はじめに サクラは 江 戸 時 代 以 前 から 数 多 くの 栽 培 品 種 が 育 成 され 樹 木 の 遺 伝 資 源 のみならず 日 本 の 文 化 遺 産 としても 重 要 なものですが 長 い 歴 史 の 中 で 栽 培 品 種 の 名 称 と 実 態 との 間 には 様 々な 混 乱



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豊 住 直 樹 岩 沢 雅 司 渡 邉 幸 彦 7 中 林 信 男 高 橋 功 7 竹 原 奈 津 紀 滝 沢 義 明 コ 9 片 見 明 コ ム ム 高 橋 進 小 峰 直 ム 中 島 克 昌 55 0 松 島 誠 55 滝 邦 久 関 竹 夫 嶋 田 道 夫 信 7 栗 原 孝 信 ム 竹 井


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別紙3

6/ 小 高 孝 二 中 嶋 憲 一 小 町 谷 直 樹 m 愛 知 駒 ヶ 根 市 駒 ヶ 根 市 6/19 松 下 正 浩 m 静 岡 6/19 森 田 俊 一 5: m 愛 知 6/19 中 澤 俊 喜

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 135, , ,900 2

男 子 敗 者 復 活 戦 5 北 日 体 袋 4 北 掛 川 東 掛 川 工 新 居 5 北 立 7 城 4 6 北 市 工 立 南 開 誠 館 掛 川 北 城 北 工 市 立 市 袋 湖 南 北 商 代 北 商 湖 東 4 8 商

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38 4 鈴 木 菜 央 ( 札 幌 月 寒 ) W 宗 像 冴 枝 ( 大 麻 ) 橋 谷 麻 由 ( 江 別 ) W 小 田 島 真 由 ( 札 幌 白 石 ) 4 47 田 中 美 佳 ( 恵 庭 南 ) W 中 納 瑞 希 ( 札

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はじめに サクラは 江 戸 時 代 以 前 から 数 多 くの 栽 培 品 種 が 育 成 され 樹 木 の 遺 伝 資 源 のみならず 日 本 の 文 化 遺 産 としても 重 要 なものですが 長 い 歴 史 の 中 で 栽 培 品 種 の 名 称 と 実 態 との 間 には 様 々な 混 乱 が 生 じてきました 森 林 総 合 研 究 所 では 数 多 くの DNA マーカー( 住 友 林 業 と 森 林 総 研 が 共 同 開 発 したマーカーを 含 む)を 用 いて 国 立 遺 伝 学 研 究 所 遺 伝 学 普 及 会 住 友 林 業 と 共 同 で 多 摩 森 林 科 学 園 国 立 遺 伝 学 研 究 所 新 宿 御 苑 のサクラコレクションを 対 象 とした DNA 識 別 と 形 態 解 析 に 基 づく 総 合 的 な 研 究 により サクラの 伝 統 的 栽 培 品 種 の 正 確 な 分 類 に 努 めてきました また 正 確 に 分 類 されたサクラを 対 象 にして 森 林 総 合 研 究 所 と 日 本 大 学 との 共 同 で 病 害 についての 研 究 を 進 めてきました この 桜 の 新 しい 系 統 保 全 形 質 遺 伝 子 病 害 研 究 に 基 づく 取 組 は サクラの 系 統 保 全 と 活 用 に 関 する 研 究 プロジェクト( 平 成 21-24 年 度 ) の 成 果 を 中 心 にして 作 成 したものです 野 生 のサクラも 含 めて 長 い 歴 史 を 持 つ 日 本 のサクラを 未 来 に 向 けて 適 切 に 保 全 していくために この 研 究 成 果 報 告 書 が 現 時 点 の 最 新 情 報 とし て 役 立 つことを 願 っています 目 次 サクラの 研 究 プロジェクト... 2 サクラ 保 存 林 の 歴 史 と 役 割... 3 この 研 究 成 果 報 告 書 の 使 い 方... 4 サクラの 基 礎 知 識... 5 サクラ 保 存 林 マップ( 全 体 と 奥 エリア)... 6-7 サクラ 保 存 林 マップ( 中 央 エリア)... 8-9 サクラ 保 存 林 マップ( 西 エリア)...10-11 サクラ 保 存 林 マップ( 北 エリア)... 12-13 桜 解 説 ( 野 生 の 桜 )... 14-15 桜 解 説 ( 桜 の 名 木 )... 16-19 桜 解 説 ( 荒 川 堤 の 桜 )... 20-22 桜 解 説 ( 京 都 の 桜 )... 23 桜 解 説 ( 古 い 栽 培 品 種 )... 24-25 桜 解 説 ( 遺 伝 研 の 桜 )... 26 桜 解 説 ( 松 前 の 桜 )... 27 桜 解 説 ( 川 崎 哲 也 の 桜 発 見 された 桜 )... 28 桜 解 説 ( 種 苗 登 録 の 桜 海 外 で 作 られた 桜 )... 29 サクラの 開 花 期... 30-31 サクラの 遺 伝 子 (SSR 分 析 )... 32 サクラの 遺 伝 子 ( 栽 培 品 種 識 別 )... 33-35 サクラの 病 害 ( 幼 果 菌 核 病 と 斑 点 性 病 害 )... 36 サクラの 病 害 (てんぐ 巣 病 )... 37 サクラの 病 害 ( 増 生 病 )... 38 サクラの 病 害 ( 腐 朽 病 害 )... 39 索 引... 40 執 筆 者 等 紹 介... 41

独 立 行 政 法 人 森 林 総 合 研 究 所 多 摩 森 林 科 学 園 Forestry and Forest Products Research Institute Tama Forest Science Garden

サクラの 研 究 プロジェクト (1) サクラの 系 統 保 全 と 活 用 に 関 する 研 究 プロジェクト 森 林 総 合 研 究 所 では 平 成 21-24 年 度 にかけて 交 付 金 プロジェクト サクラの 系 統 保 全 と 活 用 に 関 する 研 究 を 立 ち 上 げ 数 多 くのサクラ 栽 培 品 種 について 形 質 遺 伝 子 病 害 の3つの 面 から 詳 細 な 研 究 を 行 ってきまし た 多 摩 森 林 科 学 園 のサクラ 保 存 林 では 主 として 1960 年 代 に 国 内 の 多 くの 機 関 や 個 人 の 協 力 を 得 て 主 要 なサクラ 系 統 のクローン( 接 ぎ 木 )を 収 集 しました こ れらは 貴 重 な 遺 伝 資 源 なのですが 同 じ 名 前 であって も 別 のところから 入 ってきたものでは 形 質 が 違 っていた り 文 献 などに 書 かれている 形 態 の 特 徴 と 異 なるなど いろいろな 点 で 混 乱 が 見 られました 単 純 な 記 載 ミス だけでなく 江 戸 時 代 以 前 に 作 出 された 古 い 栽 培 品 種 が 様 々なところで 保 存 され 伝 えられている 間 には 種 々 雑 多 な 出 来 事 が 起 こりうるものです このような 混 乱 した 状 態 を 解 消 して 正 確 な 分 類 を 確 立 することが サクラの 遺 伝 資 源 を 保 全 しかつ 有 効 に 活 用 していくた めに 必 要 とされていました そのためにはまず 1 本 ずつの 個 体 について どこから( 導 入 元 )どういう 名 前 で 入 ってきたものかという 履 歴 情 報 を 明 確 にする 必 要 があります 次 に 文 献 などに 記 載 されている 形 質 の 特 徴 と 合 致 しているかどうかを 確 認 す ると 同 時 に より 詳 しい 形 質 情 報 を 蓄 積 することが 重 要 です このような 履 歴 情 報 および 形 質 情 報 は 過 去 にも 少 しずつ 蓄 積 されてきましたが 今 回 のプロジェクトではそれらをより 完 璧 なものにして データベース 化 していま す さらに 個 体 間 での DNA( 遺 伝 子 )の 違 いを 検 出 する 技 術 の 開 発 を 進 め 個 体 識 別 クローン 識 別 を 確 かな ものとしました 多 摩 森 林 科 学 園 の 個 体 に 加 えて より 確 実 な 成 果 とするため 国 立 遺 伝 学 研 究 所 と 新 宿 御 苑 の 個 体 の 調 査 も 行 い 計 1850 本 を 調 査 しました 国 立 遺 伝 学 研 究 所 のサクラは 多 摩 森 林 科 学 園 と 同 様 に 履 歴 情 報 が 残 され ている 貴 重 な 材 料 です 履 歴 情 報 形 質 情 報 遺 伝 子 情 報 を 総 合 して 栽 培 品 種 の 再 分 類 を 行 った 結 果 は Kato ら(2012)( 注 )によって 報 告 されています さらに このように 正 確 に 分 類 された 個 体 を 対 象 にして 幼 果 菌 核 病 斑 点 性 病 害 てんぐ 巣 病 増 生 病 腐 朽 病 害 など 病 害 特 性 の 研 究 を 進 めました (2) 本 冊 子 の 全 体 が 研 究 に 基 づく 成 果 です この 研 究 成 果 報 告 書 の 中 には まず 多 摩 森 林 科 学 園 サクラ 保 存 林 を 対 象 として どこにどのような 系 統 が 保 存 されているかという サクラ 保 存 林 マップ(6-13 ページ) や そこに 植 栽 されている 主 なサクラの 詳 細 を 記 した 桜 解 説 (14-29 ページ) が 掲 載 されていますが これらは 従 来 の 図 鑑 とは 性 格 が 異 なり 上 記 の 履 歴 情 報 形 質 情 報 遺 伝 子 情 報 の 研 究 に 基 づいて 新 しくまとめたものです 例 えば 江 戸 大 手 毬 糸 括 八 重 紅 虎 の 尾 は 従 来 の 図 鑑 では 異 なる 栽 培 品 種 として 紹 介 されていましたが ここでは 研 究 成 果 に 基 づき いずれも 江 戸 と 同 じ 栽 培 品 種 として 解 説 しています また 兼 六 園 熊 谷 は 長 州 緋 桜 と 同 じ 栽 培 品 種 です このように 研 究 成 果 が 直 接 にサクラ 栽 培 品 種 の 管 理 情 報 として 役 立 つものとなっています さらに サクラの 開 花 期 (30-31 ペー ジ) サクラの 遺 伝 子 (32-35) サクラの 病 害 (36-39) ではそれぞれの 研 究 成 果 がわかりやすくまとめられてい ます 注 )Kato S et al : Clone identification in Japanese flowering cherry (Prunus subgenus Cerasus) cultivars using nuclear SSR markers. Breeding Science 62: 248-255, 2012. 日 本 育 種 学 会 の 英 文 誌 2

