諮問庁 : 内閣総理大臣諮問日 : 平成 19 年 2 月 5 日 ( 平成 19 年 ( 行情 ) 諮問第 38 号 ) 答申日 : 平成 19 年 8 月 7 日 ( 平成 19 年度 ( 行情 ) 答申第 183 号 ) 事件名 : 平成 17 年 4 月から平成 18 年 9 月までの内閣官房報償費に係る支出負担行為即支出決定決議書等の一部開示決定に関する件 答申書 第 1 審査会の結論以下の文書 ( 以下 本件対象文書 という ) につき, その一部を不開示とした決定については, 審査請求人が開示すべきとする部分を不開示としたことは, 妥当である 1 内閣官房報償費 ( 平成 17 年 4 月から平成 18 年 9 月まで ) に係る内閣官房長官から内閣府大臣官房会計課長への請求書 ( 支出計算書の証拠書類 ) 2 1を受けて作成された支出負担行為即支出決定決議書 ( 支出計算書の証拠書類 ) 3 1を受けて作成された支出計算書 4 具体的な使途の分かる支出関係書類第 2 審査請求人の主張の要旨 1 本件審査請求の趣旨本件審査請求の趣旨は, 行政機関の保有する情報の公開に関する法律 ( 以下 法 という )3 条の規定に基づく本件対象文書の開示請求に対し, 平成 18 年 11 月 20 日付け閣総会第 291 号により内閣総務官 ( 以下 処分庁 という ) が行った一部開示決定 ( 以下 原処分 という ) について, その取消しを求めるというものである 2 本件審査請求の理由審査請求人の主張する審査請求の理由は, 審査請求書及び意見書によると, おおむね以下のとおりである (1) 審査請求書ア行政文書開示請求審査請求人は, 平成 18 年 10 月 19 日, 法に基づき, 内閣官房報償費 ( 平成 17 年 4 月から平成 18 年 9 月まで ) に係る内閣官房長官から内閣府大臣官房会計課長への請求書 ( 支出計算書の証拠書類 ) 等の開示請求を行った その際, これらには, 以下に例示するものが含まれているものと思われるので, 漏れのないよう開示をお願いする (1)1 金銭出納帳, - 1 -
2これを整理した月別の収入 支出表,3 目的別の分類表,(2) 分類としては, 例えば,1 会議費,2 飲食費,3 国会対策費,4 交際費, 5 パーティー ( 政治家の 励ます会, 出版記念, シンポジウム 等, 政治家への政治資金の支出 ),6 長官室手当, 秘書官室手当, 同窓会費, せん別, 香典, 背広, 商品券, 手土産 など私的費用への支出 と付記しておいた イ原処分当該開示請求に対して, 処分庁は, 平成 18 年 11 月 20 日, 具体的な使途の分かる支出関係書類 については全部不開示とし, 支出計算書については部分的に不開示とする処分を行った 処分庁は, このうち前者の文書に係る不開示理由として, 内閣官房報償費は, 事務又は事業を円滑かつ効果的に遂行するため, 当面の任務と状況に応じ, その都度の判断で最も適当と認められる方法により機動的に使用する経費であり, このような報償費の性格上, その具体的な使途に関する文書を明らかにすることは, 事務の円滑かつ効果的な遂行に支障を及ぼすおそれがあり, 法 5 条 6 号に該当する, また, 報償費の具体的な使途には, これを明らかにすることにより, 他国等との信頼関係が損なわれるおそれ, 他国等との交渉上不利益を被るおそれがあるものがあり, 法 5 条 3 号にも該当する としている ウ前者の文書に係る不開示処分の違法性しかし, 前者の文書に係る不開示処分は, 以下に記述する理由で違法である ( ア ) 法 5 条 6 号に該当するとは思われない ⅰ 内閣官房報償費の使途には, 法 5 条 6 号イないしホの情報が含まれているとは到底思われない 現に, 前者の文書に係る不開示理由もこれらに該当するとは明示してはいない ⅱ 処分庁は, 前者の文書に係る不開示理由は法 5 条 6 号柱書きの情報に該当すると言いたいのであろうが, 内閣官房報償費の使途には, このような情報が含まれているとは到底解釈され得ないし, また現に該当する情報があるとは思われない ⅲ 法の目的は, 国民主権の理念にのっとり, 行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により, 行政機関の保有する情報の一層の公開を図り, もって政府の有する諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに, 国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資すること ( 法 1 条 ) である以上, 不開示情報は, 行政機関がし意的に拡大して解釈することのないよう, 法 5 条 1 号から6 号までの規定を通じて, そ - 2 -
