目次 第 1 章金融の基礎知識 1 1 金融の機能 2 1. 資金仲介機能 4 2. 信用創造機能 6 3. 資金決済機能 8 2 金融市場 9 1. 金融市場 9 2. 短期金融市場 11 3. 長期金融市場 12 3 金利 13 1. 金利 13 特別研究 貯金金利と貸出金利 14 2. 利息の計算 15 第 2 章信用事業の業務 17 1 貯金業務 18 1. 貯金業務を規定している条文 18 2. 貯金の目的 20 3. 貯金の種類 22 4. 貯金取引と法律 ( その1 法的側面) 25 5. 貯金取引と法律 ( その2 規定) 27 6. 貯金取引と法律 ( その3 情報の提供) 31 7. 取引時確認 33 8.JAバンク セーフティネット 37 9. 普通貯金取引 39 10. 決済用普通貯金取引 44 11. 当座貯金取引 46 12. 定期貯金取引 50 i
13. 総合口座 54 14. 定期積金 56 15. 財形貯蓄 58 16. 貯金利息と税金 61 17. 貯金の相続 64 18. 手形 小切手の知識 67 (1) 手形要件 67 (2) 小切手要件 71 (3) 手形 小切手の受入 73 (4) 手形交換 76 (5) 不渡 78 19. 届出事項の変更 82 20. 事故届 84 2 貸出業務 86 1.JAの融資の特色 86 2. 貸出業務を規定している条文 89 3. 融資の5 原則 90 4. 貸出の種類 91 5. 手形貸付 93 6. 証書貸付 95 7. 手形割引 97 8. 当座貸越 98 ( 研究 )JA 統一ローン 100 9. 担保 保証の基本事項 101 (1) 担保 101 (2) 保証人 103 10. 融資事務の基本 ( その1 借入申込の受付) 105 11. 融資事務の基本 ( その2 審査 決定) 106 12. 融資事務の基本 ( その3 情報管理) 109 13. 融資事務の基本 ( その4 貸出実行) 111 14. 融資事務の基本 ( その5 事後管理 回収事務) 113 ii
3 為替業務 116 1. 為替 116 2. 為替の種類 117 3. 為替取引の当事者 119 4. 送金為替 121 (1) 送金 121 (2) 振込 122 5. 代金取立 124 6. 全国銀行内国為替制度 126 7. 為替事務の重要チェックポイント 129 8. その他決済業務 131 (1) クレジットカード 131 (2) デビット カード 132 (3) 受入代理事務 ( 税金 公共料金等収納 ) 132 (4)JAネットバンキング 133 4 証券業務 135 1. 証券の基礎知識 135 (1) 証券 135 (2) 証券市場 136 (3) 公社債 136 2. 資産運用 138 (1) ポートフォリオの必要性 138 (2) 証券投資信託 141 (3) 国債等の窓口販売など 144 (4) 少額投資非課税制度 146 iii
第 1 分冊信用事業業務の基礎知識 第 2 章信用事業の業務
第 1 分冊信用事業業務の基礎知識 2. 信用事業の業務 1 貯金業務 1. 貯金業務を規定している条文 貯金業務を規定している条文について貯金業務は 金融機関として法人 個人の顧客の大切な財産をお預かりする業務であり 出資法 において 法律で規定された金融機関以外が貯金業務を行うことは禁止されている JAや銀行などの金融機関は 特別に法律で認められ貯金業務を行っているので 事業の運営については高い公共性と健全性が求められている JAの事業の範囲は 農業協同組合法 ( 以下農協法 )( 第 10 条 ) に規定されており 貯金業務については 同条第 1 項に 組合員の貯金又は定期積金の受入 として定められている ここでいう組合員とは みなし組合員と准組合員を含んだ概念である 又 農協法において 組合員以外の利用者が組合員の利用を妨げない範囲で利用 ( 事業の員外利用 ) することを認めており JAは地域経済の広範囲にわたる顧客に利用いただいている 解説 貯金業務は顧客の大切な金銭的財産をお預かりする業務ですから 誰もが勝手に行えるものではありません 出資法 ( 出資の受入れ 預り金及び金利等の取締りに関する法律 第 2 条 ) において 業としての貯金業務 ( 不特定多数の者からの貯金 貯金又は定期積金の受入 ) は 法律で特別に規定のある者以外誰も行えないとしています JAが日々行っている貯金業務というのは それだけ特別に限定された公共性 18
