 見 る こ と が で き る ( 8) シ ュ ー ト を 打 た せ な い 浦 和 の 鉄 壁 守 備 J 1 第 1S 第 16 節 神 戸 1-1 浦 和 (20 日 ノ エ ビ ア ス タ ジ アム) デ ー タ で 見 る と 浦 和 の V の 要 因 の 一 つ に 鉄 壁 の 守 備 が あ る 被 シ ュ ー ト 数 ( 1 試 合 平 均 ) は 18 チ ー ム 中 最 も 少 な い 堅 守 が 相 手 にシ ュ ー ト を 打 た せ ず 強 さ に つ な が っ た 18

浦 和 が 16 試 合 で 打 た れ た シ ュ ー ト の 数 は 130 本 ( ス ポ ー ツ 報 知 サ イ ト 2015 年 6 月 30 日 記 事 ) ( 8)は ス ポ ー ツ 紙 の サ イ ト 記 事 で あ る こ の 中 で は 浦 和 ( レ ッ ズ)が 優 勝 し た の は 鉄 壁 の 守 備 だ っ た か ら で あ る と し て シ ュ ー ト を 打 た せ ず と す る 一 方 で 打 た れ た シ ュ ー ト と い う 言 い 方 も し ている これは 自 分 たちの 守 備 力 で 打 た せ な か っ た と い う の と 単 にシュートを 打 たれた 数 という 事 実 を 指 摘 するというの と で の 使 い 分 け が 考 え ら れ る ま た 受 身 と 使 役 の 対 応 の 例 は 打 つ 以 外 の 動 詞 に も 見 る こ と が で き る ( 9) シ ン ガ ポ ー ル 戦 で 露 呈 さ れ た 日 本 の 弱 点 こ の ま ま で は 最 終 予 戦 で や ら れ る 無 失 点 に 抑 え た と は い え 後 半 サ イ ド か ら ク ロ ス を 上 げ ら れ た 時 に 危 な い シ ー ン が 何 度 も あ っ た ( 中 略 ) 完 勝 に 近 い ゲ ー ム で も 後 半 に あ あ い う 場 面 を 作 ら れ て い る こ と 自 体 ど う か と 思 う き れ い に ク ロ ス を 上 げ さ せ て い る し 中 の 対 応 も ル ー ズ で 簡 単 に ス ペ ー ス を 突 か れ て い る ( 岩 本 輝 雄 の オ タ ク も 納 得! 2015 年 11 月 30 日 ) ( 9) で は 他 動 詞 上 げ る に 使 役 と 受 身 の 例 が あ る 試 合 の 進 行 説 明 ではクロスを 上 げられた と 受 身 を 使 用 し 日 本 チームの 立 場 からミス 等 で 相 手 チームにクロスを 上 げさせてい る と 使 役 を 使 用 す る ( 9)の 例 のように 打 つ 以 外 にも サッカーの 試 合 に 関 わる 動 詞 に も 受 身 と 使 役 と の 対 応 の 例 を 見 る こ と が で き る こ のことからすると サッカーの 試 合 においては 相 手 のチームにや られた 事 実 を 説 明 する 場 合 に は 受 身 を 使 用 し 自 分 た ち の チ ー ムのミス 等 で 責 任 のある 場 合 には 使 役 を 使 用 するという 使 い 分 け が な さ れ て い る と 考 え ら れ る 日 常 会 話 において 使 役 は 弟 に 布 団 を 上 げ さ せ よ う の よ うに 自 分 が 意 図 的 に 相 手 に 依 頼 等 をして 作 業 をさせるときに 使 19

