今 月 の 指 導 (9 月 ) 江 戸 東 京 博 物 館 見 学 のポイント 等 教 育 研 究 所 6 年 歴 史 江 戸 の 文 化 の 学 習 と 結 び 付 けて 加 藤 良 子 夏 休 みが 終 わり 2 学 期 が 始 まりました まだまだ 厳 しい 暑 さですが 気 合 を 入 れて 充 実 した 学 習 になるように 指 導 の 計 画 を 立 ててください さて 今 回 は 前 回 の 続 きで 江 戸 東 京 博 物 館 見 学 の 手 立 ての 第 2 弾 です 6 年 生 の2 学 期 が 始 まると 江 戸 の 文 化 と 新 しい 学 問 ( 東 京 都 小 学 校 社 会 科 研 究 会 指 導 計 画 による 小 単 元 名 )の 学 習 が 始 まると 思 います その 前 後 に 江 戸 東 京 博 物 館 の 見 学 を 計 画 している 学 校 も 多 いと 思 い ます 学 習 内 容 と どの 展 示 物 が 結 びついているのかが 分 かれば より 理 解 の 助 けになる と 思 います では 活 気 あふれる 江 戸 の 文 化 に 焦 点 を 合 わせてご 案 内 していきます (1) 小 単 元 の 目 標 と 本 時 ( 小 単 元 の 導 入 )の 活 動 と 江 戸 博 との 関 連 1 小 単 元 の 目 標 江 戸 時 代 の 文 化 や 学 問 に 関 心 をもち 歌 舞 伎 や 浮 世 絵 国 学 や 蘭 学 について 教 科 書 や 資 料 集 博 物 館 などで 調 べ 社 会 が 安 定 するにつれて 文 化 が 町 人 の 間 に 広 まり また 新 しい 学 問 が 生 まれてきたことが 分 かる 2 第 1 時 ( 導 入 の 学 習 )のねらいと 実 際 の 活 動 < 本 時 のねらい> 教 科 書 や 資 料 集 の 歌 舞 伎 を 楽 しむ 人 々 を 始 め 役 者 絵 や 風 景 画 江 戸 の 行 事 を 伝 える 浮 世 絵 を 通 して 江 戸 の 人 々のようすについて 考 えたり 歌 舞 伎 や 浮 世 絵 について 知 ろうとしたりする 1 芝 居 小 屋 をのぞいてみよう どんな 様 子 か どんなことが 想 像 できるか 話 し 合 おう 芝 居 小 屋 の 中 のようすを 伝 える 資 料 は どの 教 科 書 や 資 料 集 にも あります 導 入 の 話 し 合 いにぜひ 使 ってください 演 じられている 演 目 しばらく は 歌 舞 伎 十 八 番 の 暫 です 演 じているのは 市 川 団 十 郎 です < 資 料 1> 左 の 資 料 は 教 科 書 にはありませ んが 江 戸 三 座 ( 中 村 座 森 田 座 市 村 座 )が 集 まっている 通 りがにぎわ っている 様 子 が 描 かれています 2 つの 絵 から 歌 舞 伎 が 大 変 人 気 が あったことがとらえられます
➊ 江 戸 博 にある 芝 居 小 屋 と 歌 舞 伎 の 舞 台 6 6 階 の 日 本 橋 を 渡 るとき 左 下 を 見 ると 江 戸 三 座 の 一 つ 中 村 座 の 正 面 入 り 口 を 原 寸 大 に 復 元 した 大 型 模 型 があります 教 科 書 では 浮 世 絵 に 描 かれていますが 博 物 館 ではリア ルな 当 時 の 芝 居 小 屋 を 体 験 すること やぐら ができます 櫓 をみると あっ 同 じ だ と 分 かると 思 います 6 芝 居 小 屋 の 内 側 は 展 示 スペースになっていて 中 村 座 全 体 の 模 型 もあります ま す せ き さ じ き せ き な ら く 内 部 をのぞくと 枡 席 の 様 子 や 桟 敷 席 の 造 りが 分 かります 舞 台 の 下 の 奈 落 では 人 力 で 舞 台 を 回 している 様 子 も 見 ることができますよ 6 芝 居 小 屋 の 舞 台 の 一 場 面 も 再 現 さ れています 教 科 書 の 暫 ではありま せんが 同 じ 歌 舞 伎 十 八 番 の 助 六 です 役 者 は 同 じく 市 川 団 十 郎 で す 紫 の 鉢 巻 きをしているのが 助 六 で とてもかっこよく 人 気 がありました 鉢 巻 きの 色 は 江 戸 紫 という 色 で 江 戸 の 人 々の 好 んだ 色 です 子 どもたち が 歌 舞 伎 の 舞 台 を 実 感 できると 思 い ます 今 年 