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Ⅰ 平成14年度の状況

Microsoft Word - 国民年金の加入納付状況H25

Ⅰ 平成14年度の状況

平成26年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」について

技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

発 覚 理 由 違 反 態 様 在 日 期 間 違 反 期 間 婚 姻 期 間 夫 婦 間 の 子 刑 事 処 分 等 1 出 頭 申 告 不 法 残 留 約 13 年 9 月 約 9 年 11 月 約 1 年 10 月 2 出 頭 申 告 不 法 入 国 約 4 年 2 月 約 4 年 2 月 約

Microsoft Word - 概況(確定版).doc

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 ( 各 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 例 ) ( 例 ) 15 (H2) (H2) (H24) (H24) (H25.4.1) (H25.4.1) (H24) (H24)

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 福 岡 県 技 能 労 務 職 歳 1,19,98 9,9 歳 8,

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 135, , , , , ,600

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている 総 合 的

Taro-iryouhoken

3 職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 ( ベース) 43.7 歳 32, , ,321

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 25 年 4 月 1 日 現 在 ) 1) 一 般 行 政 職 福 島 県 国 類 似 団 体 平 均 年 齢 平

災害時の賃貸住宅居住者の居住の安定確保について

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 H H H5.4.1 ( 参 考 値 ) 97.1 H H H H5.4.1 H H5.4.1 ( 参 考

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

(3) 職 員 の 初 任 給 の 状 況 ( 平 成 5 年 月 日 現 在 ) 決 定 初 任 給 採 用 年 経 過 後 給 料 月 額 大 学 卒 7, 8, 一 般 行 政 職 短 大 卒 9,8 6, 高 校 卒, 8,5 () 職 員 の 経 験 年 数 別 学 歴 別 平 均 給 料

Taro-29職員退職手当支給規程

もの( 交 通 事 故 事 件 に 係 るものを 除 く ) 3 重 大 な 交 通 事 故 事 件 とは 次 に 掲 げる 交 通 事 故 事 件 をいう (1) 死 亡 ひき 逃 げ 事 件 車 両 等 の 交 通 により 人 が 死 亡 した 場 合 において 道 路 交 通 法 ( 昭 和

●幼児教育振興法案

3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 現 況 ( 平 成 22 1 号 給 の 給 料 月 額 137,9 188,9 226,7 266,4 294,3 最 高 号 給 の 給 料 月 額 247,9 314,9 362,8 399,9 415,1 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制

aaaH26年度 医療費の動向_プレスリリース

2 職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 (26 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 静 岡 県 国 類 似 団 体 2 技 能 労 務 職 区 41.8 歳 42.6 歳 43.5

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 135,6 243,7 185,8 222,9 261,9

別紙3

Microsoft Word - 【溶け込み】【修正】第2章~第4章

Taro-給与公表(H25).jtd

スライド 1

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- 1 - 総 控 負 傷 疾 病 療 養 産 産 女 性 責 帰 べ 由 試 ~ 8 契 約 契 約 完 了 ほ 契 約 超 締 結 専 門 的 知 識 技 術 験 専 門 的 知 識 高 大 臣 専 門 的 知 識 高 専 門 的 知 識 締 結 契 約 満 歳 締 結 契 約 契 約 係 始

Microsoft Word - 制度の概要_ED.docx

(Microsoft Word - \213\213\227^\201E\222\350\210\365\212\307\227\235\214\366\225\\\201iH \)\201iHP\227p\201j.doc)

スライド 1

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該 介 護 休 業 が 終 了 する 日 までに, 当 該 介 護 休 業 に 係 る 対 象 家 族 が 死 亡 したとき 又 は 離 婚, 婚 姻 の 取 消, 離 縁 等 により 当 該 介 護 休 業 に 係 る 対 象 家 族 との 親 族 関 係 が 消 滅 した とき (3) 配 偶

職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 () 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 ( 年 4 月 日 現 在 ) 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 ( ベース) 44. 歳 6,4, 歳,44 4,7 7,6 4. 歳 7,

m07 北見工業大学 様式①

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 135, , ,900 2

○00表紙

(3) 育 児 休 業 (この 号 の 規 定 に 該 当 したことにより 当 該 育 児 休 業 に 係 る 子 について 既 にし たものを 除 く )の 終 了 後 3 月 以 上 の 期 間 を 経 過 した 場 合 ( 当 該 育 児 休 業 をした 教 職 員 が 当 該 育 児 休 業

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2 特 別 給 人 事 委 員 会 の 勧 告 区 分 民 間 の 支 給 割 公 務 員 の 支 給 格 差 勧 告 年 間 支 給 数 合 A 数 B A-B ( 改 定 数 ) 年 度 ( 注 ) 民 間 の 支 給 割 合 は 民 間 事 業 所 で 支 払 われた 賞 与 等 の 特 別

らの 内 容 について 規 定 することとしております 今 回 お 示 しする 整 理 は 現 時 点 の 案 ですので あらかじめご 承 知 おき 下 さい 同 令 等 の 改 正 規 定 が 確 定 し 次 第 改 めてご 連 絡 をさせていただきます 記 1 軽 減 措 置 の 具 体 的 な

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 161,7 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 135,600 円 185,800 円 222,900 円 261,900 円

(2) 職 員 の 初 任 給 の 状 況 ( 平 成 17 年 4 月 1 日 現 在 ) 初 任 給 2 年 後 の 給 料 初 任 給 2 年 後 の 給 料 一 般 行 政 職 技 能 労 務 職 大 学 卒 171,1 151,5 19,2 164,7 17,7 184,4 中 学 卒 1

有 料 老 ホーム ( ) ( 主 として 要 介 護 状 態 にある を 入 居 させるも のに 限 る ) 第 29 条 ( 届 出 等 ) 第 二 十 九 条 有 料 老 ホーム( 老 を 入 居 させ 入 浴 排 せつ 若 しくは 食 事 の 介 護 食 事 の 提 供 又 はその 他 の

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根 本 確 根 本 確 民 主 率 運 民 主 率 運 確 施 保 障 確 施 保 障 自 治 本 旨 現 資 自 治 本 旨 現 資 挙 管 挙 管 代 表 監 査 教 育 代 表 監 査 教 育 警 視 総 監 道 府 県 警 察 本 部 市 町 村 警 視 総 監 道 府 県 警 察 本 部

(2) 特 別 障 害 給 付 金 国 民 年 金 に 任 意 加 入 していなかったことにより 障 害 基 礎 年 金 等 を 受 給 していない 障 がい 者 の 方 に 対 し 福 祉 的 措 置 として 給 付 金 の 支 給 を 行 う 制 度 です 支 給 対 象 者 平 成 3 年 3

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 ( 各 年 4 月 1 日 現 在 ) (H25.4.1) (H25.4.1) (H25.7.1) (H25.7.1) (H25.4.1) (H25.7.1)

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 ( 単 位 : 円 ) 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 413,

設 問 一 覧 全 員 にお 聞 きします 103 万 円 の 壁 130 万 円 の 壁 について 知 っていますか?...(SA) あなたの 年 収 を 教 えてください...(SA) 年 収 が 103 万 円 以 下 103 万 円 超 130 万 円 以 下 と 答 えた 人 あなたは 年

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 2 年 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制 措 置 を 行 う 前 のものです ( 単 位 : ) 3 職 員 の 平 均 給 与 月

東久留米市訓令乙第   号

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[ 組 合 員 期 間 等 の 特 例 ] 組 合 員 期 間 等 については 年 齢 職 種 などにより 過 去 の 制 度 からの 経 過 措 置 が 設 けられ ており 被 用 者 年 制 度 の 加 入 期 間 ( 各 共 済 組 合 の 組 合 員 期 間 など)については 生 年 月 日

別 表 1 土 地 建 物 提 案 型 の 供 給 計 画 に 関 する 評 価 項 目 と 評 価 点 数 表 項 目 区 分 評 価 内 容 と 点 数 一 般 評 価 項 目 立 地 条 件 (1) 交 通 利 便 性 ( 徒 歩 =80m/1 分 ) 25 (2) 生 活 利 便

23年度版 総社市様式外.xls

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国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提


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一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (4 年 4 月 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 級 級 級 4 級 5 級 号 給 の 給 料 月 額 5, 85,,9,9 89, 最 高 号 給 の 給 料 月 額 4,7 7,8 54,7 88, 4, ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与

Microsoft Word - 通達(参考).doc

3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額

波佐見町の給与・定員管理等について

一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 3 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 級 3 級 4 級 5 級 6 級 単 位 : ( ) 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 137, 163,7 4,9 31,4 71, 33,3 359,7 最 高 号 給 の 給 料 月 額

賦課の根拠となった法律及び条例(その2)

(\202g22\214\366\225\\.xls)

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (26 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 区 分 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与

    平成11年度余市町私立幼稚園就園奨励費補助金交付要綱

●H25様式(つくば市版).xls

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 (H20.4.1) 96.7 (H25.4.1) (H25.7.1) (H25.4.1), (H25.4.1) 参 考 値 98.3 (H25.7.1) (H20.4.1) (H25.4

中根・金田台地区 平成23年度補償説明業務

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 25 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 給 与 月 額 平 均 年 齢 平 均 給 料

別紙3

○00表紙

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日 雇 い 等 の 収 入 の 場 合 前 々 年 1 月 1 日 以 前 から 引 きつづき 前 々 年 分 所 得 額 証 勤 務 先 が 不 特 定 の 日 雇 いをしている 方 前 年 分 確 定 申 告 書 ( 控 ) 前 々 年 1 月 1 日 以 前 から 引 きつづき 前 々 年 分

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

(5) 給 与 改 定 の 状 況 該 当 なし ( 事 委 員 会 を 設 置 していないため) 1 月 例 給 事 委 員 会 の 勧 告 ( 参 考 ) 民 間 給 与 公 務 員 給 与 較 差 勧 告 給 与 改 定 率 国 の 改 定 率 A B AB ( 改 定 率 ) 年 度 ( )

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 最 高 号 給 の 給 料 月 額 243,7 37,8 35

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無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 第 3 章 無 差 別 殺 傷 事 犯 の 実 態 本 章 では, 調 査 対 象 事 件 である 無 差 別 殺 傷 事 件 について, 判 決 書 刑 事 事 件 記 録 及 び 刑 事 施 設 記 録 等 に 基 づいて 調 査 を 行 った なお, 調 査 対 象 者 が 複 数 の 無 差 別 殺 傷 事 件 を 行 っ た 場 合 は, 特 に 断 らない 限 り, 主 たる 無 差 別 殺 傷 事 件 ( 被 害 者 数 が 多 いもの, 殺 人 既 遂 と なったもの, 最 も 初 期 に 行 ったものの 順 による )を 対 象 に 分 析 している 第 1 節 では, 調 査 対 象 となった 無 差 別 殺 傷 事 件 を 行 った 者 について,その 年 齢, 家 族, 就 労, 前 科 関 係 等 の 実 態 を 明 らかにし, 特 徴 を 探 った 第 節 では, 調 査 対 象 となった 無 差 別 殺 傷 事 件 について,その 時 間 的, 場 所 的, 方 法 的 特 性 等 の 実 態 を 明 らかにするとともに, 犯 行 の 動 機, 態 様, 前 科 による 類 型 区 分 を 行 った 第 3 節 では, 調 査 対 象 者 の 内 的 特 性, 心 身 の 状 況 等 を 明 らかにし, 調 査 対 象 者 が 無 差 別 殺 傷 事 件 に 至 った 背 景 要 因, 犯 行 経 緯 等 を 分 析 した 第 1 節 調 査 対 象 者 の 基 本 属 性 1 年 齢 性 別 調 査 対 象 者 は5 人 であり, 犯 行 時 の 年 齢 層, 男 女 別 の 人 員 を 見 ると,3-1-1 表 のと おりである 性 別 を 見 ると, 一 般 殺 人 ( 平 成 3 年 の 女 子 比 は4.5%であり, 最 近 0 年 間 で16.%から 4.5%で 推 移 している -1- 図 参 照 )における 男 女 比 と 相 当 程 度 に 異 なっており, 一 人 を 除 いて 全 員 が 男 性 である また, 年 齢 層 別 に 見 ると, 一 般 殺 人 (-1-5 図 参 照 )に 比 べて, 調 査 対 象 者 では, 年 齢 層 が 低 い 者 の 割 合 が 高 い 傾 向 がうかがわれる 調 査 対 象 者 では,39 歳 以 下 が 大 多 数 で あり, 特 に0 歳 から39 歳 が 多 く, 少 年 も 一 般 殺 人 に 比 べて 高 い 構 成 比 となっている 他 方, 40 歳 以 上 については,いずれの 年 齢 層 においても 一 般 殺 人 よりも 構 成 比 が 低 い 値 となって いる 上,65 歳 以 上 の 高 齢 者 はおらず,これも 一 般 殺 人 とはかなり 異 なっている 3-1-1 表 男 女 別 年 齢 層 年 齢 層 男 性 女 性 総 数 16~19 歳 7 (13.7) - 7 (13.5) 0~9 歳 14 (7.5) - 14 (6.9) 30~39 歳 16 (31.4) 1 (100.0) 17 (3.7) 40~49 歳 7 (13.7) - 7 (13.5) 50~59 歳 5 (9.8) - 5 (9.6) 60~64 歳 (3.9) - (3.8) 総 数 51 (100.0) 1 (100.0) 5 (100.0) 注 1 犯 行 時 の 年 齢 による ( ) 内 は, 男 女 別 総 数 の 年 齢 層 別 構 成 比 である 39

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 居 住 家 族 調 査 対 象 者 の 居 住 地 ( 住 居 不 定 の 者 は 犯 行 時 に 生 活 の 拠 点 としていた 土 地 で 計 上 してい る )を 都 道 府 県 別, 市 町 村 の 人 口 規 模 別 に 見 ると,3-1- 表 のとおりである 都 道 府 県 別 では, 大 阪 府 に 居 住 していた 者 が 最 も 多 く, 次 いで 東 京 都 であり,さらに, 北 海 道, 神 奈 川 県, 兵 庫 県 となっている 関 西 圏, 首 都 圏 に 居 住 している 者 が 比 較 的 多 い と 言 える 居 住 していた 市 町 村 の 人 口 規 模 別 に 見 ると, 人 口 10 万 人 以 上 の 市 に 居 住 していた 者 が4 人, 特 別 区 政 令 指 定 都 市 に 居 住 していた 者 は19 人 で, 人 口 10 万 人 未 満 の 市 町 村 に 居 住 し ていた 者 は9 人 であった この3 区 分 における 人 口 の 比 は, 平 成 年 国 勢 調 査 によれば, 特 別 区 政 令 指 定 都 市 : 人 口 10 万 人 以 上 の 市 : 人 口 10 万 人 未 満 の 市 町 村 が 約 3:4:3で ある( 調 査 対 象 者 に 高 齢 者 がいないことから15 歳 から64 歳 までの 者 に 限 ってこれらの 比 を 見 ても,おおむね 同 様 の 比 となる ) これを 踏 まえると, 人 口 規 模 が 大 きい 市 特 別 区 に 居 住 していた 者 の 比 率 が 高 い 傾 向 がうかがわれる 40

