Size: px
Start display at page:

Download ""

Transcription

1 標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き ( 案 ) 平成 30 年 3 月 9 日 特許庁

2

3 目次 Ⅰ. 本手引きの目的... 1 A. 標準必須特許を巡る課題と背景... 1 B. 本手引きの位置づけ... 3 Ⅱ. ライセンス交渉の進め方... 4 A. 誠実性 特許権者がライセンス交渉のオファーをする段階 実施者がライセンスを受ける意思を表明するまでの段階 特許権者が FRAND 条件を提示する段階 実施者が FRAND 条件のカウンターオファーをする段階 特許権者によるカウンターオファーの拒否と裁判 ADR による解決 B. 効率性 交渉期間の通知 サプライチェーンにおける交渉の主体 機密情報の保護 交渉の対象とする特許の選択 ライセンス契約の地理的範囲 プールライセンス SEP の透明性向上 Ⅲ. ロイヤルティの算定方法 A. 合理的なロイヤルティ 基本的な考え方 ロイヤルティベース ( 算定の基礎 ) ロイヤルティレート ( 料率 ) a. 比較可能なライセンスがある場合 (a) 同じ特許権者による比較可能なライセンス (b) 第三者の比較可能なライセンス (c) パテントプール b. 比較可能なライセンスが存在しない場合 料率を決定するその他の考慮要素 a. ロイヤルティ料率を受け入れたライセンシーの数 b. ライセンスの性質または範囲 c. 特許の必須性 有効性 侵害の該当性 i

4 d. 個々の特許の価値 e. 交渉経緯 B. 非差別的なロイヤルティ 非差別性の考え方 使途が異なる場合のロイヤルティ C. その他 定率と定額 一括払いとランニング方式 ii

5 Ⅰ. 本手引きの目的 A. 標準必須特許を巡る課題と背景 ( 標準と特許を巡る変化 ) 本手引きは 無線通信の分野などにおける標準規格の実施に必要な特許である標準必須特許 (SEP:standard essential patent. 以下 SEP という ) のライセンス交渉に関する透明性 予見可能性を高め 特許権者と実施者との間のライセンス交渉を円滑化し SEP を巡る紛争の未然防止及び早期解決を目的とするものです 発明の対価として技術に対して独占権を付与する 特許 と 技術をできるだけ広く普及させようとする 標準 は 基本的に相反する要請に対応するものであり 両者の間にはしばしば緊張関係が生まれます こうした両者の緊張関係は 1990 年代以降 通信技術がデジタル方式に移行し 最新の技術を特許で保護しながら標準化していく流れが進んでいく中で顕在化していき SEPに関する紛争が増加していきました こうした中 標準化団体 (SSO:standard setting organization. 以下 SSO という ) は 紛争を防止し 技術標準の実施に必要な SEP が広く活用されるとともに SEP に係る研究開発投資が適切に回収できるよう SEP に関する取り決め ( 以下 IPR ポリシー という ) を策定しています この中で SEP のライセンスが公平 合理的 非差別的 (FRAND:fair, reasonable and non-discriminatory. 以下 FRAND という ) となるよう ルールの整備を進めてきました 他方 SEPを巡る紛争については 内外の裁判例が蓄積するとともに 各国の行政機関もガイドライン策定等の取組みを進めており 一定の方向性が形成されてきています 1 まず 国民生活にとって重要な社会インフラやサービスを提供する事業がその使用するSEPによって差止めの脅威に直面するという いわゆる ホールドアップ の懸念に対しては 各国の裁判例は SEPによる差止請求権の行使が認められるのは限られた場合であるとの考えに収斂してきています また FRAND 条件でのロイヤルティの考え方に関する様々な裁判例も蓄積されてきています ( ライセンス交渉における変化 ) さらに 近年 IoT(Internet of Things) の普及により 様々なインフラや機器がイン 1 日本の公正取引委員会は 2016 年 1 月に 知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針 を改正し FRAND 宣言された SEP について独占禁止法違反になり得る行為を例示しています また 欧州委員会は 2017 年 11 月に 標準必須特許のライセンスに関するコミュニケーション ( 以下 欧州コミュニケーション という ) を公表し SSO に対して SEP の透明性の向上を呼びかけるとともに FRAND 宣言された SEP のライセンス条件に係る一般的な考え方を示しています 1

6 ターネットを通じてつながり合う 第四次産業革命 と称される変化が国内外において急速に 進展しています この結果 機器間の無線通信に係る標準規格の実施に必要な SEP を巡 るライセンス交渉は 大きな変化に晒されています 従来 情報通信分野のSEPを巡るライセンス交渉は 事業を実施している通信業界の企業同士を中心に行われてきました そのため 多くの場合 クロスライセンスによる解決が可能であり 事業開始後に必要に応じてライセンス交渉を行う慣行が定着していました また 互いに相手が保有する特許の権利範囲 必須性 価値について評価できたため 当事者間でライセンス料率についてある程度共通の相場観が共有されていました しかしながら 米国を中心に 保有する特許権の行使のみによって収益を上げるPAE (Patent Assertion Entity) など事業を自ら実施しない特許権者がSEPのライセンス交渉や紛争の当事者となるケースも見られます さらに IoTの浸透に伴い 様々な業種の企業が情報通信分野における標準規格を利用するようになり SEPのライセンス交渉に関わってくることになります 例えば SEPの特許権者たる通信業界の企業に加え 自らはSEPを保有しない自動車等の最終製品メーカーやサービス業界もSEPを利用する必要が生じ ライセンス交渉に関わってくることとなります こうしたライセンス交渉を巡る関係者の多様化に伴い ライセンス交渉の態様にも変化が生じています 上記のとおりライセンス交渉が通信業界の企業とそれ以外の業種の企業との間で行われるようになり クロスライセンスによる解決が困難になっています これに加え 必須性の判断やライセンス料率の相場観が大きく異なることなどにより SEPを巡る紛争が深刻化するおそれがあります 近年 製品ライフサイクルが短期化している一方 一製品当たりの特許の数が増加しているため 複雑化する交渉をより迅速かつ効率的に解決する必要性が高まっています ( 手引き策定の必要性 ) このように SEPを巡るライセンス交渉は 幅広い業種の企業が関わりを持つようになっており ライセンス交渉に慣れていない企業が安心して交渉に臨めるよう 適切な情報提供が求められるようになっています また 特許権者からのライセンス交渉のオファーに対し SEPについては差止めが認められないだろうと見込んで誠実に対応しようとしない実施者の行動を指す ホールドアウト の問題も指摘されており こうした課題への対応を求める声もあります さらに SEPの透明性向上が強く求められています SEPのロイヤルティは標準規格に関するSEP 全体件数に占める特定の特許権者の保有する割合に応じて算出される実務などを背景に 出願中の特許や規格の実施に必須ではない特許についてSEPであると宣言す 2

7 る実態があります 2 加えて FRAND 宣言された特許が実際に必須であるかどうかや 標準 の策定過程において仕様が変更されたことにより必須性が失われたかについて SSO は確 認せず SEP をリスト化する際に第三者の確認を経ることもありません こうした状況を踏まえ 特許庁としては ライセンス交渉の進め方やロイヤルティの算定方 法などについて 特許権者と実施者との間の利益のバランスを図る上で有益な考慮要素を 示すこととしました B. 本手引きの位置づけ本手引きで念頭に置いている SEP は 特許権者又は元の特許権者が SSO に対して FRAND 宣言した特許ですが FRAND 宣言されていない SEP や 商業的必須特許 ( 技術的には代替手段があって回避が可能であっても 回避するコストが高く割に合わないことから実質的に回避が不可能な特許 ) についても参照し得るものと考えられます 本手引きは 法的拘束力を持つものではなく 将来の司法の判断を予断するものではありません 現段階における内外の裁判例や競争当局の判断 ライセンス実務等の動向を踏まえたライセンス交渉を巡る論点をまとめたものです その中で どう行動すれば 誠実な交渉態度 と認められ 実施者は差止めを回避し 特許権者は適切な対価を得られやすいかについて説明を試みました 加えて 効率的な交渉のあり方についても述べます これらは 規範を設定しようとするものではありません 本手引きは これに従って交渉すればロイヤルティが自ずと決まるという レシピ のようなものではなく 合理的なロイヤルティを決めるための考慮要素を示すものです すなわち 本手引きに沿って対応すれば 機械的に解決策が導かれるというものではありません SEP のライセンス交渉や当事者の置かれている状況は多様であることから 解決策は個々のケース毎に見出さなければなりません 本手引きの策定に当たっては SEP のライセンス交渉に関する裁判例や実務の動向などをできるだけ客観的に整理して記述するよう努めました 本手引きでは SEPのライセンス交渉を行ってきた国内外の通信業界の企業だけでなく 通信業界に新規参入した企業や IoT 時代においてSEPを使う可能性が高まる通信業界以外の企業 SEPのライセンス交渉に慣れていない中小企業にも 役立つことを目指しています 本手引きは 交渉に入るに当たって踏まえておくべき基礎的な情報を整理したものであり 実りある交渉に向けた有用な出発点となることを期待します 2 特許権者は SSO に対して標準規格に関連する特許を提示して FRAND 条件でライセ ンスを行うことを宣言します 3

8 本手引きの策定に当たっては 2017 年 9 月 29 日から11 月 10 日まで提案募集を行い 国内外から約 50 件の提案が寄せられました 加えて 産業界 学界 法曹界と意見交換し 有益なコメントや意見が寄せられました 本手引きの内容は これらの提案やコメント等に負うところが大きいです SEP のライセンス交渉を巡る状況は大きく変化している中 本手引きは 常に進化し 生きた手引き であり続けることが重要です 今後とも 裁判例の更なる蓄積や 各国の政府機関や企業 有識者の意見を踏まえつつ 随時見直しを行っていきます Ⅱ. ライセンス交渉の進め方 A. 誠実性 FRANDには (1) 交渉プロセスと (2) ライセンス条件の二つの意味があります ライセンス交渉の最終目的は適切なライセンス条件の決着ですが 差止めが認められるかどうかについては交渉プロセスが左右します そこで この章では FRANDの一つ目の意味について述べます 特許権者は 原則 特許権侵害があれば差止請求権を行使することができます しかし 各国の裁判所は FRAND 条件でライセンスを受ける意思を有する誠実な実施者については FRAND 宣言されたSEPの保有者による差止請求権の行使を認めることに制限を加えている点で概ね一致しています 3 特に注目されているのが 欧州司法裁判所が2015 年にHuawei 対 ZTE 事件 4 について出した決定です そこでは 特許権者と実施者それぞれがとるべき対応を交渉の段階ごとに分けて整理し 両当事者間の誠実な交渉の枠組みを示しました この枠組みは 欧州における競争法の観点から交渉のルールを判示したものであり 各国の裁判所の判断が必ずしもこの枠組みに基づいて行われるものではありません しかし この枠組みは FRAND 宣言されたSEPの交渉ルールを規定する各国の根拠の違いにかかわらず 特許権者がFRAND に基づく義務を満たし 実施者が差止めを受けるリスクを最小化しつつ標準化された技術の利用を続けることができるようになるための 誠実な交渉を促進する考え方として一般的に有用であると評価されています しかしながら この枠組みでは 各交渉の段階において当事者が提供すべき情報の範囲や応答期間などについては具体的に示されておらず そのことがライセンス交渉の予見可能性の低さにつながっているとの声も聞かれます そこで 本手引きでは 欧州司法裁判所の示した枠組みをベースに 各国の裁判例や実務を参考にしつつ 以下の交渉の各段階における当事者の対応に関するより具体的な 3 SEP 保有者による差止請求権を制限する根拠は 国によって様々です (II.A.5. 参照 ) 4 Huawei v. ZTE ( 欧州 CJEU 2015 年 ) 4

9 論点を列記しました 繰り返しになりますが 本手引きは 規範を設定しようとするものでは ありません [ ライセンス交渉の各段階 ] 1. 特許権者がライセンス交渉のオファーをする段階 2. 実施者がライセンスを受ける意思を表明するまでの段階 3. 特許権者がFRAND 条件を提示する段階 4. 実施者がFRAND 条件のカウンターオファーを提示する段階 5. 特許権者によるカウンターオファーの拒否と裁判 ADRによる解決 1. 特許権者がライセンス交渉のオファーをする段階 ( 総論 ) 一般に 特許権者は 実施者による権利の侵害が疑われる場合には 関連する特許を特定し 侵害の態様を明らかにすることにより 実施者と交渉を開始します 5, 6 通常 特許権者は 実施者に対し 以下の資料を提示して 実施者が特許を侵害していることを立証する必要があります 7 (1)SEPを特定する資料( 特許番号のリスト 8 対象標準規格の名称 特許の地理的範囲など ) (2) 標準規格や製品と SEPの請求項との対応関係を示す資料 ( クレームチャート 9 ) (3)SEPの必須性を示す資料(SSOに対してFRAND 宣言した書面 10 など ) 5 Huawei v. ZTE ( 欧州 CJEU 2015 年 ) の枠組みでは まず実施者に対して 特許を指定し 侵害の態様を特定することで警告を行うとされました 6 通信分野は SEP の件数や特許権者数が多く 実施者は特許権者からライセンスの申出があってから初めて交渉を開始する場合が多いですが 事業を実施する前に 実施者側からライセンス交渉を持ちかけた場合でも 本手引きの枠組みを参照することは可能であると考えられます 7 この他に 第三者の専門家による分析 過去の裁判例などを提示することにより 特許権者はより誠実に交渉していることを示すことができると考えられます 8 NTT DoCoMo v. HTC ( ドイツ 地裁 2016 年 ) では 少なくとも 特許番号を示すことが必要であるとされました Sisvel v. Haier ( ドイツ 高裁 2016 年 ) では 10~15 件の代表的な特許 プラウドリスト (proud list) を提示することが業界慣行であるとされました 9 Sisvel v. Haier ( ドイツ 高裁 2016 年 ) と NTT DoCoMo v. HTC ( ドイツ 地裁 2016 年 ) では クレームチャートを示す必要があるとされました 10 NTT DoCoMo v. HTC ( ドイツ 地裁 2016 年 ) では 特許権者は 特許が SSO に対して標準必須であると宣言されていることを実施者に伝える必要があるとされました 5

10 ( クレームチャート ) クレームチャートとは 特許が標準規格の利用にとって必須であることや特許発明が現に実施されていることを特許権者が説明する書面です 一般的には SEPの場合 請求項の各要素と標準の要素の対応関係が示されます クレームチャートは 実施者にとっては侵害の有無の分析に有用であり 特許権者にとってはクレームチャートを提示することによって誠実に情報を提示していることを示すことにつながります なお 特許権者は 標準規格だけでなく 実際に製造している製品と特許の請求項との対応関係を示したクレームチャートを提供する場合もあります 一方で 特許の請求項が標準規格文書の範囲内にあり かつ 実施者がその製品が標準規格に準拠していることを公表しているような場合には 特許の請求項と標準規格との対応関係を示すことで足り 特許の請求項と製品との対応関係は必ずしも必要ではないこともあります 11 クレームの用語と標準規格書の対応箇所との関連を説明したクレームチャートがあり その説明の中に機密情報が含まれる場合もあります そのような場合には 交渉に当たっては秘密保持契約 ( 非開示契約 ) が結ばれることがあります (Ⅱ.B.3. 参照 ) もっとも クレームチャートに機密情報が含まれていないにもかかわらず クレームチャートを提示する条件として実施者に秘密保持契約の締結を強制することは 不誠実と評価される方向に働く可能性があります (SEPの必須性を示す資料) 特許権者による判断に基づきSSOに対してFRAND 宣言した書面は 両当事者がSEP の必須性の有無を判断する際の参考になり得ますが 特許が必須であるという特許権者による主張に基づくものであり 客観的に必須であることを必ずしも示すものではありません 12 特許権者と実施者が必須性に関する見解について合意できない場合 第三者である専門家が必須性に係る見解を提供することも考えられます これとの関連で 日本の特許庁は 特許発明の技術的範囲について審判合議体が法的拘束力のない見解を示す制度を有しており 特許発明の標準必須性に係る判断を行う新しいサービスを2018 年 4 月から開始します ( 特許権者が不誠実と評価される方向に働く可能性がある行為 ) 例えば 特許権者による以下のような行為は 不誠実と評価される方向に働く可能性が 11 Fujitsu v. Netgear ( 米国 CAFC 2010 年 ) では 原則として請求項は対象製品と比較されるべきであるが 対象製品が標準規格に沿って製造されている場合 標準規格と請求項との比較は 対象製品と請求項との比較と同様であるとされました 12 一般に SSO は SEP の必須性については判断しておらず 特許権者自身の宣言によっ て必須特許の登録が行われています 6

11 あります (1) 特許権者が 実施者に警告書を送付する前又は送付して間もないうちに差止請求訴訟を提起する 13 (2) ライセンス交渉をオファーする際に SEPを特定する資料やクレームチャート SEP の必須性を示す資料を十分に開示しない (3) 秘密保持契約を締結しなければクレームチャートを一切提示できないと主張する他方 以前ライセンスを受けていた特許権について ライセンス契約が失効した後に再びライセンス交渉をする際には 特許権者は十分な情報を出さなくても不誠実とは評価されないとした裁判例があります 実施者がライセンスを受ける意思を表明するまでの段階 ( 総論 ) 特許権者からライセンス交渉のオファーを受けた実施者は 内容に異論がある場合であっても 当該オファーを放置せずに 特許権者に対して誠実に応答することが必要です 15 SEPを特定する資料やクレームチャート等の提示を受けた後 実施者がSEPのライセンスを受ける必要があると考えるに至れば 実施者は特許権者に対し ライセンス契約を締結する用意があること すなわち ライセンスを受ける意思を表明することになります 特許権者からのライセンス交渉のオファーを受けた実施者は 必須性や有効性 侵害の該当性についての議論が継続している場合であっても こうした論点について留保しつつ 速やかにライセンスを受ける意思を表明しなければならないとする見解があります しかし 実務上は 必須性や有効性 侵害の該当性について議論を行った後に ライセンスを受ける意思を表明することが一般的です ( 実施者の対抗手段 ) 実務上は 必須性や有効性 侵害の該当性について当事者間の議論が平行線をたど ることが多くあります そのような場合 実施者はライセンスを受ける意思を表明するに当たっ 13 Realtek v. LSI ( 米国 連邦地裁 2013 年 ) では 実施者に対して警告書を送付して 1 週間以内に差止請求権を行使することは 契約違反であるとされました 14 Unwired Planet v. Huawei ( 英国 高等法院 2017 年 ) 15 Huawei v. ZTE( 欧州 CJEU 2015 年 ) では 標準必須特許権者からのオファーに対して 真摯に 当該分野で広く認められた商慣行に従い 誠実に対応しなければならないものの この点は 客観的要素に基づいて検証されなければならず とりわけ 遅延戦術の意味合いを含まないものでなければならないとされました 7

12 て 対抗手段について争うことを放棄する必要はありません 16, 17 実施者は ライセンスを受けようとしている特許権について 例えば 次のような論点について依然として争うことができます (1) 特許が真に必須特許であるかどうか (2) 実施者が特許を侵害しているかどうか (3) 特許が執行可能なものかどうか 18 (4) 権利行使を行っている者が特許の真の所有者であるかどうか (5) 特許が消尽していないものであるかどうか (6) 特許が有効なものであるかどうか 実施者は 上記の点について争う場合には その具体的な根拠を示すことが求められることがあり 例えば 以下の情報を提示することが有益です (1) 実施者が侵害していないという主張について特許権者が検討するために必要な製品やサービスに関する技術情報 (2) 特許が無効であることを主張する根拠となる先行技術 ( 合理的な応答期間 ) 特許権者から提示された資料が SEPを特定する資料やクレームチャートが含まれていないなど不十分な場合 実施者は特許権者に対し 速やかにこれらの資料を求めることが望ましいと考えられます 特許権者からそのような情報の提示を受けた後 実施者がライセンスを受ける意思を表明するのに必要な合理的な期間は 対象となる特許の数 技術の複雑さ 実施者の技術的知見のレベル 当事者間のそれまでの関係や取引 必須性や有効性 侵害の該当性についての議論の状況などの多様な要素によって異なります 仮に 対象となる特許の数が少なく 実施者が当該技術について知見を有しているような場合であれば 実施者は比較的短期間でライセンスを受ける意思の表明を行うことが合理的な場合もあると考えられます 16 Huawei v. ZTE ( 欧州 CJEU 2015 年 ) では 実施者は ライセンス交渉と並行して 特許の有効性や標準必須性を争ったり 将来そうすることを留保したりすることによっては批判されない とされており 実施者が対抗手段を放棄してライセンスを受ける意思を表明することを求めていません 17 Apple v. Samsung ( 日本 知財高裁 2015 年 ) では 実施者である Apple は対象製品が特許発明の技術的範囲に属しないこと及び特許無効の抗弁を主張していましたが Apple にはライセンスを受ける意思があるとされました 18 米国法においては 例えば 欺く目的で情報を隠すなど 米国特許商標庁に対して特許権者が不衡平な態度をとった場合 権利行使不能となる可能性があります (Therasense v. Becton ( 米国 CAFC 2011 年 )) 8

