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REPORT あいぎ特許事務所 名古屋市中村区名駅 第一はせ川ビル 6 階 TEL(052) FAX(052) 作成 : 平成 27 年 4 月 10 日作成者 : 弁理士北裕介弁理士松嶋俊紀 事件名 入金端末事件 事件種別 審決取消

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インド特許法の基礎(第35回)~審決・判例(1)~

1 アルゼンチン産業財産権庁 (INPI) への特許審査ハイウェイ試行プログラム (PPH) 申請に 係る要件及び手続 Ⅰ. 背景 上記組織の代表者は

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第6回 特許出願(3) ☆インド特許法の基礎☆

日本国特許庁の国内出願の審査結果を利用した特許審査ハイウェイ ベトナム国家知的財産庁 (IP Viet Nam) と日本国特許庁 (JPO) との間の特許審査ハイウェイ試行プログラムに関するベトナム国家知的財産庁への申請手続 ( 仮訳 ) 日本国特許庁の国内出願の審査結果を利用した特許審査ハイウェイ

手続きガイドライン ( 日本語仮訳 ) ( ラオス関連特許出願に対する特許の付与円滑化に関する協力に基づく早期特許査定申請 ) 日本国特許庁 (JPO) により付与された特許を有する出願人は JPO での特許出願の審査結果を利用したラオス関連特許出願の 特許の付与円滑化に関する協力 ( 以下 CPG

第41回 アクセプタンス期間と聴聞手続(2016年版) ☆インド特許法の基礎☆

特許出願の審査過程で 審査官が出願人と連絡を取る必要があると考えた場合 審査官は出願人との非公式な通信を行うことができる 審査官が非公式な通信を行う時期は 見解書が発行される前または見解書に対する応答書が提出された後のいずれかである 審査官からの通信に対して出願人が応答する場合の応答期間は通常 1

間延長をしますので 拒絶査定謄本送達日から 4 月 が審判請求期間となります ( 審判便覧 の 2.(2) ア ) 職権による延長ですので 期間延長請求書等の提出は不要です 2. 補正について 明細書等の補正 ( 特許 ) Q2-1: 特許の拒絶査定不服審判請求時における明細書等の補正は

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審決取消判決の拘束力

目次 1. 訂正発明 ( クレーム 13) と控訴人製法 ( スライド 3) 2. ボールスプライン最高裁判決 (1998 年 スライド 4) 3. 大合議判決の三つの争点 ( スライド 5) 4. 均等の 5 要件の立証責任 ( スライド 6) 5. 特許発明の本質的部分 ( 第 1 要件 )(

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参加人は 異議申立人が挙げていない新たな異議申立理由を申し立てても良い (G1/94) 仮 にアピール段階で参加した参加人が 新たな異議申立理由を挙げた場合 その異議申立手続は第 一審に戻る可能性がある (G1/94) 異議申立手続中の補正 EPCにおける補正の制限は EPC 第 123 条 ⑵⑶に

 

諮問庁 : 国立大学法人長岡技術科学大学諮問日 : 平成 30 年 10 月 29 日 ( 平成 30 年 ( 独情 ) 諮問第 62 号 ) 答申日 : 平成 31 年 1 月 28 日 ( 平成 30 年度 ( 独情 ) 答申第 61 号 ) 事件名 : 特定期間に開催された特定学部教授会の音声

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出願人のための特許協力条約(PCT) -国際出願と優先権主張-

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第31号-

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第24号-

なって審査の諸側面の検討や評価が行われ 関係者による面接が開始されることも ある ベトナム知的財産法に 特許審査官と出願人またはその特許代理人 ( 弁理士 ) の間で行われる面接を直接定めた条文は存在しない しかしながら 審査官は 対象となる発明の性質を理解し 保護の対象を特定するために面接を設定す

第5回 特許出願(2) ☆インド特許法の基礎☆

実体審査における審査官面接に関して GPE には面接における協議の方法 時期および内容など 詳細な要件が定められている 例えば GPE には 最初のオフィスアクションの応答書が出願人により提出された後 審査官は当該出願の審査を継続しなければならない と規定されている (GPE 第 II 部第 2 章