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 3-1- 表 人 口 規 模 別 居 住 地 都 道 府 県 特 別 区 人 口 10 万 人 人 口 10 万 人 政 令 指 定 都 市 以 上 の 市 未 満 の 市 町 村 総 数 北 海 道 1 1 4 青 森 県 - - - 岩 手 県 - - - 宮 城 県 - - 1 1 秋 田 県 - - - 山 形 県 - 1 1 福 島 県 - 1 1 茨 城 県 1-1 栃 木 県 - - - 群 馬 県 1-1 埼 玉 県 - 1-1 千 葉 県 1 - - 1 東 京 都 5 3-8 神 奈 川 県 - 1 3 新 潟 県 - 1-1 富 山 県 1-1 石 川 県 1-1 福 井 県 - - - 山 梨 県 - 1 1 長 野 県 - - - 岐 阜 県 - - - 静 岡 県 - - - - 愛 知 県 1 1 - 三 重 県 - - - 滋 賀 県 - - - 京 都 府 - 1-1 大 阪 府 9 6-15 兵 庫 県 - 3-3 奈 良 県 - - - 和 歌 山 県 - 1 1 鳥 取 県 - - - 島 根 県 - - - 岡 山 県 - - - - 広 島 県 - - - - 山 口 県 1-1 徳 島 県 1-1 香 川 県 - - - 愛 媛 県 - - - 高 知 県 1 1 福 岡 県 - - - - 佐 賀 県 - - - 長 崎 県 - - - 熊 本 県 - - - - 大 分 県 - - - 宮 崎 県 - - - 鹿 児 島 県 - - - 沖 縄 県 - - - 総 数 19 4 9 5 ( 構 成 比 ) (36.5) (46.) (17.3) (100.0) 注 1 特 別 区 政 令 指 定 都 市 及 び 人 口 規 模 は 平 成 4 年 4 月 1 日 現 在 のものである ただし, 北 海 道, 石 川 県 及 び 群 馬 県 については 平 成 4 年 3 月 31 日 現 在 のものによる 犯 行 時 の 状 況 による 3 住 居 不 定 の 者 は, 生 活 の 拠 点 としていた 土 地 に 計 上 している 41

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 3-1-3 表 は, 調 査 対 象 者 の 同 居 人 別 の 居 住 状 況 を 見 たものである 居 住 場 所 別 に 見 ると, 自 宅 が 最 も 多 く,その 次 が 借 家 であるが, 住 居 不 定 又 は 施 設 ( 更 生 保 護 施 設 社 会 福 祉 施 設 をいう )であった 者 が6.9%(14 人 )と 高 い 割 合 に 及 んでいる 同 居 人 別 に 見 ると, 単 身 である 者 が 半 数 である そのほか, 親 と 同 居 している 者 も 多 い が, 配 偶 者, 子 らと 同 居 している 者 は 非 常 に 少 ない 自 立 して 他 の 者 と 家 族 を 構 成 して 生 活 している 者 が 少 ないと 言 える 3-1-3 表 居 住 状 況 ( 同 居 人 別 ) 区 分 単 身 親 配 偶 者 子 その 他 親 族 その 他 総 数 ( 構 成 比 ) 自 宅 16 1 1 7-1 (40.4) 借 家 1 4 - - 1-17 (3.7) 施 設 - - - - 4 (7.7) 住 居 不 定 10 - - - - - 10 (19.) 総 数 6 0 1 1 8 5 (100.0) ( 全 体 に 占 める 比 率 ) (50.0) (38.5) (1.9) (1.9) (15.4) (3.8) (100.0) 注 1 犯 行 直 近 の 居 住 状 況 による 借 家 は, 寮 を 含 む 3 施 設 は, 更 生 保 護 施 設 又 は 社 会 福 祉 施 設 である 4 その 他 は, 施 設 における 共 同 部 屋 の 同 居 人 である 5 同 居 人 が 複 数 いる 場 合 は,それぞれの 項 目 に 計 上 している そのため, 自 宅 における 総 数 と 内 訳 の 合 計 は 一 致 しない 3-1-4 図 は, 調 査 対 象 者 の 婚 姻 状 況 及 び 婚 姻 歴 を 見 たものである 婚 姻 歴 がない 者 が8.7%(43 人 )と 非 常 に 多 い さらに, 婚 姻 歴 がある 者 においても, 離 婚 又 は 別 居 して いる 者 がほとんどであり, 円 満 な 結 婚 生 活 を 送 っている 者 は 少 ないと 言 える なお, 女 性 の 調 査 対 象 者 も 婚 姻 歴 はない 3-1-4 図 婚 姻 状 況 総 数 (5) 婚 姻 歴 回 以 上 婚 姻 歴 なし 婚 姻 歴 1 回 43 7 (8.7%) (13.5%) (3.8%) ( 参 考 ) 配 偶 者 との 関 係 ( 犯 行 時 ) 離 婚 別 居 同 居 5 1 1 離 婚 4

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 3 交 友 交 際 調 査 対 象 者 について, 異 性 との 交 際 の 状 況 交 際 歴 を 見 ると,3-1-5 図 のとおりで ある 異 性 との 交 際 経 験 について 不 詳 である 者 を 除 いた46 人 中, 同 経 験 が 全 くない 者 が18 人 で あり, 約 4 割 に 及 んでいる 交 際 経 験 がある 者, 同 居 経 験 がある 者 は,それぞれ8 人,17 人 であるが, 犯 行 時 の 婚 姻 交 際 状 況 を 見 ると, 同 居 の 婚 姻 者 がいた 者 が1 人, 異 性 の 交 際 相 手 がいた 者 が1 人 だけであり,ほとんどは 異 性 との 婚 姻 交 際 関 係 が 消 滅 している 犯 行 時 において, 異 性 との 交 際 関 係 について 充 足 感 を 持 つような 状 況 にはなかった 者 が 多 いと 考 えられる 3-1-5 図 異 性 との 交 際 状 況 1 犯 行 時 の 交 際 相 手 の 有 無 総 数 (51) なし あり 45 1 5 (88.%) 不 詳 (9.8%) (.0%) 異 性 との 交 際 経 験 の 有 無 総 数 (5) あり なし 不 詳 8 18 6 (53.8%) (34.6%) (11.5%) < 参 考 > 異 性 との 同 居 経 験 の 有 無 総 数 (8) あり なし 不 詳 17 10 1 (60.7%) (35.7%)(3.6%) 注 1は, 婚 姻 歴 があり,かつ, 犯 行 時 の 配 偶 者 との 関 係 が 同 居 であった 者 (1 人 )を 除 く 調 査 対 象 者 について, 学 校, 職 場 等 の 友 人 との 交 友 関 係 を 見 ると,3-1-6 表 のとお りである 犯 行 時 において, 親 密 な 友 人 がいた 者 は3 人 のみであり, 普 通 の 関 係 の 友 人 がいた 者 を 含 めても10 人 にとどまる 反 対 に, 友 人 がいない 者 が8 人 と 過 半 数 であって, 社 会 とのつ ながりが 弱 い 者 が 多 いと 考 えられる また, 学 校, 職 場 等 の 在 籍 時 においても, 友 人 がいなかった 者 が19 人, 険 悪 又 は 希 薄 で 43

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 あった 者 が8 人 であり, 適 切 な 交 友 関 係 を 構 築 する 力 が 不 十 分 な 者 が 多 いことがうかがわ れる なお, 就 労 経 験 がない 者 及 び 学 校 在 籍 時 又 は 職 場 在 籍 時 の 交 友 関 係 が 不 詳 の 者 を 除 いた 33 人 について, 学 生 時 から 就 職 後 にかけて 交 友 関 係 の 有 無 内 容 の 変 化 を 見 ると, 普 通 以 上 ( 普 通 及 び 親 密 をいう )で 推 移 した 者 は 人 のみであり, 不 良 ( なし, 希 薄 及 び 険 悪 をいう )で 推 移 した 者 は4 人, 普 通 以 上 から 不 良 になった 者 は7 人 であった 交 友 関 係 の 構 築 力 がもともと 不 十 分 な 者 のほか, 就 職 後 における 職 場 社 会 への 適 応 が 十 分 にできず, 新 たな 交 友 関 係 を 構 築 することができなかった 者 がいるのではないかと 思 わ れる 3-1-6 表 交 友 関 係 区 分 なし 希 薄 普 通 親 密 険 悪 不 詳 総 数 在 籍 時 19 4 10 4 4 11 5 犯 行 時 8 5 7 3-9 5 (19) () (5) (3) (0) (8) (37) 注 1 学 生 時 又 は 職 場 で 知 り 合 った 友 人 等 との 交 友 関 係 について 調 査 した 交 友 関 係 が 全 く 不 詳 の 者 は, 不 詳 に 計 上 している 3 交 友 関 係 のある 友 人 等 が 認 められなかった 者 は, なし に 計 上 している 4 1 人 でも 親 密 な 関 係 にある 友 人 等 が 認 められた 者 は, 親 密 に 計 上 している 5 1 人 でも 普 通 の 関 係 にある 友 人 等 が 認 められた 者 は, 普 通 に 計 上 している 6 交 友 関 係 のある 友 人 等 は 認 められたものの 希 薄 な 関 係 にとどまると 認 められた 者 は, 希 薄 に 計 上 しており, 険 悪 な 関 係 しか 認 められなかった 者 は, 険 悪 に 計 上 している ただし, 学 生 時 又 は 職 場 のいずれかにおける 関 係 が 不 詳 と 認 められた 者 は, 不 詳 に 計 上 している 7 ( ) 内 は, 在 籍 時 と 犯 行 時 で 関 係 が 変 わらない 者 の 実 人 員 である 4 就 労 就 学 調 査 対 象 者 について, 就 労 状 況 を 見 ると,3-1-7 図 のとおりである 就 労 経 験 のある 者 は47 人 と 多 いが(なお, 就 労 経 験 のない 者 5 人 のうち, 犯 行 時 に 学 生 であった 者 は3 人 であり, 学 校 を 卒 業 退 学 後 に 全 く 就 労 していない 者 は 人 である ), 犯 行 前 1 年 間 では5 人 となり,さらに, 犯 行 時 に 就 労 していた 者 は10 人 にとどまっている 一 般 殺 人 における 犯 行 時 の 有 職 者 率 は33.6%~4.%であり(-1-10 図 参 照 ),それ と 比 べると 低 い 値 にとどまっている さらに,その 就 労 形 態 を 見 ると, 犯 行 前 1 年 間 にお いても, 犯 行 時 においても 非 正 規 雇 用 (アルバイト,パート 等 をいう )が 多 く, 犯 行 時 に 正 規 雇 用 され, 安 定 した 職 を 有 していた 者 は4 人 のみと 少 ない 44

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 3-1-7 図 就 労 状 況 1 就 労 経 験 の 有 無 0% 0% 40% 60% 80% 100% 総 数 (5) 犯 行 前 1 年 間 の 就 労 状 況 総 数 (47) あり なし 47 5 (90.4%) (9.6%) 有 職 無 職 5 (53.%) (46.8%) 3 犯 行 前 1 年 間 の 有 職 者 の 雇 用 形 態 総 数 (5) 正 規 非 正 規 不 詳 10 13 (40.0%) (5.0%)(8.0%) 4 犯 行 時 の 就 労 状 況 総 数 (5) 有 職 無 職 10 15 (40.0%) (60.0%) 5 犯 行 時 の 有 職 者 の 雇 用 形 態 正 規 非 正 規 総 数 (10) 4 6 (40.0%)(60.0%) 注 正 規 は, 自 営 業 を 含 む 調 査 対 象 者 について, 犯 行 時 における 収 入, 借 入 等 の 生 計 の 状 況 を 見 ると,3-1-8 表 のとおりである 調 査 対 象 者 本 人 の 犯 行 時 の 一 月 の 収 入 ( 労 働 による 賃 金 のほか, 生 活 保 護 等 の 社 会 保 障 給 付 を 含 む )については,0 万 円 以 上 の 者 は3 人 のみであり,10 万 円 以 下 の 者 が9 人, 収 入 が 全 くない 者 が31 人 である 収 入 面 で 不 十 分 な 状 況 にあった 者 が 多 い 反 対 に, 借 入 を 見 ると, 借 入 なしの 者 が37 人 と 多 数 であって, 多 額 の 借 入 をしていた 者 は 少 ない 収 入 の 面 からも 借 入 の 面 からも 経 済 活 動 は 不 活 発 であると 言 える 45

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 また, 金 銭 的 援 助 ( 社 会 保 障 給 付 を 含 む )を 見 ると, 被 扶 養 者, 親 等 からの 援 助, 生 活 保 護 等 の 援 助 を 受 けていた 者 が, 不 詳 の 者 1 人 を 除 いた51 人 中 4 人 であって, 相 当 の 割 合 を 占 めている 停 滞 した 社 会 経 済 活 動 の 状 況 下 で, 援 助 を 受 けて 生 計 を 立 てている 者 が 多 いことがうか がわれる 3-1-8 表 生 計 状 況 1 3 月 収 総 数 なし 10 万 円 以 下 0 万 円 以 下 0 万 円 を 超 える 不 詳 5 31 9 8 3 1 (6) (6) 借 入 金 総 数 なし 100 万 円 以 下 500 万 円 以 下 500 万 円 を 超 える 不 詳 5 37 5 5 3 (6) (6) 金 銭 的 援 助 総 数 なし 被 扶 養 者 親 親 族 等 からの 援 助 生 活 保 護 等 不 詳 5 7 6 9 9 1 注 1 1は, 生 活 保 護 等 の 公 的 支 援 金 を 含 む は, 住 宅 購 入 ローンの 未 払 い 金 を 含 む 3 3における 親 親 族 等 は, 交 際 相 手 を 含 む 4 3における 生 活 保 護 等 は, 障 害 年 金 を 含 む 公 的 支 援 金 である 5 ( ) 内 は, 被 扶 養 者 で, 内 数 である 6 被 扶 養 者 は, 犯 行 時 において, 未 成 年 かつ 未 就 労 であった 者 である 調 査 対 象 者 について, 教 育 程 度 別 の 人 員 を 見 ると,3-1-9 図 のとおりである 中 学 校 卒 業, 高 校 中 退 の 者 が 併 せて33 人 であり, 過 半 数 を 占 めている 大 学 卒 業 の 者 は 人 であって, 少 ない 3-1-9 図 教 育 程 度 総 数 (5) 0 13 10 5 (38.5%) (5.0%) (19.%) (9.6%) (3.8%) (3.8%) 中 学 校 卒 業 高 校 中 退 高 校 卒 業 大 学 中 退 大 学 卒 業 その 他 注 1 高 等 学 校 は, 専 門 学 校 を 含 む その 他 は, 義 務 教 育 未 修 了 及 び 高 等 学 校 在 学 である 46

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 5 前 科 非 行 歴 3-1-10 図 は, 調 査 対 象 者 の 前 科 の 状 況 を 見 たものである 前 科 のある 者 が4 人 (46.%)であり, 前 科 のない 者 が8 人 である( 以 下, 前 科 のある 者 らを 有 前 科 者 群, 前 科 のない 者 らを 前 科 なし 群 と 呼 んで, 分 析 を 進 めることがあ る ) 有 前 科 者 群 では, 懲 役 前 科 がある 者 がほとんどであり,さらに,そのほとんどは 実 刑 の 懲 役 前 科 がある 有 前 科 者 群 4 人 のうち, 複 数 回 の 実 刑 懲 役 前 科 がある 者 は14 人 と 過 半 数 を 占 めており, 犯 罪 を 繰 り 返 す 中 で, 無 差 別 殺 傷 事 犯 に 至 った 群 の 存 在 を 見 ることができ る 3-1-10 図 前 科 の 回 数 1 前 科 の 回 数 0% 0% 40% 60% 80% 100% 総 数 (5) 5 回 以 上 ~4 回 1 回 なし 8 9 7 8 (15.4%) (17.3%) (13.5%) (53.8%) 前 科 の 回 数 のうち, 懲 役 刑 の 回 数 5 回 以 上 ~4 回 1 回 なし 総 数 (4) 6 9 6 3 (5.0%) (37.5%) (5.0%) (1.5%) 3 懲 役 刑 の 回 数 のうち, 実 刑 の 回 数 5 回 以 上 ~4 回 1 回 なし 総 数 (1) 6 8 4 3 (8.6%) (38.1%)(19.0%)(14.3%) 注 懲 役 刑 は, 執 行 猶 予 を 含 む 47