できた 新 しい 歌 舞 伎 座 でも 助 六 が 演 じられました 今 も 人 気 が 続 いていることが 分 かりますね 1の< 資 料 1>からは 芝 居 小 屋 が 大 変 にぎわっていることと 観 客 の 多 くは 町 人 で あることが 押 さえられればよいと 思 います 江 戸 のまちの 人 々が 芝 居 に 夢 中 になれる そんな 社 会 の 背 景 を 考 えると 江 戸 時 代 は 文 化 が 発 展 する 余 地 がある つまり 社 会 が 安 定 していたと 考 えることが 出 来 ます また 文 化 の 担 い 手 について 考 える 資 料 にもな ると 思 います 2 歌 舞 伎 や 人 形 浄 瑠 璃 がまちの 人 々に 広 まるきっかけは どの 教 科 書 にも 近 松 門 左 衛 門 が 登 場 しています 近 松 門 左 衛 門 は 人 形 浄 瑠 璃 や 歌 舞 伎 の 脚 本 をたくさん 書 きました 町 人 に 広 まるきっかけになったのは 実 際 の 心 中 事 件 を 扱 った 曽 根 崎 心 中 ですが 子 どもには 分 かりにくいと 思 います 江 戸 博 に 近 松 に 関 する 常 設 の 展 示 はありませんので 教 科 書 や 資 料 集 での 学 習 になります
6 歌 舞 伎 は 江 戸 時 代 の 初 めから 人 気 はありましたが 近 松 が まちの 人 々を 主 人 公 にした 脚 本 を 書 いて 上 演 したらさら に 人 気 が 出 て 大 阪 京 都 江 戸 で 盛 んに 作 品 が 上 演 さ れるようになりました 初 めは 人 形 浄 瑠 璃 の 脚 本 を 書 いてい ましたが 歌 舞 伎 の 脚 本 も 書 きました まちの 人 が 分 かりや すい 演 目 が 増 えたことで 町 人 たちが 芝 居 を 見 ることが 増 え 役 者 を 描 いた 浮 世 絵 も 盛 んにつられるようになりました 江 戸 時 代 は 260 年 以 上 続 く 長 い 時 代 です その 中 で 元 禄 文 化 とか 化 政 文 化 とか 特 に 有 名 な 人 や 作 品 が 多 く 出 た 時 期 があります 中 学 校 の 教 科 書 では それらの 区 別 がありますが 小 学 校 では 近 松 が 多 くの 人 形 浄 瑠 璃 や 歌 舞 伎 の 脚 本 を 書 き それら の 作 品 を 多 くの 人 々が 楽 しんだことが 分 かればよいと 思 います 江 戸 の 文 化 を 担 った 歌 舞 伎 と 浮 世 絵 は 密 接 に 関 連 しながら 発 展 していきました 3 浮 世 絵 の 広 まり 歌 舞 伎 が 広 まると 人 気 役 者 を 描 いた 多 色 刷 りの 版 画 浮 世 絵 ( 錦 絵 とも) が 江 戸 を 中 心 に 広 くつくられ 売 られるようになります 大 量 に 印 刷 されたので と ても 安 く 手 にすることができたそうです 浮 世 絵 の 絵 師 で 教 科 書 に 一 番 多 く 取 り 上 げ られているのが 歌 川 広 重 です その 他 に 美 人 画 の 得 意 な 喜 多 川 歌 麿 独 特 の 役 者 絵 を 描 く 東 洲 斎 写 楽 富 嶽 三 十 六 景 で 有 名 な 葛 飾 北 斎 などが 教 科 書 によっては 取 り 上 げられています < 教 育 同 人 社 資 料 集 p69 より> 浮 世 絵 の 作 り 方 は 江 戸 博 にも 展 示 されて います 版 木 の 実 物 を 見 ると 彫 りの 細 かさ 摺 り 正 確 さにびっくりしますよ 浮 世 絵 を 売 っている 本 屋 さんも 実 物 大 で 展 示 されているので どん なふうに 売 られていたかが 分 かります 歌 川 ( 安 藤 ) 広 重 は 江 戸 後 期 の 浮 世 絵 師 で もともとは 武 家 の 出 身 です 初 めは 美 人 画 を 描 い ていましたが 江 戸 から 京 までの 東 海 道 の 風 景 を 描 いた 東 海 道 五 十 三 次 が 大 当 たりし 風 景 画 を 得 意 とするようになりました 絵 を 見 た 多 くの 人 が 旅 い 出 たいと 思 ったこ とでしょう