訂正情報書籍 170 頁 173 頁中の 特許電子図書館 が, 刊行後の 2015 年 3 月 20 日にサービスを終了し, 特許情報プラットフォーム ( BTmTopPage) へと模様替えされた よって,

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2.2.2 外国語特許出願の場合 2.4(2) を参照 2.3 第 184 条の 5 第 1 項に規定された書面 (1) 日本語特許出願 外国語特許出願を問わず 国際特許出願の出願人は 国内書面提出期間 ( 注 ) 内に 出願人 発明者 国際出願番号等の事項を記載した書面 ( 以下この部において 国

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第15回 強制実施権 ☆インド特許法の基礎☆

何故 IDS をする必要があるのか? 米国特許出願をするときは 発明者が以下の要件に対して宣誓をする宣誓書 (37 CFR 1.63) に署名しなければならない (1) 明細書 ( クレームを含む ) の内容を検討し 理解している (2) 真実であり 最初の発明者であると信じる ; (3) 規則 1

第20回 特許要件(1)☆インド特許法の基礎☆

浜松医科大学紀要

32 東和知財研究第 5 巻第 2 号 ( 通巻第 7 号 ) Journal of Towa Institute of Intellectual Property Vol.5, No.1 33 発明の単一性の要件 シフト補正の制限の審査基準改訂のご紹介 東和国際特許事務所 加藤 弁理士 2013

PCT 出願人の手引 - 国内段階 - 国内編 -MY MY 1 頁 マレーシア知的所有権公社 ( 指定官庁又は選択官庁 ) 目 次 国内段階 - 概要 国内段階の手続 附属書手数料 附属書 MY.Ⅰ 国内段階移行手数料 ( 特許様式 No.2A) 附属書 MY.Ⅱ 特許代理人の選任又は変更 ( 特

第10回 出願公開 ☆インド特許法の基礎☆

Ⅰ. はじめに 近年 企業のグローバル化や事業形態の多様化にともない 企業では事業戦略上 知的財産を群として取得し活用することが重要になってきています このような状況において 各企業の事業戦略を支援していくためには 1 事業に関連した広範な出願群を対象とした審査 2 事業展開に合わせたタイミングでの

ことができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している さらに 台湾専利法第 76 条は 特許主務官庁は 無効審判を審理する際 請求によりまたは職権で 期限を指定して次の各号の事項を行うよう特許権者に通知することができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している なお

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第22回 特許要件(3)☆インド特許法の基礎☆

非常に長い期間, 苦痛に耐え続けた親族にとって, 納得のできる対応を日本政府にしてもらえるよう関係者には協力賜りたい ( その他は, 上記 (2) と同旨であるため省略する ) (4) 意見書 3 特定個人 Aの身元を明らかにすること及び親子関係の証明に当たっては財務省 総務省において, 生年月日の

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PCT 出願人の手引 - 国内段階 - 国内編 -SA S A 1 頁 サウジ特許庁 (SPO) ( 指定官庁又は選択官庁 ) 目 次 国内段階 - 概要 国内段階の手続 附属書手数料 附属書 SA.Ⅰ 略語のリスト国内官庁 : サウジ特許庁 (SPO) Law: 特許, 集積回路配置デザイン, 植

欧州特許庁における審査期間短縮手段 背景欧州出願は 日本 米国と比較して係属期間が長い また 欧州出願では 登録まで出願維持年金を特許庁に支払う必要があり 係属期間が長くなると費用が高くなる そこで 早期権利化と 権利化にかかる費用の削減のために 欧州特許庁における審査期

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第1 審査会の結論

指定 ( 又は選択 ) 官庁 PCT 出願人の手引 - 国内段階 - 国内編 - ベトナム国家知的所有権庁 (NOIP) 国内段階に入るための要件の概要 3 頁概要 国内段階に入るための期間 PCT 第 22 条 (3) に基づく期間 : 優先日から 31 箇月 PCT 第 39 条 (1)(b)