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 ( 参 考 ) 殺 人 前 科 の 回 数 ( 平 成 年 版 犯 罪 白 書 特 別 調 査 ) 1 前 科 の 回 数 0% 0% 40% 60% 80% 100% 総 数 (38) 5 回 以 上 ~4 回 1 回 なし 14.7 0.6 11.3 53.4 前 科 の 回 数 のうち, 懲 役 刑 の 回 数 ~4 回 5 回 以 上 1 回 なし 総 数 (111) 1.6 34. 8.8 4.3 3 懲 役 刑 の 回 数 のうち, 実 刑 の 回 数 ~4 回 5 回 以 上 1 回 なし 総 数 (84) 33.3 1.4 33.3 11.9 注 1 法 務 総 合 研 究 所 の 調 査 による 懲 役 刑 は, 執 行 猶 予 を 含 む 3-1-11 図 は, 調 査 対 象 者 の 前 科 の 内 容 を 見 たものである 前 科 となる 犯 罪 としては, 粗 暴 犯 が 最 も 多 く, 有 前 科 者 群 のうち3 分 のに 粗 暴 犯 の 前 科 がある 粗 暴 な 性 向 が 強 い 者 が 多 いことを 示 唆 している そのほか, 財 産 犯 罪, 薬 物 犯 罪, 放 火, 性 犯 罪 の 前 科 は, 有 前 科 者 群 中,それぞれ45.8%, 33.3%,5.0%,16.7%の 者 に 見 られる 平 成 3 年 の 通 常 第 一 審 における 有 期 刑 言 渡 人 員 のうち, 窃 盗 は9.5%( 窃 盗, 強 盗, 詐 欺, 恐 喝 及 び 横 領 の 合 計 で39.8%), 薬 物 犯 罪 は19.0%, 放 火 は0.4%, 強 姦 強 制 わいせつは.1%であり( 平 成 4 年 版 犯 罪 白 書 -3--1 表, -3--3 表 及 び 資 料 -4 参 照 ),これらの 有 期 刑 の 言 渡 しを 受 けた 者 と 異 なった 前 科 の 特 徴 を 有 している 次 に, 一 般 殺 人 と 比 べるため, 平 成 年 調 査 におけるデータと 比 較 する 同 調 査 によれ ば, 殺 人 事 犯 者 において 前 科 がある 者 の 比 率 は46.6%であるが, 親 族 以 外 に 対 する 殺 人 に 限 ると55.7%であった また, 粗 暴 犯 前 科 ( 同 調 査 における 粗 暴 犯 の 範 囲 と, 本 研 究 にお ける 範 囲 はやや 異 なり, 本 研 究 の 範 囲 の 方 がやや 広 い )がある 者 は, 前 科 がある 者 の 中 で 58.6%であるが, 親 族 以 外 に 対 する 殺 人 に 限 ると,61.3%であった 無 差 別 殺 傷 事 犯 の 調 査 対 象 者 の 前 科 の 有 無, 粗 暴 犯 前 科 の 有 無 については, 親 族 に 対 する 殺 人 と 大 きな 差 は 見 48

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 いだしにくい また, 同 調 査 における 殺 人 事 犯 者 において, 財 産 犯 ( 窃 盗, 詐 欺, 恐 喝, 横 領 及 び 盗 品 等 に 関 する 罪 をいう )の 前 科 がある 者 の 比 率 は4.3%, 薬 物 犯 罪 の 前 科 があ る 者 の 比 率 は6.1%, 放 火 の 前 科 がある 者 は1.8%である 財 産 犯 罪, 薬 物 犯 罪 の 前 科 を 有 する 者 の 比 率 は, 本 調 査 対 象 の 無 差 別 殺 傷 事 犯 者 と 一 般 的 な 殺 人 事 犯 者 とで 大 きく 異 なる 傾 向 は 見 いだしにくいが, 今 回 の 無 差 別 殺 傷 事 犯 者 では 放 火 の 前 科 を 有 する 者 の 比 率 が 高 いことが 一 般 的 な 殺 人 事 犯 者 と 異 なる 特 徴 としてうかがわれる 3-1-11 図 前 科 の 内 容 総 数 (5) 前 科 あり 前 科 なし 4 8 (46.%) (53.8%) ( 人 ) 0 15 10 16 5 11 8 6 4 9 0 粗 暴 財 産 薬 物 放 火 性 その 他 注 1 粗 暴 は, 殺 人, 強 盗, 傷 害, 暴 行, 恐 喝, 公 務 執 行 妨 害, 器 物 損 壊, 暴 力 行 為 等 処 罰 法 違 反 又 は 銃 刀 法 違 反 の 前 科 を 有 する 者 を 計 上 している 財 産 は, 強 盗, 窃 盗, 詐 欺, 恐 喝, 遺 失 物 等 横 領 又 は 住 居 侵 入 ( 窃 取 目 的 に 限 る )の 前 科 を 有 する 者 を 計 上 している 3 薬 物 は, 覚 せい 剤 取 締 法 違 反 又 は 毒 劇 法 違 反 の 前 科 を 有 する 者 を 計 上 している 4 放 火 は, 現 住 建 造 物 等 放 火, 非 現 住 建 造 物 等 放 火, 放 火 予 備 又 は 住 居 侵 入 ( 放 火 目 的 に 限 る )の 前 科 を 有 する 者 を 計 上 している 5 性 は, 強 姦, 強 制 わいせつ 又 はわいせつ 文 書 等 所 持 の 前 科 を 有 する 者 を 計 上 している 6 その 他 は, 略 取 誘 拐, 業 務 上 過 失 傷 害, 道 路 交 通 法 違 反 又 は 軽 犯 罪 法 違 反 の 前 科 を 有 する 者 を 計 上 して いる 7 複 数 の 前 科 を 有 する 場 合 は,それぞれの 区 分 に 計 上 している 49

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 3-1-1 図 は, 調 査 対 象 者 の 非 行 歴 犯 罪 歴 を 見 たものである 非 行 歴 犯 罪 歴 がある 者 が34 人 (65.4%)であって, 一 般 殺 人 の 検 挙 者 における 再 犯 者 率 (-1-10 図 参 照 )よりも 高 い 値 となっているが, 他 方 で, 非 行 歴 犯 罪 歴 が 全 くな い 者 が18 人 いる このような 非 行 歴 犯 罪 歴 のないタイプ ( 注 7) の 無 差 別 殺 傷 事 犯 者 が 約 34.6%と,ある 程 度 の 割 合 で 存 在 していることを 示 している 非 行 歴 犯 罪 歴 がある34 人 について,その 初 発 時 の 年 齢 を 見 ると, 少 年 時 1 人 と 多 数 を 占 めており, 中 でも14 歳 未 満 が7 人 であって, 低 年 齢 時 に 非 行 を 開 始 した 者 が 一 定 程 度 い ると 言 える また, 少 年 時 の 非 行 歴 がある 者 について, 保 護 処 分 歴 を 見 ると, 少 年 院 送 致 歴 がある 者 が8 人 と 最 も 多 い 少 年 時 に 非 行 に 関 する 問 題 性 が 大 きかった 者 が 相 当 程 度 に 及 ぶと 考 えられる 30 歳 以 上 が 初 発 の 者 は 人 であり, 少 ない なお, 少 年 時 に 初 発 の 非 行 があった 者 では,その 非 行 名 は 財 産 犯 ( 窃 盗, 横 領 等 )が 多 い そのほか 放 火 が 非 行 名 である 者 が 人 いる 他 方, 成 人 で 初 発 の 犯 罪 歴 がある 者 では, 罪 名 が 粗 暴 犯 である 者 が 多 い 注 7 最 近 の 少 年 による 特 異 凶 悪 事 件 の 前 兆 等 に 関 する 緊 急 調 査 報 告 書 ( 平 成 1 年 1 月 1 日 警 察 庁 生 活 安 全 局 少 年 課 科 学 警 察 研 究 所 防 犯 少 年 部 )は,このように, 本 件 犯 行 以 前 に 検 挙 補 導 されたことのな い 者 を いきなり 型 と 名 付 けている 同 報 告 書 によれば,このようないきなり 型 と, 非 行 がエスカレート して 本 件 犯 行 に 至 る 非 行 エスカレート 型 では 動 機 や 前 兆 的 行 動 等 について 異 なる 傾 向 が 見 られ, 例 えば, 動 機 については, 非 行 エスカレート 型 では 動 機 は 概 して 明 確 であるが,いきなり 型 では, 動 機 が 多 岐 にわたり, 外 界 との 直 接 的 な 関 連 が 希 薄 で 内 的 な 欲 求 や 藤 を 解 消 することを 目 的 とした,より 自 己 中 心 的 な 論 理 に 基 づいたものが 見 られ, 半 数 の 事 件 で 被 害 者 は 加 害 少 年 と 面 識 関 係 のない 不 特 定 の 対 象 であり, 自 己 顕 示 的 な 性 質 を 帯 びた 犯 行 も 見 られるとする そのほか, 前 兆 的 行 動 について, 犯 行 のほのめかし 不 審 特 異 な 言 動 悩 みの 表 現 動 物 虐 待 等 は,いきなり 型 に 比 較 的 多 く 見 られ,いきなり 型 においては, 精 神 的 な 悩 みや 藤 が 直 接 犯 行 の 原 因 となっているケースが 多 く,そうした 精 神 状 態 が 前 兆 的 動 向 として 現 れている ことが 推 測 されるとしている また, 奥 村 雄 介 凶 悪 な 少 年 非 行 いわゆる いきなり 型 非 行 について ( 犯 罪 に 挑 む 心 理 学 - 現 場 が 語 る 最 前 線 北 大 路 書 房 )も, 少 年 非 行 が 二 極 化 しているとして, 普 通 の 生 徒 が 突 如 として 犯 行 に 及 ぶ いきなり 型 非 行 について 分 析 し, 被 害 者 と 加 害 者 との 関 係 から, 家 族 を 被 害 者 とす るもの, 知 人 を 被 害 者 とするもの, 赤 の 他 人 を 被 害 者 とするものに 分 類 されるとした 上 で,その 精 神 病 理 に ついて 見 解 をふえんしている 50

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 3-1-1 図 非 行 歴 犯 罪 歴 1 本 件 以 外 の 非 行 歴 犯 罪 歴 0% 0% 40% 60% 80% 100% あり なし 総 数 (5) 34 18 (65.4%) (34.6%) 初 発 非 行 犯 行 時 の 年 齢 層 30 歳 以 上 14 歳 未 満 14~19 歳 0~9 歳 総 数 (34) 7 14 11 (0.6%) (41.%) (3.4%) (5.9%) 3 保 護 処 分 歴 総 数 (1) 児 童 相 談 所 長 送 致 少 年 院 送 致 保 護 観 察 なし 8 6 1 6 (38.1%) (8.6%) (8.6%) (4.8%) 注 1 警 察 補 導 以 上 の 処 分 を 有 する 者 を 計 上 している 複 数 の 保 護 処 分 歴 を 有 する 場 合 は, 少 年 院 送 致, 保 護 観 察, 児 童 相 談 所 長 送 致 の 順 に, 最 も 先 に 該 当 するものに 計 上 している 3-1-13 表 は, 調 査 対 象 者 について, 不 良 集 団 ( 暴 力 団, 暴 走 族, 地 域 不 良 集 団 等 を いう )への 所 属 状 況 を 見 たものである 犯 行 時 に 不 良 集 団 に 所 属 していた 者 は 人 のみであり( 平 成 10 年 から3 年 までの 一 般 殺 人 における 暴 力 団 構 成 員 等 率 は13.7%~3.%である -1-10 図 参 照 ), 犯 行 までの 所 属 歴 がある 者 も8 人 であって, 所 属 歴 がない 者 が 多 い 不 良 集 団 に 対 する 所 属 は, 無 差 別 殺 傷 事 犯 者 の 特 徴 として 認 められないと 考 えられる 3-1-13 表 不 良 集 団 関 係 1 過 去 の 不 良 集 団 所 属 歴 総 数 所 属 歴 あり 所 属 歴 なし 5 8 44 過 去 の 不 良 集 団 所 属 状 況 暴 力 団 構 成 員 暴 力 団 周 辺 者 暴 走 族 構 成 員 その 他 4 3 犯 行 当 時 の 不 良 集 団 所 属 状 況 暴 力 団 構 成 員 暴 力 団 周 辺 者 暴 走 族 構 成 員 その 他 - 1-1 注 1 その 他 は, 地 域 不 良 集 団 及 び 犯 罪 を 目 的 として 集 まった 集 団 である 複 数 の 不 良 集 団 に 所 属 している 場 合 は,それぞれの 区 分 に 計 上 している 51

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 第 節 犯 行 の 状 況 1 調 査 対 象 事 件 数 の 推 移 3--1 図 は, 調 査 対 象 の 無 差 別 殺 傷 事 件 ( 調 査 対 象 者 が 複 数 の 無 差 別 殺 傷 事 件 を 行 った 場 合 は,そのいずれも 含 む )について, 犯 行 年 別 の 推 移 を 見 たものである 年 別 の 発 生 状 況 については, 特 に 増 減 に 関 する 傾 向 はないが, 平 成 15 年 と17 年 に 多 く 無 差 別 殺 傷 事 件 が 発 生 している なお, 無 差 別 殺 傷 事 件 と 通 り 魔 殺 人 事 件 は,その 定 義 が 異 なる 上, 調 査 対 象 事 件 は, 起 訴 され, 有 罪 が 確 定 したものに 限 られるので, 通 り 魔 殺 人 事 件 の 年 別 の 推 移 とは 一 致 しない ( 人 ) 15 3--1 図 無 差 別 殺 傷 事 犯 発 生 年 10 5 11 11 7 6 3 4 3 4 4 5 1 3 0 平 成 10 11 1 13 14 15 16 17 18 19 0 1 注 同 一 の 調 査 対 象 者 が 複 数 の 事 件 を 起 こしている 場 合 は,それぞれの 年 に 計 上 している 5

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 犯 罪 数 3-- 図 は, 調 査 対 象 者 が 行 った 無 差 別 殺 傷 事 件 ( 同 一 の 現 場 機 会 において 行 わ れた 犯 行 を 含 む )について, 起 訴 された 罪 名 を 見 たものである 無 差 別 殺 傷 事 犯 である 以 上, 当 然 のことながら, 殺 人 既 遂, 殺 人 未 遂 が 多 い なお, 殺 人 既 遂 と 殺 人 未 遂 の 双 方 を 含 む 者 は7 人 である また, 銃 刀 法 違 反 が 調 査 対 象 者 の 過 半 数 で 起 訴 されており, 凶 器 と 無 差 別 殺 傷 事 件 との 関 係 が 密 接 である 3-- 図 主 たる 犯 行 ( 人 ) 40 30 0 36 34 10 11 0 殺 人 殺 人 未 遂 銃 刀 法 その 他 注 1 無 差 別 殺 傷 事 犯 と 同 一 現 場 同 一 機 会 において 行 われた 犯 行 の 罪 名 を 計 上 している その 他 は, 強 盗 殺 人, 建 造 物 侵 入, 傷 害 等 である 3 複 数 の 罪 名 を 有 する 場 合 は,それぞれの 罪 名 に 計 上 している 3--3 図 は, 調 査 対 象 者 が 行 った 無 差 別 殺 傷 事 件 以 外 の 犯 罪 の 有 無, 罪 名 及 び 無 差 別 殺 傷 事 件 との 前 後 関 係 を 見 たものである 5 人 中 14 人 に 無 差 別 殺 傷 事 件 以 外 に 起 訴 された 犯 罪 ( 従 たる 犯 行 )があり,その 罪 名 と しては 窃 盗 が 多 い 従 たる 犯 行 との 時 間 的 前 後 関 係 を 見 ると, 無 差 別 殺 傷 事 件 の 前 に 行 われたものがほとん どであり,そのうち 約 半 分 は 無 差 別 殺 傷 事 件 のために 凶 器 を 窃 取 するなど 無 差 別 殺 傷 事 件 との 関 連 性 がある もっとも,このように 無 差 別 殺 傷 事 件 と 関 連 する 犯 罪 を, 無 差 別 殺 傷 事 件 に 先 行 して 行 ったのは, 調 査 対 象 者 全 体 で 見 ると 約 1 割 である 53

