意 年 7 月 13 日 税財政抜本改革と成長戦略の強力な推進による財政再建を望む 公益社団法人関西経済連合会 1. はじめにわが国の財政危機は いまや深刻な状況にある 国と地方を合わせた債務残高の対 GDP 比は 200% を超え OECD 加盟国の中で突出して高い これは財

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参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

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つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる

H28秋_24地方税財源

1. 復興基本法 復興の基本方針 B 型肝炎対策の基本方針における考え方 復旧 復興のための財源については 次の世代に負担を先送りすることなく 今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合うこととする B 型肝炎対策のための財源については 期間を限って国民全体で広く分かち合うこととする 復旧 復興のため

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参考 3 平成 27 年度税制改正に関する提言 ( 要約 ) 基本的な課題 Ⅰ. 社会保障と税の一体改革と今後のあり方 1. 社会保障制度のあり方に対する基本的考え方 我が国の社会保障制度は 中福祉 低負担 であり 高齢化社会の急進展により今後の社会保障給付は急速な増大が不可避とされることから 社会

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本要望に対応する縮減案 3 自動車の取得段階では消費税と自動車取得税が二重課税となっており 保有段階でも自動車重量税のほかに自動車税 ( 又は軽自動車税 ) の 2 つの税が課されており 自動車ユーザーに対して複雑かつ過大な負担を強いている 特に 移動手段を車に依存せざるをえず複数台を保有する場合が

目 次 (1) 財政事情 1 (2) 一般会計税収 歳出総額及び公債発行額の推移 2 (3) 公債発行額 公債依存度の推移 3 (4) 公債残高の累増 4 (5) 国及び地方の長期債務残高 5 (6) 利払費と金利の推移 6 (7) 一般会計歳出の主要経費の推移 7 (8) 一般会計歳入の推移 8


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資料9

概算要求基準等の推移

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PrimoPDF, Job 20

目 次 (1) 財政事情 1 (2) 一般会計税収 歳出総額及び公債発行額の推移 2 (3) 公債発行額 公債依存度の推移 3 (4) 公債残高の累増 4 (5) 国及び地方の長期債務残高 5 (6) 利払費と金利の推移 6 (7) 一般会計歳出の主要経費の推移 7 (8) 一般会計歳入の推移 8

(2) 消費税率 10% への引上げ時に導入が予定されている軽減税率制度については 消費税 地方消費税の引上げ分のうち地方交付税原資分も含めると 約 3 割が地方の社会保障財源であり 仮に減収分のすべてが確保されない場合 地方の社会保障財源に影響を与えることになることから 確実に代替財源を確保するこ

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平成 30 年 8 月 31 日 平成 31 年度の財政投融資計画要求書 ( 機関名 : 株式会社日本政策金融公庫 ( 特定事業等促進円滑化業務 )) 1. 平成 31 年度の財政投融資計画要求額 ( 単位 : 億円 %) 平成 31 年度平成 30 年度対前年度比区分要求額当初計画額金額伸率 (1

⑴ 政策目的本件は, 我が国において開発資金のための国際連帯税 ( 国際貢献税 ) を導入し, 持続可能な開発のための 2030 アジェンダ 等, 国際的な開発目標の達成に対応 貢献するために, 世界の開発需要に対応し得る幅広い開発資金を調達するもの これは, 外務省政策評価, 基本目標 Ⅵ 経済協

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改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

1 制度の概要 (1) 金融機関の破綻処理に係る施策の実施体制金融庁は 預金保険法 ( 昭和 46 年法律第 34 号 以下 法 という ) 等の規定に基づき 金融機関の破綻処理等のための施策を 預金保険機構及び株式会社整理回収機構 ( 以下 整理回収機構 という ) を通じて実施してきている (2

3 車体課税 自動車取得税の見直し 自動車取得税の税率 ( 一定税率 ) を以下のとおり引下げ ( 平成 26 年 4 月 1 日以降 ) 自家用自動車 ( 軽自動車を除く ) 5%( ) 3%( ) 営業用自動車 軽自動車 3%( ) 2%( ) いわゆる エコカー減税 について 環境性能に優れた

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注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

( 注 ) 年金 医療等に係る経費については 補充費途として指定されている経費等に限る 以下同じ (2) 地方交付税交付金等地方交付税交付金及び地方特例交付金の合計額については 経済 財政再生計画 との整合性に留意しつつ 要求する (3) 義務的経費以下の ( イ ) ないし ( ホ ) 及び (

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新とする理由⑴ 政策目的 車体課税については 平成 23 年度税制改正大綱において エコカー減税の期限到来時までに 地球温暖化対策の観点や国及び地方の財政の状況を踏まえつつ 当分の間として適用される税率の取扱いを含め 簡素化 グリーン化 負担の軽減等を行う方向で抜本的な見直しを検討 することとされて