の高い業務なのですから健全な運営に努めなければいけません JAの貯金業務は 農協法で規定されています 農協法第 10 条に JAが行うことのできる事業の範囲が定められており この中で 組合員の貯金又は定期積金の受入 ができるとされています ここでいう組合員とは みなし組合員や准組合員も含まれています みなし組合員とは 組合員と同一世帯に属する者及び営利を目的としない法人をいいます 准組合員は 地区内に住所を有する個人などで組合の施設を利用することを相当として組合に出資した者をいいます では 組合員以外の者の貯金は受入できないかというと 農協法では組合員の利用を妨げない範囲での員外利用が認められています すなわち 組合は定款の定めるところにより 1 事業年度における組合員以外の利用分量の総額がその事業年度における組合員の事業利用分量の原則として5 分の1( ただし 貸付 貯金 定期積金 手形割引は100 分の25 なお 貸付と手形割引を併せ行う場合は 合計額で算定される ) を超えない範囲で組合員以外にその施設を利用させることができるとされています 従って たとえば 組合員の貯金が1,000 億円ある組合では 250 億円までの員外貯金を受入れることができます このようにJAは 組合員だけでなく地域経済の広範な顧客にご利用いただいており JAの健全な運営が強く求められています また 農協法第 11 条では JAが信用事業を行おうとする場合には 信用事業規程 を定め 行政庁の承認を受けなければならないとしています 信用事業規程には 信用事業の種類 事業の実施方法に関して省令で定める事項を記載する必要があります 必要な記載事項とは 貯金業務 貸出業務 為替業務など信用事業の種類や 貯金の利率などです 事業の詳細については 信用事業方法書 を作成するものとし その制定 変更 廃止については理事会の議決を経て行政庁に届け出る必要があります ( 農業協同組合及び農業協同組合連合会の信用事業に関する命令 第 7 条 ) 貯金業務を行う組合に対しては 行政庁は必要なときにいつでも 当該組合の業務や会計の状況を監査することができます そして 必要があれば 当該事業に関し定款 規約 信用事業規程などの諸規定の変更や業務執行方法の変更 業務の全部又は一部の停止 財産の供託の命令 財産の処分の禁止あるいは制限その他監督上必要な命令を行うことができるとされています 19
2. 貯金の目的 貯金の目的にはどのようなものがあるか貯金の目的を大別すると次の4つとなる 1 金銭の安全な保管 大切な金銭的財産を火災や盗難から守る 2 利殖 利息や分配金を受け取る 3 貯蓄 金銭を貯める 4 金銭の受払いの委託 公共料金の支払 給与の受取など JAに来店される顧客は それぞれ異なった多様な貯金目的を持っており 金融商品をお勧めするにあたっては 顧客の貯金目的を十分理解し 目的に合った商品を提案する 解説 日本銀行の金融広報中央委員会が毎年行っている調査によると 家計の貯金の目的は 老後の生活資金 と 病気や災害への備え の2つが高く 子どもの教育資金 がこれらに続いています 世帯主の年齢別に見ますと 20 歳から40 歳では 子どもの教育資金 が最も高いのに対して 高年齢層ほど 老後の生活資金 や 病気や災害への備え の割合が高まっており 年齢層によって貯蓄の目的に特徴があります JAには 様々な顧客が来店されますから 貯金の目的も多様です 事業をしている顧客であれば 毎日の売上金を貯金に預入し その資金を裏づけとして小切手を発行し 仕入代金を支払うといった利用方法が考えられます また 家庭の主婦であれば 電気 ガス 水道 電話などの公共料金の自動支払サービスを利用するために貯金する人も少なくないでしょう そこでまず JAの役職員は一人ひとりの顧客の貯金目的を正しく理解し 目的に合った貯金や機能サービスを提案する必要があります 貯金の目的を整理すると 以下の4つに大別できます (1) 金銭の安全な保管 現金などを JA に預ければ 残高はつねに通帳に表示され 火災や盗難によって失 20
う心配もありません ですから 金銭の安全な保管という目的は すべての貯金者が 共通して持っています (2) 利殖 JAは貯金者から受け入れた貯金を組合員や事業法人等に貸し出すことによって運用し その見返りとして貯金者に利息を支払います この利息を得ること つまり利殖も貯金の大きな目的です 顧客の金利選好意識はますます高まってきています より多くの利息を受け取れる貯金及び金融商品が ますます人気を集めることになります (3) 貯蓄 金銭を貯める ことを貯蓄といいますが この貯蓄も大きな貯金目的のひとつです 貯蓄は何らかの目的で金銭を貯めることですが この貯蓄と利殖は密接なつながりを持っています 同じく金銭を貯める場合でも 貯金の場合は 貯金箱に貯めるのと異なり 利息も加わります 貯蓄を目的とする貯金者は 同時に利殖も目的としているのが一般的です (4) 金銭の受払いの委託金銭の受払いの委託も貯金目的のひとつです 