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 3--3 図 従 たる 犯 行 1 従 たる 犯 行 の 有 無 総 数 (5) あり なし 14 38 (6.9%) (73.1%) ( 人 ) 10 8 6 4 7 7 3 0 窃 盗 器 物 損 壊 強 盗 覚 せい 剤 その 他 無 差 別 殺 傷 事 犯 との 時 間 的 前 後 関 係 及 び 関 連 性 の 有 無 総 数 (14) 11 1 6 5 1 1 1 主 たる 犯 行 との 関 連 性 あり 主 たる 犯 行 の 前 主 たる 犯 行 の 前 後 主 たる 犯 行 の 後 注 1 無 差 別 殺 傷 事 犯 と 異 なる 場 所 異 なる 機 会 において 行 われた 犯 行 の 罪 名 を 計 上 している その 他 は, 殺 人 予 備, 死 体 遺 棄, 傷 害, 暴 行, 建 造 物 侵 入 等 である 3 複 数 の 罪 名 を 有 する 場 合 は,それぞれの 罪 名 に 計 上 している 54

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 3--4 図 は, 調 査 対 象 者 の 無 差 別 殺 傷 事 件 について,その 犯 行 態 様 を 見 たものであ る 本 研 究 においては, 犯 行 の 動 機, 犯 意 の 形 成 過 程 に 焦 点 を 当 てるため, 調 査 対 象 者 が 複 数 人 の 殺 害 を 意 図 していた 場 合 と,そうでない 場 合 を 分 けた 上 で, 犯 行 態 様 により, 単 一 殺 人 型, 大 量 殺 人 型, 連 続 殺 人 型,スプリー 殺 人 型 の 四 つの 類 型 を 作 成 した ( 注 8) 単 一 殺 人 型 とは, 複 数 人 の 殺 害 を 意 図 せず, 一 人 のみに 対 する 殺 害 行 為 を 行 ったにすぎないもの をいう 大 量 殺 人 型 とは, 一 箇 所 において,1 回 の 機 会 に, 複 数 人 の 殺 害 を 意 図 して, 殺 害 行 為 を 行 ったもの をいう 連 続 殺 人 型 とは, 相 当 の 時 間 をおいて, 複 数 人 の 殺 害 を 意 図 して, 殺 害 行 為 を 行 ったもの をいう スプリ- 殺 人 型 とは, 相 当 の 時 間 をおくことな く, 複 数 の 箇 所 において, 複 数 人 の 殺 害 を 意 図 して, 殺 害 行 為 を 行 ったもの をいう 調 査 対 象 者 においては, 単 一 殺 人 型 に 当 てはまる 者 が31 人 と 過 半 数 であり, 複 数 人 の 殺 害 を 意 図 した 者 は1 人 にすぎなかった 複 数 人 の 殺 害 を 意 図 した 者 の 中 では, 大 量 殺 人 型 が 最 も 多 い さらに, 大 量 殺 人 型 とスプリー 殺 人 型 は, 犯 意 の 形 成 過 程 という 観 点 からは, 同 様 の 機 序 が 想 定 されることから,これを 併 せると, 大 量 殺 人 型 又 はスプリー 殺 人 型 に 当 てはまる 者 は,16 人 であった 注 8 諸 外 国 の 殺 人 の 研 究 において, 殺 人 の 犯 行 態 様 別 の 類 型 が 提 唱 されている 米 国 司 法 省 の 報 告 書 Serial Murder,Behavioral Analysis Unit-, National Center for the Analysis of Violent Crime, Critical Incident Response Group, Federal Bureau of Investigation は, 連 続 殺 人 について, 別 個 の 機 会 に 同 一 の 犯 罪 者 (ら)が 人 以 上 の 被 害 者 を 違 法 に 殺 害 すること [The unlawful killing of two or more victims by the same offender(s), in separate events].と 定 義 し,スプリー 殺 人 について, 一 般 的 には 冷 却 期 間 を 有 しない 人 以 上 の 殺 人 とされるとし(なお, 同 報 告 書 はスプリー 殺 人 を 独 立 の 類 型 として 用 いていない ), 大 量 殺 人 は, 一 般 的 に, 単 一 の 事 件 の 間 に 起 きる 多 数 の(4 人 以 上 の) 被 害 者 に 対 する 殺 人 であって, 殺 人 相 互 に 特 別 な 時 間 的 間 隔 が な い も の を い う と し て い る ま た, Race And Crime: A Biosocial Analysis,Anthony Walsh, Nova Science Publishers Inc.は, 複 数 被 害 者 に 対 する 殺 人 は,スプリー 殺 人, 大 量 殺 人, 連 続 殺 人 に 分 類 でき,スプリー 殺 人 は, 比 較 的 短 い 期 間 ( 数 日 又 は 数 週 間 )に 異 なった 場 所 で 数 人 を 殺 害 すること, 大 量 殺 人 は,しばしば 数 分 又 は 数 時 間 という 短 い 時 間 の 単 一 の 事 件 として 同 じ 場 所 で 数 人 を 殺 害 すること, 連 続 殺 人 は, 典 型 的 には, 冷 却 期 間, 通 常 は 数 年 の 期 間 をおいて,1 人 ずつ 殺 害 するも のをいうとしている そのほか, 犯 罪 心 理 学 行 動 科 学 のアプローチ,C.R.バートル A.M.バー トル, 羽 生 和 紀 監 訳, 北 大 路 書 房 は, 連 続 殺 人 とは, 一 般 的 には,ある 人 ( 又 は 人 々)が 長 期 にわたってた くさんの 人 々( 通 常 最 低 でも3 人 )を 殺 害 する 事 件 のことをいい,スプリー 殺 人 は, 通 常 冷 却 期 間 なしに, 通 常 か 所 以 上 の 場 所 において3 人 以 上 を 殺 害 することを 指 し, 大 量 殺 人 は, 殺 人 と 殺 人 の 間 に 冷 却 期 間 が なく,1か 所 で3 人 以 上 を 殺 害 することをいうとしている 55

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 3--4 図 犯 行 形 態 別 人 員 1 実 人 員 ( 総 数 ) ( 人 ) 0 5 10 15 0 5 30 35 単 一 型 31 (59.6%) 大 量 型 1 (3.1%) 連 続 型 8 (15.4%) スプリー 型 4 (7.7%) 実 人 員 ( 併 存 状 況 ) 区 分 単 一 型 大 量 型 連 続 型 スプリー 型 単 一 型 31 大 量 型 - 11 連 続 型 - 1 5 スプリー 型 - - 注 1 同 一 の 調 査 対 象 者 が 複 数 の 事 件 を 起 こしている 場 合 は, 全 ての 事 件 を 総 括 して 犯 行 形 態 別 に 分 類 し, 複 数 の 犯 行 形 態 に 該 当 する 場 合 は,それぞれの 犯 行 形 態 に 計 上 している 単 一 型 は, 複 数 人 の 殺 害 を 意 図 していない 犯 行 である 3 大 量 型 は, 一 箇 所 において 複 数 人 の 殺 害 を 意 図 した 犯 行 である 4 連 続 型 は, 相 当 の 時 間 をおいて, 複 数 人 の 殺 害 を 意 図 した 犯 行 である 5 スプリー 型 は, 短 時 間 で, 数 箇 所 において, 複 数 人 の 殺 害 を 意 図 した 犯 行 である 調 査 対 象 者 の 行 った 無 差 別 殺 傷 事 件 について, 共 犯 の 有 無 を 見 ると,いずれも 単 独 犯 で ある 殺 人 事 件 の 共 犯 率 は 一 般 刑 法 犯 に 比 べて 低 いが,それでも 一 定 程 度 は 存 在 するとこ ろ(-1-9 図 参 照 ), 調 査 対 象 の 無 差 別 殺 傷 事 件 では, 共 犯 率 は0である(この 点 に ついて 第 6 章 参 照 ) 56

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 3 動 機 3--5 図 は, 調 査 対 象 者 について, 無 差 別 殺 傷 事 件 の 犯 行 動 機 別 の 人 員 を 見 たもの である 殺 人 事 件 の 動 機 は, 事 件 ごとに 特 徴 があり, 特 に, 無 差 別 殺 傷 事 件 については,その 性 質 上, 動 機 は, 一 般 的 に 理 解 し 難 いものであるが,ある 程 度 の 共 通 点 を 見 いだすことは 可 能 である そのため, 調 査 対 象 事 件 について, 裁 判 所 において 認 定 された 動 機 内 容 をそれ ぞれ 精 査 した 上 で, 共 通 点 を 抽 出 することとした 犯 行 動 機 としては,Ⅰ 自 己 の 境 遇 へ の 不 満,Ⅱ 特 定 の 者 への 不 満,Ⅲ 自 殺 死 刑 願 望,Ⅳ 刑 務 所 への 逃 避,Ⅴ 殺 人 への 興 味 欲 求 の 五 つの 類 型 を 見 いだすことができる Ⅰ 自 己 の 境 遇 への 不 満 とは, 自 己 の 置 かれた 境 遇 や 現 状 に 対 する 不 満 やいら 立 ち 等 を 晴 らすため, 無 差 別 殺 傷 事 件 に 及 ぶものであり, 例 えば, 自 己 に 発 生 した 事 柄 について 不 満 を 抱 いて,その 気 持 ちを 晴 らすための 憂 さ 晴 らしとして 他 人 に 対 する 殺 害 を 考 えるも の, 自 己 が 正 当 に 評 価 されていないことから 社 会 に 不 満 を 抱 き, 社 会 の 構 成 員 を 殺 害 しよ うと 考 えるものなどをいう Ⅱ 特 定 の 者 への 不 満 とは, 特 定 の 者 に 対 する 恨 みや 怒 り を 晴 らすため,その 者 とは 無 関 係 の 者 に 対 して 八 つ 当 たり 的 に 無 差 別 殺 傷 事 件 に 及 ぶもの であり, 例 えば, 自 己 に 対 して 不 当 な 仕 打 ちを 行 ったとして 知 人 に 対 して 怒 りを 覚 えたた め,そのうっ 憤 を 晴 らすために 誰 かを 殺 害 しようと 考 えたものなどをいう Ⅲ 自 殺 死 刑 願 望 とは, 自 殺 願 望 がありながら,それを 実 行 完 遂 できないため, 自 殺 の 代 わりに 死 刑 になろうと 考 え, 又 は, 自 殺 の 実 行 に 踏 ん 切 りをつけるために, 無 差 別 殺 傷 事 件 に 及 ぶものであり, 例 えば, 恐 怖 感 から 自 殺 することができないため, 通 り 魔 殺 人 をすれば 死 刑 になると 考 えたものなどをいう Ⅳ 刑 務 所 への 逃 避 とは, 社 会 生 活 に 行 き 詰 まり, 刑 務 所 生 活 に 逃 避 するため, 無 差 別 殺 傷 事 件 に 及 ぶものであり, 例 えば, 借 金 に 苦 しみ, 無 為 徒 食 の 生 活 を 続 けた 挙 げ 句, 生 き 延 びる 手 段 としては 刑 務 所 に 入 るほかないと 考 えて, そのために 人 を 殺 そうと 考 えたものなどをいう Ⅴ 殺 人 への 興 味 欲 求 とは, 殺 人 行 為 そのものへの 興 味 や 欲 求 を 満 たすために 無 差 別 殺 傷 事 件 に 及 ぶものであり, 例 えば, 人 を 窒 息 死 させることで 最 高 の 性 的 興 奮 を 得 ようと 考 えたものなどがある そのほか, 動 機 に 関 して 信 用 できる 明 確 な 証 拠 がないなどの 理 由 から, 動 機 について 判 決 において 認 定 さ れず, 不 明 な 者 (Ⅵ 不 明 型 )もいた 調 査 対 象 者 においては,Ⅰ 自 己 の 境 遇 への 不 満 型 が 最 も 多 く,Ⅲ 自 殺 死 刑 願 望 型,Ⅴ 殺 人 への 興 味 欲 求 型 は 多 くはない 57

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 3--5 図 犯 行 動 機 別 人 員 1 実 人 員 ( 総 数 ) 自 己 の 境 遇 への 不 満 ( 人 ) 0 5 10 15 0 5 (4.3%) 特 定 の 者 への 不 満 10 (19.%) 自 殺 死 刑 願 望 6 (11.5%) 刑 務 所 への 逃 避 9 (17.3%) 殺 人 への 興 味 欲 求 5 (9.6%) 不 明 9 (17.3%) 実 人 員 ( 併 存 状 況 ) 区 分 自 己 の 境 遇 特 定 の 者 自 殺 刑 務 所 殺 人 への への 不 満 への 不 満 死 刑 願 望 への 逃 避 興 味 欲 求 不 明 自 己 の 境 遇 への 不 満 15 特 定 の 者 へ の 不 満 3 5 自 殺 死 刑 願 望 1-5 刑 務 所 へ の 逃 避 1 (1) - - 8 殺 人 への 興 味 欲 求 (1) - - - 3 不 明 - - - - - 9 注 1 複 数 の 犯 行 動 機 を 有 する 場 合 は,それぞれの 犯 行 動 機 に 計 上 している における( ) 内 は, 特 定 の 者 への 不 満 の 犯 行 動 機 も 有 している 者 の 数 であり, 内 数 である 4 時 間 的 特 性 調 査 対 象 の 無 差 別 殺 傷 事 件 ( 調 査 対 象 者 が 複 数 の 無 差 別 殺 傷 事 件 を 行 った 場 合 は,その いずれも 含 む )の 発 生 時 期 を 見 ると,3--6 図 のとおりである 月 別 に 見 ると,3 月 に 発 生 しているものが 最 も 多 い 昭 和 57 年 版 犯 罪 白 書 によれば, 通 り 魔 傷 害 事 件 等 ( 傷 害, 暴 行 及 び 器 物 損 壊 事 件 )の 月 別 発 生 件 数 は,5 月 から9 月 の 間 に 多 発 しているとされたが, 今 回 の 調 査 対 象 の 無 差 別 殺 傷 事 犯 においては,6 月,9 月,10 月 にやや 多 いものの, 特 に5 月 から9 月 に 多 発 しているとは 評 価 し 難 い 曜 日 別 に 見 ると, 一 般 殺 人 では, 月 曜 日 にやや 認 知 件 数 が 多 いが, 特 に 曜 日 ごとのばらつ きが 少 ないのに 対 して, 調 査 対 象 の 無 差 別 殺 傷 事 件 では 曜 日 間 のばらつきが 大 きく, 金 曜 日 が 最 も 発 生 件 数 が 少 なく, 週 末 が 終 わった 後 の 火 曜 日 から 木 曜 日 にかけて 発 生 件 数 が 多 い 犯 行 時 間 帯 別 に 見 ると, 調 査 対 象 の 無 差 別 殺 傷 事 件 では, 一 般 殺 人 よりも, 時 間 帯 別 の 件 数 の 差 が 出 ており,0 時 から5 時 台 が 最 も 発 生 件 数 が 少 なく,その 後 時 間 帯 が 遅 くなるにつ れて 発 生 件 数 が 多 くなっており, 夕 方 から 深 夜 にかけた18~3 時 台 が 最 も 発 生 件 数 が 多 い 58

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 3--6 図 無 差 別 殺 傷 事 犯 発 生 時 期 1 犯 行 月 ( 人 ) 15 10 5 0 1 9 7 7 3 4 5 5 3 3 1 月 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 1 月 犯 行 日 ( 人 ) 0 15 10 5 0 17 15 8 7 9 6 1~5 日 6~10 日 11~15 日 16~0 日 1~5 日 6~31 日 3 犯 行 曜 日 4 犯 行 時 間 帯 ( 人 ) 15 10 5 0 6 10 11 13 6 11 月 火 水 木 金 土 日 5 ( 人 ) 5 注 1 同 一 の 調 査 対 象 者 が 複 数 の 事 件 を 起 こしている 場 合 は,それぞれの 区 分 に 計 上 している 一 つの 事 件 で 犯 行 が 複 数 又 は 長 時 間 にわたる 場 合 は, 最 初 の 犯 行 の 開 始 時 点 のものに 計 上 している 0 15 10 5 0 7 14 0~5 時 台 6~11 時 台 1~17 時 台 18~3 時 台 19 59

