写真2 長谷川式簡易現場透水試験器による透 水性調査 写真1 長谷川式土壌貫入計による土壌硬度調査 写真4 長谷川式大型検土杖による土壌断面調査 写真3 掘削による土壌断面調査 写真5 標準土色帖による土色の調査 樹木医 環境造園家 豊田幸夫 無断転用禁止

Similar documents
Microsoft Word - 知っておきたい土壌改良と土壌調査のチェックポイント訂正

Taro-(2)畑地土壌の診断基準.jtd

PC農法研究会

Microsoft Word - 07_植栽基盤_0327_10時_

目 的 大豆は他作物と比較して カドミウムを吸収しやすい作物であることから 米のカドミウム濃度が相対的に高いと判断される地域では 大豆のカドミウム濃度も高くなることが予想されます 現在 大豆中のカドミウムに関する食品衛生法の規格基準は設定されていませんが 食品を経由したカドミウムの摂取量を可能な限り

カンキツの土づくりと樹勢回復対策 近年高品質果実生産のために カンキツ類のマルチ栽培や完熟栽培など樹体にストレスをかける栽培法が多くなっています それにより樹体への負担が大きく 樹勢が低下している園地が増えています カンキツ類を生産するうえで樹が適正な状態であることが 収量の安定とともに高品質生産の

2004,JICA筑波国際センター,講義

<82BD82A294EC82C697CE94EC82CC B835796DA>

植物生産土壌学5_土壌化学

Microsoft Word - ⑦内容C【完成版】生物育成に関する技術.doc

チャレンシ<3099>生こ<3099>みタ<3099>イエット2013.indd

VII

立川市雨水浸透施設設置基準 1. 目的この設置基準は 立川市雨水浸透施設設置補助金交付要綱 ( 以下 要綱 という ) の雨水浸透施設の設置にあたり 必要な事項を定めることを目的とする 2. 用語の定義補助対象の雨水浸透施設とは 雨水浸透ます 及び 雨水浸透管 とし 雨水浸透施設の設置に伴い発生する

第3章 植栽の設計

調査時点工事の終了後とする 調査期間調査地点調査手法5.2 生物の生育 生息基盤 5.2 生物の生育 生息基盤 (1) 東京 2020 大会の大会開催前 1) は 表 に示すとおりである 区分 予測条件の状況 表 ( 東京 2020 大会の開催前 ) 生物 生態系の賦存地の改

c7b

土づくりpdf用.indd

(1) 泥炭 ( ピート ) 泥炭は 土壌の膨軟化や保水性の改善を用途とした土壌改良資材である これは 泥炭が土壌中での分解が遅く有機物の蓄積性が高いことと 重量に対して10~30 倍の水分を保持できるためである また 分解 ( 腐植化 ) が進むにつれてCEC を増大させるため 土壌の保肥力を高め

注 ) 材料の種類 名称及び使用量 については 硝酸化成抑制材 効果発現促進材 摂取防止材 組成均一化促進材又は着色材を使用した場合のみ記載が必要になり 他の材料については記載する必要はありません また 配合に当たって原料として使用した肥料に使用された組成均一化促進材又は着色材についても記載を省略す

土壌貫入計図化ソフト_ペネトロダイヤグラフ取扱説明書

Microsoft Word - 堆肥Q&A.doc

品目 1 四アルキル鉛及びこれを含有する製剤 (1) 酸化隔離法多量の次亜塩素酸塩水溶液を加えて分解させたのち 消石灰 ソーダ灰等を加えて処理し 沈殿濾過し更にセメントを加えて固化し 溶出試験を行い 溶出量が判定基準以下であることを確認して埋立処分する (2) 燃焼隔離法アフターバーナー及びスクラバ

<4D F736F F D20834A C C7997CA89BB298B5A8F708E9197BF28914F94BC AAE90AC816A2E646F63>

[ 廃棄物の最終処分場 ( 管理型 )] 平成 29(2017) 年度 1 施設名称 1 号管理型処分場 (1) 埋立てた廃棄物の各月ごとの種類及び数量 規則第 12 条の 7 の 2 第 8 項イ 種類汚泥燃え殻紙くずばいじん 合計 単位 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月

3 平面駐車場の緑化事例 写真1 外周部の緑化例 写真2 駐車場内部の高木の植栽例 写真3 駐車広場の高木の植栽例 写真4 車止め後部の緑化例 写真5 駐車場部の芝生舗装例 写真7 駐車場部の緑化例 写真6 駐車場部の緑化例 写真8 駐車場部と車道部の緑化例 樹木医 環境造園家 豊田幸夫