13 一方 対象となる特許の数が多く 実施者が当該技術について知見を有していないような場合であれば 数カ月程度かかることが合理的と言える場合もあります 例えば 第三者から供給を受けている部品等が権利行使の対象となっているケースにおいては 供給元である第三者に対して技術の内容を確認することが必要となるため 相応の時間がかかる場合もあります 実施者は 最初に応答するまでに時間を要する場合には その理由を具体的に示しつつ 特許権者にその旨を伝えることが望ましいと考えられます ( 実施者が不誠実と評価される方向に働く可能性がある行為 ) 例えば 実施者による以下のような行為は 不誠実と評価される方向に働く可能性があ ります (1) 応答に時間がかかることについての理由を説明せず 交渉に全く応じない 19 (2) ポートフォリオ全体で交渉するかどうかが決まっていない段階で 全ての SEP につ いての必須性 有効性の根拠がそろわない限り交渉を開始しないと主張する (3) 特許権者に対して他者との秘密保持契約があるため開示できないような情報の 提供を執拗に求めることなどにより交渉を遅延させる (4) 詳細なクレーム解釈を含むクレームチャートを特許権者に要求しながら 秘密保 持契約の締結に一切応じない (5) 実質的に内容のない回答を繰り返す (6) 他にライセンスを取得していない者が存在することのみをもって ライセンスの取得 を頑なに拒む 仮に 特許権者から提示された資料が不十分な場合であっても 実施者がそれに対して 何ら返答をせず放置すれば 実施者が不誠実と評価される方向に働く可能性があります このような場合 実施者は 少なくとも特許権者に対して具体的な資料の提示を求める等 の対応をすることが望ましいと考えられます 必須性や有効性 侵害の該当性についての議論が継続している場合は 速やかにライセ ンスを受ける意思を表明しないことをもって直ちに不誠実と評価される方向に働くことにはな らないと考えられます 一方で こうした場合であっても 必須性や有効性 侵害の該当性 について留保しつつ 速やかにライセンスを受ける意思を表明することを求める裁判例も一部 存在します 20 そのため 差止めのリスクを最小化する観点から 交渉の早い段階でライセン 19 米国司法省及び米国特許商標庁の SEP の救済に関する政策声明 (2013 年 ); Apple v. Motorola ( 米国 CAFC 2014 年 ) では 実施者が FRAND ロイヤルティを一方的に拒否したり 不合理に交渉を遅延させたりした場合 差止請求権の行使は正当化されるとされています 20 St. Lawrence v. Vodafone and HTC ( ドイツ 地裁 2016 年 ) では 実施者は通信事業者であり 被疑侵害物品である携帯電話の製造会社と協議する必要があるとしても 特許権者による最初の警告から ライセンスを受ける意思を表明するまで 5 ヶ月かかったこと 9

14 スを受ける意思を表明することも考えられます 3. 特許権者が FRAND 条件を提示する段階 ( 総論 ) 実施者がFRAND 条件でライセンスを受ける意思を表明した場合 特許権者は FRAND 条件によるライセンス条件を書面で速やかに実施者に対して提示します 特許権者は 提示した条件が合理的であり非差別的なものであるかどうかについて実施者が的確に判断できるよう ロイヤルティの算定方法 (Ⅲ. 参照 ) に加えて それがFRAND 条件であることを説明する具体的な根拠を示す必要があります 21 具体的な根拠としては 以下のものなどが挙げられます 22 (1) 特許権者が求めるロイヤルティがどのように算出されたのかについての説明 23 ( 特許権者の提示した条件がFRAND 条件を満たしていることを 実施者が客観的に把握することができる程度に示すことが必要 24 ) (2) 比較可能なライセンスが存在する場合には 当該ライセンスの一覧及びその条件 25 ( 秘密保持契約に照らして 可能な範囲で開示 (Ⅱ.B.3. 及びⅢ.A.3.a. 参照 )) ( 特許権者が不誠実と評価される方向に働く可能性がある行為 ) 例えば 特許権者による以下のような行為は 不誠実と評価される方向に働く可能性があります (1) FRAND 条件を提示する前に 優位に交渉を進めることを目的として ライセンス は明らかに長すぎると判示されました また St. Lawrence v. Deutsche Telekom and HTC ( ドイツ 地裁 2015 年 ) では 実施者が携帯電話製造会社であることを踏まえると 実施者が侵害訴訟の提起を知ってから ライセンスを受ける意思を表明するまでに 3 ヶ月かかったことは長すぎると判示されました 21 Philips v. Archos ( ドイツ 地裁 2016 年 ) では FRAND 条件のオファー時にロイヤルティの算定方法を含めていなかったことから 差止請求権が認められませんでした 22 例えば 算定の基礎とした製品や部品の価格 対象の標準に関連する SEP に対する特許権者の保有割合 特許権の存続期間満了日なども示すことができると考えられます 23 Sisvel v. Haier ( ドイツ 高裁 2016 年 ) では ロイヤルティ算定の基礎となるファクタ ーを示す必要があるとされました 24 NTT DoCoMo v. HTC ( ドイツ 地裁 2016 年 ) では 特許権者は 提示した条件が FRAND 条件を満たしていることを客観的基準に基づいて理解できるようにする必要があるとされました 25 Sisvel v. Haier ( ドイツ 高裁 2016 年 ) では ポートフォリオと同様の質及び範囲のライセンスプログラムがあればそのプログラムとの比較を出す必要があるとされました 10

15 26, 27 を受ける意思を表明した実施者に対して差止請求訴訟を提起する (2) 交渉中にもかかわらず 実施者の取引相手に対して警告書を送付する 28 (3) 明らかに不合理な条件を最初に提示する 29 (4) ロイヤルティの算定方法やライセンスオファーが FRAND 条件であることの説明をし ない 4. 実施者が FRAND 条件のカウンターオファーをする段階 ( 総論 ) 実施者は 特許権者が提示したFRAND 条件に異論がある場合 FRAND 条件のカウンターオファーを行うことになります 実施者は 当該カウンターオファーの中で ロイヤルティの算定方法 (Ⅲ. 参照 ) に加えて それがFRAND 条件であることを示す具体的な根拠を示すことが必要です 具体的な根拠としては 以下のものなどが挙げられます (1) 実施者が提示するロイヤルティがどのように算出されたのかについての説明 (2) 比較可能なライセンスが存在する場合には 当該ライセンスの一覧及びその条件 ( 同等の技術について他社に支払い 又は他社から支払われているロイヤルティ パテントプールによるロイヤルティなど ) ( 合理的な応答期間 ) 特許権者によるFRAND 条件の提示を受けてから 実施者がカウンターオファーの提示を行うまでの合理的な期間は 個別具体的に判断されることになります 技術的に複雑なものでなければ 比較的短期間でカウンターオファーを行うことができる場合もあります その一 26 Realtek v. LSI ( 米国 連邦地裁 2013 年 ) では FRAND 条件のライセンスオファーをする前に差止請求権を行使することは 契約違反であるとされました 27 Microsoft v. Motorola ( 米国 第 9 巡回区控訴裁 2012 年 ) では 米国裁判所が判決を下す前に Motorola がドイツにおいて関連のケースで差止請求権を行使することは 権利濫用であり高圧的であるとされました 28 Imation v. One-Blue ( 日本 地裁 2015 年 ) では FRAND 条件によるライセンスを受ける意思を有する実施者の取引先に対して 特許権者が差止請求権を有するかのように告知することは権利の濫用であり 不正競争に該当するとされました 29 Microsoft v. Motorola ( 米国 連邦地裁 2012 年 ) では FRAND 宣言は当事者が FRAND 条件のライセンスを目指して交渉することを意味するため 最初のオファーで FRAND でない条件を提示することは 必ずしも SSO に対する義務に反するものではないが 交渉中のオファーは契約で暗に求められる誠実さや公平さがなくてはならない とされました 一方 Unwired Planet v. Huawei ( 英国 高等法院 2017 年 ) では オファーが FRAND 料率を上回る又は下回る条件であっても 交渉を妨げるものでない限り 正当な申出であるとされました 11

16 方で 技術的に複雑であるなどの理由により応答の準備に一定の作業を要する場合は 数か月で応答することが合理的な場合もあると考えられます カウンターオファーを提示するまでに必要な期間を決定する要素としては 対象となる特許の数 技術の複雑さ 対象となる製品の数及び種類 比較可能なライセンス料率の有無 グローバルなライセンスと地域的なライセンスのいずれについて交渉しているのか などが挙げられます ( 実施者が不誠実と評価される方向に働く可能性がある行為 ) 例えば 実施者による以下のような行為は 不誠実と評価される方向に働く可能性があります (1) 特許権者から提案されたライセンス条件がFRAND 条件を満たすことについて具体的な根拠が示されているにもかかわらず FRAND 条件のカウンターオファーを出さ ない 30 (2) ロイヤルティの算定方法やカウンターオファーがFRAND 条件であることの説明をしない一方 特許と標準規格との技術的関連性や特許の有効性等についての議論が残っている場合や 特許権者からの具体的なFRAND 条件の提案がない場合には 実施者が FRAND 条件のカウンターオファーを示さなかったことをもって直ちに不誠実と評価される方向に働くことにはならないと考えられます しかし 差止めのリスクを最小化する観点からも 実施者は 特許権者に対し 具体的なFRAND 条件の提示を速やかに促すことが望ましいと考えられます 特許権者によるカウンターオファーの拒否と裁判 ADR による解決 ( 総論 ) 特許権者が実施者によるカウンターオファーの受入れを拒み 交渉が決裂した場合には 当事者は裁判での解決を図ることとなります 32 当事者は 訴訟の代わりとして 調停や仲裁などの裁判外紛争解決手続 (ADR: alternative dispute resolution. 以下 ADR という ) を通して解決することに同意 30 Apple v. Motorola ( 米国 CAFC 2014 年 ) では 侵害者が一方的に FRAND ロイヤルティを拒絶したり 同様の目的のために交渉を非合理的に遅延させたりする場合に 差止請求権の行使は正当化されると判断されました 31 NTT DoCoMo v. HTC ( ドイツ 地裁 2016 年 ) では 実施者が 特許権者による FRAND 条件のオファーから 1 年半 訴えの提起から半年間応答せずカウンターオファーを提示しなかった事案において 特許権者による差止請求権の行使を認めています 32 Realtek v. LSI ( 米国 連邦地裁 2013 年 ) では 実施者が FRAND 条件のロイヤルティの支払いを拒否したり FRAND 宣言による交渉につくことを拒否したりした場合 差止請求権の行使は保証されるとされました 12

17 することもできます (ADRのメリット) 裁判では何十 ましてや何百もの権利の必須性 有効性 侵害の該当性を確定することは現実的でないことから 当事者も重要な特許権を数件選んで訴訟を提起することが多く見られます 一方 調停や仲裁においては 多数の特許を一括して処理することが可能であることから 多数の特許が対象となるSEPを巡る紛争の早期解決に向けては 調停や仲裁等のADRの活用は有効です また ADRは 遅延工作やコストを増大させる目的で用いられる場合でない限り 訴訟に比べて早期かつ費用対効果が高い解決を図ることができます 33 加えて 当事者は 独自の規則や手続を柔軟に決めることができるというメリットがあります 例えば 当事者は 仲裁人が必須性や有効性を考慮せずにFRAND 料率だけを決めるということについて合意することができます 34 特に 国際仲裁は ニューヨーク条約により 海外での仲裁判断の認定及び執行が行われるので グローバルな一括解決を図ることができます ADRの利用を申し出又は受け入れることは 誠実な交渉態度と判断される一要素になり得ますが ADRの利用を断ることによって その当事者の交渉態度が直ちに不誠実と評価される方向に働くことにはならないと考えられます ( 実施者による担保の提供 ) 欧州司法裁判所がHuawei 対 ZTE 事件で示した枠組みでは ライセンス契約締結の前にSEPを使用している場合 その対案が拒絶された時点から 被疑侵害者は 例えば 銀行保証の提供や必要額の供託などの手段によるなど 当該分野で広く認められた商慣行に基づいて適切な担保を提供しなければならないとされ その算定のためのSEPの使用に対応する過去の行為の数やこれに係る会計報告も提供できなければならないとされました こうした担保の提供は 誠実さの考慮要素にはなり得ますが 日本や米国など欧州以外の地域では必ずしも一般的な実務慣行ではないため 欧州以外では担保の提供がないことをもって直ちに不誠実と評価される方向に働くことにはならないと考えられます 33 仲裁などの ADR では 全ての事例において訴訟よりも早期かつ費用対効果が高くなるとは限りませんが 仲裁は 一般的に効率性について訴訟よりも多くの利点を有するというコンセンサスが広く得られています ( 米国法曹協会 Benefits of Arbitration for Commercial Disputes ) 34 パネルは特定の問題についてのみ決定する または単に拘束力のない提案を作成するなど ADR の内容は当事者が決めることができます 13

18 ( 差止請求権の行使 ) SEPによる差止めについて各国で裁判例の積み重ねが進んでいますが 誠実に対応している実施者に対する差止請求権の行使は制限される一方 実施者の交渉態度が不誠実である場合に差止請求権の行使をすることは適切とする点においては概ね一致しています もっとも SEP 保有者による差止請求権を制限する根拠は 国によって様々です 例えば 米国においてはSSOに対するFRAND 宣言が第三者に及ぼす契約上の効果やeBay 最高裁判決で示された差止めの要件の観点 35 英国においてはSSOに対するFRAND 宣言が第三者に及ぼす契約上の効果や比例性の原則の観点 36 欧州においては支配的地位の濫用による競争法違反の観点 37 日本では権利濫用の観点から それぞれ差止請求権の行使が制限された裁判例があります 38 また 各国の競争当局は FRAND 条件でライセンスを受ける意思を有する者に対する差止請求権の行使は競争法違反となり得ることを示しています 米国では一般に 裁判所による差止め ( 米国特許法 283 条 ) は ebay v. MercExchange ( 米国 連邦最高裁 2006 年 ) で示された 4 要件が考慮されます 原告は (1) 回復不能の損害があること (2) 制定法による損害賠償のような救済手段では不十分であること (3) 差止めが認められた場合の被告の損害よりも原告の損害が大きいこと (4) 差止命令で公共の利益が損なわれないこと を立証しなければなりません SEP に関しては Microsoft v. Motorola ( 米国 連邦地裁 2013 年 ) と Apple v. Motorola ( 米国 CAFC 2014 年 ) では SSO に対する FRAND 宣言を特許権者と SSO との契約 ( 第三者のためにする契約 ) と捉え 特許権者はこの契約に基づいて実施者から支払われるロイヤルティにより救済されるため ebay 判決の要件の一つである 回復不能の損害を被っている を満たさないとして 差止めを認めませんでした 36 英国では一般に 差止め ( 英国特許法 61 条 ) は裁判所の裁量事項であると解されています Unwired Planet v. Huawei ( 英国 高等法院 2017 年 ) では SSO に対する FRAND 宣言による効果が第三者にも及ぶとされ Unwired Planet に差止めを認めないことは比例的でないと判示されました 37 Huawei v. ZTE ( 欧州 CJEU 2015 年 ) では 実施者への警告や FRAND 条件の提示を書面で行うなど 特許権者が差止めによる救済を請求する前に行わなければならないステップを具体的に示しています 特許権者がこれらのステップを踏んだ後で実施者が不当に遅延した場合は 差止請求権の行使は競争法違反とはならず 正当なものとなる とされました 38 日本では 一般に差止め ( 日本特許法 100 条 ) を制限する規定は特許法にありませんが SEP に関しては Apple v. Samsung ( 日本 知財高裁 2014 年 ) では ライセンスを受ける意思を有する者に対する差止請求は 権利の濫用に当たるとされました 39 例えば Google v. Motorola ( 米国 連邦取引委員会 2013 年 ); Motorola v. Apple ( 欧州 欧州委員会 2014 年 ); Samsung v. Apple ( 欧州 欧州委員会 2014 年 ); Huawei v. ZTE ( 欧州 CJEU 2015 年 ); 日本公正取引委員会 知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針 (2016 年 1 月 ) 14

19 B. 効率性ライセンス交渉を円滑に進めるためには 誠実性の観点のほかに 効率性の観点も重要です 以下では FRAND 条件下での効率的な交渉に向けて検討されるべき点を整理します [ 効率的な交渉の要素 ] 1. 交渉期間の通知 2. サプライチェーンにおける交渉の主体 3. 機密情報の保護 4. 交渉の対象とする特許の選択 5. ライセンス契約の地理的範囲 6. プールライセンス 7. SEPの透明性向上 1. 交渉期間の通知当事者は 交渉に当たり 上記 Ⅱ.Aの各段階それぞれについて 対応に要する期間の見通しを相手方に知らせることが 交渉を円滑にする上で望ましいと考えられます 必要となる交渉期間は個別ケースごとに大きく異なります 合理的に予想される交渉期間についての考慮要素としては 例えば 対象となる特許の数 技術の複雑さ 異なる製品の数と対象となる製品の種類 製品の種類と性質 第三者のサプライヤーの交渉への参加の要否 裁判所や特許庁で必須性や有効性などについて係争中の同様の案件の存在 特許権者が既に供与しているSEPのライセンスの数 などが挙げられます 交渉の進展に伴い 途中で交渉期間を変更するような状況が発生する可能性も当然あります しかし 予想される交渉期間を早い段階で議論することで 両当事者は 迅速な交渉を期待することが可能となります 特に 製品ライフサイクルが短期化する中 交渉が長期間に及ぶと 技術が陳腐化してタイムリーに開発投資を回収できなくなることが懸念されます このため 実施者が製品ライフサイクルを考慮した交渉期間の目安を権利者に通知することは 誠実な交渉態度と評価される方向に働く一要素となり得ると考えられます 2. サプライチェーンにおける交渉の主体 ( 総論 ) IoTの浸透に伴い 標準規格の利用が活発になり 製造のサプライチェーンの中のどのレベルの主体 ( 例えば 最終製品メーカーか部品メーカーか ) がライセンス契約の締結主体となり あるいはライセンス交渉に参加すべきか という点が議論となっています ライセンス交渉の主体については 業界の慣行に従って当事者間で合意できる場合は問題ありませんが 15

20 例えば 最終製品に組み込まれた部品等が特許を侵害しているような場合に問題となってきます 通信分野では 通信サービスの提供者である移動体通信事業者もライセンス契約の締結主体やライセンス交渉に参加する者の候補となり得ると考えられます 特許権者は ライセンス管理の容易さの観点から 最終製品メーカー ( 通信分野の場合は移動体通信事業者 以下同じ ) とライセンス契約を締結することを望む傾向が見られます 他方 最終製品メーカーは 当該部品等について最も技術的な知見を有するサプライヤーがライセンス契約の当事者となることを望む傾向が見られます ライセンス料の支払いについてはサプライヤーが責任を負う旨の特許補償契約の締結が慣行となっている業界では 特にその傾向が強く見られます ( ライセンス交渉の主体となる実施者 ) 一般に 最終製品メーカー 部品メーカー 従属部品メーカーなど サプライチェーンの中のどのレベルの主体を選んでライセンス契約の締結を目指すかは まずは特許権者が決定する立場にあります 他方 FRAND 宣言されたSEPについては ライセンスを求めるすべての者にライセンスをしなければならないかどうかに関して国際的に議論があります 40, 41 最終製品メーカーの中には 部品メーカーであるサプライヤーがライセンス交渉の当事者となることを求めてきた場合に特許権者が交渉を拒むことは差別的な対応であり FRAND 条件に反するとの意見も見られます 一方で 特許権者が最終製品メーカーに対してライセンス交渉の当事者となることを求めてきた場合に最終製品メーカーが全く交渉に応じない姿勢を示すことは適当ではないという意見もあります また 特許発明の本質的な部分がサプライヤーの供給する部品に閉じている場合はサプライヤーがライセンス交渉の主体となることが適切であるという意見がある一方 特許発明の本質的な部分が最終製品にまで貢献している場合は 最終製品メーカーがライセンス交渉の主体となることが適切であるという意見もあります いずれにしても サプライチェーンの中でライセンスを受けている者がいない場合は サプライヤーであるか最終製品メーカーであるかにかかわらず 差止請求が認容されるリスクがあるた 40 SEP 保有者は サプライチェーンにおけるレベルにかかわらず ライセンスの取得を希望する全ての主体に対してライセンスしなければならないという考え方は 一般に license to all と呼ばれています これに対し FRAND 宣言は 標準技術を利用する全ての当事者にライセンスすることを求めているのではなく 標準技術を利用したい者が標準技術にアクセスできることを担保するための仕組みであるという考え方は 一般に access for all と呼ばれています 41 なお 米国電気電子学会 (IEEE) は 2015 年に IPR ポリシーを改定し 特許権者はライセンスを求める全ての者に対してライセンスする意思がなければならないとしました この見解については SEP 保有者から異論が唱えられています (IEEE-SA Standards Board Bylaws (2015 年 )) 16

