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平成 29 年度九段坂病院病院指標 年齢階級別退院患者数 年代 10 代未満 10 代 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 70 代 80 代 90 代以上 総計 平成 29 年度 ,034 平成 28 年度 -



生活設計レジメ

44 4 I (1) ( ) (10 15 ) ( 17 ) ( 3 1 ) (2)

I II III 28 29



178 5 I 1 ( ) ( ) ( ) ( ) (1) ( 2 )

患者さんへ

リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

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側弯症(そくわんしょう)治療を受けられる患者様へ


Vol 夏号 最先端の腹腔鏡下鼠径 ヘルニア修復術を導入 認定資格 日本外科学会専門医 日本消化器外科学会指導医 専門医 消化器がん外科治療認定医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 外科医長 渡邉 卓哉 東海中央病院では 3月から腹腔鏡下鼠径ヘルニ ア修復術を導入し この手術方法を


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Vol 夏号 最先端の腹腔鏡下手術を本格導入 東海中央病院では 平成25年1月から 胃癌 大腸癌に対する腹腔鏡下手術を本格導入しており 術後の合併症もなく 早期の退院が可能となっています 4月からは 内視鏡外科技術認定資格を有する 日比健志消化器外科部長が赴任し 通常の腹腔 鏡下手術に

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60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 5 月 2 日 独立行政法人理化学研究所 椎間板ヘルニアの新たな原因遺伝子 THBS2 と MMP9 を発見 - 腰痛 坐骨神経痛の病因解明に向けての新たな一歩 - 骨 関節の疾患の中で最も発症頻度が高く 生涯罹患率が 80% にも達する 椎間板ヘルニア

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10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

痛が増悪することがあります この原因は 多くの場合 仕事のやりがいや緊張感がなくなり 気持ちの張りが衰えると同時に足腰の筋力が急激に弱るためと考えられます できれば仕事以外に 普段から気の合う仲間と適度な運動やスポーツを楽しむ時間を作り ストレスを発散し 気持ちを萎えさせず 足腰の力を衰えさせないよ

治療 : 神経根症状であれば数週 数ヶ月の保存加療で多くは対応可能ですが 疼痛が強く麻痺などの合併がある場合や保存加療に特に抵抗性のあるものに関しては手術を行います 特に 巧緻運動障害 ( 箸 書字 ボタン掛けが困難 ) 歩行障害がある場合は手術を考慮します 頚椎症性脊髄症病態 : 脊髄が圧迫され脊

ノバルティスファーマ株式会社広報統括部 東京都港区虎ノ門 1 丁目 23 番 1 号虎ノ門ヒルズ森タワー MEDIA RELEASE COMMUNIQUE AUX MEDIAS MEDIENMITTEILUNG 報道関係各位 2


第 43 回日本肩関節学会 第 13 回肩の運動機能研究会演題採択結果一覧 2/14 ページ / ポスター会場 第 43 回日本肩関節学会 ポスター 運動解析 P / ポスター会場 第 43 回日本肩関節学

対象 :7 例 ( 性 6 例 女性 1 例 ) 年齢 : 平均 47.1 歳 (30~76 歳 ) 受傷機転 運転中の交通外傷 4 例 不自然な格好で転倒 2 例 車に轢かれた 1 例 全例後方脱臼 : 可及的早期に整復

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ただし 対象となることを希望されないご連絡が 2016 年 5 月 31 日以降にな った場合には 研究に使用される可能性があることをご了承ください 研究期間 研究を行う期間は医学部長承認日より 2019 年 3 月 31 日までです 研究に用いる試料 情報の項目群馬大学医学部附属病院産科婦人科で行

山梨県地域医療再生計画 ( 峡南医療圏 : 救急 在宅医療に重点化 ) 現状 社保鰍沢病院 (158 床 ) 常勤医 9 名 実施後 社保鰍沢病院 峡南病院 (40 床 ) 3 名 市川三郷町立病院 (100 床 ) 7 名 峡南病院 救急の重点化 県下で最も過疎 高齢化が進行 飯富病院 (87 床

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

説明文書作成上の留意点

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平成 29 年度厚生労働科学研究費補助金 ( 厚生労働科学特別研究事業 研究代表者 : 武藤真祐 ( 東京医科歯科大学医歯学総合研究科臨床教授 )) 情報通信機器を用いた診療に関するルール整備に向けた研究 情報通信技術の進展に合わせ 情報通信機器を用いた診療が普及してきているが 更なる普及 推進のた

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訪問審査当日の進行表 審査体制区分 1: 主機能のみ < 訪問 2 日目 > 時間 内容 8:50~9:00 10 分程度休憩を入れる可能性があります 9:00~10:30 薬剤部門 臨床検査部門 画像診断部門 地域医療連携室 相談室 リハビリテーション部門 医療機器管理部門 中央滅菌材料部門 =

