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43 歯科用ジルコニア Zpex の着色グレードと 透光感を高めた Zpex Smile 無機材料研究所 1 はじめに セラミックスグループ 藤崎 河村 浩之 清隆 2 Zpex への新たな色調付与 歯の修復材料には貴金属や Ti 等の金属材料 高分 自然な歯の色調に着色するためには 従来 既報で 子材料 又はアルミナ等のセラミックス材料 及びそ 報告した様に Zpex に Fe 成分を含有する Zpex れらの複合材料が使用されている 特にセラミックス Yellow を混合して任意の色調としていたが ユー は金属材料と比べて審美性 生体適合性に優れ 高硬 ザーからはさらに赤味や黒味を付与し さらに自然な 度 高強度なため 歯の修復材料に適した材料である 色調の実現を期待する声が上げられている 近年 欧州で CAD CAM システムが発表されて以降 ジルコニア焼結体に赤味を付与する添加元素として 歯の修復に用いるセラミックスの中でも特に高強度で は Er が有効であり Zpex Pink は鮮やかな赤味 ピ 審美性に優れるジルコニア焼結体への関心が高まり ンク色 のジルコニア焼結体が得られる 図1 以降 歯科用修復材料としてジルコニア焼結体の使用 一方 ジルコニア焼結体に黒味を付与する方法とし が拡大している ジルコニア焼結体は他のセラミック て 例えば添加元素として市販の黒色顔料として用い スよりも高い強度が達成されるため 臼歯部ブリッジ られている Fe Co Mn Cr 等の複合酸化物を混合 や多ユニットブリッジの作成も可能という利点もその した場合には ジルコニア焼結体中でそれらの複合酸 使用に拍車をかけている 化物粒子が透光感を低下させ さらに その様な複合 一方 従来のジルコニア焼結体は白色であり 自然 歯と比較して透光感も不足していた さらに従来はジ ルコニア焼結体のフレームにポーセレンを築盛して自 酸化物を用いた場合 焼結体表面に黒色斑点が識別さ れるという問題があった 我々は Zpex を歯科シェードガイドに用いる場 然歯に近い透光感と色調が付与されていたのに対し 合には ベース色の黄色味をつけるために Zpex 近年 Full Contour や Full Anatomic 又は Full Yellow が混合されて焼結体中には一定量の Fe が存 Crown と呼ばれるポーセレンを極力使用せず ジル 在することに着目し Fe と反応して黒色を呈する Co コニア焼結体のみで義歯を作製することが求められる 成分の添加による Zpex Gray を開発し 均一な 様になり ジルコニア焼結体そのものの透光感向上と 黒味を付与する方法を採用した 図2 着色の付与が強く求められる様になってきた 我々は 他社に先駆けて透光感に優れたジルコニア 焼結体を常圧焼結で得られる透光感焼結体用ジルコニ ア粉末 Zpex 及びそれに必要な色調を付与する ための着色透光感焼結体用ジルコニア粉末 Zpex 図1 Zpex Pink によるピンク色色調ジルコニア焼結体 Yellow を製品化し 2012 年度版 東ソー研究 技術 報告 56 既報 で技術概要を紹介した そ の 後 VITA 社 の VITAPAN classical と 同 等 な色調が再現できる Zpex の着色透光感グレー ド 更に透光感を向上した新グレード Zpex Smile を相次いで開発上市し 2014 年 2 月に発表してきた 本報ではこれら Zpex の着色改良グレードと 特 に高い透光感を有する新グレード Zpex Smile に ついて その技術概要を紹介する 図2 Zpex グレード粉末の配合比による色調変化

