研究報告 鉄塔簡易 3 次元化システムの改良 - 構造物の景観シミュレーションの開発 ( 第 2 報 ) - 村上功 *1 小椋輝繁 *1 An Improvement of 3D Modeling System of Steel Tower Structures - The Development of View Simulation on Structures (Report 2) - Isao MURAKAMI Terushige OGURA Abstract: In previous work, The 3-dimensions model of steel tower structures were drawn up. However,this system was adapted at only transmission steel towers. In this work, the improvements of this system were studied. First of all, increasing of applicable variation of structures including transmission steel tower were examined. In result,some other structures were able to draw using same system, with slightly change in its input method. Secondly, walk through view of 3D model was examined. So,various structures were able to be expressed. Key words: View;CG;3-dimension;Topographical information;auto CAD;Rendering;image component 1. 緒言近年コンピュータ グラフィックス (CG) をめぐる環境の変化は著しいものがある パソコンの進歩や高性能の3 次元グラフィックボードの普及とともに, ワークステーションで行われていたCG 作成が, パソコン上でも可能となった また, パソコンではWindows NTやWind ows 95に対応した32ビット版のプログラムが数多く開発され, 複数のアプリケーションを使用したCG 作成も, 簡単に行えるようになっている 現在のCGでは様々な技法が用いられ, 実写と遜色ない作品も作られている このような作品の多くは,3 次元の多角形の面 ( ポリゴン ) で構成された3 次元モデルに, レンダリングを行うことで作成されている この3 次元モデルは,3 次元 CADを使用することで作成が可能であるため, 種々の構造物の構造設計の段階においてもCGが用いられている 設計段階でのCG 適用の一例 としては, 環境アセスメントでの景観シミュレーションが挙げられ, 現場写真と構造物のCGの合成写真が検討資料として使用されている このような中, 前報では送電用鉄塔 ( 以下鉄塔と略す ) の簡易 3 次元化システムの報告を行った このシステムは, 鉄塔のCGと現場写真の合成写真 ( フォトモンタージュ ) を作成することで鉄塔の景観評価が可能であり, 個別処理では煩雑な作業となる鉄塔 地形 架空線の3 次元モデルの作成を, 簡単なデータの入力で行える特徴を持っていたが, 処理時間の問題, 写真合成の方法, 材質感の検討不足等が未解決であった そこで本報告では, 使用ハードやソフトのグレードアップにともない, 機能の追加 改良 確認を行なうとともに, 処理の高速化を図るものとした さらに, 適用構造物を鉄塔以外の構造物への拡大と, 静止画ばかりでなく動画の作成も行うこととした *1 安治川鉄工建設 ( 株 ) 技術研究所 akeshima Nishiyodogawa-ku OSAKA JAPAN) 第一研究室 (Enginering Resarch laboratory,1st.lab,ag AJIKAWA corp.,4-11-88 T
2. 使用機器 ソフト構成本システムの特徴はパソコンでシステム構築する方針で開発している点である 今回は使用する基本 CADソフトなどがWindows NTやOpenGLに対応したのを機会に, 前報に比べて使用機器 ソフトのグレードアップを図っている 2.1 基本ソフトおよびハード構成使用した基本ソフトをTable 1に示す また, ハードの構成とその処理内容をFig.1およびTable 2に示す 基本ソフトにはTable 1に示すようにOSとして Windows NTと,Windows 95の2 種類を使用している これは機器, ソフトが相互に対応していないためである つまり使用しているスキャナー, プリンタはWindows 95に, CGソフト3D studio MAXはWindows NTにのみ対応していることによる 使用ハードはTable 2に示すようにCPUにPentium-Pro (200MHz) をもつパソコンを使用し, 主記憶容量は128MB と十分な容量を確保した また, スキャンコンバータを使用して, 作成したアニメーションのビデオ録画も可能である なお, データの保管についてはCGの画像データは比較的大きなデータになるため,MOを使用している パソコン Table 1. 基本ソフト 項 目 ソフト名 OS Windows NT,Windows 95 入力画面 Visual Basic CAD Auto CAD R13C4 CGソフト 3D studio MAX 写真合成 Photoshop コンパイラ Visual C++ V4.0 ( 注 : 表中の名称は各社の登録商標 ) スキャナ MO テレビ スキャンコンハ ータービデオデッキ フ リンタ Fig.1. ハード構成図 Table 2. ハードの性能 処理内容 ハード 性 能 処 理 内 容 パソコン CPU : P-Pro (200MHz) 鉄塔等構造物の3 次元化 主記憶容量 : 128MB 画像合成 テ ィスク容量 : 約 4GB スキャナー 解像度 :600DPI 写真画像の読みとり カラー レーサ ー露光熱現像転写フ リンタ 成果物の出力 プリンター 解像度 :400DPI スキャン RGB 信号 800*600 対応 RGB 信号 VTR 信号変換 コンバータービデオデッキ 画像 アニメーションの録画 MO 230MB MO ディスク対応作成図面 画像ファイル アニメ ーションファイルの保存