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平成28年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について

第6回税制調査会 総6-3

2 / 6 不安が生じたため 景気は腰折れをしてしまった 確かに 97 年度は消費増税以外の負担増もあったため 消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない しかし 前回 2014 年の消費税率 3% の引き上げは それだけで8 兆円以上の負担増になり 家計にも相当大きな負担がのしかかった

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別紙2

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29 歳以下 3~39 歳 4~49 歳 5~59 歳 6~69 歳 7 歳以上 2 万円未満 2 万円以 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 28 年度 29 年度 21 年度 211 年度 212 年度 213 年度 214 年度 215 年度 216 年度

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第 7 章財政運営と世代の視点 unit 26 Check 1 保有する資金が預貯金と財布中身だけだとしよう 今月のフロー ( 収支 ) は今月末のストック ( 資金残高 ) から先月末のストックを差し引いて得られる (305 頁参照 ) したがって, m 月のフロー = 今月末のストック+ 今月末

資料 1 税財政制度を通じた論点 Ⅰ 現状と課題 1. 地方財政の財政の概要 地方財政の平成 23 年度決算は 歳入約 兆円 歳出 97.0 兆円となっている なお 借入金残高は約 兆円と依然と高い水準にある 国と地方における最終支出ベースにおける比率は 42:58 となって

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平成 29 年 4 月 12 日サイバーセキュリティタスクフォース IoT セキュリティ対策に関する提言 あらゆるものがインターネット等のネットワークに接続される IoT/AI 時代が到来し それらに対するサイバーセキュリティの確保は 安心安全な国民生活や 社会経済活動確保の観点から極めて重要な課題

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新設 拡充又は延長を必要とする理地方公共団体の実施する一定の地方創生事業に対して企業が寄附を行うことを促すことにより 地方創生に取り組む地方を応援することを目的とする ⑴ 政策目的 ⑵ 施策の必要性 少子高齢化に歯止めをかけ 地域の人口減少と地域経済の縮小を克服するため 国及び地方公共団体は まち

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意 11-02 2011 年 7 月 13 日 税財政抜本改革と成長戦略の強力な推進による財政再建を望む 公益社団法人関西経済連合会 1. はじめにわが国の財政危機は いまや深刻な状況にある 国と地方を合わせた債務残高の対 GDP 比は 200% を超え OECD 加盟国の中で突出して高い これは財政破綻したギリシャをはじめとする PIIGS 諸国をも大きく上回るもので しかもその残高は増加の一途をたどっている 加えて 年度予算に占める公債依存度は 50% 前後に達しており 2010 年度末の公債残高 642 兆円は一般会計税収の約 17 年分に相当するなど 極めて厳しい状況にある 急速な高齢化によって膨張し続ける社会保障費と将来見込まれる家計金融資産減少などの構造的な問題も抱えており このままでは国債の国内消化が困難になる可能性が高く 近い将来 国家財政の破綻が起こることも杞憂とは言えない この財政危機の中で未曾有の東日本大震災が発生した 地震 津波 原発事故が重なった複合的な大震災は ものづくりサプライチェーンの脆弱性やエネルギー供給の制約など 日本経済の弱点を顕在化させた 震災復興を通じてこうした弱点を克服するとともに 企業の国際競争力強化のための成長戦略の取り組みを強化していかなければならない 現状 震災を理由に成長戦略に関する種々の施策が棚上げにされているが むしろ震災後の危機状況ゆえに施策の実現を急ぐべきである 成長戦略の取り組みに遅れをとれば 震災復興に影響するのみならず 国内の生産基盤の空洞化と雇用喪失が一層加速されかねない さらに 電力の安定供給が成長戦略にとっての大前提であるにもかかわらず 現下の電力供給の不安と制約は震災復興と日本経済の成長にとっての大きな足かせとなり 当面の電力需給対策強化は急務である 未曾有の震災からの復興のためには新たな財政支出が必要となるが 日本経済にとって 財政再建は先延ばしできない最重要課題の一つである 東日本の復興を支えるとともに 震災前から直面していた財政危機の課題に対応するためには 当面の電力需給問題を乗り越え 財政規律を維持した復興財源の確保とともに 中長期的な歳出 歳入の一体改革と成長戦略の実行を強化していく必要がある 1