PCT 出願人の手引 - 国内段階 - 国内編 -AL AL 1 頁 工業所有権総局 (GDIP) ( アルバニア ) ( 指定官庁又は選択官庁 ) 目 次 国内段階 - 概要 国内段階の手続 附属書手数料 附属書 AL.Ⅰ 委任状 附属書 AL.Ⅱ 略語のリスト国内官庁 : 工業所有権総局 (GD

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

平成 29 年度 新興国等における知的財産 関連情報の調査 インドにおける医薬用途発明の 保護制度 DePenning & DePenning ( インド特許法律事務所 ) Shakira ( 弁理士 ) DePenning & DePenning は 1856 年に創立されたインド有数の歴史と規模

特許制度 1. 現行法令について 2001 年 8 月 1 日施行 ( 法律 14/2001 号 ) の2001 年改正特許法が適用されています 2. 特許出願時の必要書類 (1) 願書 (Request) 出願人の名称 発明者の氏名 現地代理人の氏名 優先権主張の場合にはその情報等を記載します 現

PCT 出願人の手引 - 国内段階 - 国内編 -RU RU 1 頁 連邦知的所有権行政局 (ROSPATENT)( ロシア連邦 ) ( 指定官庁又は選択官庁 ) 目 次 国内段階 - 概要 国内段階の手続 附属書手数料 附属書 RU.Ⅰ 特許国内処理請求様式 附属書 RU.Ⅱ 実用新案国内処理請求

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

ウ 特定個人 a に訂正してほしいとは, 私は書いてない これも日本年金機構の単純ミスなのか? それとも他に理由があるのか? 事実に基づいて, 説明を求める 私の公共職業安定所における氏名は, カタカナの 特定個人 b のスペースなしで管理されている 私の資格画面も氏名欄はカタカナである 国民年金保

目次 < 共通情報 > 1. 加盟している産業財産権関連の条約 2. 現地代理人の必要性有無 3. 現地の代理人団体の有無 4. 出願言語 5. その他関係団体 6. 特許情報へのアクセス < 特許制度 > 1. 現行法令について 2. 特許出願時の必要書類 3. 料金表 4. 料金減免制度について

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

作成日 :2006 年 10 月 1 日 世界知的所有権機関 World Intellectual Property Organization (WIPO) 所在地 :34 chemin des Colombettes, 1211 GENEVE 20, Switzerland Tel : (41 2

実践編 まず Search term(s) に EP と入力し Search ボタンをクリックすると以下のような 画面が表示される この About this file の画面では欧州特許の権利状況や書誌事項についての情報を得ることができる が 最初に確認すべき項目は Status の

録された保有個人情報 ( 本件対象保有個人情報 ) の開示を求めるものである 処分庁は, 平成 28 年 12 月 6 日付け特定記号 431により, 本件対象保有個人情報のうち,1 死亡した者の納める税金又は還付される税金 欄,2 相続人等の代表者の指定 欄並びに3 開示請求者以外の 相続人等に関

欧州特許出願における同一カテゴリーの複数の独立クレーム

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28 Horizontal angle correction using straight line detection in an equirectangular image

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控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

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平成 27 年度特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書 商標制度におけるコンセント制度についての 調査研究報告書 平成 28 年 2 月 株式会社サンビジネス

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Study on Application of the cos a Method to Neutron Stress Measurement Toshihiko SASAKI*3 and Yukio HIROSE Department of Materials Science and Enginee

Fig. 3 Coordinate system and notation Fig. 1 The hydrodynamic force and wave measured system Fig. 2 Apparatus of model testing

ら退去を迫られやむを得ず転居したのであるから本件転居費用について保護費が支給されるべきであると主張して 本件処分の取消しを求めている 2 処分庁の主張 (1) 生活保護問答集について ( 平成 21 年 3 月 31 日厚生労働省社会援護局保護課長事務連絡 以下 問答集 という ) の問 13の2の