写真1 自立登はんタイプの緑化 写真2 自立下垂タイプの緑化 写真3 ワイヤー補助資材使用の緑化 写真4 金網補助資材使用の緑化 写真5 フェンス使用の緑化 写真6 ネットを使用した緑のカーテン 写真7 ヤシマット併用金網補助資材と防風 写真8 ヤシマット併用金網補助資材を使用 パネルを使用したヘデ

工学と国際開発: 廃棄物を利用した水質改善

4. 再生資源の利用の促進について 建近技第 385 号 平成 3 年 10 月 25 日 4-1

参考 < これまでの合同会合における検討経緯 > 1 第 1 回合同会合 ( 平成 15 年 1 月 21 日 ) 了承事項 1 平成 14 年末に都道府県及びインターネットを通じて行った調査で情報提供のあった資材のうち 食酢 重曹 及び 天敵 ( 使用される場所の周辺で採取されたもの ) の 3

Microsoft Word - basic_15.doc

施設名施設住所項目一般埋め立てた廃棄物廃棄物 (ton) 擁壁の点検 遮水効果低下するおそれが認められた場合の措置 遮水工の点検 遮水効果低下するおそれが認められた場合の措置 周縁地下水の水質検査結果 斜里町清掃センター最終処分場斜里町以久科北 破砕ごみ 内容 生ごみ残差 合計 点検を行った年月日

Microsoft Word - 平成30年度空港独自施工パッケージ標準単価表_tanka_H30.4

土壌化学性診断 土壌の化学性関係項目を分析し 作物生育等との関係を解析し 改善すべき点をアドバイスします 診断メニューは 全項目診断 改善経過を見る主要項目のみの診断や微量要素の過不足が疑われる場合の診断とともに 解析 診断のみといったメニューを取り揃えています 一般分析土壌の施肥特性など把握すると

DOJOU_SHINDAN

i ( 23 ) ) SPP Science Partnership Project ( (1) (2) 2010 SSH

バークブロワ工法 による法面保護緑化への利用 バークブロワ工は 伐採材の破砕チップを使って法面の保護と植物の成長を助ける目的で活用する工法です 今まで利用できなかった根株や枝葉を保護材として用途を広げ 自然の力を最大限に利用した安全で環境にやさしいシステムです バークブロワ工法の概要伐採材を長さ 1

生け垣は 中木 高木を樹冠が重なる ( 目安は 30 センチメートル間隔 ) ように植栽しください エ既存樹木の面積 既存樹木 ( 敷地内で移植計画のある樹木も含む ) についは アからウまでにより算出した面積を緑化面積とすることができます ただし 高さが メートル以上の高木につい 単独木で計算する

2 地温 : 15~25 の温度帯に緩効性効果が一番高い 30 を超えると ウレアーゼ抑制材の分解が加速する上 微生物の繁殖も速くなり 微生物の活性を抑える効果が低くなる 3 土壌 ph: 弱酸性土壌 (ph5.5) からアルカリ性土壌 (ph8.0) まで土壌 ph が高いほど緩効性効果も高くなる

.....Z.\

茨木市では 緑あふれる魅力あるまちづくりを進めるため 民有地での緑化について その費用の一部を補助しています 生垣を設置 壁面を緑化 道路に面して新たに生垣を設置する 道路にはみ出している生垣を改良する [ 生垣緑化 ] 道路 壁面 擁壁 フェンス 市街化区域で 道路から眺望できる建築物や擁壁の壁面

<4D F736F F D2091E E8FDB C588ECE926E816A2E646F63>

DOJOU_SHINDAN

1 ph 平成 25 年度市内河川及び海域水質検査結果 液体中の水素イオン濃度を表わす値です 水中の水素イオン濃度の逆数の常用対数で表されます 7 を中性とし 7 より大きいものをアルカリ性 小さいものを酸性と言います 河川等採水地点環境基準 5 月 7 月 9 月 11 月 1 月 3 月 黒荷田

2012.indb

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F D2081A E682568FCD926E94D592B28DB E94D589FC97C78C7689E62E646F63>

失敗しない堆肥の使い方と施用効果

資 料 4-3 特定調達品目及び判断の基準等(案) (公共工事変更箇所抜粋)

