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290 章色素異常症 8. 偽梅毒性白斑 leukoderma pseudosyphiliticum 20 30 歳代, 色黒のアジア人男性の腰殿部に好発する. 約 1 2 cm 大の境界鮮明な不完全色素脱失斑が多発し, しばしば融合して網目状になる. 自覚症状はない. 網目状の白斑が梅毒性白斑に類似するが, 梅毒性白斑は露出部の皮膚に発生する傾向をもち, 梅毒血清反応陽性の点で鑑別される. B. 色素増加を主体とするもの hyperpigmentations じゃくらんはん 1. 雀卵斑 ephelides 症状 いわゆる そばかす (freckles) である.3 歳頃から顔面, 頸部, 前腕などの露光部に, 直径 3 mm 程度の類円形, 表面平滑な褐色斑が多発する ( 図.10) ようになり, とくに夏季の日光 ( とくに紫外線 ) で色が濃くなり, 冬季には消失傾向になる. 加齢とともに増悪し, 思春期に最も顕著となるが, 以後色調は薄くなっていく. 病因 病理所見家族内発生が多く, 一部はメラノコルチン 1 受容体 (MC1R) の遺伝子多型が発症に関与している. 色素性乾皮症などによる重症例では常染色体劣性遺伝形式をとる. メラノサイトが活性化し, 基底層においてメラノソームの著増を認める. 本症のメラノサイトは樹枝状突起が発達し, 機能も亢進しているが, 数は増えない. 図.10 雀卵斑 (ephelides) 診断 単純黒子,P ポイツ eutz-j イェガース eghers 症候群, 色素性乾皮症, 早老症など の疾患を除外する. サンスクリーンを用い紫外線を避ける. ハイドロキノン (hydroquinone)

B. 色素増加を主体とするもの 291 2. 肝斑 melasma,chloasma 症状いわゆる しみ である.30 歳以降の女性に好発し, 男性ではまれ. 境界明瞭な淡褐色斑が, 頬部を中心に対称性にみられる. 前額や口囲に拡大することもあるが, 眼囲は侵されない. 大きさや形は一定しない. 紫外線により夏季に増悪, 冬季に軽減 ( 図.11). 妊娠を契機に発症することがある ( 妊娠性肝斑 ). 病因 病理所見性ホルモンや副腎皮質ホルモンの分泌変化, 紫外線などの慢性的な物理的刺激などがメラノサイトを活性化させると考えられている. 病理組織学的に基底層中心にメラニン顆粒の増加を認め, 真皮にメラノファージを伴うこともある. 診断 鑑別診断太田母斑や遅発性両側性太田母斑様色素斑 (20 章 p.361 参照 ) との鑑別が重要である. 肝斑では基底層のメラニン増加のため青色調にならない点と, 眼瞼周囲は侵されない点で鑑別される. 肝斑と遅発性両側性太田母斑様色素斑を同時に生じている例もある. 紫外線, 経口避妊薬などの誘発因子を除去する. 妊娠性の場合は分娩後数か月で軽快する. ハイドロキノン外用やトラネキサム酸内服も行われる. レーザー療法は色素の増強を生じるため禁忌である. 3.R リール iehl 黒皮症 Riehl s melanosis 同義語 : 女子顔面黒皮症 (melanosis faciei feminina) 主として中年女性の顔面に生じるびまん性, 境界不明瞭な灰紫褐色の網状色素沈着である. ときに毛孔一致性の角化性丘疹そうようを伴う. 色素沈着の前に潮紅および瘙痒などの炎症病変が先行する場合が多い. 本質は顔面の反復する接触皮膚炎であり, 接触抗原の多くはタール系色素成分を含む化粧品である. 最近は化粧品に使用できる化学物質の規制が強化されたのでほとんどみられない. 病理組織学的にメラノファージが真皮上層に観察される. 図.11 肝斑 (melasma,chloasma)