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 ( 参 考 ) 殺 人 認 知 件 数 ( 発 生 時 期 別 ) ( 平 成 3 年 ) 1 発 生 曜 日 発 生 時 間 帯 ( 人 ) 00 17 150 100 50 1 18 141 158 19 135 ( 人 ) 300 00 100 08 186 17 7 0 月 火 水 木 金 土 日 0 0~5 時 台 6~11 時 台 1~17 時 台 18~3 時 台 注 1 警 察 庁 の 統 計 による 発 生 時 期 が 不 詳 のものを 除 く 5 場 所 的 特 性 調 査 対 象 の 無 差 別 殺 傷 事 件 の 発 生 場 所 を 見 ると,3--7 表 のとおりである 調 査 対 象 者 の 居 住 場 所 と 犯 行 場 所 との 位 置 関 係 では, 同 一 市 区 町 村 内 である 場 合 が 過 半 数 であり, 別 の 都 道 府 県 で 行 う 場 合 は 少 ない これを 反 映 して, 無 差 別 殺 傷 事 件 の 発 生 場 所 は, 調 査 対 象 者 の 居 住 場 所 に 類 似 した 分 布 を 示 しており, 大 阪 府 が 最 も 多 く, 次 に 東 京 都 となっている 人 口 規 模 別 では, 人 口 10 万 人 以 上 の 市 がほぼ 半 数 であり, 人 口 10 万 人 未 満 の 市 町 村 は 少 ない 犯 行 場 所 の 特 徴 を 見 ると, 路 上 が 最 も 多 く, 続 いて, 駅 構 内 等, 店 舗 等 内 となっている 一 般 殺 人 においては 住 宅 内 等 で 発 生 するものが 圧 倒 的 に 多 いが, 無 差 別 殺 傷 事 件 は 殺 意 を 抱 くような 対 立 敵 対 関 係 が 全 くなかった 被 害 者 に 対 する 犯 罪 であるから, 住 宅 内 等 で 発 生 するものよりも,これらの 被 害 者 を 発 見 し, 接 触 ができる 路 上 等 において 発 生 する 事 件 が 多 いものと 考 えられる 60

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 3--7 表 犯 行 場 所 1 人 口 規 模 別 犯 行 地 都 道 府 県 特 別 区 人 口 10 万 人 人 口 10 万 人 政 令 指 定 都 市 以 上 の 市 未 満 の 市 町 村 総 数 北 海 道 1 1 4 青 森 県 - - - 岩 手 県 - - - 宮 城 県 - - 1 1 秋 田 県 - - - 山 形 県 - 1 1 福 島 県 - 1 1 茨 城 県 1-1 栃 木 県 - - - 群 馬 県 1-1 埼 玉 県 - 1-1 千 葉 県 - - - - 東 京 都 6 3-9 神 奈 川 県 - 1 1 新 潟 県 - - - - 富 山 県 1 1 石 川 県 - 1 1 福 井 県 - - - 山 梨 県 - 1 1 長 野 県 - - - 岐 阜 県 - - - 静 岡 県 - - - - 愛 知 県 1 1 - 三 重 県 - - - 滋 賀 県 1-1 京 都 府 - 1-1 大 阪 府 6 7-13 兵 庫 県 - 3-3 奈 良 県 - - - 和 歌 山 県 - 1 1 鳥 取 県 - - - 島 根 県 - - - 岡 山 県 1 - - 1 広 島 県 1 - - 1 山 口 県 1-1 徳 島 県 1-1 香 川 県 - - - 愛 媛 県 - - - 高 知 県 1 1 福 岡 県 - - - - 佐 賀 県 - - - 長 崎 県 - - - 熊 本 県 - - - - 大 分 県 - - - 宮 崎 県 - - - 鹿 児 島 県 - - - 沖 縄 県 - - - 総 数 17 5 10 5 ( 構 成 比 ) (3.7) (48.1) (19.) (100.0) 61

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 居 住 地 から 犯 行 地 までの 距 離 総 数 (5) 同 一 県 内 同 一 市 区 町 村 内 ( 同 一 市 区 町 村 外 ) 同 一 県 外 9 15 8 (55.8%) (8.8%) (15.4%) 3 犯 行 場 所 0 5 10 15 0 ( 件 ) 路 上 0 駅 構 内 等 9 店 舗 等 内 7 住 宅 敷 地 内 5 学 校 内 3 警 察 署 交 番 内 3 駐 車 場 内 公 園 内 自 動 車 内 その 他 注 1 犯 行 時 の 状 況 による 1における 特 別 区 政 令 指 定 都 市 及 び 人 口 規 模 は 平 成 4 年 4 月 1 日 現 在 のものである ただし, 北 海 道, 石 川 県 及 び 群 馬 県 については 平 成 4 年 3 月 31 日 現 在 のものによる 3 住 居 不 定 の 者 におけるの 居 住 地 は, 生 活 の 拠 点 としていた 土 地 である 4 3において, 犯 行 場 所 が 複 数 にわたる 場 合 は,それぞれの 区 分 に 計 上 している 5 3の 駅 構 内 等 は 駅 に 隣 接 する 駅 前 広 場, 歩 道 橋, 通 路 等 を 含 む 6 3の 店 舗 等 は, 雑 居 ビルを 含 む 7 3の 住 宅 敷 地 内 は, 共 同 住 宅 の 共 用 部 分 を 含 む 8 3の その 他 は, 電 車 内 及 び 病 院 内 である 6

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 ( 参 考 ) 殺 人 認 知 件 数 ( 発 生 場 所 別 ) ( 平 成 3 年 ) ( 件 ) 0 100 00 300 400 500 600 700 路 上 駅 構 内 等 店 舗 等 内 住 宅 敷 地 内 学 校 内 駐 車 場 内 公 園 内 自 動 車 内 電 車 船 舶 内 病 院 内 その 他 118 1 93 4 4 7 7 4 69 673 注 1 警 察 庁 の 統 計 による 路 上 は, 高 速 道 路 上 を 含 まない 3 駅 構 内 等 は, 海 港 を 含 む 4 店 舗 等 は,ホテル, 会 社, 事 務 所 等 を 含 む 5 学 校 は,その 実 態 が 幼 稚 園 と 同 視 されるような 保 育 所 を 含 む 6 駐 車 場 は, 駐 輪 場 を 含 む 7 公 園 は, 空 き 地 を 含 む 調 査 対 象 者 が 無 差 別 殺 傷 事 件 の 犯 行 場 所 を 選 定 した 理 由 を 見 ると,3--8 図 のとお りである 犯 行 場 所 の 選 定 理 由 は 多 種 多 様 であるが, 調 査 対 象 者 が 意 図 する 殺 害 対 象 を 見 付 けや すい 場 所 であるからという 理 由 が 最 も 多 い 他 方, 多 数 人 がいて, 大 きな 反 響 を 得 られ る 場 所 であるからという 理 由 によるものは 少 なく,いわゆる 犯 行 を 行 う 劇 場 として 犯 行 場 所 を 選 定 したものはまれであった 63

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 3--8 図 犯 行 場 所 の 選 定 理 由 0% 0% 40% 60% 80% 100% 人 が 大 勢 いる 居 住 先 から 近 い 居 住 先 から 遠 い 選 定 理 由 なし ( 選 定 せず) その 他 不 明 殺 害 対 象 を 見 付 けやすい 犯 行 に 適 している 総 数 (5) 7 13 6 9 11 4 総 数 (7) 5 1 1 多 数 人 の 殺 害 のため 多 数 人 の 殺 害 と 大 きな 反 響 のため 大 きな 反 響 を 得 るため 総 数 (9) 6 3 人 通 りが 少 ない 意 図 する 犯 行 方 法 に 適 している 総 数 (11) 4 7 たまたま 被 害 者 を 見 付 けた 場 所 たまたま 犯 行 を 考 えた 場 所 6 被 害 者 特 性 調 査 対 象 の 無 差 別 殺 傷 事 件 について, 各 事 件 の 被 害 者 の 人 数 別 の 調 査 対 象 者 の 人 員 を 見 ると,3--9 図 のとおりである 被 害 者 が 一 人 のみの 調 査 対 象 者 が38 人 であり,そのうち 未 遂 にとどまった 者 が4 人 に 及 んでいる 人 以 上 の 被 害 者 に 対 して 殺 人 既 遂 に 至 った 者 は9 人 にすぎない 3--9 図 被 害 者 数 別 人 員 総 数 (5) 1 人 人 以 上 38 14 (73.1%) (6.9%) 既 遂 未 遂 全 て 未 遂 既 遂 あり 14 4 5 9 (6.9%) (46.%) (9.6%) (17.3%) 64

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 調 査 対 象 の 無 差 別 殺 傷 事 件 ( 調 査 対 象 者 が 複 数 の 無 差 別 殺 傷 事 件 を 行 った 場 合 は,その いずれも 含 む )の 被 害 者 全 員 の 特 徴 を 見 ると,3--10 表 のとおりである 調 査 対 象 者 の 行 った 全 ての 無 差 別 殺 傷 事 件 の 被 害 者 は16 人 であり,そのうち 死 亡 者 は40 人 であった 被 害 者 の 男 女 別 の 比 率 を 見 ると,ほぼ 同 数 である また, 年 齢 層 別 に 見 ると,9 歳 以 下 の 子 どもが 多 い 一 般 殺 人 に 比 べると, 女 性 と 子 どもの 比 率 が 高 い 調 査 対 象 の 無 差 別 殺 傷 事 件 の 被 害 者 の 死 亡 率 ( 被 害 者 数 に 占 める 死 亡 した 被 害 者 の 比 率 をいう )は31.7%であり, 平 成 3 年 に 認 知 された 殺 人 同 未 遂 事 件 ( 一 般 殺 人 )と 比 べて, 低 い 3--10 表 被 害 者 1 男 女 別 年 齢 層 別 被 害 者 数 年 齢 層 9 歳 以 下 男 性 15 (3.1) 女 性 17 (7.9) 総 数 3 (5.4) 10~19 歳 3 (4.6) 8 (13.1) 11 (8.7) 0~9 歳 8 (1.3) 13 (1.3) 1 (16.7) 30~39 歳 6 (9.) 4 (6.6) 10 (7.9) 40~49 歳 3 (4.6) 5 (8.) 8 (6.3) 50~59 歳 14 (1.5) 6 (9.8) 0 (15.9) 60~69 歳 7 (10.8) 5 (8.) 1 (9.5) 70 歳 以 上 9 (13.8) 3 (4.9) 1 (9.5) 総 数 65 (100.0) 61 (100.0) 16 (100.0) 男 女 別 被 害 程 度 別 被 害 者 数 被 害 程 度 死 亡 男 性 19 (9.) 女 性 1 (34.4) 総 数 40 (31.7) 重 傷 17 (6.) 16 (6.) 33 (6.) 軽 傷 7 (41.5) 3 (37.7) 50 (39.7) 無 傷 (3.1) 1 (1.6) 3 (.4) 総 数 65 (100.0) 61 (100.0) 16 (100.0) 注 1 同 一 の 調 査 対 象 者 が 複 数 の 事 件 を 起 こしている 場 合 は, 全 ての 事 件 を 総 括 して 被 害 者 数 被 害 程 度 に 計 上 している 被 害 時 の 年 齢 による 3 重 傷 は, 全 治 又 は 加 療 1 月 以 上 ( 日 数 での 診 断 時 は30 日 を1 月 とする )の 負 傷 である 4 軽 傷 は, 全 治 又 は 加 療 1 月 未 満 ( 日 数 での 診 断 時 は30 日 を1 月 とする )の 負 傷 である 5 無 傷 は, 被 害 者 が 攻 撃 を 避 けるなどして 傷 を 負 わなかった 場 合 である 6 ( ) 内 は, 男 女 別 総 数 の 年 齢 層 又 は 被 害 程 度 別 構 成 比 である 65

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 ( 参 考 ) 殺 人 被 害 者 1 ( 平 成 3 年 ) 男 女 別 年 齢 層 別 被 害 者 数 年 齢 層 男 性 女 性 総 数 1 歳 以 下 4 (6.6) 34 (8.4) 76 (7.3) 13~19 歳 34 (5.3) 13 (3.) 47 (4.5) 0~9 歳 56 (8.8) 40 (9.9) 96 (9.) 30~39 歳 113 (17.7) 4 (10.3) 155 (14.8) 40~49 歳 10 (18.8) 51 (1.6) 171 (16.4) 50~59 歳 91 (14.3) 47 (11.6) 138 (13.) 60~69 歳 113 (17.7) 59 (14.5) 17 (16.5) 70 歳 以 上 69 (10.8) 10 (9.6) 189 (18.1) 総 数 638 (100.0) 406 (100.0) 1,044 (100.0) 男 女 別 被 害 程 度 別 被 害 者 数 被 害 程 度 死 亡 男 性 08 (33.0) 女 性 34 (56.5) 総 数 44 (4.3) 重 傷 189 (30.0) 8 (19.8) 71 (5.9) 軽 傷 34 (37.1) 98 (3.7) 33 (31.8) 総 数 631 (100.0) 414 (100.0) 1,045 (100.0) 注 1 警 察 庁 の 統 計 による 被 害 者 が 複 数 いる 場 合 は, 主 たる 被 害 者 について 計 上 している 3 被 害 時 の 年 齢 による 4 重 傷 は, 全 治 1 月 以 上 の 負 傷 である 5 軽 傷 は, 全 治 1 月 未 満 の 負 傷 である 6 被 害 のなかった 者 及 び 不 詳 の 者 を 除 く 7 ( ) 内 は, 男 女 別 総 数 の 年 齢 層 又 は 被 害 程 度 別 構 成 比 である 調 査 対 象 者 は, 分 かりにくい 動 機 に 基 づき, 対 立 敵 対 関 係 になかった 相 手 に 対 して 殺 人 事 件 を 行 ったものであるが, 多 数 の 通 行 人, 公 衆 の 中 から, 当 該 被 害 者 に 対 して 殺 害 行 為 を 行 っているのであって,そこには 何 らかの 理 由 が 見 いだせる 場 合 が 多 いと 考 えられる そこで, 被 害 者 の 選 定 理 由 について 見 ると,3--11 図 のとおりである 自 分 より 弱 者 と 思 われる 者 を 被 害 者 として 選 んだ 者 が 最 も 多 い 選 ばれる 弱 者 としては, 子 ども, 女 性, 高 齢 者 等 がある 無 差 別 殺 傷 事 件 が 弱 者 型 の 犯 罪 であるという 評 価 がなさ れることがあるが( 第 6 章 参 照 ),このような 被 害 者 の 選 定 理 由 は 弱 者 型 の 犯 罪 という 性 質 に 整 合 的 と 言 える 次 いで 選 定 理 由 として 多 いのは, 怨 恨 相 手 等 の 代 替 又 は 投 影 として 選 定 したというものであり, 幸 福 そうに 見 える 相 手 を 選 んだというもの, 怨 恨 相 手 と 共 通 点 のある 者 を 選 んだというものがある また, 多 くはないが, 自 分 より 弱 者 の 子 どもや 女 性 を 避 けて 被 害 者 を 選 んだという 者 がいた そのほか, 被 害 者 に 対 する 選 定 が 行 われず, 全 くの 無 作 為 のまま 攻 撃 対 象 を 選 んだという 者 も 相 当 程 度 いた なお, 被 害 者 を 全 く 選 定 し なかった 者 1 人 の 犯 行 態 様 別 類 型 を 見 ると, 単 一 殺 人 型 5 人, 大 量 殺 人 型 4 人 ( 連 続 殺 人 型 との 重 複 1 人 を 含 む ), 連 続 殺 人 型 3 人 ( 大 量 殺 人 型,スプリー 殺 人 型 との 重 複 各 1 人 を 含 む ),スプリー 殺 人 型 人 ( 連 続 殺 人 型 との 重 複 1 人 を 含 む )となっており, 複 数 被 害 者 に 対 する 殺 人 の 件 数 の 方 が 多 い 同 様 に,この1 人 について 動 機 別 類 型 を 見 ると,Ⅰ 66