44 TOSOH Research & Technology Review Vol.58(2014) またこれら赤味 黒味の組成の組合せによって さらなる中間色の調整も任意に可能である 3. さらなる透光感付与をした Zpex Smile の開発先に開発した Zpex は 従来の焼結体に比べると高い透光感を有するが 前歯に用いるにはもう一段高い透光感が求められていた 従来 前歯用に使用されている歯科材料はガラスやレジンが主流であり それら材料の透光感は高いが 低強度 (400MPa 程度 ) のためにシングルユニットの義歯用に限られていた 我々は Zpex Smile を開発するにあたっての強度目標を 3 ユニットの義歯までに対応できる強度 500MPa 以上とし Zpex よりも透光感をさらに向上させた Zpex Smile を開発した 尚 Zpex Smile の着色グレードの曲げ強度も 600MPa に設計しており Zpex Smile グレードで混合したシェードガイド色調焼結体の曲げ強度も全て 600MPa が得られる Zpex Smile とその着色グレードの焼結体粒子径は同等であり 着色元素やアルミナの析出は無い ( 図 3) 焼結過程で着色元素の Fe や Co は十分に拡散するため 色ムラのない均一色調の焼結体が得られる 4. 焼結体の各種特性 [1] 評価用焼結体の調製 φ 25mm 金型に 3g または 5g の粉末を入れ 一軸プレス成形により 19.6MPa の圧力下にてプレス成形体を作成した その後 プレス成形体を 196MPa の圧

東ソー研究 技術報告 第 58 巻 2014 45 3 焼結体の光学特性 1 無着色焼結体 各種グレードの無着色焼結体での光透過性の外観 目視比較 を図4に示した 図3 Zpex Smile 焼結体の結晶粒子 1450 焼結 力で CIP 成形した CIP 成形体を 1000 で 1 時間保 持して脱脂及び仮焼を行い 常圧焼結により焼結体を 得た 焼結条件は昇温速度 600 hr 1450 で 2 時 間保持した 降温速度は 600 hr 焼結に要した時 間は約 7 時間とした 図4 各グレードでの焼結体透光感比較 3g 焼結体は両面を研削し その両面を鏡面になる まで研磨して 厚さ 1mm の焼結体として全光線透過 汎用グレードの TZ 3YSB E は 1500 焼結体で 率を測定した また 5g 焼結体は片面を研削し 研 全光線透過率 35 であるのに対して 透光感グレー 削した面を鏡面になるまで研磨して 厚さ 2.8mm の ドの Zpex では 1450 焼結で全光線透過率 41 が 焼結体として色差計で色調 L a b を測定した 達成される さらに新グレードの Zpex Smile で は 同様の 1450 焼結で全光線透過率 49 まで向上 し 1mm 厚さの焼結体では背景の文字も認識できる 2 全光透過率測定 全光線透過率の測定は濁度計 日本電色工業 株 製 ようになった また 焼結体厚さが 0.6mm 以下では 型式 NDH2000 を用いて JIS K 7361 に準拠して測 背景の文字が明瞭に判別できるほどの高い透光感が得 定した 光源としては光源 D65 を使用した られている また 紫外可視近赤外分光光度計 日本分光株式会 2 着色焼結体 社製 型式 V 650 に直径 150mm 積分球ユニット Zpex グレード 及び Zpex Smile グレード 形式 IVL724 を取り付けて波長 220 850nm の光 の各配合で作成した VITA シェードガイド色調の焼結 に対する全光線透過率を測定した 図5 体見本を図5に示した VITAPAN classicalカラーシェドと色調調整したジルコニア焼結体 右下数値はD65光源での全光線透過率

46 TOSOH Research & Technology Review Vol.58(2014) また A シェードガイド色調焼結体の紫外可視近赤外分光光度計での透過率測定結果をそれぞれ図 6 図 7に示した いずれのグレードを用いたシェードガイド色調焼結体も Er 由来の吸収パターンが観測される Zpex グレードと Zpex Smile グレードのシェードガイド色調焼結体の違いは絶対的な透過率にあり 同一のシェードガイド色調においては Zpex Smile グレードの焼結体は Zpex グレードの焼結体より高い透光性を有している 特に Zpex