292 章色素異常症 4. 摩擦黒皮症 friction melanosis 同義語 : タオルメラノーシス (towel melanosis) 定義 症状ナイロンタオルやブラシなどを長期間使用して皮膚に機械的刺激を与え続けた結果, 色素沈着をきたすようになったもので, 成人に好発する. 鎖骨部や頸部, 肋骨部, 脊柱部などの骨上部に, 網状ないしびまん性の褐色の色素沈着を認める ( 図.12). 瘙痒などの自覚症状はまったくない. 病因 病理所見機械的刺激やそれによる軽度の炎症によってメラノソームが真皮に滴下し, 真皮上層でメラノファージが増加する ( 組織学的色素失調 ). 一部の症例ではアミロイド沈着をみる. 図.12 摩擦黒皮症 (friction melanosis) mm ナイロンタオルなどの刺激の原因となるものの使用を中止す れば, 色調は徐々に正常に戻る. 5. 遺伝性対側性色素異常症 ( 遠山 ) dyschromatosis symmetrica hereditaria(toyama) 定義 病因 症状四肢末端 ( とくに手背や足背 ) において両側性に,3 8 mm までの褐色斑と脱色素斑が多発し, それらが融合して網目状の外観を呈する ( 図.13). 一般に末梢に向かうにつれて症状が激しくなる. 色素斑は表面平滑で, 陥凹などを認めない. 顔面に雀卵斑様の色素斑を生じやすい. 多くの症例では 6 歳までに発症し, 常染色体優性遺伝形式で家族内発症する.adenosine deaminase acting on RNA 1(ADAR1) 遺伝子の変異による. 加齢とともに拡大, 顕在化するが, 成人期には停止する. アジア人に好発する. 図.13 遺伝性対側性色素異常症 (dyschromatosis symmetrica hereditaria) 3 8 mm 診断 鑑別診断特徴的な皮膚所見および家族内発症の有無で臨床診断が可能である. 鑑別すべき類似疾患に網状肢端色素沈着症 (acropigmentatio reticularis) がある. 本症と同様に四肢末端に網目状の色素沈着をきたし, 常染色体優性遺伝をとる疾患であるが, 色素斑に皮膚陥凹を伴う点, 脱色素斑を認めない点において鑑別される.

B. 色素増加を主体とするもの 293 カバーマークを使用. 色素斑部位の削皮術を行う場合もある. 6. 老人性色素斑 senile lentigo,senile freckle 同義語 : 日光黒子 (solar lentigo) 定義 症状ほとんどの中年以降の男女に出現する. 主に顔面や手背, 前腕伸側などの露光部において, 類円形で大小種々の褐色斑が出現する. 境界は比較的明瞭で, ときに軽い落屑を伴う ( 図.14). 一部は脂漏性角化症 (21 章 p.384) に移行する. アレキサンドライト, ルビーレーザー療法や凍結療法など. 7.A アジソン ddison 病 Addison s disease 副腎皮質ホルモンの分泌低下により, 下垂体前葉からの ACTH や MSH 分泌が亢進し, これがメラノサイトを刺激して色素沈着をきたす ( 図.15). 色素沈着は全身に認められるが, とくに掌紋部, 膝, 肘, 乳輪, 腋窩, 外陰部に強い. 舌や歯肉, 口腔粘膜など生理的に色素沈着の少ない部位にも色素斑が認められ, 診断に有用である. 図.14 老人性色素斑 (senile lentigo) 8. 光線性花弁状色素斑 pigmentatio petaloides actinica 肩から上背部にかけて, 数 mm 1 cm 大までの花弁状 金平糖形の境界鮮明な褐色色素斑が多発する ( 図.). 色白の人が海水浴などで水疱が生じるほどの強い日焼けをした後, 1 3 か月後に多発性に出現することが多い. 9. 色素異常性固定紅斑 erythema dyschromicum perstans,ashy dermatosis 有色人種の体幹や四肢に小紅斑が多発し, まもなく 1 3 cm 大の灰白 灰青色斑となる. 辺縁に紅斑性隆起を伴うこともある ( 図.17). まれに瘙痒を伴うことがあるが, 多くは自覚症状を欠き, 慢性に経過する原因不明の疾患. 薬剤誘発たいせん性あるいは扁平苔癬の一型として本症に一致する皮疹が生じることがある. 図.15 Addison 病 (Addison s disease)

294 章色素異常症 図. 光線性花弁状色素斑 (pigmentatio petaloides actinica) PUVA 図.17 色素異常性固定紅斑 (erythema dyschromicum perstans,ashy dermatosis) C. 異物沈着によるもの diseases caused by extrinsic deposition かん 1. 柑 ぴ皮 症 carotenosis (cutis),aurantiasis cutis a 定義 病因 症状血中カロチン濃度が上昇した結果, 角層および皮下脂肪組織にカロチンが沈着して黄色調を呈するようになったものである ( 図.18). 手掌足底などの過角化部に目立つ. 顔面 ( 前額, 鼻翼, 鼻唇溝など ) にも色調変化が現れることがあるが, 強膜などの粘膜に生じることはなく, 汎発化することもほとんどない. 自覚症状はない. 一般に, 血中カロチン濃度が 0.5 mg/dl を越える状態が 1 2 か月続くと症状が出現する. この高カロチン血症 (carotenemia) はカロチン含有食物 ( 柑橘類, カボチャ, ニンジン, ホウレンソウ, ノリ, トウモロコシ, 卵黄, バターなど ) の大量摂取や肝機能障害 ( カロチンがビタミン A に代謝されず, 血中カロチン濃度が上昇 ), 脂質異常症 ( カロチンは脂溶性のため, 脂質異常症により血中濃度が上昇しやすい ) による. b 図.18 柑皮症 (carotenosis,aurantiasis cutis) a b 2 10 mm 診断 黄疸との鑑別を要する. 黄疸では強膜の黄染化, 瘙痒, 肝機能異常がみられるため容易に鑑別できる. 原因食物の摂取を制限すれば 2 3 か月で自然治癒する.