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 自 己 の 境 遇 への 不 満 型 6 人 (Ⅱとの 重 複 及 びⅡ Ⅳとの 重 複 各 1 人 を 含 む ),Ⅱ 特 定 の 者 への 不 満 型 人 (Ⅰとの 重 複 及 びⅠ Ⅳとの 重 複 各 1 人 ),Ⅲ 自 殺 死 刑 願 望 型 3 人,Ⅳ 刑 務 所 への 逃 避 型 3 人 (Ⅰ Ⅱとの 重 複 1 人 を 含 む ),Ⅵ 不 明 型 1 人 となっており,Ⅴ 殺 人 への 興 味 欲 求 型 の 者 はいない 3--11 図 被 害 者 の 選 定 理 由 0% 0% 40% 60% 80% 100% 総 数 (5) 自 分 より 弱 者 でない 不 明 選 定 理 由 なし 自 分 より 弱 者 怨 恨 相 手 等 の 投 影 代 替 その 他 ( 選 定 せず) 18 1 4 3 1 3 総 数 (18) 高 齢 者 子 供 女 性 その 他 8 4 4 幸 福 な 者 怨 恨 相 手 総 数 (1) 4 8 次 に, 被 害 者 ( 攻 撃 対 象 )と 犯 行 場 所 の 選 定 について,どちらを 優 先 させたかを 見 ると, 3--1 図 のとおりである 攻 撃 対 象 を 優 先 させた 者 が 多 いが, 犯 行 場 所 を 優 先 させた 者 も 少 なくない どちらかを 優 先 させたわけではないという 者 は 少 ない 被 害 者 として 弱 者 を 選 定 した 者, 又 は, 犯 行 場 所 として 犯 行 に 容 易 な 場 所 を 選 定 した 者 は4 人 である これらの 者 による 無 差 別 殺 傷 事 犯 は, 弱 者 型 の 犯 罪 としての 性 格 をうかが うことができると 思 われる 3--1 図 犯 行 場 所 と 攻 撃 対 象 の 優 先 選 定 状 況 総 数 (5) 優 先 選 定 なし 攻 撃 対 象 を 優 先 選 定 犯 行 場 所 を 優 先 選 定 ( 同 時 に 選 定 ) 不 明 16 8 6 (4.3%) (30.8%) (15.4%) (11.5%) 67

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 7 犯 行 の 方 法 3--13 図 は, 調 査 対 象 者 の 行 った 主 たる 無 差 別 殺 傷 事 件 について, 犯 行 の 方 法 を 見 たものである 犯 行 方 法 の 大 半 は 刺 殺 斬 殺 である 米 国 では, 銃 乱 射 事 件 等 が 問 題 とされることが 多 いのに 対 し, 我 が 国 においては 銃 の 所 持 が 禁 じられていることの 反 映 であると 推 察 される が, 銃 を 用 いた 犯 行 はない 3--13 図 犯 行 方 法 ( 人 ) 45 41 40 35 30 5 0 15 10 6 5 0 刺 殺 斬 殺 撲 殺 轢 殺 絞 殺 扼 殺 投 げ 落 とし その 他 注 1 複 数 の 犯 行 方 法 を 用 いている 場 合 は,それぞれの 方 法 に 計 上 している その 他 は, 口 を 塞 いでの 窒 息 及 び 焼 殺 である 3--14 図 は, 調 査 対 象 者 の 主 たる 無 差 別 殺 傷 事 件 のうち, 犯 行 方 法 が 刺 殺 斬 殺 又 は 撲 殺 のものについて, 被 害 者 に 対 する 攻 撃 を 意 図 した 部 位 を 見 たものである 頭 部, 頸 部, 背 部, 胸 部, 腹 部 といった 身 体 の 枢 要 部 に 対 する 攻 撃 が 多 い 3--14 図 攻 撃 部 位 ( 人 ) 0 15 10 5 0 14 16 14 1 13 5 4 3 1 頭 部 顔 首 肩 腕 背 部 胸 部 腹 部 腰 部 臀 部 注 1 犯 行 方 法 が 刺 殺 斬 殺 又 は 撲 殺 の 者 (45 人 )について 計 上 している 実 際 の 攻 撃 部 位 ではなく, 攻 撃 を 狙 った 部 位 を 計 上 している 3 複 数 の 部 位 に 攻 撃 している 場 合 は,それぞれの 部 位 に 計 上 している 68

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 3--15 図 は, 調 査 対 象 者 が 行 った 無 差 別 殺 傷 事 件 における 犯 行 供 用 物 ( 凶 器 )を 見 たものである 使 用 し, 又 は 準 備 した 凶 器 では, 包 丁 とそれ 以 外 の 刃 物 が 大 半 であり, 実 際 に 使 用 した 凶 器 でも 同 様 である 刃 物 を 用 いた 刺 殺 斬 殺 が 無 差 別 殺 傷 事 件 における 主 な 犯 行 の 手 法 であると 言 える 一 般 殺 人 (-1-7 図 参 照 )に 比 べると, 凶 器 の 使 用 率 がやや 高 いよ うにも 思 えるが, 明 確 な 差 は 見 いだしにくい 使 用 し, 又 は 準 備 した 凶 器 の 個 数 では,1 個 である 者 が33 人 と 多 く, 個 以 上 の 複 数 の 凶 器 を 使 用, 準 備 した 者 が16 人 である これらの 者 の 犯 行 形 態 別 類 型 を 見 ると, 単 一 殺 人 型 5 人, 大 量 殺 人 型 8 人, 連 続 殺 人 型 人, 大 量 殺 人 型 と 連 続 殺 人 型 の 双 方 に 当 てはまる 者 1 人 であり, 複 数 の 被 害 者 に 対 する 殺 人, 特 に 大 量 殺 人 型 が 多 い 69

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 3--15 図 犯 行 供 用 物 1-ア 使 用 又 は 準 備 した 犯 行 供 用 物 ( 種 類 別 ) ( 人 ) 0 10 0 30 なし 銃 砲 刀 剣 類 包 丁 類 その 他 の 刃 物 類 鈍 器 0 3 7 6 ロープ ひも 類 その 他 3 1-イ 使 用 又 は 準 備 した 犯 行 供 用 物 ( 個 数 別 ) 4 個 0 個 (なし) 1 個 個 3 個 総 数 (5) 3 33 10 4 -ア 実 際 に 使 用 した 犯 行 供 用 物 ( 種 類 別 ) ( 人 ) 0 10 0 30 なし 銃 砲 刀 剣 類 包 丁 類 その 他 の 刃 物 類 鈍 器 0 5 5 1 1 ロープ ひも 類 その 他 1 1-イ 実 際 に 使 用 した 犯 行 供 用 物 ( 個 数 別 ) 0 個 (なし) 1 個 個 総 数 (5) 5 40 7 注 1 銃 砲 刀 剣 類 は, 模 造 及 び 模 擬 を 含 む 鈍 器 は, 金 槌,バット,スコップ, 空 き 瓶 等 である 3 ロープ ひも 類 は,ガムテープを 含 む 4 その 他 は, 自 動 車,スタンガン 等 である 5 複 数 の 犯 行 供 用 物 を 使 用 又 は 準 備 している 場 合 は,それぞれの 犯 行 供 用 物 に 計 上 している 70

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 3--16 表 は, 調 査 対 象 者 が 無 差 別 殺 傷 事 件 で 実 際 に 使 用 した 犯 行 供 用 物 の 入 手 状 況 を 見 たものである 犯 行 のために 購 入 した 者 が 最 も 多 く, 元 々 所 有 していた 者 がそれに 次 いでいる わずか であるが, 犯 行 のために 窃 取 した 者 もいる 購 入 又 は 窃 取 した 者 では, 犯 行 当 日 に 購 入 又 は 窃 取 した 者 が 多 く,ほとんどの 者 が 犯 行 前 1 週 間 から 当 日 までの 間 に 凶 器 を 準 備 してい る 3--16 表 実 際 に 使 用 した 犯 行 供 用 物 の 入 手 状 況 ( 入 手 時 期 別 ) 入 手 時 期 区 分 犯 行 前 犯 行 前 犯 行 前 犯 行 当 日 犯 行 前 日 1 週 間 以 内 1か 月 以 内 3か 月 以 内 総 数 元 々 所 有 し て い た 18 犯 行 場 所 に あ っ た 4 犯 行 のために 購 入 した 11 4 3 1 1 犯 行 のために 窃 取 した 3 - - 1-4 総 数 14 4 3 47 注 1 実 際 に 使 用 した 犯 行 供 用 物 が 複 数 ある 場 合 は, 入 手 時 期 が 最 も 早 いものについて 計 上 している 実 際 に 使 用 した 犯 行 供 用 物 がなかった 者 (5 人 )を 除 く 3--17 表 は, 調 査 対 象 者 において 無 差 別 殺 傷 事 件 を 敢 行 する 決 意 をした 時 期 を 見 た ものである 5 人 中 3 人 と, 過 半 数 が 犯 行 当 日 に 犯 行 の 決 意 が 芽 生 え, 同 日 に 決 意 が 確 定 している 犯 行 前 1 週 間 から 当 日 までに 犯 行 を 決 意 した 者 が50 人 とほとんどであり, 長 期 にわたり 犯 行 を 計 画 していた 者 は 少 ない また, 犯 行 の 決 意 の 芽 生 えから 確 定 までに 日 数 を 要 してい るのは14 人 であり,ほとんどは 犯 行 の 決 意 が 芽 生 えてから, 短 期 間 でその 決 意 が 確 定 して いる なお, 日 数 を 要 した14 人 について, 動 機 別 の 類 型 を 見 ると,Ⅰ 自 己 の 境 遇 への 不 満 型 が7 人 (Ⅱ Ⅳとの 重 複 及 びⅤとの 重 複 各 1 人 を 含 む ),Ⅱ 特 定 の 者 への 不 満 型 が 人 (Ⅰ Ⅳとの 重 複 1 人 を 含 む ),Ⅲ 自 殺 死 刑 願 望 型 3 人,Ⅳ 刑 務 所 への 逃 避 型 4 人 (Ⅰ Ⅱとの 重 複 1 人 を 含 む ),Ⅴ 殺 人 への 興 味 欲 求 型 1 人 (Ⅰと 重 複 )である 3--17 表 犯 行 決 意 の 芽 生 え 時 期 ( 犯 行 決 意 の 確 定 時 期 別 ) 犯 行 決 意 の 確 定 時 期 区 分 犯 行 前 犯 行 前 犯 行 前 犯 行 当 日 犯 行 前 日 1 週 間 以 内 1か 月 以 内 3か 月 以 内 総 数 犯 行 当 日 3 3 芽 犯 犯 行 前 日 1 3 生 行 犯 行 前 1 週 間 以 内 4-3 7 え決 犯 行 前 1 か 月 以 内 - - 4 時 意 犯 行 前 3 か 月 以 内 3-1 - 6 期 の 総 数 43 3 4-5 ( 構 成 比 ) (8.7) (5.8) (7.7) (3.8) (100.0) 71

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 3--18 図 は, 調 査 対 象 者 が 主 たる 無 差 別 殺 傷 事 件 を 行 った 際 の 薬 物 等 の 使 用 又 は 飲 酒 の 有 無 とその 薬 物 等 の 種 類 を 見 たものである 大 半 は, 薬 物 等 の 使 用 又 は 飲 酒 がない 状 態 で 犯 行 を 行 っている 使 用 摂 取 した 者 の 中 では, 飲 酒 が 多 く, 覚 せい 剤,シンナー 等 の 薬 物 等 を 使 用 した 者 も 多 くはないがいる なお, 本 研 究 の 対 象 者 は, 刑 事 責 任 能 力 が 認 められた 者 に 限 られ, 無 差 別 殺 傷 行 為 を 行 ったが 刑 事 責 任 能 力 がない 者 における 薬 物 等 の 使 用 の 有 無 については 不 明 である 3--18 図 薬 物 等 使 用 飲 酒 総 数 (5) あり なし 13 39 (5.0%) (75.0%) ( 人 ) 6 5 4 3 1 0 6 3 1 飲 酒 覚 せい 剤 シンナー 睡 眠 薬 向 精 神 薬 注 複 数 の 薬 物 等 を 使 用 している 場 合 は,それぞれの 薬 物 等 に 計 上 している 3--19 図 は, 調 査 対 象 者 の 無 差 別 殺 傷 事 件 の 犯 行 後 の 行 動 を 見 たものである 逃 走, 犯 行 発 覚 防 止 等 の 行 動 に 出 た 者 が5 人 中 4 人 と 半 数 弱 であり,8 人 と 過 半 数 は 何 らの 行 動 に 出 ずに 逮 捕 されている 自 首 の 有 無 を 見 ると,5 人 中 8 人 (15.4%)が 自 首 している 一 般 殺 人 における 捜 査 の 端 緒 で 自 首 の 構 成 比 は6.3%( 平 成 3 年 )であり,それと 比 べると 自 首 した 者 の 比 率 が 高 い 傾 向 がうかがえる(この 点 について 第 6 章 参 照 ) 7

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 3--19 図 犯 行 後 の 行 動 1 犯 行 後 の 行 動 ( 自 首 を 除 く ) 総 数 (5) あり 4 なし (46.%) (53.8%) ( 人 ) 0 5 10 15 0 5 8 逃 走 4 発 覚 防 止 5 そ の 他 1 自 首 の 有 無 あり なし 総 数 (5) 8 44 (15.4%) (84.6%) 注 1 1において, 複 数 の 行 動 が 見 られた 場 合 は,それぞれの 項 目 に 計 上 している 1の その 他 は, 犯 行 声 明 文 のビラを 撒 いた である ( 参 考 ) 殺 人 捜 査 の 端 緒 別 認 知 件 数 構 成 比 ( 平 成 3 年 ) 殺 人 (1,051) 63.7 6.3 8.6 1.5 110 番 通 報 119 番 転 送 自 首 警 察 活 動 その 他 注 1 警 察 庁 の 統 計 による ( ) 内 は, 実 人 員 である 73

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 3--0 図 は, 調 査 対 象 者 が 無 差 別 殺 傷 事 件 について 罪 障 感 の 表 明 を 行 ったか 否 かを 見 たものである 5 人 中 34 人 は, 起 訴 前 と 起 訴 後 の 双 方 で 悪 いと 思 う 旨 を 表 明 している(そのほか, 起 訴 前 又 は 起 訴 後 の 一 方 のみで 悪 いと 思 う 旨 を 表 明 している 者 は 各 4 人 である )が, 悪 いと 思 わない, 無 関 心 の 者 が 起 訴 前 で13 人, 起 訴 後 で11 人 いた 起 訴 前 又 は 起 訴 後 において 悪 いと 思 わない 又 は 無 関 心 のいずれかの 態 度 であった 者 15 人 について, 動 機 別 の 類 型 を 見 たところ,Ⅰ 自 己 の 境 遇 への 不 満 型 9 人 (Ⅱとの 重 複 及 びⅡ Ⅴと の 重 複 各 1 人 を 含 む ),Ⅱ 特 定 の 者 への 不 満 型 4 人 (Ⅰとの 重 複 及 びⅠ Ⅴとの 重 複 各 1 人 を 含 む ),Ⅲ 自 殺 死 刑 願 望 型 1 人,Ⅴ 殺 人 への 興 味 欲 求 型 人 (Ⅰ Ⅱとの 重 複 1 人 を 含 む ),Ⅵ 不 明 型 人 であった 調 査 対 象 の 無 差 別 殺 傷 事 犯 では, Ⅲ 自 殺 死 刑 願 望 型,Ⅳ 刑 務 所 への 逃 避 型 の 者 において,このような 態 度 を 示 す 者 は 少 なかった 3--0 図 犯 行 後 の 罪 障 感 表 明 ( 起 訴 前 起 訴 後 ) 0% 0% 40% 60% 80% 100% 起 訴 前 (5) 38 7 6 1 起 訴 後 (5) 38 9 1 悪 いと 思 う 悪 いと 思 わない 無 関 心 犯 人 性 を 否 認 不 詳 74