<93798D488E7B8D488AC7979D977697CC E37817A2E786477>

大栄環境 ( 株 ) 和泉リサイクルセンター平井 5 工区管理型最終処分場 / 処理実績平成 26 年度契約処理 : 管理型埋立区分品目 平成 26 年 平成 27 年 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 燃え殻

はじめに 宅地造成等規制法が昭和 36 年に制定されてからおよそ半世紀を経過しました この間 平成 18 年には同法制定以来初めての抜本改正が行われています この改正は 阪神 淡路大震災 ( 平成 7 年 ) 新潟県中越地震 ( 平成 16 年 ) などで被災例が多かった大規模盛土造成地に対応するの

<4D F736F F D EBF8AC7979D8AEE8F BD90AC E A82CC89FC92E88A E646F63>

来る条件とした また本工法は がけに近接して施工する場合 掘削及び混合 攪拌から 転圧 締固め施工時 施工に伴うがけへの影響を避けることが難しいので がけに影響を与えず施工出来る場合を条件とした 具体的にはバックホー等の施工機械を がけに近接配置して施工することを避けるとともに 特にがけ近接部分の転

事 業 計 画 書

04千葉県農耕地土壌の現状と変化.indd

地下水の水質及び水位地下水の水質及び水位について 工事の実施による影響 ( 工事の実施に伴う地下水位の変化 地下水位流動方向に対する影響 並びに土地の造成工事による降雨時の濁水の影響及びコンクリート打設工事及び地盤改良によるアルカリ排水の影響 ) を把握するために調査を実施した また

例 2: 組成 Aを有するピアノ線用 Fe 系合金 ピアノ線用 という記載がピアノ線に用いるのに特に適した 高張力を付与するための微細層状組織を有するという意味に解釈される場合がある このような場合は 審査官は 請求項に係る発明を このような組織を有する Fe 系合金 と認定する したがって 組成

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

12 Ⅳ-2-(1)(2)物理性の改善

Microsoft Word - グラミネラル+の技術資料.doc

平成 29 年度 一般廃棄物最終処分場の維持管理記録 施設の名称 : 弘前市埋立処分場第 2 次 ( 第 1 区画 第 2 区画 ) 施設の位置 : 弘前市大字十腰内字猿沢 埋立廃棄物の種類及び数量 ( 単位 :kg) 区分 種類 平成 29 年平成 30 年 4 月 5 月 6 月

<4D F736F F D20956C8FBC8E738E968BC68F8A939997CE89BB8E7793B197768D6A816995BD90AC E348C8E3193FA8E7B8D73816A>

1 2

高性能 AE 減水剤を用いた流動化コンクリート 配合設定の手引き ( 案 ) - 改訂版 - 平成 21 年 6 月 国土交通省四国地方整備局

八王子市雨水浸透施設設置基準 1. 目的この設置基準は 八王子市雨水浸透施設設置補助金交付要綱 ( 以下 要綱 という ) の雨水浸透施設の設置にあたり 必要な事項を定めることを目的とする 2. 用語の定義雨水浸透施設とは 屋根に降った雨水を浸透させる構造をもった次に掲げる施設をいう (1) 雨水浸

<4D F736F F F696E74202D208E9197BF C F926E93798FEB8B7A8EFB8CB9>

第 3 章 間知ブロック積み擁壁の標準図 133

土壌含有量試験(簡易分析)

<4D F736F F D CA8E86816A94AD90B AEE8F8082C982C282A282C42E646F63>

Microsoft PowerPoint - 超入門土壌学.pptx

Microsoft Word - 12.法面保護工事

<4D F736F F F696E74202D C A834C838C815B83678DDC CC434F D4E C F88979

土づくりpdf用.indd

Microsoft PowerPoint - H24地下水盆管理学概論-05.ppt [互換モード]

研究成果報告書

品目 1 エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト ( 別名 EPN) 及びこれを含有する製剤エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネイト (EPN) (1) 燃焼法 ( ア ) 木粉 ( おが屑 ) 等に吸収させてアフターバーナー及びスクラバーを具備した焼却炉で焼却する ( イ )

スライド 1

<4D F736F F F696E74202D B78EF596BD89BB82CC8EE888F882AB C8E86816A F4390B3205B8CDD8AB B83685D>

様式処 3 号 最終処分場水質検査の記録 最終処分場名 : 守山南部処分場 測定対象 : 放流水 試料採取場所 : 調整槽放流水試料採取口 試料採取年月日 H H H H H H 測定結果の得られた年月日 H30.5.7