サクラ 保 存 林 の 歴 史 と 役 割 (1) 成 り 立 ち 森 林 総 合 研 究 所 多 摩 森 林 科 学 園 のサクラ 保 存 林 には 日 本 全 国 の 主 要 なサクラの 栽 培 品 種 や 名 木 などの 接 ぎ 木 クローンが 収 集 されています 1960 年 代 多 摩 森 林 科 学 園 の 前 身 である 林 業 試 験 場 浅 川 実 験 林 の 時 代 に 農 林 水 産 省 の 桜 対 策 事 業 のひとつとして 設 立 されました この 事 業 は 桜 に 関 する 調 査 研 究 桜 品 種 の 収 集 保 存 桜 樹 増 殖 配 付 事 業 から 成 っていました 当 時 各 地 の 公 園 神 社 寺 院 などにあるサクラの 名 木 古 木 の 中 には 公 害 や 病 虫 害 などによって 樹 勢 が 衰 えたものが 見 られたこと から こうしたサクラを 文 化 遺 産 として 後 世 に 伝 えるために 国 の 機 関 が 保 護 保 存 に 着 手 したものです サクラは 古 い 時 代 から 栽 培 品 種 が 知 られ 特 に 江 戸 時 代 には 多 くの 栽 培 品 種 が 育 成 されています 天 和 元 年 (1681 年 ) 発 行 の 花 壇 綱 目 には 40 の 品 種 名 が 記 載 され 江 戸 時 代 末 期 までに 主 要 な 文 献 に 現 れた 品 種 名 は 約 400 種 類 に 達 していますが その 多 くが 明 治 以 降 に 姿 を 消 しています 明 治 19 年 (1886 年 )に 荒 川 堤 に 収 集 された 品 種 は 78 種 類 で 大 正 から 昭 和 初 期 にかけてサクラの 名 所 となり 学 術 的 にも 貴 重 なコレクションでした 明 治 末 期 から 大 正 にかけてのサクラ 栽 培 品 種 の 研 究 としては 三 好 学 の 業 績 があり そこに 記 載 された 品 種 数 は 総 計 168 でした 1960 年 代 当 時 栽 培 品 種 の 主 要 な 収 集 保 存 場 所 としては 国 立 遺 伝 学 研 究 所 に 216 品 種 京 都 府 立 植 物 園 に 112 品 種 埼 玉 県 立 植 物 見 本 園 に 57 品 種 東 京 都 立 神 代 植 物 公 園 に 37 品 種 奈 良 公 園 に 36 品 種 などが 知 られていました この 他 にも 全 国 の 主 な 栽 培 品 種 や 名 木 などから 穂 木 を 採 取 して 接 ぎ 木 苗 を 育 成 し 1967-1969 年 に 1640 本 が 4.9ha のサクラ 保 存 林 に 植 栽 されました その 後 も 新 規 植 栽 維 持 管 理 が 行 われ 2012 年 現 在 7.96ha の 多 摩 森 林 科 学 園 サクラ 保 存 林 には 約 600 栽 培 ライン 1300 個 体 のサクラが 植 栽 されています (2)サクラ 保 存 林 における 研 究 多 摩 森 林 科 学 園 では 植 栽 されたサクラを 維 持 するとともに 植 栽 個 体 の 形 態 的 特 徴 や 病 虫 害 の 被 害 開 花 期 など 様 々な 特 性 を 調 査 してきました 増 殖 や 植 栽 の 作 業 段 階 などで 苗 木 の 取 り 間 違 いが 生 じる 場 合 があるので 実 際 に 植 栽 した 個 体 の 形 質 を 調 べ 増 殖 目 的 の 個 体 であるか 確 認 することは 適 切 な 系 統 保 存 のために 必 要 不 可 欠 です 実 際 にサクラ 保 存 林 に 植 栽 された 多 くのサクラにこうした 取 り 間 違 いがあったことが 報 告 されています また ナラタケ 病 や 幼 果 菌 核 病 コスカシバなどの 病 虫 害 への 特 性 を 把 握 することも 植 栽 個 体 を 管 理 する 上 で 重 要 です サクラ 保 存 林 はほぼ 同 一 の 環 境 下 で 多 くのサクラが 植 栽 されていることから 様 々なサクラの 特 性 を 効 率 的 に 比 較 することが 出 来 る 貴 重 な 試 験 地 です サクラの 開 花 期 については 1981 年 から 現 在 にいたるまで 約 30 年 間 の 観 測 が 継 続 されています 染 井 吉 野 に 関 する 長 期 間 多 数 地 点 の 観 測 記 録 は 気 象 庁 によって 集 積 されていますが サクラ 保 存 林 では 多 数 種 類 の 観 測 記 録 が 集 積 されていることが 特 徴 です 近 年 では 栽 培 品 種 のクローン 識 別 や 系 統 関 係 の 推 定 について DNA 解 析 を 用 いる 手 法 が 開 発 されています この 桜 の 新 しい 系 統 保 全 - 形 質 遺 伝 子 病 害 研 究 に 基 づく 取 組 - は DNA 解 析 と 形 態 解 析 から 総 合 的 に 判 定 した 精 度 の 高 い 栽 培 品 種 の 分 類 同 定 結 果 に 基 づいて 作 成 されており 今 後 の 栽 培 品 種 管 理 の 基 本 となる 情 報 を 提 供 しています 3

この 研 究 成 果 報 告 書 の 使 い 方 (1) 全 体 構 成 この 桜 の 新 しい 系 統 保 全 - 形 質 遺 伝 子 病 害 研 究 に 基 づく 取 組 - は 森 林 総 合 研 究 所 がおこなった 研 究 に 基 づいて 多 摩 森 林 科 学 園 にあるサクラ 保 存 林 について 解 説 するとともに 最 新 の 研 究 成 果 を 紹 介 しています 大 きく 以 下 の 3 つの 部 分 に 分 かれおり サクラ 保 存 林 の 解 説 書 としてだけではなく サクラの 系 統 保 存 に 関 する 参 考 書 としても 使 えます A:サクラ 保 存 林 マップ 桜 解 説 で 紹 介 している 栽 培 ラインを 中 心 に サクラ 保 存 林 のサクラを 地 図 上 で 示 しています 地 図 は 奥 (P6) 中 央 (P8-9) 西 (P10-11) 北 (P12-13)に 分 けていますので 全 体 図 (P6-7)を 参 考 にしてお 使 い 下 さい B: 桜 解 説 最 新 の 研 究 情 報 を 加 えたサクラの 種 類 と 栽 培 ラインについての 簡 単 な 解 説 をくわえています しかしサクラ 保 存 林 には 600 以 上 の 栽 培 ラインがあって 限 られたページではすべてを 紹 介 することが 出 来 ません ここでは 野 生 の 桜 桜 の 名 木 荒 川 堤 の 桜 京 都 の 桜 といったトピックごとに 代 表 的 な 桜 を 紹 介 しています C: 研 究 解 説 サクラの 開 花 期 と サクラの 遺 伝 子 サクラの 病 害 の 3 つのテーマに 関 して 実 際 に 携 わっている 研 究 者 が 最 新 の 成 果 をもとに 解 説 しています (2) 栽 培 ライン 情 報 の 見 方 サクラ 保 存 林 では 原 則 的 に 接 ぎ 木 によって 収 集 した 桜 のクローン 増 殖 をおこない 保 存 しています ですから 同 じ 由 来 をもつ 桜 が 複 数 本 植 えられています こうした 同 じ 由 来 をもつ 桜 をひとつの 栽 培 ラインとして 管 理 して います たとえ 同 じクローンであっても 導 入 元 や 導 入 時 の 名 称 が 異 なれば 違 う 栽 培 ラインとして 扱 います した がって 管 理 をおこなう 上 でもっとも 重 要 な 単 位 は 栽 培 ラインです 本 冊 子 では 栽 培 ラインを 中 心 に 桜 の 解 説 をおこなっています 以 下 は 桜 解 説 に 表 示 されている 各 栽 培 ラインの 情 報 の 詳 細 です 種 類 :サクラの 種 類 について p14-15 で 種 p17-29 で 栽 培 品 種 の 簡 単 な 紹 介 をおこなっています また 同 じ 種 類 に 分 類 される 栽 培 ラインは 出 来 るだけ 同 じ 箇 所 で 紹 介 しています なお 種 名 はカタカナ 栽 培 品 種 名 は で 括 った 漢 字 で 表 記 し ともに 青 文 字 で 示 しています 1 栽 培 ライン 名 : 原 則 的 には 導 入 元 と 導 入 時 の 名 称 を 栽 培 ライン 名 としています 例 えば 同 じ 染 井 吉 野 でも 導 入 元 によって 開 成 山 の 桜 や 神 代 の 染 井 吉 野 と 名 称 をつけ 栽 培 ラインとしては 区 別 しています ただし 明 らかに 間 違 った 名 称 で 導 入 された 場 合 や 原 木 の 現 地 名 と 大 きく 異 なっている 場 合 などは 変 更 した 名 称 を 用 いています なお レイアウト の 都 合 上 1 の 文 字 は 示 しておらず 緑 文 字 で 表 記 しています 2 種 名 : 各 栽 培 ラインの 種 名 を 示 しています 変 種 は 区 別 していません 雑 種 については 識 別 が 可 能 な 種 については 示 しています 3 栽 培 品 種 名 : 栽 培 品 種 名 がある 場 合 に 示 しています 栽 培 品 種 名 は ない 場 合 もあります 4 導 入 元 : 導 入 元 の 組 織 名 地 名 人 名 等 と 市 町 村 を 示 しています 5 解 説 : 各 ラインに 対 する 簡 単 な 解 説 をしています 6 開 花 期 : 開 花 期 の 目 安 を 早 春 盛 春 晩 春 の 3 段 階 と 秋 咲 きについ て 示 しています( 参 考 P30-31) 通 常 早 春 は 3 月 上 旬 ~3 月 下 旬 盛 春 は 3 月 下 旬 ~4 月 中 旬 晩 春 は 4 月 中 旬 ~4 月 下 旬 秋 は 10~2 月 に 花 をみることが 出 来 ますが 年 によって 変 動 があります 7 位 置 :P6-13 のサクラ 保 存 林 マップの 位 置 を 示 しています 記 号 は 奥 (P6) 中 央 (P8-9) 西 (P10-11) 北 (P12-13)でどのページにあるのかと D10 のように 地 図 中 の 東 西 方 向 に 50m ごとにつくったメッシュの 東 西 方 向 (A-J)と 南 北 方 向 (1-11)の 位 置 を 示 しています 富 士 菊 桜 ふじきくざくら Cerasus insica Fujikikuzakura マメザクラの 栽 培 品 種 菊 咲 きか 段 咲 き 渡 辺 定 元 氏 が 富 士 山 で 発 見 した 名 古 屋 の 富 士 菊 桜 なごやのふじきくざくら 2マメザクラ 3 富 士 菊 桜 4 名 古 屋 園 芸 愛 知 県 名 古 屋 市 5 以 前 の 由 来 は 不 明 6 晩 春 7 北 E5 4

サクラの 基 礎 知 識 (1)サクラの 分 類 一 般 の 方 からサクラの 分 類 は 難 しくて 理 解 できないという 話 をよく 聞 きます 他 の 植 物 と 比 較 するとたしかに 難 し い 面 もありますが 的 確 に 用 語 などを 理 解 すれば そう 難 しいものではありません まず 一 般 にサクラと 呼 ばれる 植 物 のグループは 世 界 中 でおよそ 100 種 あるとされています ここで 使 われて いる 種 (species)とは 生 物 学 で 用 いる 分 類 の 単 位 で 生 物 学 的 種 ともいわれます 互 いに 交 配 しうる 自 然 集 団 という 定 義 もありますが 簡 単 にいえば 親 と 子 供 は 同 じ 種 と 考 えればよいでしょう 多 少 は 顔 つきが 異 なっていて も 血 縁 関 係 にあるものを 種 という 単 位 でまとめているのです こうした 生 物 学 的 種 の 単 位 で 考 えると 日 本 に 野 生 のサクラは 10 種 しかありません 14-15 ページに 紹 介 しているヤマザクラ オオヤマザクラ オオシマザクラ カ スミザクラ タカネザクラ マメザクラ チョウジザクラ エドヒガン ミヤマザクラ カンヒザクラの 10 種 です (2)サクラの 属 名 生 物 学 では 種 の 名 前 を 二 名 法 という 属 名 と 種 小 名 を 組 み 合 わせた 学 名 で 表 記 します この 冊 子 でも 種 や 栽 培 品 種 は 学 名 も 併 記 しています ところで サクラに 対 する 学 名 の 属 名 は Prunus を 用 いる 場 合 がこれまで 大 多 数 でした しかし 近 年 では Cerasus が 用 いられることも 増 えています もともと Prunus とはスモモ( 英 語 だと Prune) のことですので サクラを Prunus 属 とする 場 合 スモモやモモ ウメ ウワミズザクラなども 含 んだ 大 きなグループ となり 世 界 では 400 種 を 超 えます 一 方 Cerasus 属 はセイヨウミザクラやヤマザクラなどだけしか 含 みません こうした 分 類 方 法 の 見 解 の 違 いに 正 解 はないので サクラに 対 してどちらを 使 っても 間 違 いではありません この 冊 子 ではサクラに 対 する 学 名 は Cerasus 属 を 用 いています (3) 栽 培 品 種 サクラの 分 類 を 難 解 にする 最 大 の 要 素 は 栽 培 品 種 です 生 物 学 種 は 客 観 性 をもつ 分 類 体 系 ですが 栽 培 品 種 (cultivar)は 人 にとって 有 用 な 植 物 を 利 用 する 際 に 用 いる 単 位 であり 人 がその 価 値 に 基 づいて 分 類 する 全 く 異 なる 分 類 体 系 です 花 を 観 賞 するサクラであれば 花 の 色 や 花 弁 数 など 花 の 形 態 によって 分 類 されますので 親 と 子 が 同 じ 栽 培 品 種 とならないこともあります このため 多 くのサクラの 栽 培 品 種 は 接 ぎ 木 で 増 殖 され ひとつ のクローンがひとつの 栽 培 品 種 となります 原 理 的 には 無 数 に 生 まれますが 人 が 見 て 区 別 できる 必 要 があり 実 際 に 流 通 しているサクラの 栽 培 品 種 は 100 ぐらいです このように 種 と 栽 培 品 種 は 異 なる 分 類 体 系 の 単 位 で すので この 冊 子 では 混 同 しないよう 種 名 はカタカナ 栽 培 品 種 名 は 括 弧 で 括 った 漢 字 で 表 記 しています (4) 雑 種 サクラの 分 類 を 難 解 にする 要 素 のもうひとつは 雑 種 の 存 在 です 雑 種 とは 異 なる 分 類 群 間 に 生 まれた 子 ですの で 極 端 な 例 だと 個 々に 識 別 した 個 体 間 の 子 はすべて 雑 種 ということもできます 一 方 ヤマザクラとエドヒガン のように 異 なる 種 間 の 子 は 特 に 種 間 雑 種 ともいいます 通 常 雑 種 と 呼 ばれるものはこの 種 間 雑 種 のことです ところが 種 間 雑 種 の 名 称 には 注 意 が 必 要 です 種 間 雑 種 には エドヒガン オオシマザクラ(C. spachiana C. speciosa) のように 雑 種 式 といわれる 表 記 方 法 もありますが ソメイヨシノ(C. yedoensis) のようにひとつ の 種 間 雑 種 名 で 表 記 する 場 合 もあります この 場 合 のソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラの 種 間 雑 種 すべ てに 対 する 名 称 です 一 方 日 常 で 我 々が 用 いる 染 井 吉 野 とは 栽 培 品 種 の 名 称 で 新 しく 作 ったような 種 間 雑 種 は 染 井 吉 野 ではありません この 使 い 方 の 違 いには 注 意 が 必 要 です (5)サクラの 増 殖 と 保 存 ライン 種 や 栽 培 品 種 の 名 称 は 種 類 を 示 すものですが サクラにはそれとは 別 に 個 々の 木 につけられた 名 前 が 多 くあり ます 三 春 の 滝 桜 や 根 尾 の 薄 墨 桜 といった 天 然 記 念 物 にも 指 定 さ れている 巨 樹 の 名 前 を 考 えればわかりやすいでしょう こうした 名 称 は 本 来 その 1 本 の 木 だけを 示 しますが 種 子 や 接 ぎ 木 によって 増 殖 されたも のまで 同 じ 名 称 で 示 される 場 合 があります サクラ 保 存 林 の 栽 培 ラインの 名 称 も 出 来 るだけ 原 木 のことがわかるようにつけていますので こうした 個 々の 木 の 名 前 のようなものです ただ 注 意 しなければならないのは こ のような 木 の 名 前 と 種 類 を 表 す 名 称 とを 混 同 しないことです 古 い 文 献 の 栽 培 品 種 の 中 に は 混 同 し て い る と 思 わ れ る 例 が よ く 見 ら れ ま す 5