21 め留意が必要です ( 効率性の観点からの整理 ) 最終製品メーカーとライセンス交渉を行うことで 製品に含まれる全ての部品について一括でライセンス交渉をして必要な交渉の数を最小化し 交渉コストを削減できるとともに サプライヤー間のライセンス条件の乖離などの問題を回避できるなど 最終製品メーカーが交渉の当事者となる方が効率的な場合があるとの意見があります また 一般に 特許で保護された物が特許権者や実施権者によって適切に市場に置かれた場合 特許権は消尽していることから 特許権者は その物を購入した者に対して 権利行使することはできないとされています 42 このため 特許権者が一つのサプライチェーン内で様々なサプライヤーとライセンス契約を結ぶと どの権利が消尽しているかが明らかでなくなり 二重取りの問題が生じやすくなりますが 最終製品メーカーとライセンス交渉を行うことで こうした問題はある程度回避することができるとの意見もあります 他方 最終製品メーカーよりもサプライヤーの方が技術的知見を有している場合 サプライヤーが交渉の主体となる方が効率的な場合もあり得るとの意見があります また 少数のサプライヤーが多数の最終製品メーカーに部品を供給しているような場合 特許権者は サプライヤーとライセンス交渉を行うことで 交渉の数を最小化することができるため サプライヤーが交渉の当事者となる方が効率的な場合があるとの意見もあります ( 交渉を支援する参加者 ) 最終製品メーカーがライセンス交渉の主体となる場合でも 技術内容に詳しい者が交渉に参加することで ライセンス交渉がより効率的になるとの意見があります 例えば 最終製品メーカーは部品を購入して用いているのみで その部品に係る技術の詳細を把握していない場合は その部品の技術の詳細を知るサプライヤーが交渉に直接参加することが効率的です こうした場合には これらの者が ライセンス交渉の直接の主体になるかどうかにかかわらず ライセンス交渉に参加することが望ましいと考えられます 42 例えば 部品メーカーが対象特許のライセンスを受け 最終製品メーカーに販売された部品が組み込まれた製品が製造 販売された場合 その部品で実質的に実施されている特許については 最初の販売で特許が消尽するため サプライチェーン内の最終製品メーカーに対してライセンス料を要求することはできなくなるとした裁判例があります (Quanta v. LG ( 米国 連邦最高裁 2008 年 )) 他方 Apple v. Samsung ( 日本 知財高裁 2015 年 ) では 特許権者が最終製品の生産にのみ用いる部品を販売した場合には 特許は消尽する一方 第三者が黙示的な許諾もなく当該部品を用いて最終製品を製造している場合は 特許は消尽しないとの見解を示しています 17

22 ( ライセンス料の負担の分配 ) 製品販売後に 特許権者からライセンス料を要求された場合に サプライチェーン内でどう分担するかが問題となります 特に 情報通信分野においては 事業開始後にライセンス交渉を行う慣行が定着しているため こうした問題が生じやすい傾向があります ライセンス料の支払いをサプライヤーが負う旨の特許補償契約が締結されている業界もあります そのような場合 仮に最終製品メーカーが主体となって交渉したライセンス料が 部品販売価格に比べ過大であってもサプライヤーは負担を求められる可能性があります こうした事態を避けるため 特許補償契約の対象からSEPを除いている実務も見られます 特許補償契約において サプライヤーがライセンス交渉に関与する機会を与えられなかった場合には サプライヤーはライセンス料を負担する責任はない旨の条項を盛り込むことが合理的という考え方もあります 3. 機密情報の保護 ( 総論 ) 秘密保持契約 ( 非開示契約 ) は ライセンス交渉の中でビジネス面あるいは技術面で機微な情報を開示する場合に 第三者には開示されないことを確保するものです 秘密保持契約を締結することにより 当事者は機微な情報を提示しやすくなり ライセンス交渉が効率化する場合もあります 一方で 当事者は 秘密保持契約を締結した場合 誠実に交渉していたことの証拠として後の裁判において提出できなくなるリスクがあるため 契約の文言に留意することが必要です ( 実施者側の機密情報 ) 実施者側の機密情報としては 市場予測や販売情報などビジネスに関連した情報や 製品に関する一般に公開されていない技術的な情報などが含まれます 例えば 交渉の対象となっている特許が 一般に対外公表していない物 ( 例えば 半導体の設計図やソフトウェアのソースコードなど ) や製造方法に関するものである場合には 特許発明を実施しているか否かについて両当事者が判断するために 実施者が機密の技術情報を提示することが必要となる場合があります 一方で 交渉の対象となっている特許が 特許権者によって入手が可能で侵害の有無を判断できる物 ( 例えば 汎用品の機械など ) に関するものである場合 実施者が特許発明を実施しているかどうかは製品の調査によって明らかにできることから 機密の技術情報を提示する必要はないことがあります 議論の対象が特許クレームと規格書の対応関係である場合には 実施者が製品に関する技術的な機密情報を提示する必要がないと考えられます 18

23 ( 特許権者側の機密情報 ) 特許権者側の機密情報としては クレームの用語と標準規格書の対応箇所との関連の説明や ライセンス条件がFRANDであることを説明するために用いる比較可能なライセンスの料率や額などの条件などが挙げられます ( 秘密保持契約における条項 ) 当事者間において秘密保持契約を締結する場合は それぞれの交渉の事情を考慮して 例えば 以下の条項について議論することになります (1) どの情報を機密にすべきか (2) 誰が機密情報を受け取るのか (3) 機密情報であることの表示方法 (4) 口頭により伝達された情報が含まれるのか (5) 契約の有効期間 (6) その後の訴訟における抗弁に使用できるのか ( ライセンス交渉の結果の秘密保持 ) 当事者間において ライセンス交渉の結果についても秘密保持の対象とすべきかについて検討することがあります 当事者は ライセンス合意そのものの存在自体も機密とすることがある一方 ライセンス交渉の結果を公開して 将来 比較可能なライセンスとして用いることができるようにするために ライセンスの合意の存在やその内容をあえて機密としないこともあります これらを考慮して 当事者は 例えば ライセンス合意の存在や全ての項目を機密とするか 金銭面に関する条件だけを機密とするか 過去の売上などの販売量に関する情報だけを機密とするか などについて検討することとなります 4. 交渉の対象とする特許の選択実際のSEPのライセンス交渉においては 一括で解決することが効率性の観点からは好ましいことから ポートフォリオ単位での交渉が実務慣行として行われています 他方 特許権者が大量のSEPを保有している場合 当事者は 交渉の対象を代表的な特許に限定することにより 交渉プロセスの合理化を図ることについて議論することがあります その際 当事者は 選択した特許を代表とした理由を説明することが望ましいと考えられます 例えば 実務的には 数百件の特許が関連する場合 当事者は最も価値が高いと考え 19

24 る10~15 件の代表的な特許について議論を行い 43 さらに任意のサンプルを抽出して全体の価値を効率的に把握するといった手法も行われています また 当事者は ライセンス交渉の対象として SEPに加え SEPでない特許を含めるか否かについても議論することが考えられます 44 例えば 商業的必須特許についても交渉に含める方が効率的な場合もあります ライセンス契約の地理的範囲 46 当事者は ライセンス契約の地理的範囲に関して 地域を限定したものにするか グローバルに適用されるものにするかについて検討することとなります 当事者は 実施者が世界の複数の地域で事業を実施し あるいは製品を販売しているか 特許権者がこれらの地域で特許権を保有しているかどうか といった点について考慮して 地理的範囲を設定することとなります 情報通信規格を中心に標準化技術が国際的に流通している現状を考慮すると 実施者が現在製品を製造又は販売している国や地域に加え 将来的に製品を製造又は販売する可能性がある全ての国や地域におけるSEPを交渉の対象とすることが効率的だという議論があります 47 他方 実施者が特定の国や地域においてのみ実施している あるいは具体的に実施の計画がある国や地域だけを範囲とするライセンス契約を締結すべきとの議論もあります また グローバルなライセンス契約としつつも 地域によってライセンス条件を異なるものとすることもあります Sisvel v. Haier ( ドイツ 高裁 2016 年 ) では 400 件以上のポートフォリオで 件のプラウドリスト (proud list) を提示し それを選択した理由を説明することを特許権者に求めています 44 ライセンス交渉において 特許権者が SEP に加えて SEP でない特許を対象とすることを求める場合 競争法の 抱き合わせ に抵触しないよう留意することが必要です 45 SSO によっては IPR ポリシー内で SEP の対象は技術的必須特許 ( 標準規格を実施するためには 技術的に回避ができない特許 ) のみであると定義し 明確に商業的必須特許を除外しています 46 一国の裁判所がグローバルにライセンス条件を設定することについては 様々な議論があり 裁判所の対応も分かれています Unwired Planet v. Huawei ( 英国 高等法院 2017 年 ) では 実施者側の Huawei は一国の裁判所におけるグローバルな条件設定を拒んでいたものの 裁判所は グローバルにライセンス条件を設定しました 一方 TCL v. Ericsson ( 米国 連邦地裁 2017 年 ) でも グローバルにライセンス条件が設定されましたが TCL 側は裁判所でグローバルなライセンス条件を設定することに合意していた点に留意する必要があります 47 Unwired Planet v. Huawei ( 英国 高等法院 2017 年 ) では 実施者が現在又は将来的に製造又は販売する可能性がある全ての国や地域における SEP が対象とされました 48 Unwired Planet v. Huawei ( 英国 高等法院 2017 年 ) では FRAND 条件によるライ 20

25 他方 実施者が世界の複数の地域において事業を実施し あるいは販売している場合に それぞれの国や地域における特許の状況等を考慮して 特定の国や地域における特許権のみを対象とするライセンス契約の締結を求めることはあり得ますが この場合は 交渉の遅延行為とならないよう留意が必要です 6. プールライセンスパテントプールは 複数の特許権者が保有する特許を一括で効率よくライセンスする仕組みであり 特許権者と実施者が幅広く参加すれば ライセンス交渉の効率性を高めることになります また プールのライセンス条件は通常公開されることが多く 他のライセンス条件を検討する際に 比較可能なライセンス条件として考慮することができます さらに プールに登録される特許権については 通常 第三者により必須性がある程度チェックされます これは 必須性を担保するものではないものの SEPの透明性向上につながります 他方 既に個別にライセンスを行っている特許権者がパテントプールにも参加している場合 ロイヤルティの二重取りとなるおそれがあり パテントプールが必ずしもライセンス交渉の効率性を高めることにはならないとの意見もあります また クロスライセンスによる解決を目指す実施者にとっては パテントプール管理団体は発明の実施主体ではないため 必ずしも効率性を高めることにはならないという意見もあります 7.SEP の透明性向上 SEPの必須性や有効性に関する透明性が向上することは 効率的なライセンス交渉につながります SSOは SEPに関する情報のデータベースの整備を促進することが期待されます 49 そして 特許権者は SSOがSEPの情報をアップデートすることができるよう SEPに関する情報を随時 SSOに提供することが期待されます SSOがSEPに関する情報のデータベースを充実させ 広く提供することにより 特許権者はライセンス交渉のオファーやFRAND 条件を提示する際に必要な書類を入手しやすくなります 実施者も標準規格に関連するSEPの情報を容易に入手できるようになります センスはグローバルなものであるとする一方 地域的な差異を考慮して 主要市場と中国及びその他の市場に分けて異なる料率を示しました また TCL v. Ericsson ( 米国 連邦地裁 2017 年 ) も同様に 地域を米国 欧州 その他の国に分け グローバルに料率を設定しました 49 欧州コミュニケーションは SEP に関する透明性を向上させるため SSO に対して SEP のデータベースの質の改善を促すとともに SEP の標準必須性について試行プロジェクトの実施について言及しています 21

26 Ⅲ. ロイヤルティの算定方法 既に述べたとおり FRANDには (1) 交渉プロセスと (2) ライセンス条件の二つの意味がありますが この章では FRANDの二つ目の意味について述べます 合理的で非差別なロイヤルティについては確立された判断基準がないため SEPのライセンス交渉では 適切なFRAND 条件のロイヤルティについて当事者間の主張が激しく対立することが多く見られます そこで この章では 実務慣行や過去の裁判例で示された枠組みをベースに ロイヤルティの算定方法について詳述します ただし 算定方法についての考慮すべき論点をまとめたものであり 具体的なロイヤルティの料率や額を導くものではないことに留意する必要があります A. 合理的なロイヤルティ 1. 基本的な考え方ロイヤルティは 特許が製品に対して貢献している価値を反映するものであり 一般に (1) ロイヤルティベース ( 算定の基礎 ) (2) ロイヤルティレート ( 料率 ) によって得られます この考え方は SEPのロイヤルティの算定においても共通です しかしながら ロイヤルティの算定方法については 以下に示すように 標準に組み込まれた後に加えられた価値をどのように扱うか 算定の基礎をどのように特定するか ロイヤルティレートをどのように求めるかなどについて 様々な考え方が示されており 激しい議論が展開されています 50 ( 標準に組み込まれた後に加えられた価値 ) SEPのロイヤルティは 標準が市場において広く採用され広まる前 ( 一般に ex ante と呼ばれます ) の価値のみを反映すべき という見解があります この見解は 技術が標準に組み込まれる場合 通常は複数の選択肢の中からその技術が選択されますが いったん標準に組み込まれれば 当該技術は標準に準拠する上で必要であるから利用されるに過ぎない 51 との考え方に基づいています こうした観点からすると ロイヤルティは 当該標準規格が広く使われる前に設定されることが望ましく 当該標準規格が公表されてから速やかに設定されることにより 実施者は当該ロイヤルティをより適切に製品価格に反映することが可能になるとの考え方があります 50 米国の裁判所では 料率の決定にあたり ジョージアパシフィックファクター ( 以下 GPF という ) と呼ばれる 15 の要素が考慮されることが多く見られます FRAND 宣言された SEP については 修正された GPF が採用されています (Microsoft v. Motorola ( 米国 連邦地裁 2013 年 )) 51 Ericsson v. D-Link ( 米国 CAFC 2014 年 ) 22

27 一方で 特許権侵害における損害賠償額の算定の際には 特許発明が実施されるときの価値を考慮すべきであり その発明の価値の一部は 標準化の成功によってもたらされるものであるから ex ante という考え方は現実的ではないとする考え方もあります また ex ante という考え方を採用すると 標準化による利益が 実施者のみに分配され 特許権者にその利益が分配されないことになるから妥当でないとする考え方もあります ロイヤルティベース ( 算定の基礎 ) ( 問題の所在 ) 算定の基礎については 主として最小販売可能特許実施単位 (SSPPU:Smallest Salable Patent Practicing Unit. 以下 SSPPU という ) 53 か市場全体価値 (EMV:Entire Market Value. 以下 EMV という ) 54 かという議論が行われてきました 55 SSPPUとは 対象製品全体のうち SEPの技術が最小販売可能特許実施単位である部品に閉じていれば SEPが貢献している部分として当該部品の価格が算定の基礎となるという考え方です 他方 EMVとは SEPの技術が最終製品全体の機能や需要の牽引に貢献している場合は 最終製品全体の価格を算定の基礎とするという考え方です 特許権者は SEPの技術が最終製品全体の機能に貢献していることや 最終製品の需要を牽引していることを根拠として EMVの考え方を採用することを主張するケースが多く見られます 他方 最終製品メーカーは SEPの技術が最終製品全体の中の部品に閉じているとの立場から SSPPUの考え方を採用することを主張するケースが多く見られます 通信技術が製品の機能のコアな部分を占める携帯電話等に用いられていた状況においては EMVを採用することについて大きな異論はありませんでした しかし 通信技術が製品の機能の一部を占めるに過ぎないようなスマートフォンや自動走行車などが出現するようになるにつれて SSPPUとEMVのいずれを採用すべきかについて激しい議論が展開されるようになっています 52 Unwired Planet v. Huawei ( 英国 高等法院 2017 年 ) では SEP 保有者の技術が標準規格に取り入れられることに伴う価値の上昇分や標準規格を使用する製品の価値の一部を SEP 保有者の利益の一部とすると判断されました 53 In re Innovatio ( 米国 連邦地裁 2013 年 ) では まず Wi-Fi チップの平均価格からロイ ヤルティの算出を始めるとされました 54 CSIRO v. Cisco ( 米国 CAFC 2015 年 ) では 特許発明が最終製品全体に貢献していると特許権者が証明できたときは ロイヤルティベースとして EMV によることになる とされました 55 LaserDynamics v. Quanta ( 米国 CAFC 2012 年 ) では ロイヤルティの算定の基礎は 原則 SSPPU であり EMV の採用は特許発明が製品全体の需要を牽引する場合に限られるされました 23

28 ( 算定の基礎の考え方 ) しかしながら SSPPUとEMVのいずれの考え方も SEPの技術の本質的部分が貢献している部分に基づいて算定の基礎を特定しようとする点では共通しています 56 加えて SSPPUやEMVのいずれかが唯一の算定の基礎というわけではありません 大切なことは 個別ケースごとに適切な算定の基礎が採用されることです 例えば SEPの技術の本質的部分がチップよりも大きいデバイスにおける機能を動作させるものであり チップそれ自体を超えてデバイス全体に貢献をしている場合 チップの価格を算定の基礎に用いることは SEPの技術によって与えられる真の価値を反映することにはならないと考えられます 他方 SEPの技術の本質的部分の貢献がチップ自体に閉じており 当該チップが独立して客観的な市場価値を有している場合は チップの価格を算定の基礎に用いることは適切な場合があります また SEPの技術の本質的部分がチップを超える場合であっても SSPPUはSEPの技術が製品のどの部分の機能まで貢献しているかを積み上げ的に精緻に分析する上での議論の出発点として有効であるとの意見があります 他方 EMVを議論の出発点としつつ 標準規格が最終製品に貢献している割合を乗じることにより 算定の基礎とする考え方も存在します 57 なお EMVは算定の基礎となる額が大きくなり EMVを採用することで最終的なロイヤルティが高くなる傾向があるとの見方もあります しかし 算定の基礎が小さければ 料率は高くなる一方 算定の基礎が大きければ 料率は低くなるため 理論的には 算定の基礎の選択が最終的なロイヤルティの額の大小に直結するものではないという意見もあります 3. ロイヤルティレート ( 料率 ) ( 料率の考え方 ) 適切な料率の算定方法については様々な考え方がありますが 裁判例においてよく用いられる考え方としては 1 既に市場において存在している比較可能なライセンスを参照する考え方 ( ボトムアップ型 ) と 2 算定の基礎に占める特定の標準に係るSEP 全体の貢献割合を算定し その後 個々のSEPに割り当てるという考え方 ( トップダウン型 ) があります 実務としては 比較可能な料率が既に市場において存在するのであれば まずその料率 56 Ericsson v. D-Link ( 米国 CAFC 2014 年 ) では 最終的な合理的ロイヤルティの算定は 特許技術が最終製品に付加した増加価値を基礎としなければならないとされました 57 Apple v. Samsung ( 日本 知財高裁 2015 年 ) では 無線通信機能以外にもデザインやユーザーインターフェース カメラ オーディオ機能などが対象製品に貢献していることを踏まえ 標準規格に準拠していることが対象製品に寄与したと認められる割合 ( 寄与率 ) を乗じて算定の基礎とすべきであるとされました 24

