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S1:Chl-a 濃度 18.6μg/L S1:Chl-a 濃度 15.4μg/L B3:Chl-a 濃度 19.5μg/L B3:Chl-a 濃度 11.0μg/L B2:Chl-a 濃度実測値 33.7μg/L 現況 注 ) 調整池は現況の計算対象外である S1:Chl-a 濃度 16.6μg/

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率を求めることとした 詳細は 高槻ほか (2007) を参照されたい ア解析に使用するデータ解析に使用するデータは 前述の海面水温格子点データ (COBE-SST) と現場観測データである 前者の空間解像度は緯経度 1 度 時間解像度は月平均値となっており 海洋の健康診断表 1 の定期診断表 海面水

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1 想定地震の概要南海トラフで発生する地震は 多様な地震発生のパターンが考えられることから 次の地震の震源域の広がりを正確に予測することは 現時点の科学的知見では困難です そのため 本市では 南海トラフで発生する地震として 次の2つの地震を想定して被害予測調査を行いました (1) 過去の地震を考慮し

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第 5 節 海洋生物の分布とその特殊性 日本海岸 満潮線 干潮線 潮位 平均潮位 太平洋 満潮線 平均潮位 干潮線 図 1 日本近海の海流 黒矢線は暖流 細破線は寒流の流路を示す 色域は表層において暖流系の水の卓越する範囲 色域は寒流 系の水の卓越する範囲 文献 1 をもとに作図 図 2 非調和型 上 金沢 と調和型 下 東京 の潮汐リズム 文献 3 をもとに作図 馬と韓国の間の朝鮮海峡 水深 95m 本州と北海 小さく 北陸地方では 30cm ほどしかない そのため 道の間の津軽海峡 水深 150 449m 樺太と北海 潮間帯はきわめて狭く 干潟なども発達しない さ 道の間の宗谷海峡 水深 67m 大陸と樺太の間の らに 対馬暖流の勢いも夏季には強く流入量も多い 間宮海峡 タタール海峡 = 水深 20m であり 日 のに対して 冬季には勢力も弱いので 海水面の高 本海は 周囲を陸地で囲まれた内海的な特徴を持っ さが夏に高く冬に低い非調和型の潮汐リズムがみら ている れる このような環境は 潮間帯に暮らす固着性の 日本海に流入している唯一の暖流である対馬暖流 生物にとっては居心地が悪く 移動性のカサガイ類 は 黒潮の分流で 輸送量は黒潮の 1/10 程度といわ が優占する結果となっている れている 北上する対馬海流は 朝鮮半島沿いに流れ 3 海洋プランクトンの大量発生 ス 4 5 6 7 ていくもの 本州沿いに流れていくものなどに分かれ 1 2 プリング ブルーム るが 地球自転の影響でたえず右向きの偏向力を受け るため 秋田県沖あたりで東寄り 日本側 に集まり その多くは津軽海峡を抜け太平洋へ流れ出るが 一部 上述したように 日本海はたらいのような構造を は北海道西岸をさらに北上し続ける 図 1 しているため 周辺の海との海水交換は表層に限ら れている 対馬暖流の流れる本州沿岸域でも 表層 1 2 潮 汐 3 4 5 6 水と中層水 せいぜい 7 8250m まで の下層には 日 9 10 本海固有水とよばれる冷水塊が広がっている 図 3 潮汐 すなわち潮の満ち引きは 地球 月 太陽 58 頁 間の位置と密接に関係するが 毎日の干満差は 地 新潟大学理学部附属臨海実験所では 実験所の沖 球の自転と月の引力の影響を強く受ける 満潮から 合に3つの観測定点を定めて 1964 年以来継続して 満潮 または干潮から干潮までの時間差は 平均し 海水温や透明度を測定してきた 図 4 58 頁 図 て約 12 時間 25 分である そのため 普通は1日に 4 にあるように 海水の表面温度は2月から4月の 2回ずつ満潮と干潮が交互に繰り返され そこに潮 平均 10 が最低で 8 9月の 27 が最高である 間帯が形成される 図 2 に示すように 太平洋岸では 興味あることは この 50 年で 2月 4月の最低 干満差は関東地方で 2m 有明海などでは 5m にも及 水温が少しずつ上昇してきていることである 一方 ぶ また 平均潮位も年間を通じて一定で 調和型 夏の高水温にはめだった変化は見られない 地球規 の潮汐リズムがみられる 一方 日本海の干満差は 模の温暖化の影響は 佐渡近辺では 冬季の海水温 57!"#!"#!$%&'()*+,--...$6 "01!21!3..."45"4 8

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