用 するこ と が 多 い し か し ( 8)や ( 9)の 打 た せ る や 上 げ さ せ る の よ う に 自 分 の ミ ス 等 が 原 因 の 状 況 に つ い て 使 役 を 使 用 す る こ と は 想 定 し に く い 6 や は り こ れ ら は サ ッ カ ー 等 の 試 合 に お い て 使 用 さ れ や す い こ と ば づ か い と す る べ き で あ ろ う そ し て 打 た せ る な ど 使 役 を 実 際 に 試 合 に 関 わ る 選 手 や コ ーチが 会 話 文 で 使 用 すると それは 役 割 語 の 可 能 性 があるも の に な る と 考 え ら れ る ( 10) 2 度 の ミ ス に 奮 起 広 島 の 逆 転 劇 を 生 ん だ 森 崎 和 幸 の 頭 脳 プ レ ー そ の 今 野 を マ ー ク し て い た の が 森 崎 和 で あ っ た 2 失 点 目 は コ ン ち ゃ ん( 今 野 )が 微 妙 な ポ ジ シ ョ ン を 取 っ て い て 自 分 の マ ー ク だ っ た の に シ ュ ー ト を 打 た せ て し ま っ た 1 失 点 目 と い い 2 失 点 目 と い い チ ー ム メ イ ト に 迷 惑 を か け て し ま っ た ど こ か で そ の ミ ス を 取 り 返 し た い と い う 気 持 ち は あ り ました ( web ス ポ ル テ ィ ー バ 2015 年 12 月 4 日 ) ( 11) バ ス ケ ッ ト ボ ー ル 部 桐 蔭 横 浜 大 に 敗 れ 3 連 敗 / 関 東 大 学 女 子 2 部 リ ー グ 試 合 後 の コ メ ン ト 平 田 ヘ ッ ド コ ー チ デ ィ フ ェ ン ス で プ レ ッ シ ャ ー を か け ら れ な く て フ リ ー で シ ュ - ト を 打 た せ て し ま っ て 完 全 に 乗 せ て し ま っ た そ こ か ら 立 て 直 し は 少 し で き た が そ れ が 続 か な か っ た ( 以 下 略 ) ( MEIJI UNIV SUPORTS WEB 2015 年 9 月 15 日 の 試 合 の 記 事 ) ( 10) で は 広 島 ( サ ン フ レ ッ チ ェ ) の 森 崎 和 幸 選 手 が 自 分 の マ ークが 弱 いばかりに 得 点 を 許 してチームメイトに 迷 惑 をかけたので そ れ を 取 り 返 し た い と 試 合 中 考 え て い た と あ る ( 11)で は 明 治 大 学 の 女 子 バ ス ケ ッ ト ボ ー ル 部 が 試 合 に 敗 れ た 際 ヘ ッ ド コ ー チ が フ リ ー で シ ュ ー ト を 打 た せ て し ま っ て と 反 省 の 弁 を 述 べ る 6 柳 田 ( 1994)で も 取 り 上 げ ら れ た ( 自 分 の 過 ち で ) 愛 児 を 死 な せ た ( p.351) のような 例 はあるが やはり 日 常 的 なものではない 20

( 10)( 11)と も に 自 分 た ち が ミ ス を し た 結 果 的 確 な 試 合 運 び が で き な か っ た の で 相 手 に シ ュ ー ト を 打 た せ て し ま い 試 合 を 不 利 にしてしまったとする 試 合 に 出 場 する 選 手 や 選 手 に 指 示 を 出 す 当 事 者 であるコーチだ け に 責 任 感 を 強 く 感 じ て 発 言 する 会 話 文 と な っ て い る サ ッ カ ー や バ ス ケ ッ ト ボ ー ル 等 の チ ー ム 競 技 で は 一 人 のミスが 失 点 や 敗 戦 につながるだけに このような 使 役 が 会 話 文 に 使 用 さ れ る も の と 考 え ら れ る こ の 現 代 語 の ス ポ ー ツ で の 例 に つ い て は す で に 柳 田 ( 1994) か ら 引 用 し た( 2)で サ ッ カ ー で は 使 役 の 例 が 見 ら れ そ う な こ と は 示 唆 さ れ て い る と こ ろ で あ る それで は な ぜ ボ ー ル を 奪 い 合 っ て 試 