29 を比較参照するのが明快だと考えられます 58 2つのアプローチは 相矛盾するものではありません ボトムアップ型とトップダウン型の両方のアプローチで料率を算定し お互いを比較することによって より信頼性の高い料率を算定することも考えられます 59 a. 比較可能なライセンスがある場合比較可能なライセンスとして 同じ特許権者の保有する特許 同一あるいは異なる標準について他者が保有する特許によるものなどがあります 裁判例では 比較可能なライセンスであるかを決定するための考慮要素として 例えば 以下の観点が挙げられています (1) ライセンスが同一又は類似の特許に係るものであるかどうか (2) ライセンスが関連性のない技術や他の製品を含むものであるかどうか 60 (3) ライセンスが類似の支払い形態をとっているかどうか ( 例えば 一括払いか出来高払いかなど ) (4) ライセンスの性質が排他性の面で同一かどうか 61 (5) 類似の地域に適用されるものであるかどうか ( 例えば 地域を限定したものかグローバルなものであるかなど ) (a) 同じ特許権者による比較可能なライセンス当事者が現在置かれたライセンスの状況と完全に類似しているライセンスを特定することは 実際には困難な場合が多くあります 一方で 過去のライセンスが締結された状況が 現在の当事者が置かれた状況と異なるような状況下であった場合であっても 当事者がその違いを説明できるのであれば 一般的には料率の決定に当たり参照することは可能です 58 LaserDynamics v. Quanta ( 米国 CAFC 2012 年 ) では 特許化された技術についての実際のライセンスは 何が合理的な特許のロイヤルティを構築するかということに関し証拠価値が高い なぜなら そのような実際のライセンスは 市場における特許された技術の経済的な価値を最高に明確に反映しているからである とされました 59 Unwired Planet v. Huawei ( 英国 高等法院 2017 年 ) では ボトムアップ型のアプローチを採用しつつ トップダウン型のアプローチでロイヤルティ スタッキングが生じていないかどうかダブルチェックを行っています 他方 TCL v. Ericsson ( 米国 連邦地裁 2017 年 ) においては 裁判所は トップダウン型のアプローチを採用しつつ ボトムアップ型のアプローチでダブルチェックを行っています 60 ResQNet v. Lansa ( 米国 CAFC 2010 年 ) では クレームされた技術についての経済的必要性と明確に関連付けられたレートよりも関連性の薄いライセンスに依存すべきではない とされました 61 Lucent v. Gateway ( 米国 CAFC 2009 年 ) では GPF3( 排他的 or 非排他的 ) は考慮 要素として適用され得るとされました 25

30 が 状況の違いの程度によって有効性は変わり得ます 62, 63 他方 過去にライセンスが締結された状況と当事者が現在置かれている状況との間に大きな違いがあり その違いを合理的に説明することが困難であるような場合は 過去のライセンスを比較可能なものとして捉えることは困難であり 適切なロイヤルティレートを決定する際に参照する価値は小さくなります 64 (b) 第三者の比較可能なライセンス同一の標準に係るSEPを保有する第三者による過去のライセンス条件を参照する場合 特許権者が保有するSEPの数と当該第三者が保有するSEPの数とを比較し その割合を乗じることで 適切な料率を算出することができる場合もあります この場合 特許の価値を考慮して料率の調整を行うこともあります (c) パテントプール FRAND 条件の料率を決める上での客観的な基準として 同じ標準規格に係るパテントプールにおける料率と比較する方法があります 特許権者が保有するSEPの標準規格への貢献度がパテントプールにおける特許の標準規格への貢献度よりも高い場合であれば パテントプールにおける料率より高い料率となります 一方 特許権者が保有するSEPの標準規格への貢献度がパテントプールにおける特許の標準規格への貢献度よりも低い場合には 料率はパテントプールにおける料率よりも低くなります また パテントプールにおいては 交渉 契約 ロイヤルティ管理等の面で効率化が図られていることを考慮して相対的に低いロイヤルティに設定されている可能性があることにも留意する必要があります 65 ただし パテントプールのライセンス条件が常に比較対象となるわけではないことに留意する必要があります パテントプールのライセンス条件が比較可能なものであるかどうかを検討する際は パテントプールのカバー率やライセンスの実績などを考慮することが適当です Ericsson v. D-Link ( 米国 CAFC 2014 年 ) では 比較ライセンスがより多くの特許をカバーしているか クロスライセンス条項があるか 外国特許をカバーしているか等が多機能製品における特許の価値のパーセンテージとして考慮されるとされました 63 Virnetx v. Cisco ( 米国 CAFC 2014 年 ) では ライセンスの比較の程度が考慮要素と なるとされました 64 LaserDynamics v. Quanta ( 米国 CAFC 2012 年 ) では 訴訟中でのライセンスは比較ライセンスとして適切でないとされました 他方 訴訟中のライセンスも比較可能なライセンスとして参照し得るとする意見もあります 65 Microsoft v. Motorola ( 米国 連邦地裁 2013 年 ) では ロイヤルティはプールロイヤル ティの 3 倍とされました 66 Microsoft v. Motorola ( 米国 連邦地裁 2013 年 ) では デファクト RAND ロイヤルテ 26

31 b. 比較可能なライセンスが存在しない場合 ( 総論 ) 比較可能なライセンスが存在しない場合 算定の基礎の中で標準に係る全てのSEPが貢献している割合を算定して適切な料率を導くことになります こうした算定方法は 一般にトップダウン型のアプローチと呼ばれています このアプローチでは 標準に係る全てのSEPが貢献している範囲 ( 標準をカバーする全てのSEPのロイヤルティ料率の合計 ) が料率の上限となります 67 ( ロイヤルティ スタッキングの回避 ) 多数の特許権者が別個にロイヤルティを要求する場合 それぞれのロイヤルティが積み上がって標準を実施するためのコストが過度に高くなってしまうことがあり得ます この問題は ロイヤルティ スタッキング ( ロイヤルティの累積過剰 ) と呼ばれ 同じ標準に係るSEPを多数の特許権者が保有している場合に起こり得る問題です トップダウン型のアプローチでは 標準に係る全てのSEPが貢献している範囲が料率の上限となるため こうしたロイヤルティ スタッキングを回避する上で有用です こうした観点から ボトムアップ型のアプローチを採用する場合においても 併せてトップダウン型のアプローチによる算定を行い ロイヤルティ スタッキングが生じないかどうかをチェックする手法も有益です 4. 料率を決定するその他の考慮要素上記で示したとおり ロイヤルティは1 算定の基礎 2 料率で求められますが 具体的には 以下の手続によって 合理的なロイヤルティを算定します 1 対象製品のうち SEPの技術の本質的部分が貢献している部分を含むように算定の基礎を特定し 2 算定の基礎にSEPの技術が貢献している割合 ( 料率 ) を乗じる これに加え 3 その他の様々な考慮要素が加味されます ィレートとしてパテントプールを利用する際の問題点は プールにおける特許数によるロイヤルティ分配構造が 標準に対する又は裁判上の仮想交渉での実施者の製品に対する特定の SEP の重要性を考慮していないということにある とされました 67 Apple v. Samsung ( 日本 知財高裁 2014 年 ) では トップダウン型のアプローチを採用し 当事者の主張をもとに 3G の累積ロイヤルティ料率を 5% とされました また TCL v. Ericsson ( 米国 連邦地裁 2017 年 ) では 当事者の主張をもとに 累積ロイヤルティ料率を 2G/3G では 5% 4G では 6% 又は 10% とされました 27

32 以下では 実務上よく考慮される要素を示しますが これら以外の考慮要素が加味され ることも考えられます a. ロイヤルティ料率を受け入れたライセンシーの数 ロイヤルティ料率を受け入れたライセンシーの数が多いほど そのロイヤルティ料率は確立されたものであると主張しやすくなります よって ライセンシーの数はロイヤルティ料率が合理的であることの示すための考慮要素となります 68 b. ライセンスの性質または範囲 69 ライセンスの性質が独占的か非独占的か または 製品の販売地域や販売先が制限されているかは 適切なロイヤルティを考慮する際の要素となります c. 特許の必須性 有効性 侵害の該当性 SEP が必須でない場合や 特許が無効である場合 実施者が特許を侵害していない場合は 実施者はライセンスを受ける必要はないと考えられます しかしながら 当事者間の交渉においては SEPの必須性 有効性 侵害の該当性に関する議論がある場合であったとしても 訴訟のリスクやコスト 標準規格の将来の実施を考慮して ライセンス契約を締結する場合も多く見られます その場合 実施者は 相応のロイヤルティのディスカウントを求めることがあります また 存続している特許の件数は時間と共に変化していきます 契約期間中に存続期間が終了する特許権や新たに設定登録される特許権についても ライセンス交渉において考慮されます d. 個々の特許の価値個々の標準必須特許の価値は本来異なるため 適切なロイヤルティを算出する場合 単純な保有比率を乗じるのではなく より正確に個々の特許の価値を加味した重み付けを行う場合があります 70 例えば 標準において非常に重要な特許はより高い料率とすべきである一方 重要性が低い特許はより低い料率とすべきとする見解もあります もっとも 個々の特許の価値を正確に分析することは容易ではないことから 現実的には 68 GPF1 に対応 69 GPF3 に対応 70 例えば In re Innovatio ( 米国 連邦地裁 2013 年 ) では 特許権者の特許は標準に対して中度から高度の重要性を有しており それゆえ他の SEP よりも高いレートを保証するとされました 28

33 個々の特許の価値を等しいものとして扱う ( プロラタ :Pro Rata) ことが多いのが現状で す 71 e. 交渉経緯当事者間での交渉経緯は 適切なロイヤルティの決定に影響を与える要素です 誠実な交渉をした実施者と 不誠実な交渉に終始した実施者とでロイヤルティが異ならないとすると 誠実な交渉をしようとするインセンティブが失われます その結果 例えば ライセンスオファーをしてから早期のうちにライセンスを取得したライセンシーや ライセンスオファーをする前に自らライセンスの取得を求めてきた実施者に対しては 相応のディスカウントを行うという考え方があります このように 同様の状況にある実施者と比較した交渉時間の長さが適切な料率を決定する際の考慮要素になり得ます 実質的には交渉を遅延させたり妨げたりする実施者はより高額なロイヤルティを支払う可能性があります ロイヤルティは 交渉でまとまった場合と比較して 訴訟が開始した後には高くなることもあります 一般の特許ライセンスでは 特許権者は 訴訟前のロイヤルティを割引で提示することがありますが これは 一度訴訟が始まれば 合理的と考えられるロイヤルティがより高額になり得るということを示唆しています 72 実施者は こうした点を十分に踏まえ ライセンス交渉に臨むことが必要です 73 B. 非差別的なロイヤルティ SEPの特許権者は 実施者に対し FRAND 条件でのロイヤルティを求めることができますが そのロイヤルティは非差別的でなければなりません 何が非差別的かについては 当事者間の主張が対立している状況にあります 1. 非差別性の考え方 FRAND によるライセンス条件は非差別的でなければなりませんが このことは 全ての潜 在的なライセンシーが同じ料率や額でライセンスを受けるべきことを意味するものではなく 同 71 例えば ロイヤルティの分配方法としては 宣言された特許の件数ではなく 標準策定段階における寄書のうち採用された技術の数に基づいて配分する手法もあります この手法は 必須ではない特許の影響を排除することが可能です 72 LaserDynamics v. Quanta ( 米国 CAFC 2012 年 ) では 訴訟自体が強制的であるため 訴訟外で到達し得たライセンス料率よりも 訴訟を通して和解合意に至った場合のライセンス料率の方が高額になり得るとされました 73 実施者が訴訟前にライセンスを受け入れた場合と 訴訟後にライセンスを受け入れた場合とで料率を異ならせたとしても 状況が異なり得るので 必ずしも差別的とはならない可能性があります 29

34 様の状況のライセンシーには異なる扱いをすべきではないことを意味しているとされています 74 ライセンシーが同様の状況であるか否かを判断する要素としては 標準技術の利用方法の同一性 企業のサプライチェーン内におけるレベル 事業活動の地理的範囲などが挙げられます 75, 使途が異なる場合のロイヤルティ IoT 時代においては 多様な業種の企業が情報通信分野の同一の標準規格の技術を利用することになります こうした中 特許権者は 同一の標準技術であっても その技術が使われる最終製品が異なれば その使われ方に応じて ライセンスの料率や額が異なるべきであると主張することが多く見られます 他方 実施者からは 同一の標準技術であれば その技術の使われ方にかかわらず 同一のライセンスの料率や額が適用されるべきであり 特許権者が異なったライセンスの料率や額を適用することは差別的であり FRAND 条件に反するとの主張も見られます この点については ロイヤルティが特許の貢献度合いに応じて決められるという原則を踏まえれば 同一の標準技術を利用している場合であっても その標準技術の利用方法が異なることによって製品に対する特許の貢献度合いが異なれば 適切なFRANDロイヤルティは異なるものになるとの意見もあります 例えば 電力消費を効率化しバッテリーを長持ちさせる技術を組み合わせた通信方式であるWi-Fiの技術は 内蔵バッテリーを用いないデスクトップコンピュータよりも バッテリー駆動のモバイルデバイスにおいて 製品に対する貢献度合いはより大きいと言えます このような場合 特許権者が後者の製品に対するロイヤルティを前者の製品に対するロイヤルティよりも大きくすることは 差別的ということにはならないとする見解もあります また 情報通信技術の分野においては 同一の標準技術を使用している製品であっても その技術の性能を最大限享受している製品 ( 自動運転車 遠隔手術など ) と その技術 74 Unwired Planet v. Huawei ( 英国 高等法院 2017 年 ) では 料率の違いにより 市場において競争の阻害が起きる場合を差別的とされました 他方 TCL v. Ericsson ( 米国 連邦地裁 2017 年 ) では 一般的に競争または標準の発展を阻害するかどうかとは関係なく 実施者がたとえ単独であっても 料率の違いが損害を発生させるのであれば差別的とされました 75 TCL v. Ericsson ( 米国 連邦地裁 2017 年 ) では 当事者が同様の状況にあるか否かの決定に際し 地理的範囲 企業が必要とするライセンス 合理的な販売規模といった要素が考慮されるべきである一方 全体的な金銭的な成功やリスク ブランドの知名度 デバイスの OS 小売店の存在といった要素は 考慮されるべきではないとされました 76 FRAND 料率に幅があるべきかどうかについては 裁判例によって見解が分かれています Microsoft v. Motorola ( 米国 連邦地裁 2013 年 ) では Motorola 社の SEP ポートフォリオについて FRAND となる幅の上限と下限が認定されました 他方 Unwired Planet v. Huawei ( 英国 高等法院 2017 年 ) では 各地域には 1 つの FRAND 料率しかないとされました 30

35 の性能の一部のみを利用しているに過ぎない製品 ( スマートメータなど ) との間で 特許権 者がロイヤルティに差を設けることは 差別的ではないとする見解もあります C. その他 ロイヤルティの支払い方法には複数の方式があります どのような方式を採用するかは 状 況によって異なります 1. 定率と定額ロイヤルティには定率と定額の方式があります 定率は 製品全体の価格や部品の価格に対する割合の形で決められます 実施者は 市況により製品価格が変動する場合 常に製品の価格を把握しておく必要があり 煩雑な手続を伴うことになります こうした煩雑さを軽減するために 製品価格の変動にかかわらずロイヤルティを一定の額とすることが実務的に行われています この場合 ロイヤルティの徴収手続が簡便となる一方 時の経過とともに製品価格が次第に下がっていくような場合 実施者にとってロイヤルティが高くなりすぎるといった状況が起き得ます 2. 一括払いとランニング方式ロイヤルティの支払い方法には 一括払いとランニング方式とがあります 77 一括払いは ロイヤルティの不払いのリスクや対象技術の利用の有無を監視する負担がなくなるというメリットがありますが 対象技術の市場における価値や利用実態が確定する前にロイヤルティを確定し支払いが行われるので 実際の価値や利用実態と比較してロイヤルティが過大 過少となるリスクがあります 一方 ランニング形式は 対象技術の利用実態を反映したロイヤルティを算定することができますが 売上げの変動や技術トレンドの変化によって支払額の増減が生じるため 研究開発投資を回収できない可能性があります 77 一括払いとランニングロイヤルティの違いについて Lucent v. Gateway ( 米国 CAFC 2009 年 ) では ランニングロイヤルティは特許権者にとって ロイヤルティがライセンシーの売上等に左右されるのでリスクがあるが 一括払いはそれを監視する必要がないとされました 他方 一括払いは 算定が楽になるというメリットがあるが 技術に対する特許の価値を適切に反映しない可能性があるとされました 31

36 参考資料 < 日本裁判例 > Apple v. Samsung ( 日本 知財高裁 2014 年 ) 知的財産高等裁判所大合議判決平成 25 年 ( ネ ) 第 号 Imation v. One-Blue ( 日本 地裁 2015 年 ) 平成 25 年 ( ワ ) 第 号 < 米国裁判例等 > Apple v. Motorola ( 米国 CAFC 2014 年 ) Apple, Inc. v. Motorola, Inc., 757 F.3d 1286 (Fed. Cir. 2014), overruled on other grounds by Williamson v. Citrix Online, LLC, 792 F.3d 1339 (Fed. Cir. 2015) CSIRO v. Cisco ( 米国 CAFC 2015 年 ) Commonwealth Scientific and Indus. Research Organization v. Cisco Sys., Inc., 809 F.3d 1295 (Fed. Cir. 2015) ebay v. MercExchange ( 米国 連邦最高裁 2006 年 ) ebay Inc. v. MercExchange, LLC, 547 U.S. 388 (2006) Ericsson v. D-Link ( 米国 CAFC 2014 年 ) Ericsson, Inc. v. D-Link Systems, Inc., 773 F.3d 1201 (Fed. Cir. 2014) Fujitsu v. Netgear ( 米国 CAFC 2010 年 ) Fujitsu v. Netgear, 620 F.3d 1321 (Fed. Cir. 2010) Google v. Motorola ( 米国 連邦取引委員会 2013 年 ) Federal Trade Commission, Motorola Mobility LLC, No. C-4410 (F.T.C. July 23, 2013) In re Innovatio ( 米国 連邦地裁 2013 年 ) Innovatio IP Ventures, LLC Patent Litigation, No. 11-c-9308, 2013 WL (Oct. 3, 2013) LaserDynamics v. Quanta ( 米国 CAFC 2012 年 ) LaserDynamics, Inc. v. Quanta Computer, Inc., 694 F.3d 51 (Fed. Cir. 2012) 32

37 Lucent v. Gateway ( 米国 CAFC 2009 年 ) Lucent Technologies, Inc. v. Gateway, Inc., 580 F.3d 1301 (Fed. Cir. 2009) Microsoft v. Motorola ( 米国 連邦地裁 2012 年 ) Microsoft Corp. v. Motorola, Inc., 864 F. Supp. 2d 1023 (W.D. Was. 2012) Microsoft v. Motorola ( 米国 第 9 巡回区控訴裁 2012 年 ) Microsoft Corp. v. Motorola, Inc., 696 F.3d 872 (9th Cir. 2012) Microsoft v. Motorola ( 米国 連邦地裁 2013 年 ) Microsoft Corp. v. Motorola, Inc., No.c JLR, 2013 WL (W.D. Was. Apr. 25, 2013) Quanta v. LG ( 米国 連邦最高裁 2008 年 ) Quanta Computer, Inc. v. LG Elecs., Inc., 553 U.S. 617 (2008) Realtek v. LSI ( 米国 連邦地裁 2013 年 ) Realtek Semiconductor Corp. v. LSI Corp., 946 F. Supp. 2d 998 (N.D. Cal. 2013) ResQNet v. Lansa ( 米国 CAFC 2010 年 ) ResQNet.com, Inc. v. Lansa, Inc., 594 F.3d 860 (Fed. Cir. 2010) TCL v. Ericsson ( 米国 連邦地裁 2017 年 ) TCL Comm. Tech Holdings, Ltd v. Ericsson, No.8-14-cv (C.D. Cal. Dec. 21, 2017) Therasense v. Becton ( 米国 CAFC 2011 年 ) Therasense, Inc. v. Becton, Dickinson and Co., 649 F.3d 1276 (Fed. Cir. 2011) (en banc) Virnetx v. Cisco ( 米国 CAFC 2014 年 ) Virnetx, Inc. v. Cisco Sys., Inc., 767 F.3d 1308 (Fed. Cir. 2014) < 欧州裁判例等 > Huawei v. ZTE ( 欧州 CJEU 2015 年 ) Case C-170/13, Huawei Technologies Co. Ltd v ZTE Corp., ZTE Deutschland GmbH [2015] CJEU 33