こうしたことから 当会は 税財政 マクロ経済シミュレーションの結果も踏まえ 財政再建に向けた取り組みのあり方と道筋について 以下の通り提言する 2. 財政再建に向けた取り組みのあり方 (1) 成長戦略の強化日本経済は 従来からの構造的な空洞化の流れがさらに深刻化する瀬戸際にある すなわち 世界最高水準の法人実効税率に代表される税負担に加えて 震災により 電力供給の制約が深刻化し 放射線懸念から日本製品のブランド力が大きく低下するなど 企業が日本国内に生産拠点を維持し続けることが極めて困難になりつつある それゆえ 企業の国際競争力を強化し 日本経済の潜在的な成長力を回復 向上させる成長戦略の実行は 震災によりさらに必要性が高まっている 財政再建の実現についても 中長期的な税収増を実現する経済成長なくしては不可能である このため 昨年 6 月に閣議決定された 新成長戦略 について 震災を受けて取り組みを一部見直すべきものはあるが 以下の必要な施策は早急に推進していくべきである 1 アジア主要国並みまでの法人実効税率引き下げわが国企業のビジネス活動の国際的なイコールフッティング確保のため 法人実効税率については遅くとも今後 10 年以内にわが国企業の主要な競争相手であるアジア主要国並みの水準 ( 約 20%) まで段階的に引き下げ 企業のキャッシュ フローに直接影響を及ぼす税の負担を一刻も早く軽減すべきである 2011 年度税制改正大綱に盛り込まれた 第一段階の法人実効税率引き下げについては 震災復興財源確保のために本年度の凍結はやむなしと考えるが 2012 年度からは段階的に実施するべきである 引き下げに当たっては 法人にかかわる課税ベースの拡大により減税効果を減殺するような方法はとるべきでなく 研究開発税制は強化し 技術革新による設備投資に対しては投資減税による税制支援を強化すべきである 2 TPP など経済連携の推進による貿易 投資の自由化国内の生産基盤の維持とグローバルなサプライチェーン強化のためには 諸外国 地域との経済連携の推進などによる貿易 投資の自由化が不可欠である 特に環太平洋パートナーシップ (TPP) 協定については 震災を理由に交渉参加の判断を遅らせるべきでなく むしろ震災を受けて空洞化が懸念される中 国を開く という決断の重要性は高まっている 2

3 当面の電力需給対策強化と中長期的なエネルギー 環境戦略の再構築電力は社会 産業を支える基本インフラであり 供給不安は国民生活や経済活動に大きな影響を直ちに及ぼす 電力供給の安定化は 産業の空洞化を防止するための最重要課題のひとつと言っても過言ではない 政府においては 責任を持って 必要な電力供給を確保し 需給の安定化を早急に実現していく必要がある こうした当面の電力需給対策強化に加えて 中長期的なエネルギー 環境戦略の再構築が求められる 戦略の再構築にあたっては 温室効果ガス削減の中期目標や個別政策を含め わが国の地球温暖化対策をゼロベースで見直すべきある わが国の低炭素社会構築のためには むしろ 環境と経済の両立 エネルギー セキュリティの確保 を大前提として 原子力 再生可能エネルギー 化石エネルギーのクリーン利用 省エネルギーなどのあらゆる分野で 安全で安定的なエネルギーの開発 供給に取り組む必要がある また わが国が保有する優れた環境 エネルギー技術やノウハウを海外へ移転 普及させる国際的な枠組みの構築 ( 二国間クレジット ) も積極的に推進すべきである 4 インフラの整備 更新 運営への PFI PPP の活用拡大 PFI PPP は 成長の梃子となる投資効果の高い大都市圏の都市基盤整備 運営や 環境 健康 福祉 防災などの広範な公共サービス さらにはストック老朽化に伴う更新投資において民間のノウハウを活用できる有効な手法である 一方で 財政面においてもわが国は国 地方を通じて危機的な状況にあり 公共事業予算が縮減される中で 質の高い公共サービスを維持していくためには民間の力の適切な活用も欠かせないものとなる こうしたことから 成長戦略と財政健全化を両立させる政策のひとつとして PFI PPP 手法の重要性を改めて認識し 民間の創意工夫と参入意欲を高める制度改革のさらなる推進やインフラファンドの育成などにより その活用拡大を図るべきである 5 農林漁業再生戦略の構築東日本大震災で農林漁業が大きな被害を受けたことから まずは事業再開のための初期投資や運転資金確保などへの支援を行い 震災からの復興を優先すべきである また 風評被害を克服し 日本の農水産物のブランド力回復によって輸出を伸ばす必要がある さらに 日本の農林漁業の成長に向けて TPP 参加を契機に事業体の大規模化や協同化などの新たな方策も含めて 競争力ある六次産業化への取り組みも強化していくべきである 3

