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30 日本小児放射線学会雑誌 特集 第 49 回日本小児放射線学会シンポジウムより CT 被ばく : 小児 CT 被ばくの現状, 各 CT 機器メーカーの対応 5. 小児領域における面検出器 CT の線量低減技術 猪川弘康, 堤高志 東芝メディカルシステムズ株式会社 CT 営業部 ( 兼 ) 臨床アプリ研究開発センターグループ Dose reduction technologies for area detector CT in pediatric examinations Hiroyasu Inokawa, Takashi Tsutsumi CT Sales Department, Clinical Application Research Center, Toshiba Medical Systems Corporation Abstract The Toshiba Aquilion ONE TM is an area detector CT (ADCT) scanner incorporating a 160- mm area detector. A new scan method in ADCT known as volume scanning allows a range of up to 160 mm to be covered in a single rotation at a scan speed of 0.275 s/rot. In pediatric examinations, X-ray generation can be completed in a single rotation. It is therefore considered that ADCT not only allows the X-ray exposure dose to be reduced but also minimizes motion artifacts when imaging pediatric patients. With regard to the exposure dose, which has been emphasized in pediatric examinations, various dose reduction technologies, such as the advanced iterative reconstruction algorithm AIDR 3D, have been installed in ADCT scanners. ADCT has been developed with the goal of permitting the exposure dose to be reduced easily in any clinical situation, not just in specific clinical situations. Keywords:ADCT, Pediatric, Dose reduction はじめに Area Detector CT(Aquilion ONE TM, 東芝社製, 以下 ADCT) は, 人体をボリュームデータとして捉えるだけでなく, ボリュームデータ内の時間的変化を観察することが可能な新世代 CT である. 本システムは0.5 mm 320 列の面検出器を有するため,1 回転で160 mmの範囲を撮影可能である. それゆえに, 小児領域では1 回転の曝射で体幹部の撮影を終えることができる. 本稿では面検出器 CT を用いた小児領域における装置の特長と被ばく低減技術についてご紹介する. スキャン方式の特長 ADCTにおけるスキャン方式の特長は,1 回転で 160mmの範囲をボリュームデータとして収集できるため ( ボリュームスキャン ), 従来主流であったヘリカルスキャンを用いることなく撮影できる点である. 加えて, 回転速度は最新のシステムで最速 0.275 秒と超高速化を図っているため, 小児の体幹部撮影では極めて短時間に検査を完了することが可能となる. このスキャン方式以外にも,160 mmを超える範囲の検査においては 160 列ヘリカルスキャンなど形態情報取得を主眼としたものや, ダイナミックボリュームスキャンによる血流 動態情報を 30

Vol.30 No.1, 2014 31 得るためのスキャン方式を用意している. 本章ではADCTの特長的なスキャン方式について述べる. ボリュームスキャンによるOne Shot 撮影 Aquilion ONE TM は,0.5 mmスライスの検出器素子を体軸方向に320 列配置し,1 回転最速 0.275 秒で160mmの範囲をスキャンすることが可能である. つまり, 様々な部位を, 寝台 ( 天板 ) を移動することなく スキャンできることが大きな特長である (Fig.1). 実際に撮影を行う場合に, 管球回転時間 = 全体のスキャン時間となるため, 撮影範囲全体における体動の影響を極限まで低減することが可能となるため, 非鎮静下の検査が容易となる. また小児 CT 撮影で求められる被ばく線量や造影剤量の低減も可能となる. ただし, 全ての検査で最大検出器幅の320 列を使用する必要はなく指定した撮影範囲に対し, 最適な列数と撮影幅が自動で設定されるため, 必要な部分のみに絞った曝射を行うことが可能である. ダイナミックボリュームスキャンによる 4D 撮影 ADCT における, 最も特長的な検査にダイナ ミックボリュームスキャンを用いた4D 撮影がある. 