Smile は A 3.5 A4 焼結体での可視光透過率の低下が小さく 幅広い波長で高い透光性が達成されている [4] 焼結体の水熱劣化耐性ジルコニアの水熱劣化とは 水熱環境下でジルコニアの結晶相が正方晶から単斜晶に相変態する現象であり ジルコニア焼結体が水熱劣化するとその全光線透過率は低下する 生体材料用の水熱劣化試験としては ISO13365(2008) における加速試験 ( オートクレーブを用いた 134 水中で 5hr の水熱処理 ) が標準的であるが 本検討ではさらに厳しい加速試験 (140 24hr 72hr の水熱処理 ) を行った Zpex Smile グレードでは 焼結温度を 1600 としても 水熱処理による焼結体表面の Monoclinic への変態が無く 全光線透過率は変化しなかった ( 表 3) Zpex Smile では焼結温度 1500 付近で最も高い全光線透過率が得られ Zpex Smile-Yellow では焼結温度が高いほど全光線透過率が向上した ( 表 4)

東ソー研究 技術報告第 58 巻 (2014) 47 5. Zpex Zpex Smile を用いた歯科シェー ドガイドの作製 Zpex Zpex Yellow Zpex Pink 及 び Zpex Gray の粉末混合により VITA 社の VITAPAN classical 16 色のシェードガイド色調を 再現することができる ( 図 5 上段 ) 同様に Zpex Smile Zpex Smile-Yellow Zpex Pink 及び Zpex Smile Gray の粉末を使用することで全光線透過率を 20%~ 70% 向上させたシェードガイド色調の焼結体を得ることができる ( 図 5 下段 ) 何れも 1450 焼結体の色調であり 先に述べた Zpex Smile Yellow の全光線透過率の向上は焼結温度の増加により焼結体色調が薄い色調に変化したためである ( 表 5) よって 高い焼結温度を選択する場合は シェードガイド色調は薄く変化することになる 各粉末の混合は各グレードの顆粒粉末をポリ袋等の中で均一になる様に混合してもよいが より均一性を上げるためブレンダー等の機械で混ぜ合わせてもよい Zpex Gray Zpex Smile Gray 以外の粉末を混合した場合 混合後の粉末や成形体は黄色い色調となる 一方 Zpex Gray Zpex Smile Gray の各粉末を配合した場合は 粉末及び成形体に薄い斑点が認められる しかしこれらの斑点は 仮焼処理により白色の仮焼体となり 斑点は判別されなくなる 6. おわりに透光感焼結体用ジルコニア粉末 Zpex グレードは Zpex Yellow Zpex Pink 及び Zpex Gray の各着色グレードと混合 常圧焼結することにより 透光感に優れ 幅広い色調でなおかつ 1000MPa 以上の高強度焼結体が得られ 4 ユニット以上の義歯にまで対応可能である また このたび新たに市場投入した新グレード Zpex Smile は 同様の常圧焼結で Zpex よりさらに高い透光感の焼結体が得られ 強度も 600MPa 以上に設計されているため 前歯にも用いることができる それぞれグレード粉末の混合により歯科シェードガイド色調の調整が可能であり 従来のディッピング等の修飾加工を用いなくても透光感に優れ 均一に着色した焼結体が得られる また いずれの焼結体も高い耐水熱劣化耐性を有している 今後 さらに色調のバリエーションを広げて 各種色調の微調整に対応できる透光感グレードを開発し ユーザーニーズに対応する所存である 参考文献月刊歯科技工別冊月刊歯科技工 11(2007) 三浦宏之 宮崎隆 / 編補綴臨床別冊堀三郎著強靭ジルコニア藤崎浩之 河村清隆 今井紘平 東ソー研究 技術報告 56 57 61(2012) Dentistry Ceramic materials INTERNATONAL STANDARD ISO 6872 伴清治 補綴臨床 Vol.47 No.1 2014.1 特開 2013 49616 WO2013 /018728