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(Cerasus nipponica) Cerasus jamasakura var. jamasakura Cerasus leveilleana Cerasus incisa var. incisa Cerasus incisa var. kinkiensis Cerasus jamasakura var. chikusiensis Cerasus speciosa Cerasus sargentii var. sargentii 14

Cerasus spachiana Cerasus campanulata Cerasus taiwaniana Cerasus apetala var. tetsuyae Cerasus maximowiczii 15 Cerasus pseud-cerasus Cerasus avium Cerasus x chichibuensis Cerasus x sacra Cerasus x subhirtella f. hisauchiana Cerasus x yanashimana

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Cerasus Sato-zakura Group Sphaerantha Cerasus jamasakura Hieteroflora Cerasus Sato-zakura Group Cerasus Sato-zakura Group Fudanzakura Cerasus x furuseana Tajimensis Cerasus x sacra 'Pendula 18

Cerasus Sato-zakura Group Mirabilis Cerasus x kanzakura Kawazu-zakura Cerasus jamasakura Haguiensis Cerasus Sato-zakura Group Shiogama Cerasus leveilleana Antiqua Cerasus Sato-zakura Group Juzukakezakura 19

Cerasus Sato-zakura Group Candida Cerasus Sato-zakura Group Hisakura Cerasus Sato-zakura Group Grandiflora Cerasus Sato-zakura Group Arbo-rosea Cerasus Sato-zakura Group Mikurumakaisi 20

Cerasus Sato-zakura Group Erecta Cerasus Sato-zakura Group Superba Cerasus Sato-zakura Group Sekiyama Cerasus Sato-zakura Group Nobilis Cerasus Sato-zakura Group Surugadai-odora Cerasus Sato-zakura Group Gioiko 21

Cerasus Sato-zakura Group Affinis Cerasus Sato-zakura Group Sirayuki Cerasus Sato-zakura Group Sirotae Cerasus Sato-zakura Group Caespitosa Cerasus Sato-zakura Group Choshu-hizakura Cerasus Sato-zakura Group Contorta 22

Cerasus Sato-zakura Group Ichihara Cerasus Sato-zakura Group Eigenji Cerasus Sato-zakura Group Omuro-ariake Cerasus Sato-zakura Group Ohsawazakura Cerasus Sato-zakura Group Taoyame 23

Cerasus x Kanzakura Praecox Cerasus x subhirtella Kumagai Cerasus x subhirtella Koshiensis Cerasus x subhirtella Semperflorens Cerasus x subhirtella 'Autumnalis 24

Cerasus Sato-zakura Group Sendai-shidare Cerasus x yedoensis Somei-yoshino Cerasus Sato-zakura Group Taihaku Cerasus Takenakae Cerasus x parvifolia 'Fuyu-zakura Cerasus sapchiana Plena-rosea 25

Cerasus x yedoensis Sotorihime 26

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Cerasus Rubriflora Cerasus leveilleana Norioi Cerasus insica Fujikikuzakura Cerasus insica var. kinkiensis Viridicalyx 28

Cerasus sargentii Kushiroyae Cerasus Sato-zakura Group Haruka Cerasus Yoko Cerasus Akebono Cerasus x parvifolia Umineko Cerasus Okame 29

サクラの 開 花 期 (1)サクラの 開 花 観 測 サクラの 開 花 特 に 染 井 吉 野 の 開 花 は 春 の 訪 れを 告 げるものと して 例 年 大 きく 取 り 上 げられます 気 象 庁 では 1953 年 生 物 季 節 観 測 指 針 が 制 定 され 以 後 全 国 レベルでサクラの 開 花 観 測 が 行 わ れるようになりました 現 在 ニュースなどで 取 り 上 げられる 開 花 情 報 は 主 にこの 観 測 が 元 になっています サクラの 開 花 現 象 は 温 度 な ど 気 象 条 件 に 対 する 生 物 のひとつの 反 応 であり この 変 動 は 生 物 季 節 (フェノロジー)と 呼 ばれ 気 候 変 動 のひとつの 指 標 となるため 重 要 な 研 究 テーマとなっています 多 摩 森 林 科 学 園 では 1981 年 から 30 年 以 上 さまざまなサクラの 開 花 状 況 の 観 測 を 行 い データを 蓄 積 してきました 気 象 庁 の 観 測 が 染 井 吉 野 にほぼ 限 定 して 広 域 的 に 行 われているのに 対 し 科 学 園 では サクラ 保 存 林 という 同 じ 環 境 において 多 数 の 分 類 群 の 観 測 を 行 っていることに 特 徴 があります これらの 観 測 データの 一 部 は 入 園 者 への 情 報 提 供 としてウェブページなどにより 公 開 している ほか 約 30 年 にわたり 蓄 積 されたデータは 分 類 群 ごとの 開 花 の 違 いや 温 暖 化 など 環 境 変 動 に 対 するサクラの 反 応 などに 関 する 貴 重 な 資 料 となっています (2)サクラの 開 花 の 仕 組 み サクラは 一 斉 に 咲 いて 一 斉 に 散 るといわれますが よく 見 ると 大 きなばらつきがあります 気 象 庁 では 標 本 木 で5~6 輪 以 上 の 花 が 開 いた 状 態 となった 最 初 の 日 を 開 花 日 標 本 木 で 約 80% 以 上 の つぼみが 開 いた 状 態 となった 最 初 の 日 を 満 開 日 と 定 義 し 測 定 を 行 っています 場 所 や 年 によって 違 いますが 東 京 付 近 の 染 井 吉 野 はだいたい 開 花 日 から 満 開 日 まで 1 週 間 ほどかかります つまり ひとつの 木 の 中 で 100 個 の 花 があるとすると ひとつめの 花 が 咲 い てから 80 個 目 の 花 が 咲 くまで 1 週 間 もかかるのです 染 井 吉 野 は 比 較 的 このばらつきが 小 さい 種 類 ですが 開 花 から 満 開 まで 2 週 間 以 上 もかかるような 種 類 もあります こうした 開 花 状 態 について 長 期 にわたり 正 確 なデータを 蓄 積 する ためには まず 正 確 な 指 標 を 定 める 必 要 があります 開 花 状 態 に ついては 一 般 的 には 三 分 咲 き 五 分 咲 き などの 言 葉 があります が これは 正 確 な 評 価 とは 言 えません 人 により また 木 の 大 きさ や 花 つき 木 を 遠 くから 見 るか 近 くで 見 上 げるかなどによって 評 価 が 変 わる 可 能 性 があります 科 学 園 では 基 本 的 に 観 測 木 がもってい る 花 のつぼみのうちどれぐらいが 咲 いたかを 観 察 し 観 察 日 の 開 花 割 合 を 10% 刻 みで 測 定 しています したがって 80% 以 上 のつぼみ が 開 いた 満 開 日 でも ばらつきが 大 きな 種 類 では 早 く 咲 いた 花 が すでに 散 ってしまっている 場 合 もあり その 時 点 で 咲 いている 花 は 半 数 に 満 たないこともあります ところで サクラの 開 花 には 温 度 がきわめて 重 要 だということはよ く 知 られています 咲 く 直 前 に 暖 かければ 早 く 咲 きますし 寒 ければ 遅 くなります しかし 単 純 に 暖 かければ 必 ず 早 くなるというものでもあ りません 通 常 のサクラの 花 は 咲 く 前 年 の 夏 にはすでに 出 来 ていて 30

冬 芽 となっています ただし 夏 から 秋 にかけては 花 芽 が 休 眠 するため この 間 は 暖 かくなってもふつうは 動 きま せん その 後 冬 に 低 温 刺 激 を 受 けることで 成 長 できるようになります これを 休 眠 打 破 といいます 休 眠 打 破 後 は 温 度 にしたがって 花 芽 が 成 長 し 開 花 に 至 ります そのため 冬 があまりに 暖 かいと 逆 に 開 花 が 遅 れることもあり ます 日 本 では 奄 美 大 島 以 南 だと 染 井 吉 野 の 生 育 が 難 しいといわれていますが その 原 因 のひとつはこの 冬 の 暖 かさが 影 響 していると 考 えられています 5 ぐらいの 気 温 がもっとも 休 眠 打 破 に 効 果 があると 考 えられてい ますが 那 覇 の 最 も 寒 い 1 月 の 平 均 気 温 は 16.3 であり 休 眠 打 破 に 必 要 な 低 温 になりません 現 在 地 球 規 模 での 気 候 の 変 化 や 都 市 のヒートアイランド 現 象 などによって 各 地 で 冬 季 の 気 温 の 上 昇 が 報 告 されており 染 井 吉 野 がうまく 目 覚 めることができない 現 象 は 徐 々に 北 上 しているのではと 考 えられています さまざまなサクラの 生 物 季 節 の 研 究 のため サクラ 保 存 林 では 今 後 もこうした 開 花 期 の 研 究 に 取 り 組 んでいく 予 定 です (3)30 年 間 の 平 均 開 花 日 および 平 均 満 開 日 1983 年 ~2012 年 の 30 年 間 における サクラ 保 存 林 に 植 栽 された 様 々なサクラの 栽 培 ラインの 開 花 日 ( ) 満 開 日 ( )の 平 均 値 を 左 図 に 示 しました 開 花 日 は 最 も 早 い 結 城 の 寒 桜 ( 寒 桜 )が 2 月 中 旬 最 も 遅 い 知 足 院 の 奈 良 八 重 桜 ( 奈 良 の 八 重 桜 )が 4 月 下 旬 であり 平 均 値 の 差 が 75 日 間 と 幅 広 いのに 対 し 満 開 日 で 見 るとそ の 差 は 47 日 と 小 さくなっていました これは 寒 い 時 期 に 早 く 咲 くサクラのほうが 開 花 から 満 開 にいたるまでの 期 間 が 長 い 傾 向 があるからです 寒 い 時 期 には 花 芽 の 成 長 に 時 間 がかかるため 咲 く 時 期 のばらつきの 期 間 も 延 びていると 考 えればよいでしょう また 年 毎 の 開 花 日 および 満 開 日 の 変 動 について 結 城 の 寒 桜 三 波 川 の 染 井 吉 野 ( 染 井 吉 野 ) 知 足 院 の 奈 良 八 重 桜 の 3 つの 栽 培 ラインについて 下 図 に 示 しました この 図 から 30 年 間 の 変 化 がわかります 大 まか な 傾 向 ではどのサクラも 開 花 日 満 開 日 ともに 30 年 間 で 早 くなっている 傾 向 が 見 られます 特 に 開 花 期 が 早 い 寒 桜 の 開 花 日 は 1 月 ほども 早 くなっているように 見 えます ただ 開 花 期 が 遅 い 奈 良 の 八 重 桜 は 1 週 間 も 早 く なっていないように 見 えます また それぞれの 年 でみると 例 えば 2012 年 の 開 花 日 はどのサクラもこの 30 年 間 の 中 ではどちらかといえば 遅 い 日 になっています これらのことから サクラ 保 存 林 におけるサクラの 開 花 は 全 体 として 早 くなる 傾 向 はみられるものの 4 月 中 下 旬 に 咲 く 種 類 はそう 大 きく 変 化 しておらず それよりも 各 年 の 変 動 が 大 きいといえるでしょう サクラ 保 存 林 では 気 候 変 動 への 影 響 はまだごく 一 部 であると 考 えられます 31