同一部位に対して160 mmの範囲で寝台を動かすことなく連続的, または間欠的に複数回スキャンすることで, 臓器における血流状態や動態などの情報取得を可能とするスキャンモードである. これを応用して, 呼吸下で撮影し肺野の動態観察をすることも現実的に可能である. 昨今,4D 撮影では, 後述する逐次近似技術により, 被ばく線量の低減と画質向上が両立できるようになったため, 今後更なる4D 検査の普及が期待される. 160 列ボリュームヘリカルスキャンによる高速撮影 160 列ボリュームヘリカルスキャンは, 高速性を重視したへリカルスキャンシステムであるため,160 mmを超える範囲の撮影が必要な幼児以上の全身スクリーニング検査で有用となる. 被ばくの観点から, このスキャン方式は従来の 64 列ヘリカルスキャンと比して有利である. 同じ範囲の撮影を仮定すると, オーバーラップ量やトータルの曝射時間が少なくなるため, より低い線量 従来に比べて,5 倍の検出器幅を有する ( 当社従来比 ). 寝台を移動せずに, 160 mmの範囲を撮影可能. 0.5 mm 320 160 mm Fig.1 ボリュームスキャンの特長面検出器により, 撮影幅は 0.5 mmスライス 320 列,160 mmの範囲を撮影可能 31

32 日本小児放射線学会雑誌 で撮影することが可能となるためである. したがって,160 列ボリュームヘリカルスキャンは高速でスキャンできるというだけではなく, 線量の観点からも非常に効率的なスキャン方式と言える. ADCT の臨床的特長 小児領域ではボリュームスキャンを用いることでスキャン時間の短縮, 被ばく線量低減など, その有用性は示されている 1). 何よりも, 被験者の負担を考えたとき, 寝台移動を伴わないスキャン方式では安定した状態でストレスのない検査を実施することができる点も大きな特長と考える. ボリュームスキャンによる画質向上従来から東芝では最小スライス厚 0.5 mmによる高い空間分解能を特長としてきたが, ボリュームスキャンによってヘリカルスキャンと比較してX-Y 平面上,Z 軸方向双方の空間分解能向上を実現している. これは, 画像再構成時に体軸方向のヘリカル補間を伴わないためである. また, サブトラクションやアディッション ( 画像加算 ) などの画像処理を行うに当たり, 理想的な状態は, それぞれの時相のデータに全く動きがなく, かつ生データの軌跡が全く同一であるという条件である. ヘリカルスキャンの場合, 複数回の撮影の間に寝台移動による幾何学的な誤差がどうしてもつきまとう. また, ヘリカル軌道の差もミスレジストレーションの要因となり, 画質劣化を引き起こすことが懸念される. ボリュームスキャンでは, 寝台は全く移動しない状態でスキャン可能なため, これらの要因を大幅に排除することが可能となり, 処理画像の画質向上を実現できる (Fig.2). 従来法 ボリュームスキャン ボリュームスキャンによるサブトラクション 基底核付近の微細な血管構造の描出が明瞭になっている Fig.2 画質とサブトラクション精度の向上ボリュームスキャンにより, 従来に比べて画質向上が確認できた 1 例. 寝台移動がないため, サブトラクションにより高精度な骨除去が可能 32

Vol.30 No.1, 2014 33 等時間分解能の向上 (0.275sec Isotropic Temporal Resolution) 従来のヘリカルスキャンでは, 管球回転や寝台スピードを高速化しても体軸方向に関して見てみると, 総合的な範囲に対するスキャン時間の短縮には限界があった. ADCT では160 mmの範囲であれば, 管球回転時間 = 全体のスキャン時間, すなわち最短 0.275 秒の X 線曝射のみで検査が完了することになる.XYZ 軸すべてにおいてIsotropic Temporal Resolution を達成することが可能となり, これまでにない特長を持つことになった. 全体の撮影時間の劇的な短縮により, 息止めや体動の抑制が困難な小児撮影においてもモーションアーチファクトを低減し, これまでは困難であった非鎮静下での撮影に威力を発揮することが報告されている 2). 極めて短時間かつ寝台が動かないため,X 線一般撮影に近い感覚であるとの評価も聞かれる. 加えて, ボリュームスキャンで撮影されたデータから, ハーフ再構成を用いることで X -Y-Z の時 間分解能をフル再構成の半分である0.137 秒の時間分解能を持った画像再構成ができる. 時間分解能を向上することで, 体動や臓器の動きの影響を極限まで低減し, 画像の視認性を向上することができる (Fig.3). 被ばく線量の低減ヘリカルスキャンでは必須であったオーバーラップが, ボリュームスキャンでは必要ないため, 従来に比べて, 被ばく線量を低減できる. 特に心電同期撮影時には, ヘリカルスキャンではデータの冗長性を担保するためにオーバーラップ部分を多く必要としていたため, ボリュームスキャンによる被ばく線量の低減率は他の部位に比べて高くなる 3). また, 広範囲の心電同期ヘリカルスキャンは撮影時間が長く, 被ばく線量も増えるため, あまり現実的な検査とは言えない状況であった. しかし,160 mmステップアンドシュートスキャン ( ワイドボリュームスキャン ) と心電同期の組み合わせにより, 非同期撮影と同等線量で広範囲の心 Full Reconstruction Half Reconstruction 小児術後 ( 心電非同期 ) Fig.3 0.275sec Isotropic Temporal Resolution 心電非同期下においても高時間分解により, モーションの影響が低減できた 1 例 33