認められないから, 本願部分の画像は, 意匠法上の意匠を構成するとは認めら れない したがって, 本願意匠は, 意匠法 3 条 1 項柱書に規定する 工業上利用する ことができる意匠 に該当しないから, 意匠登録を受けることができない (2) 自由に肢体を動かせない者が行う, モニター等に表示される

指定 ( 又は選択 ) 官庁 CL PCT 出願人の手引 - 国内段階 - 国内編 -CL 国立工業所有権機関 ( チリ ) 国内段階に入るための要件の概要 3 頁概要 CL 国内段階に入るための期間 PCT 第 22 条 (1) に基づく期間 : 優先日から 30 箇月 PCT 第 39 条 (1

11総法不審第120号

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第 32 回 1 級 ( 特許専門業務 ) 実技試験 一般財団法人知的財産研究教育財団知的財産教育協会 ( はじめに ) すべての問題文の条件設定において, 特に断りのない限り, 他に特殊な事情がないものとします また, 各問題の選択枝における条件設定は独立したものと考え, 同一問題内における他の選

freee・マネーフォワード特許訴訟の解説

目次 < 共通情報 > 1. 加盟している産業財産権関連の条約 2. 現地代理人の必要性有無 3. 現地の代理人団体の有無 4. 出願言語 5. その他関係団体 6. 特許情報へのアクセス方法 < 特許制度 > 1. 現行法令について 2. 特許出願時の必要書類 3. 料金表 4. 料金減免制度につ

の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

では理解できず 顕微鏡を使用しても目でみることが原理的に不可能な原子 分子又はそれらの配列 集合状態に関する概念 情報を使用しなければ理解することができないので 化学式やその化学物質固有の化学的特性を使用して 何とか当業者が理解できたつもりになれるように文章表現するしかありません しかし 発明者が世

イ特許専門業務特許戦略 法務 情報 調査 特許戦略に関し 次に掲げる事項について専門的な知識を有すること (1) 特許出願戦略 ( ポートフォリオ戦略等 ) (2) 研究開発戦略と特許戦略の関係 (3) 事業戦略と特許戦略の関係 (4) 標準化戦略 法務に関し 次に掲げる事項について専門的な知識を有

返還の必要性を十分説明しており 手続は適法である 第 3 審理員意見書の要旨 1 結論本件審査請求には理由がないので 棄却されるべきである 2 理由 (1) 本件の争点は 本件保険が法第 4 条第 1 項に規定する 利用し得る資産 に該当するかどうかであるが その判断に当たっては 処分庁が判断の要素

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達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

指定 ( 又は選択 ) 官庁 PCT 出願人の手引 国内段階 国内編 オーストリア特許庁 国内段階に入るための要件の概要 3 頁概要 国内段階に入るための期間 PCT 第 22 条 (1) に基づく期間 : 優先日から 30 箇月 PCT 第 39 条 (1)(a) に基づく期間 : 優先日から 3

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7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

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平成 28 年度特許庁産業財産権制度各国比較調査研究等事業 五大特許庁及びその他主要知財庁における 特許出願から特許査定までの期間の現状と実態 に関する調査報告書 平成 29 年 3 月 一般社団法人日本国際知的財産保護協会 AIPPI JAPAN

日立金属技報 Vol.34

(3) 先の使用者としての認定は それに対する手数料を納付し 先使用者証明書の形態で総局より与えられる (4) 先使用者証明書は 当該同一の発明に対する特許の満了時と同時に無効となる (5) 先使用者証明書取得のための手続は政令に規定される (3) The recognition as the pr

厚生局受付番号 : 近畿 ( 受 ) 第 号 厚生局事案番号 : 近畿 ( 厚 ) 第 号 第 1 結論請求者のA 社 ( 現在は B 社に合併 ) における厚生年金保険被保険者資格の喪失年月日を昭和 55 年 10 月 21 日から同年 11 月 21 日に訂正し

2 当事者の主張 (1) 申立人の主張の要旨 申立人は 請求を基礎づける理由として 以下のとおり主張した 1 処分の根拠等申立人は次のとおりお願い書ないし提案書を提出し 又は口頭での告発を行った ア.2018 年 3 月 23 日に被申立人資格審査担当副会長及び資格審査委員長あてに 会長の経歴詐称等