企業が商品の販売代金を振り込んでもらうための口座として あるいは仕入代金の支払に小切手 手形を使うために当座勘定を利用する場合は まさに金銭の受払いの委託を目的としています また 個人の場合でも 給与振込 年金 配当金などの受取 あるいは公共料金 学費などの支払やローンの返済に貯金を利用するケースが多いのですが これも金銭の受払いの委託を目的としているわけです 実際に窓口に来店される顧客は ひとつの目的だけで貯金をするということは少なく 複数の目的を持っているのが一般的です JAでは 様々なタイプの貯金が用意されていますが 顧客のニーズに合った貯金を勧めるためには 貯金の種類と機能を十分理解しなくてはいけません 21
3. 貯金の種類 貯金はどのように分類されるか貯金は 預入期間の定めの有無により 流動性貯金と定期性貯金に分類できる 流動性貯金は 預入期間の定めがなく 要求払性貯金ともいわれている 流動性貯金には 当座貯金 普通貯金 貯蓄貯金 通知貯金などがある ( 通知貯金は 一定の据置期間 (7 日間 ) があるが一般的には流動性貯金に含める ) 定期性貯金は 預入期間の定めがある貯金であり スーパー定期 大口定期貯金 譲渡性貯金 定期積金などがある 解説 貯金は 預入期間の定めの有無によって 流動性貯金と定期性貯金に分類することができます 流動性貯金は 要求払性貯金ともいわれ 顧客から払戻の要求があれば ただちに支払に応じる貯金です これに対して定期性貯金は 預入期間を定め その期間中は払戻を行わないことを条件に受入れる貯金です なお 通知貯金は 一定の据置期間が設けられていますが 据置期間は多くは7 日間と短いことから 流動性貯金に分類するのが一般的です しかし 現在では貯金商品を自由に設計できるので 1カ月の据置期間を設けている金融機関も出現しており 定期貯金との区分が不明確になってきています 定期積金は法律的には貯金ではありませんが 実体としては定期性貯蓄ですので 定期性貯金に分類しています JAとしては より安定した資金を調達しておくことが望ましく 流動性貯金よりも預入期間の長い定期性貯金の方が また 同じ定期性貯金でも 預入期間が長いほど より安定した資金となります 一般的には 長期間の運用は短期間の運用に比べて より高い収益を得ることができるので 定期性貯金には流動性貯金より高い利息がつきます ただし 流動性貯金でも 多数の顧客から受け入れた場合 払い出されないで残っている貯金残高が多くなり その部分は安定した資金となります その上 22
流動性貯金は 定期性貯金に比べて支払利息の負担が少ないというメリットもあります 一方 顧客の貯金目的から考えると 預入期間が決まっており かつ高い利息のつく定期性貯金は 貯蓄 利殖 に向いており 預入れおよび払戻しが自由な流動性貯金は 金銭の受払委託 に向いているといえます 貯金の種類 流動性貯金 主な流動性貯金には次のような種類があります 1 普通貯金 : 金額の多少にかかわらずいつでも出し入れ自由 給料 年金の自動支払など利用範囲が広いが 金利は低い 2 決済用普通貯金 : 利息の付かない普通貯金で貯金保険制度によって全額保護される 決済用普通貯金の要件は 1 無利息 2 要求払い3 決済サービスの提供の 3つ 3 当座貯金 : 手形 小切手の支払口座で無利息 主に企業や個人事業主が利用する 4 通知貯金 : 通常 預入後最低 7 日据置後 2 日前までに通知して払出 普通貯金より 23
金利が少し高い 5 貯蓄貯金 : 仕組みは普通貯金に似ている 普通貯金より金利がやや高く設定されている ( 但し 金利情勢によっては金利差がないこともある ) 給与の受取口座や公共料金の支払口座には指定できない スウィングサービス ( 貯蓄貯金と普通貯金との間での相互振替 ) が付与できる 定期性貯金 主な定期性貯金としては次のような種類があります 1スーパー定期 : 預入金額が300 万円未満のものを スーパー定期 といい 300 万円以上のものを スーパー定期 300 というのが一般的 固定金利 預入期間が3 年以上のものには 個人に限って半年複利方式の取扱もある 1 千万円以上の場合は 大口定期貯金を利用するのが一般的 2 大口定期貯金 : 預入単位 1 千万円以上の定期貯金 適用金利は金額 期間 取引振り等を勘案して相対で決めるところが多い 固定金利型で単利方式が一般的 3 期日指定定期貯金 : 対象者は個人に限定 1 年の据置期間経過後に満期日を指定することができる 固定金利型で1 年複利方式が一般的 4 変動金利定期貯金 : 一定期間ごと (6か月ごとが一般的) に適用金利を見直す貯金 個人 法人とも利用できるが 利子一括払 の半年複利型は個人に限定し 3 年ものの定型方式について取扱っているのが一般的 5 譲渡性貯金 : 金額 期間 金利などの条件を相対の交渉で決め 他人に譲渡できる貯金 貯金保険制度の対象外 6 積立定期貯金 : 積立期間終了後一定の据置期間を置いた満期日に元利金を一括して受取る貯金 7 定期積金 : 一定の掛金を一定期間定期的に払込み 満期日に一定のまとまった給付契約金を受取る金銭貯蓄の一種 法的性質は貯金ではない 貯金のためにJAに来店される顧客は いろいろな貯金目的を持っており 顧客に接する場合はニーズが何であるかを正しく理解し そのニーズに合った貯金種類を勧めることが大切です 24