34 日本小児放射線学会雑誌 電同期画像を取得することが現実的に可能になった. その有用性はAquilion ONE を用いた胸部 CT に関する多施設共同研究 ACTIve(Area-detector Computed Tomography for the Investigation of Thoracic Diseases) で実証されている 4). 被ばく線量低減技術 現在, 形態画像だけでなく, 血流や機能画像を得るために連続もしくは間欠曝射を組み合わせたダイナミックスキャンなど, 多様な検査プロトコルが実臨床で使用されている. 複数回の撮影を行うダイナミックスキャンでは, 従来の形態診断用の撮影条件を流用すると被ばく線量が増加してしまうため, 低管電圧や低管電流を積極的に使用し, 検査全体としての被ばく線量を低減させることが 必須となる. 一方でこのような厳しい撮影条件下でも良好な画質を担保することも求められる. そのために撮影前から画像再構成時まですべての過程において低線量撮影を実現するための機能やアプリケーションを実装している. スキャンプランニング スキャンプロトコルの可視化と被ばく線量管理 ダイナミックスキャンなど複雑な検査プロトコルが実臨床で使用する上で, スキャンプロトコルの可視化および被ばく線量の管理は安全管理上の観点から重要な命題となっている.ADCT ではスキャン計画や総被ばく線量を分かりやく把握するために役立つTime Sequence,Dose Guardそして, Dose Alert 機能を実装した (Fig.4). Time Sequence Dose Management Dose Alert Fig.4 検査前の被ばく線量管理事前に検査プロトコルや被ばく線量を確認するための機能を有している 34

Vol.30 No.1, 2014 35 Time Sequence はグラフィカルなインターフェイスにより, スキャンプラン全体が一目で把握でき, そこで管電流の調整や撮影の追加などをグラフで確認しながら操作できる. また,Dose Guard ではスキャン計画中に計算される総被ばく線量を元に,ICRP と医療被ばくガイドラインの被ばく指標を参照しながら, 条件設定を行うことができる仕組みである. さらに, 実際の撮影時には設定された被ばく線量の基準値を超えると警告を表示する Dose Alertを有している. スキャン技術 線量の最適化 線量の最適化を図るためのスキャン技術として,Active Collimator,Volume EC, バリアブルピッチヘリカルスキャンについて述べる (Fig.5). 多列ヘリカルスキャンでは, 画像再構成に寄与しない部分の被ばくであるオーバービーミングやオーバースキャニングの課題があった.Active Collimator では, スキャン開始及びスキャン終了時にコリメーターを独立して作動させる仕組みにより, 画像再構成に寄与しない X 線をカットする ことができ, 従来に比べて被ばく線量を抑えることができる. そして, ヘリカルスキャン時には, 管電流とビームピッチのそれぞれを制御する2 種類のスキャン機構を持ち合わせている. 管電流の制御はVolume ECと呼ばれるCT-AEC (Auto Exposure Control) 機能である.Volume EC ではスキャノグラフィ ( 位置決め ) 画像の情報から各スライスに必要とする線量を計算し, 一平面のXY 方向 ( AP,RL 方向 ) とZ 方向 ( 体軸方向 ) へ管電流を変調させながら, スキャンを行う. 被験者の体型や臓器の配置によって必要な線量は異なるが, この機能によってユーザーが望むノイズレベルに均一化されるよう, 管電流を自動的にコントロールすることができる. この CT -AEC の機能は今日のCT では一般的な機能となっている. バリアブルヘリカルピッチとは, スキャン中のビームピッチ可変制御機能であり, 寝台移動速度を部位によって変速し, 心電同期 非同期スキャンを切り替えながら行う方式である. 例えば, 心臓 肺動静脈から大血管, 下肢血管までの撮影を Original AIDR 3D Acquired Projection Data Scanner Model Projection Noise Reduction Anatomical Model Based Optimization Update Object AIDR Image Statistical Model Blending % Fig.5 AIDR 3D のアルゴリズム AIDR 3D で撮影条件に応じて変わる画像ノイズに対し, アダプティブに効果が働くアルゴリズムを採用 35