の内容及び範囲をできるだけ限定し, かつ明確にしている したがって, 法 5 条 6 号の不開示情報も, 実質的には同号イからホまでの情報に限定されると解釈するか, 又は, 同号イからホで挙げられるものを例示にすぎないと解するとしても, 同号柱書きの情報については, 同号イからホで挙げられているものに極めて類似する情報に限定されると解釈するしかない そうすると, いずれにせよ, 内閣官房報償費の使途には, 同号柱書きに該当する情報が含まれているとは思われない ⅳ 例えば, 会議費, 飲食費, 国会対策費, 交際費, パーティー ( 政治家の 励ます会, 出版記念, シンポジウム 等, 政治家への政治資金の支出 ), 長官室手当, 秘書官室手当, 同窓会費, せん別, 香典, 背広, 商品券, 手土産 など私的費用への支出についての情報は, 法 5 条 6 号イからホまでの情報には該当しないし, 柱書きにも該当しない ⅴ したがって, 具体的な使途の分かる支出関係書類 には, 法 5 条 6 号に該当する情報は含まれているとは思えないから, 当該文書に係る不開示処分は違法である ( イ ) 法 5 条 3 号に該当するとは思われない ⅰ 内閣官房報償費の使途には, 公にすることにより, 国の安全が害されるおそれ, 他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ 又は 他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ がある情報が含まれているとは到底思われない ⅱ 例えば, 会議費, 飲食費, 国会対策費, 交際費, パーティー ( 政治家の 励ます会, 出版記念, シンポジウム 等, 政治家への政治資金の支出 ), 長官室手当, 秘書官室手当, 同窓会費, せん別, 香典, 背広, 商品券, 手土産 など私的費用への支出についての情報が, 法 5 条 3 号に該当するとは到底解され得ない ⅲ したがって, 具体的な使途の分かる支出関係書類 には, 法 5 条 3 号に該当する情報は含まれているとは思えないから, 当該文書に係る不開示処分は違法である ( ウ ) 法 5 条 6 号又は3 号に該当する情報が含まれていたとしても, 部分開示がなされるべきである ⅰ 具体的な使途の分かる支出関係書類 には, 前述のように, 法 5 条 6 号又は3 号に該当する情報が含まれているとは思えないが, たとえいずれかの情報が含まれていたとしても, 全面的に不開示とする処分は, 明らかに違法である - 3 -
ⅱ 法 5 条 6 号又は3 号に該当する情報が含まれているのであれば, その部分を墨塗りにし, それ以外の情報については, すべて開示すべきである ⅲ これにつき, 法 6 条 1 項は, 行政機関の長は, 開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合において, 不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは, 開示請求者に対し, 当該部分を除いた部分につき開示しなければならない と規定しているから, 具体的な使途の分かる支出関係書類 についても, この規定に基づき, 部分開示が行われるべきである ⅳ なお, 法 6 条 1 項ただし書は, 当該部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認められるときは, この限りでない と規定しているが, 具体的な使途の分かる支出関係書類 には, 内閣官房長官の氏名, 支出金額, 支出年月日など 有意の情報 が記録されていると予想されるので, 当該ただし書は適用できない ⅴ 部分開示が可能であるにもかかわらず, そのような処分がなされないのは 