目次 第 1 章コンプライアンス 1 1. コンプライアンスとは 2 第 2 章遵守すべき法令等の概要 11 1. 農業協同組合法 ( 農協法 ) 12 2. 独占禁止法 18 3. 消費者契約法 22 4. 金融商品の販売等に関する法律 ( 金融商品販売法 ) 24 5. 金融商品取引法 29 6. 犯罪による収益の移転防止に関する法律 ( 犯罪収益移転防止法 ) 32 7. 出資の受入れ 預り金及び金利等の取締りに関する法律 ( 出資法 ) 44 8. 個人情報の保護に関する法律 ( 個人情報保護法 ) 46 9. 定款 51 10. 信用事業規程 54 11. アームズ レングス ルール 55 12. 利益相反防止体制の整備 58 第 3 章貯金業務に関する法規制 61 1. マル優貯金の取扱い 62 2. 導入貯金 64 3. 不適当な紹介貯金と過度な協力貯金 66 4. 預貯金者保護法 68 5. 振り込め詐欺救済法 71 i
第 4 章貸出業務に関する法規制 75 1. 金利制限違反 76 2. 浮貸しと情実融資 80 3. 員外貸出と大口信用供与規制 83 4. 権限規定違反の貸出 86 5. 制限行為能力者 88 第 5 章登録金融機関業務に関する法規制 93 1. インサイダー取引の禁止 94 2. 不当勧誘行為 損失補てん禁止など 97 第 6 章コンプライアンスに基づく業務姿勢 101 1. 自己資金による立て替え 102 2. 顧客からの借入 104 3. 過度な接待 贈答 107 4. 反社会的勢力との関係遮断 110 5. セクシュアルハラスメントの防止 117 法令等遵守態勢の確認検査用チェックリスト 122 金融分野における個人情報保護に関するガイドライン 135 ii
目次 第 1 章事務管理 1 1 金融機関事務の基本ルール 2 1. 事務の基本原則 2 2. 事務リスク管理と自己資本比率規制 6 3. 事務リスクとは 10 4. 金融検査マニュアルと事務リスク管理態勢 13 特別研究 金融検査とは 14 5. 事務リスク管理における管理者の留意事項 17 (1) 事務リスク管理と管理者の役割 17 (2) 組織運営面での留意事項 21 (3) 内部管理面での留意事項 24 (4) 人事管理面の留意事項 28 (5) 事務ミス 事故発生時の留意事項 31 6. 重要物の管理 ( 現金 現物 重要書類 ) 34 7. 便宜扱等の異例処理 ( その1) 38 特別研究 何故 便宜扱による支払はリスクが高いのか? 40 8. 便宜扱等の異例処理 ( その2) 41 9. 金庫室の管理 43 10. 担保品 預り品の管理 45 11. 役席承認取引 46 12. 書損証書等の取扱い 48 13. 債権書類の受入 保管 管理 50 2 渉外業務にかかるリスク管理 53 1. 受取書の発行 回収 53 2. 渉外 内部事務部門間の現物の授受 55 3. 届金や便宜扱による支払 57 4. 通帳 帳票などの一時預り 59 3 相談 苦情等への対処 61 i
第 2 章目標行動管理 67 1. 目標管理のしくみと基本的展開方法 68 (1) 目標管理が考え出された原点 68 (2) マネジメントの2つの基本的考え方と目標管理 72 (3) 目標管理とは 74 (4) 目標管理のねらい 77 (5) 目標管理の展開手順 79 (6) 銀行の営業店における目標管理の展開実例 90 (7) 目標管理を導入して定着しない要因と解決の方法 94 2. 目標管理手法での営業活動の具体的展開方法 98 その 1 目標の落とし込み方 納得のさせ方 98 (1) 本部 ( 本店 ) から支店 ( 支所 ) への目標の落とし込み方 98 (2) 支店 ( 支所 ) へ目標を落とし込む際の留意点 99 (3) 個人目標の理解 納得のさせ方 103 その 2 目標を達成させるための進捗管理 113 (1) 目標達成のための進捗管理の方法 113 (2) 同行 ( 帯同 ) 訪問と指導の方法 117 (3) 効果的な日常の営業ミーティングの方法 124 預貯金等受入系統金融機関に係る検査マニュアル 137 ii