Transcription:

インド特許法の基礎 ( 第 28 回 ) ~ クレームの補正 ~ 河野特許事務所 弁理士安田恵 1. はじめにインドにおいてはクレームの権利範囲を拡大する補正は認められておらず, 第 59 条に規定された要件, 補正後の明細書のクレームが補正前の明細書のクレームの範囲内に完全には含まれなくなるときは許可されない を満たす必要がある この拡大補正禁止要件について検討する 2. クレームの補正要件 (1) クレームの補正は, その補正時期にかかわらず以下の要件を満たす必要がある ( 第 59 条 1) a) 権利の部分放棄, 訂正若しくは釈明による方法によること b) 補正は事実の挿入を目的とすること c) 補正の効果として, 補正後の明細書が補正前の明細書において実質的に開示していないか又は示していない事項をクレームし若しくは記載することにならないこと d) 補正後クレームが補正前クレームの範囲内に完全には含まれなくならないこと (2) 拡大補正禁止要件 d) の内容は必ずしも明確なものでは無い 審決例 OA/4/2009/PT/CH を挙げ, 補正前クレームに記載されていない構成要素を追加する補正 が認められないとする説明もある 1 以下, 当該審決 OA/4/2009/PT/CH を検討する 3. 審決例 OA/4/2009/PT/CH (1) 経緯審判請求人 ( 特許権者 ) は,2001 年 12 月 3 日, 発明の名称 ダイヤモンド中の包有物の位置決定方法及び装置 (A METHOD AND APPARATUS TO LOCATING INCLUSIONS IN A DIAMOND) とする特許出願 2 を行った (860/CHENP/2003) 当該特許出願について,2006 年 6 月 27 日付けで特許が付与された ( 特許第 201020 号 / 以下, 本件特許という ) 1 DRAFT GUIDELINES FOR SEARCH AND EXAMINATION OF PATENT APPLICATIONS 2015 2 PCT 出願 (PCT/EP01/14466, 国際公開 WO 02/46725) のインド国内移行出願 1

本件特許について被請求人は付与後異議申立を請求した 審判請求人は, 付与後異議申立手続きにおいてクレーム及び明細書の補正申請を行った しかし, 異議部は, 当該補正申請を拒絶し,2008 年 11 月 27 日付けで本件特許を取り消した 審判請求人は, 特許取消命令を不服として知的財産権審判部に審判請求を行った また, 審判請求人は審判請求と共に, 補正申請を行った (2) 発明の要旨本件発明は, ダイヤモンド中の包有物の位置決定方法に関する発明であり, 主要なクレームの内容は次の通りである 請求項 4 以下の詳細は省略する ( 仮訳 ) 請求項 1 ダイヤモンド中の包有物の位置決定方法において, 前記ダイヤモンドはホルダに固定され, 前記ホルダ上のダイヤモンドは, 画像を取得するために所定角度から観測され, 前記ダイヤモンドの外面に関する包有物の位置を決定するために, コンピュータで計算される2つのデータを得るための第 2の観測が行われ, 走査により包有物の位置が決定されることを特徴とする方法 請求項 2 前記観測方向は, 画像データを取得するために少なくとも1 回変更され, 前記画像データは, 三次元画像を計算するためにコンピュータに入力され, 少なくとも2つの画像に対応する包有物の位置が画像データから計算される請求項 1に記載の方法 請求項 3 前記ホルダは前記ダイヤモンドと共に回転及び移動される請求項 1に記載の方法 ( 原文 ) 1. A method to localizing inclusions in a diamond, characterized in that said diamond is fixed on a holder said diamond on the holder is observed under a predetermined angle to obtain an image a second measurement is carried out to obtain two data to be calculated in a computer in order to localize the inclusion with respect to the outer surface of said diamond, the position of which is determined by a scan. 2. The method as claimed in claim 1, Wherein the said direction of observation is at least changed one time in order, to obtain image data, 2