38 Motorola v. Apple ( 欧州 欧州委員会 2014 年 ) European Commission, DG Competition, Decision of 29 April 2014, C(2014) 2892 final, Motorola Mobility Inc. NTT DoCoMo v. HTC ( ドイツ 地裁 2016 年 ) LG Mannheim, Case 7 O 66/15, Order of 29 January 2016 Philips v. Archos ( ドイツ 地裁 2016 年 ) LG Mannheim, Case 7 O 19/16, Order of 17 November 2016 Samsung v. Apple ( 欧州 欧州委員会 2014 年 ) European Commission, DG Competition, Commitment Decision of 29 April 2014, C(2014) 2891 final, Samsung Electronics Co., Ltd., et. Al. Sisvel v. Haier ( ドイツ 高裁 2016 年 ) OLG Düsseldorf, Case I-15 U 66/15, Order of 17 November 2016 St. Lawrence v. Deutsche Telekom and HTC ( ドイツ 地裁 2015 年 ) LG Mannheim, Case 2 O 106/14, Order of 27 November 2015 St. Lawrence v. Vodafone and HTC ( ドイツ 地裁 2016 年 ) LG Düsseldorf, Case 4a O 73/14, Order of 31 March 2016 Unwired Planet v. Huawei ( 英国 高等法院 2017 年 ) Unwired Planet v. Huawei ([2017] EWHC 711 (Pat), 5 Apr. 2017) <その他 > 日本公正取引委員会 知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針 (2016 年 1 月 ) 欧州コミュニケーション Communication from the Commission to the European Parliament, the Council and the European Economic and Social Committee: Setting out the EU approach to Standard Essential Patents 米国司法省及び米国特許商標庁の SEP の救済に関する政策声明 (2013 年 ) U.S. Dep't of Justice and U.S. Patent and Trademark Office, Policy Statement 34

39 on Remedies for Standard-Essential Patents Subject to Voluntary FRAND Commitments (Jan. 8, 2013) 米国法曹協会 Benefits of Arbitration for Commercial Disputes ttees/arbitration/arbitrationguide.authcheckdam.pdf IEEE-SA Standards Board Bylaws (2015 年 ) ニューヨーク条約 35

Microsoft Word 資料1 プロダクト・バイ・プロセスクレームに関する審査基準の改訂についてv16

Microsoft Word 資料1 プロダクト・バイ・プロセスクレームに関する審査基準の改訂についてv16 プロダクト バイ プロセス クレームに関する 審査基準の点検 改訂について 1. 背景 平成 27 年 6 月 5 日 プロダクト バイ プロセス クレームに関する最高裁判決が2 件出された ( プラバスタチンナトリウム事件 最高裁判決( 最判平成 27 年 6 月 5 日 ( 平成 24 年 ( 受 ) 第 1204 号, 同 2658 号 ))) 本事件は 侵害訴訟に関するものであるが 発明の要旨認定の在り方にも触れているため

More information

O-27567

O-27567 そこに そこがあるのか? 自明性 (Obviousness) における固有性 (Inherency) と 機能的クレーム (Functional Claiming) 最近の判決において 連邦巡回裁判所は 当事者系レビューにおける電気ケーブルの製造を対象とする特許について その無効を支持した この支持は 特許審判部 (Patent and Trial and Appeal Board (PTAB))

More information

問 2 戦略的な知的財産管理を適切に行っていくためには, 組織体制と同様に知的財産関連予算の取扱も重要である その負担部署としては知的財産部門と事業部門に分けることができる この予算負担部署について述べた (1)~(3) について,( イ ) 内在する課題 ( 問題点 ) があるかないか,( ロ )

問 2 戦略的な知的財産管理を適切に行っていくためには, 組織体制と同様に知的財産関連予算の取扱も重要である その負担部署としては知的財産部門と事業部門に分けることができる この予算負担部署について述べた (1)~(3) について,( イ ) 内在する課題 ( 問題点 ) があるかないか,( ロ ) ( はじめに ) すべての問題文の条件設定において, 特に断りのない限り, 他に特殊な事情がないものとします また, 各問題の選択枝における条件設定は独立したものと考え, 同一問題内における他の選択枝には影響しないものとします 特に日時の指定のない限り,2017 年 9 月 1 日現在で施行されている法律等に基づいて解答しなさい PartⅠ 問 1~ 問 2に答えなさい ( 出典 : 戦略的な知的財産管理に向けて-

More information

標準化技術をめぐる特許問題対策の動向

標準化技術をめぐる特許問題対策の動向 パテントプール IPR ポリシー FRAND 標準化技術をめぐる特許問題対策の動向 近年 必須特許について標準化団体で制定されている IPR ポリシーが法的に有効であると認められる判決が出て おり ポリシーの改訂 整備が進んでいる また 独占禁 知的財産部 カー クリストファー なかむら おさむ 中村 修 止法に抵触しないためのパテントプールに関するガイドラ インが日米欧で公表されたことで 標準規格の必須特許を

More information

1. 口座管理機関 ( 証券会社 ) の意見概要 A 案 ( 部会資料 23: 配当金参考案ベース ) と B 案 ( 部会資料 23: 共通番号参考案ベース ) のいずれが望ましいか 口座管理機 関 ( 証券会社 ) で構成される日証協の WG で意見照会したところ 次頁のとおり各観点において様々

1. 口座管理機関 ( 証券会社 ) の意見概要 A 案 ( 部会資料 23: 配当金参考案ベース ) と B 案 ( 部会資料 23: 共通番号参考案ベース ) のいずれが望ましいか 口座管理機 関 ( 証券会社 ) で構成される日証協の WG で意見照会したところ 次頁のとおり各観点において様々 書面交付請求に係る仕組みについて 平成 30 年 7 月 4 日日本証券業協会 2011 0 1. 口座管理機関 ( 証券会社 ) の意見概要 A 案 ( 部会資料 23: 配当金参考案ベース ) と B 案 ( 部会資料 23: 共通番号参考案ベース ) のいずれが望ましいか 口座管理機 関 ( 証券会社 ) で構成される日証協の WG で意見照会したところ 次頁のとおり各観点において様々な意見が挙げられたが

More information

指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら 指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限らず どのような種類の使用者等であっても 指針の 第二適正な手続 をはじめとする指針の項目全般を参照してください

More information

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合 Q45. 有期契約労働者が正社員と同じ待遇を要求する 1 問題の所在有期契約労働者の労働条件は個別労働契約, 就業規則等により決定されるべきものですので, 正社員と同じ待遇を要求することは認められないのが原則です しかし, 有期契約労働者が正社員と同じ仕事に従事し, 同じ責任を負担しているにもかかわらず, 単に有期契約というだけの理由で労働条件が低くなっているような場合には, 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止

More information

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1 JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1 JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) ( 事業評価の目的 ) 1. JICA は 主に 1PDCA(Plan; 事前 Do; 実施 Check; 事後 Action; フィードバック ) サイクルを通じた事業のさらなる改善 及び 2 日本国民及び相手国を含むその他ステークホルダーへの説明責任

More information

監査に関する品質管理基準の設定に係る意見書

監査に関する品質管理基準の設定に係る意見書 監査に関する品質管理基準の設定に係る意見書 監査に関する品質管理基準の設定について 平成 17 年 10 月 28 日企業会計審議会 一経緯 当審議会は 平成 17 年 1 月の総会において 監査の品質管理の具体化 厳格化に関する審議を開始することを決定し 平成 17 年 3 月から監査部会において審議を進めてきた これは 監査法人の審査体制や内部管理体制等の監査の品質管理に関連する非違事例が発生したことに対応し

More information

手続には 主たる債務者と対象債権者が相対で行う広義の私的整理は含まれないのでしょうか 手続には 保証人と対象債権者が相対で行う広義の私的整理は含まれないのでしょうか A. 利害関係のない中立かつ公正な第三者 とは 中小企業再生支援協議会 事業再生 ADRにおける手続実施者 特定調停における調停委員会

手続には 主たる債務者と対象債権者が相対で行う広義の私的整理は含まれないのでしょうか 手続には 保証人と対象債権者が相対で行う広義の私的整理は含まれないのでしょうか A. 利害関係のない中立かつ公正な第三者 とは 中小企業再生支援協議会 事業再生 ADRにおける手続実施者 特定調停における調停委員会 経営者保証に関するガイドライン Q&A の一部改定について ( 資料 2) ( 下線部分が修正箇所を示す ) 改 定 後 現 行 Q.5-4 保証契約において 5(2) イ ) に記載されているように 保証人の履行請求額は 期限の利益を喪失した日等の一定の基準日における保証人の資産の範囲内 とした場合 基準日の到来条件の解釈により 主たる債務者が期限の利益を早期に喪失する事態が生じる懸念はないのでしょうか

More information

1 資料 7-4 パテントポリシーの 改訂議論について 2014 年 12 月 15 日 日本電信電話株式会社

1 資料 7-4 パテントポリシーの 改訂議論について 2014 年 12 月 15 日 日本電信電話株式会社 1 資料 7-4 パテントポリシーの 改訂議論について 2014 年 12 月 15 日 日本電信電話株式会社 Introduction ITU では 特許取り扱い方針 (patent policy) とそのガイドライン ( 以下 まとめて パテントポリシー とする ) を策定 運用しています ( 本委員会参考資料 1) 標準化プロセスの参加者は 特許ライセンス宣誓 を提出することにより 自社特許が標準の実施に必須となった場合

More information

Microsoft Word - 【6.5.4】特許スコア情報の活用

Microsoft Word - 【6.5.4】特許スコア情報の活用 Q 業界における自社および競合他社のポジショニングを確認する際など 様々な場面で特許情報分析を行うことがあるが 特許の量的側面 ( 件数 ) のみではなく 特許の質 価値的側面からの分析ができないだろうか? 1. 特許の質 価値を機械的 客観的 定量的に評価した情報として提供される特許スコア企業の知的財産戦略の策定にあたり 業界における自社および競合他社のポジショニングを確認する際など 様々な場面で特許情報分析を行うことがあるが

More information

<4D F736F F F696E74202D20984A93AD8C5F96F CC837C A815B C F38DFC8BC68ED28D5A90B38CE3816A2E707074>

<4D F736F F F696E74202D20984A93AD8C5F96F CC837C A815B C F38DFC8BC68ED28D5A90B38CE3816A2E707074> 労働契約法のポイント 労働契約法が平成 20 年 3 月 1 日から施行されます 就業形態が多様化し 労働者の労働条件が個別に決定 変更されるようになり 個別労働紛争が増えています この紛争の解決の手段としては 裁判制度のほかに 平成 13 年から個別労働紛争解決制度が 平成 18 年から労働審判制度が施行されるなど 手続面での整備はすすんできました しかし このような紛争を解決するための労働契約についての民事的なルールをまとめた法律はありませんでした

More information

平成 29 年 4 月 12 日サイバーセキュリティタスクフォース IoT セキュリティ対策に関する提言 あらゆるものがインターネット等のネットワークに接続される IoT/AI 時代が到来し それらに対するサイバーセキュリティの確保は 安心安全な国民生活や 社会経済活動確保の観点から極めて重要な課題

平成 29 年 4 月 12 日サイバーセキュリティタスクフォース IoT セキュリティ対策に関する提言 あらゆるものがインターネット等のネットワークに接続される IoT/AI 時代が到来し それらに対するサイバーセキュリティの確保は 安心安全な国民生活や 社会経済活動確保の観点から極めて重要な課題 平成 29 年 4 月 12 日サイバーセキュリティタスクフォース IoT セキュリティ対策に関する提言 あらゆるものがインターネット等のネットワークに接続される IoT/AI 時代が到来し それらに対するサイバーセキュリティの確保は 安心安全な国民生活や 社会経済活動確保の観点から極めて重要な課題となっている 特に IoT 機器については その性質から サイバー攻撃の対象になりやすく 我が国において

More information

特定個人情報の取扱いの対応について

特定個人情報の取扱いの対応について 特定個人情報の取扱いの対応について 平成 27 年 5 月 19 日平成 28 年 2 月 12 日一部改正 一般財団法人日本情報経済社会推進協会 (JIPDEC) プライバシーマーク推進センター 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 ( 以下 番号法 という ) が成立し ( 平成 25 年 5 月 31 日公布 ) 社会保障 税番号制度が導入され 平成 27 年 10

More information

Microsoft PowerPoint - 01_職務発明制度に関する基礎的考察(飯田先生).pptx

Microsoft PowerPoint - 01_職務発明制度に関する基礎的考察(飯田先生).pptx 弁護士飯田秀郷 1 職務発明制度の全体構造 従業者による 特許を受ける権利 の原始取得 産業上利用できる発明をした者は その発明について特許を受けることができる (29 条 1 項柱書 ) 使用者の法定実施権 職務発明について特許を受けたとき使用者はその特許権について通常実施権を有する (35 条 1 項 ) 事前の定めによる使用者への権利の承継 あらかじめ ( 職務発明の完成前 ) 契約 勤務規則その他の定めにより

More information

【資料1】電子情報技術産業協会プレゼンテーション資料

【資料1】電子情報技術産業協会プレゼンテーション資料 資料 1 標準必須特許の現状と課題 産業構造審議会知的財産分科会 第 22 回特許制度小委員会 2017 年 09 月 29 日 JEITA 特許専門委員会委員高橋弘史 ( パナソニックIPマネジメント株式会社先端研究 生産技術知財部知財開発 1 課課長 ) 画像コーデック 標準化団体 :ISO/IEC ITU-T MPEG 2(27 社 ) ライセンス会社 : 対象製品:TV,DVD PC スマホ

More information

ための手段を 指名 報酬委員会の設置に限定する必要はない 仮に 現状では 独立社外取締役の適切な関与 助言 が得られてないという指摘があるのならば まず 委員会を設置していない会社において 独立社外取締役の適切な関与 助言 が十分得られていないのか 事実を検証すべきである (2) また 東証一部上場

ための手段を 指名 報酬委員会の設置に限定する必要はない 仮に 現状では 独立社外取締役の適切な関与 助言 が得られてないという指摘があるのならば まず 委員会を設置していない会社において 独立社外取締役の適切な関与 助言 が十分得られていないのか 事実を検証すべきである (2) また 東証一部上場 コード改訂案および投資家と企業の対話ガイドライン ( 案 ) に対する意見 2018 年 3 月 13 日 メンバー内田章 コードの改訂について 政府も認めているように コーポレートガバナンス コードの策定を含むこれまでの取組みによって 日本企業のコーポレート ガバナンス改革は着実に進展している M&Aや事業売却などを通じて事業ポートフォリオの見直しを加速する企業も増えており コードの主眼である 企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上

More information

IFRS基礎講座 IAS第11号/18号 収益

IFRS基礎講座 IAS第11号/18号 収益 IFRS 基礎講座 収益 のモジュールを始めます このモジュールには IAS 第 18 号 収益 および IAS 第 11 号 工事契約 に関する解説が含まれます これらの基準書は IFRS 第 15 号 顧客との契約による収益 の適用開始により 廃止されます パート 1 では 収益に関連する取引の識別を中心に解説します パート 2 では 収益の認識規準を中心に解説します パート 3 では 工事契約について解説します

More information

SEIWA IP NEWS

SEIWA IP NEWS 知財高裁大合議判決 FRAND 宣言された特許権に基づく差止請求権及び損害賠償請求権の行使が制限される ( 知財高裁平成 25 年 ( ネ ) 第 10043 号 同 ( ラ ) 第 10007 号 第 10008 号 ) 概要 本件知財高裁大合議判決は 主として標準規格必須特許の特許権者がいわゆる FRAND 宣言をした場合に 特許権者による差止請求権や損害賠償請求権の行使がいかなる制限を受けるかについて判断したものです

More information

適用時期 5. 本実務対応報告は 公表日以後最初に終了する事業年度のみに適用する ただし 平成 28 年 4 月 1 日以後最初に終了する事業年度が本実務対応報告の公表日前に終了している場合には 当該事業年度に本実務対応報告を適用することができる 議決 6. 本実務対応報告は 第 338 回企業会計

適用時期 5. 本実務対応報告は 公表日以後最初に終了する事業年度のみに適用する ただし 平成 28 年 4 月 1 日以後最初に終了する事業年度が本実務対応報告の公表日前に終了している場合には 当該事業年度に本実務対応報告を適用することができる 議決 6. 本実務対応報告は 第 338 回企業会計 実務対応報告第 32 号平成 28 年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い 平成 28 年 6 月 17 日企業会計基準委員会 目的 1. 本実務対応報告は 平成 28 年度税制改正に係る減価償却方法の改正 ( 平成 28 年 4 月 1 日以後に取得する建物附属設備及び構築物の法人税法上の減価償却方法について 定率法が廃止されて定額法のみとなる見直し ) に対応して 必要と考えられる取扱いを示すことを目的とする

More information

<4D F736F F D2093C192E895578F8089BB8B408AD A8EC08E7B977697CC FC90B394C5816A2E646F6378>

<4D F736F F D2093C192E895578F8089BB8B408AD A8EC08E7B977697CC FC90B394C5816A2E646F6378> 特定標準化機関 (CSB) 制度実施要領 平成 15 年 8 月 27 日 ( 制定 ) 平成 29 年 3 月 15 日 ( 改正 ) 日本工業標準調査会 標準第一部会 標準第二部会 1. 制度名称 制度名称は 特定標準化機関 (Competent Standardization Body) 制度 ( 通称 シー エ ス ビー制度 ) とする 2. 目的日本工業規格 (JIS) の制定等のための原案作成

More information

本条は 購入者等が訪問販売に係る売買契約等についての勧誘を受けるか否かという意思の自由を担保することを目的とするものであり まず法第 3 条の2 第 1 項においては 訪問販売における事業者の強引な勧誘により 購入者等が望まない契約を締結させられることを防止するため 事業者が勧誘行為を始める前に 相

本条は 購入者等が訪問販売に係る売買契約等についての勧誘を受けるか否かという意思の自由を担保することを目的とするものであり まず法第 3 条の2 第 1 項においては 訪問販売における事業者の強引な勧誘により 購入者等が望まない契約を締結させられることを防止するため 事業者が勧誘行為を始める前に 相 特定商取引に関する法律第 3 条の2 等の運用指針 再勧誘禁止規定に関する指針 Ⅰ. 目的 昨今の訪問販売を中心とした消費者被害では 高齢者等を狙った執拗な誘 販売行為による高額被害の増加もあり 深刻な問題となっている かかる被害類型においては 高齢者等のように判断力が低下していたり 勧誘を拒絶することが困難な者について いったん事業者の勧誘が始まってしまうと 明確に断ることが困難である場合が多く

More information

特定個人情報の取扱いの対応について

特定個人情報の取扱いの対応について 平成 27 年 5 月 19 日平成 28 年 2 月 12 日一部改正平成 30 年 9 月 12 日改正 一般財団法人日本情報経済社会推進協会 (JIPDEC) プライバシーマーク推進センター 特定個人情報の取扱いの対応について 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 ( 以下 番号法 という )( 平成 25 年 5 月 31 日公布 ) に基づく社会保障 税番号制度により

More information

文書管理番号

文書管理番号 プライバシーマーク付与適格性審査実施規程 1. 一般 1.1 適用範囲この規程は プライバシーマーク付与の適格性に関する審査 ( 以下 付与適格性審査 という ) を行うプライバシーマーク指定審査機関 ( 以下 審査機関 という ) が その審査業務を遂行する際に遵守すべき事項を定める 1.2 用語この基準で用いる用語は 特段の定めがない限り プライバシーマーク制度基本綱領 プライバシーマーク指定審査機関指定基準

More information

Ⅱ. 法第 3 条の 2 等の適用についての考え方 1. 法第 3 条の2 第 1 項の考え方について本条は 購入者等が訪問販売に係る売買契約等についての勧誘を受けるか否かという意思の自由を担保することを目的とするものであり まず法第 3 条の 2 第 1 項においては 訪問販売における事業者の強引

Ⅱ. 法第 3 条の 2 等の適用についての考え方 1. 法第 3 条の2 第 1 項の考え方について本条は 購入者等が訪問販売に係る売買契約等についての勧誘を受けるか否かという意思の自由を担保することを目的とするものであり まず法第 3 条の 2 第 1 項においては 訪問販売における事業者の強引 特定商取引に関する法律第 3 条の 2 等の運用指針 再勧誘禁止規定に関する指針 Ⅰ. 目的 昨今の訪問販売を中心とした消費者被害では 高齢者等を狙った執拗な勧誘 販売行為による高額被害の増加もあり 深刻な問題となっている かかる被害類型においては 高齢者等のように判断力が低下していたり 勧誘を拒絶することが困難な者について いったん事業者の勧誘が始まってしまうと 明確に断ることが困難である場合が多く