合 を す る 球 技 に お い て は 軍 記 物 語 と 同 様 の 受 身 と 使 役 の 交 代 する 例 が 見 られるので あ ろ う か これらの 例 も 軍 記 物 語 と 類 似 の 使 い 分 けがなされていると 想 定 さ れ る 受 身 で は 普 通 に シ ュ ー ト を 打 た れ る の よ う に 事 実 と し て 受 け 止 め て い る 一 方 使 役 で は 自 分 の 側 の ミ ス や 悔 し い 気 持 ちも 含 めて シュートを 打 たせた のような 言 い 方 をしてい る あ る い は ゲ ー ム 戦 略 と し て そ れ を 避 け る よ う に 工 夫 す る と( 8) のような シ ュ ー ト を 打 た せ な い チ ー ム が 完 成 す る 要 するに 武 士 の 戦 う 戦 場 も 選 手 が 試 合 をするフィールドやコ ートも ともに 自 らの 責 任 を 負 うような 状 況 あるいは 直 接 的 な 責 任 のない 状 況 が 併 存 して 戦 闘 や 試 合 が 進 行 していくゆえに こ のような 表 現 が 併 用 されていると 考 えることができる 戦 闘 と 試 合 の 類 似 性 が 表 現 の 共 通 性 に つ な が っ て い る と 言 え よ う そして 軍 記 物 語 の 地 の 文 での 説 明 や サッカー 等 での 解 説 的 な 説 明 であれば それは ある 種 の 戦 闘 の 描 写 や 試 合 の 説 明 の 用 語 と 理 解 することができる しかし それら が 登 場 人 物 である 武 士 の 会 話 や あるいは 試 合 に 出 場 した 選 手 の 談 話 において 使 用 された 場 合 ある 種 のそのような 武 士 や 選 手 にとって ふさわしいことば づ か い に な っ て い る と 考 え ら れ る とすると これら の 例 には 役 割 語 の 可 能 性 があることになる 金 水 ( 2015) に よ れ ば 役 割 語 は 特 定 の こ と ば づ か い が 特 定 の 人 物 像 に 結 びつくことが 作 品 の 享 受 者 において 共 通 理 解 となってい 21

る と き に 成 立 す る と 考 え ら れ る 矢 を 射 さ せ る や シ ュ ー ト を 打 たせる 等 を 会 話 に 使 用 する 人 物 は いかにも 武 士 や 選 手 らし いことばづかいをしていることになる また 逆 に このような 会 話 文 か ら 特 定 の 人 物 像 が 想 起 さ れ る こ と に も な る ただし 現 状 での 日 本 語 話 者 の 意 識 を 考 えると サッカー 選 手 等 が シュートを 打 たせてしまった のような 使 役 を 会 話 文 で 使 用 すること 自 体 は 当 然 ありうることではあるものの いかにもサ ッカーの 選 手 らしいことばづかいと 意 識 さ れ る までに は 至 っていな い よ う で あ る 金 水 ( 2015) の 作 品 の 享 受 者 の 共 通 理 解 と な っ て いる という 点 からすると サッカーファンの 間 でそこまでの 共 通 理 解 があるとは 言 えない 現 状 では 役 割 語 に 準 ずるものというの が 妥 当 な 位 置 づ け で あ ろ う そして 軍 記 物 語 の 使 役 の 例 を 現 代 語 のスポーツ 例 と 比 較 す ると 軍 記 物 語 には 意 図 的 に 武 士 が 使 うという 意 識 があるように 見 受 けられる それは 一 連 の 戦 場 の 文 脈 の 中 で 使 用 さ れ て い る 点 か らもうかがわれる さらには 武 士 らしい 強 がりの 表 現 とするよう な 理 解 がなされた 点 も それを 補 強 