Wherein the image-data are fed into a computer to calculate a tridimensional image wherein the location of the or each inclusion is calculated out of image data, corresponding with at least two images. 3. The method is claimed in claim 2, wherein the holder with diamond is rotated and translated 図ダイヤモンド中の包有物の位置決定方法を示す概念図 (3) 補正の内容 審判手続きにおいて 2011 年 8 月 24 日に審判請求人が請求した補正申請の内容は以下 の通りである (a) クレームの補正クレームの補正内容は以下の通りである ここではクレーム1の補正内容のみを示す 1. A method to localizing inclusions in a diamond characterized that said diamond is fixed on a holder, said diamond on the holder is observed under a predetermined angle to obtain an image a second measurement is carried out to obtain two data to be calculated in a computer in order to localize the inclusion with respect to the outer surface of said diamond, the position of which is determined by a scan, wherein said observing, measuring and calculating comprises: -taking a scan of the outer surface of the diamond at an arbitrary initial position ;( 0 ץ ß0, (X0, Y0, Z0, α0, -observing the inclusion in the diamond in at least a first and second direction of observation, wherein the translation and rotation for every direction of 3

observation ץ 2, 1,X2,Y2,Z2,α2,ß2 ץ, X1,Y1,Z1,α1,ß1 ) ) is registered with reference to the initial position, -feeding the registered translations 44 and rotations, the scan of the outer surface and knowledge of the refractive index of the diamond in a computer to calculate a tridimensional image including the inclusion with respect to the outer surface, in order to localize the inclusion (8) with respect to the outer surface of said diamond (D). 当該補正によって, クレーム2,3がクレーム1に統合され, 観測, 測定及び計算に係る具体的構成要素が付加された 具体的には, 下記の構成要素が追加された 任意の初期位置(X0, Y0, Z0, α0, ß0, ( 0 ץ でダイヤモンドの外面を走査し, 少なくとも第 1 及び第 2の観測方向からダイヤモンド中の包有物を観測して, 全ての, 1,X2,Y2,Z2,α2,ß2 ץ, 観測位置の初期位置に対する移動及び回転(X1,Y1,Z1,α1,ß1, が登録され ) ץ 2 ダイヤモンド(D) の外面に関する包有物 (8) の位置決定を行うために, 登録された移動及び回転, 外面走査, 及びダイヤモンドの屈折率情報をコンピュータに入力し, 外面に関する包有物を含む三次元画像を計算する (b) 明細書の補正また, 上記クレームの補正に加え, 明細書についても補正が行われた 補正事項の概要を以下に一部抜粋する 明細書の補正は, 所定角度, 補正係数等の実施可能要件の争いに関連して行われたものと考えられる 所定角度の定義 反射率補正係数とスネルの法則に従った公式の導入 コンピュータでの三次元画像の計算をサポートする記載の削除 (4) 争点 審判においては, 異議申立の手続瑕疵, 進歩性, 実施可能要件, 上記補正の可否が争 われた (5) 知的財産権審判部 (IPAB) の判断 審判部は, 上記補正について以下の通り認定し, 当該補正申請を却下した (a) 明細書の補正 審判部は, 明細書の上記補正が明細書における新規構成要素の追加になると認定した 4

