中 学 第 一 分 野 簡 単 にできる 手 回 し 交 流 発 電 機 の 開 発 と 交 流 電 流 の 学 習 * 福 井 県 坂 井 市 立 三 国 中 学 校 月 僧 秀 弥 目 的 Ⅱ. 発 電 機 の 構 造 中 学 校 理 科 における 新 学 習 指 導 要 領 1) において 交 流 電 流 に 関 しての 学 習 が 追 加 された 交 流 電 流 は 家 庭 で 使 われている 電 流 であるが 電 流 の 変 化 の 様 子 が 見 えないため イメージすることは 難 しい そこで 実 験 によって 交 流 電 流 を 理 解 するために 手 回 し 交 流 発 電 機 を 開 発 し それを 用 いた 授 業 実 践 を 行 った 概 要 Ⅰ. 手 回 し 交 流 発 電 機 の 特 徴 今 回 作 製 した 手 回 し 交 流 発 電 機 は 以 下 のような 特 徴 を 持 っている 1. 指 で 軸 を 回 転 させることにより 簡 単 に 発 光 ダイ オードを 点 灯 させることが 可 能 である 2. 発 電 機 に 直 流 交 流 実 験 機 やオシロスコープをつな ぐことにより 交 流 発 生 の 確 認 や 電 流 の 波 形 が 観 察 できる 3. 100V のコンセントを 使 用 せず 簡 単 に 安 全 な 交 流 電 流 の 実 験 を 行 うことができる 4. コイルではなく 磁 石 を 回 転 させるために 安 定 した 発 電 をすることができる 3) 図 1 手 回 し 交 流 発 電 機 の 構 造 手 回 し 交 流 発 電 機 の 構 造 を 図 1 に 示 す 2 個 の 磁 石 で 挟 んだ 長 い 竹 串 が 回 転 軸 になる 長 い 竹 串 の 横 に 短 い 竹 串 を 磁 石 の 端 に 川 の 字 に 並 べ 2 個 の 磁 石 は 回 転 軸 の 他 に 短 い 2 本 の 竹 串 をスペーサーにすることで 平 行 になっている 透 明 なパイプにホルマル 線 を 巻 き コイルにした コイルの 中 央 で 磁 石 を 回 転 させる ことができる 構 造 である 2) ( 写 真 2) 磁 石 は 裏 表 着 磁 の 磁 石 を 使 用 しているので 磁 石 が 回 転 すると コ イルの 中 を 貫 く 磁 束 が 変 化 する そのため 電 磁 誘 導 によってコイルに 電 流 が 流 れ 写 真 3 のように 発 光 ダ イオードを 点 灯 させることができる 写 真 1 手 回 し 交 流 発 電 機 整 流 器 直 流 交 流 実 験 機 写 真 2 筒 の 上 から 見 た 磁 石 の 様 子 * げっそう ひでや 福 井 県 坂 井 市 立 三 国 中 学 校 教 諭 913-0043 福 井 県 坂 井 市 三 国 町 錦 1-7-3 (0776)82-1177 E-mail h_gessou@yahoo.co.jp 1
写 真 3 点 灯 している 手 回 し 交 流 発 電 機 磁 石 を 回 転 させる 構 造 であるため 発 光 ダイオード との 接 続 も 簡 単 で 回 路 が 単 純 で 分 かりやすい 接 点 が 少 ないため 接 触 不 良 がなく 安 定 して 発 電 できる 発 光 ダイオードは 極 性 があるため 直 流 発 電 機 を 接 続 したときには 発 電 機 の 回 転 方 向 によって 点 灯 し たり 点 灯 しなかったりするが 交 流 発 電 機 の 場 合 に は 発 電 機 の 軸 がどちらに 回 転 しても 発 光 ダイオー ドは 点 灯 する 今 回 の 交 流 発 電 機 を 使 用 すると 電 流 が 相 互 に 流 れるため 発 光 ダイオードは 点 滅 する 教 材 教 具 の 製 作 方 法 手 回 し 交 流 発 電 機 の 製 作 Ⅰ. 材 料 および 治 具 手 回 し 交 流 発 電 機 ホルマル 線 又 はエナメル 線 (0.2mm: 約 16g) ストロー(φ5mm) 透 明 な 筒 (φ40mm: 穴 を 開 け 幅 1mm の 両 面 テープを 貼 る) ドーナツ 型 磁 石 (φ30mm: 厚 手 の 両 面 テープを 貼 る) 竹 串 (φ3mm: 長 い 竹 串 には 端 に 熱 収 縮 チューブをつける) 発 光 ダイオード(3.0V 白 色 ) アルミテープ 整 流 器 ダイオード 4 つ 端 子 直 流 交 流 実 験 機 赤 色 発 光 ダイオード 1 つ 緑 色 発 光 ダイオード 1 つ 導 線 ミノムシクリップ(2 つ) 手 回 し 交 流 発 電 機 製 作 のための 治 具 など フィルムケース 切 れ 目 を 入 れた 木 の 棒 (φ10mm) 紙 やすり Ⅱ. 