するものとなる 現 代 語 でのサ ッカー 等 との 例 との 比 較 から 武 士 の 使 用 す る 使 役 のことばつ かいは 作 品 の 享 受 者 にも 共 通 理 解 のある 役 割 語 の 可 能 性 の 高 い も の と し て 考 え ら れ る の で あ る 7 5 お わ り に 役 割 語 史 の 研 究 は まだ 手 つかずの 状 態 であり さまざまな 人 物 のことばについて 個 別 的 な 指 摘 が 散 見 される 程 度 の 進 展 段 階 であ る もちろん それらは 貴 重 な 先 駆 となる 研 究 であるが いずれ もが 役 割 語 といういかにも 人 物 らしいことばが 造 形 されたという 視 点 ではなく 当 時 のそれぞれの 階 層 の 人 物 がそれに 相 応 しいこと ば づ か い を し て い た と す る 位 相 の 面 か ら の 指 摘 と な っ て い る 今 後 は それらを 現 実 世 界 (リアル)のことばづかいを 直 接 的 に 反 映 したものとしてではなく あくまでもフィクションなどの 仮 想 世 界 (ヴァーチャル)のことばづか い と し て 造 形 さ れ た 可 能 性 7 ただし 軍 記 物 語 の 使 役 の 例 は あ く ま で も フ ィ ク シ ョ ン の 作 品 内 で のものである 実 際 の 武 士 のことばづかいがどうであったかという 点 は ま た 別 途 考 察 する 必 要 がある 22

を 踏 ま え て 検 討 し て い く 必 要 が あ る 参 考 文 献 金 水 敏 2003 ヴ ァ ー チ ャ ル 日 本 語 役 割 語 の 謎 岩 波 書 店 金 水 敏 編 2007 役 割 語 研 究 の 地 平 くろしお 出 版 金 水 敏 2008 役 割 語 と 日 本 語 史 ( 金 水 敏 乾 善 彦 渋 谷 勝 己 編 シ リ ー ズ 日 本 語 史 4 日 本 語 史 の イ ン タ ー フ ェ イ ス 第 7 章 岩 波 書 店 ) 金 水 敏 2011a 言 語 資 源 論 か ら 平 安 時 代 語 を 捉 え る - 平 安 時 代 言 文 一 致 論 再 考 - 訓 点 語 と 訓 点 資 料 127 訓 点 語 学 会 金 水 敏 編 2011b 役 割 語 研 究 の 展 開 くろしお 出 版 金 水 敏 編 2014a 役 割 語 小 辞 典 研 究 社 金 水 敏 2014b フ ィ ク シ ョ ン の 話 し こ と ば に つ い て 役 割 語 を 中 心 に ( 石 黒 圭 橋 本 行 洋 編 話 し 言 葉 と 書 き 言 葉 の 接 点 Ⅰ 共 時 的 研 究 -1 ひ つ じ 書 房 ) 金 水 敏 2014c こ れ も 日 本 語 ア ル カ? 異 人 の こ と ば が 生 ま れ る と き 岩 波 書 店 金 水 敏 2015 キ ャ ラ ク タ ー 言 語 か ら 役 割 語 へ 役 割 語 キ ャ ラ ク タ ー 言 語 研 究 ワークショップ(2015 年 2 月 17 日 於 大 阪 大 学 ) 定 延 利 之 2011 日 本 語 社 会 の ぞ き キ ャ ラ く り 顔 つ き カ ラ ダ つ き こ と ば つき 三 省 堂 関 一 雄 2009 平 安 時 代 の 動 画 的 表 現 と 役 柄 語 笠 間 書 院 高 山 倫 明 2007 訓 読 語 と 博 士 語 九 州 大 学 大 学 院 人 文 科 学 研 究 院 ( 文 学 部 ) 平 成 19 年 度 社 会 連 携 セ ミ ナ ー 1 言 語 と 文 芸 和 漢 古 典 の 世 界 第 1 回 ( 2007 年 7 月 28 日 於 福 岡 市 文 学 館 ) 築 島 裕 1963 平 安 時 代 の 漢 文 訓 読 語 に 就 き て の 研 究 東 京 大 学 出 