サクラの 遺 伝 子 (SSR 分 析 ) (1)DNA 解 析 とは すべての 生 物 は 様 々な 形 態 や 形 質 を 親 から 子 へと 伝 えていきます このことを 親 から 子 へ 遺 伝 する と 言 い その 情 報 を 担 っているのが 遺 伝 子 です そして この 遺 伝 子 の 実 態 は 4 種 類 の 塩 基 の 配 列 で 作 られる DNA という 物 質 です 私 達 の 顔 や 姿 形 が 父 や 母 に 似 ているのも この 遺 伝 子 (DNA)が 親 から 子 へと 受 け 次 がれてい るからです そして 一 人 一 人 の 顔 や 身 体 つきに 特 徴 があり 互 いに 違 っているのも 遺 伝 子 の 違 い 突 き 詰 め れば DNA の 塩 基 の 配 列 に 違 いがあるからです DNA が 存 在 するのは 細 胞 の 中 にある 核 という 部 分 やミトコンドリ アという 部 分 で 植 物 ではさらに 葉 緑 体 という 部 分 にもあります DNA 解 析 とは 遺 伝 子 (DNA)を 読 み 取 り 互 い の 違 いを 検 出 し 比 較 することです サクラについてはこれまで 花 や 葉 など 様 々な 外 部 形 態 で 似 ている 似 て いない を 評 価 し 種 や 栽 培 品 種 を 区 別 してきました しかし 区 別 が 困 難 な 場 合 も 多 々あります これまでの 形 態 や 形 質 による 識 別 情 報 に 加 え DNA 解 析 をすることでより 確 かな 分 類 を 行 うことが 可 能 になります (2)SSR 分 析 のしくみ DNA 上 には 数 塩 基 の 単 位 配 列 の 繰 り 返 しからなる 領 域 が 存 在 して 単 純 反 復 配 列 (simple sequence repeat) と 言 う 英 語 から SSR と 呼 ばれています 広 義 にはマイクロサテライトとも 言 います 単 純 な 繰 り 返 しは 回 数 に 変 化 が 起 こりやすいため 個 体 間 での 違 いが 生 じやすいのです ただし これも 親 から 子 へ 遺 伝 するため 子 は 親 と 同 じ 繰 り 返 し 数 になります この 性 質 を 利 用 して DNA による 親 子 鑑 定 などが 行 われています さらに この SSR 配 列 は DNA のいろいろな 場 所 に 散 在 しているので 複 数 の 場 所 での 反 復 回 数 の 違 いを 比 較 することで 偶 然 によ る 一 致 ( 他 人 のそら 似 )を 限 りなく 取 り 除 き 個 体 間 の 違 いをより 明 確 に 判 別 することができます このようなDNA 上 のそれぞれの 場 所 のことを 遺 伝 子 座 分 析 する 遺 伝 子 座 のことを マーカー と 言 います DNA はもともと 微 細 なため PCR 法 というDNAの 断 片 を 増 幅 する 方 法 を 用 い 反 復 回 数 に 違 いが 見 られる SSR 領 域 を 小 さなチュー ブ 内 で 大 量 に 増 やして 図 1 のような 波 形 上 のデータとして 可 視 化 することで 長 さ( 反 復 回 数 )の 違 いを 検 出 しま す 今 回 サクラの 栽 培 品 種 についても この SSR のマーカーを 図 1 のように 複 数 使 って 識 別 を 行 いました 実 際 の DNA 解 析 で 利 用 した SSR マーカーの 数 は 17 カ 所 (17 座 )ですが これらのマーカーを 使 った 場 合 の 識 別 能 力 を 計 算 したところ 理 論 上 2.18 10-13 になりました つまり 約 2 兆 の 個 体 があっても 識 別 できるくらいの 精 度 となります SSR1 SSR2 SSR3 栽 培 品 種 A C D - - - - - - CACACA - - - - - - - - - - - - - - - - CACACA - - - - - - - - - - - - - - - - CACACA - - - - - - - - - - - - - - - - CACACA - - - - - - - - - - - - - - - - CACACA - - - - - - - - - - - - - - - - CACACA - - - - - - - - - - - - - - - - CACACACA - - - - - - - - - - - - - - CACACA - - - - - - - - - - SSR1 Dだけ 区 別 できる - - - - - - ATAT - - - - - - - - - - - - - - - - ATAT - - - - - - - - - - - - - - - - ATAT- - - - - - - - - - - - - - - - ATAT- - - - - - - - - - - - - - - - ATAT- - - - - - - - - - - - - - - - - ATATAT- - - - - - - - - - - - - - - ATATAT - - - - - - - - - - - - - - ATATAT - - - - - - - - SSR2 C Dが 区 別 できる - - - - - - CACACACA - - - - - - - - - - - - - - - - CACACACA - - - - - - - - - - - - - - - - CACACACA - - - - - - - - - - - - - - - - CACACA - - - - - - - - - - - - - - - - - - CACACACA - - - - - - - - - - - - - - - - CACACACA - - - - - - - - - - - - - - - - CACACACA - - - - - - - - - - - - - - - - CACACACA - - - - - - - - - - SSR3 A Bが 区 別 できる 図 1.SSR 分 析 の 原 理 栽 培 品 種 A~D について 3 ヶ 所 の SSR 領 域 (SSR1 SSR2 SSR3) の 反 復 回 数 を 調 べている 例 です SSR1 だけでは 栽 培 品 種 D しか 区 別 できません 次 に SSR2 を 追 加 すると 栽 培 品 種 D だけでなく 栽 培 品 種 C も 区 別 できるようになります しかし SSR1 と SSR2 だけでは 栽 培 品 種 A B を 区 別 できません 更 に SSR3 を 追 加 することで 栽 培 品 種 B も 区 別 できるようにな ります(ただし SSR3 では 栽 培 品 種 C D は 区 別 できません) 以 上 のように 3 つの SSR はそれ ぞれでは 区 別 できない 栽 培 品 種 があるものの 全 てを 組 み 合 わせ ることによって 4 つの 栽 培 品 種 を 完 全 に 区 別 できるようになり ます 32

サクラの 遺 伝 子 ( 栽 培 品 種 識 別 ) (1)クローンの 識 別 植 物 が 種 子 から 増 殖 する 場 合 は 両 親 の 遺 伝 子 (DNA)を 合 わ せ 持 つ 個 体 が 生 まれ 遺 伝 的 には 両 親 のどちらとも 異 なるもの です 一 方 サクラのような 樹 木 では 種 子 からだけでなく 挿 し 木 や 接 ぎ 木 とり 木 などの 手 法 を 使 って 比 較 的 簡 単 に 増 殖 することができます このようにして 増 殖 された 苗 木 は 元 にな る 個 体 と 全 く 同 じ 性 質 ( 形 質 )を 持 ちます さらに 言 えば 元 に なる 個 体 と 全 く 同 じ 遺 伝 子 (DNA)をもつ 苗 木 だということです ですから 図 2 のように 苗 木 の 詳 細 がわからなくなってしまっ ても DNA 解 析 を 行 えば 元 の 木 を 見 つけることができます このような 個 体 同 士 のことを クローン と 呼 びます サクラの 中 で 有 名 なクローンは 日 本 で 最 も 親 しまれている 栽 培 品 種 染 井 吉 野 でしょう 染 井 吉 野 は 1 本 の 親 木 から 増 やされたと されており 全 国 各 地 に 植 栽 され 日 本 の 春 を 彩 って いるのは 同 じ 遺 伝 子 (DNA)をもつ クローン なので す 図 2.SSR 分 析 によるクローン 識 別 DNA は 植 物 のほとんどの 部 位 から 抽 出 できるので 花 のない 季 節 や 苗 木 の 状 態 でも 品 種 識 別 が 可 能 になる じつは 遺 伝 子 が 全 く 同 じ ということを 証 明 することはたいへん 難 しいことです DNA の 大 きさは 生 物 種 によ って 違 いますが ヒトでは 約 30 億 塩 基 サクラではまだ 明 らかにされていませんが 最 低 でも 数 億 塩 基 はあるで しょう これらの 全 てが 同 じであることを 証 明 することは 現 実 的 には 不 可 能 です しかし 上 に 述 べたマイクロサ テライト(SSR) 分 析 は 個 体 間 の 違 いを 2.18 10-13 という 非 常 に 高 い 感 度 で 検 出 できるため 実 用 上 限 りなく 真 実 に 近 いデータを 得 ることが 可 能 です (2) 栽 培 品 種 の 識 別 サクラの 栽 培 品 種 は 主 に 接 ぎ 木 や 挿 し 木 によって 増 やされて 継 代 保 存 されてきました しかし 長 い 年 月 の 間 には 取 り 違 えなどにより 形 態 がほとんど 同 じものが 別 の 名 前 で 呼 ばれているなど 品 種 区 分 に 疑 問 が 生 じ ることがありました しかし 花 や 葉 などの 外 部 形 態 だけでは 識 別 が 困 難 な 場 合 も 多 くあります また 同 じ 栽 培 品 種 名 であっても 必 ずしも 単 一 のクローンではない 可 能 性 もあります これらの 問 題 を 解 決 するために サクラの 栽 培 品 種 について SSR 分 析 を 行 い 外 部 形 態 と 併 せて 評 価 しました 栽 培 品 種 の 識 別 には 多 摩 森 林 科 学 園 サクラ 保 存 林 の 約 1500 本 ( 約 600 栽 培 ライン)に 加 え 国 立 遺 伝 学 研 究 所 ( 静 岡 県 三 島 市 )が 収 集 した 約 350 本 ( 約 250 栽 培 ライン) 新 宿 御 苑 ( 東 京 都 新 宿 区 )の 約 1300 本 ( 約 50 栽 培 品 種 )の 中 から 1850 本 の 調 査 材 料 を 網 羅 的 に 選 びました これらの 材 料 は 栽 培 品 種 名 だけでなく 入 手 先 の 履 歴 でも 区 別 した 栽 培 ラインとして 管 理 されています このように 厳 密 な 管 理 を 行 っているコレクションを 含 んだ 主 要 なサクラ 栽 培 品 種 について DNA 解 析 を 行 うことは 日 本 のサクラ 栽 培 品 種 の 真 の 姿 に 迫 るものです 合 計 17 座 の SSR マーカー( 住 友 林 業 と 森 林 総 合 研 究 所 が 共 同 で 開 発 したマーカーを 含 む)を 用 いた 解 析 は 高 い 精 度 で 個 体 を 識 別 することができます 別 な 言 い 方 をすると これらのマーカーで 全 て 同 じ DNA パターンが 得 られた 場 合 は 同 じクローンであるとみなす ことができます 従 前 から 単 一 クローンであると 言 われていた 染 井 吉 野 ( 写 真 1A)では 各 地 から 収 集 されたものが 同 一 の DNA パターンを 示 し そのことが 再 確 認 されました 同 様 に 単 一 クローンであることが 確 認 された 栽 培 品 種 としては 八 重 紅 枝 垂 ( 写 真 1B)や 関 山 ( 写 真 1C)などがありました このように 単 一 クローンと 確 認 された 栽 培 品 種 を 表 1 にま とめました 写 真 1. 単 一 の DNA パタ ーンを 示 す 栽 培 品 種 例 :A ' 染 井 吉 野 ' B ' 八 重 紅 枝 垂 ' C ' 関 山 ' 33