組 み 立 ての 留 意 点 1. 手 回 し 交 流 発 電 機 の 作 製 と 留 意 点 ⑴ 透 明 の 筒 には 中 央 に 向 かい 合 うように 2 カ 所 上 の 方 にお 互 いの 穴 が 向 かい 合 うように 4 カ 所 φ5mm の 穴 を 開 け 中 央 の 穴 にストローを 通 す ⑵ ホルマル 線 の 一 方 の 端 3cm 程 度 を 紙 やすりで 磨 く 時 は この 部 分 が 発 光 ダイオードとの 接 点 になるた め 丁 寧 に 磨 く ⑶ 筒 の 中 央 の 穴 の 上 下 に 両 面 テープを 巻 き その 上 か らホルマル 線 を 400 回 巻 く 線 を 巻 く 時 は 強 くホル マル 線 を 引 っ 張 り 途 中 で 切 ったり 線 が 絡 まったり しないよう 注 意 する また 線 を 巻 く 向 きが 途 中 で 逆 にならないように 注 意 する ⑷ 磁 石 を 取 り 付 けるときには フィルムケースと 先 を 凹 型 に 削 った 棒 を 治 具 として 使 用 する 磁 石 が 筒 に 当 たると 磁 石 の 回 転 が 悪 くなるので 長 い 竹 串 が 両 面 テープの 中 央 に 付 くように 置 く ⑸ 筒 の 端 の 穴 から 出 たホルマル 線 を 発 光 ダイオードの 2 本 の 足 に 巻 き 付 け 上 からアルミテープで 貼 る この 部 分 が 接 点 であるので 強 く 押 させて 線 が 外 れ ないようにする 2. 整 流 器 直 流 交 流 実 験 機 の 作 製 授 業 の 際 には 手 回 し 交 流 発 電 機 の 他 に 電 流 の 向 きが 交 互 に 変 わることを 確 認 するため 赤 緑 の 2 個 の 発 光 ダイオードの 足 を 極 性 が 逆 になるようにつないだ 直 流 交 流 実 験 機 を 製 作 し 使 用 した 交 流 を 整 流 して 脈 流 にするために ダイオードをブ リッジ 回 路 で 接 続 した 整 流 器 を 作 製 し 使 用 した 写 真 4 整 流 器 のダイオードのブリッジ 回 路 赤 黒 の 導 線 に 直 流 電 流 が 出 力 写 真 5 直 流 交 流 実 験 器 の 発 光 ダイオードの 部 分 2
学 習 指 導 方 法 今 回 の 授 業 実 践 では 手 回 し 交 流 発 電 機 を 生 徒 に 授 業 時 間 内 に 作 らせるのではなく 予 め 用 意 した 発 電 機 を 用 いた これはこの 教 材 を 用 いることで 大 幅 に 学 習 時 間 が 増 えてしまうことを 避 けるためと この 発 電 機 は 構 造 が 簡 単 で 生 徒 は 作 らなくても 発 電 の 仕 組 みが 容 易 に 理 解 できるためである 授 業 では 発 光 ダイオード 付 きの 発 電 機 以 外 に 発 光 ダイオードを 外 し 端 子 をつけた 発 電 機 も 使 用 した( 写 真 6) 3) 写 真 8 手 回 し 交 流 発 電 機 の 電 流 の 変 化 ビデオカメラで 撮 影 し 複 数 のコマ 画 像 を 貼 り 付 けて 合 成 Ⅳ. 整 流 の 実 験 整 流 器 を 発 電 機 に 接 続 して 整 流 器 に 直 流 交 流 実 験 機 をつなぎ 整 流 器 を 通 すと 交 流 電 流 が 直 流 電 流 に なっていることを 確 認 実 践 効 果 写 真 6 端 子 付 きの 発 電 機 授 業 展 開 Ⅰ. 電 磁 誘 導 の 確 認 手 回 し 交 流 発 電 機 の 軸 を 回 し 発 電 を 体 験 電 磁 誘 導 誘 導 電 流 の 復 習 と 確 認 Ⅱ. 交 流 の 確 認 と 説 明 乾 電 池 と 直 流 交 流 実 験 機 を 使 い 乾 電 池 が 直 流 電 流 であることを 確 かめる 手 回 し 交 流 発 電 機 を 直 流 交 流 実 験 機 につなぎ 発 電 機 が 交 流 電 流 を 発 生 していることを 確 認 ( 写 真 7) 授 業 実 践 の 結 果 今 回 開 発 した 手 回 し 交 流 発 電 機 は 以 下 の 点 で 交 流 学 習 に 効 果 的 な 器 具 であることが 分 かった Ⅰ. 電 磁 誘 導 の 復 習 に 有 効 Ⅱ. 交 流 の 確 認 と 学 習 を 効 果 的 に 進 めることができる Ⅲ. 