毎月, 1 億円 ( 一部それとは異なる金額のときもある ) の内閣官房報償費が何件に分けられて支出されているのか, 一回の支出でいくらの金額が使われているのかなどの事実そのものが機密である との理解に基づくからであろうが ( 電話で話をすると, その旨の説明がなされている ), それは, 法に根拠があるわけではないから, 法に基づく運用とは言い難く, 明らかに違法な運用である ⅵ 例えば, 会議費, 飲食費, 国会対策費, 交際費, パーティー ( 政治家の 励ます会, 出版記念, シンポジウム 等, 政治家への政治資金の支出 ), 長官室手当, 秘書官室手当, 同窓会費, せん別, 香典, 背広, 商品券, 手土産 など私的費用への支出についての情報までもが, そのような理由で全面不開示となるのは, 国民が内閣官房長官の税金の無駄遣い, 違法又は不当な支出を監視する途を完全に閉ざすものである それらの情報は, 地方のいわゆる情報公開条例に基づけば開示される情報であるにもかかわらず, それが国の法であれば全面不開示とされるのは, あまりにもし意的な運用で, 違法である ⅶ したがって, たとえ 具体的な使途の分かる支出関係書類 に法 5 条 6 号又は3 号に該当する情報が含まれていたとしても, そのような場合には, 法 6 条 1 項に基づき部分開示がなされるべき - 4 -
であるから, 当該文書については全面不開示としている点で違法である (2) 意見書ア本件審査請求に係る文書本件審査請求に係る文書は, 平成 18 年 11 月 20 日付け閣総会第 291 号において不開示とされた 具体的な使途の分かる支出関係書類 ( 出納管理簿, 支出決議書, 報償費支払明細書及び領収書等 ) である イ法 5 条 6 号及び3 号を解釈するに当たって ( ア ) 法の解釈の指針 ⅰ 法 5 条 6 号及び3 号を解釈するに当たっては, 国民の知る権利, 国民主権の理念, 日本国憲法 91 条の規定の趣旨及び政府の説明責任を踏まえて, 不開示情報が, 諮問庁を含め政府のし意的な判断で不当に拡大しないよう限定すべきである ⅱ 国民には日本国憲法 21 条により 知る権利 が保障されている 法には 知る権利 が文言上明記されてはいないものの, 実質的には 行政文書の開示を請求する権利 ( 法 1 条及び3 条 ) として具体化されていると解すべきである ⅲ 日本国憲法が国民主権主義を採用していることは周知のことである 法は, その1 条で, 国民主権の理念にのっとり, 行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により, 行政機関の保有する情報の一層の公開を図り と規定している ⅳ 日本国憲法 91 条は, 内閣は, 国会及び国民に対し, 定期に, 少くとも毎年一回, 国の財政状況について報告しなければならない と規定している ⅴ 政府には, 国の支出を含め財政状況について説明責任がある 法は, その1 条で, 政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに, 国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする と規定し, その5 条で, 行政文書の開示義務 を規定している ⅵ よって, 政治的都合やし意的判断により不開示情報を拡大し, 法に基づく情報公開に不開示の 聖域 をつくるべきではないから, 法 5 条 6 号及び3 号の不開示情報については, 行政機関がそれを自らの政治的都合やし意的判断で拡大することのないよう, 限定的に解釈すべきである ( イ ) 法 5 条 6 号の不開示情報は限定して解釈すべきである ⅰ 上記 ( ア ) における理由により, 法 5 条 6 号の不開示情報は, - 5 -