2.2 3 次元 CG 作成作業の流れ CG の作図は Fig.2 に示す手順で行なった 3. 鉄塔の簡易 3 次元化シス テムの改良 3 次元 CAD による作画 ( 自動 手動 ) 鉄塔の簡易 3 次元化システムについて改良検討を行っ た結果を以下に記す レンダリング用データファイル (DXF 3DS 等 ) CG ソフトによるレンダリング作業 3.1 3 次元スケルトン図作成機能の追加作成する鉄塔のイメージが簡単に確認できるように, 3 次元スケルトン作画機能を追加した Fig.3に示すように, 地形メッシュ上に鉄塔 10 基の連成系を作画することが容易であり, 簡単にイメージの把握が可能となった CG ファイル ( ビットマップ ) ペイントソフトによる CG の確認 修正 印刷 録画 Fig.2. 3 次元 CG 作成の流れ図鉄塔の作画は, あらかじめデータの入出力処理を行った後, 自動作成され, その他構造物については作画頻度の関係より, オペレーションで作成される また,CA D 上で作成する3 次元モデルのタイプは,CGソフトにデータを容易に送るために, 面を表現するサーフェィスモデルで作成することとしている なお,CGソフトでのレンダリング作業は, 次のような内容である (a) 材質感 ( マテリアル ) の割り当て (b) 光源の設定 (c) 視点の設定 ( カメラの設定 ) (d) モデルへの動作教示 ( アニメーション作成時 ) (e) 背景の設定 ( 撮影した画像データを背景に割り当てる ) (f) レンダリングの種類を選択また, ペイントソフトを使用するのは,CGと背景の重なり具合について修正を施すためである Fig.3. 鉄塔連成系のCAD 図面 3.2 レベル オブ ディテールの適用鉄塔の簡易 3 次元化システムでは,3 次元モデルとC Gの作成時間が問題となっていた 一般的に,CG 作成時間を削減するためは, 遠方にある3 次元モデルのポリゴンは必要以上の詳細を作らない, といった手法 ( レベル オブ ディテール ) が行われている そこで, 鉄塔を構成している要素 ( パイプ材, アングル材 ) の表現方法を見直し, 遠方用のモデルを作成した Fig.4はその検討結果であり, 近景用の詳細モデルと遠景用の簡略モデルを示している Fig.4. アングル材 パイプ材の表現検討
つぎに, 簡略モデルで作成した鉄塔 CGをFig.5に示す 全部材を簡略モデルで作成して鉄塔 CGをこの大きさに表示しても違和感は生じていないことがわかった またFig.5の3 次元モデルの作成時間は19 秒 ( 部材数約 600 本 ) であり, 詳細な3 次元モデルでの作成時間 1 50 秒に比べて約 1/7と時間短縮が図られた Fig.7. 作成した地形と鉄塔の 3 次元モデル Fig.5. 簡略 3 次元モデルによる鉄塔 CG 3.3 写真合成方法の検討ある地方自治体の景観シミュレーション技術指針には, 合成写真作成の詳細な手続きが記してあり, 視点場の条件設定により, 正確に現場写真とCGを合成することが可能なシステムを使用することが挙げられている しかし, 民間の場合, より簡便な方法で迅速に合成写真の作成が求められることがある そこで, より幅広いフォトモンタージュ作成のニーズに応えるため, 新たな合成写真作成の手法を確立するための検討を行った Fig.6に実際の鉄塔を含む現場写真を,Fig.7に3 次元モデルを示す Fig.7はFig.6の写真の視点場の地形 3 次元モデルであり, 国土地理院発行の50mメッシュデータを使用して作成した 鉄塔 3 次元モデルは現場写真の鉄塔と同規模とするため, 塔高約 50mのモデルを用いている この地形 3 次元モデルを使用することにより, 簡便な写真合成が可能となることがわかった このことより視点場の条件設定は,Table 3に示す条件のみを採ることにした Table 3. 視点場の条件設定視点場の条件設定情報源視点大縮尺の地図またはGPS ( 撮影位置 ) 注視点地形モデルと現地写真の ( 撮影方向 ) 地形の比較 視野カメラレンズの焦点距離 ( 視野角 ) 3.4 動画作成今回開発したシステムの目標は景観シミュレーション用のフォトモンタージュの作成であったが, 背景写真を使用しなければ,CGだけの要素であるため, 動画の作成も可能である そこで, 上空から鉄塔を観察するイメージを元にアニメーションの作成も行なった 4. 種々の構造物の CG 化 Fig.6. 撮影した写真 前項の報告は, 鉄塔における環境アセスメント用資料の作成例であるが, 環境アセスメントでの検討対象物はその他にも多く存在する そこで, これに該当する構造物のCG 化の可能性について検討を行い, 数種の構造物に対しCGを作成している ここでは, その中の一つである道路標識柱 ( 標識柱と記す ) の事例をFig.8に示す
Fig.8では, 設計図面から, オペレーションにて3 次元モデルを作成し,CG 化を行っており,3タイプの道路標識柱を合成した 標識柱のモデル作成については, データ入力の仕様が決まればプログラムによる自動作成も可能と考えられる 5. 結言 Fig.8. 道路標識柱を用いたフォトモンタージュの一例 本報で, 得られた成果は次の通りである (1) 鉄塔 3 次元化システムの処理速度が改善された (2) 合成写真作成の位置検証方法を確立した (3) 鉄塔の3 次元化のみならず, 各種構造物の3 次元化,CG 作成が可能となった (4) 各種構造物のアニメーションの作成が可能であり, それにより構造物がよりわかりやすく表現できるようになった