整 流 を 示 すことにより 直 流 電 流 と 交 流 電 流 の 違 いを 確 認 することができる などの 点 においてこれまでの 教 材 より 授 業 で 生 かし やすい 授 業 後 にアンケートを 実 施 した その 結 果 を 表 1 に 示 す ほとんどの 生 徒 が この 器 具 を 使 った 授 業 で 実 験 が 内 容 の 理 解 に 役 立 ったと 答 えている また 楽 し みながら 授 業 を 受 けている 授 業 後 の 感 想 は 以 下 の 通 りである 発 光 ダイオードを 左 右 に 振 ったら 2 つとも 光 がつ いたのですごいと 思 った 興 味 を 持 って 実 験 することができた 途 中 とまど うこともあったが 無 事 に 楽 しく 実 験 してまとめる ことができた 直 流 と 交 流 の 違 いが 最 初 はいまいち 分 からなかった が 交 流 のいいところ 直 流 の 特 徴 などが 知 れて 実 験 も 楽 しかった 表 1 授 業 後 のアンケート Q1 この 実 験 器 具 を 使 っての 授 業 は 楽 しかったかですか 楽 しい やや 楽 しい やや 楽 しくない 楽 しくない 17 11 0 0 写 真 7 直 流 交 流 実 験 機 を 振 っている 写 真 Ⅲ. 交 流 の 波 形 を 確 かめる 実 験 発 電 機 をオシロスコープにつなぎ 波 形 を 観 察 し 交 流 電 流 の 波 形 であることを 確 認 ( 写 真 8) Q2 この 装 置 を 使 った 学 習 は 内 容 の 理 解 に 役 立 ちましたか 役 だった やや 役 だった やや 役 立 たない 役 立 たない 16 12 0 0 生 徒 数 =28 3
その 他 補 遺 事 項 Ⅰ. 科 学 工 作 教 室 での 工 作 科 学 館 などで 行 った 科 学 工 作 教 室 でこの 発 電 機 の 製 作 を 行 った 製 作 時 間 は 1 時 間 である このときには 手 回 し 懐 中 電 灯 として 製 作 した 授 業 と 違 い 手 のひ ら 発 電 機 という 名 前 で 紹 介 した 作 業 の 手 順 のプリントを 元 に 筒 にコイルを 巻 くこと から 始 めた コイルを 400 回 巻 くことに 戸 惑 う 子 もい たが 始 めると 夢 中 でコイルを 巻 き 15 30 分 で 巻 くことができた さらに 磁 石 を 入 れて 発 光 ダイオード をホルマル 線 につなぎ 作 製 した 自 ら 巻 いたコイル を 使 って 簡 単 に 発 電 できることに 驚 いていた 多 くの 児 童 が 何 回 も 軸 を 回 して 発 光 ダイオードがつくことを 確 認 したり どのように 軸 を 回 転 させるとより 長 く 発 光 ダイオードが 点 灯 するか 調 べたりしていた 工 作 教 室 で 製 作 したときには 発 光 ダイオードが 点 灯 しないものが 数 個 あった その 原 因 はホルマル 線 の 巻 く 向 きを 途 中 で 逆 転 ホルマル 線 と 発 光 ダイオード の 接 続 不 良 ホルマル 線 の 断 線 が 原 因 であった その ため ホルマル 線 の 巻 く 向 きに 注 意 すること ホルマ ル 線 をやすりで 丁 寧 に 磨 き 発 光 ダイオードと 接 続 する こと ホルマル 線 を 強 く 引 っ 張 り 切 ることがないよう に 注 意 するようにした その 結 果 不 良 品 の 発 生 はな くなった 教 室 後 の 感 想 として 参 加 した 児 童 の 保 護 者 から 子 供 だけではなく 家 族 全 員 で 楽 しめました 長 男 は 帰 宅 後 家 の 中 にあるモーターをさかんに 観 察 しておりましたし あれだけがんばって 回 しているの にチョッとしか 点 かない 事 から 発 電 所 の 凄 さを 話 して いました という 感 想 をいただいた 参 加 した 児 童 だけでなく 保 護 者 も 発 電 体 験 を 通 して 学 ぶことがで きたようである Ⅱ. 謝 辞 本 教 材 開 発 に 当 たって 平 成 21 年 度 福 井 県 初 等 中 等 教 育 研 究 奨 励 事 業 助 成 の 一 部 を 使 用 した 4
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参 考 文 献 1) 文 部 科 学 省 学 習 指 導 要 領 (2009). 2) 科 学 教 育 ボランティア 研 究 大 会 で 淺 井 武 二 氏 が 紹 介. 3) 月 僧 秀 弥, 葛 生 伸 : 応 用 物 理 教 育,34[2],47-52 (2010). 4) 三 浦 登, 岡 村 定 矩 他 : 新 しい 科 学 1 分 野 上, 東 京 書 籍 (2007). 6