平成 28 年度診療報酬改定情報リハビリテーション ここでは全病理に直接関連する項目を記載します Ⅰ. 疾患別リハビリ料の点数改定及び 維持期リハビリテーション (13 単位 ) の見直し 脳血管疾患等リハビリテーション料 1. 脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)(1 単位 ) 245 点 2

7 対 1 10 対 1 入院基本料の対応について 2(ⅲ) 7 対 1 10 対 1 入院基本料の課題 将来の入院医療ニーズは 人口構造の変化に伴う疾病構成の変化等により より高い医療資源の投入が必要となる医療ニーズは横ばいから減少 中程度の医療資源の投入が必要となる医療ニーズは増加から横ばいにな

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スライド 1


医療関係者 Version 2.0 RET 遺伝学的検査の実施について Ⅰ.RET 遺伝学的検査の対象 甲状腺髄様癌に対する RET 遺伝学的検査 平成 28 年 4 月より甲状腺髄様癌に対する RET 遺伝学的検査が保険収載された 診療報酬点数表によると 保険適用による RET 遺伝学的検査は 遺

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Transcription:

厚生労働科学研究費補助金 : 医療機器開発推進研究事業 ( ナノメディシン研究 ) 低侵襲医療機器の実現化を目指した領域横断的な知的基盤の創出と運用に関する研究 ニーズ調査 : 医師ニーズインタビュー 慶應義塾大学医学部整形外科准教授松本守雄先生 インタビュー項目は次に示すとおり 大項目 小項目 専門分野 この 10 年で患者 QOLの向上等に貢献した医療機器既存の医療機器の改良すべき点 実現が望まれる新規の医療機器 専門とする主な疾患 部位 実施頻度の高い手技 この 10 年で 診療成績の向上や患者 QOL の向上におおいに貢献したと考えられる医療機器 既存の医療機器の改良すべき点について 対象となる医療機器と改良すべき点とその理由実現が望まれる新規の医療機器の概要 ( 対象疾患 部位 機能と効果 ) その医療機器が必要とされる背景 現状の問題点 その医療機器の実現可能性 開発意向 予定 ( または開発協力意向 ) 医療機器の開発の方向性に関する提言 その他 循環器および脳血管領域における医療機器の研究動向や今後の医療機器開発の方向性に対する提言 研究動向 - 1 -

1) 専門分野専門は整形外科 特に脊椎外科である 主な対象疾患は 腰椎疾患 ( 脊柱管狭窄症 椎間板ヘルニア等 ) 脊柱変形( 脊椎側弯症 脊柱後弯症等 ) である 脊椎の手術は年間 210~220 例行っている 主な内訳は 腰椎疾患 120 例 脊柱変形 70 例などである 椎間板ヘルニアと一部の脊柱管狭窄症に対して内視鏡手術を行っている 2) この 10 年で患者 QOLの向上等に貢献した医療機器 a) 診断 i)mri MRIは解像度が向上した ii)ct CTは詳細な画像を高速に撮影できるようになった 細かい病変まで描出できるようになった b) 治療 i) 内視鏡手術器具内視鏡手術器具が進歩した 光学技術の進歩により画像がよくなったことで安全で効果的に内視鏡手術を行えるようになった ハイビジョンの内視鏡が普及し フルハイビジョンの内視鏡も登場した また 周辺機器も進歩した エアドリルが改良され 超音波骨メスが登場した ii) 脊柱変形の矯正具椎弓根スクリューの使い勝手が向上し 手術時間の短縮や治療成績の向上に貢献した iii) 術中ナビゲーション術中ナビゲーションが登場し 難しい症例など役立つケースもある 難しい症例で正しい位置にスクリューを入れるときなどに役立つ iv) 人工骨ハイドロキシアパタイト (HA) は 固まりやすさの面などハンドリングがよくなった 日本は海外のように銀行骨 ( バンクボーン ) を使用できない こうした背景からも 人工骨を発展させることは重要である - 2 -