表 1. 単 一 の DNA パターンを 示 す 栽 培 品 種 分 類 群 名 Cerasus lannesiana Sato-zakura Group Cerasus lannesiana var. speciosa Cerasus jamasakura Cerasus sargentii Cerasus verecunda Cerasus sieboldii Cerasus apetala var. pilosa Cerasus incisa var. incisa Cerasus parvifolia Cerasus furuseana Cerasus syodoi Cerasus tajimensis Cerasus subhirtella Cerasus pendula Cerasus sacra Cerasus yedoensis Cerasus (その 他 ) Cerasus campanulata Cerasus kanzakura Cerasus introrsa Cerasus miyoshii Cerasus takenakae 品 種 名 ' 嵐 山 ', ' 紅 虎 の 尾 ', ' 五 所 桜 ', ' 一 葉 ', ' 麒 麟 ', ' 苔 清 水 ', ' 小 汐 山 ', ' 御 車 返 し', ' 弁 殿 ', 関 山 ', ' 朱 雀 ', ' 類 嵐 ', ' 早 晩 山 ', ' 渦 桜 ', ' 松 月 ', ' 牡 丹 ', ' 御 所 御 車 返 し', ' 平 野 寝 覚 ', ' 妹 背 ', ' 高 台 寺 ', ' 手 弱 女 ', ' 矢 岳 紫 ', ' 新 珠 ', ' 紅 玉 錦 ', ' 紅 豊 ', ' 花 笠 ', ' 松 前 紅 緋 衣 ', ' 松 前 紅 珠 恵 ', ' 松 前 花 染 衣 ', ' 松 前 早 咲 ', ' 松 前 更 紗 ', ' 靜 香 ', ' 千 原 桜 ', ' 不 断 桜 ', ' 御 所 匂 ', ' 御 殿 匂 ', 伊 予 熊 谷 ', ' 大 村 桜 ', ' 三 ヶ 日 桜 ', ' 名 島 桜 ', ' 太 田 桜 ', ' 奥 州 里 桜 ', ' 福 桜 ', ' 仙 台 枝 垂 ', ' 兼 六 園 菊 桜 ', ' 東 京 桜 ', ' 白 山 旗 桜 ', ' 八 重 匂 ' ' 赤 実 大 島 ', ' 潮 風 桜 ', ' 水 上 ', ' 伊 豆 桜 ', ' 寒 咲 大 島 ', ' 八 重 大 島 桜 ', ' 新 墨 染 ' ' 阿 岸 小 菊 桜 ', ' 紅 南 殿 ', ' 八 重 左 近 桜 ', ' 祇 王 寺 祇 女 桜 ', ' 気 多 の 白 菊 桜 ', ' 二 度 桜 ', ' 火 打 谷 菊 桜 ', ' 稚 木 の 桜 ', ' 市 原 虎 の 尾 ', ' 内 裏 の 桜 ', ' 伊 予 薄 墨 ', ' 金 剛 桜 ', ' 琴 平 ', ' 木 の 花 桜 ', ' 八 房 桜 ', ' 来 迎 寺 菊 桜 ', ' 佐 野 桜 ', ' 仙 台 屋 ', ' 駿 府 桜 ' ' 釧 路 八 重 ' ' 簪 桜 ', ' 片 丘 桜 ', ' 霧 降 桜 ' ' 高 砂 ' ' 雛 菊 桜 ' ' 朝 露 桜 ', ' 富 士 菊 桜 ', ' 長 柄 の 豆 桜 ', ' 鴛 鴦 桜 ', ' 八 重 の 豆 桜 ', ' 緑 桜 ' ' 飴 玉 桜 ', ' 枝 垂 小 葉 桜 ', ' 冬 桜 ', ' 海 猫 ' ' 雪 洞 桜 ' ' 含 満 桜 ', ' 勝 道 桜 ' ' 湯 村 ' ' 正 福 寺 桜 ', ' 八 重 紅 彼 岸 ', ' 思 川 ' ' 八 重 紅 枝 垂 ', ' 雨 情 枝 垂 ' 'モチヅキザクラ', ' 勝 手 桜 ' ' 天 城 吉 野 ', 'アメリカ', ' 薄 毛 大 島 ', ' 船 原 吉 野 ', ' 早 咲 大 島 ', ' 伊 豆 吉 野 ', ' 吉 祥 寺 ', ' 鞍 馬 桜 ', ' 御 帝 吉 野 ', ' 三 島 桜 ', ' 盛 岡 枝 垂 ', ' 浪 速 桜 ', ' 枝 垂 大 臭 桜 ', ' 枝 垂 染 井 吉 野 ', ' 仙 台 吉 野 ', ' 咲 耶 姫 ', ' 笹 部 桜 ', ' 昭 和 桜 ', ' 染 井 彼 岸 ', ' 染 井 匂 ', ' 衣 通 姫 ', ' 駿 河 桜 ', ' 修 善 寺 桜 ', ' 早 生 吉 野 ' ' 子 福 桜 ', 'クルサル', ' 水 玉 桜 ', ' 茂 庭 桜 ', 'オカメ', ' 紅 鶴 桜 ', ' 滝 野 桜 ', ' 陽 光 ' ' 琉 球 寒 緋 桜 ' ' 河 津 桜 ', ' 大 寒 桜 ', ' 修 善 寺 寒 桜 ', ' 横 浜 緋 桜 ' ' 雛 桜 ', ' 椿 寒 桜 ', ' 明 正 寺 ', ' 多 賀 紅 ', ' 弥 生 桜 ' ' 泰 山 府 君 ' ' 東 海 桜 ' 表 2. 複 数 の DNA パターンを 示 す 栽 培 品 種 分 類 群 名 Cerasus lannesiana Sato-zakura Group Cerasus lannesiana var. speciosa Cerasus verecunda Cerasus incisa var. incisa Cerasus incisa var. kinkiensis Cerasus subhirtella Cerasus pendula Cerasus yedoensis Cerasus kanzakura 品 種 名 写 真 2. 複 数 の DNA パ ターンを 示 す 栽 培 品 種 例 :' 枝 垂 桜 ' ' 荒 川 匂 ', ' 兼 六 園 熊 谷 ', ' 八 重 曙 ', ' 東 錦 ', ' 糸 括 ', ' 白 雪 ', ' 薄 墨 ', ' 芝 山 ' ' 薄 重 大 島 ', ' 八 重 紅 大 島 ' ' 奈 良 の 八 重 桜 ' ' 大 花 豆 桜 ' ' 緑 近 畿 豆 桜 ' ' 十 月 桜 ', ' 小 彼 岸 ', ' 四 季 桜 ', 'ヤブザクラ' ' 枝 垂 桜 ' ' 毛 大 島 桜 ' ' 寒 桜 ' これに 対 して 枝 垂 桜 と 呼 ばれる 栽 培 品 種 の 中 に は 多 くのクローンが 含 まれていることがわかりました ( 写 真 2) 四 季 桜 や 寒 桜 奈 良 の 八 重 桜 など についても 複 数 のクローンが 含 まれていました 複 数 のクローンがあるということは 接 ぎ 木 や 挿 し 木 による 増 殖 だけでなく 他 の 個 体 と 交 配 した 種 子 による 増 殖 なども 過 去 に 行 われ 形 態 が 似 ていたために 明 確 に 区 別 せず 1 つの 栽 培 品 種 とされてきたと 考 えられま す このようなものを 表 2 にまとめました A B C D 香 林 寺 の 枝 垂 秩 父 紅 枝 垂 秦 雲 寺 の 枝 垂 桜 別 曽 峠 の 柳 桜 また 従 来 は 異 なる 名 前 で 呼 ばれていたも のが 同 一 の DNA パターンを 示 し じつは 同 一 クローンと 考 えられるものも 見 つかりまし た 江 戸 糸 括 大 手 毬 八 重 紅 虎 の 尾 ( 写 真 3A~D)は 形 態 に 違 いが 見 られないこと から 独 立 性 が 疑 われていましたが DNA 解 析 により 同 じクローンであることがわかりまし た これらは 江 戸 という 栽 培 品 種 名 があま り 有 名 でなかったために 様 々な 名 前 が 付 け られたものと 考 えられます さらに 車 止 駒 繋 も 栽 培 品 種 の 太 白 と 同 一 クローンであ ることが 明 らかになりました( 写 真 3E~G) 同 一 の DNA パターンを 示 す 栽 培 品 種 を 表 3 で 示 しています なお 御 衣 黄 と 鬱 金 ( 写 真 3H,I)のよ 写 真 3. 異 なる 栽 培 品 種 とされてきたが 同 一 の DNA パターンを 示 すもの 例 1: 異 名 同 品 種 A 安 行 の 江 戸,B 京 都 の 糸 括,C 鶴 来 の 大 手 毬,D 神 代 の 八 重 紅 虎 の 尾 E 三 島 の 太 白,F 車 駐,G 神 代 の 駒 繋 例 2: 枝 変 わりの 可 能 性 のある 栽 培 品 種 H 御 衣 黄,I 鬱 金 ( 外 部 形 態 は 異 なるが 同 一 の DNA パターンを 示 した) うに 形 態 や 色 に 違 いがあるにもかかわらず 17 座 のマーカーを 用 いた DNA 解 析 で 違 いが 検 出 されなかったもの があります 御 衣 黄 の 枝 の 中 に 鬱 金 によく 似 た 花 を 持 つ 枝 が 見 つかることがあり この2つは 互 いに 枝 変 わ りの 関 係 にあることが 推 測 されています 枝 変 わりとは ある 樹 木 に 発 生 した 突 然 変 異 の 枝 を 増 殖 した 場 合 のこと をいいます このような 場 合 数 億 個 の 中 の 特 定 形 質 に 関 与 する 1, 2 個 の DNA 塩 基 が 違 うだけなので 感 度 が 非 常 に 高 い SSR マーカーによる 解 析 でもさすがに 違 いを 検 出 できません この 他 に 染 井 紅 は 染 井 吉 野 の 枝 変 わりから 作 られたという 事 実 が 記 録 に 残 されており 花 弁 の 色 に 違 い 34