そこで列挙されているイからホの情報に限定して解釈すべきである ⅱ 法 5 条 6 号の不開示情報は, このように限定列挙と解すべきであるが, 条文の形式の点から例示であると解するのが妥当であるとしても, 同号柱書きの不開示情報については, 同号イからホまでで挙げられているものに極めて類似する情報に限定されると解すべきである ウ 具体的な使途の分かる支出関係書類 の全部又は一部が不開示情報に該当しない理由 ( ア ) 法 5 条 6 号イないしホには該当しない ⅰ 諮問庁は, 当該文書が法 5 条 6 号イないしホに該当すると説明してはいない ⅱ 審査請求人も, 当該文書が法 5 条 6 号イないしホに該当しないと解するのが相当であると考える ( イ ) 法 5 条 6 号柱書きにも該当しない ⅰ 諮問庁は, 法 5 条 6 号は不開示情報を例示しているにすぎないと説明しているが, それは, 上記の理由により, 同号が不開示情報を限定列挙しているものと解すべきであるから, その解釈を誤っている ⅱ また, たとえ法 5 条 6 号が不開示情報を例示していると解するのが相当であるとしても, 不開示情報は, 同号イからホまでに極めて類似する情報に限定して解すべきであるが, 諮問庁は, 当該文書が, そのように限定される情報に該当するとの説明を一切行っていない これは, 諮問庁が, 不開示情報を同号イからホに極めて類似する情報に限定する解釈 運用を行っていないからであろう ⅲ 支出当時に使途が公開されると 当該事務又は事業の適正な遂, 行に支障を及ぼすおそれがある としても, 既に支出されているのであるから, 当該 おそれ はない ( ウ ) 法 5 条 3 号にも該当しない ⅰ 諮問庁は, 理由説明書で, 当該文書が法 5 条 3 号に該当するとの説明を行っていない ⅱ 内閣官房報償費の使途には, 公にすることにより, 国の安全が害されるおそれ, 他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ 又は 他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ がある情報が含まれているとは到底思われない ⅲ したがって, 具体的な使途の分かる支出関係書類 には, 法 5-6 -
条 3 号に該当する情報が含まれているとは思えない ⅳ 支出当時に使途が法 5 条 3 号に該当していたとしても, 既に支出されているのであるから, 同号には該当しない ( エ ) 不開示情報が含まれているとしても, 法 6 条 1 号による部分開示が行われるべきである ⅰ 以上説明したように 具体的な使途の分かる支出関係書類 は,, 法 5 条 6 号にも3 号にも該当しないが, たとえ両者あるいはそのいずれかに該当する情報が含まれているとしても, 法 6 条 1 項の規定がある以上, 全面不開示は違法であるから, 部分開示をすべきである ⅱ 内閣官房長官の氏名, 支出された年月日, 支出金額などは, それ自体, 法 5 条 3 号又は6 号に該当する情報とは到底解されない ⅲ 支出先及び使途についても, 原則として, 法 5 条 3 号又は6 号に該当する情報とは解されない ⅳ 例えば, ある野党の機関紙が過去に内閣官房報償費として支出されていたと報じた, 会議費, 飲食費, 国会対策費, 交際費, パーティー ( 政治家の 励ます会, 出版記念, シンポジウム 等, 政治家への政治資金の支出 ), 長官室手当, 秘書官室手当, 同窓会費, せん別, 香典, 背広, 商品券, 手土産 など私的費用への支出についての情報は, 地方における情報公開条例であれば当然に開示される情報であり, 法 5 条 6 号又は3 号に該当するとは到底解されないから, 印影以外はすべて開示すべきである このような情報が開示されなければ, 地方における情報公開条例の運用は後退しかねない エ過去の情報公開審査会 ( 現情報公開 個人情報保護審査会 以下 審査会 という ) 答申等との関係諮問庁の理由説明書によると, 審査会の過去の答申 ( 平成 15 年度 ( 行情 ) 答申第 275 号等 以下 先例答申 という ) を理由に, 全面不開示が妥当であり, かつ, その判断を基礎付ける諸事情は現在も何ら変わらないと説明するが, それは, 以下のような理由により失当である ( ア ) 先例答申は, 上記の理由により, 法の解釈 運用を誤ったものである ( イ ) 毎月 1 億円 ( 年間約 12 億円 ) の内閣官房報償費の使途については, それを 聖域 にし, 情報公開の闇にすることで, 国民の目の届かないところに置くというのは, 情報公開のための法を情報秘匿のための法と解釈 運用するに等しいので, 先例答申は, 法の解釈 - 7 -
