た演劇的な空間の中を 幾人かの人物が入れ替わり立ち代わり出た り入ったりしているに過ぎない場面であるが 原作を元に検証する と実に多くのナラティヴを含んだものであることが分かる 小説内 世界において 各回の終盤に新たな人物が登場しさらに誰かと出会 うこと それ自体が一つの大きな関心事であり また次回へと続く 物語を想起させる見せ場となっているように 映画においてもまた それぞれの事情を抱えた登場人物が 画面に出ては消える 出ては 消える の単純運動を繰り返す それだけのシーンが実はかなりド ラマティックなナラティヴの展開を内包していることが理解できる のである 夢の跡 のシーンは 西洋映画的な空間に 日本の大 衆小説特有の物語が存在するという異色の場面となっている 映画は この宇佐美家のシーン後 舞台を 眞木原家 高森家 荒澤家 さらに荒澤の義理の妹にあたる女優三輪糸子宅へと次々と 変遷し それぞれ原作に基づいてナラティヴを展開させながら進行 していく ここで着目すべきなのは この原作に基づいたシーンに おける各人物の配置が 新聞に連載された挿絵と類似した構成をも つことである 例えば 冒頭の お百度 のシーンで早苗と文夫が 並んで家族のことについて話す場面 図①②参照 難題 で早苗 が宇佐美家より借財を得なかったことで父直隆に叱責される寂れた 眞 木 原 家 の 和 室 に お け る 場 面 図 ③ ④ 参 照 倉橋と直隆が眞木原 家の和室で金策について密談する場面 図⑤⑥参照 また高森家 一六八 図⑤ 図⑥ 図⑦ 図⑧ 図① 図② 図③ 図④