が 見 られます この 場 合 も DNA 解 析 では 同 じパターン となっています 御 室 有 明 と 貴 船 雲 珠 も 樹 形 に 違 いがあります また 有 明 大 提 灯 千 里 香 は 互 い に 形 態 に 違 いが 見 られず 前 述 の 江 戸 や 太 白 の ような 異 名 同 品 種 の 関 係 にあると 思 われますが 真 桜 はこれらとは 異 なり 形 態 に 違 いが 見 られます 上 記 の4 組 は 形 態 の 違 いはありますが DNA から 見 て 互 いに 非 常 に 近 い 関 係 にあることは 確 かです 以 上 は 多 摩 森 林 科 学 園 国 立 遺 伝 学 研 究 所 新 宿 御 苑 の 結 果 ですので 今 後 他 のコレクションを 調 べる と まだ 異 なるクローンが 見 つかる 可 能 性 は 残 っていま す なお 表 中 の 一 部 の 学 名 および 品 種 名 は 桜 解 説 表 3. 異 なる 栽 培 品 種 とされてきたが 同 一 の DNA パターンを 示 すもの 分 類 群 名 Cerasus lannesiana Sato-zakura Group Cerasus subhirtella Cerasus jamasakura Cerasus yedoensis (14-29 ページ)の 表 記 と 異 なっている 部 分 がありますが 執 筆 者 により 分 類 体 系 が 異 なるためです ご 了 承 くだ さい 品 種 名 ' 上 匂 ' = ' 帆 立 ', ' 普 賢 象 ' = ' 玖 島 桜 ', ' 滝 匂 ' = ' 御 座 の 間 匂 ' = ' 明 月 ' = ' 駿 河 台 匂 ', ' 長 州 緋 桜 ' = ' 兼 六 園 熊 谷 ', ' 福 禄 寿 ' = ' 八 重 曙 ', ' 八 重 曙 ' = ' 天 の 川 ', ' 永 源 寺 ' = ' 房 桜 ', ' 御 衣 黄 ' = ' 鬱 金 ', ' 金 剛 山 ' = ' 紫 桜 ', ' 増 山 ' = ' 塩 釜 桜 ' = ' 水 晶 ' ' 東 錦 ' = ' 糸 括 ' = ' 白 山 大 手 毬 ' = ' 江 戸 ' = ' 八 重 紅 虎 の 尾 ', ' 東 錦 ' = ' 糸 括 ' = ' 楊 貴 妃 ', ' 狩 衣 ' = ' 翁 桜 ' = ' 白 雪 ', ' 雨 宿 ' = ' 白 妙 ', ' 大 明 ' = ' 鷲 の 尾 ', ' 駒 繋 ' = ' 車 駐 ' = ' 太 白 ', ' 真 桜 ' = ' 有 明 ' = ' 大 提 灯 ' = ' 千 里 香 ', ' 梅 護 寺 数 珠 掛 桜 ' = ' 突 羽 根 ', ' 貴 船 雲 珠 ' = ' 御 室 有 明 ', ' 鬼 無 稚 児 桜 ' = ' 二 尊 院 普 賢 象 ', ' 大 沢 桜 ' = ' 小 南 殿 ', ' 十 月 桜 ' = ' 彼 岸 台 桜 ' = ' 小 彼 岸 ' ' 御 信 桜 ' = ' 日 吉 桜 ', ' 染 井 吉 野 ' = ' 染 井 紅 ', (3) 系 統 関 係 の 解 析 これまで 説 明 してきたように DNA 解 析 を 行 うことで 栽 培 品 種 の 正 確 な 識 別 が 可 能 になりました 次 に 各 栽 培 品 種 はどのような 関 係 にある のでしょうか サクラの 栽 培 品 種 は 桜 解 説 ( 野 生 の 桜 )の 章 で 紹 介 さ れた 野 生 種 を 基 に 品 種 改 良 が 行 われてきたと 考 えられています 栽 培 品 種 の 多 くは 野 生 のサクラ 同 士 の 種 間 交 雑 や 野 生 個 体 の 突 然 変 異 などにより 形 態 に 明 確 な 違 いが 見 られたものを 接 ぎ 木 や 挿 し 木 などにより 人 工 増 殖 したものと 考 えられています よって 栽 培 品 種 の 成 立 には 野 生 のサクラのいずれかが 関 わっているはずです 系 統 間 の 関 係 を 調 べるために さらに 増 やして 合 計 26 座 の SSR マ ーカーを 用 いて 図 3 のような 解 析 をしました まずは 野 生 のサクラ について DNA 解 析 で 種 を 識 別 できるかについて 試 したところ チョウ ジザクラの 一 部 とマメザクラは 区 別 出 来 ませんでしたが それ 以 外 は 遺 伝 的 に 識 別 できることが 分 かりました 次 に それぞれの 栽 培 品 種 にどの 野 生 のサクラがどの 程 度 関 わっているかが 明 らかになりました 図 3 に 示 すように サトザクラの 仲 間 では オオシマザクラとヤマザクラ の 影 響 が 強 く 見 られ 一 部 の 栽 培 品 種 ではオオヤマザクラやカスミザ クラの 影 響 も 見 られました その 他 にも 複 数 の 野 生 種 の 影 響 が 見 られ る 栽 培 品 種 がありましたが 野 生 のサクラの 影 響 がそのまま 強 く 現 れ ている 栽 培 品 種 もありました ソメイヨシノの 仲 間 では エドヒガンとオ オシマザクラ 以 外 にヤマザクラの 影 響 がみられる 栽 培 品 種 もありまし た また カンヒザクラや 暖 地 桜 桃 としても 知 られるシナミザクラの 影 響 がみられる 栽 培 品 種 もありました しかしながら 中 には 関 わった 野 生 種 を 明 確 に 断 定 出 来 ない 栽 培 品 種 も 見 受 けられました このような 栽 培 品 種 では 野 生 種 の 関 わりが 複 雑 であると 考 えられます 図 3. 栽 培 品 種 の 成 立 に 関 わった 野 生 種 の 推 定 野 生 種 と 栽 培 品 種 の SSR 分 析 の 結 果 を 比 較 することで 各 栽 培 品 種 の DNA の 組 成 を 推 定 しました 棒 グラフは 各 栽 培 品 種 の DNA 組 成 を どのような 野 生 種 が 基 になっているかで 表 しています 以 下 に 例 に 基 づいて 説 明 します 栽 培 品 種 A DNA の 組 成 ではオオシマザクラが 90% 関 与 しており 野 生 のオオシマザクラとほぼ 変 わらな いことを 示 しています 栽 培 品 種 B 現 段 階 ではチョウジザクラ マメザクラ キンキマメザクラを 区 別 できませんが いずれかの 種 が 60% 関 与 していることを 示 しています 栽 培 品 種 C ヤマザクラ 以 外 の 野 生 分 類 群 が 30% 関 与 することを 示 しています 35 SSR 分 析 で 識 別 可 能 であったサクラの 野 生 分 類 群 棒 グラフの 例 100% 100% オオシマザクラ ヤマザクラ オオヤマザクラ カスミザクラ 50% 50% 0% 0% サトザクラの 仲 間 マメザクラ キンキマメザクラ オクチョウジザクラ ( 各 色 は 棒 グラフの 凡 例 に 対 応 している) 栽 培 品 種 A 栽 培 品 種 B 栽 培 品 種 C チョウジザクラ タカネザクラ エドヒガン シナミザクラ カンヒザクラ ミヤマザクラ オオシマザクラ 90% ヤマザクラ 10% チョウジザクラ マメザクラ 60% キンキマメザクラ エドヒガン 40% ヤマザクラ 70% 不 明 30% ソメイヨシノの 仲 間 100% 50% ' 上 匂 '/' 帆 立 ' ' 普 賢 象 '/' 玖 島 桜 ' ' 船 原 吉 野 ' ' 御 帝 吉 野 ' ' 三 島 桜 ' 滝 匂 / 明 月 / ' 駿 河 台 匂 '/' 御 座 の 間 匂 ' ' 御 衣 黄 '/' 鬱 金 ' ' 一 葉 ' ' 増 山 '/' 塩 釜 桜 '/' 水 晶 ' ' 御 車 返 し' ' 関 山 ' ' 盛 岡 枝 垂 ' ' 染 井 匂 ' ' 衣 通 姫 ' ' 修 善 寺 桜 ' ' 染 井 吉 野 '/' 染 井 紅 ' ' 松 月 ' ' 狩 衣 '/' 翁 桜 '/ 白 雪 ' ' 雨 宿 '/' 白 妙 ' カンザクラやシナミザクラの 影 響 がみられた 栽 培 品 種 ' 大 明 '/' 鷲 の 尾 ' ' 駒 繋 '/' 太 白 '/ 車 駐 ' 真 桜 / 有 明 / 100% 50% 0% 'オカメ' ' 大 提 灯 '/' 千 里 香 ' ' 陽 光 ' ' 梅 護 寺 数 珠 掛 桜 '/' 突 羽 根 ' ' 貴 船 雲 珠 '/' 御 室 有 明 ' ' 河 津 桜 ' ' 大 沢 桜 '/' 小 南 殿 ' ' 手 弱 女 ' ' 紅 豊 ' ' 松 前 早 咲 ' ' 松 前 更 紗 ' ' 靜 香 ' ' 太 田 桜 ' ' 寒 桜 ' ( 熱 海 桜 ) ' 大 寒 桜 ' ' 椿 寒 桜 ' ' 明 正 寺 ' ' 東 海 桜 ' 一 つの 野 生 種 の 影 響 が 強 く 見 られた 栽 培 品 種 ' 奥 州 里 桜 ' ' 仙 台 枝 垂 ' 100% 50% 0% ' 兼 六 園 菊 桜 ' 複 数 の 野 生 種 の 影 響 が 見 られた 栽 培 品 種 ' 伊 豆 桜 ' ' 八 重 大 島 桜 ' ' 二 度 桜 ' ' 稚 木 の 桜 ' 100% 50% 0% ' 釧 路 八 重 ' ' 片 丘 桜 ' ' 高 砂 ' ' 富 士 菊 桜 ' ' 冬 桜 ' ' 枝 垂 桜 ' ( 三 穂 の 枝 垂 毛 山 桜 ) ' 海 猫 ' ' 枝 垂 桜 ' ( 香 林 寺 枝 垂 ) ' 湯 村 ' ' 八 重 紅 枝 垂 ' ' 正 福 寺 桜 ' ' 八 重 紅 彼 岸 ' 有 意 なq 値 あるいは q 値 > 0.1のみを 表 示 0%

サクラの 病 害 ( 幼 果 菌 核 病 と 斑 点 性 病 害 ) 幼 果 菌 核 病 サクラ 類 幼 果 菌 核 病 ( 写 真 1)は 子 のう 菌 Monilinia kusanoi により 起 きる 病 害 で 激 害 の 年 が 続 くとサクラの 樹 体 が 衰 弱 し 枯 死 することもあります 本 菌 は 花 に 感 染 し 未 成 熟 のまましなびたミイラ 果 ( 写 真 2)を 形 成 し 菌 は 地 上 に 落 ち たミイラ 果 上 で 越 冬 翌 年 の 春 先 の 開 花 期 に 子 のう 胞 子 を 形 成 し 感 染 源 となります 子 のう 胞 子 が 感 染 した 葉 と 幼 梢 は 枯 れて 褐 変 し 垂 れ 下 がります 感 染 した 葉 と 幼 梢 から 分 生 胞 子 が 飛 散 し 春 の 間 に 感 染 を 繰 り 返 します 多 摩 森 林 科 学 園 のサクラ 保 存 林 内 のサクラ 類 の 系 統 と 本 病 の 罹 病 程 度 の 関 係 を 調 査 しました まずサクラ 類 の 26 の 種 栽 培 品 種 各 数 本 について 葉 の 罹 病 率 を 調 べた ところ カラミザクラ カンヒザクラ マメザクラの 系 統 に 罹 病 率 が 高 い 傾 向 が 見 られました また 同 じ 栽 培 ライン (クローン)の 個 体 の 罹 病 率 には 大 きなばらつきがないこ とも 明 らかになりました 次 に 約 370 のサクラ 栽 培 ライン 各 1 本 について 葉 の 罹 病 程 度 を 5 段 階 評 価 したところ やはりカラミザクラ カンヒザクラ マメザクラの 系 統 に 罹 病 するものが 多 く サクラ 系 統 と 本 病 の 罹 病 程 度 には 関 係 があることが 明 らかになりました( 図 ) カスミザクラ 系 * 栽 培 品 種 に 関 わる 系 統 を 重 複 してカウント ミヤマザクラ 系 0 50 100 150 200 ( 本 ) 図. サクラ 保 存 林 のサクラ 各 系 統 の 葉 の 幼 果 菌 核 病 罹 病 程 度 (2009 年 ) 葉 に 罹 病 する 栽 培 品 種 と 実 に 罹 病 する 栽 培 品 種 は 必 ずしも 一 致 せず 春 先 の 葉 の 展 開 の 早 いサクラ 系 統 に 葉 の 罹 病 が 多 く 開 花 が 遅 い 系 統 に 実 の 罹 病 が 多 いという 結 果 が 得 られました 葉 の 展 開 の 早 い 系 統 の 展 葉 時 期 が 子 のう 胞 子 の 飛 散 時 期 にほぼ 一 致 し 開 花 が 遅 い 系 統 の 開 花 時 期 が 分 生 胞 子 の 飛 散 時 期 にほぼ 一 致 することが その 理 由 の 一 つと 考 えられます 2009~2012 年 の 調 査 で 2011 年 は 調 査 木 全 体 で 著 しく 葉 の 罹 病 程 度 が 低 く 本 病 の 罹 病 程 度 には 年 変 動 があることが 明 らかになりました 斑 点 性 病 害 写 真 1. 幼 果 菌 核 病 に 感 染 した 河 津 桜 カラミザクラ 系 カンヒザクラ 系 マメザクラ 系 エドヒガン 系 ヤマザクラ 系 オオシマザクラ 系 オオヤマザクラ 系 チョウジザクラ 系 写 真 3. Phyllosticta sp. による 褐 斑 病 葉 の 比 率 なし ~1 割 1~4 割 4~7 割 7 割 ~ 写 真 2. 幼 果 菌 核 病 のミイラ 果 サクラ 類 の 葉 の 2 種 類 の 斑 点 性 病 害 について サクラ 系 統 と 罹 病 程 度 との 関 係 を 調 べました 糸 状 菌 Pseudocercospora circumscissa によるサクラ 類 穿 孔 褐 斑 病 は 27 のサクラ 類 の 種 栽 培 品 種 の 全 てに 発 生 し サクラ 系 統 の 罹 病 の 特 異 性 は 認 められませんでした 糸 状 菌 Phyllosticta 属 の 未 記 載 の 種 によ る 褐 斑 症 状 ( 写 真 3)は オオシマザクラの 系 統 の 栽 培 品 種 に 多 く 認 められまし たが エドヒガンの 系 統 の 栽 培 品 種 には 発 生 が 少 なく サクラ 系 統 とこの 菌 によ る 褐 斑 症 状 の 発 生 には 関 係 があると 考 えられました 36