運用を誤ったものである ( ウ ) たとえ先例答申が当時妥当であったとしても, その後, 事情の大きな変化があると認められるがゆえに, 先例答申の立場は見直されるべきである すなわち, 先例答申後, いくらまじめに働いても生活保護水準以下の生活を強いられるワーキングプアが国民の間に生み出され, いわゆる格差社会が大きな社会問題になり始め, そのことが国会でも大きく取り上げられるようになっており, そのため, 国民の間でもマスコミでも, 税金の使途については厳しい目で監視されるようになっている このように事情の大きな変化がある以上, 毎月 1 億円 ( 年間 12 億円 ) もの内閣官房報償費の使途については, これを 聖域 にせず, 公開して国民の知る権利に応えるべきであるし, また, 法は, その1 条で, 国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする と規定している以上, 内閣官房報償費の使途の是非, 当否については, 国民の判断に委ねるべきである ( エ ) したがって, 先例答申の立場は, 法の解釈 運用を誤ったものとして, あるいは, 当時とは事情が大きく変化したとして, 根本的に変更されるべきである ( オ ) また, 諮問庁の理由説明書は, 内閣官房報償費の使途を明らかにできない旨は, 国会においても政府として統一的に答弁している と言うが, それは, 全面不開示にする法的理由としてはふさわしいものではない ( カ ) 内閣官房報償費が, 例えば, 過去のように, 会議費, 飲食費, 国会対策費, 交際費, パーティー ( 政治家の 励ます会, 出版記念, シンポジウム 等, 政治家への政治資金の支出 ) 等として支出されていることが明らかになれば, 税金の無駄遣いあるいは違法な支出が行われてきたとして国会で追及されるが, これを回避するために政府が統一的に答弁をしているのではないか, と勘ぐられても仕方がない 国民を愚ろうするかのような法解釈 運用は厳に慎まなければならない それゆえ, 国会における政府の統一的答弁を全面不開示の理由にすることは, 法的にも政治的にも不当である オ結語以上により, 原処分は取り消され, 全面開示又は部分開示がなされることが相当である 第 3 諮問庁の説明の要旨 1 本件審査請求に係る文書本件審査請求に係る文書は, 閣総会第 291 号において不開示とされた - 8 -
内閣官房報償費の支出関係書類 ( 出納管理簿, 支出決議書, 報償費支払明細書, 領収書等 ) である 以下, 支出関係書類の不開示情報該当性について検討を加える 2 支出関係書類の不開示情報該当性について内閣官房報償費は, 国の事務又は事業を円滑かつ効果的に遂行するため, 当面の任務と状況に応じ, その都度の判断で最も適当と認められる方法により機動的に使用する経費である そして, 支出関係書類については, 内閣官房報償費の具体的な使途に係る情報が機微にわたるものであることから, 万一の情報漏れを防ぐため, 総理大臣官邸内において厳重に管理保管が行われており, さらに, 会計検査に際しては, 使途を明示し多数の者を介して行われる一般的な証明方法によることは適当ではないため, 会計検査院から要求があったときに証拠書類を提出する簡易証明が特に認められている このような内閣官房報償費の性格にかんがみれば, 仮に支出関係書類が部分的にであっても公にされ, 内閣官房報償費の使途に係る情報が明らかになった場合には, 内政, 外交等の事務の円滑かつ効果的な遂行に重大な支障を及ぼすおそれがあり, 支出関係書類は法 5 条 6 号に該当する また, これを公にすることにより, 他国等との信頼関係が損なわれるおそれ, 他国等との交渉上不利益を被るおそれもあるから, 支出関係書類は法 5 条 3 号にも該当する 以上より, 支出関係書類は全体として法 5 条 3 号及び6 号に該当し, これを不開示とするべきである 3 法 5 条 6 号の解釈に係る主張について審査請求人は, 法 5 条 6 号のイないしホに支出関係書類は該当せず, 原処分は違法であると主張する しかしながら, 法 5 条 6 号は, 国の機関が行う事務又は事業に関する情報であって, 公にすることにより, 当該事務又は事業の性質上, 