More information

03-08_会計監査(収益認識に関するインダストリー別③)小売業-ポイント制度、商品券

03-08_会計監査(収益認識に関するインダストリー別③)小売業-ポイント制度、商品券 会計 監査 収益認識に関する会計基準等 インダストリー別解説シリーズ (3) 第 3 回小売業 - ポイント制度 商品券 公認会計士 いしかわ 石川 よし慶 はじめに 2018 年 3 月 30 日に企業会計基準第 29 号 収益認識に 関する会計基準 ( 以下 収益認識会計基準 という ) 企業会計基準適用指針第 30 号 収益認識に関する会計 基準の適用指針 ( 以下 収益認識適用指針 といい

More information

Microsoft Word - CAFC Update(107)

Microsoft Word - CAFC Update(107) 米国における機能的クレームの認定 ~ 裁判所とUSPTO との認定の相違 ~ 米国特許判例紹介 (107) 2014 年 4 月 3 日執筆者弁理士河野英仁 Enocean, GMBH, Appellant, v. Face International Corp., Appellee. 1. 概要 米国特許法第 112 条 (f) は機能的クレームに関し 以下のとおり規定している 組合せに係るクレームの要素は,

More information

1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一 ディスカッション ペーパー のれんはなお償却しなくてよいか のれんの会計処理及び開示 に対する意見 平成 26 年 9 月 30 日 日本公認会計士協会 日本公認会計士協会は 企業会計基準委員会 (ASBJ) 欧州財務報告諮問グループ (EFRAG) 及びイタリアの会計基準設定主体 (OIC) のリサーチ グループによるリサーチ活動に敬意を表すとともに ディスカッション ペーパー のれんはなお償却しなくてよいか

More information

1 アルゼンチン産業財産権庁 (INPI) への特許審査ハイウェイ試行プログラム (PPH) 申請に 係る要件及び手続 Ⅰ. 背景 上記組織の代表者は

1 アルゼンチン産業財産権庁 (INPI) への特許審査ハイウェイ試行プログラム (PPH) 申請に 係る要件及び手続 Ⅰ. 背景 上記組織の代表者は 1 アルゼンチン産業財産権庁 (INPI) への特許審査ハイウェイ試行プログラム (PPH) 申請に 係る要件及び手続 -------------------------------------------------------------------------- Ⅰ. 背景 上記組織の代表者は 2016 年 10 月 5 日 ジュネーブにおいて署名された 特許審査手続における協力意向に係る共同声明

More information

第41回 アクセプタンス期間と聴聞手続(2016年版) ☆インド特許法の基礎☆

第41回 アクセプタンス期間と聴聞手続(2016年版) ☆インド特許法の基礎☆ インド特許法の基礎 ( 第 41 回 ) ~アクセプタンス期間と聴聞手続 (2016 年版 )~ 2016 年 10 月 20 日河野特許事務所弁理士安田恵 1. はじめにインド特許法はアクセプタンス期間制度を採用している ( 第 21 条 ) アクセプタンス期間制度は, 所定の期間内に特許出願を特許付与可能な状態にしなければ, 当該特許出願を放棄したものとみなす制度である インド特許法におけるアクセプタンス期間は,

More information

(Microsoft Word - \201iAL\201jAG-Link\227\230\227p\213K\222\350.doc)

(Microsoft Word - \201iAL\201jAG-Link\227\230\227p\213K\222\350.doc) AG-Link 利用規定 第 1 条 ( 定義 ) 本規定において使用する用語を以下の通り定義します 1 弊社東京海上日動あんしん生命保険株式会社をいいます 2AG-Link 弊社が提供し 主として代理店および 募集人が使用する情報システムを利用したサービスの呼称です 3 代理店弊社と募集代理店委託契約を締結し 保険業務に従事するものをいいます 4 管理者代理店におけるAG-Linkの管理者をいいます

More information

目次 1. 訂正発明 ( クレーム 13) と控訴人製法 ( スライド 3) 2. ボールスプライン最高裁判決 (1998 年 スライド 4) 3. 大合議判決の三つの争点 ( スライド 5) 4. 均等の 5 要件の立証責任 ( スライド 6) 5. 特許発明の本質的部分 ( 第 1 要件 )(

目次 1. 訂正発明 ( クレーム 13) と控訴人製法 ( スライド 3) 2. ボールスプライン最高裁判決 (1998 年 スライド 4) 3. 大合議判決の三つの争点 ( スライド 5) 4. 均等の 5 要件の立証責任 ( スライド 6) 5. 特許発明の本質的部分 ( 第 1 要件 )( 均等論 知的財産高等裁判所 大合議判決 2016 年 3 月 25 日 (2015 年 ( ネ ) 第 10014 号 ) 日欧知的財産司法シンポジウム 2016 2016 年 11 月 18 日 知的財産高等裁判所所長 設樂隆一 1 目次 1. 訂正発明 ( クレーム 13) と控訴人製法 ( スライド 3) 2. ボールスプライン最高裁判決 (1998 年 スライド 4) 3. 大合議判決の三つの争点

More information

ことができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している さらに 台湾専利法第 76 条は 特許主務官庁は 無効審判を審理する際 請求によりまたは職権で 期限を指定して次の各号の事項を行うよう特許権者に通知することができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している なお

ことができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している さらに 台湾専利法第 76 条は 特許主務官庁は 無効審判を審理する際 請求によりまたは職権で 期限を指定して次の各号の事項を行うよう特許権者に通知することができる 1. 特許主務官庁に出頭して面接に応じる と規定している なお 台湾における特許出願および意匠出願の審査官面接 理律法律事務所郭家佑 ( 弁理士 ) 理律法律事務所は 1965 年に創設され 台湾における最大手総合法律事務所である 特許 意匠 商標 その他知的財産に関する権利取得や 権利行使 訴訟 紛争解決 会社投資など 全ての法律分野を包括するリーガルサービスを提供している 郭家佑は 理律法律事務所のシニア顧問で 台湾の弁理士である 主な担当分野は 特許ならびに意匠出願のプロセキューション

More information

TPT859057

TPT859057 人身取引および奴隷制度対策に関するポリシー 目次 目的範囲ポリシー ステートメント調査および監査ポリシー コンプライアンス関連文書およびプロセス 2 人身取引および奴隷制度対策に関するポリシー 目的 Oracle は 人身取引および奴隷制度 ( このポリシーにおいて 強制労働および不法な児童労働を含む ) のない職場環境づくりに取り組んでいる 世界中のいかなる Oracle 組織においても 人身取引および奴隷制度が許容または容認されることはない

More information

Microsoft Word - CAFC Update(112)

Microsoft Word - CAFC Update(112) 明細書の記載がクレーム解釈に与える影響 ~Apple 社 FaceTimeに対する特許権侵害訴訟 ~ 米国特許判例紹介 (112) 2014 年 10 月 28 日執筆者弁理士河野英仁 SCIENCE APPLICATIONS INTERNATIONAL CORPORATION, Plaintiff-Appellee, v. APPLE INC., Defendant-Appellant, 1. 概要特許明細書を作成する上で悩ましいのが

More information

< F2D8CA48B8689EF8E9197BF31352E6A7464>

< F2D8CA48B8689EF8E9197BF31352E6A7464> 研究会資料 15 扶養関係事件の国際裁判管轄に関する論点の検討 第 1 夫婦, 親子その他の親族関係から生ずる扶養の義務に関する審判事件につき, 次のような規律を設けることについて, どのように考えるか 裁判所は, 夫婦, 親子その他の親族関係から生ずる扶養の義務に関する審判 事件 ( ただし, 子の監護に要する費用の分担の処分の審判事件を含む ) ( 注 ) について, 次のいずれかに該当するときは,

More information

個人情報保護法の3年ごと見直しに向けて

個人情報保護法の3年ごと見直しに向けて 個人情報保護法の 3 年ごと見直しに向けて 2019 年 3 月 27 日経団連情報通信委員会 本日の発表内容 1. わが国として目指すべき方向 2. 新たな仕組みに関する意見 3. 既存制度に関する意見 4. 国際的なデータの円滑な流通に関する意見 1. わが国として目指すべき方向 1 1. 目指すべき方向 Society 5.0 for SDGs わが国が目指すべきは 経済成長と社会課題解決の両立を図る

More information

CAFC Update(135)

CAFC Update(135) 完成品組み立てのために一部品を輸出した場合の侵害の成否 ~ 最高裁判所の構成部品の解釈 ~ 米国特許判例紹介 (135) 2017 年 4 月 3 日執筆者河野特許事務所所長弁理士河野英仁 LIFE TECHNOLOGIES CORPORATION, ET AL., PETITIONERS v. PROMEGA CORPORATION 1. 概要特許製品の最終的な組み立てを米国外で行うために 完成前の部品を米国外へ輸出する行為を特許権侵害行為とする規定が米国特許法第

More information

日商協規程集

日商協規程集 苦情処理規 ( 目的 ) 第 1 条この規は 定款第 58 条第 3 項に基づき 会員及び会員を所属商品先物取引業者とする商品先物取引仲介業者 ( 以下 会員等 という ) の行う商品先物取引業務 ( 定款第 3 条第 1 項第 5 号に定める業務をいう 以下この規において同じ ) に関して顧客からの苦情の処理につき必要な事項を定め その疑義を解明し迅速 かつ 円滑な解決を図ることを目的とする (

More information

できる 105. 前項の取扱いを適用する場合には 次の事項を注記する (1) その旨及び決算月に実施した計量の日から決算日までに生じた収益の見積りが極めて困難と認められる理由 (2) 当連結会計年度及び当事業年度の決算月の翌月に実施した計量により確認した使用量に基づく収益の額 ( この収益の額が 決

できる 105. 前項の取扱いを適用する場合には 次の事項を注記する (1) その旨及び決算月に実施した計量の日から決算日までに生じた収益の見積りが極めて困難と認められる理由 (2) 当連結会計年度及び当事業年度の決算月の翌月に実施した計量により確認した使用量に基づく収益の額 ( この収益の額が 決 第 381 回企業会計基準委員会 資料番号審議事項 (2)-7 日付 2018 年 3 月 26 日 プロジェクト 項目 収益認識に関する会計基準の開発 代替的な取扱いに関する検討 本資料の目的 1. 本資料は 企業会計基準公開草案第 61 号 収益認識に関する会計基準 ( 案 ) ( 以下 会計基準案 という ) 及び企業会計基準適用指針公開草案第 61 号 収益認識に関する会計基準の適用指針 (

More information

規制の事前評価の実施に関するガイドライン(素案)

規制の事前評価の実施に関するガイドライン(素案) 総務省規制の事前評価書 ( 電気通信事業者間の公正な競争の促進のための制度整備 ) 所管部局課室名 : 総務省総合通信基盤局電気通信事業部事業政策課電話 :03-5253-5695 メールアト レス :jigyouhoutou_kaisei@ml.soumu.go.jp 評価年月日 : 平成 23 年 2 月 1 日 1 規制の目的 内容及び必要性 (1) 規制改正の目的及び概要電気通信事業者間の公正な競争を促進するため

More information

第1回 基本的な手続きの流れと期限について ☆インド特許法の基礎☆

第1回 基本的な手続きの流れと期限について ☆インド特許法の基礎☆ インド特許法の基礎 ( 第 1 回 ) ~ 特許付与までの基本的な手続きの流れと期限について ~ 河野特許事務所 弁理士安田恵 インド特許出願の基本的な手続きの流れを説明する 典型例として, 基礎日本出願に基づいてPCT 出願を行い, インドを指定する例を説明する 今回は特に出願から特許付与までの手続きにおいて, 注意を要する時期的要件について説明する 期限に対するインド特許庁の対応は比較的厳しく,

More information

部分供給については 例えば 以下の3パターンが考えられる ( 別紙 1 参照 ) パターン1: 区域において一般電気事業者であった小売電気事業者 ( 又は他の小売電気事業者 ) が一定量のベース供給を行い 他の小売電気事業者 ( 又は区域において一般電気事業者であった小売電気事業者 ) がを行う供給

部分供給については 例えば 以下の3パターンが考えられる ( 別紙 1 参照 ) パターン1: 区域において一般電気事業者であった小売電気事業者 ( 又は他の小売電気事業者 ) が一定量のベース供給を行い 他の小売電気事業者 ( 又は区域において一般電気事業者であった小売電気事業者 ) がを行う供給 部分供給に関する指針 平成 24 年 12 月策定平成 28 年 3 月一部改訂資源エネルギー庁 1. 基本的な考え方 部分供給については 適正な電力取引についての指針 に規定されていたところ 実例が少なく 具体的な実施方法についての慣行が確立されてこなかった 平成 24 年 7 月に総合資源エネルギー調査会総合部会電力システム改革専門委員会が取りまとめた 電力システム改革の基本方針 において 部分供給に係る供給者間の役割分担や標準処理期間等についてガイドライン化するとされ

More information

プライベート・エクイティ投資への基準適用

プライベート・エクイティ投資への基準適用 ( 社 ) 日本証券アナリスト協会 GIPS セミナーシリーズ第 4 回 プライベート エクイティ投資への基準適用 2011 年 2 月 4 日 株式会社ジャフコ 樋口哲郎 SAAJ IPS 委員会委員 GIPS Private Equity WG 委員 本日の内容 リターン計算上の必須事項と実務への適用 プライベート エクイティ基準の適用 適用対象期間は 2006 年 1 月 1 日以降 開始来内部収益率の適用

More information

<4D F736F F D204E45444F D E836782C982A882AF82E9926D8DE0837D836C AEE967B95FB906A91E63494C BD90AC E398C8E323593FA89FC92F9816A>

<4D F736F F D204E45444F D E836782C982A882AF82E9926D8DE0837D836C AEE967B95FB906A91E63494C BD90AC E398C8E323593FA89FC92F9816A> 2 7 度新エネイノ第 0 9 1 8 0 0 7 号平成 2 7 年 9 月 2 5 日国立研究開発法人新エネルキ ー 産業技術総合開発機構技術戦略研究センター イノヘ ーション推進部 NEDO プロジェクトにおける知財マネジメント基本方針 日本版バイ ドール制度の目的 ( 知的財産権の受託者帰属を通じて研究活動を活性化し その成果を事業活動において効率的に活用すること ) 及びプロジェクトの目的を達成するため

More information

3 特許保有数 図表 Ⅰ-3 調査対象者の特許保有数 Ⅱ. 分析結果 1. 減免制度 (1) 減免制度の利用状況本調査研究のヒアリング対象の中小企業が利用している法律別の減免制度の利用状況を 図表 Ⅱ-1 に示す 企業数は延べ数でカウントしている 図表 Ⅱ-1 減免制度の利用状況 この結果から 産業

3 特許保有数 図表 Ⅰ-3 調査対象者の特許保有数 Ⅱ. 分析結果 1. 減免制度 (1) 減免制度の利用状況本調査研究のヒアリング対象の中小企業が利用している法律別の減免制度の利用状況を 図表 Ⅱ-1 に示す 企業数は延べ数でカウントしている 図表 Ⅱ-1 減免制度の利用状況 この結果から 産業 中小企業等に対する料金減免制度を中心とした支援施策に関する 調査研究報告書 Ⅰ. 序 1. 目的本調査研究は これまでに減免制度を利用した中小企業等に対し ヒアリング調査により 中小企業等への支援施策全体における減免制度の位置付けや減免制度による効果等に関して情報収集を行い 調査により得られた情報を整理 分析することにより 減免制度の政策的な効果について検証し 現行の減免制度の評価や今後の減免制度の在り方等について検討するための基礎資料を得ることを目的として行った

More information

SGEC 附属文書 理事会 統合 CoC 管理事業体の要件 目次序文 1 適用範囲 2 定義 3 統合 CoC 管理事業体組織の適格基準 4 統合 CoC 管理事業体で実施される SGEC 文書 4 CoC 認証ガイドライン の要求事項に関わる責任の適用範囲 序文

SGEC 附属文書 理事会 統合 CoC 管理事業体の要件 目次序文 1 適用範囲 2 定義 3 統合 CoC 管理事業体組織の適格基準 4 統合 CoC 管理事業体で実施される SGEC 文書 4 CoC 認証ガイドライン の要求事項に関わる責任の適用範囲 序文 SGEC 附属文書 2-8 2012 理事会 2016.1.1 統合 CoC 管理事業体の要件 目次序文 1 適用範囲 2 定義 3 統合 CoC 管理事業体組織の適格基準 4 統合 CoC 管理事業体で実施される SGEC 文書 4 CoC 認証ガイドライン の要求事項に関わる責任の適用範囲 序文この文書の目的は 生産拠点のネットワークをする組織によるCoC 認証を実施のための指針を設定し このことにより

More information

2 譲渡禁止特約の効力改正前は 譲渡禁止特約を付した場合は債権の譲渡はできない ( ただし 特約の存在を知らない第三者等には対抗できない ) とされていましたが 改正法では このような特約があっても債権の譲渡は効力を妨げられないことを明記しました ( 466Ⅱ 1) ただし 3に記載するとおり 債務

2 譲渡禁止特約の効力改正前は 譲渡禁止特約を付した場合は債権の譲渡はできない ( ただし 特約の存在を知らない第三者等には対抗できない ) とされていましたが 改正法では このような特約があっても債権の譲渡は効力を妨げられないことを明記しました ( 466Ⅱ 1) ただし 3に記載するとおり 債務 LM ニュースレター Vol.29 平成 30 年 2 月 改正債権法の要点解説 (7) 債権譲渡 債務引受 改正債権法の要点解説第 7 回では 債権譲渡 債務引受 の改正点について説明します 債権譲渡については債権の担保化 流動化による企業の資金調達を円滑化する観点から大幅な改正がなされており 実務への影響もありますので 特に留意が必要です 第 1 債権譲渡 1 改正の経緯貸付金 売掛金などの債権は

More information

論 文 平成 28 年公取委知的財産ガイドライン一部改正についての一考察 Partial Amendment of Guidelines for the Use of Intellectual Property under the Antimonopoly Act (January 21, 2016

論 文 平成 28 年公取委知的財産ガイドライン一部改正についての一考察 Partial Amendment of Guidelines for the Use of Intellectual Property under the Antimonopoly Act (January 21, 2016 平成 28 年公取委知的財産ガイドライン一部改正についての一考察 Partial Amendment of Guidelines for the Use of Intellectual Property under the Antimonopoly Act (January 21, 2016) 泉克幸 * Katsuyuki IZUMI 抄録平成 28 年 1 月 21 日, 知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針

More information

<4D F736F F F696E74202D EF8B638E9197BF82CC B A6D92E894C5816A E >

<4D F736F F F696E74202D EF8B638E9197BF82CC B A6D92E894C5816A E > 資料 3-1 無駄の撲滅の取組について ー行政事業レビューについてー 平成 25 年 2 月 27 日 これまでの行政事業レビューについて 1 行政事業レビューとは 毎年 各府省が自ら全ての事業の点検 見直しを行うもの ( 閣議決定が実施根拠 ) 1 前年度の事業を対象に 概算要求前に 執行状況 ( 支出先や使途 ) 等の事後点検を実施 2 5,000 を超える全事業についてレビューシートを作成し

More information

技術士業務報酬の手引き 平成 22 年 4 月 社団法人日本技術士会 第 1 章概要 技術士業務報酬の原則 手引きの適用範囲 本手引きの位置付けと活用方法...1 第 2 章技術士業務の報酬基礎単価 技術士業務と報酬額...2 第 3

技術士業務報酬の手引き 平成 22 年 4 月 社団法人日本技術士会 第 1 章概要 技術士業務報酬の原則 手引きの適用範囲 本手引きの位置付けと活用方法...1 第 2 章技術士業務の報酬基礎単価 技術士業務と報酬額...2 第 3 技術士業務報酬の手引き 平成 22 年 4 月 社団法人日本技術士会 第 1 章概要...1 1.1 技術士業務報酬の原則...1 1.2 手引きの適用範囲...1 1.3 本手引きの位置付けと活用方法...1 第 2 章技術士業務の報酬基礎単価...2 2.1 技術士業務と報酬額...2 第 3 章技術士キャリアシート...3 3.1 技術士パーソナル DB への登録...3 3.2 技術士キャリアシート...4

More information

することを可能とするとともに 投資対象についても 株式以外の有価証券を対象に加えることとする ただし 指標連動型 ETF( 現物拠出 現物交換型 ETF 及び 金銭拠出 現物交換型 ETFのうち指標に連動するもの ) について 満たすべき要件を設けることとする 具体的には 1 現物拠出型 ETFにつ