サクラの 病 害 (てんぐ 巣 病 ) サクラ 類 てんぐ 巣 病 の 特 徴 は 異 常 に 多 く 分 岐 する 罹 病 枝 の 形 成 です( 写 真 1) 罹 病 枝 は 正 常 枝 に 比 べて 花 をあまりつけず 正 常 枝 の 葉 より 早 く 小 型 の 葉 をつけます 罹 病 枝 の 葉 は 晩 春 には 黒 く 萎 れ 葉 裏 に 病 原 である 子 のう 菌 の Taphrina wiesneri の 子 実 層 を 形 成 し 子 実 層 から 子 のう 胞 子 が 飛 散 して 感 染 します 箒 状 の 異 常 な 分 枝 は 本 菌 が 産 生 する 植 物 ホルモンによると 考 えられています 罹 病 枝 は 数 年 で 枯 死 することが 多 く 枯 れた 罹 病 枝 が 脱 落 した 傷 跡 から 胴 枯 病 菌 や 腐 朽 菌 が 侵 入 し 樹 体 の 衰 弱 を 招 くことがあります 2009~2010 年 に てんぐ 巣 病 罹 病 枝 を 切 り 落 とす 管 理 をしていな かった 社 会 福 祉 法 人 こどもの 国 ( 横 浜 市 )の 園 内 の 28 栽 培 品 種 を 含 写 真 1. 十 月 桜 のてんぐ 巣 病 罹 病 枝 むサクラ 34 種 類 439 本 について 本 数 あたりの 罹 病 率 を 調 べました その 結 果 オオシマザクラとエドヒガンの 雑 種 である 染 井 吉 野 が 著 しく 高 く 野 生 種 のオオシマザクラおよびエドヒガンにはてんぐ 巣 病 の 罹 病 枝 を 持 つ 個 体 はありませんでした( 表 ) 本 病 に 罹 りにくい 親 から 病 気 に 罹 りやすい 栽 培 品 種 が 生 じたことになります 通 常 種 は 遺 伝 的 性 質 の 異 なる 多 数 の 個 体 を 含 んでいます 種 内 にてんぐ 巣 病 に 罹 りやすい 個 体 と 罹 りにくい 個 体 が 混 在 しており 罹 りやすい 性 質 を 持 った 個 体 がたまたま 栽 培 品 種 の 作 出 に 関 係 した 可 能 性 があります 多 摩 森 林 科 学 園 のサクラ 保 存 林 でも 同 様 の 調 査 を 行 いました 本 プロジェクト 期 間 の 2009~2012 年 にてんぐ 巣 病 罹 病 枝 を 切 り 落 とす 管 理 を 中 止 し 2012 年 にサクラの 種 栽 培 品 種 336 栽 培 ライン 各 1 本 について 罹 病 の 有 無 を 調 べました その 結 果 やはり 染 井 吉 野 に 代 表 されるオオシマザクラおよびエドヒガンの 系 統 の 栽 培 品 種 には 本 病 の 罹 病 が 認 められたものの 野 生 種 のオオシマザクラおよびエドヒガンには 罹 病 が 見 られませんでし た( 図 1) 他 に 罹 病 の 見 られた 系 統 としては 十 月 桜 などのマメザクラ 系 の 栽 培 品 種 がありました( 写 真 1) 種 栽 培 品 種 名 調 査 罹 病 罹 病 率 調 査 罹 病 罹 病 率 種 栽 培 品 種 名 本 数 本 数 % 本 数 本 数 % 枝 垂 桜 (エドヒガン 系 ) 29 0 0 松 月 (オオシマザクラ 系 ) 21 1 4.7 八 重 紅 枝 垂 (エドヒガン 系 ) 36 0 0 上 匂 (オオシマザクラ 系 ) 1 0 0 エドヒガン 4 0 0 朱 雀 (オオシマザクラ 系 ) 2 0 0 染 井 吉 野 (エドヒガン オオシマザクラ 系 ) 40 31 77.5 太 白 (オオシマザクラ 系 ) 4 1 25 陽 光 (エドヒガン オオシマザクラ カンヒザクラ 系 ) 1 0 0 手 弱 女 (オオシマザクラ 系 ) 3 1 33.3 小 彼 岸 (エドヒガン マメザクラ 系 ) 1 1 100 梅 護 寺 数 珠 掛 桜 (オオシマザクラ 系 ) 1 0 0 十 月 桜 (エドヒガン マメザクラ 系 ) 4 0 0 福 禄 寿 (オオシマザクラ 系 ) 4 0 0 オオシマザクラ 13 0 0 普 賢 象 (オオシマザクラ 系 ) 62 2 3.2 河 津 桜 (オオシマザクラ カンヒザクラ 系 ) 7 0 0 楊 貴 妃 (オオシマザクラ 系 ) 2 0 0 オオシマザクラとヤマザクラの 雑 種 1 0 0 長 州 緋 桜 (オオシマザクラ 系 ) 1 0 0 嵐 山 (オオシマザクラ 系 ) 2 1 50 椿 寒 桜 (カラミザクラ カンヒザクラ 系 ) 2 0 0 有 明 (オオシマザクラ 系 ) 2 0 0 カンヒザクラ 2 0 0 一 葉 (オオシマザクラ 系 ) 7 1 14.3 寒 桜 (カンヒザクラ ヤマザクラ 系 ) 4 0 0 御 室 有 明 (オオシマザクラ 系 ) 1 0 0 横 浜 緋 桜 (カンヒザクラ ヤマザクラ 系 ) 15 0 0 関 山 (オオシマザクラ 系 ) 130 11 8.5 マメザクラとヤマザクラの 雑 種 1 0 0 菊 桜 (オオシマザクラ 系 ) 1 1 100 日 吉 桜 (ヤマザクラ 系 ) 1 0 0 御 衣 黄 (オオシマザクラ 系 ) 2 0 0 ヤマザクラ 31 3 9.7 表. こどもの 国 におけるサクラの 種 栽 培 品 種 のてんぐ 巣 病 罹 病 状 況 オオシマザクラ 系 ヤマザクラ 系 カスミザクラ 系 オオヤマザクラ 系 タカネザクラ 系 マメザクラ 系 チョウジザクラ 系 エドヒガン 系 カラミザクラ 系 カンヒザクラ 系 ミヤマザクラ 系 罹 病 健 全 オオシマザクラ ヤマザクラ カスミザクラ オオヤマザクラ タカネザクラ マメザクラ チョウジザクラ エドヒガン カラミザクラ カンヒザクラ ミヤマザクラ 0 50 100 150 ( 本 ) 0 10 20 30( 本 ) 図 2. 多 摩 森 林 科 学 園 サクラ 保 存 林 におけるサクラ 系 統 のてんぐ 巣 病 罹 病 状 況 ( 左 : 栽 培 品 種 ; 右 : 野 生 種 ) * 栽 培 品 種 に 関 わる 系 統 を 重 複 してカウント 37

サクラの 病 害 ( 増 生 病 ) 写 真 1. クルサル のこぶ 病 ( 細 菌 性 ) 種 栽 培 品 種 はムシャザクラと クルサル でしたが サクラ 類 の 計 23 の 種 栽 培 品 種 にこの 細 菌 を 接 種 したところ 明 瞭 な 病 徴 が 再 現 された のはムシャザクラを 含 む 3 栽 培 ラインで 野 外 観 察 と 同 じく 接 種 試 験 でもこの 病 気 が 特 定 の 種 類 に 発 生 しやすいことが 明 らかになりました ( 表 1) また 北 海 道 や 九 州 で 発 生 しているサクラのこぶから 分 離 さ れた 細 菌 を 用 いて 同 様 の 接 種 試 験 を 行 ったところ 病 徴 が 再 現 され た 種 類 は 多 摩 のムシャザクラ 分 離 細 菌 の 接 種 結 果 とは 異 なっていま した サクラにこぶ 病 を 起 こす 細 菌 には 病 原 性 を 異 にする 複 数 の 系 統 が 存 在 し 仮 に 病 原 力 の 強 い 九 州 のこぶ 病 が 園 内 に 侵 入 した 場 合 園 内 のサクラ 野 生 種 と 一 部 の 栽 培 品 種 が 感 染 被 害 を 受 ける 可 能 性 が あることが 分 かりました 増 生 病 は 植 物 組 織 の 異 常 な 増 殖 により 突 出 した 病 患 部 が 形 成 される 病 気 の 総 称 です その 中 でも こぶ 病 は いぼ 状 の 突 起 が 発 達 肥 大 して 半 球 状 球 状 の 腫 瘤 になるもの( 写 真 1) かいよう( 潰 瘍 ) 病 は 局 所 的 な 師 部 壊 死 の 継 続 による 巻 き 込 みの 阻 害 により 陥 没 裂 開 部 と 肥 大 突 出 部 が 形 成 される 結 果 球 状 紡 錘 状 同 心 円 状 びらん 状 の かいよう となるものをいいます ( 写 真 2) こうした 植 物 の 異 常 な 形 態 は 生 理 的 な 原 因 や 糸 状 菌 (カビ)や 細 菌 (バクテリア)の 感 染 によって 起 こります 多 摩 森 林 科 学 園 のサクラ 保 存 林 のサクラ 類 の30の 種 栽 培 品 種 につい て 増 生 病 の 発 生 を 調 べたところ こぶを 持 つ 種 類 とかいようを 持 つ 種 類 が 見 つかりました こぶからは 細 菌 が 分 離 され この 細 菌 を 健 全 な 枝 に 接 種 するとこぶ 病 徴 が 再 現 されました 従 ってこ ぶ 病 の 原 因 はこの 細 菌 だと 考 えられました こぶが 観 察 された 写 真 2. 冬 桜 のかいよう 病 表 1. 接 種 試 験 によるサクラ 栽 培 品 種 のサクラ 類 増 生 病 菌 に 対 する 感 受 性 種 栽 培 品 種 菌 株 CS9601 SG149 SG162 佐 賀 多 摩 札 幌 ( 由 来 ) 種 別 染 井 吉 野 ムシャザクラ オオヤマザクラ 楊 貴 妃 栽 培 品 種 + - + - 河 津 桜 栽 培 品 種 兼 六 園 菊 桜 栽 培 品 種 + - + - + 八 重 紅 枝 垂 栽 培 品 種 + 関 山 栽 培 品 種 + - + - + - 鬱 金 栽 培 品 種 + 奈 良 八 重 桜 栽 培 品 種 + - + + 寒 桜 栽 培 品 種 冬 桜 栽 培 品 種 + - 駿 河 台 匂 栽 培 品 種 + - + 福 禄 寿 栽 培 品 種 + - + - + - 松 月 栽 培 品 種 - + - + - 御 車 返 栽 培 品 種 神 代 曙 栽 培 品 種 + - 染 井 吉 野 栽 培 品 種 + - + - ナポレオン 栽 培 品 種 (セイヨウミザクラ) ++ ++ マメザクラ 野 生 種 + + - + - エドヒガン 野 生 種 ++ + カンヒザクラ 野 生 種 + + - + - ムシャザクラ 野 生 種 ( 台 湾 産 ) ++ + + - カスミザクラ 野 生 種 ++ + - + チョウジザクラ 野 生 種 + + ヤマザクラ 野 生 種 + + - + - : 感 受 性 無 し + : 感 受 性 わずかに 有 り +: 感 受 性 有 り ++: 感 受 性 強 い 一 方 かいよう 病 は 玉 が 連 結 したような 特 有 の 形 状 を 呈 し 病 患 部 からは 細 菌 が 分 離 されず この 病 気 は 非 細 菌 性 のかい よう 病 と 考 えられました サクラ 保 存 林 内 で の 調 査 の 結 果 このかいよう 病 はエドヒガ ン 及 びエドヒガンを 親 に 持 つ 栽 培 ラインに はあまり 認 められず サクラの 系 統 により 罹 病 の 傾 向 が 異 なることが 明 らかになりまし た 罹 病 の 程 度 をサクラ 1 本 当 たりのかい ようの 数 や 発 生 した 枝 枯 れ 割 合 で 評 価 し 4 年 間 の 病 状 の 推 移 を 調 べたところ 野 生 種 ではチョウジザクラ 栽 培 品 種 では 一 葉 御 車 返 椿 寒 桜 雛 桜 冬 桜 等 でかいよう 病 の 罹 病 程 度 が 急 速 に 上 昇 し ていました このかいよう 病 はかいよう 数 の 増 加 に 伴 い 枝 枯 れや 腐 朽 が 起 きて 樹 体 が 衰 弱 することが 観 察 されるので 今 後 病 患 部 や 腐 朽 部 分 を 切 除 しながら 罹 病 樹 の 樹 勢 の 回 復 を 図 るなどの 対 策 を 講 じる 必 要 があります 38