当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものは不開示とするべき旨を包括的に定めているのであって, 同号イないしホについては例示的に列挙されたものと解すべきであるから, 審査請求人の主張は当たらない 4 先例答申等との関係なお, 内閣官房報償費の使途に係る文書については, これを全面不開示とすることが妥当である旨は, 既に先例答申においても正当として是認されているところであり, これらの先例答申の判断を基礎付ける諸事情については, 現在においても何ら変化していない また, 内閣官房報償費の使途を明らかにできない旨は, 国会においても政府として統一的に答弁しているところである - 9 -
5 結語以上より, 原処分は維持されるべきであり, 審査請求については, これを棄却するのが相当である 第 4 調査審議の経過当審査会は, 本件諮問事件について, 以下のとおり, 調査審議を行った 1 平成 19 年 2 月 5 日諮問の受理 2 同日諮問庁から理由説明書を収受 3 同年 3 月 8 日審査請求人から意見書を収受 4 同年 5 月 9 日審議 5 同年 6 月 18 日本件対象文書の見分及び諮問庁の職員 ( 内閣官房内閣総務官ほか ) からの口頭説明の聴取 6 同年 7 月 4 日審議 7 同年 8 月 3 日審議第 5 審査会の判断の理由 1 本件対象文書について本件対象文書は, 平成 17 年 4 月から平成 18 年 9 月までの内閣官房報償費に係る, 内閣官房長官から内閣府大臣官房会計課長への請求書, 支出負担行為即支出決定決議書, 支出計算書及び支出関係書類である 原処分においては, このうち, 請求書及び支出負担行為即支出決定決議書についてはそのすべてが開示され, 一方, 支出計算書についてはその一部が, また, 支出関係書類についてはそのすべてが, それぞれ不開示とされている なお, 内閣官房報償費とは, 国の事務又は事業を円滑かつ効果的に遂行するため, 当面の任務と状況に応じ, その都度の判断で最も適当と認められる方法により機動的に使用する経費であり, 具体的な使途が特定されない段階で国の会計からの支出が完了し, その後は基本的な目的を逸脱しない限り取扱責任者である内閣官房長官の判断で支払が行われるとともに, その使用は, 内閣官房長官という政治家による政治的な判断の下で決定されるという特殊な性格を有していることが認められる 2 不開示情報該当性について審査請求人は, 原処分において不開示とされた部分のうち, 内閣官房報償費の支出関係書類について開示を求めているので, 以下, 当審査会において当該文書を見分した結果に基づき, その不開示情報該当性を検討する (1) 支出関係書類の構成について当審査会において支出関係書類を見分したところ, 当該文書は, 内閣官房報償費について, 国の会計からの支出が完了し, 取扱責任者である内閣官房長官の手元に渡ってから, 内閣官房長官が自らの判断により支払を行う際に作成される文書であり, 具体的には, 出納管理簿, 支出決 - 10 -
議書 ( 政策推進費受払簿及び支払決定書に細分化される ), 報償費支払明細書及び領収書等で構成されていることが認められた なお,1 出納管理簿は, 内閣官房長官が国庫からの支払を受ける都度又は役務提供者等への支払を行う都度記帳される文書,2 支出決議書のうち政策推進費受払簿は, 内閣官房報償費のうち政策推進費 ( 施策の円滑かつ効果的な推進のため, 内閣官房長官としての高度な政策的判断により, 機動的に使用することが必要な経費 ) について, その受払を記録する文書,3 支出決議書のうち支払決定書は, 内閣官房報償費のうち政策推進費以外の調査情報対策費 ( 施策の円滑かつ効果的な推進のため, その時々の状況に応じ必要な情報を得るために必要な経費 ) 及び活動関係費 ( 政策推進費及び調査情報対策費に係る活動が円滑に行われ, 所期の目的が達成されるよう, 当該活動を支援するために必要な経費 ) について, 役務提供者等への個々の支払の都度, 当該支払の確認を行うための文書,4 報償費支払明細書は, 使途を目的別に分類した上で, 毎月の支払額を記載した文書であり, 計算証明のため会計検査院に提出されているもの,5 領収書等は, 役務提供者等への支払が行われる際に, 支払の確認のため収受等を行っているものである (2) 