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 第 3 節 犯 行 の 背 景 要 因, 犯 行 経 緯 動 機 等 1 犯 行 の 背 景 要 因 (1) 知 能 3-3-1 図 は, 調 査 対 象 者 及 び 平 成 3 年 における 殺 人 による 入 所 受 刑 者 の 知 能 指 数 の 分 布 を 見 たものである 調 査 対 象 者 のうち, 知 能 検 査 の 結 果 を 確 認 できた 者 は51 人 であり, 知 能 指 数 の 平 均 値 は 81.0(レンジ51~18,SD=18.1)であった 殺 人 による 入 所 受 刑 者 のIQ 相 当 値 は, 刑 事 施 設 で 用 いられているCAPAS 能 力 検 査 によるものであり, 個 別 知 能 検 査 の 結 果 と 単 純 な 比 較 は できないが, 調 査 対 象 者 と 殺 人 による 入 所 受 刑 者 の 知 能 は, 平 均 値 においても, 分 布 状 況 においてもほぼ 同 様 な 傾 向 を 示 している 3-3-1 図 調 査 対 象 者 入 所 受 刑 者 ( 平 成 3 年 殺 人 罪 名 )の 知 能 指 数 の 分 布 (%) 30 5 0 15 10 5 調 査 対 象 者 (n=51) 入 所 受 刑 者 (n=81) 0 ~59 ~69 ~79 ~89 ~99 100~ IQ 相 当 値 知 能 指 数 IQ 相 当 値 指 数 調 査 対 象 者 (n=51) 入 所 受 刑 者 (n=81) 平 均 IQ 区 分 ~59 ~69 ~79 ~89 ~99 100~ 合 計 81.0 % 9.8 17.6 1.6 3.5 7.8 19.6 100.0 79.4 % 10.7 11.7 5.6 4.6 17.8 9.6 100.0 注 1 入 所 受 刑 者 は, 平 成 3 年 における 殺 人 による 入 所 受 刑 者 であり, 法 務 省 大 臣 官 房 司 法 法 制 部 の 資 料 による 知 能 指 数 は,CAPASのIQ 相 当 値 又 は 個 別 知 能 検 査 の 知 能 指 数 が 判 明 しているものを 計 上 し, 検 査 データのないケースは 除 外 した 3 調 査 対 象 者 については, 個 別 知 能 検 査 の 知 能 指 数,CAPASのIQ 相 当 値 の 順 に 優 先 的 に 選 択 し, 複 数 の 検 査 データがある 場 合 は,より 新 しいデータを 計 上 した 75

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 () 性 格 特 徴 等 受 刑 者 の 処 遇 に 当 たっては, 懲 役 刑 等 の 刑 が 確 定 し,その 執 行 を 開 始 するときに 受 刑 者 の 資 質 及 び 環 境 について 処 遇 調 査 ( 刑 執 行 開 始 時 調 査 )を 行 う その 調 査 には, 面 接, 各 種 心 理 検 査, 精 神 科 診 察 による 精 査 などが 含 まれ 得 る 調 査 対 象 者 の 性 格 特 徴 等 について, 調 査 対 象 者 の 裁 判 確 定 後, 刑 事 施 設 の 刑 執 行 開 始 時 の 処 遇 調 査 において 実 施 された 法 務 省 式 人 格 目 録 ( 以 下,MJPIという )の 結 果 がある 者 は43 人 であった その 平 均 的 なプロフィー ルを 見 ると,3-3- 図 のとおりである 妥 当 性 尺 度 ( 虚 構 Li 偏 向 De 自 我 防 衛 Ed)のパターンは, 過 感 で 自 己 批 判 や 自 己 卑 下 しやすい 者 に 認 められるパターンを 示 している また, 臨 床 尺 度 ( 心 気 症 Hから 偏 狭 Pま でのものをいう)は, 心 気 症 H, 自 信 欠 如 C, 抑 うつD 及 び 偏 狭 Pが 標 準 域 より 高 く 出 て いるプロフィールパターンであり, 自 分 に 自 信 が 持 てず 暗 い 気 分 が 続 いて 自 分 自 身 で 悩 み やすい 傾 向 や,いわゆる 神 経 質 な 人 にありがちなひがみっぽさや 過 敏 さといった 性 格 特 性 が 高 い 者 が 調 査 対 象 者 には 多 く 含 まれていることが 示 されている 76

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 3-3- 図 3-3- MJPI( 法 務 省 式 人 格 目 録 )T 得 点 平 均 プロフィール MJPI( 法 務 省 式 人 格 目 録 )T 得 点 平 均 プロフィール (T (T 得 点 ) 65 65 60 60 55 50 45 40 350 ~ ~ Li Li De De Ed Ed 虚 構 偏 向 自 我 防 衛 H 心 気 症 C 自 信 欠 如 D 抑 う つ U 不 安 定 X 爆 発 V 自 己 顕 示 O 過 活 動 M 軽 躁 S 従 属 P 偏 狭 MJPI Li De Ed H C D U X V O M S P n MJPI 尺 度 Li De Ed H C D U X V O M S P T 得 点 48.9 56.3 44. 56.5 60.8 60.5 54.4 51.7 49.9 47.3 41.9 51.8 58.4 T 得 点 48.9 56.3 44. 56.5 60.8 60.5 54.4 51.7 49.9 47.3 41.9 51.8 58.443 SD (10.3) (1.1) (9.8) (13.5) (14.6) (14.7) (14.0) (10.6) (11.5) (10.8) (1.6) (1.0) (16.3) (SD) (10.3) (1.1) (9.8) (13.5) (14.6) (14.7) (14.0) (10.6) (11.5) (10.8) (1.6) (1.0) (16.3) 注 1 調 査 対 象 者 のうちデータが 確 認 できた 者 についてT 得 点 を 集 計 し, 複 数 のMJPIデータがある 者 は, 犯 行 時 に 最 も 近 い 注 1 調 査 対 象 者 のうちデータが 確 認 できた 者 についてT 得 点 を 集 計 し, 複 数 のMJPIデータがある 者 は, 犯 行 時 に 最 も 近 い 時 期 のデータを 計 上 した 時 MJPIの 期 のデータを 各 尺 度 は 計 次 上 のような した 傾 向 を 示 すものされている Li MJPIの :テストの 各 尺 度 結 は 果 次 を のような 過 度 に 良 傾 く 向 見 を せようとし, 示 すものされている 実 行 不 可 能 なことでも 行 うと 反 応 する 傾 向 De Li :テストを :テストの 受 結 ける 果 を 構 過 え, 度 に 又 良 はものの く 見 せようとし, 考 え 方 や 感 実 じ 行 方 不 が 可 著 能 しく なことでも 偏 っている 行 傾 うと 向 反 応 する 傾 向 Ed De ::テストを 自 分 を 守 るために 受 ける 構 自 え, 分 の 又 弱 はものの 点 を 隠 し, 考 え 良 方 く や 見 感 せようとする じ 方 が 著 しく 傾 偏 向 っている 傾 向 H Ed : 神 自 経 分 質 を, 守 無 るために 気 力, 心 自 気 分 症 の 的 弱 な 点 傾 を 向 隠 し, 良 く 見 せようとする 傾 向 C H : 他 神 人 経 の 質 評, 価 無 を 気 力 にし,, 心 気 自 症 分 的 の な 能 傾 力 向 や 行 動 に 自 信 を 持 てない 傾 向 D C :ささいなことに : 他 人 の 評 価 を 気 にし, が 沈 み, 自 分 消 の 極 能 的 力, や 悲 行 観 動 的 に, 自 絶 信 望 を 的 持 になり, てない 傾 暗 向 い 気 分 が 続 く 傾 向 U D ::ささいなことに 周 囲 の 状 況 に 関 係 気 なく が 沈 気 み, 分 が 消 変 極 化 的 したり,ささいな, 悲 観 的, 絶 望 的 刺 になり, 激 で 行 動 暗 が い 変 わりやすい 気 分 が 続 く 傾 向 X U : 短 周 気 囲 で の 怒 状 りや 況 に 不 関 満 係 を なく 抱 きやすく, 気 分 が 変 化 攻 したり,ささいな 撃 的 に 振 る 舞 いやすい 刺 激 で 傾 行 向 動 が 変 わりやすい 傾 向 V X : 自 短 己 気 中 で 心 怒 的 りや で 支 不 配 満 欲 を が 抱 強 きやすく, かったり, 攻 他 撃 人 的 から に 振 嫌 る われまいとして 舞 いやすい 傾 向 自 分 を 良 く 見 せようとする 傾 向 O V : 刺 自 激 己 をすぐ 中 心 的 行 で 動 支 に 配 移 欲 したり, が 強 かったり, 気 軽 で 即 他 行 人 的 から に 振 嫌 る われまいとして 舞 ったりする 傾 自 向 分 を 良 く 見 せようとする 傾 向 M O :おおむねほがらかで : 刺 激 をすぐ 行 動 に 移 人 したり, 付 き 合 いを 気 軽 好 で むというような 即 行 的 に 振 る 舞 楽 ったりする 天 的 な 傾 向 傾 向 S M ::おおむねほがらかで 他 からの 働 き 掛 けに 動 人 かされやすく, 付 き 合 いを 好 むというような 自 主 性 を 欠 く 弱 楽 い 天 依 的 存 な 的 傾 な 向 傾 向 P S : 自 他 己 からの 中 心 的 働 で き 社 掛 会 けに に 対 動 する かされやすく, 不 平 不 満 を 持 自 ち, 主 性 被 を 害 欠 感 く, 弱 不 い 信 依 感 存 などが 的 な 強 傾 い 向 傾 向 P : 自 己 中 心 的 で 社 会 に 対 する 不 平 不 満 を 持 ち, 被 害 感, 不 信 感 などが 強 い 傾 向 関 係 記 録 に 見 られる 調 査 対 象 者 の 性 格 特 徴 については, 上 記 のような 心 理 検 査 による 特 徴 のほか, 近 親 者 等 による 第 三 者 評 価 からも 確 かめることができる 関 係 記 録 から,その 評 価 を 見 ると, 素 直, 真 面 目, 大 人 しい, 温 厚 といった 肯 定 的 な 評 価 を 受 けている 者 も いるが, 無 口, 臆 病, 気 が 小 さい, 暗 くて 落 ち 込 みやすい, 優 柔 不 断,ストレスに 弱 い, さい 疑 心 が 強 い, 孤 独 内 心 を 打 ち 明 けない, 人 付 き 合 いが 苦 手, 相 手 に 面 と 向 かって 反 発 できない 等 の 消 極 的 内 閉 的 で 対 人 接 触 が 苦 手 といった 評 価 を 受 けている 者 が 比 較 的 多 く 見 られる また, 非 行 犯 罪 歴 のある 者 では, ため 込 んでいた 不 満 を 突 然 爆 発 させる, キレやすい などの 評 語 や, 粗 野 で 情 緒 不 安 定, 抑 制 に 乏 しくて 衝 動 的 攻 撃 的 で 粗 暴 性 77

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 が 目 立 つ というように 一 部 の 者 ではセルフコントロールの 悪 さを 示 す 評 価 も 見 られる さらに, 調 査 対 象 者 が 犯 行 前 に 抱 えていた 主 観 的 な 不 満 や 閉 塞 感 等 は, 事 件 の 背 景 的 な 要 因 ともなり 得 ると 考 えられるものであるが, 代 表 的 なものとしては 次 のようなものが 認 められた 友 人 ができないことから 誰 からも 相 手 にされないという 対 人 的 孤 立 感 誰 にも 必 要 とされていないという 対 人 的 疎 外 感 失 職 したことを 契 機 とする 将 来 への 不 安 生 活 に 行 き 詰 まり, 生 きる 気 力 を 失 い 餓 死 しようという 絶 望 感 生 きていても 仕 方 なく 死 にたいが, 死 ぬのは 怖 いから 刑 務 所 に 戻 りたいという 現 実 逃 避 的 な 願 望 努 力 しても 何 も 報 われないという 諦 め 職 場 いじめを 受 けたと 感 じてのストレスや 怒 りのため 込 み 守 るもの, 失 うもの, 居 場 所 が 何 もないという 孤 独 感 や 虚 無 感 自 分 だけがみじめな 思 いをしてきたのに 周 りがぬくぬく 生 きているという 被 害 感 や 怒 り 失 職 や 交 際 相 手 との 復 縁 がかなわず 何 事 も 自 分 の 思 惑 どおりに 行 かないという 憤 まん これらの 不 満 や 閉 塞 感 等 に 共 通 して 見 られる 特 徴 は, 生 活 に 対 する 前 向 きの 希 望 や 意 欲 を 失 ってしまっていること,さらに,ものの 見 方 や 考 え 方 が 極 端 な 方 向 に 偏 り, 視 野 の 狭 い 思 い 込 みにとらわれてしまっていることである これらの 性 格 特 徴 等 に 関 しては, 犯 行 動 機 や 犯 行 態 様 の 違 いにも 密 接 に 関 連 すると 考 え られるため, 類 型 別 の 特 徴 は 別 途 記 載 する (3) 心 身 の 状 況 犯 行 時 において, 何 らかの 心 身 の 不 調 により 入 院 又 は 通 院 加 療 中 だった 者 は1 人 ( 入 院 中 4 人, 通 院 加 療 中 8 人 )であり, 調 査 対 象 者 の3.1%の 者 が, 心 身 の 不 調 のため 治 療 を 受 けていた なお, 犯 行 時 において,いらいら 感, 不 眠, 抑 うつ 的 な 気 分 など 何 らかの 精 神 的 不 調 の 状 態 にあったと 見 られる 者 について 見 ると,35 人 (67.3%)が 犯 行 時 において 精 神 的 には 不 安 定 な 状 態 であったと 見 られ,けがや 身 体 疾 患 等 のため 身 体 的 不 調 の 状 態 に あった 者 も6 人 (11.5%)であるなど, 犯 行 時 においては, 大 半 の 者 が 心 身 の 健 康 状 態 が 不 良 な 状 態 にあったことが 認 められる なお, 調 査 対 象 者 のうち, 犯 行 時 における 責 任 能 力 等 の 検 討 の 参 考 として 精 神 鑑 定 が 実 施 された 者 の 状 況 は,3-3-3 表 のとおりである 78