サクラの 病 害 ( 腐 朽 病 害 ) 樹 木 には 幹 や 枝 根 が 内 部 から 腐 る 腐 朽 病 害 がしばしば 発 生 します 腐 朽 病 害 は 寄 生 性 病 害 とは 異 なり 生 きている 組 織 にほとんど 侵 入 せず 死 んだ 組 織 である 木 部 ( 木 材 )を 分 解 します 原 因 は 木 材 腐 朽 菌 類 所 謂 きのこで 大 半 はサルノコシカケの 仲 間 の 硬 いきのこです 腐 朽 菌 類 は 木 材 中 では 菌 糸 として 存 在 し 腐 朽 が 進 むと 幹 や 枝 上 にきのこを 作 り 大 量 の 胞 子 を 飛 散 させます 感 染 力 は 弱 いので 健 全 な 樹 木 には 侵 入 できず 枯 れ 枝 や 剪 定 痕 などに 付 着 した 胞 子 が 発 芽 して 菌 糸 となり 樹 体 内 に 侵 入 します 腐 朽 は 幹 枝 腐 朽 と 根 株 腐 朽 に 大 きく 分 けられ 幹 枝 腐 朽 は 幹 折 れや 枝 折 れの 原 因 となり( 写 真 1) 根 株 腐 朽 は 根 返 りや 地 際 部 の 幹 折 れ を 引 き 起 こします サクラ 保 存 林 内 の 実 態 調 査 を 行 った 結 果 サクラの 種 栽 培 品 種 等 44 種 類 222 本 のうち 43 種 類 208 本 に 腐 朽 が 確 認 されました 腐 朽 度 を 5 段 階 で 評 価 し 幹 の 直 径 と 比 較 すると 両 者 の 間 に 関 係 はみられませんでし た 一 方 で 種 や 栽 培 品 種 間 の 差 は 大 きく 腐 朽 度 の 高 いサクラは 市 原 虎 の 尾 冬 桜 白 雪 で 腐 朽 度 の 低 いサクラは マメザクラ ヤマザクラ 一 葉 でした( 図 1) これは 種 や 栽 培 品 種 間 に 寄 生 性 病 害 や 穿 孔 虫 等 の 被 害 に 差 があり それらによって 発 生 した 枯 枝 や 傷 から 二 次 的 に 腐 朽 菌 類 が 侵 入 したためと 考 えられます 腐 朽 した 幹 や 枝 上 には 多 くのきのこが 発 生 しました 最 も 多 かったのはカワラタケで( 写 真 2) 他 にはチャカイ ガラタケ ヒイロタケ ヤキフタケ アラゲカワラタケ ツガサルノコシカケ 等 が 見 られました( 写 真 3) しかし 公 園 や 街 路 に 植 栽 されたサクラに 多 いベッコウタケやコフキタケによる 根 株 腐 朽 被 害 はほとんど 見 られず 幹 枝 の 腐 朽 がほとんどでした これは 保 存 林 のサクラの 樹 齢 がまだ 若 いことや 水 はけの 良 い 斜 面 に 植 栽 されているた めと 考 えられます 写 真 1. 強 風 で 折 れた 腐 朽 枝 写 真 2. 太 枝 に 発 生 したカワラタケ 写 真 3.チャカイガラタケ 図 1. 多 摩 森 林 科 学 園 のサクラの 種 および 栽 培 品 種 別 の 平 均 腐 朽 度 39

索 引 (サクラの 名 前 ) 名 称 ページ 名 称 ページ 名 称 ページ 曙 29 浅 黄 20 東 彼 岸 15 熱 海 桜 24 天 の 川 21 雨 宿 22 飴 玉 桜 28 アメリカ 29 有 明 20 35 石 割 桜 16 伊 豆 桜 14 市 原 虎 の 尾 23 39 一 葉 20 38 39 糸 括 21 34 入 相 桜 17 鬱 金 20 34 薄 墨 桜 17 海 猫 29 永 源 寺 23 江 戸 21 34 35 江 戸 彼 岸 15 16 37 大 沢 桜 23 大 鹿 桜 19 大 島 桜 14 36 37 大 提 灯 20 35 大 手 毬 34 大 村 桜 19 大 山 桜 14 オカメ 29 御 杖 桜 17 御 室 有 明 23 35 開 成 山 の 桜 25 景 勝 桜 16 霞 桜 14 片 丘 桜 28 唐 実 桜 15 36 狩 衣 22 河 津 桜 19 寒 桜 24 31 34 関 山 21 33 寒 緋 桜 15 36 祇 園 枝 垂 17 北 浦 山 王 の 桜 16 北 島 神 社 の 大 桜 16 衣 笠 23 貴 船 23 貴 船 雲 珠 35 桐 ヶ 谷 20 御 衣 黄 21 34 近 畿 豆 桜 14 釧 路 八 重 29 久 保 桜 16 熊 谷 24 クルサル 38 車 止 34 啓 翁 桜 25 袈 裟 掛 けの 桜 16 気 多 白 菊 19 兼 六 園 菊 桜 18 兼 六 園 熊 谷 22 高 野 姥 21 九 重 桜 17 越 の 彼 岸 24 小 彼 岸 桜 24 駒 繋 16 25 34 金 剛 桜 18 作 並 山 桜 14 里 桜 18 更 紗 27 潮 風 桜 14 塩 釜 19 塩 釜 本 社 23 四 季 桜 24 34 静 香 27 枝 垂 大 臭 桜 18 枝 垂 桜 17 18 34 十 月 桜 24 37 数 珠 掛 桜 19 修 善 寺 桜 26 松 月 21 小 南 殿 23 上 匂 21 22 正 福 寺 24 昭 和 桜 26 白 雪 22 39 白 菊 桜 19 白 妙 22 駿 河 台 匂 21 清 秀 桜 16 西 洋 実 桜 15 仙 台 枝 垂 25 千 里 香 20 21 35 衣 通 姫 26 染 井 匂 26 染 井 紅 35 染 井 吉 野 25 31 33 37 醍 醐 桜 17 太 白 25 34 35 手 弱 女 23 高 砂 22 滝 匂 21 種 まき 桜 16 樽 見 の 大 桜 17 太 夫 桜 16 竹 林 寺 桜 25 秩 父 紅 枝 垂 17 丁 字 桜 15 38 長 州 緋 桜 22 月 訪 の 桜 16 筑 紫 桜 14 突 羽 根 19 椿 寒 桜 38 東 海 桜 25 虎 の 尾 23 南 殿 22 奈 良 八 重 桜 19 31 34 二 度 桜 18 梅 護 寺 数 珠 掛 桜 19 40 白 山 大 手 毬 21 旗 桜 28 花 石 桜 15 花 笠 27 馬 場 桜 16 はるか 29 春 雨 桜 17 緋 寒 桜 15 彼 岸 桜 16 雛 桜 38 弘 前 桜 20 福 禄 寿 22 普 賢 象 20 普 済 院 の 大 桜 18 房 桜 23 富 士 菊 桜 28 不 断 桜 18 船 原 吉 野 26 冬 桜 25 38 39 不 老 桜 17 紅 提 灯 21 紅 鶴 28 紅 彼 岸 15 紅 普 賢 21 紅 豊 27 法 輪 寺 20 帆 立 22 本 誓 寺 枝 垂 18 真 桜 35 松 前 更 紗 27 松 前 早 咲 27 豆 桜 14 36 39 御 帝 吉 野 26 御 車 返 20 38 三 島 桜 26 御 祓 21 緑 近 畿 豆 桜 28 峰 張 桜 16 深 山 桜 15 霧 社 桜 15 38 望 月 桜 15 盛 岡 枝 垂 18 八 重 曙 22 八 重 紅 枝 垂 25 33 八 重 紅 虎 の 尾 21 34 八 重 紅 彼 岸 24 八 重 紫 22 薬 師 桜 16 藪 桜 15 山 桜 14 39 山 桜 枝 垂 25 山 高 神 代 桜 16 湯 村 18 陽 光 29 吉 野 枝 垂 25 予 野 の 八 重 桜 19 瑠 璃 寺 の 桜 17

執 筆 者 等 紹 介 執 筆 および 写 真 (ページ 順 ) 吉 丸 博 志 ( 森 林 総 合 研 究 所 多 摩 森 林 科 学 園 長 ) 1-2 頁 勝 木 俊 雄 ( 森 林 総 合 研 究 所 多 摩 森 林 科 学 園 教 育 的 資 源 研 究 グループ 主 任 研 究 員 ) 3-4, 13-28 頁 岩 本 宏 二 郎 ( 森 林 総 合 研 究 所 多 摩 森 林 科 学 園 教 育 的 資 源 研 究 グループ 主 任 研 究 員 ) 5-12, 29-30 頁 加 藤 珠 理 ( 森 林 総 合 研 究 所 森 林 遺 伝 研 究 領 域 樹 木 遺 伝 研 究 室 特 別 研 究 員 ) 31-34 頁 松 本 麻 子 ( 森 林 総 合 研 究 所 森 林 遺 伝 研 究 領 域 樹 木 遺 伝 研 究 室 長 ) 31-34 頁 長 谷 川 絵 里 ( 森 林 総 合 研 究 所 関 西 支 所 生 物 被 害 研 究 グループ 主 任 研 究 員 ) 35-36 頁 秋 庭 満 輝 ( 森 林 総 合 研 究 所 森 林 微 生 物 研 究 領 域 森 林 病 理 研 究 室 主 任 研 究 員 ) 35 頁 佐 橋 憲 生 ( 森 林 総 合 研 究 所 森 林 微 生 物 研 究 領 域 長 ) 35 頁 高 畑 義 啓 ( 森 林 総 合 研 究 所 九 州 支 所 森 林 微 生 物 管 理 研 究 グループ 主 任 研 究 員 ) 35 頁 石 原 誠 ( 森 林 総 合 研 究 所 北 海 道 支 所 森 林 生 物 研 究 グループ 主 任 研 究 員 ) 37 頁 阿 部 恭 久 ( 日 本 大 学 生 物 資 源 科 学 部 教 授 ) 38 頁 写 真 協 力 寺 澤 秀 治 中 西 一 登 研 究 協 力 伊 東 宏 樹 吉 村 研 介 河 原 孝 行 太 田 祐 子 窪 野 高 徳 ( 森 林 総 合 研 究 所 ) 石 尾 将 吾 中 村 健 太 郎 ( 住 友 林 業 ) 向 井 譲 ( 岐 阜 大 学 ) 津 田 吉 晃 (ウプサラ 大 EBC) 森 脇 和 郎 ( 理 研 筑 波 研 究 所 遺 伝 学 普 及 会 ) 五 條 堀 孝 城 石 俊 彦 ( 国 立 遺 伝 学 研 究 所 ) 本 荘 暁 子 ( 新 宿 御 苑 ) 押 切 志 文 梅 澤 淳 (こどもの 国 協 会 ) 池 田 武 文 ( 京 都 府 立 大 学 ) 山 田 利 博 ( 東 京 大 学 ) 日 本 花 の 会 編 集 / 森 林 総 合 研 究 所 多 摩 森 林 科 学 園 表 紙 デザイン/ 寺 澤 秀 治 編 集 協 力 / 棗 悠 紀 ( 東 京 大 学 ) 古 市 優 子 ( 多 摩 森 林 科 学 園 ) 表 紙 裏 表 紙 写 真 / 関 山 ( 多 摩 森 林 科 学 園 ) 中 表 紙 写 真 / はるか ( 多 摩 森 林 科 学 園 ) この 冊 子 は 森 林 総 合 研 究 所 交 付 金 プロジェクト サクラの 系 統 保 全 と 活 用 に 関 する 研 究 ( 平 成 21 24 年 度 ) における 研 究 成 果 の 一 部 をとりまとめたものです ISBN 978-4-905304-19-7 森 林 総 合 研 究 所 第 3 期 中 期 計 画 成 果 5 育 種 生 物 機 能 2 41