3 再生資材等の利用 (1) 再生骨材等の利用工事現場から 40km の範囲内に再資源化施設がある場合は 工事目的物に要求される品質等を考慮したうえで 原則として 再生骨材を利用する (2) 再生加熱アスファルト混合物の利用工事現場から 40km 及び運搬時間 1.5 時間の範囲内に再生加熱アスファ

ハーフェクトハリア_H1-H4_ _cs2.ai

参考資料

北清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7 4

Microsoft PowerPoint 発表資料(PC) ppt [互換モード]

危険度判定評価の基本的な考え方 擁壁の種類に応じて 1) 基礎点 ( 環境条件 障害状況 ) と 2) 変状点の組み合わせ ( 合計点 ) によって 総合的に評価する 擁壁の種類 練石積み コンクリートブロック積み擁壁 モルタルやコンクリートを接着剤や固定材に用いて 石又はコンクリートブロックを積み

練馬清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7

汚泥等の堆肥化調査研究事業

品川清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7

2 自然景観への配慮 (1) 良好な自然景観の保全 地形改変に際し現地形維持の努力 国の名勝指定を含む周辺の自然景観の保全 最小限の既存樹木の伐採 良好な景観を形成している樹木の保全 郷土種が含まれている表土の活用 植栽木の健全な維持 管理 良好な自然の利用者に対する配慮 (2) 緑化等による修景

足立清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7

Y O J & Y JO CONTENTS 阪急阪神東宝グループの一員として 阪急阪神 ホールディングス グループ 5 4 森組にとって初めてのCSRレポートの発行です 森組のCSRへの考え方や活動について できる限り簡潔に

<874B91E631308FCD976995C78D5C91A2907D8F572E707562>

4. 建物の荷重条件と積載荷重チェックシート 新規の建物の場合では屋上緑化をするということで構造補強を行うことが多いが 既存建物の屋上緑化の場合 では 建築基準法で決められている表 5のような積載荷重を考慮し 設計者などから情報を得て計画 設計する 必要がある < 表 1> 建築基準法 85 条で定

Title 東南アジア熱帯林における土壌酸性の変動とその規定要因 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 山下, 尚之 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL

液状化判定計算(道示編)V20-正規版.xls

有明清掃工場 平成 28 年度環境測定結果 1 排ガス測定結果 1 (1) 煙突排ガス 1 (2) 煙道排ガス 2 2 排水測定結果 3 3 焼却灰等測定結果 5 (1) 主灰 ( 含有 性状試験 ) 5 (2) 飛灰処理汚泥 ( 含有 溶出試験 ) 6 (3) 汚水処理汚泥 ( 含有試験 ) 7

< F2D8E9197BF A C8B4090AB8E918CB98A88>

2-5-1

理由 1) 備考人為的原因による汚染のおそれ地歴調査チェックリスト < 土壌汚染状況調査結果報告用 > 土壌汚染対策法 ( 第 4 条 第 5 条 ) 調査 第 4 条 第 5 条のいずれかを で選択すること 報告日 平成年月日 調査の対象となる 土地の所在地 調査実施者 指定調査機関の氏名又は名称

<8D488E96985F95B62E786C73>

Transcription:

土壌と植栽基盤 2012.04. 樹木医 環境造園家 豊田幸夫 1. 植物に適した土壌 土の三相と腐植植物の生育に適した土壌とは 物理性が良好 ( 通気性 透水性が良い 適度な保水性 適度な土壌硬度等 ) であることと 化学性が良好 ( 生育を阻害する有害物質がない 適度な酸度 保肥性と適度な養分等 ) であること さらに微生物性に富むものが適する 一般的な植栽地では 特に 適度な土壌硬度で 通気性 透水性が良好であることが重要であり 植栽に適した土壌の使用または土壌改良及び植栽基盤の造成が その後の植物の生育と維持管理に多大な影響を及ぼすので注意する必要がある 土は土の本体である無機物 有機物の固相 水の液相 空気 ガスの気相の三相からできており 一般の作物の生育に適する比率は固相 :40~50% 液相及び気相 :25~30% と言われている 腐植は 動植物の遺体などが土壌中で微生物によって分解 再合成された暗色の高分子化合物で 団粒構造の形成 窒素 リン及び微量要素等の供給 緩衝能力の向上 陽イオンを保持するなどの働きがある 一般的に腐植含有量は 3% 以上であることが望ましい 腐植は土壌では非常に重要である 2. 土壌調査 試験調査 試験項目は 建築工事監理指針 ( 国土交通省大臣官房庁営繕部監修 ) 等の基準を参考として実施する < 表 1> 土壌調査 試験の内容土壌調査 試験土壌調査 試験内容例現地調査 試験 敷地全般の排水状況 地下水位の調査 土壌を触診して保水性 土性などを調査 植物の生育状況や雑草の種類 土壌の色などによって土壌の肥沃度を調査する 透水性を長谷川式簡易現場透水試験器 土壌硬度を長谷川式土壌貫入計などで測定し 排水不良による根腐れ防止や 地盤の固さによる生育不良を防止する 室内試験 試験項目としては ph 電気伝導度 (EC) 腐植 塩基交換容量 (CEC) 粒径組成 ( 指頭法 ) 有効水分保持量などを実施する < 表 2> 土壌調査に使用される用語硬度 : 土壌の硬さ 長谷川式土壌貫入計では 1.0~1.5cm/drop: やや不良 根系発達阻害樹種あり 1.5~ 4.0cm/drop: 良 根系発達に阻害なし 4.0cm/drop 以上 : やや不良 膨軟すぎ ph: 土壌の酸性度を表したもの 一般の造園樹木では ph4.5~8.0 の間であれば生育にあまり影響はない 草花や野菜などは ph 調整が必要となる 陽イオン交換容量 (CEC): 土壌が陽イオンを吸着できる最大量 陽イオン交換容量は腐植と粘土の量と質に関係し 土壌の保肥力に影響する 陽イオン交換容量の高い土壌は肥料養分が流亡しにくい 単位 :me/100g(100g あたりのミリグラム単位 ) 等 電気伝導度 (EC): 土壌の塩類濃度 水溶性塩類の総量を表し 塩類濃度障害の有無の判定と肥料成分の多少の目安として使用 単位 :ms/cm( ミリジーメンス ) 1mS/cm 以上の場合は塩類濃度が高く生育阻害物質を含んでいる可能性が高い 0.1 ms/cm 未満の場合は肥料分が不足している可能性がある C:N 比 (C/N): 土壌 植物体 有機質肥料などの炭素と窒素の含有率の比で 有機物の分解程度 土壌の窒素肥沃度を表す 肥沃な畑土では C:N 比は8~12 pf: 土壌の水の状態を調べる 通常 有効水分保持量として pf1.8~3.0 で示される * 参考文献 : 新版 土壌肥料用語辞典 農文協

写真2 長谷川式簡易現場透水試験器による透 水性調査 写真1 長谷川式土壌貫入計による土壌硬度調査 写真4 長谷川式大型検土杖による土壌断面調査 写真3 掘削による土壌断面調査 写真5 標準土色帖による土色の調査 樹木医 環境造園家 豊田幸夫 無断転用禁止

3. 植栽基盤と有効土層厚植栽基盤とは 植物が健全に生育するために適した土壌と排水層を含めた土壌の層をいう 植栽基盤は細根などの吸収根の発達する肥料分のある上層と 支持根が生育する下層の 2つからなる有効土層 その下部にある排水層から構成される 植栽する植物の大きさによって有効土層厚は異なる < 図 3-1> 有効土層 < 表 3> 植栽樹木と有効土層の厚さ 分類 芝 地被植物 低木 (3m 以下 ) (3~7m) (7~12m) (12m~) 有効土層 上層 20~30cm 30~40cm 40cm 60cm 60cm 下層 10cm 以上 20~30cm 20~40cm 20~40cm 40~90cm * 引用図書 : 植植栽基盤整備技術マニュアル ( 案 ) 監修 : 建設省公園緑地課都市緑地対策室 ( 財 ) 日本緑化センター 4. 客土 植栽基盤土壌の質 客土とは 植栽するにあたり植え穴などに入れる植物の生育に好ましい ガレキなどの有害物が混入されてい ない物理性 化学性に優れた土のこと 一般的に植栽基盤の上層や植栽する樹木の根鉢周辺に使用される 客土 としては 畑土や黒土同等品を使用するのが一般的であるが 地域により若干異なる また環境問題より 表土 や現地発生土を有効利用することが望ましい その際 土壌検査を行い 植物の生育に好ましい土壌に改良する ことが重要である また 客土だけでなく 植栽基盤及び周辺の土壌にも留意する必要がある < 表 4> 国土交通省の植栽基盤土壌の基準 項目 化学性 物理性 ph 電気伝導度 (ds/m) 腐植 土性 透水性 (mm/hr) 土壌硬度 ( 長谷川式 ) 数値目安 5.0~7.5 0.1~1.0 3% 以上 砂壌土 or 壌土 30 以上 1.5~4.0cm 5. 客土量客土量は一般的には植え穴の量を基準に決めるが 根腐れ防止などの点から植え穴客土量で高植えとすることが望ましく さらに周辺の基盤条件が悪い場合には全面客土する また 植穴の客土や土壌改良の場合 排水層や通気管を設けることが望ましい 街路樹などの小さな植え桝では 根上がり防止や樹木の健全な生育を図るために 舗装下部 ( 路床部分 ) に特殊な土壌の根系誘導耐圧基盤材と透水シートを設置することも考慮することが必要である