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 3-3-3 表 精 神 鑑 定 の 実 施 状 況 簡 易 鑑 定 区 分 未 実 施 実 施 総 数 本 鑑 定 未 実 施 実 施 総 数 6 13 19 (11.5%) (5.0%) (36.5%) 9 4 33 (17.3%) (46.%) (63.5%) 15 37 5 (8.8%) (71.%) (100.0%) 調 査 査 対 象 者 のうち,46 人 ( 調 査 対 象 者 の88.5%)が 精 神 鑑 定 に 付 されており,その 内 訳 は, 簡 易 鑑 定 のみが9 人, 本 鑑 定 のみが13 人, 簡 易 鑑 定 及 び 本 鑑 定 が4 人 であった こ のうち, 裁 判 において 心 神 耗 弱 が 認 定 された 者 は10 人 ( 同 19.%, 知 的 障 害 1 人, 覚 せい 剤 等 の 薬 物 関 連 障 害 人,その 他 の 精 神 障 害 7 人 )であった この10 人 中, 通 院 加 療 中 で あった 者 は3 人, 施 設 で 療 育 中 であった 者 は1 人 であり, 残 りの6 人 では,3 人 に 入 院 治 療 歴 があったが, 犯 行 時 には 無 断 離 院, 放 浪 等 により 治 療 が 中 断 した 状 態 にあり, 他 の3 人 では 精 神 鑑 定 によって 初 めて 精 神 障 害 が 確 認 されたもので,それ 以 前 には 精 神 障 害 が 周 囲 から 認 識 されておらず, 治 療 経 験 も 全 くなかった 3-3-4 図 は, 調 査 対 象 者 の 本 鑑 定 の 実 施 状 況 及 び 本 鑑 定 による 精 神 障 害 等 の 診 断 状 況 を 精 神 障 害 等 の 種 別 に 見 たものである まず, 本 鑑 定 に 付 された 者 は, 調 査 対 象 者 5 人 中,37 人 ( 同 71.%)であり, 残 りの15 人 には 本 鑑 定 は 実 施 されていない( 同 図 1) 本 鑑 定 を 受 けた37 人 中, 鑑 定 の 結 果,6 人 には 特 段 の 精 神 障 害 等 は 認 められず, 残 りの31 人 の 診 断 ( 重 複 計 上 )については,パーソ ナリティ 障 害 が17 人, 知 的 障 害 が6 人, 薬 物 関 連 の 精 神 障 害 が3 人,その 他 の 精 神 障 害 が 13 人 であり,パーソナリティ 障 害 のカテゴリーに 診 断 される 者 が 最 も 多 かった( 同 図 ) さらに, 精 神 障 害 等 種 別 の 重 複 診 断 状 況 を 見 ると, 知 的 障 害 の4 例, 薬 物 関 連 の 精 神 障 害 の1 例,その 他 の 精 神 障 害 の 例 にはパーソナリティ 障 害 の 診 断 が 併 せて 診 断 されており, 知 的 障 害 の 別 の1 例 にはその 他 の 精 神 障 害 が 併 せて 診 断 されていた( 同 図 3) 総 じて, 本 鑑 定 において 精 神 科 診 断 を 受 けた 大 半 のケースにおいては, 他 の 障 害 がある ようなケースであっても,パーソナリティ 障 害 の 診 断 によって 示 されるような 人 格 傾 向 や 態 度 行 動 面 等 の 偏 りがベースにあって, 本 件 犯 行 にも 影 響 していていたことが 推 察 され る 79

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 3-3-4 図 精 神 鑑 定 ( 本 鑑 定 )による 精 神 障 害 等 種 別 状 況 1 精 神 鑑 定 ( 本 鑑 定 )の 実 施 状 況 総 数 (5) 実 施 あり 実 施 なし 37 15 (71.%) (8.8%) 精 神 障 害 等 種 別 人 員 ( 実 人 員 総 数 ) ( 人 ) 0 5 10 15 0 診 断 な し 6 (16.%) パーソナリティ 障 害 17 (45.9%) 薬 物 関 連 障 害 3 (8.1%) 知 的 障 害 6 (16.%) その 他 の 精 神 障 害 13 (35.1%) 3 精 神 障 害 等 種 別 人 員 ( 実 人 員 併 存 状 況 ) 区 分 パーソナリティ 薬 物 関 連 その 他 の 知 的 障 害 障 害 障 害 精 神 障 害 パーソナリティ 障 害 9 薬 物 関 連 障 害 1 知 的 障 害 5-1 そ の 他 の 精 神 障 害 - - 11 注 1 及 び3では, 精 神 鑑 定 ( 本 鑑 定 )によって 診 断 されたものを 計 上 しており, 鑑 定 が 複 数 ある 場 合 は, 公 判 で 採 択 された 診 断 名 を 計 上 している 複 数 の 診 断 名 がつけられている 場 合,それぞれの 項 目 に 計 上 している 3 その 他 の 精 神 障 害 とは, 他 のカテゴリーに 含 まれない 精 神 障 害 であり, 統 合 失 調 症, 感 情 障 害 等 の 診 断 が 含 まれている なお,パーソナリティ 障 害 以 外 の 精 神 障 害 ( 薬 物 関 連 障 害, 知 的 障 害 及 びその 他 の 精 神 障 害 )を 有 する 者 人 (パーソナリティ 障 害 の 診 断 を 併 せて 受 けた 者 を 含 む )について 見 ると, 過 去 に 精 神 科 への 入 通 院 歴 がある 者 が13 人 であるが, 犯 行 時 において 入 通 院 してい た 者 は8 人 にとどまっていた 80

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 (4) 犯 行 前 の 問 題 行 動 等 3-3-5 表 は, 刑 事 確 定 記 録 等 の 関 係 記 録 の 調 査 から, 調 査 対 象 者 の 犯 行 前 の 生 活 に おいて 認 められた 問 題 行 動 を 該 当 者 の 多 い 順 に 重 複 計 上 したものである 8 割 以 上 の 者 に, 何 らかの 問 題 行 動 が 認 められるが, 犯 行 に 先 行 して 最 も 多 く 認 められ た 問 題 行 動 は, 自 殺 企 図 (3 人, 調 査 対 象 者 の44.%)である これに 次 いで, 引 きこも り(1 人, 同 3.1%), 粗 暴 性 の 問 題 ( 対 人 粗 暴 行 為 (8 人, 同 15.4%), 対 物 粗 暴 行 為 (5 人, 同 9.6%)), 薬 物 等 乱 用 問 題 ( 覚 せい 剤 (8 人, 同 15.4%),シンナー, 問 題 飲 酒 ( 各 5 人, 同 各 9.6%),その 他 薬 物 (1 人, 同 1.9%)), 性 的 問 題 (7 人, 同 13.5%), 浪 費 (5 人, 同 9.6%)などの 問 題 行 動 が 見 られる 3-3-5 表 犯 行 前 に 見 られた 問 題 行 動 問 題 行 動 該 当 者 数 全 体 に 占 める 比 率 自 殺 企 図 ( 犯 行 前 ) 3 44. 引 きこもり 1 3.1 対 人 粗 暴 行 為 8 15.4 対 物 粗 暴 行 為 5 9.6 覚 せい 剤 8 15.4 シンナー 5 9.6 その 他 薬 物 1 1.9 問 題 飲 酒 5 9.6 浪 費 5 9.6 ギャンブル 4 7.7 性 的 問 題 7 13.5 自 傷 行 為 3 5.8 動 物 虐 待 3.8 その 他 3 5.8 特 になし 9 17.3 注 総 数 5 100.0 特 になし の 区 分 を 除 き, 該 当 者 数 は 重 複 計 上 している 自 殺 企 図, 対 人 的 引 きこもり, 各 種 の 粗 暴 行 為, 薬 物 乱 用 といった 問 題 行 動 は, 外 見 的 にも 比 較 的 認 識 しやすい 問 題 行 動 であることから,これらの 問 題 行 動 の 発 生 を 契 機 に, 適 切 な 指 導 や 支 援 を 講 ずる 余 地 はあると 考 えられる なお,こうした 問 題 行 動 に 至 った 背 景 事 情 ( 重 複 計 上 )について 見 ると, 学 校 生 活 にお けるいじめ 被 害 体 験 (16 人,37.%), 対 人 的 孤 立 (13 人,30.%), 経 済 的 困 窮, 仕 事 上 の 悩 み( 各 1 人, 各 7.9%), 職 場 におけるいじめ 被 害 体 験, 虐 待 等 による 不 遇 な 家 庭 状 況 ( 各 8 人, 各 18.6%), 異 性 問 題 (6 人,14.0%)といった 問 題 も 見 られ, 調 査 対 象 者 の 社 会 適 応 状 況 が 良 くなかったことも 認 められる ( 注 9) 注 9 これらの 評 定 は, 関 係 記 録 の 本 人 供 述 等 からコーディングしているため,いじめの 被 害 等 が 客 観 的 に 見 て 事 実 だったかどうかは 判 断 できない 81

法 務 総 合 研 究 所 研 究 部 報 告 50 他 方, 関 係 記 録 上, 特 段 の 問 題 行 動 が 認 められない 者 は17.3%(9 人 )と 少 なく,これ らの 者 はいずれも 前 科 前 歴 を 有 していた( 懲 役 前 科 を 有 する 者 7 人, 罰 金 前 科 のみを 有 する 者 1 人, 前 歴 のみを 有 する 者 1 人 ) これらの 者 に 対 しては, 問 題 行 動 の 出 現 に 対 応 し た 措 置 は 困 難 であるが, 前 科 前 歴 となる 犯 罪 を 行 った 後 の 処 遇 における 指 導 や 支 援 の 可 能 性 はあったと 考 えられる (5) 自 殺 企 図 歴 3-3-6 表 は 調 査 対 象 者 の 犯 行 前 後 の 自 殺 企 図 歴 の 状 況 を 示 したものである 犯 行 前 後 の 自 殺 企 図 歴 は, 調 査 対 象 者 の 半 数 に 当 たる7 人 に 認 められた このうち, 犯 行 前 の 自 殺 企 図 が3 人 (44.%)に, 犯 行 後 の 自 殺 企 図 が16 人 (30.8%)に 認 められ,1 人 (3.1%)は, 犯 行 の 前 後 ともに 自 殺 企 図 に 及 んでいた なお, 自 殺 企 図 を 行 った7 人 のうち,0 歳 代 以 下 の 者 が13 人 であり,30 歳 代 以 下 では1 人 であった 3-3-6 表 自 殺 企 図 歴 ( 犯 行 前 後 別 ) 犯 行 前 の 自 殺 企 図 区 分 犯 行 後 の 自 殺 企 図 なし あり 総 数 なし 4 4 8 (46.%) (7.7%) (53.8%) あり 11 1 3 (1.%) (3.1%) (44.%) 不 詳 1-1 (1.9%) (1.9%) 総 数 36 16 5 (69.%) (30.8%) (100.0%) 犯 行 前 に 自 殺 企 図 歴 が 認 められた 者 3 人 の 自 殺 企 図 の 時 期 を 見 ると,うち14 人 ( 犯 行 前 自 殺 企 図 者 全 体 の60.9%)が, 犯 行 の 半 年 以 内 に 自 殺 企 図 に 及 んでおり, 自 殺 企 図 と 事 件 の 近 接 性 が 認 められる このほか,1 年 以 内 の 自 殺 企 図 が 人,3 年 以 内 が4 人,5 年 以 上 前 が3 人 であった 自 殺 に 及 んだ 理 由 を 見 ると, 人 生 が 思 いどおりにならないという 不 満, 所 持 金 が 尽 きて 生 活 が 行 き 詰 まり 八 方 塞 がりとなった 状 況, 家 族 代 わりに 愛 着 を 寄 せていたペットとの 死 別 という 喪 失 体 験, 引 きこもり 生 活 で 何 もかも 嫌 になったという 社 会 的 不 適 応 による 厭 世 感 などが 挙 げられている これらの 者 は, 自 殺 の 方 法 として,い 首, 飛 び 降 り, 故 意 による 自 動 車 事 故, 精 神 科 処 方 薬 の 大 量 服 薬, 手 首 自 傷 等 の 方 法 により 自 殺 を 図 っているが, 自 殺 に 失 敗 し, 死 ぬこと が 怖 くなったことなどにより,その 後 の 自 殺 企 図 は 諦 め,もんもんとする 焦 燥 感 やいら 立 ちの 中 で 他 者 攻 撃 の 着 想 に 転 じたり, 自 殺 用 に 用 意 した 凶 器 をそのまま 他 者 攻 撃 に 転 用 し て 無 差 別 殺 傷 事 件 に 及 ぶなどしており, 自 殺 から 他 者 攻 撃 への 変 容 が 生 じている 経 緯 が 認 8

無 差 別 殺 傷 事 犯 に 関 する 研 究 められる 次 に, 自 殺 企 図 歴 の 有 無 による 調 査 対 象 者 の 性 格 特 徴 の 違 いを 見 ておきたい MJPI 検 査 所 見 が 確 認 できた 者 4 人 ( 自 殺 企 図 歴 あり 群 人,なし 群 0 人 )について 自 殺 企 図 歴 の 有 無 により 同 検 査 の 尺 度 得 点 の 布 置 を 見 ると, 自 殺 企 図 歴 あり 群 では 自 我 防 衛 尺 度 EdのTス コア 平 均 値 が40.9( 企 図 歴 なし 群 は44.5,F=6.94,p<0.05)と 有 意 に 低 くなっており, 自 信 欠 如 尺 度 Cが65.3( 企 図 歴 なし 群 は55.1,F=5.73,p<0.05), 従 属 尺 度 Sが55.8( 企 図 歴 なし 群 は47.05,F=6.4,p<0.05) 及 び 偏 狭 尺 度 Pが64.0( 企 図 歴 なし 群 は51.5,F=7.00, p<0.05)と 有 意 に 高 く 出 ている つまり, 自 殺 企 図 歴 のある 者 では, 自 殺 企 図 歴 のない 者 に 比 べ, 自 我 防 衛 的 な 態 度 を 示 して 自 分 を 守 ろうとするような 対 処 をするよりも, 状 況 的 なプレッシャーやストレスに 圧 倒 され 自 分 の 否 定 的 な 側 面 に 目 が 向 きやすく, 自 分 の 能 力 や 行 動 に 自 信 が 持 てなくなり, 自 信 のなさから 周 囲 からの 働 き 掛 けに 動 かされやすくなっ たり, 外 界 に 対 して 不 平 不 満 や 被 害 感 を 抱 きやすい 傾 向 がかなり 高 まった 状 態 にある 者 が 多 く 含 まれていることがうかがえる 3-3-7 表 は, 本 鑑 定 による 精 神 障 害 等 の 種 別 に 自 殺 企 図 歴 の 状 況 を 見 たものである 区 分 犯 行 前 のみ 自 殺 企 図 あり 犯 行 後 のみ 自 殺 企 図 あり 犯 行 前 後 とも 自 殺 企 図 あり 自 殺 企 図 該 当 者 総 数 自 殺 企 図 なし 不 総 詳 数 3-3-7 表 自 殺 企 図 歴 ( 精 神 障 害 等 種 別 ) パーソナリティ 薬 物 関 連 その 他 の 障 害 なし 知 的 障 害 障 害 障 害 精 神 障 害 本 鑑 定 なし 6-1 3 3 (35.3) (16.7) (3.1) (14.3) 1 - - 1 (5.9) (15.4) (4.8) 4-4 5 (3.5) (33.3) (30.8) (3.8) 11-3 9 9 (64.7) (50.0) (69.) (4.9) 6 3 4 1 (35.3) (66.7) (50.0) (30.8) (57.1) - 1 - - - (33.3) 17 3 6 13 1 (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) (100.0) 注 1 精 神 障 害 等 種 別 は, 精 神 鑑 定 ( 本 鑑 定 )によって 診 断 されたものを 計 上 しており, 鑑 定 が 複 数 ある 場 合 は, 公 判 で 採 択 された 診 断 名 を 計 上 している 3-3-4 図 の 脚 注 及 び3に 同 じ 3 ( ) 内 は, 各 精 神 障 害 等 種 別 の 総 数 に 占 める 各 自 殺 企 図 歴 の 比 率 である まず, 犯 行 の 前 後 を 問 わず 自 殺 企 図 歴 のある 者 の 総 数 から 見 ると, 本 鑑 定 において 精 神 障 害 等 がないと 診 断 された 者 又 は 本 鑑 定 に 付 されていない 者 ( 以 下, 障 害 本 鑑 定 なしの 者 という )のカテゴリーでは, 自 殺 企 図 歴 は 約 4 割 の 水 準 にあるのに 対 し,パーソナリ ティ 障 害 やその 他 の 精 神 障 害 の 者 では6 割 を 超 える 者 に 自 殺 企 図 歴 が 認 められる 知 的 障 83