することを可能とするとともに 投資対象についても 株式以外の有価証券を対象に加えることとする ただし 指標連動型 ETF( 現物拠出 現物交換型 ETF 及び 金銭拠出 現物交換型 ETFのうち指標に連動するもの ) について 満たすべき要件を設けることとする 具体的には 1 現物拠出型 ETFにつ 規制の事前評価書 1. 政策の名称 ETF( 上場投資信託 ) の多様化 2. 担当部局金融庁総務企画局市場課 3. 評価実施時期平成 20 年 5 月 9 日 4. 規制の目的 内容及び必要性 (1) 現状及び問題点 規制の新設又は改廃の目的及び必要性 1 現状 ETF( 上場投資信託 ) は 投資家にとって 低コストにて 簡便かつ効果的な分散投資が可能となり また 取引所市場において 市場価格によるタイムリーな取引が機動的に行える等のメリットがある商品であるが

More information

とを条件とし かつ本事業譲渡の対価全額の支払と引き換えに 譲渡人の費用負担の下に 譲渡資産を譲受人に引き渡すものとする 2. 前項に基づく譲渡資産の引渡により 当該引渡の時点で 譲渡資産に係る譲渡人の全ての権利 権限 及び地位が譲受人に譲渡され 移転するものとする 第 5 条 ( 譲渡人の善管注意義

とを条件とし かつ本事業譲渡の対価全額の支払と引き換えに 譲渡人の費用負担の下に 譲渡資産を譲受人に引き渡すものとする 2. 前項に基づく譲渡資産の引渡により 当該引渡の時点で 譲渡資産に係る譲渡人の全ての権利 権限 及び地位が譲受人に譲渡され 移転するものとする 第 5 条 ( 譲渡人の善管注意義 事業譲渡契約書 X( 以下 譲渡人 という ) 及び Y( 以下 譲受人 という ) とは 譲渡人から譲受人への事業譲渡に関し 以下のとおり合意する 第 1 条 ( 事業譲渡 ) 譲渡人は 平成 年 月 日 ( 以下 譲渡日 という ) をもって 第 2 条 ( 譲渡資産 ) 以下の条件に従って に関する事業 ( 以下 本事業 という ) を譲受人に譲渡し 譲受人はこれを譲り受ける ( 以下 本事業譲渡

More information

<4D F736F F D208B4B8A6988C490528B63834B FC90B394C5816A2E646F6378>

<4D F736F F D208B4B8A6988C490528B63834B FC90B394C5816A2E646F6378> 規格案審議ガイドライン 平成 13 年 2 月 27 日 ( 制定 ) 平成 13 年 6 月 22 日 ( 改正 ) 平成 15 年 8 月 27 日 ( 改正 ) 平成 29 年 3 月 15 日 ( 改正 ) 日本工業標準調査会 標準第一部会 標準第二部会 1. 技術的内容の審査 1.1 工業標準化法第 11 条の規定等により付議された案件法第 11 条の規定等により 主務大臣が工業標準の制定

More information

[ 指針 ] 1. 組織体および組織体集団におけるガバナンス プロセスの改善に向けた評価組織体の機関設計については 株式会社にあっては株主総会の専決事項であり 業務運営組織の決定は 取締役会等の専決事項である また 組織体集団をどのように形成するかも親会社の取締役会等の専決事項である したがって こ

[ 指針 ] 1. 組織体および組織体集団におけるガバナンス プロセスの改善に向けた評価組織体の機関設計については 株式会社にあっては株主総会の専決事項であり 業務運営組織の決定は 取締役会等の専決事項である また 組織体集団をどのように形成するかも親会社の取締役会等の専決事項である したがって こ 実務指針 6.1 ガバナンス プロセス 平成 29( 2017) 年 5 月公表 [ 根拠とする内部監査基準 ] 第 6 章内部監査の対象範囲第 1 節ガバナンス プロセス 6.1.1 内部監査部門は ガバナンス プロセスの有効性を評価し その改善に貢献しなければならない (1) 内部監査部門は 以下の視点から ガバナンス プロセスの改善に向けた評価をしなければならない 1 組織体として対処すべき課題の把握と共有

More information

収益認識に関する会計基準

収益認識に関する会計基準 収益認識に関する会計基準 ( 公開草案 ) アヴァンセコンサルティング株式会社 公認会計士 税理士野村昌弘 平成 29 年 7 月 20 日に 日本の会計基準の設定主体である企業会計基準委員会から 収益認識に関する会計基準 ( 案 ) 収益認識に関する会計基準の適用指針( 案 ) が公表されました 平成 29 年 10 月 20 日までコメントを募集しており その後コメントへの対応を検討 協議し 平成

More information

プールライセンスに加入するインセンティブが必然的にあった しかし 近年では 必ずしも権利者が実施者でなくなって来ている プールライセンスというスキームが以前ほどに機能しなくなっている場合もみられる 2 累積ロイヤリティのリスク : プールラインセンスに できるだけ多くの特許権者が参加すれば それだけ

プールライセンスに加入するインセンティブが必然的にあった しかし 近年では 必ずしも権利者が実施者でなくなって来ている プールライセンスというスキームが以前ほどに機能しなくなっている場合もみられる 2 累積ロイヤリティのリスク : プールラインセンスに できるだけ多くの特許権者が参加すれば それだけ 特許庁総務部総務課制度審議室御中 2017 年 11 月 09 日 一般社団法人電子情報技術産業協会特許専門委員会 標準必須特許のライセンス交渉に関するガイドライン に関する意見提案 第 1 はじめに (1) 本ガイドラインの趣旨 IoT(internet of Things) 技術の進展により 異業種間における領域横断的な知財係争が増加する懸念がある 特に 通信に関する技術は IoT 技術において基盤となる技術となることから

More information

標準化教育テキスト (入門編) (4章)

標準化教育テキスト (入門編) (4章) 本資料は 平成 25 年度の 情報通信分野における ITU-T の標準化活動等に関する調査の請負 における成果の一つであり 標準化に初めて接する者を対象に 標準化の重要性や仕組み等の基礎的な事項をパワーポイントとノートにより解説した 標準化教育テキスト である 平成 27 年度及び平成 28 年度の ITU-T 等における標準化活動の強化に資する調査の請負 において 2 版 3 版として内容更新および一部追加を行った

More information

2. 各検討課題に関する論点 (1) 費用対効果評価の活用方法 費用対効果評価の活用方法について これまでの保険給付の考え方等の観点も含め どう考 えるか (2) 対象品目の選定基準 1 費用対効果評価の対象とする品目の範囲 選択基準 医療保険財政への影響度等の観点から 対象となる品目の要件をどう設

2. 各検討課題に関する論点 (1) 費用対効果評価の活用方法 費用対効果評価の活用方法について これまでの保険給付の考え方等の観点も含め どう考 えるか (2) 対象品目の選定基準 1 費用対効果評価の対象とする品目の範囲 選択基準 医療保険財政への影響度等の観点から 対象となる品目の要件をどう設 中医協費薬材 - 3 3 0. 1 2. 5 費用対効果評価に関する検討状況について ( 報告 ) 1. 概要 費用対効果評価については これまで以下の課題につき 中医協において協議及び論点の整 理を行ってきたところ 今後 関係業界からのヒアリングを行い とりまとめを行う予定 (1) 費用対効果評価の活用方法 (2) 対象品目の選択基準 1 費用対効果評価の対象とする品目の範囲 選択基準 3 品目選定のタイミング

More information

業務委託基本契約書

業務委託基本契約書 印紙 4,000 円 業務委託基本契約書 契約 ( 以下 甲 といいます ) と ( 選択してください : 株式会社ビーエスピー / 株式会社ビーエスピーソリューションズ )( 以下 乙 といいます ) は 甲が乙に対して各種研修 教育 コンサルティング業務 ( 以下 本件業務 といいます ) を委託することに関し 以下のとおり基本契約 ( 以下 本契約 といいます ) を締結します 第 1 条 (

More information

パラダイムシフトブック.indb

パラダイムシフトブック.indb 3. 記録管理プログラムの作成記録管理のプログラムとは 組織ごとの記録管理の方針からルール ( 管理規則 実施手順など ) 教育計画 監査基準まで すべてがセットになったものであり 組織における包括的な記録管理の仕組みである この項では ISO15489の考え方をベースに国際標準に基づいた記録管理プログラムとはどのようなものか示す 記録管理のプログラムを作成する場合 先に述べた基本的な記録管理の要求事項

More information

「自動運転車」に関する意識調査(アンケート調査)~「自動運転技術」に対する認知度はドイツの消費者の方が高いことが判明~_損保ジャパン日本興亜

「自動運転車」に関する意識調査(アンケート調査)~「自動運転技術」に対する認知度はドイツの消費者の方が高いことが判明~_損保ジャパン日本興亜 2018 年 4 月 10 日 自動運転車 に関する意識調査 ( アンケート調査 ) ~ 自動運転技術 に対する認知度はドイツの消費者の方が高いことが判明 ~ 損害保険ジャパン日本興亜株式会社 ( 社長 : 西澤敬二 以下 損保ジャパン日本興亜 ) は 4 月 10 日の 交通事故死ゼロを目指す日 を前に 事故のない安心 安全な社会の実現 の重要な手段と考えられている自動運転技術の普及促進に向けて

More information

<4D F736F F D2089EF8ED096408CA48B8689EF8E9197BF E7189BB A2E646F63>

<4D F736F F D2089EF8ED096408CA48B8689EF8E9197BF E7189BB A2E646F63> 会社法研究会資料 13 株主総会資料の新たな電子提供制度に関する検討 ( 前注 1) 本資料における 新たな電子提供制度 とは, 概要として, 米国やカナダの Notice & Access 制度 ( その概要は参考資料 8を参照 ) を参考とした以下の1から3までに掲げるような内容の株主総会資料の電子提供制度をいう 1 株主総会の招集に際して法令上株主に対して提供しなければならない情報 ( 以下

More information

国会への法案提出を目指すこととする としている 同方針をもとにパーソナルデータに関する検討会が立ち上げられ, 平成 26 年 (2014 年 )6 月 9 日付けで パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱 ( 事務局案 ) が示されたところである しかしながら, その結論によっては, 個人に関

国会への法案提出を目指すこととする としている 同方針をもとにパーソナルデータに関する検討会が立ち上げられ, 平成 26 年 (2014 年 )6 月 9 日付けで パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱 ( 事務局案 ) が示されたところである しかしながら, その結論によっては, 個人に関 パーソナルデータの利活用に関する制度見直し方針 に対する意見書 2014 年 ( 平成 26 年 )6 月 19 日 日本弁護士連合会 第 1 意見の趣旨 1 個人情報保護法の改正については, プライバシー保護や自由な情報の流通を不当に妨げないこと等の基本的人権の観点から行われるべきであり, パーソナルデータの利活用の促進という主に経済的な観点を強調して行われるべきではない 2 個人情報保護法を改正し,1

More information

険者以外の者に限ります ( 注 2 ) 自損事故条項 無保険車傷害条項または搭乗者傷害条項における被保険者に限ります ( 注 3 ) 無保険車傷害条項においては 被保険者の父母 配偶者または子に生じた損害を含みます ( 3 )( 1 ) または ( 2 ) の規定による解除が損害または傷害の発生した

険者以外の者に限ります ( 注 2 ) 自損事故条項 無保険車傷害条項または搭乗者傷害条項における被保険者に限ります ( 注 3 ) 無保険車傷害条項においては 被保険者の父母 配偶者または子に生じた損害を含みます ( 3 )( 1 ) または ( 2 ) の規定による解除が損害または傷害の発生した 反社会的勢力への対応に関する保険約款の規定例 約款規定例 自動車保険 第 0 0 条 ( 重大事由による解除 ) ( 1 ) 当会社は 次のいずれかに該当する事由がある場合には 保険契約者に対する書面による通知をもって この保険契約を解除することができます 1 保険契約者 被保険者または保険金を受け取るべき者が 当会社にこの保険契約に基づく保険金を支払わせることを目的として損害または傷害を生じさせ

More information

5 仙台市債権管理条例 ( 中間案 ) の内容 (1) 目的 市の債権管理に関する事務処理について必要な事項を定めることにより その管理の適正化を図ることを目的とします 債権が発生してから消滅するまでの一連の事務処理について整理し 債権管理に必要 な事項を定めることにより その適正化を図ることを目的

5 仙台市債権管理条例 ( 中間案 ) の内容 (1) 目的 市の債権管理に関する事務処理について必要な事項を定めることにより その管理の適正化を図ることを目的とします 債権が発生してから消滅するまでの一連の事務処理について整理し 債権管理に必要 な事項を定めることにより その適正化を図ることを目的 仙台市債権管理条例 ( 中間案 ) について 1 条例制定の趣旨 債権 とは 仙台市が保有する金銭の給付を目的とする権利のことで 市税や国民健康保険料 使用料 手数料 返還金 貸付金など様々なものを含みます そして 債権が発生してから消滅するまでの一連の事務処理を 債権管理 といい 具体的には 納付通知書の送付や台帳への記録 収納状況の管理 滞納になった場合の督促や催告 滞納処分 強制執行 徴収の緩和措置等の手続きを指します

More information

医療機器開発マネジメントにおけるチェック項目

医療機器開発マネジメントにおけるチェック項目 2018 年 11 月作成 医療機器開発マネジメントにおけるチェック項目 1. 各ステージゲートにおけるチェック項目 (1) チェック項目作成の目的従来個々の事業において実施されていた 事前 中間 事後の各ゲートにおける評価項目 Go/no-go の判断を 医療機器開発全期間を通して整理し 共通認識化する 技術的観点及び事業化の観点の双方を意識し 医療機器開発の特性を考慮したチェック項目を設定する

More information

版 知る前契約 計画 に関する FAQ 集 2015 年 9 月 16 日 有価証券の取引等の規制に関する内閣府令が改正され いわゆる 知る前契約 計画 に係るインサイダー取引規制の適用除外の範囲が拡大されています 日本取引所自主規制法人に寄せられる 知る前契約 計画 に関する主な

版 知る前契約 計画 に関する FAQ 集 2015 年 9 月 16 日 有価証券の取引等の規制に関する内閣府令が改正され いわゆる 知る前契約 計画 に係るインサイダー取引規制の適用除外の範囲が拡大されています 日本取引所自主規制法人に寄せられる 知る前契約 計画 に関する主な 2016.2.4 版 知る前契約 計画 に関する FAQ 集 2015 年 9 月 16 日 有価証券の取引等の規制に関する内閣府令が改正され いわゆる 知る前契約 計画 に係るインサイダー取引規制の適用除外の範囲が拡大されています 日本取引所自主規制法人に寄せられる 知る前契約 計画 に関する主な質問及びそれに対する回答をとりまとめました なお 掲載している質問に対する回答は 知る前契約 計画 に関する考え方のポイントを一般論として示したものであり

More information

Microsoft Word - ◎簡易版HP0604.doc

Microsoft Word - ◎簡易版HP0604.doc 内容 目次 1-1 顧問契約を締結した場合, どの程度の業務まで月額顧問料の範囲か? 1-2 すぐに回答できる相談を顧問契約の範囲とする場合の月額顧問料はいくらか? 1-3 月 3 時間程度の相談を顧問契約の範囲とする場合の月額顧問料はいくらか? 2 特殊専門的分野の相談 1 時間あたりの相談料はいくらか? 3 取引額 3000 万円の契約書作成の手数料はいくらか? 4 売掛金 2000 万円の回収の着手金

More information

資料 4 論点整理 ( 案 ) 1. 中小企業の会計の在り方に関する基本的な視点について 中小企業は 我が国経済の基盤であり 地域経済の柱であって 多くの雇用を担う存在であることから その成長 発展が図られることが重要である 中小企業の会計の在り方を検討する際に それは 中小企業の成長に資するもので

資料 4 論点整理 ( 案 ) 1. 中小企業の会計の在り方に関する基本的な視点について 中小企業は 我が国経済の基盤であり 地域経済の柱であって 多くの雇用を担う存在であることから その成長 発展が図られることが重要である 中小企業の会計の在り方を検討する際に それは 中小企業の成長に資するもので 資料 4 論点整理 ( 案 ). 中小企業の会計の在り方に関する基本的な視点について 中小企業は 我が国経済の基盤であり 地域経済の柱であって 多くの雇用を担う存在であることから その成長 発展が図られることが重要である 中小企業の会計の在り方を検討する際に それは 中小企業の成長に資するものであるべきとする視点を議論の出発点とする 具体的には 公正妥当と認められる企業会計の慣行であって 次のようなものを念頭に置くこととする

More information

内部統制ガイドラインについて 資料

内部統制ガイドラインについて 資料 内部統制ガイドラインについて 資料 内部統制ガイドライン ( 案 ) のフレーム (Ⅲ)( 再掲 ) Ⅲ 内部統制体制の整備 1 全庁的な体制の整備 2 内部統制の PDCA サイクル 内部統制推進部局 各部局 方針の策定 公表 主要リスクを基に団体における取組の方針を設定 全庁的な体制や作業のよりどころとなる決まりを決定し 文書化 議会や住民等に対する説明責任として公表 統制環境 全庁的な体制の整備

More information

Microsoft Word - 10_資料1_コンピュータソフトウエア関連発明に関する審査基準等の点検又は改訂のポイントについてv08

Microsoft Word - 10_資料1_コンピュータソフトウエア関連発明に関する審査基準等の点検又は改訂のポイントについてv08 コンピュータソフトウエア関連発明に係る審査基準等の 点検 改訂のポイントについて 1. 背景 (1) ソフトウエア関連発明に係る審査基準等を取り巻く状況 第四次産業革命は モノ (things) の提供にとどまらず モノ を利活用した コト の提供というビジネスモデルの転換を伴って進展しつつあり その第四次産業革命の推進力となっている IoT 関連技術 AI 等の新たな技術の研究開発が盛んに行われている

More information

< F2D D8791CC817995D28F578CE B38CEB94BD8966>

< F2D D8791CC817995D28F578CE B38CEB94BD8966> 2 介護予防支援関係 1 委託について ( 問 1) 地域包括支援センターは 担当区域外 ( 例えば 別の市町村 ) の居宅介護支援事業所に 新予防給付のマネジメントを委託することができるのか 利用者が地域包括支援センターの担当区域外の居宅介護支援事業所を選択する場合もあることから 地域包括支援センターは 担当区域外の居宅介護支援事業所にもマネジメントを委託することができる ( 問 2) 新予防給付のマネジメントを委託する場合の委託費用は介護予防サービス計画費のどの程度の割合とするべきか

More information

Webエムアイカード会員規約

Webエムアイカード会員規約 Web エムアイカード会員規約 第 1 条 ( 目的 ) Web エムアイカード会員規約 ( 以下 本規約 といいます ) は 株式会社エムアイカード ( 以下 当社 といいます ) がインターネット上に提供する Web エムアイカード会員サービス ( 以下 本サービス といいます ) を 第 2 条に定める Web エムアイカード会員 ( 以下 Web 会員 といいます ) が利用するための条件を定めたものです

More information

PYT & Associates Attorney at law

PYT & Associates Attorney at law PYT & Associates 弁護士 カンボジアコーポレート ガバナンス Potim YUN 代表 弁護士 2017 年 9 月 12 日大阪 目次 - カンボジア法下におけるコーポレート ガバナンス 1. 序論 2. 株主の権利と公平な取扱い 3. その他の利害関係者の利益 4. 取締役会の役割と責務 5. 真摯さと倫理行動 6. 開示と透明性 PYT & Associates 2 1. 序論

More information

Microsoft PowerPoint - IPRフォローアップミーティング(田村) (2)

Microsoft PowerPoint - IPRフォローアップミーティング(田村) (2) IPR に関する最近の動向 - 補正と BRI を中心として 目次 (1) PTABが公表した統計について (2) クレーム補正について (3) 規則改正の動向 (4) IPRに関する最近の注目審決 / 判決 2 (1) PTAB が公表した統計について 3 PTAB は請求件数等の統計を 2015 年 4 月以降毎月公表 (http://www.uspto.gov/patents-application-process/appealing-patent-decisions/statistics/aia-trialstatistics)