< 表 5> 土壌改良材使用量対応表 < 写真 6> 根鉢 < 図 2> 植付け穴 < 樹木医 環境造園家 豊田幸夫 >

6. 植栽基盤の整備と土壌改良土壌と排水層を含めた植栽基盤がその後の植物の生育に影響を与えるため 植栽計画 設計及び施工では 植栽基盤の整備が重要となる 植栽する場所の土壌条件により 植栽整備の仕方が異なる そのため 土壌改良材や排水層の設置などそれぞれの状況に合わせた植栽整備をすることが必要となる 植栽基盤の整備での留意する点としては 植栽計画地の土壌の硬さ 水はけ 土壌 ph 土壌汚染 地下水位の高さなど土壌条件を十分調査する 特に土壌の硬さ 水はけの問題を解決することが重要である また 土壌改良は主に植栽基盤に使用する土壌の物理性 化学性を改善するために改良資材や排水資材 通気資材などを混入または設置し また 土壌の微生物性を改善するために堆肥などの有機物を施すことである < 表 6> 植栽基盤の改良項目と内容例改良項目改良内容例改良場所 状況 土壌硬度の改良排水性の改良 1 上層の 20~30cm を耕うん ( 普通耕 ) 一般的な現地盤での植栽地等 2 大きな樹木などを植える場合には 40~60cm の耕うん 3 上層と下層の土質が異なる場合などに行う混合耕うん 現地盤に客土した場合等 4 団結した土壌に高圧の空気を送り込み膨軟化するピッククエアレーション ( 空気圧入耕起 ) 既存の踏み固められ硬化した植込み地等 5 土壌の置換 客土 1 暗渠排水管の敷設 ( 合成樹脂透水管を敷設し 排水設備 地下水位が高い場所 海岸埋立地 を通して余剰水を排水 ) 水が溜まる危険性のある植込み等 2 排水層の設置と暗渠排水管の敷設 ( 根腐れ防止と下層の 地下水位が高い場所 水が溜まる 余剰水の排水 ) 危険性のある植込み 植え桝等 3 縦穴排水管 ( パーライト詰め通気管等 ) の設置 周辺地盤が固い植込み 植え桝等 4 土壌改良材 ( パーライトや堆肥等 ) の混合 マサ土 粘質土での植栽等 5 盛土 築山造成 地下水位が高い場所等 通気性の改良 1 土壌改良材 ( パーライトや炭 堆肥等 ) の混合 マサ土 粘質土での植栽等 2 通気管 ( パーライト詰め通気管等 ) の敷設 地下水位が高い場所 植え桝等 3つぼ堀改良 ( 通気管と堆肥の敷設 ) 踏み固められた緑地等 4 土壌の置換 化学性の改良 1 土壌改良材 ( バーミュキライトやゼオライト 完熟堆肥 炭等 ) の混合 2 物理性の改善とアルカリ中和剤 有機物の混入 ( 中和剤やピートモスと発酵下水汚泥コンポスト等 ) セメント系安定処理剤が使用されアルカリ化した場所等 3 物理性の改善と強制酸化促進剤等の混入 浚渫土など強酸性の還元土壌等 4 土壌の置換 養分性の改良 1 土壌改良材 肥料 ( 炭やゼオライト 堆肥等 ) の混合 2 土壌の置換 微生物性の改 1 堆肥 腐葉土等の有機改良資材及び炭の混合 良 2 落ち葉や堆肥などの有機物によるマルチング 3 表土の有効利用 緑地部分の建設計画地の場合等