版 会 柳 田 征 司 1994 意 志 動 詞 の 無 意 志 的 用 法 -あわせて 使 役 表 現 のいわゆる 許 容 放 任 随 順 用 法 について ( 佐 藤 喜 代 治 編 国 語 論 究 第 5 集 中 世 語 の 研 究 明 治 書 院 ) 山 内 洋 一 郎 1977 軍 記 における 受 身 表 現 と 使 役 表 現 と 奈 良 教 育 大 学 国 文 1 奈 良 教 育 大 学 ( 山 内 1989 中 世 語 論 考 Ⅱ 語 法 -3 清 文 堂 出 版 ) 西 田 隆 政 2009 ツ ン デ レ 表 現 の 待 遇 性 - 接 続 助 詞 カ ラ に よ る 言 い さ し 表 現 を 中 心 に - 甲 南 女 子 大 学 研 究 紀 要 文 学 文 化 編 45 西 田 隆 政 2010 属 性 表 現 を め ぐ っ て - ツ ン デ レ 表 現 と 役 割 語 の 相 違 点 を 23

中 心 に - 甲 南 女 子 大 学 研 究 紀 要 文 学 文 化 編 46 西 田 隆 政 2011b 役 割 語 としてのツンデレ 表 現 - 常 用 性 の 有 無 に 着 目 し て - ( 金 水 編 2011b 第 14 章 ) 西 田 隆 政 2012b ボ ク 少 女 の 言 語 表 現 - 常 用 性 の あ る 属 性 表 現 と 役 割 語 の 接 点 - 甲 南 女 子 大 学 研 究 紀 要 文 学 文 化 編 48 西 田 隆 政 2014a 平 安 和 文 の 会 話 文 の 文 体 を め ぐ っ て 文 学 史 研 究 54 大 阪 市 立 大 学 国 語 国 文 学 会 西 田 隆 政 2014b メ デ ィ ア と し て の 平 安 和 文 国 語 語 彙 史 の 研 究 33 和 泉 書 院 国 語 語 彙 史 研 究 会 西 田 隆 政 2015 役 割 語 史 の 可 能 性 を 探 る(1)- 平 安 時 代 における 年 長 者 の 男 性 の 会 話 文 をめぐって- 甲 南 国 文 62 甲 南 女 子 大 学 国 語 国 文 学 会 西 田 隆 政 2016( 刊 行 予 定 ) 役 割 語 史 研 究 の 可 能 性 参 考 サイト 岩 本 輝 雄 のオタクも 納 得! シンガポール 戦 で 露 呈 された 日 本 の 弱 点 こ のままでは 最 終 予 選 でやられる https://www.legendsstadium.com/news/japan/14288/ スポーツ 報 知 シ ュ ー ト を 打 た せ な い 浦 和 の 鉄 壁 守 備 http://www.hochi.co.jp/soccer/national/20150620 -HT1T50283.html web ス ポ ル テ ィ ー バ 二 度 のミスに 奮 起 広 島 の 逆 転 劇 を 生 んだ 森 崎 和 幸 の 頭 脳 プレー http://news.livedoor.com/article/detail/10912752/ MEIJI UNIV SPORTS WEB バ ス ケ ッ ト ボ ー ル 部 桐 蔭 横 浜 大 に 敗 れ 3 連 敗 / 関 東 大 学 女 子 2 部 リーグ 戦 http://www.meispo.net/news.php?news_id=8810 (いずれも 2016 年 2 月 16 日 に 最 終 確 認 ) 付 記 本 稿 は 2015 年 12 月 6 日 神 戸 セ ン タ ー プ ラ ザ 西 館 会 議 室 で 開 催 された 文 法 史 研 究 会 で 発 表 した 役 割 語 史 の 可 能 性 を 探 る(2) - 軍 記 物 語 における 受 身 と 使 役 の 併 用 をめぐって- を 加 筆 修 正 して 成 稿 したものである 席 上 ご 意 見 いただいた 方 々に あつく 御 礼 申 しあげます 24