3) 既存の医療機器の改良すべき点 a) 治療 i) 内視鏡内視鏡は解像度の向上と立体視が望まれる 解像度は向上したものの顕微鏡に比べると不足感がある また 立体視ができない 改良されるたびに高価になるが低コスト化が望まれる 内視鏡手術でも肉眼による手術でも診療報酬は同じである ii) 脊柱矯正具脊柱矯正具の素材の改良が望まれる 現在 国内で使用されている矯正具の素材は6アルミ4バナジウムのチタン合金だが ハンドリングしにくく毒性の心配もある 海外ではコバルト クロム合金の矯正具も使用されている コバルト クロム合金は強度に優れ 矯正具がダウンサイジングされている ロッドの径は細径化可能で スクリューヘッドのサイズも小型化可能である 患者にとって術後腰部の違和感が軽減されるだろう iii) エアドリルエアドリルは発熱と神経損傷リスクの点で改良が望まれる エアドリルは脊椎外科に必須の器具である バーを回転させて骨を削る機構だが摩擦熱が生じるため冷却しながら使う 削り過ぎによる神経損傷のリスクがある 現在のエアドリルは原始的である 人類が月に行く時代なのだから そろそろエアドリルも根本的な原理の転換による進化があってもよいだろう iv) 超音波骨メス超音波骨メスは発熱と時間の点で改良が望まれる 超音波骨メスはエアドリルに比べて安全性は高いが切削に時間がかかる 手術時間の延長を回避しようとすると 神経の際を削る瞬間など 限定的にしか使用できない 発熱があることはエアドリルと同じである v) ナビゲーションナビゲーションは 価格やレジストレーション時間の点で改良が望まれる ナビゲーションは保険点数が少ないため システムの価格がもう少し安くならなければ採算が合わない またレジストレーションに時間がかかるため 毎回使用する気にはならない このあ - 3 -

たりは改良されなければならない 精度については レジストレーションをしっかりやらなければ1~2mm の誤差が生じてしまう 脊椎の手術では1~2mm の誤差は致命的となる vi) 人工骨人工骨は強度と生体親和性の点で改良が必要である 脊椎には大きな加重がかかるため強度が必要である また 生体親和性が高く 骨誘導能を備えた人工骨が望まれる 人工骨はわが国にとって絶対に必要なものであり もっと力が注がれるべきである 4) 実現が望まれる新規の医療機器について a) 診断 i) 側弯症の遺伝子診断技術側弯症の遺伝子診断技術が望まれる 側弯症は遺伝の影響が指摘されており思春期に発症する患者が多い 遺伝子診断により進行性の側弯症を早期にスクリーニングし 脊椎の曲がりが少ない段階で治療できれば 患者の負担軽減 医療費の抑制に効果的である 遺伝子診断を活用した治療はテーラーメイド医療 ( 個人に合わせた医療 ) のひとつといえる ii) 痛みを可視化できる画像診断法痛みを可視化できる画像診断法が望まれる b) 治療 i) 安全に骨を削る機械安全に骨を削る機械が望まれる 例えば 水の力で金属やコンクリートを削る技術を応用すればよい機器ができるのではないか 水を使うため発熱を抑えられる 医師側にニーズはあると思う ii) 動く状態で矯正できる脊椎矯正具動く状態で矯正できる脊椎矯正具が望まれる 側弯症の治療では 脊椎をまっすぐにして固定するが 動く状態が脊椎の本来の姿であり 動く状態で矯正できることが理想である 現在使われている金属に変わる素材を用いるなど 開発が期待される iii) 椎間板を回復させる技術椎間板を回復させる技術が望まれる 現在は椎間板の機能を回復させる方法がない 人工椎間板はおそらく難しく 薬剤を含め バイオテクノロジーによるなんらかの技術開発 - 4 -

が必要である iv) 脊髄や軟骨の再生医療脊髄や軟骨の再生医療が望まれる 脊髄や軟骨の損傷によって生活に支障をきたす人は多い 5) その他 a) 企業との共同研究について企業との共同研究については積極的である 現在も共同研究を行っている 臨床側のアイディアをできるだけ早く製品に結び付けていただけるとありがたい また 製品化され売上があがったときには利益の一部を研究費として大学に還元していただけると 次の研究開発にもつながり とてもありがたい 日本の企業は医療機器に対してもう少し積極的に投資をするべきである 医師とよく意見交換をして製品化し 海外市場に展開するなど 医療機器事業の活性化に期待したい 日本の企業は 家電製品等で世界一の技術をもちながら なぜ医療機器では遅れをとるのか不思議に感じている b) 筋骨格系疾患分野の診断 治療の方向性について i) ロコモティブシンドロームへの対応高齢化の進展に伴い高齢者の筋骨格系の疾患の重要性が高まっている 加齢を主要因として筋骨格系機能の低下につながる状態を ロコモティブシンドローム といい 啓発と予防が推進されている 医療機器開発の方向性としてロコモティブシンドロームへの対応が重要であろう 骨粗しょう症による骨折の予防医療はトピックスのひとつである ii) 患者に対する低侵襲医療の正しい知識の啓発患者に対して 低侵襲医療の正しい知識を啓発することが必要である 患者にとっては低侵襲医療は魅力的であり ホームページ等で内視鏡手術を調べて来院する患者も少なくない しかし 切開が小さいから低侵襲というわけではなく 切開をともなっても安全 確実な手術を受けたほうが長期的にみて低侵襲となることは多く こうした知識を啓発することが必要である - 5 -