❸ 江 戸 博 にある 浮 世 絵 に 関 連 がある 展 示 5 5 階 の 出 版 と 情 報 のコーナーで す 色 の 数 だけ 版 木 があります 一 色 ずつ 増 えていく 様 子 が 分 かりま す 一 枚 の 紙 が 色 の 数 だけ 摺 ら れ 美 しい 浮 世 絵 が 完 成 していきま す 彫 りの 細 やかさ 摺 りの 正 確 さ を 実 際 に 見 てください 素 晴 らしい 江 戸 の 技 術 を 感 じ 取 ることが 出 来 ると 思 います 出 来 上 がった 浮 世 絵 が 店 先 に 並 べら れています 実 際 に 東 海 道 筋 にあった 本 屋 さんの 店 先 を 実 物 大 に 復 元 していま す 江 戸 の 土 産 として 浮 世 絵 は 大 変 喜 ばれました 当 時 は とても 安 かったそう です それに 歩 いて 旅 する 人 がほとんど だったので 軽 いのは 喜 ばれますね 役 者 の 絵 は 着 物 の 柄 や 髪 形 など ファッ ション 誌 の 役 割 もしていたそうです 江 戸 ソーン 最 後 は 江 戸 の 美 や 芝 居 に 関 する 展 示 です パネルの 展 示 ですが 広 重 の 絵 を 真 似 して 描 いた ゴッホの 絵 があります 教 科 書 によっては 同 じものがありま す 日 本 の 浮 世 絵 が 西 洋 の 画 家 にも 影 響 を 与 えたことが 分 かりま す 小 さくて 見 過 ごしそうですが 葛 飾 北 斎 が 家 で 仕 事 をしている 展 示 があります 見 つけてみて ください 北 斎 は とても 長 生 きでした ずい 分 お 爺 さんに 見 えます でも 気 迫 が 伝 わってくる ようです
(2) 教 科 書 に 出 ている 資 料 の 一 覧 表 教 科 書 に 載 っている 資 料 を 一 覧 表 にしてみました *は 江 戸 博 に 同 じが 類 似 の 模 型 や 展 示 資 料 があるものです 入 れ 替 えがあってないときもありますが 見 学 の 折 にでも 役 立 ててください A 新 しい 社 会 ( 東 京 書 籍 ) B 小 学 社 会 ( 教 育 出 版 ) 絵 で 見 る 江 戸 時 代 の 人 々 江 戸 の 文 化 と 新 しい 学 問 1.えがかれた 江 戸 のまちかど( 熙 代 勝 覧 )* p86 87 にぎわう 都 市 花 開 く 文 化 1. 活 気 あふれる 江 戸 のまち( 熙 代 勝 覧 )* p72 2. 江 戸 の 日 本 橋 付 近 の 様 子 * p88 2. 大 阪 の 港 のにぎわい* p73 3. 江 戸 の 地 図 * p88 3. 板 橋 宿 の 様 子 ( 木 曾 街 道 板 橋 宿 栄 泉 画 ) p73 4. 本 の 問 屋 の 店 先 * p88 4. 今 も 残 る 一 里 塚 ( 東 京 都 板 橋 区 ) p73 5. 歌 舞 伎 を 見 る 人 々( 中 村 座 の 観 客 席 )* p89 5. 歌 舞 伎 の 芝 居 小 屋 につめかける 人 々( 想 像 図 )* p74 6.オランダ 正 月 * p89 7.ハルマ 和 解 ( 辞 典 の 見 開 き) p89 6. 歌 舞 伎 を 楽 しむ 人 々* p75 7. 現 在 の 人 形 浄 瑠 璃 の 舞 台 p75 8. 歌 舞 伎 役 者 の 浮 世 絵 ( 市 川 男 女 蔵 奴 一 平 ) p89 8. 近 松 門 左 衛 門 p75 9. 歌 舞 伎 を 楽 しむ 人 々* p90 9. 富 嶽 三 十 六 景 ( 凱 風 快 晴 ) ( 葛 飾 北 斎 )* p75 10. 近 松 門 左 衛 門 p90 10. 美 人 画 ( 喜 多 川 歌 麿 )* p75 11. 歌 舞 伎 のパリ(フランス) 公 演 の 様 子 p90 11. 役 者 絵 ( 大 谷 鬼 次 江 戸 兵 衛 )( 東 洲 斎 写 楽 ) p75 12. 旧 金 比 羅 大 芝 居 の 上 演 に 集 まった 人 々 p91 12. 歌 川 広 重 p75 13. 江 戸 時 代 からの 舞 台 装 置 ( 奈 落 )* p91 13. 松 尾 芭 蕉 p75 14. 両 国 の 花 火 ( 広 重 名 所 江 戸 百 景 )* p91 14. 広 重 の 浮 世 絵 ( 名 所 江 戸 百 景 - 大 はしあけたの 夕 立 )*p75 15. 江 戸 時 代 の 相 撲 * p91 15.ゴッホの 絵 ( 名 所 江 戸 百 景 - 大 はしあけたの 夕 立 )* p75 16. 歌 川 広 重 p92 16. 