More information

<4D F736F F D B835E8BA4974C8EE888F E63294C5816A8F4390B E31322E F4390B394C5816A2E646F63>

<4D F736F F D B835E8BA4974C8EE888F E63294C5816A8F4390B E31322E F4390B394C5816A2E646F63> 目次の表 1 序... 11 1.1 データ共有に関する手引文書の目的... 11 1.2 概観... 11 1.2.1 登録義務... 11 1.2.2 段階的導入物質及び非段階的導入物質... 12 1.2.3 登録についての移行制度... 13 1.2.4 予備登録及び遅発予備登録... 13 1.2.5 登録に先立つ照会... 14 1.2.6 物質情報交換フォーラム... 14 1.2.7

More information

特許出願の審査過程で 審査官が出願人と連絡を取る必要があると考えた場合 審査官は出願人との非公式な通信を行うことができる 審査官が非公式な通信を行う時期は 見解書が発行される前または見解書に対する応答書が提出された後のいずれかである 審査官からの通信に対して出願人が応答する場合の応答期間は通常 1

特許出願の審査過程で 審査官が出願人と連絡を取る必要があると考えた場合 審査官は出願人との非公式な通信を行うことができる 審査官が非公式な通信を行う時期は 見解書が発行される前または見解書に対する応答書が提出された後のいずれかである 審査官からの通信に対して出願人が応答する場合の応答期間は通常 1 シンガポールにおける特許 審査での審査官面接 Ai Ming Lee ( 弁護士 ) Chang Jian Ming ( 弁理士 ) Dentons Rodyk 法律事務所 Willie Lim Dentons Rodyk 法律事務所は 1861 年に設立された シンガポールで最も歴史があり最大の法律事務所の一つである 約 200 名の弁護士が国内および海外の法律サービスを提供している Lee Ai

More information

どのような便益があり得るか? より重要な ( ハイリスクの ) プロセス及びそれらのアウトプットに焦点が当たる 相互に依存するプロセスについての理解 定義及び統合が改善される プロセス及びマネジメントシステム全体の計画策定 実施 確認及び改善の体系的なマネジメント 資源の有効利用及び説明責任の強化

どのような便益があり得るか? より重要な ( ハイリスクの ) プロセス及びそれらのアウトプットに焦点が当たる 相互に依存するプロセスについての理解 定義及び統合が改善される プロセス及びマネジメントシステム全体の計画策定 実施 確認及び改善の体系的なマネジメント 資源の有効利用及び説明責任の強化 ISO 9001:2015 におけるプロセスアプローチ この文書の目的 : この文書の目的は ISO 9001:2015 におけるプロセスアプローチについて説明することである プロセスアプローチは 業種 形態 規模又は複雑さに関わらず あらゆる組織及びマネジメントシステムに適用することができる プロセスアプローチとは何か? 全ての組織が目標達成のためにプロセスを用いている プロセスとは : インプットを使用して意図した結果を生み出す

More information

対イラン制裁解除合意履行日以降に非米国企業 が留意すべきコンプライアンス要件 2016 年 11 月 日本貿易振興機構 ( ジェトロ ) ドバイ事務所 ビジネス展開支援部ビジネス展開支援課

対イラン制裁解除合意履行日以降に非米国企業 が留意すべきコンプライアンス要件 2016 年 11 月 日本貿易振興機構 ( ジェトロ ) ドバイ事務所 ビジネス展開支援部ビジネス展開支援課 対イラン制裁解除合意履行日以降に非米国企業 が留意すべきコンプライアンス要件 2016 年 11 月 日本貿易振興機構 ( ジェトロ ) ドバイ事務所 ビジネス展開支援部ビジネス展開支援課 報告書の利用についての注意 免責事項 本報告書は 日本貿易振興機構 ( ジェトロ ) ドバイ事務所が現地法律コンサルティング事務所 Amereller に作成委託し 2016 年 11 月に入手した情報に基づくものであり

More information

Microsoft Word - ○指針改正版(101111).doc

Microsoft Word - ○指針改正版(101111).doc 個人情報保護に関する委託先との覚書 ( 例 ) 例 4 例個人情報の取扱いに関する覚書 ( 以下 甲 という ) と ( 以下 乙 という ) は 平成 _ 年 _ 月 _ 日付で締結した 契約書に基づき甲が乙に委託した業務 ( 以下 委託業務 という ) の遂行にあたり 乙が取り扱う個人情報の保護及び管理について 次のとおり合意する 第 1 条 ( 目的 ) 本覚書は 乙が委託業務を遂行するにあたり

More information

FRAND 条件をめぐる裁判例とその考察―Unwired Planet v. Huawei 英国訴訟―

FRAND 条件をめぐる裁判例とその考察―Unwired Planet v. Huawei 英国訴訟― 特集 日本弁理士会における標準化への取り組み / 標準化の動向 Unwired Planet v. Huawei 英国訴訟 平成 29 年度企業弁理士知財委員会小林和人 要約 Unwired Planet v. Huawei( 英国高等法院,207 年 ) は, 欧州司法裁判所の FRAND 条件に関する判決 (205 年 ) 後に,FRAND 条件について本格的に審理した裁判である 本事件は,FRAND

More information

2006 年度 民事執行 保全法講義 第 4 回 関西大学法学部教授栗田隆

2006 年度 民事執行 保全法講義 第 4 回 関西大学法学部教授栗田隆 2006 年度 民事執行 保全法講義 第 4 回 関西大学法学部教授栗田隆 T. Kurita 2 目 次 1. 執行文に関する争いの解決 ( 民執 32 条 -34 条 ) 2. 請求異議の訴え ( 民執 35 条 ) 3. 執行停止の裁判 ( 民執 36 条 37 条 ) 執行文の付与等に関する異議 (32 条 ) 債権者 執行文付与申立て 執行文付与拒絶 債権者 異議 書記官 事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官

More information

( 参考様式 1) ( 新 ) 事業計画書 1 事業名 : 2 補助事業者名 : 3 事業実施主体名 : Ⅰ 事業計画 1 事業計画期間 : 年 月 ~ 年 月 記載要領 事業計画期間とは 補助事業の開始から事業計画で掲げる目標を達成するまでに要する期間とし その期限は事業実施年 度の翌年度から 3

( 参考様式 1) ( 新 ) 事業計画書 1 事業名 : 2 補助事業者名 : 3 事業実施主体名 : Ⅰ 事業計画 1 事業計画期間 : 年 月 ~ 年 月 記載要領 事業計画期間とは 補助事業の開始から事業計画で掲げる目標を達成するまでに要する期間とし その期限は事業実施年 度の翌年度から 3 ( 参考様式 1) ( 新 ) 事業計画書 1 事業名 : 2 補助事業者名 : 3 事業実施主体名 : Ⅰ 事業計画 1 事業計画期間 : 年 月 ~ 年 月 事業計画期間とは 補助事業の開始から事業計画で掲げる目標を達成するまでに要する期間とし その期限は事業実施年 度の翌年度から 3~5 年間とする 2 事業計画期間内の投資予定額 : 千円 ( 年度 : 千円 年度 : 千円 年度 : 千円

More information

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資 民法 ( 債権関係 ) 部会資料 85 民法 ( 債権関係 ) の改正に関する要綱案の取りまとめに向けた検討 (18) 目次 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置... 1 第 2 時効の規定の改正に関する経過措置... 1 第 3 債権総則の規定の改正に関する経過措置... 2 第 4 契約総則 各則の規定の改正に関する経過措置... 4 i 民法 ( 債権関係 )

More information

現状では法制度を工夫しても 違憲の疑いが強い

現状では法制度を工夫しても 違憲の疑いが強い 資料 9 ブロッキング法制化は 違憲の疑いが強いこと 弁護士森亮二 1 現状では法制度を工夫しても 違憲の疑いが強い 前回 ( 第 7 回 ) の提出資料 ( 資料 7) と席上での説明は 中間まとめの修正版では無視されました 完全に無視でした 3 違憲審査基準のあてはめ 1 違憲審査基準は以下のとおり アクセス制限 ( ブロッキング ) が合憲といえるのは 1 具体的 実質的な立法事実に裏付けられ

More information

a. 氏名及び住所の詳細 b. メールアドレス c. ユーザー名及びパスワード d. IP アドレス e. 雇用に関する情報 履歴書 3.2 当社は 当社サイトを通じてパスポート情報や健康データなどのセンシティブな個人データを収 集することは 適用プライバシー法令の定める場合を除き ありません 3.

a. 氏名及び住所の詳細 b. メールアドレス c. ユーザー名及びパスワード d. IP アドレス e. 雇用に関する情報 履歴書 3.2 当社は 当社サイトを通じてパスポート情報や健康データなどのセンシティブな個人データを収 集することは 適用プライバシー法令の定める場合を除き ありません 3. 初版制定平成 30 年 5 月 24 日 GDPR の個人データに関するプライバシーポリシー ヤマトグローバルロジスティクスジャパン株式会社は 当社サイトのご利用者のプライバシー保護に努めています 当社サイト (https://www.y-logi.com/ygl/) をご利用される前に 本プライバシーポリシーを最後までよくお読みくださいますようお願いいたします 第 1 条定義本プライバシーポリシーにおける用語の定義は

More information

特定保健指導における情報通信技術を活用した面接による指導の実施の手引き 新旧対照表 改正後 特定保健指導における情報通信技術を活用した面接による指導の実施の手引き 現行 ICT を活用した特定保健指導の実施の手引き 最終改正平成 30 年 2 月 9 日 1.ICTを活用した特定保健指導の実施者保険

特定保健指導における情報通信技術を活用した面接による指導の実施の手引き 新旧対照表 改正後 特定保健指導における情報通信技術を活用した面接による指導の実施の手引き 現行 ICT を活用した特定保健指導の実施の手引き 最終改正平成 30 年 2 月 9 日 1.ICTを活用した特定保健指導の実施者保険 特定保健指導における情報通信技術を活用した面接による指導の実施の手引き 新旧対照表 改正後 特定保健指導における情報通信技術を活用した面接による指導の実施の手引き 現行 ICT を活用した特定保健指導の実施の手引き 最終改正平成 30 年 2 月 9 日 1.ICTを活用した特定保健指導の実施者保険者が実施する特定保健指導の初回面接は 原則として直接会って行うものとする ただし 平成 25 年 8

More information

審決取消判決の拘束力

審決取消判決の拘束力 (1) 審決取消判決の拘束力の範囲 - 発明の進歩性判断の場合 - 特許業務法人サンクレスト国際特許事務所弁理士喜多秀樹 1. はじめに審決取消訴訟の取消判決が確定すると 従前の審決が取り消されるため事件は特許庁の審判手続に戻り 審判官は更に必要な審理を行って再び審決をしなければならない ( 特許法 181 条 5 項 ) この場合 その後の審決が 先の取消判決を無視して前審決と同じ理由で同じ結論を下すと

More information

点で 本規約の内容とおりに成立するものとします 3. 当社は OCN ID( メールアドレス ) でログインする機能 の利用申込みがあった場合でも 任意の判断により OCN ID( メールアドレス ) でログインする機能 の利用をお断りする場合があります この場合 申込者と当社の間に利用契約は成立し

点で 本規約の内容とおりに成立するものとします 3. 当社は OCN ID( メールアドレス ) でログインする機能 の利用申込みがあった場合でも 任意の判断により OCN ID( メールアドレス ) でログインする機能 の利用をお断りする場合があります この場合 申込者と当社の間に利用契約は成立し OCN ID( メールアドレス ) でログインする機能の利用規約 第 1 条 ( 本規約の適用 ) OCN ID( メールアドレス ) でログインする機能の利用規約 ( 以下 本規約 といいます ) はエヌ ティ ティ コミュニケーションズ株式会社 ( 以下 当社 といいます ) が提供する OCN ID( メールアドレス ) でログインする機能 の利用に関し お客様と当社との間に適用されます 第

More information

3 参照基準次に掲げる基準は この基準に引用される限りにおいて この基準の一部となる - プライバシーマーク付与適格性審査実施規程 - プライバシーマーク制度における欠格事項及び判断基準 (JIPDEC) 4 一般要求事項 4.1 組織 審査業務の独立性審査機関は 役員の構成又は審査業務

3 参照基準次に掲げる基準は この基準に引用される限りにおいて この基準の一部となる - プライバシーマーク付与適格性審査実施規程 - プライバシーマーク制度における欠格事項及び判断基準 (JIPDEC) 4 一般要求事項 4.1 組織 審査業務の独立性審査機関は 役員の構成又は審査業務 プライバシーマーク付与適格性審査規程 1 適用範囲この規程は 一般財団法人日本データ通信協会が 一般財団法人日本情報経済社会推進協会 ( 以下 付与機関 という ) とのプライバシーマーク制度指定機関契約に基づき プライバシーマーク指定審査機関 ( 以下 審査機関 という ) として その業務の遂行に関して適格であり信頼できると承認されるために遵守すべき事項を定める 2 用語及び定義この基準で用いる主な用語の定義は

More information

p81-96_マンション管理ガイド_1703.indd

p81-96_マンション管理ガイド_1703.indd 第 4 章 マンション管理業者編 管理業者の役割 第 29 マンション管理業者は 受託業務を適切に実施するとともに 管理組合のパートナーとして 管理組合の運営等に対し 専門的見地から提案や助言を行い 管理組合が適正かつ円滑に管理を行える環境を整え 管理組合の活動が活性化するよう努める ガイドライン第 29 の解説 マンションの管理は 管理組合が主体となって行うものである マンションを管理するに当たっては

More information

<4D F736F F D20335F395F31392E31312E323895BD8BCF925089BF82C982E682E98EE688F88EC08E7B82CC82BD82DF82CC8BC696B191CC90A CC90AE94F

<4D F736F F D20335F395F31392E31312E323895BD8BCF925089BF82C982E682E98EE688F88EC08E7B82CC82BD82DF82CC8BC696B191CC90A CC90AE94F 平均単価による取引実施のための業務体制等の整備について 平成 15 年 12 月 17 日理事会決議平成 16 年 3 月 24 日一部改正平成 18 年 10 月 25 日一部改正平成 19 年 11 月 28 日一部改正 投資一任契約に係る業務を行う会員が平均単価による約定 決済を行う取引 ( 約定日 受渡日が同一の取引につき 銘柄毎 売買別に 単価の異なる複数の約定を合算し 平均単価を単価として取引報告及び決済を行う取引をいう

More information

Microsoft Word - adr (1)

Microsoft Word - adr (1) 平成 29 年 9 月吉日 日本不動産仲裁機構 ADR センター ( 法務大臣認証裁判外紛争解決機関 ) 調停人基礎資格認定のお知らせ NPO 法人日本ホームインスペクターズ協会 皆様方に置かれましては ますますご清栄のこととお喜び申し上げます 日頃は 当協会の活動につきご理解とご協力を賜り誠にありがとうございます さて 当協会が加盟する一般社団法人日本不動産仲裁機構 ( 以下 仲裁機構 といいます

More information

審査の品質管理において取り組むべき事項 ( 平成 27 年度 ) 平成 27 年 4 月 28 日 特許庁 特許 Ⅰ. 質の高い審査を実現するための方針 手続 体制の整備 審査の質を向上させるためには 審査体制の充実が欠かせません そこで 審査の効率性を考慮しつつ 主要国と遜色のない審査実施体制の確

審査の品質管理において取り組むべき事項 ( 平成 27 年度 ) 平成 27 年 4 月 28 日 特許庁 特許 Ⅰ. 質の高い審査を実現するための方針 手続 体制の整備 審査の質を向上させるためには 審査体制の充実が欠かせません そこで 審査の効率性を考慮しつつ 主要国と遜色のない審査実施体制の確 審査の品質管理において取り組むべき事項 ( 平成 27 年度 ) 平成 27 年 4 月 28 日 特許庁 特許 Ⅰ. 質の高い審査を実現するための方針 手続 体制の整備 審査の質を向上させるためには 審査体制の充実が欠かせません そこで 審査の効率性を考慮しつつ 主要国と遜色のない審査実施体制の確保に向け 引き続き必要な数の審査官の確保に不断に努めていきます 審査の質を向上させるためには 品質管理体制の充実も欠かせません

More information

Ⅰ. 経緯 国際金融コミュニティにおける IAIS の役割は ここ数年大幅に増加している その結果 IAIS は 現行の戦略計画および財務業績見通しを策定した際には想定していなかった システム上重要なグローバルな保険会社 (G-SIIs) の選定支援やグローバルな保険資本基準の策定等の付加的な責任を

Ⅰ. 経緯 国際金融コミュニティにおける IAIS の役割は ここ数年大幅に増加している その結果 IAIS は 現行の戦略計画および財務業績見通しを策定した際には想定していなかった システム上重要なグローバルな保険会社 (G-SIIs) の選定支援やグローバルな保険資本基準の策定等の付加的な責任を IAIS 市中協議 会合参加 監督文書等の策定に係る手続きおよびステークホルダーとの協議方針 ( 概要 ) 一般社団法人日本損害保険協会国際企画部 (2014 年 9 月作成 ) ( ) 本資料を利用することにより発生するいかなる損害やトラブル等に関して 当協会は一切の責任を負いません Ⅰ. 経緯 国際金融コミュニティにおける IAIS の役割は ここ数年大幅に増加している その結果 IAIS は

More information

参加人は 異議申立人が挙げていない新たな異議申立理由を申し立てても良い (G1/94) 仮 にアピール段階で参加した参加人が 新たな異議申立理由を挙げた場合 その異議申立手続は第 一審に戻る可能性がある (G1/94) 異議申立手続中の補正 EPCにおける補正の制限は EPC 第 123 条 ⑵⑶に

参加人は 異議申立人が挙げていない新たな異議申立理由を申し立てても良い (G1/94) 仮 にアピール段階で参加した参加人が 新たな異議申立理由を挙げた場合 その異議申立手続は第 一審に戻る可能性がある (G1/94) 異議申立手続中の補正 EPCにおける補正の制限は EPC 第 123 条 ⑵⑶に 欧州特許庁における異議申立 Global IP Europe 欧州特許弁理士 日本弁理士稲積朋子 第 1 回では EPC 第 99 条 ⑴ 欧州特許の特許査定の公開から9ヶ月以内に 何人も欧州特許庁において異議申立をすることができる について解説した 第 2 回では EPC 第 99 条 ⑵( 異議申立の効力 ) 同条 ⑶( 手続の当事者 ) 同条 ⑷( 正当な権利者による特許権者の置換 ) 及びEPC

More information

第 32 回 1 級 ( 特許専門業務 ) 実技試験 一般財団法人知的財産研究教育財団知的財産教育協会 ( はじめに ) すべての問題文の条件設定において, 特に断りのない限り, 他に特殊な事情がないものとします また, 各問題の選択枝における条件設定は独立したものと考え, 同一問題内における他の選

第 32 回 1 級 ( 特許専門業務 ) 実技試験 一般財団法人知的財産研究教育財団知的財産教育協会 ( はじめに ) すべての問題文の条件設定において, 特に断りのない限り, 他に特殊な事情がないものとします また, 各問題の選択枝における条件設定は独立したものと考え, 同一問題内における他の選 ( はじめに ) すべての問題文の条件設定において, 特に断りのない限り, 他に特殊な事情がないものとします また, 各問題の選択枝における条件設定は独立したものと考え, 同一問題内における他の選択枝には影響しないものとします 特に日時の指定のない限り,2018 年 9 月 1 日現在で施行されている法律等に基づいて解答しなさい PartⅠ 精密機器メーカー X 社の知的財産部の部員甲は, 自社の電磁波測定器に係る発明

More information

(2) 総合的な窓口の設置 1 各行政機関は 当該行政機関における職員等からの通報を受け付ける窓口 ( 以下 通報窓口 という ) を 全部局の総合調整を行う部局又はコンプライアンスを所掌する部局等に設置する この場合 各行政機関は 当該行政機関内部の通報窓口に加えて 外部に弁護士等を配置した窓口を

(2) 総合的な窓口の設置 1 各行政機関は 当該行政機関における職員等からの通報を受け付ける窓口 ( 以下 通報窓口 という ) を 全部局の総合調整を行う部局又はコンプライアンスを所掌する部局等に設置する この場合 各行政機関は 当該行政機関内部の通報窓口に加えて 外部に弁護士等を配置した窓口を 公益通報者保護法を踏まえた国の行政機関の通報対応に関するガイドライン ( 内部の職員等からの通報 ) 平成 17 年 7 月 19 日関係省庁申合せ平成 26 年 6 月 23 日一部改正平成 29 年 3 月 21 日一部改正 1. 本ガイドラインの意義及び目的公益通報者保護法 ( 平成 16 年法律第 122 号 以下 法 という ) を踏まえ 国の行政機関が内部の職員等からの通報に対応する仕組みを整備し

More information