(b) クレームの補正審判部は, 補正後クレームが以下の構成要素を追加したことから, 当初クレームの範囲を超えるものであると認定した 任意の初期位置で( ダイヤモンドの ) 外面の走査が行われる 少なくとも2つのデータを取得し, 初期位置に対する同データが登録される データがコンピュータに入力される( ダイヤモンド及び包有物の三次元画像を計算するために ) 移動及び回転の登録並びに外面走査 ダイヤモンドの反射率の情報(knowledge) 審判部は, これらの構成要素のいずれも当初クレームにクレームされておらず, 従っ て, 上記補正によるかかる構成要素の追加は第 59 条により認められないと認定した 4. 検討 (1) 補正却下の結論自体は妥当と考えられる しかし, 第 59 条の解釈及び適用方法は 不明確であり, 不適切であると考える (2) 補正によってクレームに追加された構成要素が単に当初クレームに記載されていなかった一事を持って, 補正後クレームが補正前クレームの範囲内に完全には含まれなくなると認定し, 第 59 条の要件を満たさないと判断しているとすれば, その解釈は妥当性に欠けると考える 第 59 条は権利範囲の拡大補正を認めない旨を規定しているが, 文言上, 補正前クレームに無い構成要素を追加することを禁止する規定にはなっていない 構成要素を追加することそれ自体が禁止されていると解釈するのであれば, その理由を明らかにすべきであるが, その理由は明らかにされていない 一般的には, 追加の特徴を補正前クレームに付加するだけの補正であれば, 当該補正クレームが補正前クレームの範囲内に完全には含まれなくならないとは言えない 3 デリー高裁は, 明細書の範囲を, 当初クレームに含まれるサブコンビネーション ( 構成要素の組合せと解される ) に限定する補正は認められ, 当初の付随クレームに当該サブコンビネーションが無いことそれ自体が補正を拒絶する理由にはならないと判示している 4 このように, 補正前クレームに無い構成要素を追加する補正を認めないとする解釈は, 第 59 条の文言から読み取ることはできず, 高裁判決に整合しないことから, 妥当性に欠けると考える また, クレームの構成要素を付加 ( 内的付加及び外的付加 ) する補正が認められないとすれば, 権利の部分放棄が適法な補正方法の一つとして認められているにも関わらず 3 Patent Law Fourth Edition, P. Narayanan, P149 4 Agc Flat Glass Europe Sa vs Anand Mahajan And Ors. 5

( 第 59 条 1), 事実上, 先行技術に対する差別化を図るための権利の部分放棄は極めて 困難になる 権利の部分放棄によって権利の適切な保護を図る観点からしても, 構成要 素の追加が禁止されると解釈することは妥当でないと考えられる (3) 本件について見てみると, クレーム1に追加された構成要素は, ダイヤモンド中の包有物の観測, 測定及び計算の方法を具体化又は明確化するものである 補正前後のクレーム1を見る限り, 当該補正は内的付加の補正であり, クレームの権利範囲を拡大する補正には見えない なお, クレーム2との比較においては, 追加された構成要素の内容の一部は, クレーム2の構成要素と異なっていると思われる しかし, 包有物の観測, 測定及び計算に関わる明細書の記載が補正されており, 当該補正事項がクレームの権利範囲に影響を与えていると考えられる 明細書の追記及び削除が行われていることから, 明細書の補正が新規事項の追加に該当する点は妥当なものであり, 当初明細書の開示事項が変更され, その結果, 補正後クレームの範囲も, 当初明細書に基づく補正前クレームの範囲を超えていると考えることができる 審判部の判断の真意は不明であるが, このように考えると, クレームに追加された構成要素のいずれも当初クレームにクレームされていないとする審判部の認定も妥当なものと思える (4) まとめ当初明細書のクレームに記載されていなかった構成要素を補正後クレームに追加する補正によって, 補正後クレームが補正前クレームの範囲内に完全には含まれなくなるという解釈は妥当性に欠けると考える しかし, 明細書の補正は新規事項の追加にあたり, その結果として補正後クレームも補正前クレームの範囲内に完全には含まれなくなるため, 上記補正申請を拒絶するという結論は妥当と考える ( 第 59 条 1) (5) 補足本件においては, 実施可能要件を具備しないとする被請求人の主張に反論するために, 審判請求人は明細書の補正を行っているようであるが, むやみに明細書を補正すべきでは無いと考える クレームに記載された所定位置の定義や補正係数の意味は, 明細書の記載, 出願当時の技術常識から解釈できる範囲であり, 補正を行わずに反論する余地はあったと思われる また, 第 59 条の解釈の適否はともかく, 当初クレームに無い構成要素をクレームに追加する補正を嫌う審査官もいるようであり, 実務上の円滑な権利化を考えると, 補正前後で権利範囲が拡大していると誤解されないように, 発明の主要な構成要素は出願当初のクレームに記載しておくのが得策であると思われる 以上 6