旅 を 楽 しむ 人 々( 伊 勢 神 宮 へ 向 かう 人 々の 様 子 ) p76 17. 歌 川 広 重 の 東 海 道 五 十 三 次 ( 京 都 三 条 大 橋 ) p92 17. 佐 渡 金 山 で 働 く 人 々 p76 18.ゴッホ 作 品 ( 人 物 の 背 景 に 浮 世 絵 )* p92 18. 牛 方 宿 ( 長 野 県 小 谷 村 ) p76 19. 東 洲 斎 写 楽 の 役 者 絵 ( 大 谷 鬼 次 江 戸 兵 衛 ) p93 19. 主 な 街 道 航 路 を 示 した 日 本 地 図 * p76 77 20. 喜 多 川 歌 麿 の 美 人 画 * p93 20. 北 前 船 ( 復 元 )* p76 21. 葛 飾 北 斎 の( 富 嶽 三 十 六 景 深 川 万 年 橋 下 )* p93 21. 箱 根 の 関 所 ( 復 元 ) p76 22. 江 戸 時 代 のこっけい 本 のヘ ストセラー 東 海 道 中 膝 栗 毛 * 22. 飛 脚 p76 23. 寺 子 屋 * p93 23. 大 井 川 の 渡 し( 広 重 東 海 道 五 十 三 次 - 大 井 川 駿 岸 )p76 A-1.B-1 日 本 橋 通 りの 絵 熙 代 勝 覧 は 半 蔵 門 線 三 越 駅 改 札 から 三 越 に 行 く 通 路 にレプリカが 展 示 されています ( 下 の 写 真 ) 通 った 折 には 見 てください B-2. 絵 に 描 かれている 菱 垣 廻 船 の 模 型 が 展 示 されています 大 坂 から 江 戸 に たくさんの 下 り 物 を 運 びました 浮 世 絵 は 教 科 書 と 同 じものではあ りませんが 展 示 があります 参 考 にな 24. 全 国 の 田 畑 の 面 積 (グラフ) p77 25. 藍 の 加 工 p77 26. 江 戸 時 代 の 相 撲 の 様 子 と 現 在 の 大 相 撲 の 本 場 所 *p78 27. 江 戸 時 代 の 花 火 の 様 子 と 現 在 の 隅 田 川 花 火 大 会 *p78 28. 江 戸 のまちの 屋 台 * p78 29. 現 在 の 歌 舞 伎 の 舞 台 p79 30. 地 方 で 続 けられている 歌 舞 伎 の 舞 台 ( 福 島 県 桧 枝 岐 村 ) 31. 旧 金 比 羅 大 芝 居 金 丸 座 重 文 ( 香 川 県 琴 平 町 ) p79 32. 子 どもが 演 じる 歌 舞 伎 ( 石 川 県 小 松 市 )
ると 思 います ちょっとおまけ( 三 越 本 店 地 下 1 階 出 入 り 口 半 蔵 門 線 三 越 駅 地 下 通 路 壁 面 に 展 示 ) 街 を 歩 いていると 時 折 博 物 館 と 同 じ ような 発 見 をします この 写 真 は 教 科 書 で 紹 介 されている 熙 代 勝 覧 と 同 じで す 通 路 に 展 示 されているので 長 い 絵 巻 物 の 全 体 を 紹 介 しています 江 戸 時 代 の 日 本 橋 から 神 田 に 至 る 通 りの 様 子 がよ く 伝 わってきます 魚 や 野 菜 を 売 る 人 の 威 勢 のよい 掛 け 声 が 聞 こえてくるようで おおだな す 江 戸 一 の 大 店 三 井 越 後 屋 は 今 の 三 越 本 店 と 同 じ 位 置 です 今 回 は 江 戸 の 文 化 の 学 習 に 江 戸 東 京 博 物 館 をどう 活 用 した らよいかを 導 入 の 活 動 を 通 して 具 体 的 に 紹 介 しました 活 動 例 ですので まだまだ 様 々に 活 動 できると 思 います 江 戸 の 文 化 だけではなく 最 近 は 防 災 とか 環 境 という 視 点 で 博 物 館 を 訪 れてくる 人 もいます これからは 東 京 オリンピック が 注 目 さ れそうですが 昭 和 の 生 活 を 知 る 展 示 もあります 学 習 に 合 わせ て 学 習 に 生 かせるように 活 用 できるとよいと 思 います 博 物 館 を 活 用 するように 学 習 指 導 要 領 に 示 されています た だ 見 学 に 行 くだけでは 活 用 は 浅 いものになってしまいます 時 間 をかけて 行 くわけですから 十 分 に 学 習 が 深 まる 手 立 てになるよ うに 計 画 してください 今 回 の 私 の 活 動 例 が 少 しで 参 考 になれば うれしいです