不開示情報該当性について諮問庁は, 内閣官房長官による優れて政治的な判断に基づき執行されるという内閣官房報償費の性格上, 支出関係書類を公にすることでその具体的な使途が明らかとなれば, 内閣官房報償費の機動的な運用を損ない, 内政, 外交等の円滑な遂行に重大な支障を及ぼすおそれがあるとともに, 他国等との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国等との交渉上不利益を被るおそれがあることから, 当該文書は, 法 5 条 6 号及び3 号の不開示情報に該当し, 万が一の情報漏れを防ぐため, 総理大臣官邸内において厳重に管理 保管し, さらに, 会計検査に際しては, 他の経費と異なり, 使途を明示し多数の者を介して行われる一般的な証明方法によることが適当でないとして, 会計検査院から要求があったときに証拠書類を提出する簡易証明が特に認められていること等, 極めて特殊かつ機微な情報として特別な取扱いを行っていると説明する 当審査会において, 支出関係書類に含まれる個々の文書を見分し, 精査したところ, これらの文書には, 内閣官房報償費の使途, 支払相手方等に関し個別具体的な記載がなされており, その内容が機微にわたることが認められ, その中には, 公にすることにより, 他国等との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国等との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があると考えられるものが認められた - 11 -
また, これらの文書については, 仮に使途等に関する直接的な記載に係る部分を除いて開示したとしても, 特定時期における文書の作成量が, 当該時期における内閣官房報償費の三つの目的類型 ( 政策推進費, 調査情報対策費及び活動関係費 ) ごとの使用量や支払件数に応じているという状況から, 当該時期の内政 外交状況と照らし合わせること等により, その使途を推測させることとなる事情が認められた 上記諸事情及び当審査会の実際の見分に基づく検討を併せ, 総合的に勘案すれば, 内閣官房報償費の支出関係書類を一部でも公にすることにより, その機動的な運用を損ない, その結果, 事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり, また, 他国等との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国等との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由があると認められることから, 当該文書は, 法 5 条 6 号柱書き及び3 号の不開示情報に該当すると認められる 3 審査請求人の主張について審査請求人は, 法 5 条 6 号の不開示情報は, 公にすることにより同号イないしホのおそれがある情報に限定される旨主張しているが, 同号イないしホは, 各行政機関に共通的に見られる事務又は事業に関する情報について, 公にすることによる典型的な支障を挙げたものであって, これら以外の事務又は事業に関する情報についても, 公にすることにより当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるのであれば, 同様に同号柱書きの不開示情報に該当するのであるから, 審査請求人の当該主張は採用できない また, 審査請求人は, 支出関係書類について, 法 6 条 1 項による部分開示をすべき旨主張しているが, 上記のとおり, 当該文書についてはその一部でも公にすることにより法 5 条 6 号柱書き又は3 号のおそれが生じるのであるから, 法 6 条 1 項による部分開示はできない さらに, 審査請求人はその他種々主張するが, いずれも審査会の上記判断を左右するものではない 4 本件一部開示決定の妥当性について以上のことから, 本件対象文書につき, その一部を法 5 条 3 号及び6 号に該当するとして不開示とした決定については, 審査請求人が開示すべきとする部分は同条 3 号及び6 号柱書きに該当すると認められるので, 不開示としたことは妥当であると判断した ( 第 2 部会 ) 委員寳金敏明, 委員秋田瑞枝, 委員橋本博之 - 12 -