36 日本小児放射線学会雑誌 仮定すると, 従来は心臓のみ心電同期スキャンを行い, あらためて大血管の非同期スキャンを行うために, スキャンは必ず2 回に分割せざるを得なかった.2 回に分けていた心臓から下肢血管までの撮影をバリアブルヘリカルピッチスキャンでは 1 回のスキャンで完了することができる. 撮影時間の短縮, 使用造影剤量の低減, 被ばく線量の低減を図ることができるスキャン方式である. 逐次近似応用再構成 AIDR 3D 逐次近似応用再構成であるAIDR 3D(Adaptive Iterative Dose Reduction 3D) は, 被ばく線量低減と高画質の両立をコンセプトに, これまで以上に低い線量領域まで, 高いノイズ除去効果を発揮する新たな線量低減技術である. アルゴリズムは, 逐次近似再構成をベースにして, 第 1 段階として画像ができる前々段階の純生データベースで統計学的ノイズモデルやシステムモデルを用い, ストリーク状アーチファクトやノイズ低減を行う. さらに第 2 段階では画像データベース上で, アナトミカルモデルを用い, 撮影部位や組織構造を考慮しながらノイズ低減を行う. これによりノイズ低減効果で最大 50%, 被ばく低減効果では最大 75% を発揮する (Fig.5). 運用面ではAIDR 3D をスキャンプランに組み込むことができ,volume EC や心電同期, そしてデュアルエネルギー撮影など各種スキャン方式と併用できる. これらの一連の処理は, 特殊なハードウェアの追加を必要とせず, 通常検査においてストレスを与えない画像再構成時間を担保しているのも特筆すべき点である. 終わりに ADCT では, ボリュームスキャンや160 列ボリュームヘリカルスキャンなど, 被ばく低減に有効なスキャン方式を採用している. これまでもハードウェアの進化に伴いスキャン方式は変遷してきたが,ADCTにより再度その方式が一新され, 小児 CT 撮影に大いに貢献できると考える. また, 被ばく低減を行いつつ, 良好な画質を担保するためにハードウェア, ソフトウェア開発 ( 撮影前のプランニング, 撮影方式, 画質改善 ) など多岐にわたり, 技術革新に取り組んできた. 中でも逐次近似応用再構成であるAIDR 3D は, 小児 CT 撮影では特に重要となる被ばくに対して, 画質を担保しながら高い被ばく低減効果が期待できる技術である. 東芝では被ばく線量低減メリットを多くの皆様に享受頂くため,2012 年以降に販売された全ての装置にAIDR 3D を標準搭載した. 今後も更なる線量低減技術の開発し, より簡便にかつ自動で操作可能なシステムの実現を目指し, 被ばく低減に努めるのがメーカの責務と考える. 注 : Aquilion ONE TM は東芝メディカルシステムズ の商標です. 文献 1) JohnstonJH, Podberesky DJ, Yoshizumi TT, et al : Comparison of radiation dose estimates, image noise, and scan duration in pediatric body imaging for volumetric and helical modes on 320-detector CT and helical mode on 64-detector CT. Pediatr Radiol 2013 ; 43 : 1117-1127. 2) Kroft LJ, Roelofs JJ, Geleijns J : Scan time and patient dose for thoracic imaging in neonates and small children using axial volumetric 320-detector row CT compared to helical 64-, 32-, and 16- detector row CT acquisitions. Pediatr Radiol 2010 ; 40 : 294-300. 3) Podberesky DJ, Angel E, Yoshizumi TT, et al : Radiation Dose Estimation for Prospective and Retrospective ECG-Gated Cardiac CT Angiography in Infants and Small Children Using a 320-MDCT Volume Scanner. AJR Am J Roentgenol 2012 ; 199 : 1129-1135. 4) Yamashiro T, Miyara T, Takahashi M, et al : Lung image quality with 320-row wide volume CT scans : the effect of prospective ECGgating and comparisons with 64-row helical CT scans. Acad Radiol 2012 ; 19 : 380-388. 36