6 高齢者の金融資産の現役世代への移転促進による消費喚起高齢化が進展する中 国内の消費需要喚起のためには 高齢者が保有する金融資産を現役世代に移転させることも有効である 例えば 従来の贈与税非課税枠に加えて 住宅取得などの使途に限定して非課税枠を拡大するなどの施策を講じることが求められる (2) マニフェスト施策 社会保障費を含む歳出全体の抑制 1 歳出に関するマニフェスト施策の見直しわが国の危機的な財政状況 この度の震災復興財源の確保を踏まえ 政府 与党は 子ども手当の廃止など 歳出に関するマニフェストの思い切った見直しを行い 歳出全体の一層の効率化と削減に取り組むべきである 2 社会保障費の抑制社会保障について 国民が安心できる持続可能な制度であるためには 財政再建と経済成長との両立の観点から 保障と負担のバランスのとれた 中福祉 中負担 を目指していくことが望ましいと考える そのため 中長期的には 年金 医療 介護などの社会保障費全体について 高齢化の進展度合いや税財政および経済の見通しなどを踏まえた総額管理目標を立てるのが有効と考える また 医薬品の公的保険対象範囲の見直しや ICT(Information and Communication Technology: 情報通信技術 ) 活用を通じた医療費の適正化 介護保険サービス対象の重点化 さらには年金のマクロ経済スライドを物価下落時においても実施するなど 抜本的な制度改革を伴わなくとも実行可能な施策は速やかに検討し 実行すべきである (3) 社会保障の安定財源確保のための消費税率引き上げ 1 社会保障制度再構築に先行した消費税率の段階的引き上げ年金制度をはじめ 社会保障制度の抜本的な再構築には超党派による議論を経て国民的なコンセンサスを形成する必要があり 拙速に解決し得る問題ではないと考える しかしその一方で 改革にかかる期間中にも社会保障費は膨らみ続け このままでは取り返しのつかない深刻な財政危機に陥る そのため まずは税財政抜本改革を先行させて財政破綻を防ぎつつ その間に改革実現に長期を要する社会保障制度の再構築に急ぎ着手し 着実に進めることが現実的である 高齢化の進展などに伴う社会保障費については 経常的に財政需要が増大していくものである これに適切に対応するためには 法人税などの直接税に過度に依存したわが国の税体系において 景気変動から影響 4

を受けることの少ない安定的な税収が期待できる間接税の消費税のウェイトを高める必要がある 具体的には 消費税率を今後 10 年以内に少なくとも 15% 程度まで段階的に引き上げるべきであり またこれは景気の動向を見極めつつ速やかに着手されるべきである 2 国民理解を得るための施策消費税率の引き上げに伴う低所得者層への配慮として 就労インセンティブがビルトインされた 給付付き税額控除制度 の導入が有効である このためにも 税と社会保障の共通番号制度を早期に導入する必要がある また 消費税収を社会保障に必要な財源として明確に位置づけ かつ社会保障費総額を管理するために 社会保障関係収支については 一般会計から分離した特別勘定 ( 社会保障特別勘定 ) を創設して管理するのが適当と考える この他 国会議員定数や国家公務員給与削減など 国会 政府が国民と痛みを分かち合うことも必要なことと考える (4) 震災復興と財政再建の両立東日本大震災からの復旧 復興にあたり 当面の財政支出の拡大が不可避となるが これには中長期的な財政再建との両立が必要である 加えて 復興財源確保については国民の十分な理解とマーケットの信認を得ることが必要との観点から 以下のような措置を講じるべきである 1 復興税 の導入復興財源については 他の国債と別枠の 復興債 の発行により賄い その将来の償還のため 国民に広く薄く負担を求める 復興税 を償還期限までの時限措置として導入することが適当である また 震災復興に関する歳出 歳入については 別勘定として財政規律の確保を明確にすべきである 復興税 については 国民全体で広く負担を分かち合うということと 経済への影響を最小限にすることに鑑みると 消費税率を一定期間 1% 程度上乗せすることが最も適当と考える また 国民の理解を得るためにも 消費税率引き上げについては 先に述べた社会保障費財源確保を目的としたものと 本項で述べる 復興税 としての引き上げは それぞれ目的ごとに別勘定として管理し 社会保障費財源部分の税率は段階的に引き上げつつ 復興税 部分の税率については 復興債 償還を区切りに引き下げるべきである 5

2 民間資金の活用民間の技術やノウハウが活用でき 将来的にキャッシュ フローが見込まれる復興事業については 民間資金を積極的に活用することを検討すべきである 3. 財政再建に向けた道筋 ( まとめ ) 当会では 関西社会経済研究所の協力を得て 東日本大震災からの復興への対応も織り込んだ上で 税財政 マクロ経済シミュレーションを行った その結果によれば 財政規律を維持した復興財源確保と税財政の抜本改革は当然のことながら 先に掲げた成長戦略の着実な実行を組み合わせなければ GDP の成長は望めず 結果としてプライマリーバランス (PB) の黒字化にも目途が立たないことが明らかである 2020 年度までの PB の黒字化を実現するためにも 政府ならびに与野党は一致協力して 財政再建と経済成長の両立に資する改革に一刻も早く着手されることを望む 以上 6